特許第6560611号(P6560611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560611
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 31/00 20060101AFI20190805BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20190805BHJP
   B43K 5/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B43K31/00
   B43K3/00 L
   B43K5/00 100
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-250745(P2015-250745)
(22)【出願日】2015年12月23日
(65)【公開番号】特開2017-113953(P2017-113953A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】早川 尚利
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−229491(JP,A)
【文献】 特開2005−7573(JP,A)
【文献】 特開2005−96192(JP,A)
【文献】 特開2005−119272(JP,A)
【文献】 特開2006−272605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00 − 8/24
29/00 − 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の前端にペン先が外部に突出する前端孔を備え、前記軸筒の後端開口部に着脱自在のカートリッジを備えた筆記具であって、
前記軸筒の後端開口部の側壁に切欠き部が形成され、
前記カートリッジが、前記軸筒の後端より後方に突出される後側筒部と、前記後側筒部の前方外面に周状に形成される鍔部と、前記鍔部の前方外面に形成される前側筒部と、前記前側筒部に外面に形成される係合壁部と、を備え、
前記前側筒部が前記軸筒の後端開口部に挿着された状態において、前記鍔部が前記軸筒の後端に当接され、前記係合壁部が前記切欠き部に係合されており、
前記係合壁部が、前記切欠き部の形状に沿って延び且つ径方向外方に突出するリブにより形成され、前記係合壁部と前記鍔部との間に指先が挿入可能な凹部が形成されてなることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記係合壁部が前記鍔部に一体に連設される請求項1記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。詳細には、軸筒のペン先側と反対側の後端開口部に着脱自在のカートリッジを備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の筆記具において、例えば、特許文献1には、カートリッジが外方に露出する脱離ボタンを備え、操作を容易にするために脱離ボタンの表面に凹凸が刻設される構成が開示されている。
また、特許文献2には、カートリッジの当接部の外周面に指を引っ掛けるための2個の把持部(操作用凸部)が設けられた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−7573号公報
【特許文献2】特開2005−119272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1、2の筆記具は、何れも、カートリッジを筆記具本体から取り外すときに、カートリッジと筆記具本体との固定状態が強固であると、指が滑って容易に着脱することができないおそれがある。また、カートリッジの容易な着脱を得るために、安易にカートリッジと筆記具本体との固定状態を弱く設定しまうと、カートリッジが筆記具本体から不用意に脱落するおそれがある。
【0005】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、カートリッジと軸筒の後端開口部との固定状態を強固にでき、且つ、カートリッジを軸筒の後端開口部から容易に着脱することができる筆記具を提供しようとするものである。
【0006】
尚、本発明において、「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側のカートリッジ側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、軸筒2の前端にペン先91が外部に突出する前端孔21を備え、前記軸筒2の後端開口部22に着脱自在のカートリッジ3を備えた筆記具であって、前記軸筒2の後端開口部22の側壁に切欠き部23が形成され、前記カートリッジ3が、前記軸筒2の後端より後方に突出される後側筒部6と、前記後側筒部6の前方外面に周状に形成される鍔部5と、前記鍔部5の前方外面に形成される前側筒部4と、前記前側筒部4に外面に形成される係合壁部41と、を備え、前記前側筒部4が前記軸筒2の後端開口部22に挿着された状態において、前記鍔部5が前記軸筒2の後端に当接され、前記係合壁部41が前記切欠き部23に係合されており、前記係合壁部41が、前記切欠き部23の形状に沿って延び且つ径方向外方に突出するリブにより形成され、前記係合壁部41と前記鍔部5との間に指先が挿入可能な凹部7が形成されてなることを特徴とする。
【0008】
前記第1の発明の筆記具1は、前記形態を採用したことにより、カートリッジ3と軸筒2の後端開口部22との固定状態を強固にでき、しかも、指先を凹部7に挿入することにより、カートリッジ3を軸筒2の後端開口部22から容易に着脱することができる。
【0009】
本願の第2の発明の筆記具1は、前記第1の発明の筆記具1において、前記係合壁部41が前記鍔部5に一体に連設されることを特徴とする。
【0010】
前記第2の発明の筆記具1は、前記形態を採用したことにより、それにより、指先と凹部7の引っ掛かり性(フィット感)を向上させ、一層、軸筒2の後端開口部22からカートリッジ3を容易に着脱することができる。
【0011】
尚、本発明でカートリッジ3とは、具体的には、筆記具(例えば、ボールペン、マーキングペン、固形芯等)、塗布具(例えば、接着剤、糊、修正液、クリーニング液、その他各種塗布液用ペン等)、転写テープ(例えば、修正テープ、接着剤テープ、マーカーテープ等)、字消し具、または熱変色性インキの筆跡を加熱により熱変色させる加熱具(例えば、摩擦具、通電加熱具等)が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の筆記具は、カートリッジと軸筒の後端開口部との固定状態を強固にでき、且つ、カートリッジを軸筒の後端開口部から容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態のペン先突出状態を示す一部縦断面図である。
図2図1の後端部を示す要部拡大正面図である。
図3図1の軸筒の後端開口部を示す要部斜視図である。
図4図1のカートリッジの斜視図である。
図5図4のカートリッジの反対側を示す斜視図である。
図6図1のキャップを取り外した状態のカートリッジの正面図である。
図7図6のカートリッジの反対側を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の筆記具の実施の形態を図面に従って説明する。(図1乃至図7参照)
【0015】
本発明の筆記具1は、軸筒2と、軸筒2内に前後方向に移動可能に収容され且つペン先91を有する複数本の筆記体9と、軸筒2の後端開口部22に着脱自在に取り付けられるカートリッジ3とを備える。
【0016】
・軸筒
軸筒2は、先細状の筒状体であり、合成樹脂の成形体により得られる。軸筒2は、1部品で構成されるか、または、複数の部品の組合せにより構成される。軸筒2の前端には、前端孔21が前後方向に貫設される。前記前端孔21より筆記体9のペン先91が出没される。軸筒2の後端開口部22の側壁には、半円状の切欠き部23と、2つの係合孔(第1の係合孔24、第2の係合孔25)が形成される。尚、本発明で、ペン先91は軸筒2の前端孔21に固着されてもよい。
【0017】
・切欠き部
前記切欠き部23は、軸筒2の後端開口部22の側壁に径方向に貫設され且つ後方に開口される。前記切欠き部23は、1箇所に形成されているが、複数箇所(例えば2箇所)であってもよい。前記切欠き部23の形状は、半円状の他、例えば、半楕円状、三角形状、四角形状(長方形、正方形、台形等)、多角形状、V字形状、U字形状等が挙げられる。
【0018】
・係合孔
前記第1の係合孔24は、切欠き部23の前方に形成され、第2の係合孔25は、軸線に対して第2の係合孔25と対称位置に形成される。前記第1の係合孔24、及び第2の係合孔25は、軸筒2の側壁に径方向に貫設される。
【0019】
・第1の内向突起、第2の内向突起
前記第1の係合孔24と前記第2の係合孔25との間の周方向内面から前方の軸筒2内面に、2つの内向突起(第1の内向突起26、第2の内向突起27)が形成される。
【0020】
・カートリッジ
前記カートリッジ3は、前側筒部4と鍔部5と後側筒部6とを有する本体と、前記本体の後側筒部6に着脱自在のキャップ8と、を備える。前記カートリッジ3の本体は、前側筒部4と、前側筒部4の後端に一体に連設される鍔部5と、鍔部5より前方に一体に連設される後側筒部6とからなる。前記本体内には、インキが含浸されたインキ吸蔵体が収容され、前記後側筒部6に、前記インキ吸蔵体に接続された筆記先端部61が取り付けられる。前記本体及びキャップ8は、合成樹脂の成形体により得られる。
【0021】
・前側筒部
前側筒部4は、軸筒2の後端開口部22内に挿着される。
【0022】
・係合壁部
前側筒部4の外面には、係合壁部41が一体に形成される。前記係合壁部41が、前記切欠き部23の形状に沿って延び且つ径方向外方に突出する均一肉厚を有するリブにより形成される。カートリッジ3を軸筒2後端開口部22に挿着した状態において、係合壁部41の外面が切欠き部23に係合される。前記係合壁部41の両端は鍔部5の前面に連結される。
【0023】
・第1の係合突起、第2の係合突起
前記係合壁部41の前方の前側筒部4の外面には、第1の係合突起42が一体に形成される。前記第1の係合突起42と軸線に対して対称位置の前側筒部4の外面には、第2の係合突起43が一体に形成される。前記第1の係合突起42が前記第1の係合孔24に落ち込み係合され、前記第2の係合突起43が前記第2の係合孔25に落ち込み係合される。係合壁部41の頂部外面と第1の係合突起42との間の前側筒部4の外面には連結リブが一体に形成され、連結リブにより係合壁部41の頂部外面と第1の係合突起42との間が連結されている。それにより、第1の係合突起42の折れ曲がりに対する耐久性が向上する。
【0024】
・第1の外向突起、第2の外向突起
前記第1の係合突起42と第2の係合突起43との間の中間の周方向外面から前方の前側筒部4の外面には、第1の外向突起44及び第2の外向突起45が一体に形成される。前記第1の外向突起44が前記第1の内向突起26に乗り越え係合され、前記第2の外向突起45が前記第2の内向突起27に乗り越え係合される。
【0025】
前記カートリッジ3外面と軸筒2の後端開口部22内面の4か所の係合(第1の係合突起42と前記第1の係合孔24との係合、第2の係合突起43と第2の係合孔25との係合、前記第1の外向突起44と第1の内向突起26との係合、第2の外向突起45と第2の内向突起27との係合)により、カートリッジ3外面と軸筒2の後端開口部22内面との強固な固定が可能となる
【0026】
・鍔部
前記鍔部5の前面及び後面は、軸線に対して垂直な平面により形成される。前記鍔部5は、径方向外方に突出された環状突部により形成される。カートリッジ3を軸筒2後端開口部22に挿着した状態において、前記鍔部5の前面が軸筒2の後端に当接され、前記鍔部5の後面がキャップ8の開口端に当接される。また、この状態において、前記鍔部5の外周面は、軸筒2の後端開口部22の外周縁部と一致され 軸筒2外周面から径方向に突出していない。
【0027】
・凹部
前記鍔部5の前面と前記係合壁部41の両端は一体に連設される。前記鍔部5の前面と係合壁部41の内面とより半円状の凹部7が形成される。前記凹部7は、指先が挿入可能な程度の大きさを有する。前記凹部7は、深さ3mm〜5mm、前後方向の最大幅3mm〜5mm、周方向の最大幅8mm〜10mmに設定される。
【0028】
・後側筒部
カートリッジ3を軸筒2の後端開口部22に挿着した状態において、後側筒部6は、軸筒2の後端より後方に突出される。後側筒部6の後端からは筆記先端部61が突出される。
【0029】
・キャップ
キャップ8は、有底の筒状体であり、合成樹脂の成形体により得られる。後側筒部6の外周面に、螺合または嵌合によりキャップ8が着脱自在に取り付けられる。キャップ8内周面は、後側筒部6の外周面と密接され、それにより、筆記先端部61が密封される。
【0030】
・カートリッジの交換(カートリッジの取り外し)
カートリッジ3の凹部7に指先を挿入し、指先を鍔部5の前面に引っ掛け、軸筒2に対してカートリッジ3を後方に引っ張ると、カートリッジ3に後方に十分な力が加わり、カートリッジ3の外面と軸筒2の後端開口部22の内面との4箇所の係合を一度に解除し、カートリッジ3を容易に取り外すことができる。
【0031】
・カートリッジの交換(カートリッジの挿着)
カートリッジ3の前側筒部4を軸筒2の後端開口部22に仮挿入し、カートリッジ3の凹部7に指先を挿入し、指先を係合壁部41の内面に引っ掛け、カートリッジ3を前方に押圧すると、カートリッジ3に前方への十分な力が加わり、カートリッジ3の外面と軸筒2の後端開口部22の内面とを4箇所で一度に係合状態にでき、カートリッジ3を容易に挿着することができる。
【0032】
本実施の形態の筆記具1は、軸筒2の前端にペン先91が外部に突出する前端孔21を備え、前記軸筒2の後端開口部22に着脱自在のカートリッジ3を備えた筆記具であって、前記軸筒2の後端開口部22の側壁に切欠き部23が形成され、前記カートリッジ3が、前記軸筒2の後端より後方に突出される後側筒部6と、前記後側筒部6の前方外面に周状に形成される鍔部5と、前記鍔部5の前方外面に形成される前側筒部4と、前記前側筒部4に外面に形成される係合壁部41と、を備え、前記前側筒部4が前記軸筒2の後端開口部22に挿着された状態において、前記鍔部5が前記軸筒2の後端に当接され、前記係合壁部41が前記切欠き部23に係合されており、前記係合壁部が、前記切欠き部23の形状に沿って延び且つ径方向外方に突出するリブにより形成され、前記係合壁部41と前記鍔部5との間に指先が挿入可能な凹部7が形成されることにより、予めカートリッジ3と軸筒2の後端開口部22との固定状態を強固にでき、しかも、指先を凹部7に挿入することにより、カートリッジ3を軸筒2の後端開口部22から容易に着脱することができる。
【0033】
本実施の形態の筆記具1は、前記係合壁部41が鍔部5に一体に連設されることにより、指先と凹部7の引っ掛かり性(フィット感)を向上させ、一層、軸筒2の後端開口部22からカートリッジ3を容易に着脱することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 筆記具
2 軸筒
21 前端孔
22 後端開口部
23 切欠き部
24 第1の係合孔
25 第2の係合孔
26 第1の内向突起
27 第2の内向突起
3 カートリッジ
4 前側筒部
41 係合壁部
42 第1の係合突起
43 第2の係合突起
44 第1の外向突起
45 第2の外向突起
5 鍔部
6 後側筒部
61 筆記先端部
7 凹部
8 キャップ
9 筆記体
91 ペン先
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7