特許第6560883号(P6560883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560883
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2432 20160101AFI20190805BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20190805BHJP
   H01M 8/247 20160101ALI20190805BHJP
   H01M 8/248 20160101ALI20190805BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20190805BHJP
【FI】
   H01M8/2432
   H01M8/0206
   H01M8/247
   H01M8/248
   H01M8/12 101
   H01M8/12 102A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-69290(P2015-69290)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-189286(P2016-189286A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 卓也
(72)【発明者】
【氏名】櫛 拓人
(72)【発明者】
【氏名】波多江 徹
(72)【発明者】
【氏名】朝重 陽介
【審査官】 松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0059661(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/038869(WO,A1)
【文献】 特開2011−060511(JP,A)
【文献】 特開2007−207668(JP,A)
【文献】 特開2005−129514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/2432
H01M 8/0206
H01M 8/12
H01M 8/247
H01M 8/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池セルと、
金属製とされ、前記燃料電池セルの高さ方向両側から前記燃料電池セルに重ね合わされた一対の集電板と、
前記一対の集電板の各々に対する前記燃料電池セルと反対側に各前記集電板と対向して配置された一対の固定板と、
前記一対の固定板を連結し、前記一対の固定板の離間を制限する連結部と、
前記集電板に重ね合わされた第一板状部と、前記固定板に重ね合わされた第二板状部と、前記第一板状部と前記第二板状部とを繋ぐ湾曲部とを有するU字状に形成され、前記集電板と前記固定板との間に介在された反発部材と、
前記第一板状部と前記第二板状部との間に介在された支持部材と、
を備える燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記反発部材は、平板を曲げ加工することによりU字状に形成されている、
請求項1に記載の燃料電池ユニット。
【請求項3】
前記連結部は、前記燃料電池セルの高さ方向を軸方向として延び、
前記集電板及び前記固定板は、前記連結部から該連結部の軸方向と直交する方向に延出され、
前記反発部材は、前記第一板状部及び前記第二板状部の自由端が前記連結部側に位置し前記湾曲部が前記集電板及び前記固定板の延出端側に位置するように配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池ユニット。
【請求項4】
前記連結部は、前記燃料電池セルの高さ方向を軸方向として延び、
前記集電板及び前記固定板は、前記連結部から該連結部の軸方向と直交する方向に延出され、
前記反発部材は、前記湾曲部が前記集電板及び前記固定板の延出方向に沿って延びるように配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池ユニット。
【請求項5】
前記集電板と前記固定板との間には、複数の前記反発部材が介在されている、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池ユニット。
【請求項6】
固体酸化物形燃料電池セルと、
金属製とされ、前記燃料電池セルの高さ方向両側から前記燃料電池セルに重ね合わされた一対の集電板と、
前記一対の集電板の各々に対する前記燃料電池セルと反対側に各前記集電板と対向して配置された一対の固定板と、
前記一対の固定板を連結し、前記一対の固定板の離間を制限する連結部と、
前記集電板と前記固定板との間に介在された反発部材と、
を備え、
前記連結部は、前記燃料電池セルに設けられ、前記燃料電池セルに燃料ガス及び酸化剤ガスを供給するセパレータと、前記セパレータと前記一対の固定板の各々との間に設けられ、前記セパレータ及び前記固定板に接合材により接合された一対のスペーサとによって構成されている、
燃料電池ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池ユニットの製造方法であって、
前記燃料電池ユニットを仮組立する仮組立工程と、
熱可塑性を有する前記接合材が軟化する加熱環境下に、仮組立された前記燃料電池ユニットを配置した状態で、前記一対の固定板の間に圧縮荷重を加えることにより、前記接合材を押し広げると共に、前記反発部材を圧縮変形させる加熱圧縮工程と、
前記加熱圧縮工程において圧縮荷重が加えられたときの前記一対の固定板の間の距離を保った状態で前記接合材を硬化させ、前記接合材により前記一対のスペーサを前記セパレータ及び前記固定板に接合する接合工程と、
を備える燃料電池ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池ユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池ユニットでは、燃料電池セルと集電板とが電気的に導通され、集電板を通じて燃料電池セルからの電流が外部に取り出される。このような燃料電池ユニットでは、一般に、燃料電池セルはセラミックス製とされ、集電板は金属製とされる。
【0003】
ところが、セラミックス製の燃料電池セルと金属製の集電板とでは、異種材料で熱膨張率が異なるため、熱サイクルの過程で密着度が低下(電気的な接触状態が劣化)するという課題がある。
【0004】
そこで、熱膨張差が発生する高温環境下において燃料電池セルと集電板との密着度を確保するために、集電板を燃料電池セルに加圧する機構が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
つまり、特許文献1に記載の例では、セルスタック上に押え板を介して設けられた圧縮バネと、圧縮バネ上に設けられたプレートと、セルスタックの下方に設けられた断熱プレート及び押え板と、上側のプレートと下側の断熱プレート及び押え板とを連結する連結ロッドとを有する加圧機構が用いられている。
【0006】
また、特許文献2に記載の例では、セルスタックを挟持する一対の金属板と、一対の金属板を連結する連結部材とを有する連結機構が用いられている。この連結機構において、連結部材の一端は、上側の金属板に固定され、連結部材の他端は、下側の金属板に形成された係止孔に挿入される。
【0007】
そして、セルスタックの還元時に作用する荷重により連結部材の他端が塑性変形し、連結部材の他端が係止孔に係止される。連結部材の他端が塑性変形される(押し潰される)と連結部材の長さが短くなるので、上側の金属板がセルスタックに押し付けられる。
【0008】
すなわち、特許文献2に記載の例では、セルスタックの発電時における発電温度は、セルスタックの還元時の温度よりも低いため、連結部材は、還元時の温度差と、セルスタックとの熱膨張係数差とに応じた長さだけ収縮する。そして、この連結部材の収縮する方向の応力により上側の金属板が上側の金属板がセルスタックに押し付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−339035号公報
【特許文献2】特開2010−140673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の加圧機構では、セルスタックに対して重厚で大きな圧縮バネ(コイルバネ)が用いられているため、加圧機構を含む燃料電池ユニットが大型化する。
【0011】
また、特許文献2に記載の連結機構では、連結部材の他端を下側の金属板の係止孔に挿入した後に連結部材の他端を塑性変形させるという複雑な構造が採用されており、結果として連結機構を含む燃料電池ユニットが大型化する。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、熱膨張差が発生する高温環境下においても燃料電池セルと集電板との密着度を確保できると共に、小型化できる燃料電池ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の燃料電池ユニットは、固体酸化物形燃料電池セルと、金属製とされ、前記燃料電池セルの高さ方向両側から前記燃料電池セルに重ね合わされた一対の集電板と、前記一対の集電板の各々に対する前記燃料電池セルと反対側に各前記集電板と対向して配置された一対の固定板と、前記一対の固定板を連結し、前記一対の固定板の離間を制限する連結部と、前記集電板と前記固定板との間に介在された反発部材と、を備える。
【0014】
この燃料電池ユニットによれば、集電板と固定板との間には、反発部材が介在されている。そして、燃料電池セルが発電に伴い発熱されて金属製の集電板が熱膨張されると、集電板と固定板との間の隙間が狭くなることで反発部材が押圧され、反発部材から集電板に加圧力(反発力)が作用する。したがって、反発部材から集電板に加圧力が作用することにより、熱膨張差が発生する高温環境下においても燃料電池セルと集電板との密着度を確保することができる。
【0015】
しかも、反発部材は、集電板と固定板との間に介在(内包)されているので、例えば、集電板及び固定板の外部に加圧機構等を設ける場合に比して、燃料電池ユニットを小型化することができる。
【0016】
また、請求項1に記載の燃料電池ユニットは、前記反発部材は、前記集電板に重ね合わされた第一板状部と、前記固定板に重ね合わされた第二板状部と、前記第一板状部と前記第二板状部とを繋ぐ湾曲部とを有するU字状に形成されている
【0017】
この燃料電池ユニットによれば、反発部材は、U字状に形成された簡単な構造であるので、コストダウンすることができる。
【0018】
また、反発部材は、板状の第一板状部及び第二板状部を有しており、この第一板状部及び第二板状部が集電板及び固定板にそれぞれ重ね合わされているので(平面で接触されているので)、燃料電池セルと集電板との密着度を広い範囲に亘って確保することができる。
【0019】
請求項2に記載のように、請求項1に記載の燃料電池ユニットにおいて、前記反発部材は、平板を曲げ加工することによりU字状に形成されても良い。
【0020】
この燃料電池ユニットによれば、反発部材は、平板を曲げ加工することによりU字状に形成されている。したがって、平板の曲げ加工時に湾曲部が加工硬化することにより湾曲部の強度が向上するので、集電板が熱膨張されて反発部材が押圧されたときには、反発部材から集電板に作用する加圧力を高めることができる。これにより、燃料電池セルと集電板との密着度を向上させることができる。
【0021】
また、請求項3に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池ユニットにおいて、前記連結部は、前記燃料電池セルの高さ方向を軸方向として延び、前記集電板及び前記固定板は、前記連結部から該連結部の軸方向と直交する方向に延出され、前記反発部材は、前記第一板状部及び前記第二板状部の自由端が前記連結部側に位置し前記湾曲部が前記集電板及び前記固定板の延出端側に位置するように配置されても良い。
【0022】
この燃料電池ユニットによれば、反発部材は、第一板状部及び第二板状部の自由端が連結部側に位置し湾曲部が集電板及び固定板の延出端側に位置するように配置されている。したがって、集電板の熱膨張に伴い集電板及び固定板の延出端の間の隙間が狭くなる場合でも、反発部材の湾曲部が突っ張ることによって集電板への加圧力を確保することができる。
【0023】

また、請求項4に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池ユニットにおいて、前記連結部は、前記燃料電池セルの高さ方向を軸方向として延び、前記集電板及び前記固定板は、前記連結部から該連結部の軸方向と直交する方向に延出され、前記反発部材は、前記湾曲部が前記集電板及び前記固定板の延出方向に沿って延びるように配置されても良い。
【0024】
この燃料電池ユニットによれば、反発部材は、湾曲部が集電板及び固定板の延出方向に沿って延びるように配置されている。したがって、集電板の熱膨張に伴い集電板及び固定板の延出端の間の隙間が狭くなる場合でも、反発部材の湾曲部が突っ張ることによって集電板への加圧力を確保することができる。
【0025】
なお、請求項1に記載の燃料電池ユニットは、前記第一板状部と前記第二板状部との間に介在された支持部材をさらに備えている
【0026】
この燃料電池ユニットによれば、第一板状部と第二板状部との間に支持部材が介在されている。したがって、集電板が熱膨張に伴い集電板と固定板との間の隙間が狭くなる場合でも、支持部材によって支持されることにより第一板状部及び第二板状部の撓みが抑制されるので、反発部材から集電板への加圧力を確保することができる。
【0027】
また、請求項5に記載のように、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池ユニットにおいて、前記集電板と前記固定板との間には、複数の前記反発部材が介在されても良い。
【0028】
この燃料電池ユニットによれば、集電板と固定板との間には、複数の反発部材が介在されているので、この複数の反発部材によって集電板をより均等に加圧することができる。
【0029】
請求項6に記載の燃料電池ユニットは、固体酸化物形燃料電池セルと、金属製とされ、前記燃料電池セルの高さ方向両側から前記燃料電池セルに重ね合わされた一対の集電板と、前記一対の集電板の各々に対する前記燃料電池セルと反対側に各前記集電板と対向して配置された一対の固定板と、前記一対の固定板を連結し、前記一対の固定板の離間を制限する連結部と、前記集電板と前記固定板との間に介在された反発部材と、を備え、前記連結部は、前記燃料電池セルに設けられ、前記燃料電池セルに燃料ガス及び酸化剤ガスを供給するセパレータと、前記セパレータと前記一対の固定板の各々との間に設けられ、前記セパレータ及び前記固定板に接合材により接合された一対のスペーサとによって構成されている。
【0030】
この燃料電池ユニットによれば、連結部は、燃料電池セルに設けられたセパレータと、セパレータと一対の固定板の各々との間に設けられた一対のスペーサとによって構成されているので、連結部の構造を簡素化することができる。これにより、燃料電池ユニットをより一層効果的に小型化することができる。
【0031】
請求項7に記載の燃料電池ユニットの製造方法は、請求項6に記載の燃料電池ユニットの製造方法であって、前記燃料電池ユニットを仮組立する仮組立工程と、熱可塑性を有する前記接合材が軟化する加熱環境下に、仮組立された前記燃料電池ユニットを配置した状態で、前記一対の固定板の間に圧縮荷重を加えることにより、前記接合材を押し広げると共に、前記反発部材を圧縮変形させる加熱圧縮工程と、前記加熱圧縮工程において圧縮荷重が加えられたときの前記一対の固定板の間の距離を保った状態で前記接合材を硬化させ、前記接合材により前記一対のスペーサを前記セパレータ及び前記固定板に接合する接合工程と、を備える。
【0032】
この燃料電池ユニットの製造方法によれば、加熱圧縮工程において、接合材が軟化する加熱環境下にて一対の固定板の間に圧縮荷重を加えることにより、接合材を押し広げると共に、反発部材を圧縮変形させる。したがって、例えば、固定板が撓んでいたり、集電板や固定板に凹凸が生じていたりして、集電板と固定板との間のスペースに寸法誤差が生じている場合でも、この寸法誤差を吸収して反発部材を固定板及び集電板に密着させることができる。
【0033】
また、接合工程では、加熱圧縮工程にて圧縮荷重を加えたときの一対の固定板の間の距離を保った状態で接合材を硬化させるので、燃料電池ユニットの稼働時の高温環境下において、集電板が熱膨張したときには、集電板が反発部材を確実に押圧する。これにより、反発部材から集電板に加圧力(反発力)をより効果的に作用させることができる。
【発明の効果】
【0034】
以上詳述したように、本発明によれば、熱膨張差が発生する高温環境下においても燃料電池セルと集電板との密着度を確保できると共に、燃料電池ユニットを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】燃料電池ユニットの正面断面図である。
図2】燃料電池ユニットの平面図である。
図3】燃料電池スタックの構成要素である燃料電池セルの斜視図である。
図4】反発部材の斜視図である。
図5】燃料電池ユニットの製造方法を説明する図である。
図6】燃料電池ユニットの第一変形例を示す正面断面図である。
図7】燃料電池ユニットの第二変形例を示す正面断面図である。
図8】燃料電池ユニットの第三変形例を示す二面図(正面断面図及び側面断面図)である。
図9】燃料電池ユニットの第四変形例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0037】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る燃料電池ユニット10は、燃料電池スタック12と、一対の集電板14と、一対の固定板16と、連結部18と、複数の反発部材20A,20Bとを備える。
【0038】
なお、各図において、矢印X、矢印Y、矢印Zは、燃料電池ユニット10の横幅方向、奥行方向、高さ方向をそれぞれ示している。本実施形態では、一例として、矢印X方向が横幅方向とされ、矢印Y方向が奥行方向とされているが、矢印X方向が奥行方向とされ、矢印Y方向が横幅方向とされても良い。
【0039】
この燃料電池ユニット10において、燃料電池スタック12よりも上側の部分と、燃料電池スタック12よりも下側の部分とは、燃料電池スタック12を中心に上下対称に配置されている。
【0040】
燃料電池スタック12は、固体酸化物形であり、この燃料電池スタック12の構成要素である燃料電池セル12Aは、より具体的には、図3に示されるように、平板形固体酸化物により形成された電解質層22と、この電解質層22の表裏面にそれぞれ積層された燃料極24及び空気極26とを有する。
【0041】
この燃料電池スタック12には、図1に示されるように、セパレータ28が設けられている。このセパレータ28には、燃料ガス及び酸化剤ガスが流れる流路がそれぞれ形成されており、この流路を通じて、図3に示される燃料極24及び空気極26には、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給される。
【0042】
そして、空気極26では、下記式(1)で示されるように、酸化剤ガス中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。この酸素イオンは、電解質層22を通って燃料極24に到達する。
【0043】
<空気極反応>
1/2O+2e→O2− ・・・(1)
【0044】
一方、燃料極24では、下記式(2)及び式(3)で示されるように、電解質層22を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と、電子が生成される。燃料極24で生成された電子は、外部回路を通って空気極26に到達する。そして、このようにして電子が燃料極24から空気極26に移動することにより、燃料電池スタック12において発電される。また、燃料電池スタック12は、発電時に上記反応に伴って発熱する。
【0045】
<燃料極反応>
+O2−→HO+2e ・・・(2)
CO+O2−→CO+2e ・・・(3)
【0046】
図1に示される一対の集電板14は、平板状に形成されている。この一対の集電板14は、金属製とされている。一対の集電板14は、燃料電池スタック12の高さ方向両側(厚さ方向両側)から燃料電池スタック12に重ね合わされている。一対の集電板14には、燃料電池スタック12の側面から突出する電流取出部30がそれぞれ形成されており、燃料電池スタック12で得られた電流は、電流取出部30を通じて外部に取り出される。
【0047】
一対の固定板16は、一対の集電板14と同様に、平板状に形成されている。この一対の固定板16は、一対の集電板14の各々に対する燃料電池スタック12と反対側に各集電板14と対向して配置されている。一対の固定板16には、集電板14の電流取出部30と反対側に延びる被接合部32がそれぞれ形成されている。
【0048】
連結部18は、上述の燃料電池スタック12に設けられたセパレータ28と、一対のスペーサ34によって構成されている。このセパレータ28及び一対のスペーサ34は、例えば、集電板14よりも熱膨張率の低い材料で形成される(例えば、セラミックス製とされる)。
【0049】
一対のスペーサ34は、セパレータ28と一対の固定板16の各々との間に設けられている。この一対のスペーサ34は、セパレータ28及び固定板16に接合材36,38によりそれぞれ接合されている。接合材36,38は、熱可塑性を有する材料で形成されている。この接合材36,38としては、例えば、結晶化ガラスが使用される。
【0050】
そして、接合材36によりセパレータ28及び一対のスペーサ34が接合されることにより、燃料電池スタック12の高さ方向を軸方向として延びる連結部18が形成されている。
【0051】
また、この連結部18が一対の固定板16に形成された被接合部32に接合材36によって接合されることにより、一対の固定板16の被接合部32は、連結部18によって連結されている。さらに、このようにして一対の固定板16が連結部18によって連結されることにより、この一対の固定板16の離間(矢印Z方向への離間)が連結部18によって制限されている。
【0052】
この連結部18は、一対の固定板16の被接合部32に接合されており、集電板14及び固定板16は、連結部18から該連結部18の軸方向と直交する方向(一例として、矢印X方向)に延出されている。上側の集電板14と固定板16との間、及び、下側の集電板14と固定板16との間には、それぞれ一対の反発部材20A,20Bが介在されている。
【0053】
一対の反発部材20A,20Bは、金属製とされている。この一対の反発部材20A,20Bには、例えば、フェライト系ステンレス(ZMG232L)や、オーステナイト系ステンレス(SUS310S)が好適に使用される。
【0054】
この一対の反発部材20A,20Bは、互いに同一の構成とされている。この一対の反発部材20A,20Bの構成を一方の反発部材20Aを例に説明すると、図4に示されるように、反発部材20Aは、第一板状部40と、第二板状部42と、第一板状部40と第二板状部42とを繋ぐ湾曲部44とを有するU字状に形成されている。この反発部材20Aは、例えば、平板を曲げ加工することによりU字状に形成されている。
【0055】
図1に示されるように、一対の反発部材20A,20Bにおいて、第一板状部40は、集電板14に沿って延在されて集電板14に重ね合わされており、第二板状部42は、固定板16に沿って延在されて固定板16に重ね合わされている。また、湾曲部44は、より具体的には、半円弧状に形成されている。
【0056】
この一対の反発部材20A,20Bは、連結部18に対して集電板14及び固定板16が延出する方向(一例として、矢印X方向)に並んで配置されている。また、一対の反発部材20A,20Bのうち集電板14及び固定板16の延出端側に位置する反発部材20Aは、第一板状部40及び第二板状部42の自由端が連結部18側に位置し湾曲部44が集電板14及び固定板16の延出端側に位置するように配置されている。
【0057】
これに対し、一対の反発部材20A,20Bのうち連結部18側に位置する反発部材20Bは、第一板状部40及び第二板状部42の自由端が集電板14及び固定板16の延出端側に位置し湾曲部44が連結部18側に位置するように配置されている。
【0058】
また、図2に示されるように、一対の反発部材20A,20Bは、いずれも平面視にて集電板14及び固定板16の延出方向と直交する方向(一例として、矢印Y方向)に沿って延びるように長尺状に形成されている。
【0059】
次に、本発明の一実施形態に係る燃料電池ユニット10の製造方法について説明する。
【0060】
<仮組立工程>
先ず、仮組立工程では、図5の左図に示されるように、燃料電池スタック12の高さ方向両側に一対の集電板14が配置されると共に、一対の集電板14の各々に対する燃料電池スタック12と反対側に一対の固定板16が配置され、かつ、集電板14と固定板16との間に反発部材20A,20Bが配置される。
【0061】
また、上記作業と同時又は前後して、燃料電池スタック12に設けられたセパレータ28と一対の固定板16の各々との間に一対のスペーサ34がそれぞれ配置されると共に、セパレータ28とスペーサ34との間、及び、スペーサ34と固定板16との間に接合材36,38がそれぞれ配置される。
【0062】
<加熱圧縮工程>
続いて、加熱圧縮工程では、図5の中図に示されるように、接合材36,38が軟化する加熱環境下(電気炉内)に、上述の仮組立された燃料電池ユニット10が配置される。このとき、燃料電池ユニット10は、炉床50の上に載置される。
【0063】
そして、上側の固定板16に下向きの荷重Fが加えられることにより、一対の固定板16の間に圧縮荷重が作用し、これにより、セパレータ28とスペーサ34の間の接合材36、及び、スペーサ34と固定板16の間の接合材38が押し広げられる。また、集電板14と固定板16の間の反発部材20A,20Bが圧縮変形される。
【0064】
このようにして接合材36,38が押し広げられると共に、反発部材20A,20Bが圧縮変形されることにより、例えば、固定板16が撓んでいたり、集電板14や固定板16に凹凸が生じていたりして、集電板14と固定板16との間のスペースに寸法誤差が生じている場合でも、この寸法誤差が吸収される。また、この加熱圧縮工程では、結晶化ガラス製の接合材36,38が焼成される。
【0065】
<接合工程>
次いで、接合工程では、図5の右図に示されるように、上述の加熱圧縮工程において圧縮荷重が加えられたときの一対の固定板16の間の距離が保たれた状態で接合材36,38が硬化される。そして、この接合材36,38により一対のスペーサ34がセパレータ28及び固定板16に接合され、燃料電池ユニット10の組み立てが完了する。
【0066】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0067】
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係る燃料電池ユニット10によれば、集電板14と固定板16との間には、反発部材20A,20Bが介在されている。そして、燃料電池スタック12が発電に伴い発熱されて金属製の集電板14が熱膨張されると、集電板14と固定板16との間の隙間が狭くなることで反発部材20A,20Bが押圧され、反発部材20A,20Bから集電板14に加圧力(反発力)が作用する。したがって、反発部材20A,20Bから集電板14に加圧力が作用することにより、熱膨張差が発生する高温環境下においても燃料電池スタック12と集電板14との密着度を確保することができる。
【0068】
しかも、反発部材20A,20Bは、集電板14と固定板16との間に介在(内包)されているので、例えば、集電板14及び固定板16の外部に加圧機構等を設ける場合に比して、燃料電池ユニット10を小型化することができる。
【0069】
また、反発部材20A,20Bは、U字状に形成された簡単な構造であるので、コストダウンすることができる。
【0070】
また、反発部材20A,20Bは、板状の第一板状部40及び第二板状部42を有しており、この第一板状部40及び第二板状部42が集電板14及び固定板16にそれぞれ重ね合わされているので(平面で接触されているので)、燃料電池スタック12と集電板14との密着度を広い範囲に亘って確保することができる。
【0071】
また、反発部材20A,20Bは、平板を曲げ加工することによりU字状に形成されている。したがって、平板の曲げ加工時に湾曲部44が加工硬化することにより湾曲部44の強度が向上するので、集電板14が熱膨張されて反発部材20A,20Bが押圧されたときには、反発部材20A,20Bから集電板14に作用する加圧力を高めることができる。これにより、燃料電池スタック12と集電板14との密着度を向上させることができる。
【0072】
また、一対の反発部材20A,20Bのうち集電板14及び固定板16の延出端側に位置する反発部材20Aは、第一板状部40及び第二板状部42の自由端が連結部18側に位置し湾曲部44が集電板14及び固定板16の延出端側に位置するように配置されている。したがって、集電板14の熱膨張に伴い集電板14及び固定板16の延出端の間の隙間が狭くなる場合でも、反発部材20Aの湾曲部44が突っ張ることによって集電板14への加圧力を確保することができる。
【0073】
また、集電板14と固定板16との間には、複数の反発部材20A,20Bが介在されているので、この複数の反発部材20A,20Bによって集電板14をより均等に加圧することができる。
【0074】
また、連結部18は、燃料電池スタック12に設けられたセパレータ28と、セパレータ28と一対の固定板16の各々との間に設けられた一対のスペーサ34とによって構成されているので、連結部18の構造を簡素化することができる。これにより、燃料電池ユニット10をより一層効果的に小型化することができる。
【0075】
また、本発明の一実施形態に係る燃料電池ユニット10の製造方法によれば、加熱圧縮工程において、接合材36,38が軟化する加熱環境下にて一対の固定板16の間に圧縮荷重を加えることにより、接合材36,38を押し広げると共に、反発部材20A,20Bを圧縮変形させる。したがって、例えば、固定板16が撓んでいたり、集電板14や固定板16に凹凸が生じていたりして、集電板14と固定板16との間のスペースに寸法誤差が生じている場合でも、この寸法誤差を吸収して反発部材20A,20Bを固定板16及び集電板14に密着させることができる。
【0076】
また、接合工程では、加熱圧縮工程にて圧縮荷重を加えたときの一対の固定板16の間の距離を保った状態で接合材36,38を硬化させるので、燃料電池ユニット10の稼働時の高温環境下において、集電板14が熱膨張したときには、集電板14が反発部材20A,20Bを確実に押圧する。これにより、反発部材20A,20Bから集電板14に加圧力(反発力)をより効果的に作用させることができる。
【0077】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0078】
<第一変形例>
上記実施形態において、一対の反発部材20A,20Bのうち連結部18側に位置する反発部材20Bは、第一板状部40及び第二板状部42の自由端が集電板14及び固定板16の延出端側に位置し湾曲部44が連結部18側に位置するように配置されている。しかしながら、図6の第一変形例に示されるように、反発部材20Bも、反発部材20Aと同様に、第一板状部40及び第二板状部42の自由端が連結部18側に位置し湾曲部44が集電板14及び固定板16の延出端側に位置するように配置されていても良い。
【0079】
このように構成されていると、集電板14の熱膨張に伴い集電板14及び固定板16の延出端の間の隙間が狭くなる場合には、反発部材20A,20Bの湾曲部44が突っ張ることによって集電板14への加圧力をより一層高めることができる。
【0080】
<第二変形例>
また、上記実施形態では、集電板14と固定板16との間に一対の反発部材20A,20Bが設けられている。しかしながら、図7の第二変形例に示されるように、集電板14と固定板16との間には、一つの反発部材20が設けられても良い。また、この場合に、この一つの反発部材20の第一板状部40及び第二板状部42は、上述の反発部材20A,20Bの第一板状部40及び第二板状部42の二つ分の長さを有するように形成されていても良い。
【0081】
このように、集電板14と固定板16との間の反発部材20の数が一つとされていると、部材点数を削減することができるので、コストダウンすることができる。
【0082】
<第三変形例>
また、図7の第二変形例において、反発部材20は、第一板状部40及び第二板状部42の自由端が連結部18側に位置し湾曲部44が集電板14及び固定板16の延出端側に位置するように配置されている。しかしながら、図8の第三変形例に示されるように、反発部材20は、湾曲部44が集電板14及び固定板16の延出方向(一例として、矢印X方向)に沿って延びるように配置されていても良い。
【0083】
このように反発部材20が配置されていても、集電板14の熱膨張に伴い集電板14及び固定板16の延出端の間の隙間が狭くなる場合には、反発部材20の湾曲部44が突っ張ることによって集電板14への加圧力を確保することができる。
【0084】
<第四変形例>
また、図9の第四変形例に示されるように、上記実施形態において、第一板状部40と第二板状部42との間には、支持部材46が介在されていても良い。支持部材46には、例えば、集成マイカ等の熱膨張率の低い材料が好適である。
【0085】
このように構成されていると、集電板14が熱膨張に伴い集電板14と固定板16との間の隙間が狭くなる場合には、支持部材46によって支持されることにより第一板状部40及び第二板状部42の撓みが抑制される。したがって、反発部材20A,20Bから集電板14への加圧力を確保することができる。
【0086】
<その他の変形例>
また、上記実施形態において、接合材36,38には、一例として、結晶化ガラスが使用されているが、結晶化ガラス以外の熱可塑性を有する材料が使用されていても良い。
【0087】
また、上記実施形態において、燃料電池ユニット10には、燃料電池スタック12が設けられているが、燃料電池スタック12の代わりに、燃料電池スタックの構成要素である燃料電池セル(単セル)が用いられても良い。そして、この燃料電池セルの高さ方向両側から一対の集電板14が燃料電池セルに重ね合わされても良い。
【0088】
また、上記実施形態において、連結部18は、セパレータ28と、一対のスペーサ34とによって構成されているが、セパレータ28及び一対のスペーサ34以外の部材によって構成されていても良い。
【0089】
また、上記実施形態において、連結部18は、一対の固定板16の端側に配置されているが、一対の固定板16のどの位置に設けられていても良い。また、図1に示される燃料電池ユニット10は、連結部18を中心に左右対称に構成されていても良い。
【0090】
なお、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされても良い。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
10…燃料電池ユニット、12…燃料電池スタック、12A…燃料電池セル、14…集電板、16…固定板、18…連結部、20,20A,20B…反発部材、22…電解質層、24…燃料極、26…空気極、28…セパレータ、30…電流取出部、32…被接合部、34…スペーサ、36,38…接合材、40…第一板状部、42…第二板状部、44…湾曲部、46…支持部材、50…炉床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9