(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、布帛に対して種々の物理的処理及び化学的処理を施して布帛表面の機能性を向上させる技術が開発されているが、発汗時における汗に対する吸水性及び発散性を向上させるために吸水性及び撥水性を兼備した布帛の製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、衣類に用いられる布帛の一方の片面を撥水加工して他方の片面を吸水加工することで、薄地の布帛において撥水剤を裏抜けすることなく外表面全体に水分の滲み防止に必要な量を付与できるとともに繊維製品としての吸水性の機能を確保することが可能な布帛の表面加工処理方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、低収縮性ポリアミド繊維と高収縮性複合繊維とよりなる混合糸条を準備し、この混合糸条を用いて生地を製編織した後生地を収縮処理することで、生地表面に低収縮性ポリアミド繊維を顕現させ、生地に撥水加工を施して撥水性起毛調布帛を製造する点が記載されている。また、特許文献3では、起毛糸にフッ素樹脂繊維を用いて織成する撥水性布地の製造方法が記載されており、特許文献4では、極細繊維絡合不織布に弾性重合体が含有されるとともに少なくとも片面が起毛された極細繊維立毛シートに対して、その立毛面に、低分子量ポリウレタン、シリコーン樹脂、および撥水剤からなる配合物を付与する点が記載されている。
【0005】
また、特許文献5では、有機繊維からなる織編物の少なくとも一面に、少なくとも多角形が角部で連続する部分を有するパターンで撥水剤を付着させる繊維製品の製造方法が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明に係る衣類用布帛は、布帛の立毛された一方の表面側の部分に撥水性を持たせるとともに他方の表面側の部分に吸水性を持たせ、撥水性を有する表面側を肌側とすることで、べたつき感を軽減してさらさらした感触が持続する湿潤特性を実現する。すなわち、肌側となる撥水性を有する立毛された表面側の部分では、立毛部分に撥水性を持たせているため、表面に付着した水滴が所定量になると水滴を通過させるようになり、通過した水滴を吸水性を有する他方の表面側に吸収させる。また、立毛部分を撥水性とすることで、吸水性を有する他方の表面側の部分に吸収された水分を肌側に滲み出さないようになる。そのため、発汗時に肌に生じる汗は、所定量になると撥水性を有する一方の表面側から吸水性を有する他方の表面側の部分に吸収され、吸収された汗は立毛部分の撥水性により肌側に滲み出てこないので、汗によるべたつき感が軽減されてさらさらした感触が持続されるようになる。
【0012】
本発明に用いる布帛としては、衣類に用いられているものであればよく、特に限定されない。例えば、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維等の吸水加工及び撥水加工が可能なすべての繊維あるいはこれらの混合繊維を用いた布帛が挙げられる。
【0013】
布帛の形態としては、織物、編物又は不織布等いずれの形態でもよく、少なくとも一方の表面が立毛状態に形成されているものが好ましい。立毛状態としては、布帛の厚さをJIS L 1096 A法に準拠して測定した場合に、0.3KPaの圧力で測定した厚さと0.7kPaの厚さで測定した厚さとの差が、0.03mm〜0.30mmとなる立毛状態が好ましく、より好ましくは0.04mm〜0.20mmである。厚さの差が0.03mmより低くなると、後述する撥水加工した場合に目標となる撥水特性が得られず、吸水性が著しく低下する。0.30mmより高くなると、撥水加工の際に斑が生じやすくなる。
【0014】
また、立毛の地組織からの高さは、400μm〜2500μmの範囲に設定するとよい。立毛の高さをこうした範囲に設定することで、立毛部分のみが部分的に撥水加工されて地組織部分が吸水性を有するようになり、上述したように汗によるべたつき感を軽減することができる。立毛の高さが400μmより低い場合には、撥水加工すると地組織部分まで撥水性となって布帛全体が撥水となり、汗が吸収されずにべたつき感が生じ、後述する湿潤指数を得ることができない。立毛の高さが2500μmより高い場合には、撥水加工の際に斑が生じやすくなり、立毛部分全体に均一な撥水性を付与することが難しい。また、立毛が高くなることで、表面に付着した汗を立毛部分から地組織に吸収するための経路が長くなって汗の吸収が難しくなり、後述する湿潤特性を得ることができない。
【0015】
布帛表面をこうした立毛状態に設定する方法としては、例えば、針布起毛処理、エメリー起毛処理といった加工方法、パイル織物のような織成による方法、ダブルラッセル編地のセンターカットによる編物のような編成による方法が挙げられる。
【0016】
布帛の撥水性を有する表面側の部分は、立毛状態が形成されている。撥水性を持たせるためには、立毛状態となる糸や繊維を予め撥水加工して使用したり、布帛の表面側の部分を撥水加工すればよい。撥水加工としては、グラビアロール法、キスロール法、泡加工法、ロータリスクリーン捺染法、フラッロスクリーン法、ローラ捺染法といった公知の加工法を用いることができる。
【0017】
撥水剤としては、布帛表面の吸水性を阻害する機能を有するものであればよく、例えば、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、パラフィン系樹脂、エチレン尿素系樹脂、脂肪酸系樹脂等が挙げられ、これらを複数混合した樹脂を用いてもよい。捺染糊には、撥水剤を0.5重量%〜30重量%を添加する。捺染糊の粘度は、3000mPa・s〜25000mPa・sに調整するのがよい。3000mPa・sより粘度が小さくなると、印捺処理を行う場合に布帛表面から内部に浸透するようになり、吸水面側に影響が生じて十分な吸水効果を得ることができない。粘度が25000mPa・sを超えると、メッシュから十分な塗湖量を印捺することができなくなる。粘度の調整は、一般に増粘剤と称される薬剤で調整することができる。
【0018】
また、付与した撥水処理層の耐久性を高めるために、架橋剤を用いてもよい。架橋剤としては、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の濃度は、0.01重量%〜10重量%に設定するとよい。
【0019】
撥水剤を含む捺染糊を印捺するロータリスクリーン捺染機としては、例えば、円筒状スクリーン版を用いた装置が挙げられるが、これ以外の公知のロータリスクリーン捺染機を用いてもよく、特に限定されない。円筒状スクリーン版を用いた装置は、金属製の円筒状スクリーン版の内部にスキージを配置し、スキージの先端部が円筒状スクリーン版の内周面に圧接した状態に設定されている。円筒状スクリーン版の内周面とスキージとの間には、捺染糊が供給され、円筒状スクリーン版の外周面には撥水処理を行う布帛が圧接するようにバックアップローラが配設される。そして、円筒状スクリーン版を回転させることで、捺染糊がスキージにより堰き止められて円筒状スクリーン版から押し出されるようになり、円筒状スクリーン版と同期して回転するバックアップローラにより搬送される布帛の片面に捺染糊が印捺処理されていくようになる。
【0020】
ロータリスクリーン捺染機のスクリーンのメッシュ数は、1インチ当りのメッシュ数が40メッシュ〜300メッシュに設定するのが好ましく、メッシュ数が40より小さくなると、布帛表面の撥水処理された面積の分布が粗くなって立毛部分の撥水性が十分でなくなり、メッシュ数が300を超えると、捺染糊が高粘度であるため、塗糊量が著しく減少し、撥水性の不安定化を招く。
【0021】
また、捺染糊の塗糊量は、立毛された一方の表面部分に10g/m
2〜70g/m
2付与することが好適である。塗糊量が10g/m
2より少なくなると、十分な撥水効果を得ることができず、肌側への水分の滲み出しが抑えられなくなる。また、塗糊量が70g/m
2より多くなると、布帛が固くなって柔軟性が損なわれ、また、捺染糊の乾燥に要する時間が長くなるため、撥水剤の裏抜けが生じるようになる。
【0022】
撥水加工工程では、撥水剤が立毛部分を越えて布帛の他方の表面部分まで浸透しないようにしなければならないが、ロータリスクリーン捺染機により印捺処理することで、メッシュ数、捺染糊の粘度及び塗糊量をきめ細かく調整して撥水剤の付与量及び付与分布を最適の状態で印捺処理することができる。
【0023】
撥水加工工程の前に吸水性を阻害する水溶性物質(PVA等)を、片面処理又は浸漬処理により付与しておき、撥水加工工程を行った後に布帛を洗浄して、付与した水溶性物質を除去するようにしてもよい。このように撥水加工前に吸水性が阻害されるので、撥水処理する片面以外の部分に撥水剤が浸透するのを抑えることができる。
【0024】
撥水加工工程では、撥水剤を付与した布帛を、100℃〜200℃、より好ましくは160℃〜195℃で熱処理することが望ましい。こうした熱処理により安定した撥水効果が得られる。
【0025】
布帛の吸水性を有する表面側の部分は、布帛の立毛部分以外の地組織まで設定されていることが好ましい。吸水性を持たせるためには、地組織となる糸や繊維を予め吸水加工して使用したり、布帛の表面側の部分を吸水加工すればよい。吸水加工としては、吸尽処理法、パディング処理法、グラビアロール法、キスロース法、泡加工法、ロータリスクリーン捺染法、フラットスクリーン法、ローラ捺染法といった公知の加工法を用いることができる。
【0026】
吸水剤としては、布帛に使用される繊維と親和性のある吸水剤であれば、いずれも用いることができる。一般には、吸汗剤、親水化剤と称される薬剤も含め、親水性を有する薬剤を繊維に付着させて親水性を有する皮膜を形成する。吸水剤の加工処理方法は、吸尽法、浸漬法、塗布又はスプレー等の方法のように、布帛の全面又は立毛された表面側とは反対側の部分に対して満遍なく付与処理する方法が好適である。吸水剤は、吸水剤の付与量としては、吸水剤の種類に応じて適宜調整して付与すればよく、例えば、吸水加工剤(SR−1000、高松油脂株式会社製)の場合には、布帛の単位重量に対して0.5重量%〜10重量%程度付与するのが好ましい。
【0027】
吸水加工は、撥水加工の前後に関わらず布帛の立毛された表面側の部分とは反対側の部分に加工処理すればよく、特に限定されない。例えば、布帛の全面に吸水加工して全面に吸水性の機能を持たせた後、立毛された表面側の部分に撥水加工することで、立毛された表面側の部分に撥水性の機能を持たせ、反対側の表面側の部分に吸水性の機能を持たせることができる。また、布帛の立毛された表面とは反対側の部分に吸水加工して吸水性の機能を持たせた後立毛された表面側の部分に撥水加工することで、立毛された表面側の部分に撥水性の機能を持たせ、反対側の表面側の部分に吸水性の機能を持たせることができる。また、布帛の立毛された表面側の部分に撥水加工して撥水性の機能を持たせた後、布帛の立毛された表面とは反対側の部分に吸水加工することで、立毛された表面側の部分に撥水性の機能を持たせ、反対側の表面側の部分に吸水性の機能を持たせることができる。また、布帛の立毛された表面側の部分に撥水加工して撥水性の機能を持たせた後、布帛の全面に吸水加工することで、撥水加工した表面側の部分では付与された吸水剤は弾かれて定着することがなく、撥水性の機能が維持されるようになるため、立毛された表面側の部分に撥水性の機能を持たせ、反対側の表面側の部分に吸水性の機能を持たせることができる。
【0028】
布帛の撥水性を有する表面側の部分では、表面に圧力が加わっていない状態で所定量未満の水滴を表面上に載置した場合に、立毛部分の撥水性により弾かれて吸収されることはないが、所定量以上の水滴を表面上に載置した場合には、立毛部分を通過して反対側に吸収されて滲み出てくることがなくなる。こうした湿潤特性は、布帛に対する湿潤試験に基づいて決定することができる。
【0029】
湿潤試験は、水平面に設定された載置台上に撥水性を有する表面側を上にして布帛をセットし、立毛された表面に0.6gの水滴を滴下して10秒間静置した後、予め重量を測定した2枚の濾紙(アドバンテック東洋株式会社製;No.5A)の間に布帛を挟んで載置台上に再度セットする。そして、布帛の両面に濾紙を配置した状態で24g/cm
2の荷重を布帛に加える。10秒間荷重を加えた後、布帛及び濾紙を取り出して、2枚の濾紙の重量を測定する。濾紙の測定結果に基づいて以下の湿潤指数を算出する。
湿潤指数=100−(撥水性側の濾紙の重量の増加分)/(吸水性側の濾紙の重量の増加分)×100
湿潤指数が90以上であれば、布帛の吸水性を有する表面側の部分に水が移動して撥水性を有する表面側の部分に水がほとんど残留することがなくなる。そのため、撥水性を有する表面側を肌側とすることで、発汗時の汗が吸収されやすくなり、また吸収された汗が再び肌側に滲み出てこないので、肌に接触する布帛にべたつき感が軽減されて、さらさらした感触が持続するようになり、良好な着用感を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0031】
[実施例1]
布帛として、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなるトリコット編物(56T−36f/22T−1fのPET糸を使用)を用い、針布起毛機により起毛処理を行った。
【0032】
<布帛の加工処理>
起毛処理した布帛をヒートセットした後布帛全体に吸水加工を行い、ヒートセットを行った。その後、布帛の起毛処理した表面側の部分に撥水加工を行った。
【0033】
吸水加工は、吸水加工剤(高松油脂株式会社製;SR−1000)5%o.w.f及び酢酸1ミリリットル/リットルを混合した処理液を用い、処理温度130℃、処理時間30分及び浴比1:20の条件で、布帛に対して吸尽処理を行った。
【0034】
撥水加工は、ロータリスクリーン捺染機を用いて、以下の条件で行った。
撥水剤(日華化学株式会社製)濃度:10重量%
撥水剤粘度:10000mPa・s
架橋剤(日華化学株式会社製)濃度:3重量%
塗糊量:29g/m
2
乾燥温度:185℃で1分間
キュア温度:195℃で1分間
こうした撥水加工により起毛処理した立毛状態の部分について撥水性を有するように加工することができる。
【0035】
<加工された布帛の評価>
布帛の厚さをJIS L 1096 A法に準拠して測定した場合に、0.3KPaの圧力で測定した厚さと0.7kPaの厚さで測定した厚さとの差が0.17mmであった。また、立毛部分の高さについては、布帛の断面を実態顕微鏡で拡大観察して地組織表面から立毛先端までの高さを測定し、5か所の測定値の平均値を立毛部分の高さとした。この例では、立毛部分の高さは、1492μmであった。
【0036】
撥水加工した布帛について、上述した湿潤試験を行い、湿潤指数を算出した。湿潤指数は、98.9となり、撥水加工した立毛状態の表面とは反対側の表面側にほとんどの水が移動していることがわかる。したがって、撥水性を有する立毛された表面側の部分が形成された布帛を衣類に用いる場合に、撥水性を有する表面側の部分を肌側に接触させるようにすれば、汗が吸収されやすくなるとともに吸収された汗が肌側に滲み出てこないので、さらさらした感触が持続するようになる。
【0037】
撥水加工した布帛について、洗濯による耐久性に関する評価を行なった。布帛の洗濯処理は、JIS L 0217(付表1記号別の試験方法−洗い方(水洗い)、番号103)に準拠した方法により行った。洗濯処理を10回、20回、50回、70回及び100回行った際に、上述した湿潤試験を行い、湿潤指数を算出した。湿潤指数は、それぞれ、98.8、97.5、96.9、94.0及び91.0となり、布帛の湿潤性能が維持されていることが確認された。
【0038】
[比較例1]
実施例1と同様の布帛を用いて、実施例1と同様に、起毛処理してヒートセットを行った後染色処理を行い、再度ヒートセットを行った。得られた布帛について、実施例1と同様に、厚さの差及び立毛部分の高さを測定したところ、0.14mm及び1334μmであった。得られた布帛について上述した湿潤試験を行ったところ、湿潤指数は、51であった。
【0039】
[比較例2]
布帛として、PET繊維からなるトリコット編物(84T−36f/22T−1fのPET糸を使用)を用い、実施例1と同様に起毛処理を行った。
起毛処理した布帛をヒートセットを行った後染色処理を行い、吸水加工を行った。吸水加工では、吸水加工剤として(一方社油脂工業株式会社製)5%o.w.fを用いた処理液により180℃で1分間布帛全体にパディング処理を行った。パディング処理の際に併せてヒートセットを行った。その後、吸水加工した布帛の起毛処理した表面側の部分に、実施例1と同様の撥水加工を行った。
【0040】
得られた布帛について、実施例1と同様に、厚さの差及び立毛部分の高さを測定したところ、0.72mm及び3308μmであった。得られた布帛について上述した湿潤試験を行ったところ、湿潤指数は、77.2であった。
【0041】
[比較例3]
比較例2と同様の布帛を用いて、比較例2と同様に起毛処理を行った後比較例2と同様の吸水加工を行った。得られた布帛について、実施例1と同様に、厚さの差及び立毛部分の高さを測定したところ、0.82mm及び3043μmであった。得られた布帛について上述した湿潤試験を行ったところ、湿潤指数は、−769.7であった。