特許第6560680号(P6560680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6560680MRIシステム用電磁干渉シールドコイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560680
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】MRIシステム用電磁干渉シールドコイル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20190805BHJP
   G01R 33/3815 20060101ALI20190805BHJP
   G01R 33/387 20060101ALI20190805BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   A61B5/055 331
   A61B5/055 332
   A61B5/055ZAA
   G01R33/3815
   G01R33/387
   G01N24/08 520Y
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-541663(P2016-541663)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-502751(P2017-502751A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014070834
(87)【国際公開番号】WO2015100103
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月13日
(31)【優先権主張番号】201310717957.3
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジェンユ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,イシュン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイヴンス,ティモシー・ジョン
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−060510(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0061361(US,A1)
【文献】 特開昭59−158505(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0171520(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0114997(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0208733(US,A1)
【文献】 特開平02−260403(JP,A)
【文献】 特開昭59−018618(JP,A)
【文献】 特開2001−099904(JP,A)
【文献】 特開2004−273568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20−33/58
G01N 24/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージングの磁場発生アセンブリで用いるための磁場調整システムであって、
磁気共鳴イメージングが必要とする第1の磁場を発生させるための第1磁場発生アセンブリであって、電磁干渉シールド磁場を発生させるために使用される第1の磁場発生アセンブリと、
スイッチおよび電流分岐線を含む追加のアセンブリであって、前記第1磁場発生アセンブリと協働して、前記磁気共鳴イメージングが必要とする第2の磁場を発生させる追加のアセンブリとを備え
前記第1磁場発生アセンブリが、順に直列に接続されている第1サブコイル(C1)、第2サブコイル(C2)、第3サブコイル(C3)、および第4サブコイル(C4)、ならびに第1スイッチ(S1)を備え、
前記追加のアセンブリが、第2スイッチ(S2)、第3スイッチ(S3)、第1接続分岐線(L1)、および第2接続分岐線(L2)を備え、
前記第1サブコイル(C1)、前記第1接続分岐線(L1)、および前記第1スイッチ(S1)を含む第1ループ(i1)を形成し、前記第2サブコイル(C2)、前記第3サブコイル(C3)、前記第1接続分岐線(L1)、前記第2接続分岐線(L2)、および前記第2スイッチ(S2)を含む第2ループ(i2)を形成し、かつ前記第2接続分岐線(L2)、前記第4サブコイル(C4)、および前記第2スイッチ(S3)を含む第3ループ(i3)を形成するために、前記第1接続分岐線(L1)の一端が、前記第1サブコイル(C1)と前記第2サブコイル(C2)とが互いに接続する場所である一方の極に接続され、前記第1接続分岐線(L1)の他端が、前記第1スイッチ(S1)と前記第2スイッチ(S2)とが互いに接続する場所である一方の極に接続されており、前記第2接続分岐線(L2)の一端が、前記第3サブコイル(C3)と前記第4サブコイル(C4)とが互いに接続する場所である一方の極に接続され、前記第2接続分岐線(L2)の前記第2スイッチ(S2)と前記第2スイッチ(S3)とが互いに接続する場所である一方の極に接続されている磁場調整システム。
【請求項2】
記第1磁場発生アセンブリおよび前記追加のアセンブリが協働して、一様な磁場を発生させる、請求項1に記載の磁場調整システム。
【請求項3】
前記第1ループ(i1)および前記第3ループ(i3)内の電流は、大きさが同一であり、方向が反対である、請求項1又は2に記載の磁場調整システム。
【請求項4】
前記第1のサブコイル、前記第2のサブコイル、前記第3のサブコイル、および前記第4のサブコイルが超伝導コイルである、請求項1又は2に記載の磁場調整システム。
【請求項5】
磁気共鳴イメージングの磁場発生アセンブリで用いるための磁場調整方法であって、
磁気共鳴イメージングが必要とする第1の磁場を発生させるように第1磁場発生アセンブリを配置することであって、電磁干渉シールド磁場を発生させるために使用される第1の磁場発生アセンブリを配置することと、
前記第1磁場発生アセンブリと協働して、磁気共鳴イメージングが必要とする第2の磁場を発生させるために、スイッチおよび電流分岐線を含む追加のアセンブリを配置することとを含み、
前記第1磁場発生アセンブリが、順に直列に接続されている第1サブコイル(C1)、第2サブコイル(C2)、第3サブコイル(C3)、および第4サブコイル(C4)、ならびに第1スイッチ(S1)を含むように配置されており、
前記追加のアセンブリが、第2スイッチ(S2)、第3スイッチ(S3)、第1接続分岐線、および第2接続分岐線(L2)を含むように配置されており、
前記第1サブコイル(C1)、前記第1接続分岐線(L1)、および前記第1スイッチ(S1)を含む第1ループ(i1)を形成し、前記第2サブコイル(C2)、前記第3サブコイル(C3)、前記第1接続分岐線(L1)、前記第2接続分岐線(L2)、および前記第2スイッチ(S2)を含む第2ループ(i2)を形成し、かつ前記第2接続分岐線(L2)、前記第4サブコイル(C4)、および前記第2スイッチ(S3)を含む第3ループ(i3)を形成するために、前記第1接続分岐線(L1)の一端が、前記第1サブコイル(C1)と前記第2サブコイル(C2)とが互いに接続する場所である一方の極に接続され、前記第1接続分岐線(L1)の他端が、前記第1スイッチ(S1)と前記第2スイッチ(S2)とが互いに接続する場所である一方の極に接続されており、前記第2接続分岐線(L2)の一端が、前記第3サブコイル(C3)と前記第4サブコイル(C4)とが互いに接続する場所である一方の極に接続され、前記第2接続分岐線(L2)の前記第2スイッチ(S2)と前記第2スイッチ(S3)とが互いに接続する場所である一方の極に接続されている磁場調整方法。
【請求項6】
記第1磁場発生アセンブリおよび前記追加のアセンブリが協働して、一様な磁場を発生させる、請求項に記載の磁場調整システム。
【請求項7】
前記第1ループ(i1)および前記第3ループ(i3)内の電流は、大きさが同一であり、方向が反対である、請求項5又は6に記載の磁場調整方法。
【請求項8】
前記第1のサブコイル、前記第2のサブコイル、前記第3のサブコイル、および前記第4のサブコイルが超伝導コイルである、請求項5又は6に記載の磁場調整方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の磁場調整システムを備える磁気共鳴イメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)の技術分野に関し、特にMRI磁石アセンブリに有用な磁場調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MRI(磁気共鳴イメージング)における超伝導磁石は、異なる機能を実行するために超伝導コイル群を採用している。例えば、通常、1次コイルと呼ばれる超伝導コイルのグループは、静的、かつ空間的に均一な磁場(B0磁場)を発生させるために用いられる。通常、シムコイルと呼ばれる超伝導コイルのグループは、特定の磁場成分を発生させることによって、磁場の均一度に関する厳しい要求を満たす。通常、EMI(電磁干渉)シールドコイルまたはB0コイルと呼ばれる超伝導コイルのグループは、磁場を低周波EMI(移動用リフトや車近傍等)から保護するために用いられる。
【0003】
上記コイルは、すべて独立してそれぞれ設定されている機能を実行するものであり、各コイルグループは、1つの機能のみを実行する。したがって、スイッチおよび関節のような、そのように独立したアセンブリが、各コイルグループに必要であり、超伝導磁石内の空間を占有する必要がある。
【0004】
シムコイルが用いられない場合、多数のパッシブシムが、通常、均一度に関する要求を満たさなければならない。そのため、高挿入力(特別な工具を必要とする)、高B0ドリフト(補償のために長期間の較正を必要とする)、および特に3Tシステムにおける高価なシミングプロセス(労力および材料の両方を含む)等の困難なことにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第2007/114997号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の一実施形態は、MRIの磁場発生アセンブリで用いるための磁場調整システムを提供する。磁場調整システムは、第1磁場発生アセンブリおよび追加のアセンブリを備えている。第1磁場発生アセンブリは、MRIにより必要とされる第1磁場を発生させるために用いられ、前記スイッチおよび電流分岐線を含む追加のアセンブリは、第1磁場発生アセンブリと協働して、MRIが必要とする第2磁場を発生させるのに有用である。
【0007】
本発明の別の実施形態は、MRIの磁場発生アセンブリで用いるための磁場調整方法を提供する。磁場調整方法は、MRIが必要とする第1磁場を発生させるように第1磁場発生アセンブリを配置することと、MRIが必要とする第2磁場を発生させる第1磁場発生アセンブリと協働するために、スイッチおよび電流分岐線を含む追加のアセンブリを配置することとを含む。
【0008】
本開示を完全に理解するために、本発明の実施形態は、以下の添付図面を参照し、以下詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】様々な実施形態に従って形成された例示的なイメージングシステムの概略ブロック図である。
図2】従来技術によるEMIシールドコイルを示す概略図である。
図3】従来技術によるシムコイルを示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係るEMIシールドコイルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための具体的な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0011】
本明細書に記載した磁場調整システムの様々な実施形態は、図1に示すイメージングシステム10等の医用イメージングシステムの一部として提供することができ、医用イメージングシステムと共に用いられるように提供することもできる。イメージングシステム10をシングルモダリティイメージングシステムとして示しているが、様々な実施形態はマルチモダリティイメージングシステムに実現することもできるし、マルチモダリティイメージングシステムを用いて実現することもできることを理解されたい。例えば、イメージングシステム10はMRIイメージングシステムとして図示され、異なる種類の医用画像診断システムと組み合わせることができる。異なる種類の医用画像診断システムは、コンピュータ断層撮影(CT)システム、陽電子放射断層撮影(PET)システム、単一光子放射断層撮影(SPECT)、および超音波システム、または(特に人体の)画像を生成することができる任意の他のシステム等である。さらに、様々な実施形態は、被検体を撮像するための医用イメージングシステムに限定されるものではなく、人体以外の対象、獣医学システムや手荷物等を撮像するための非医用システムが含まれ得る。
【0012】
例示的な実施形態では、イメージングシステム10は、超伝導磁石12を含む超伝導磁石アセンブリ11を備えている。超伝導磁石12は、磁石コイル支持構造によって支持された複数の磁気コイルで形成されており、1次コイル、EMIシールドコイル、シムコイル等を備えている。一実施形態では、超伝導磁石アセンブリ11はさらに、熱シールド13を含んでもよい。超真空容器15によって囲まれたヘリウム容器14が、熱シールド13によって囲まれている。上述したヘリウム容器14、熱シールド13、および外側真空容器15は、共にクライオスタット17を形成している。動作中、容器14には、液体ヘリウムが充填され、超伝導磁石12のコイルを冷却する。液体ヘリウム容器14と外側真空容器15との間の空間に断熱材(図示せず)を提供することができる。イメージングシステム10はさらに、1次勾配コイル18、シールド勾配コイル19、およびRF送信コイル20を備えている。典型的には、イメージングシステム10はさらに、コントローラ30、1次磁場制御部32、勾配磁場制御部34、メモリ36、表示装置38、送受信(T−R)スイッチ40、RF送信器42、および受信器44を備えている。
【0013】
動作中に、例えば、患者(図示せず)、人体模型等の対象の体は、適当な支持体、例えば、電動テーブル(図示せず)、またはその他の、患者に特定のテーブル上に載置され、ボア46内に配置される。超伝導磁石12は、ボア46全体に均一で静的な1次磁場Bを発生させる。コントローラ30は、ボア46内の電磁場の強度を制御し、それに対応して1次磁場制御部32を介して患者内の電磁場の強度を制御する。1次磁場制御部32はさらに、超伝導磁石12への励磁電流の供給を制御する。
【0014】
1以上の勾配コイル素子を含むことができる1次勾配コイル18は、3つの直交する方向x,y,zのいずれか1以上において、ボア46内の磁場B0に磁場勾配を与えることができるように設けられている。1次勾配コイル18は、勾配磁場制御部34によって励起され、コントローラ30によって制御される。
【0015】
シールド勾配コイル19は、シールドコイル13の外側領域において1次勾配コイル18によって発生した磁場に対抗する磁場を発生させ、それによって熱シールド等の導電性部材との相互インダクタンスを低減し、複合渦電流を低減する。
【0016】
複数のコイル(例えば、共鳴表面コイル)を含み得るRF送信コイル20は、磁気パルスを送信するために設けられている。付加的に、または代替的に、収容コイル素子がさらに設けられている場合には、RF送信コイル2は、任意選択的に、患者からのMR信号を同時に検出するようにしてもよい。RF送信コイル20および(提供されている場合には)受信表面コイルは、任意選択的に、T−Rスイッチ40を介してRF送信器42と受信器44のうち一方に相互接続することができる。RF送信器42およびT−Rスイッチ40は、RF磁場パルスまたは信号がRF送信器42によって発生し、選択的に、患者に磁気共鳴を励起するために患者に印加されるように、コントローラ30によって制御される。
【0017】
RFパルスの印加後、T−Rスイッチ40を再度作動させてRF送信コイル20をRF送信器42から切り離す。検出されたMR信号は、こうしてコントローラ30に送信される。コントローラ30は、MR信号の処理を制御して患者の画像を表す信号を発生させるプロセッサ48を含む。画像を表す処理された信号は、さらに表示装置38に送信され、画像の視覚的表示を提供する。具体的には、K空間を充填する、または形成するMR信号が、フーリエ変換されて可視画像を得る。その後、画像を表す処理された信号は、表示装置38に送信される。
【0018】
図2は、従来技術によるEMIシールドコイルを示す概略図である。超伝導磁石12の一部に属し、かつ一般的に、比較的小さな電流(<50A)のみを流すB0コイルは、小さな超伝導コイルによって実現される。B0コイルは、磁石内の異なる位置に巻線された4つサブコイルC1,C2,C3,C4を備える。4つのサブコイルは、直列に接続されて、スイッチS1を有する閉ループを形成している。これらサブコイルの配置および形状を慎重に選択して、特定の相互結合を達成する。EMIが発生すると、適切な(図2に示すように時計方向の)電流がB0コイル内に誘導され、有効視野(FOV)だけに、元々のEMI干渉の3%未満がかかる。元々のEMI干渉の3%未満は、現在のMRI産業におけるイメージング用途において許容される。
【0019】
図3は、従来技術によるシムコイルを示す概略図である。シムコイルは、超伝導磁石12の一部に属し、2つの空間的に交差する閉ループを有している。一方のループであるループZ1は、コイルZ1−1およびZ1−2、ならびにスイッチS1を含む。他方のループであるループZ2は、コイルZ2−1、Z2−2、Z2−3、およびZ2−4、ならびにスイッチS2を含む。2つのループの電流は、スイッチS1およびS2を介して別々に制御することができる。図示されているように、ループZ1およびZ2を流れる電流の方向はいずれも時計回りである。ループZ1では、コイルZ1−1およびZ1−2を流れる電流の方向が逆(すなわち、同じ軸線方向から見ると、コイルZ1−1およびZ1−2を流れる電流の方向の一方は時計回りであり、他方は反時計回り)である。ループZ2では、コイルZ1−1、Z2−2、Z2−3およびZ2−4を流れる電流の方向は、同じ方向(すなわち、同じ軸線方向から見ると、コイルZ1−1、Z1−2、Z1−3、およびZ1−4を流れる電流の方向は、すべて時計回り、または反時計回り)である。
【0020】
図4は、本発明の一実施形態に係るEMIシールドコイルを示す概略図である。4つサブコイルが閉じた電流ループを形成する従来のEMIシールドコイルを用いる代わりに、本発明者らは、図4に示すような3つのローカル電流ループを形成するために、図1に示す従来のEMIシールドコイル回路に、新たな分岐をスイッチと共に導入する。EMIシールドコイルは、順に直列に接続されている第1サブコイルC1、第2サブコイルC2、第3サブコイルC3、および第4サブコイルC4と、第1スイッチS1、第2スイッチS2、および第3スイッチS3と、さらに第1接続分岐線L1および第2接続分岐線L2とを備えている。第1接続分岐線L1の一端Aは、第1サブコイルC1および第2サブコイルC2の各々の、一方の極に接続され、他端Bは、スイッチS1、S2の各々の、一方の極に接続されている。第2接続分岐線L2の一端Cは、第3サブコイルC3および第4サブコイルC4の各々の、一方の極に接続され、他端Dは、スイッチS2およびスイッチS3の各々の、一方の極に接続されている。第1接続分岐線L1と第1サブコイルC1は、第1電流ループi1を形成し第2サブコイルC2、第3サブコイルC3、第1接続分岐線L1、および第2接続分岐線L2は、第2電流ループi2を形成し、第4サブコイルC4および第2接続分岐線L2が、第3電流ループi3を形成している。第1スイッチS1は、第1電流ループi1の電流を制御し、第2スイッチは、第2電流ループi2の電流を制御し、第3スイッチは、第3電流ループi3の電流を制御する。
【0021】
上記の配置により、第1に、EMIシールド能力は依然として保持されることは明らかである。これは、EMI誘導電流が純誘導性であるためである。このことは、超伝導コイルの特性により決定されるが、相互接続が適切に行われている限り、シールド効果を得ることができる。次に、新たに導入された接続分岐線とスイッチによって、3つ電流ループi1,i2,i3の電流は独立して調整することができる。例えば、i1,i3を流れる電流の大きさは同一であるが、方向が逆の場合、電流は、Z軸(図1に示すようZ軸方向、すなわち、ボア内の人体の長手方向であり、1次磁場方向でもある)に沿った線形磁場(奇数次高調波)を発生させることができる。一方、i2を流れる電流は、Z軸に沿った2次磁場(偶数次高調波)を発生させるために用いることができる。つまり、EMIシールド機能を実行するために、すべてのコイルが協働してシールド効果を提供する。また、シミング機能を実行するために、各コイルが独立して動作して、軸方向の偶数次または奇数次高調波を処理する。
【0022】
以上のように、本発明の一実施形態によってEMIシールドコイルを用いることは、EMIシールド機能を保持するだけでなく、軸方向の偶数次高調波および奇数次高調波を補償するシム補正コイルとして機能することができる。理論的な解析は、独立した補正コイルと比較して、上記二重機能が、本発明によるEMIシールドコイルの非常に低コストの設計で実現することができることを示している。本EMIシールドコイルによって実現されるシミング能力は、必ずしも独立した補正コイルと同じくらい強力なわけではないが、いくつかの完全に受動型のシミング調整システムにおいては、パッシブシムの数を小さくし、それによって高価なシミング工程を簡素化することを可能にするという大きな利点を有する。
【0023】
本開示では、単数形の表現は、単数または2以上の複数を含む。「または」、「もしくは」という用語は、特に指定がない限り、非排他的であることを示すために用いられる。用語「第1」、「第2」、「第3」等は、単にタグとして用いられ、対象物の量や順序の要件を設定するものではない。
【0024】
いくつかの実施形態が本明細書で説明され、図示されているが、当業者であれば、機能を実行し、および/または結果を得、および/または1以上の利点を得るための様々な他の装置および/または構造に容易に想到するものであり、そのような変更および/または修正は、本開示の実施形態の範囲内に入ると考えられることを理解すべきである。当業者であれば、本明細書で説明した特定の実施形態の多くの同等物を認識することができるはずであり、またはルーチン検査のみによって決定することができる。したがって、上記の実施形態は、例示のためだけに提示されるものであり、特定の説明および要件に加えて、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、開示された実施形態を実施することができることを理解すべきである。本開示の実施形態は、本明細書に記載の個別の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の各々に関する。また、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が、互いに矛盾がない場合には、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の2種以上を任意の組み合わせは、本開示の範囲内に含まれる。
【0025】
さらに、そうでないことが特に指定されない限り、本明細書で要求されるように2以上のステップまたは動作を含む任意の方法において、方法のステップまたは動作の順序は、方法のステップまたは動作が羅列された順序に限定されるものではないことを理解されたい。
【0026】
特許請求の範囲および上記の説明において、「形成する」、「含む」、「運ぶ(carry)」、「関係させる/関係している」、「保持する」、「合成」等のすべての移行表現は、オープンエンドであり、すなわち含んでいるが限定しているわけではないと解釈すべきである。「からなる」および「主に〜からなる」という移行表現のみは、クローズドエンドまたはセミクローズドエンドとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0027】
2 RF送信コイル
10 イメージングシステム
11 超伝導磁石アセンブリ
12 超伝導磁石
13 シールドコイル、熱シールド
14 ヘリウム容器
15 真空容器
17 クライオスタット
18 1次勾配コイル
19 シールド勾配コイル
20 RF送信コイル
30 コントローラ
32 1次磁場制御部
34 勾配磁場制御部
36 メモリ
38 表示装置
40 T−Rスイッチ
42 RF送信器
44 受信器
46 ボア
48 プロセッサ
C1 第1サブコイル
C2 第2サブコイル
C3 第3サブコイル
C4 第4サブコイル
L1 第1接続分岐線
L2 第2接続分岐線
S1 第1スイッチ
S2 第2スイッチ
S3 第3スイッチ
Z1−1 コイル
Z2−1 コイル
図1
図2
図3
図4