(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560664
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ブロッキング計算モジュール
(51)【国際特許分類】
G02C 7/02 20060101AFI20190805BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20190805BHJP
B24B 9/14 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
G02C7/02
G02C7/00
B24B9/14 E
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-510988(P2016-510988)
(86)(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公表番号】特表2016-524719(P2016-524719A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2014057780
(87)【国際公開番号】WO2014177388
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】13305563.2
(32)【優先日】2013年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518040079
【氏名又は名称】エシロール エンテルナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ピローブ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン ゴドー
【審査官】
横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−287720(JP,A)
【文献】
特開2009−216717(JP,A)
【文献】
特開2003−334748(JP,A)
【文献】
特表2003−523832(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0257930(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00
B24B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロッキングステーション(4)のブロッキング素子(3)上の眼用レンズ部材(2)のブロッキングデータを計算するように構成されたブロッキング計算モジュール(1)であって、
− 遠隔装置から入力データを受信するように構成された受信手段(11)であって、前記入力データは前記眼用レンズ部材に関係する光学データを含み、前記光学データは前記ブロッキング素子上に配置される前記眼用レンズ部材の表面を表す幾何学的データを含む、受信手段(11)と、
− 前記入力データから前記ブロッキングデータを計算するように構成された計算手段(15)であって、前記ブロッキングデータはブロッキング素子上の前記眼用レンズ部材の位置に関係するデータを含む、計算手段(15)と、
− 前記ブロッキングデータに関する情報を前記ブロッキングステーションに送信するように構成された送信手段(17)とを含み、
前記計算手段(15)はさらに、前記ブロッキングデータから、眼用レンズ部材から光学レンズを製造するためのポストブロッキング製造計算に使用される製造データを計算するように構成され、
前記送信手段(17)は前記製造データに関する情報を前記ポストブロッキング製造計算システムに送信するように構成されるブロッキング計算モジュール。
【請求項2】
前記ブロッキング素子(3)はブロッキングリングを含み、
前記ブロッキング計算モジュールはさらに、所定の一組の利用可能ブロッキングリングの中から、使用されるブロッキングリングを選択するように構成されたブロッキングリング選択手段(14)を含み、
前記計算手段(15)は前記入力データと前記選択されたブロッキングリングから前記ブロッキングデータを計算するように構成される、請求項1に記載のブロッキング計算モジュール。
【請求項3】
前記ポストブロッキング製造計算は表面仕上げ計算、研磨計算、及び/又はマーキング計算を含む、請求項1に記載のブロッキング計算モジュール。
【請求項4】
前記計算ブロッキングデータはさらに、前記ブロッキング工程中に使用されるブロッキング材料量に関係するデータを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロッキング計算モジュール。
【請求項5】
所定の一組の利用可能ブロッキング基準素子の中から、前記計算ブロッキング材料量で使用されるブロッキング基準素子(7)を選択するように構成されたブロッキング基準素子選定手段(16)を含む、請求項4に記載のブロッキング計算モジュール。
【請求項6】
前記送信手段(17)はさらに、前記選択されたブロッキングリング(3)と前記選択されたブロッキング基準素子(7)とに関係するデータを管理エンティティ(13)へ送信するように構成される、請求項2又は5に記載のブロッキング計算モジュール。
【請求項7】
前記ブロッキングデータはさらに、ブロッキング位置データ、ブロッキング方位データ、枠組み位置データ、ブロッキング軸データ、リング選択データ、ブロッキング基準要素選択データ、プリズム管理データ、及び/又は装置能力関係データを含む構成データから計算される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブロッキング計算モジュール。
【請求項8】
ユーザが前記構成データを設定できるように構成された人間−コンピュータインタフェースを含む、請求項7に記載のブロッキング計算モジュール。
【請求項9】
前記入力データは前記構成データを含む、請求項7に記載のブロッキング計算モジュール。
【請求項10】
ブロッキングステーション(4)のブロッキング素子(3)上の眼用レンズ部材(2)のブロッキングデータを計算するブロッキング計算方法であって、
− 入力データを遠隔装置から受信する受信工程(S1)であって、前記入力データは前記眼用レンズ部材に関係する光学データを含み、前記光学データは前記ブロッキング素子上に配置される前記眼用レンズ部材の表面を表す幾何学的データを含む、受信工程(S1)と、
− 前記入力データから前記ブロッキングデータを計算する計算工程(S3)であって、前記ブロッキングデータは前記ブロッキング素子上の前記眼用レンズ部材の位置に関係するデータを含む、計算工程(S3)と、
− 前記ブロッキングデータに関する情報を前記ブロッキングステーションに送信される送信工程(S5)とを含み、
前記計算工程(S3)は、眼用レンズ部材から光学レンズを製造するためのポストブロッキング製造計算に使用される製造データが前記ブロッキングデータから計算され、
前記送信工程(S5)は、前記製造データに関する情報が前記ポストブロッキング製造計算システムに送信される、ブロッキング計算方法。
【請求項11】
前記入力データは計算データ及び/又は測定データを含む、請求項10に記載のブロッキング計算方法。
【請求項12】
管理エンティティ(13)から受信された更新入力データから前記ブロッキングデータを再計算する第2の計算工程(S6)を更に含む、請求項10又は11に記載のブロッキング計算方法。
【請求項13】
プロセッサにアクセス可能な1つ又は複数の格納された一連の命令であって、前記プロセッサにより実行されると前記プロセッサに請求項10乃至12のいずれか1項に記載の工程を実行させる、1つ又は複数の格納された一連の命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラム製品の1つ又は複数の一連の命令を担持するコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロッキングステーションのブロッキング素子上の眼用レンズ部材のブロッキングデータを計算するように構成されたブロッキング計算モジュール(blocking calculation module)に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における本発明の背景の論述は本発明の背景について説明するために含まれる。これは、参照される資料のいずれも特許請求の範囲のいずれかの優先日の時点で既に公表された、既知であった、又は一般的知識の一部であったということを認めるものと解釈されるものではない。
【0003】
眼用レンズは通常、眼用レンズの装着者の多様な視力欠陥を矯正するために使用される。これらの視力欠陥として、近視(近眼)、遠視、乱視などの欠陥、及び老化に伴う近方視力の欠陥(老眼)が挙げられる。
【0004】
眼用レンズは通常、プラスチック材料で作られ、通常は装着者の処方箋に対応する必要屈折特性を提供するために互いに協同する2つの対向面を有する。
【0005】
現在、眼用レンズを提供するために、眼科医師は発注書を眼科製造所(ophthalmic lab)へ送ることにより眼科製造所に眼用レンズを注文する。発注書は、装着者データ(例えば、装着者の処方箋)と、任意選択的に頭/眼球運動調整パラメータ及び/又は眼回転中心などの他の装着者のパラメータとを含む。発注書はさらに、眼鏡フレームデータ(例えば、装着者が選択した眼鏡フレームのタイプ)とレンズデータ(例えば、装着者が選択した眼用レンズのタイプ)とを含む。
【0006】
眼科製造所は発注書を受け取り、それを眼用レンズ設計者に送る。レンズ設計者は、眼用レンズ計算機を使用することにより、眼用レンズ設計を計算するために発注書に含まれるデータを使用する。眼用レンズ設計は、装着者へ提供される眼用レンズの光学データと眼用レンズの製造工程に関係する製造工程データとを含む。
【0007】
レンズ設計者により判断された眼用設計は、眼科製造所へ送られ、計算された設計に基づき眼用レンズが製造される。製造工程は、例えばブロッキング工程、表面仕上げ工程、研磨工程、マーキング工程を含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の眼用レンズ提供方法はいくつかの欠点を提示する。
【0009】
第1に、各眼科製造所は、独自の管理エンティティと独自の装置及び道具、特には独自のブロッキング素子及び独自のブロッキングステーションとを有する。結局、各レンズ設計者は様々な眼科製造所用の製造工程データを計算するよう適応しなければならない。
【0010】
これは、様々な研究所に関係する眼科製造所データを含むデータベースを眼用レンズ計算機において使用することにより達成され得る。しかし、いくつかの眼科製造所データは入手又は更新されないことがあり、これは、不正確に計算された製造工程データに基づき製造工程を行う結果をもたらし得る。
【0011】
同様に、各眼科製造所は、様々なレンズ設計者により計算された製造工程データに基づき製造工程を行うように適応しなければならない。特に、いくつかのレンズ設計者用計算機は、単一計算で眼用レンズを製造するために必要なすべての情報(光学的情報及び製造情報)を計算するように構成され、一方、他のレンズ設計者用計算機は主に光学的計算に焦点を合わせ、いかに設計製品を製造するかにはそれほど焦点を合わせない。
【0012】
第2に、製造工程データは製造工程の開始に先立って計算されるので、製造工程中に製造工程データの一部を再計算することができない、例えば測定された工程データに基づき製造工程データを更新することができない。このことは、精度の欠如となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一目的は、上記欠点を提示しないブロッキング計算モジュールを提供することである。
【0014】
この目的を達成するために、本発明は、ブロッキングステーションのブロッキング素子上の眼用レンズ部材のブロッキングデータを計算するように構成されたブロッキング計算モジュールであって、
− 遠隔装置から入力データを受信するように構成された受信手段であって、入力データは眼用レンズ部材に関係する光学データを含み、光学データはブロッキング素子上に配置される眼用レンズ部材の面を表す幾何学的データを含む、受信手段と、
− 入力データからブロッキングデータを計算するように構成された計算手段であって、ブロッキングデータはブロッキング素子上の眼用レンズ部材の位置に関係するデータを含む、計算手段と、
− ブロッキングデータがブロッキングステーションに利用可能にされるように構成された送信手段とを含む
ブロッキング計算モジュールを提案する。
【0015】
本発明の実施形態によると、ブロッキング素子はブロッキングリングを含み、ブロッキング計算モジュールは、所定の一組の利用可能なブロッキングリングの中から、使用されるブロッキングリングを選択するように構成されたブロッキングリング選択手段を含む。本発明のこの実施形態によると、計算手段は、入力データと選択されたブロッキングリングからブロッキングデータを計算するように構成される。
【0016】
計算手段はさらに、ブロッキングデータから、ポストブロッキング製造計算(post−blocking manufacturing calculation)に使用される製造データを計算するように構成され得る。この場合、送信手段は、製造データがポストブロッキング製造計算システムに利用可能にされるように構成される。
【0017】
ポストブロッキング製造計算は例えば、表面仕上げ計算、研磨計算、及び/又はマーキング計算を含み得る。
【0018】
計算されたブロッキングデータはさらに、ブロッキング工程中に使用されるブロッキング材料量に関係するデータを含み得る。
【0019】
ブロッキング計算モジュールはさらに、所定の一組の利用可能ブロッキング基準素子の中から、計算ブロッキング材料量で使用されるブロッキング基準素子を選択するように構成されたブロッキング基準素子選定手段を含み得る。
【0020】
本発明の実施形態によると、送信手段はさらに、選択されたブロッキングリングと選択されたブロッキング基準素子とに関係するデータを管理エンティティへ送信するように構成される。
【0021】
ブロッキングデータは、ブロッキング位置データ、ブロッキング方位データ、枠組み(cribbing)位置データ、ブロッキング軸データ、リング選択データ、ブロッキング基準素子選択データ、プリズム管理データ、及び/又は装置能力関係データを含む構成データから計算され得る。
【0022】
本発明の実施形態によると、ブロッキング計算モジュールは、ユーザが構成データを設定できるよう構成された人間−コンピュータインタフェースを含む。
【0023】
本発明の別の実施形態によると、入力データは構成データを含む。
【0024】
本発明はさらに、ブロッキングステーションのブロッキング素子上の眼用レンズ部材のブロッキングデータを計算するブロッキング計算方法であって、
− 入力データを遠隔装置から受信する受信工程であって、入力データは眼用レンズ部材に関係する光学データを含み、光学データはブロッキング素子上に配置される眼用レンズ部材の表面を表す幾何学的データを含む、受信工程と、
− 入力データからブロッキングデータを計算する計算工程であって、ブロッキングデータはブロッキング素子上の眼用レンズ部材の位置に関係するデータを含む、計算工程と、
− ブロッキングデータがブロッキングステーションに利用可能にされる送信工程とを含む
方法を提案する。
【0025】
入力データは計算データ及び/又は測定データを含み得る。
【0026】
本方法はさらに、管理エンティティから受信された更新入力データからブロッキングデータを再計算する第2の計算工程を含み得る。
【0027】
本発明はさらに、プロセッサへアクセス可能である1つ又は複数の格納された一連の命令を含むコンピュータプログラム製品であって、プロセッサにより実行されるとプロセッサに本方法の工程を実行させるコンピュータプログラム製品を提案する。
【0028】
本発明はさらに、コンピュータプログラム製品の1つ又は複数の一連の命令を担持するコンピュータ可読媒体を提案する。
【0029】
特記しない限り、以下の論述から明らかなように、本明細書論述を通じて、「計算する(computing又はcalculating)」、「生成する」などの用語を利用することは、コンピュータ若しくは計算システム若しくは同様な電子計算装置の動作並びに/又は処理であって、計算システムのレジスタ及び/若しくはメモリ内の物理的(電子的など)量で表されたデータを操作する及び/若しくは計算システムのメモリ、レジスタ若しくは他のこのような情報格納、送信若しくは表示装置内の物理量として同様に表された他のデータへ変換する、動作並びに/又は処理を指すということが理解される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態は本明細書における動作を行う装置を含み得る。この装置は、所望の目的のために特に構築され得る、及び/又はコンピュータ内に格納されたコンピュータプログラムにより選択的に活性化又は再構成される汎用コンピュータ又はディジタル信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)を含み得る。このようなコンピュータプログラムは、限定しないが、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、読み出し専用メモリ(ROM:read−only memories)、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memories)、電気的プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM:electrically programmable read−only memories)、電気的消去可能及びプログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM:electrically erasable and programmable read only memories)、磁気又は光カード、又は電子的命令を格納するのに好適でありかつコンピュータシステムバスに結合できる任意の他のタイプの媒体を含む任意のタイプのディスクなどのコンピュータ可読記憶媒体内に格納され得る。
【0031】
本明細書に提示される処理と表示は、いかなる特定のコンピュータ又は他の装置にも本質的には関連付けられない。様々な汎用システムが本明細書の教示に従ってプログラムと共に使用され得る、又は様々な汎用システムは所望の方法を実行するようにより専用化された装置を構築するのに好都合であるということが分かる場合もある。多種多様のこれらのシステムの所望の構造は以下の説明から分かる。加えて、本発明の実施形態はいかなる特定のプログラミング言語も参照して記述されない。本明細書に記載される本発明の教示を実施するために様々なプログラミング言語が使用され得るということが理解される。
【0032】
次に本発明の非限定的実施形態について添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態によるブロッキング計算モジュールの機能図である。
【
図2】本発明の実施形態によるブロッキングリング上に配置された面を有する光学レンズ部材の断面図である。
【
図3】ブロッキングステーション上の光学レンズ部材の概略図である。
【
図4】
図1のブロッキング計算モジュールを含むレンズ提供システムの機能図である。
【
図5】本発明の実施形態によるブロッキング計算方法の工程を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態によるブロッキング計算方法のブロッキングデータ計算工程の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付図面内の素子は簡略化と明確化のために示されており、必ずしも原寸に比例して描かれていない。例えば、図面内の素子のいくつかの寸法は、本発明の実施形態の理解を深めるのを支援するために他の素子に対して誇張されることがある。
【0035】
図1に、本発明の一実施形態によるブロッキング計算モジュール1を示す。
【0036】
ブロッキング計算モジュール1は、ブロッキングステーション4(
図3)のブロッキング素子3上の眼用レンズ部材2(
図2)のブロッキングデータを計算するように構成される。
【0037】
本発明との関連において、用語「眼用レンズ部材」は、レンズブランク(lens blank)、未切断レンズ、又は半製品レンズを指し得る。
【0038】
ブロッキング計算モジュール1は製造側へ関連付けられる。ブロッキング計算モジュール1は例えば、ブロッキングステーション4を含む眼科製造所に配置され得る。
【0039】
図2に表された本発明の実施形態によると、ブロッキング素子はブロッキングリング3である。眼用レンズ部材ブロッキング工程中に、レンズ部材2の第1の面5がレンズブロッキングリング3上に配置される。
【0040】
本発明の実施形態によると、ブロッキング材料(例えば、合金)が、第1の面5、レンズブロッキングリング3、ブロッキング基準素子7の上面(図示せず)により規定された空洞6内に注がれる。表された実施形態では、ブロッキング基準素子はインサート7である。
【0041】
本発明の別の実施形態によると、ブロッキング材料は、欧州特許第2059367号明細書に開示されるようにレンズ部材2とブロッキング基準素子7との間に真空を生成することにより置換される。
【0042】
所定の一組のブロッキングリング及び/又は所定の一組のブロッキング基準素子が眼科製造所において利用可能となる場合がある。
【0043】
他のタイプのブロッキング素子がブロッキングリングの代わりに使用され得るということに留意されたい。例えば、ブロッキング素子は高分子接着剤であり得る。高分子接着剤上にレンズ部材2を配置するために位置決めアームを使用し得る。
【0044】
図3に示すように、ブロッキングステーション4は、自由位置から、レンズ部材2をレンズブロッキングリング3上の適所に保持するクランプ位置へ移動され得るクランプアーム8を含む。ブロッキングステーション4はまた、ブロッキングリング3上のレンズ部材2の位置決めの像を撮るためのディジタルカメラ9と、ディジタルカメラ9からの像を観察するための画面10とを含み得る。レンズ部材2はまた、ディジタルカメラ9を使用することなくオペレータにより直接観察され得る。オペレータがブロッキングリング3上の所定位置にレンズ部材2を配置すると、光学レンズ2は、クランプアーム8を使用することによりクランプされる。次に、ブロッキング材料が空洞6内に注がれ得る。レンズ部材2を所定位置に配置するように、オペレータは、レンズ部材2の第1の面5上に基準マーキングを視覚化するためにディジタルカメラ9と画面10とを使用する。レンズ部材2の第1の面5上の基準マーキングの像は、画面10上のコンピュータ生成ターゲットと比較される。オペレータは、レンズ部材2の第1の面5の基準マーキングの像とコンピュータ生成ターゲットが重畳するようにレンズ部材2を配置する。
【0045】
モジュール1により計算されたブロッキングデータは、ブロッキングステーション4のブロッキング素子3上の眼用レンズ部材2の位置決めを可能にすることを目的とする。
【0046】
モジュール1は遠隔装置から入力データを受信するように構成された受信手段11を含む。入力データは計算データ及び/又は測定データ含み得る。入力データは眼用レンズ部材2に関係する光学データを含む。光学データはブロッキング素子3上に配置される眼用レンズ部材2の面5を表す幾何学的データを含む。
【0047】
光学データは通常、眼用レンズ設計者に属する眼用レンズ計算機12(
図4)により計算される。光学データは発注書を受けて計算される。
【0048】
発注書は眼用レンズ2の装着者の処方データを少なくとも含む。処方データは、装着者の視力欠陥を矯正するために眼科医により判断された球面度数、円柱度数、円柱軸、加入度、処方プリズムなどの一組の光学的特徴を含む。
【0049】
発注書はさらに、頭/眼球運動調整パラメータ及び/又は眼回転中心などの他の装着者のパラメータを含み得る。
【0050】
幾何学的データは、眼用レンズ2の前面に関係するデータ、眼用レンズ2の後面に関係するデータ、前面と後面の相対位置に関係するデータ、及び/又は眼用レンズ2の形状に関係するデータを含み得る。
【0051】
本発明の実施形態によると、入力データは、矢印F
1により象徴化されるように眼用レンズ計算機12から直接受信される。
【0052】
本発明の別の実施形態によると、眼用レンズ計算機12は、矢印F
2により象徴化されるように計算光学データを管理エンティティ13へ送信する。入力データは次に、矢印F
3により象徴化されるように管理エンティティ13から受信される。
【0053】
図示しない本発明の別の実施形態によると、眼用レンズ計算機12は、モジュール1(例えば、マスター計算モジュール)へ接続された別の装置へ計算光学データを送信し、上記別の装置は入力データをモジュール1へ送信する。
【0054】
眼科製造所が所定の一組の利用可能ブロッキングリングを有する場合、ブロッキング計算モジュール1は所定の一組の利用可能ブロッキングリングの中から使用されるブロッキングリングを選択するように構成されたブロッキングリング選択手段14を含み得る。
【0055】
モジュール1はさらに、入力データからブロッキングデータを計算するように構成された計算手段15を含む。
【0056】
モジュール1がブロッキングリング選択手段14を含む場合、ブロッキングデータは入力データ及び選択されたブロッキングリングから計算され得る。
【0057】
ブロッキングデータはブロッキング素子3上の眼用レンズ部材2の位置に関係するデータを含む。
【0058】
ブロッキング材料を使用しなければならない場合、計算ブロッキングデータはさらに、ブロッキング工程中に使用されるブロッキング材料量に関係するデータを含み得る。ブロッキング材料は合金であり得る。ブロッキング材料量はブロッキング材料厚さを指し得る。
【0059】
眼科製造所が所定の一組のブロッキング基準素子を有する場合、ブロッキング計算モジュール1はさらに、所定の一組の利用可能ブロッキング基準素子の中から、計算されたブロッキング材料量で使用されるブロッキング基準素子を選択するように構成されたブロッキング基準素子選定手段16を含み得る。
【0060】
モジュール1はさらに、ブロッキングデータがブロッキングステーション4に利用可能にされるように構成された送信手段17を含む。
【0061】
ブロッキングデータは、矢印F
4により象徴化されるようにブロッキングデータをブロッキングステーション4へ直接、又は矢印F
5とF
6により象徴化されるように管理エンティティ13を介し、送信することにより利用可能にされ得る。
【0062】
代替案として、ブロッキングデータは、モジュール1内に又はブロッキングステーション4へ接続される別の装置内にブロッキングデータを格納することにより利用可能とされ得る。この代替案では、ブロッキングデータが利用可能であるという指標がブロッキングステーション4へ直接又は管理エンティティ13を介し送信され得る。
【0063】
送信手段17はさらに、選択されたブロッキングリング3と選択されたブロッキング基準素子7とに関係するデータを管理エンティティ13へ送信するように構成され得る。
【0064】
本発明の実施形態によると、ブロッキングデータはさらに、構成データから計算され得る。構成データは、ブロッキング位置データ、ブロッキング方位データ、枠組み(cribbing)位置データ、ブロッキング軸データ、リング選択データ、ブロッキング基準素子選択データ、プリズム管理データ、及び/又は、装置能力関係データを含み得る。
【0065】
ブロッキング位置データは、ブロッキングリング3上のレンズ部材2の少なくとも1つの点のブロッキング位置を指す。ブロッキング方位データはブロッキングリング3に対するレンズ部材2のブロッキング方位を指す。枠組み位置データは枠組みの位置を指す。ブロッキング軸データはブロッキングステーション4のブロッキング軸を指す。リング選択データは予め選択されたリングを指す。ブロッキング基準素子選択データは、予め選択されたブロッキング基準素子、例えば予め選択されたインサートを指す。プリズム管理データはプリズムの管理規則を指す。装置能力関係データは装置の能力及び/又は動作状態に関する情報を指す。
【0066】
構成データは、モジュール1内に設けられた人間−コンピュータインタフェースを使用することによりユーザにより設定され得る。代替案として、構成データは遠隔装置から受信された入力データに含まれ得る。
【0067】
本発明の実施形態によると、計算手段15はさらに、ブロッキングデータから、ポストブロッキング製造計算に使用される製造データを計算するように構成される。
【0068】
ポストブロッキング製造計算は、表面仕上げ計算、研磨計算、及び/又はマーキング計算を含み得る。
【0069】
各装置に関連する製造データは、先行する処理工程への特定の処理工程の依存性のために、時系列で計算されなければならない。例えば、生成、研磨、刻印工程は、どのようにレンズがブロックされたか(例えば、レンズ部材の初期及び最終厚さ、方位)に依存する。これは、処理の残りの工程を計算するためにブロッキングパラメータが最初に計算されなければならないということを意味する。
【0070】
ポストブロッキング製造データが計算されると、送信手段17は、上記製造データがポストブロッキング製造計算システム18に利用可能にされるように構成される。
【0071】
ポストブロッキング製造計算システム18は1つ又はいくつかの製造計算モジュールを含み得る。
【0072】
上記製造データは、矢印F
7により象徴化されるように、製造データを、ポストブロッキング製造計算システム18へ直接、又は矢印F
5とF
8により象徴化されるように管理エンティティ13を介し、送信することにより利用可能にされ得る。
【0073】
代替案として、製造データは、モジュール1内、又はポストブロッキング製造計算システム18へ接続された別の装置内に製造データを格納することにより利用可能にされ得る。この代替案では、製造データが利用可能であるという指標がポストブロッキング製造計算システム18へ送信され得る。
【0074】
上に開示されたブロッキング計算モジュール1は、計算機へ関連付けられる代わりに眼科製造所へ関連付けられる。結局、ブロッキング計算モジュール1は、位置と光学データの源と無関係に眼用レンズ2を製造することができ、任意の製品と任意の処理のすべての製造パラメータをオンザフライで計算することができる。
【0075】
図5は、本発明の一実施形態によるブロッキング計算方法を表す。本方法は、
− 受信工程S1、
− ブロッキングリング選択工程S2、
− ブロッキングデータ計算工程S3、
− ブロッキング基準素子選択工程S4、
− 送信工程S5、及び
− 第2の計算工程S6を含む。
【0076】
受信工程S1中に、入力データが遠隔装置から受信される。入力データは眼用レンズ部材に関係する光学データを含む。光学データは、ブロッキング素子3上に配置される眼用レンズ部材2の面5を表す幾何学的データを含む。
【0077】
入力データは計算データ及び/又は測定データ含み得る。
【0078】
任意選択的ブロッキングリング選択工程S2中に、使用されるブロッキングリングが、眼科製造所において利用可能な一組のブロッキングリングの中から選択される。
【0079】
計算工程S3中に、ブロッキングデータは入力データと選択されたブロッキングリング3とから計算される。ブロッキングデータは、ブロッキングリング3上の眼用レンズ部材2の位置に関係するデータと、任意選択的に、使用されるブロッキング材料量に関係するデータとを含む。
【0080】
任意選択的ブロッキング基準素子選択工程S4中に、所定の一組の利用可能ブロッキング基準素子の中から、使用されるブロッキング基準素子がブロッキング材料量から選択される。
【0081】
送信工程S5中に、ブロッキングデータと選択されたブロッキングリングとブロッキング基準素子はブロッキングステーション4に利用可能にされる。
【0082】
第2の計算工程S6中に、ブロッキングデータは、管理エンティティ13又はブロッキングステーション4から受信された更新入力データから再計算される。更新入力データは例えば、レンズ部材2のブロッキング工程後に測定されたブロック位置誤差データ、測定プリズム偏差、又は測定ブロッキング材料厚み誤差を含んでもよい。したがって、測定データに依存するブロッキングデータは実際の測定データから再計算され得る。したがって、例えば、ブロッキング材料量などのブロック位置に依存するブロッキングデータは実際の位置データから再計算され得る。第2の計算工程S6は計算工程S3と同様であるが、更新入力データに基づき行われる。
【0083】
図6は本発明の一実施形態によるブロッキングデータ計算工程S3を表す。この計算は、欧州優先権番号第12306717.5号に詳細に説明されている。工程S3は、
− 基準系提供動作S31、
− ブロッキングリングデータ提供動作S32、
− 光学レンズ部材面データ提供動作S33、
− 位置パラメータ提供動作S34、
− 初期位置判定動作S35、
− 再位置決め動作S36、及び
− 高度測定動作S37を含む。
【0084】
基準系提供動作S31中に、基準系が提供される。基準系は、互いに及び主軸Zに対し垂直な2つの軸X、Yにより定義された主面に対して垂直な主軸Zを含む。
【0085】
ブロッキングリングデータ提供動作S32中に、ブロッキングリングデータが提供される。ブロッキングリングデータは、基準系内の、軸受けゾーン(bearing zone)の複数の、少なくとも3つの、点を表す。
【0086】
光学レンズ部材面データ提供動作S33中に、光学レンズ部材面5に関係するデータが提供される。光学レンズ部材面データは、基準系内の、ブロッキングリング3上に配置される光学レンズ部材2の面5を表す。
【0087】
位置パラメータ提供動作S34中に、位置パラメータが提供される。位置パラメータは、基準点に配置された面の主軸Zを中心とする、基準系の主面X−Yと方位に対して配置された面5の基準点の位置を定義する。
【0088】
初期位置判定動作S35中に、光学レンズ部材2の配置面5の位置が位置パラメータに従って判断される。
【0089】
再位置決め動作S36中に、配置面5は、主軸Zに沿って事実上平行移動され、初期位置から2つの垂直軸X、Yを中心として回転され仮想位置に設定される。
【0090】
高度測定動作S37中に、ブロッキングリングデータの点のそれぞれと前記仮想位置における光学レンズ部材2の配置面5との間の主軸Zに沿った位置の差異が判断される。
【0091】
再位置決め動作S36と高度測定動作S37は、ブロッキングリングデータの点と光学レンズ部材2の配置面5との間の主軸Zに沿った位置の差異を最小化するように繰り返される。ブロッキングリングデータの点毎にこの繰り返しを課すことにより、光学レンズ部材2の相補的位置パラメータを判断するための、光学レンズ部材2の配置面5を有する主軸Zに沿った位置の距離は零以上となる。
【0092】
単に一例として記載された先の例示的実施形態であって、もっぱら添付の特許請求の範囲により判断される本発明の範囲を限定するように意図されていない先の例示的実施形態を参照することにより当業者は多くの別の修正形態と変形形態を認識することになる。
【0093】
特許請求の範囲において、用語「含む」は他の素子又は工程を排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除しない。異なる特徴が相互に異なる従属請求項で列挙されるという単純な事実は、これらの特徴の組み合わせが有利には使用され得ないということを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。