【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、この課題は、不織布を製造する方法であって、(a.)基材を提供するステップであり、基材が、少なくともその表面の一部分において通気性であるステップと、(b.)繊維を基材上に送達するように適合された繊維送達デバイスを提供するステップと、(c.)第1の複数の繊維を基材上に送達するステップと、(d.)基材の通気性部分に圧力差を印加するステップであり、圧力差の強さが基材の表面にわたって変わる(varied)、ステップとを含む、方法によって解決される。
【0012】
本発明によれば、基材は、その表面の少なくとも一部分では通気性であり、この方法は、その通気性部分に圧力差を印加するステップを含む。さらに詳細には、この圧力差は、基材上に送達された繊維がその圧力差によって引きつけられるように印加することができる。これにより、繊維を互いに圧縮して、より密な不織布を得ることができる。一方、例えば基材の表面のうち通気性ではない領域では、繊維は圧縮されない。したがって、パディングゾーン(圧縮されていない繊維)および構造強度が高められた領域(圧縮された繊維)を有する不織布を提供することができる。
【0013】
圧力差によって行われる吸引は、凹状の3次元基材で特に有利である。繊維は、普通ならこのような形状の凹状部分をまたぐ傾向があるからである。圧力差により、またいくつかの実施形態では基材の凹状部分に印加されるより大きな圧力差により、繊維が凹状部分に吸い付けられて、基材の形状に沿うようになる。
【0014】
本発明によれば、圧力差は、基材の表面にわたって変えることができる。このようにして、繊維を、不織布にわたって異なる程度まで圧縮することができる。このようにして、不織布の厚さを、局所的に変えることができる。さらに、圧力差を変えることにより、繊維の軌跡に影響を及ぼして、繊維を基材上の特定の位置に誘導することができる。特に、繊維が蓄積して例えばパディング部分を生じることができる凹状領域(または凹部)に、繊維を誘導することができる。
【0015】
基材の通気性を変えることによって、基材は、異なる局所的通気性平均を有する異なる通気性領域を含むことができる。例えば、いくつかの部分は非通気性にし、少なくとも1つの他の部分は通気性にすることもできる。
【0016】
通気性部分は、複数の穴を含むことができる。これにより、例えば基材の表面にわたって穴の密度および/または直径を変えることにより、かなり簡単に通気性を変えることが可能になる。
【0017】
基材は、3次元形状とすることができる。この3次元形状は、凸状表面部分と凹状表面部分の組合せを含む3次元形状とすることができる。この3次元形状は、例えば、靴の靴型、ブラジャーまたはトルソーの形状とすることができる。また、ボールのブラダの形状など、ボール形にすることもできる。この不織布は、服装品、靴、またはスポーツ装具の一部分とすることができる。したがって、この不織布は直接その有用な形状に作成することができるので、不織布の追加成形が不要である。
【0018】
不織布を直接3次元形状上で形成することは、構成要素も3次元形状上に配置することができるので、本発明の文脈では有利である。これにより、例えば不織布を平坦な基材上で形成してから折り曲げて3次元形状にする場合に生じる皺の形成が軽減または回避される。さらに、不織布を3次元形状上で形成する間に不織布に構成要素を組み込むことは、構成要素が剛性であり、したがって例えば射出成形などによってその最終的な3次元形状に直接作製することができるので、有利である。このような実施形態では、構成要素を2次元形状から3次元形状に変形させる追加ステップが不要である。
【0019】
この方法は、構成要素を、少なくとも部分的には基材に送達された第1の複数の繊維上に配置するステップと、構成要素の少なくとも一部分および第1の複数の繊維の少なくとも一部分に第2の複数の繊維を送達するステップとをさらに含むことがある。
【0020】
これにより、構成要素を不織布に直接組み込むことが可能になり、それにより最終的な製品の適合性および快適性が改善される。例えば、構成要素を、剛性または半剛性にして、例えばスチフネスおよび/または支持を不織布に提供することができる。例えば、靴甲部用の不織布には、ヒールカウンタおよび/またはトウカウンタを直接組み込むことができる。構成要素は、発泡体または不織パッドなど、軟らかい構成要素であってもよい。例えば靴では、この構成要素を、足の快適性および保護のための追加のパディングとして使用することもできる。構成要素を不織布に接合する追加の製造ステップは省略することができ、この場合、製造プロセスをスピードアップし、製造コストを節約できる。さらに、構成要素は不織布の内側に一体化されるので、構成要素は、不織布から分離しない可能性がある。その結果として、不織布を使用する最終的な製品または物品は、はるかに耐久性が高くなる。また、構成要素は、縫製または糊などの追加の要素を使用することなく、不織布に一体化し、取り付けることができる。したがって、不織布の繊維と同じ材料で構成された構成要素を備えた単一材料の製品を作成することが容易になる。このような製品は、したがって、リサイクルが容易である。
【0021】
圧力差を変えることにより、第2の層(第2の複数の繊維で構成される)を形成する前に第1の層(第1の複数の繊維で構成される)上で構成要素を維持するのを助けることができる。
【0022】
本発明によれば、圧力差を印加する方法ステップは、少なくとも部分的には第1の複数の繊維を吹き付ける間、および/または少なくとも部分的には第2の複数の繊維を吹き付ける間に、実行することができることに留意されたい。例えば、圧力差は、第1の複数の繊維を吹き付けるときには印加し、第2の複数の繊維を吹き付けるときには印加しないこともできる。別の例では、圧力差は、第2の複数の繊維を吹き付けるときには印加し、第1の複数の繊維を吹き付けるときには印加しないこともできる。さらに別の例では、圧力差は、第1の複数の繊維を吹き付けるとき、および第2の複数の繊維を吹き付けるときに印加することもできる。特に、いくつかの実施形態では、圧力差は、構成要素を第1の複数の繊維上に配置するとき、第2の複数の繊維を吹き付ける前に印加して、構成要素を基材上で適所に維持することもできる。
【0023】
構成要素は、3次元形状を有することができる。これは、3次元に延びる表面を含む。したがって、複雑な3次元不織布を得ることができる。例えば、構成要素は、ヒールカウンタまたはトウカウンタ、あるいはパディング要素の3次元形状を有することができる。
【0024】
繊維送達デバイスは、メルトブローンヘッドとすることができる。メルトブローンプロセスでは、溶融したフィラメントがスピナレットから出、1次気流によって引き出され、渦流によってステープルファイバに分解される。2次気流が、これらの繊維を基材上に送達する。メルトブローは、不織布を作製する非常に効率的なプロセスである。これにより、不織布はメルトブローン不織布となる。
【0025】
構成要素の表面積は、不織布の表面積より小さくすることができ、構成要素は、不織布に埋め込まれるように配置することができる。したがって、構成要素は、不織布の繊維によって完全に封入され、全ての方向に適所に保持される。さらに、構成要素は、不織布の繊維によって、外部からの機械的または化学的(湿気を含む)ストレスから保護される。これは、構成要素が電子構成要素である場合に特に有利であることがある。
【0026】
構成要素は、繊維に取り囲まれるように適合された少なくとも1つの付属物を含むことができる。この付属物により、構成要素が不織布に対して固定されることが保証され、さらに、構成要素が不織布の内部で意図せずに滑ることが回避される。
【0027】
構成要素は、少なくとも1つの開口を含み、開口の内側に吹き付けられた第2の複数の繊維の繊維が、第1の複数の繊維上に送達されるようにすることができる。例えば、構成要素は、ループ状構造を有することができる。このようにして、構成要素は、少なくとも開口の内側の繊維によって適所にしっかりと保持される。
【0028】
構成要素は、繊維によって適所に保持されるような形状を有することができる。特に、構成要素は、第1の複数の繊維および/または第2の複数の繊維の繊維によって適所に保持されるような形状を有することができる。これは、例えば、上述の付属物および/または開口によって実現することができる。
【0029】
構成要素は、テクスチャ付き表面を含むことができる。このようにして、構成要素の表面と接触する繊維は、より良好に構成要素に付着することになる。
【0030】
構成要素の少なくとも1つの表面は、溶融可能層を含むことができる。溶融可能層は、第1の複数の繊維または第2の複数の繊維に対向することがある。したがって、例えばメルトブローンプロセスを使用して繊維を基材上に送達する場合には、繊維は、残留熱をともない構成要素の表面に到達するときに、溶融可能層を溶融または軟化させることができる。これにより、構成要素と繊維の間に強い結合が形成される。別法として、またはこれに加えて、構成要素の少なくとも1つの表面が、接着剤層を含むこともできる。
【0031】
溶融可能層の融点は、構成要素に当たるときの繊維の温度未満とすることができる。このようにして、繊維の熱を使用して、溶融可能層を溶融または軟化させることができる。さらに、これにより、溶融可能層の追加の加熱を省略することができる。
【0032】
一般に、送達された繊維の温度は、送達された繊維が到着している繊維に当たったときに十分に軟らかく/溶融しており、到着している繊維に付着するようになっている。
【0033】
構成要素は、様々な厚さを有することができる。例えば、構成要素は、発泡体または不織布、例えば空気などの流体を封入した気泡またはポケットとすることができる。このようにして、クッション効果または減衰効果を得ることができる。
【0034】
3次元形状は、靴の靴型またはその一部分とすることができる。したがって、この方法は、靴甲部またはその一部分を製造するために使用することができるので有利である。不織布が靴型の3次元輪郭に従う3次元形状に形成されるので、2次元不織布を靴甲部の形状に形成するステップを省略することができる。このような技術は、継ぎ目のない靴甲部を提供し、靴甲部をより早く製造できるように、かつより快適にすることができる。
【0035】
3次元形状は、ボール形にすることができ、不織布は、ボールを構成する層、またはその一部として使用するのに適していることがある。このような層またはその一部は、例えば、ブラダ、カーカス、パディング、パネル、外面などである可能性がある。したがって、ボールのこのような層または一部は、1つのプロセスで、直接3次元形状に製造することができる。例えば複数のパネルの組立てなど、2次元のボール状構成要素を3次元のボール状構成要素に形成する際のよくある困難が回避される。
【0036】
3次元形状は、ボール形にすることができ、不織布は、ボールの外面として使用するのに適していることがある。この場合には、この方法は、不織布を加熱して圧縮するステップをさらに含むことがある。さらに、不織布は、テクスチャ付きにすることもできる。このようなテクスチャにより、最終的なボールの空気力学および把持性を改善することができる。噴霧PUを不織布に塗布して、より耐摩耗性の高い外側層、より吸水性の低い外側層、色つきの外側層などを形成することもできる。
【0037】
本明細書に記載する不織技術によってボールまたはその一部分を作製することの利点は、織物の全ての方向に同じ特徴を得ることができることである。また、ボールの製造では、後にバルブ開口になるものによって基材を保持することができる(基材の支持体が基材に接続する部分には不織布を形成することができないため)。特に、基材は、ボールのブラダとすることができる。別の選択肢は、球形の基材を繊維送達デバイスの下で多くの異なる方向に回転させて、全ての側に不織布が噴霧されるようにすることである。
【0038】
この方法は、繊維送達デバイスに熱可塑性ポリウレタン(TPU)材料を供給するステップをさらに含むことができる。これらの材料は、メルトブローンプロセスによく適している。TPUは、広い処理ウィンドウを有し、そのために扱い易い。TPUは、高い弾性など、優れた機械的性質も有している。TPUは、結晶温度が低いために良好な自己接着性を有し、そのために複数の層の形成がより容易である。TPUは、一般に、例えばサッカーシューズのプレート、ソール、ヒールカウンタなどの靴の製造で使用され、完成した靴のリサイクルをより簡単にしている。この材料は、また、単一材料の製品を作製できるように不織布に一体化される構成要素を作製することにも適している。これらの材料もリサイクル可能であるので、このような製品のリサイクル性が改善される。例えば、ポリプロピレン材料は、幅広い範囲のフィラメントサイズおよびウェブ構造に加工するのに適したミディアムメルト粘性ポリプロピレン(medium melt viscosity polypropylene)とすることができる。
【0039】
メルトブローンヘッドは、複数のノズルを含むことができる。このようにして、単位時間当たりの吹き付けられる繊維の速度、およびメルトブローン繊維を受ける表面を増大させることができ、全体的な工程所要時間を短縮することができる。
【0040】
この方法は、少なくとも第1のノズルに第1の材料を供給するステップと、少なくとも第2のノズルに第2の材料を供給するステップとをさらに含むことができ、ここで、第1の材料と第2の材料は異なる材料である。複数のノズルに異なる材料を供給することによって、場合によっては性質(例えば弾性、色、直径など)が異なることもある異なる材料の繊維の混合物を有する不織布を形成することができる。メルトブローンヘッドと基材の間の相対的な動きに応じて、2種類の材料を混合することも、あるいは2種類の材料がそれぞれ不織布の一部分を形成することもできる。
【0041】
この方法は、第1の材料を第1の持続時間にわたって送達するステップと、第2の材料を第2の持続時間にわたって送達するステップとをさらに含むことができ、ここで、第1の材料と第2の材料は異なる材料である。このようにして、第1の材料の第1の層を作成し、次いで第2の材料で第2の層を作成することができる。繊維の材料が異なることにより、これらの層は、異なる性質を有することができ、それでいて、糊付け、縫製、または溶接を行うことなく互いに接合することができる。
【0042】
この方法は、第1の材料を形状の第1の部分に送達するステップと、第2の材料を形状の第2の部分に送達するステップとをさらに含むことができ、ここで、第1の材料と第2の材料とは異なる材料である。したがって、最終的な不織布は、異なる部分に異なる材料を備えることができる。例えば、靴甲部は、トウおよびヒールには、より堅い材料を含み、靴甲部の残りの部分には、より弾性の高い材料を含むことができる。本発明のプロセスにより、この2つの部分は、糊付け、縫製、または溶接などの追加の取り付け手段を用いなくても互いに結合することができる。特に、一体型のワンピース不織布をこのようにして得ることができ、継ぎを回避することができる。
【0043】
第2の材料を第1の材料からわずかに遅れるだけで送達して、第2の材料が吹き付けられたときには第1の材料がまだ軟らかい状態であるようにして、この2つの材料の間の良好な結合を保証することができる。別法として、またはこれと組み合わせて、吹き付けられたときの第2の材料の温度を、2つの材料が互いに接触するときに第1の材料を軟化または溶融させるのに十分に高く設定することができる。例えば、第1の材料に当たるときの第2の材料の温度は、約60〜70℃とすることができる。
【0044】
この方法は、メルトブローンヘッドの少なくとも1つのノズルに、第1の材料および第2の材料を横に並べた構成で供給するステップをさらに含むことができる。このようにして、多材料繊維を生成することができる。
【0045】
第1の材料を、第1のTPU材料とし、第2の材料を、第2のTPU材料とすることができ、ここで、第1のTPU材料は、第2のTPU材料と異なるグレードを有する。このようにして、繊維同士の非常に良好な結合を実現することができる。同時に、硬度および機械的性質を変えることができる。
【0046】
一般に、繊維を形成するために使用される材料は、硬化(すなわち冷却)後も多少の伸縮性を有するように選択することができる。したがって、伸縮性は、不織布の所望の適用分野に基づいて選択することができる。さらに、本発明により、靴型、特に凸状形状を含む靴型など、複雑な形状を有するものでも、ワンピースの薄い可撓性層の作成が可能になる。実際に、靴型は剛性であり、不織布の内側にあるが、不織布が伸縮して、例えば靴甲部の足首の開口を通して靴型を取り出せるようにすることができるので、靴型が1つまたは複数の凸型形状を呈するときでも、3次元不織布から容易に取り出すことができる。
【0047】
この方法は、第1の複数の繊維または第2の複数の繊維の後で少なくとも第3の複数の繊維を基材上に送達するステップをさらに含むことができ、ここで、第3の複数の繊維の材料は、第1の複数の繊維および/または第2の複数の繊維の材料と異なる材料である。このようにして、これらの層を別個のステップで接合しなくても、多層不織布を得ることができる。第3の複数の繊維は、第1および/または第2の複数の繊維と同じ方向に送達してもよいし、あるいは異なる方向に送達してもよい。
【0048】
この方法は、繊維送達デバイスを基材に対して動かすステップをさらに含むことができる。このようにして、繊維を、異なる位置で、かつ/または異なる距離で、かつ/または異なる方向から、基材に吹き付けることができる。
【0049】
これにより、例えば変化する(異なる)厚さを有するなど、かなり複雑な不織布を製造することが可能になる。基材が3次元形状である場合には、繊維送達デバイスおよび基材をそれに応じて動かすことによって、繊維を基本的に一様に分布させることができる。例えば、繊維を基材のあらゆる部分で3次元形状に直角に当てることができ、これは、3次元形状および繊維送達デバイスの静止配列では不可能である。本発明の文脈における「動き」は、平行移動、回転、およびその両者の組合せを含むものとして理解される。例えば、この相対的な動きは、直線的な平行移動のみであることもあるし、直線的な平行移動と複数の小さな回転の組合せであることもある。特に、回転および平行移動を使用する場合には、回転の頻度が高いと有利である。
【0050】
本発明は、所定の方向に、他の方向よりも高い割合で繊維を配置するステップを含む、不織布を製造する方法も包含する。基材に対する相対的な繊維送達デバイスの動きを使用して、所定の方向に他の方向よりも高い割合で繊維を配置して、異方性の不織布を作製することができる。このステップは、本発明による方法の他のステップと組み合わせてもよいし、組み合わせなくてもよい。特に、これは、本発明が提案するように、構成要素を一体化しなくてもえることができる。一般に、基材と繊維送達デバイスの間の相対速度が高くなるほど、配向された繊維の割合が高くなる。
【0051】
基材は、ロボットアーム上に配置することができる。このようにして、繊維のより良好な分布を実現することができる。例えば、ロボットアームは、一様な繊維の分布を形成するように動かすことができる。別の例では、ロボットアームは、例えば異なる方向への複数回の平行移動と複数回の回転の組合せなど、複雑なパターンをたどることができる。繊維送達デバイスは少なくとも1回は繊維材料の供給を必要とするので、通常は繊維送達デバイスより基板の方が3次元に変位させるのが簡単であるので、繊維送達デバイスではなく基板を変位させると有利である。ロボットアームは、靴型などいくつかの複雑な3次元形状の場合も、その3次元形状を360度回転させることを可能にするので有利である。ロボットアームは、また、不織布の各領域に特定の特徴を与えるように、基材の表面と繊維送達デバイスの間の距離を制御することも可能にする。実際に、繊維送達デバイスとその表面との間の距離は、不織層の構造および/または厚さに影響を及ぼす可能性がある。距離が小さくなるほど、不織層は、密に、かつ/または厚くなる。ロボットアームは、例えば、靴型など複雑な形状でも基材の表面と繊維送達デバイスの間に一定の距離を維持して、その形状全体にわたって不織層の特徴が一貫するようにすることを可能にする。
【0052】
あるいは、またはこれに加えて、繊維送達デバイスを、ロボットアーム上に配置することができる。ただし、いくつかの有利な実施形態では、繊維送達デバイスは固定される。実際に、固定型の繊維送達デバイスの方が、可動の繊維送達デバイスより維持するのが容易であり、安価である。
【0053】
この方法は、気流を使用して繊維送達方向を制御するステップをさらに含むことができる。このようにして、基材に対して繊維送達デバイスを動かさなくても、繊維の吹き付けを制御することができる。例えば、メルトブローンヘッドでは、3次の気流を使用して、繊維の軌跡の方向を制御することができる。
【0054】
この方法は、繊維送達デバイスと基材の間の距離を制御し、かつ/または繊維送達デバイスと基材の間の相対的な動きの速度を制御するステップをさらに含むことができる。このようにして、3次元形状にわたる繊維の分布を制御することができる。基材と繊維送達デバイスの相対的な動きを遅くすれば、より厚く、実施形態によってはより密に繊維を堆積させることができ、またその逆を行うこともできる。
【0055】
繊維の送達中に、繊維の直径を変化させることもできる。したがって、不織布は、繊維の直径が異なる複数の領域を備えることができる。したがって、不織布の特徴(密度、通気性など)を、局所的に変化させることができる。
【0056】
繊維の直径を変化させることは、直径の異なる少なくとも2つの異なるスピナレット穴を使用することを含むことがある。このようにして、繊維の直径を、幅広い直径の範囲にわたって変化させることができる。あるいは、またはこれに加えて、繊維の直径を変化させることは、気流を変化させることを含むこともある。あるいは、またはこれに加えて、第1の部分の繊維は、第1のメルトブローンヘッドから送達し、第2の複数の繊維は、第2のメルトブローンヘッドから送達し、ここで、第1のメルトブローンヘッドの少なくとも1つのノズルは、第2のメルトブローンヘッドの少なくとも1つのノズルより小さい直径を有する。繊維の直径は、手の感触、および不織布の機械的性質に影響を及ぼす。例えば、不織布は、より太い繊維の堅い底部部分と、より良好な手の感触を与える、より細い繊維のより軟らかい頂部層とを有することができる。
【0057】
距離および/または速度は、繊維を基材上に吹き付ける間に変化させることができる。このようにして、不織布は、異なる領域で異なる厚さを備えることができる。例えば、不織布は、第1の領域を第2の領域より厚くすることができる。
【0058】
3次元形状の場合、この形状は、凹状にすることもでき、この方法は、繊維を3次元形状の内面上に送達するステップをさらに含むことができる。この3次元形状は、靴成型型(ネガ靴型など)などの靴の空洞、あるいは本発明による方法、またはその他の任意の利用可能な方法(編成、織込み、または成型など)で作製したアッパー層とすることができる。これにより、靴甲部の内側層を、特に良好な適合をもたらすことができる不織布で作製することができる。内側層は、例えば、中敷および/またはパディングを形成する。
【0059】
第1の層および不織層は、それぞれ異なる機能を保証することができる。例えば、第1の層は、耐水性、または特定の領域での足の支持を保証することができ、不織層は、快適性を保証する中敷にすることができる。このような特徴は、また、所与の材料の層または構成要素と、それと同じ材料の不織構成要素または層とを組み合わせることによって、単一材料(例えばTPU)の靴甲部を作成することも可能にする。これにより、靴のリサイクルが容易になる。
【0060】
一般に、本発明による方法は、繊維を靴型上に吹き付けるか、靴の空洞内に吹き付けるかにかかわらず、底部部分すなわち足の下の部分も含む不織3次元ソックスを作成することを可能にする。この技術は、また、3次元形状上のいくつかの領域に不織布を形成して、パディングを、いくつかの実施形態では靴の他の部分と同じ材料のパディングを作成することも可能にすることがある。また、不織布を複数層で形成することにより、等方性層または異方性層を得ることが可能になることがある。異方性層は、所定の方向に他の方向より高い割合で繊維を配置することによって得ることができる。これは、例えば、繊維送達デバイスを、所定の方向に基材に対して動かすことによって実現することができる。
【0061】
この方法は、基材を少なくとも部分的に基層で覆うステップと、第1の複数の繊維および/または第2の複数の繊維のうちの少なくとも一部分を基層上に送達するステップとをさらに含むことができる。したがって、不織布は、追加の接合ステップなしで、直接基層に結合することができる。例えば、靴甲部の不織布は、撥水膜上に直接形成することができる。基層は、例えば織物または編物などの布とすることができる。あるいは、基層は、例えば革または不織布であってもよい。
【0062】
この方法は、第1の複数の繊維および/または第2の複数の繊維を、基材の第1の領域上に送達するが、第2の領域上には送達しないステップをさらに含むことができる。これにより、切断しなくても、所望の寸法を有する不織布を形成することが可能になる。例えば、靴甲部の不織布は、繊維を靴型の上面のみに送達し、下面には送達しないことによって形成することができる。別の例では、不織布が靴甲部の後方部分用である場合には、繊維を靴型の後方部分に送達し、前方部分には送達しなければよい。本発明により、ヒールカウンタを靴甲部のヒール部分に直接組み込むことができる。
【0063】
あるいは、またはこれに加えて、この方法は、繊維を吹き付ける持続時間を変化させるステップを含むことができる。例えば、繊維を、最初は第1の領域のみに吹き付け、その後、第2の領域のみに吹き付けることもできる。別の例では、繊維を、最初は基材および/または構成要素のほぼ全域に吹き付け、その後、第2の領域のみに吹き付ける(またはその逆を行う)。
【0064】
メッシュのループ、または多孔性材料の孔によって、穴を形成することもできる。例えば、基材は、多孔性の靴型とすることもできる。穴を有する基材は、3D印刷など、付加製造によって得ることができる。
【0065】
圧力差の強さを基材の表面にわたって変えることで、不織布の厚さを局所的に変えることができる。このようにして、変化する(異なる)厚さを有するより複雑な不織布を得ることができる。例えば、靴甲部の不織布は、ヒールの領域を厚くして、この領域にある程度のパディングを形成することもできる。
【0066】
3次元形状は、テクスチャ付きにすることができる。このようにして、不織布に、テクスチャ付きの表面を容易に設けることができる。例えば、サッカーシューズの靴甲部の不織布にテクスチャを設けて、サッカーボールのグリップ性を高めることができる。
【0067】
不織布に適用されるテクスチャは、基材の表面の構造および/または多孔度を選択することによって制御することができる。上述のように圧力差を印可する場合には、圧力差の強さによってテクスチャを制御することもできる。
【0068】
この方法は、不織布が3次元形状上に位置している間に、不織布を覆うように取外し可能膜を配置するステップをさらに含むことができる。これは、基材に圧力差を印可することと組み合わせると、圧力差によって不織布をさらに圧縮することができるので、特に有利である。
【0069】
この方法は、取外し可能膜を配置した後で圧力差を印加するステップをさらに含むことができる。このようにして、不織布を固化することができる。さらに、テクスチャ付きの膜を使用する場合には、不織布に表面テクスチャを設けることができる。
【0070】
この膜は、テクスチャ付きにすることができる。このようにして、不織布に、テクスチャ付きの上面(すなわち基材とは反対側に向く表面)を設けることもできる。テクスチャ付きの基材と組み合わせると、両側にテクスチャを有する不織布を提供することができる。
【0071】
この方法は、不織布に圧力および/または熱を印加するステップをさらに含むことができる。特に、この方法は、不織布が3次元形状上に位置している間に、不織布に圧力および/または熱を印加するステップをさらに含むことができる。このステップは、例えば、膜が不織布を覆うように配置されている間に行うことができる。このようにして、不織布の表面を固化し、かつ/または仕上げることができる。特に、不織布をテクスチャ付きにし、かつ/または圧縮することができる。熱を印加することにより、耐摩耗性、ならびに引張り強さおよび引裂き強さなどのその他の機械的性質も改善される。圧力および/または熱は、局所的にのみ印加する、すなわち不織布の特定の領域のみに印加することもできる。
【0072】
いくつかの実施形態では、圧力および/または熱を不織布に局所的に印加して、不織布の性質を局所的に修正することができる。これにより、例えばいくつかの補強材を局所的に作成することが可能になることもある。
【0073】
2次元不織布上では少なくとも、熱および/または圧力は、カレンダ加工によって印加することができる。
【0074】
一般に、不織布の外面を(熱および/または圧力の印加によって)硬化させることにより、より固い、吸水性が低い、耐摩耗性が良好であるなどの層を作成することができることがある。また、熱および/または圧力の印加によって、不織布の外側にデザインを刻印することもできる。
【0075】
本発明のさらに別の態様は、上述の方法によって製造される不織布に関する。
【0076】
本発明のさらに別の態様は、靴甲部を製造する方法を対象としている。この方法は、上述の方法に従って第1の不織布を製造するステップを含み、ここで、第1の不織布は、靴甲部の一部である。
【0077】
この靴甲部を製造する方法は、上述の方法に従って第2の不織布を製造するステップであり、第2の不織布が、靴甲部の一部である、ステップと、第1の不織布と第2の不織布とを接合するステップとをさらに含むことができる。例えば、靴甲部の異なる部分を、3次元形状を有する靴甲部構成要素の形態で作成し、次いで、例えば熱の印加(例えば溶接)または糊の塗布などによってそれらを組み立てることができる。このような構成要素は、性質の異なる複数の層または構成要素、例えば異なる材料で構成された複数の構成要素、および/または異なる製造方法(例えば編成または織込み)で構成された複数の構成要素に組み付けることもできる。
【0078】
本発明のさらに別の態様は、上述の方法に従って製造される靴甲部に関する。
【0079】
本発明のさらに別の態様は、不織布を製造する方法であって、(a.)基材を提供するステップと、(b.)繊維を基材上に送達するように適合されたメルトブローンヘッドを提供するステップと、(c.)メルトブローンヘッドの少なくとも第1のノズルに第1の材料を供給するステップと、(d.)メルトブローンヘッドの少なくとも第2のノズルに第2の材料を供給するステップであり、第1の材料が第2の材料と異なる、ステップと、(e.)第1の材料および第2の材料を基材上に送達するステップとを含む方法に関する。複数のノズルに異なる材料を供給することにより、場合によっては性質(例えば弾性、色、直径など)が異なることもある異なる材料の繊維の混合物を有する不織布を形成することができる。メルトブローンヘッドと基材の間の相対的な動きに応じて、2種類の材料を混合することも、あるいは2種類の材料がそれぞれ不織層の一部分を形成することもできる。
【0080】
この方法は、第1の材料を第1の持続時間にわたって送達するステップと、第2の材料を第2の持続時間にわたって送達するステップとをさらに含むことができ、ここで、第1の材料と第2の材料は異なる材料である。このようにして、第1の材料の第1の層を作成し、次いで第2の材料で第2の層を作成することができる。繊維の材料が異なることにより、これらの層は、異なる性質を有することができ、それでいて、糊付け、縫製、または溶接を行うことなく互いに接合することができる。
【0081】
この方法は、第1の材料を形状の第1の部分に送達するステップと、第2の材料を形状の第2の部分に送達するステップとをさらに含むことができ、ここで、第1の材料と第2の材料とは異なる材料である。したがって、最終的な不織布は、異なる部分に異なる材料を備えることができる。例えば、靴甲部は、トウおよびヒール領域には、より堅い材料を含み、靴甲部の残りの部分には、より弾性の高い材料を含むことができる。本発明のプロセスにより、この2つの部分は、糊付け、縫製、または溶接などの追加の取り付け手段を用いなくても互いに結合することができる。特に、一体型のワンピース不織布をこのようにして得ることができ、継ぎを回避することができる。
【0082】
第2の材料を第1の材料からわずかに遅れるだけで送達して、第2の材料が吹き付けられたときには第1の材料がまだ軟らかい状態であるようにして、この2つの材料の間の良好な結合を保証することができる。別法として、またはこれと組み合わせて、吹き付けられたときの第2の材料の温度を、2つの材料が互いに接触するときに第1の材料を軟化または溶融させるのに十分に高く設定することができる。例えば、第1の材料に当たるときの第2の材料の温度は、約60〜70℃とすることができる。
【0083】
第1の材料を、第1のTPU材料とし、第2の材料を、第2のTPU材料とすることができ、ここで、第1のTPU材料は、第2のTPU材料と異なるグレードを有する。このようにして、繊維同士の非常に良好な結合を実現することができる。同時に、硬度および機械的性質を変化させることができる。
【0084】
本発明のさらに別の態様は、不織布を製造する方法であって、(a.)基材を提供するステップと、(b.)繊維を基材上に送達するように適合されたメルトブローンヘッドを提供するステップと、(c.)メルトブローンヘッドの少なくとも1つのノズルに第1の材料および第2の材料を横に並べた構成で供給するステップと、(d.)第1の材料および第2の材料を基材上に送達するステップとを含む方法に関する。このようにして、多材料繊維を生成することができる。
【0085】
第1の材料を、第1のTPU材料とし、第2の材料を、第2のTPU材料とすることができ、ここで、第1のTPU材料は、第2のTPU材料と異なるグレードを有する。このようにして、繊維同士の非常に良好な結合を実現することができる。同時に、硬度および機械的性質を変化させることができる。
【0086】
本発明のさらに別の態様は、不織布を製造する方法であって、(a.)基材を提供するステップと、(b.)繊維を基材上に送達するように適合された繊維送達デバイスを提供するステップと、(c.)繊維送達デバイスによって繊維を基材上に送達するステップと、(d.)繊維送達デバイスと基材の間の距離を制御し、かつ/または繊維送達デバイスと基材の間の相対的な動きの速度を制御するステップとを含む方法に関する。このようにして、3次元形状にわたる繊維の分布を制御することができる。基材と繊維送達デバイスの相対的な動きを遅くすれば、より厚く、実施形態によってはより密に繊維を堆積させることができ、またその逆を行うこともできる。
【0087】
繊維送達デバイスと基材の間の距離の制御、および/または繊維送達デバイスと基材の間の相対的な動きの速度の制御は、繊維送達デバイスおよび/または基材を、その経路が予め決定されており、かつ/または制御される、ロボットアームなどのロボットデバイス上に取り付けることによって得ることができる。繊維送達デバイスと基材の間の相対的な動きは、特に、コンピュータプログラムによって制御することができる。
【0088】
繊維の送達中に、繊維の直径を変化させることもできる。したがって、不織布は、繊維の直径が異なる複数の領域を備えることができる。したがって、不織布の特徴(密度、通気性など)を、局所的に変化させることができる。
【0089】
繊維の直径を変化させることは、直径の異なる少なくとも2つの異なるスピナレット穴を使用することを含むことがある。このようにして、繊維の直径を、幅広い直径の範囲にわたって変化させることができる。あるいは、またはこれに加えて、繊維の直径を変化させることは、気流を変化させることを含むこともある。あるいは、またはこれに加えて、第1の部分の繊維は、第1の繊維送達デバイスから送達し、第2の複数の繊維は、第2の繊維送達デバイスから送達し、ここで、第1の部分の繊維は、第2の部分の繊維より小さい平均直径を有する。繊維の直径は、手の感触、および不織布の機械的性質に影響を及ぼす。例えば、不織布は、より太い繊維の堅い底部部分と、より良好な手の感触を与える、より細い繊維のより軟らかい頂部層とを有することができる。
【0090】
3次元形状の場合、この形状は、凹状にすることもでき、この方法は、繊維を3次元形状の内面上に送達するステップをさらに含むことができる。この3次元形状は、靴成型型(ネガ靴型など)などの靴の空洞、あるいは本発明による方法、またはその他の任意の利用可能な方法(編成、織込み、または成型など)で作製したアッパー層とすることができる。これにより、靴甲部の内側層を、特に良好な適合をもたらすことができる不織布で作製することができる。第1の層および不織層は、それぞれ異なる機能を保証することができる。例えば、第1の層は、耐水性、または特定の領域での足の支持を保証することができ、不織層は、快適性を保証する中敷にすることができる。このような特徴は、また、所与の材料の層または構成要素と、それと同じ材料の不織構成要素または層とを組み合わせることによって、単一材料(例えばTPU)の靴甲部を作成することも可能にする。これにより、靴のリサイクルが容易になる。
【0091】
本明細書に記載する本発明の全ての態様によれば、不織布は、衣服の遮音構造の第1の層として使用することができる。遮音構造は、吸音材料を含む少なくとも第1の層と、音を反射する、または拡散する、あるいはその両方を行うように適合された少なくとも第2の層とを含むことができる。特に、不織布の繊維のサイズおよび密度は、対象とする周波数範囲で高い吸音性が得られるように選択することができる。
【0092】
第2の層は、例えば熱および/または圧力を印加するなど、不織布の第1の層の1つの面を後処理することによって得ることができる。第2の層も、不織布に熱および/または圧力を印加することによって得ることができ、次いで、これを第1の層と結合することができる。
【0093】
その上に不織布を形成する基材は、上述のように3次元形状とすることができる。これにより、不織布は、最終的な製品の3次元形状で直接形成することができる。したがって、この不織布は直接その有用な形状に作成することができるので、不織布の追加成形が不要である。この3次元形状は、例えば、頭部、フード、またはポケットなどの形状とすることができる。
【0094】
基材は、テクスチャを有することができる。不織布は、これにより、基材と接触する面にネガテクスチャを取り込む。このようなテクスチャにより、快適性および/または音の拡散を改善することができる。
【0095】
基材は、その表面の少なくとも一部分に複数の穴を含むことができ、この方法は、これらの複数の穴に圧力差を印可して、基材上に送達された繊維が圧力差によって引きつけられるようにするステップをさらに含むことができる。これにより、繊維を圧縮して、より密な不織布を得ることが可能になる。いくつかの実施形態では、また、これにより、音の拡散、吸音、および/または快適性を改善するように表面上にテクスチャを作成することが可能になることがある。特に、幅広アレイの形状を有する基材により、そのアレイの穴の中に繊維が引き込まれて、不織布の内面にパッドハンプ(padded humps)を形成することで、テクスチャを作成することもできる。
【0096】
以下、本発明の態様について、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。