(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連続して供給される廃タイヤを引抜き溝を備えた装置前面プレートに当てて保持し、前記廃タイヤに埋め込まれているビードワイヤに対してビードワイヤ引抜き手段の爪部を引っ掛けて引っ張ることによって廃タイヤからビードワイヤを除去するタイヤのビードワイヤ除去装置であって、
前記引抜き溝を備えた装置前面プレートは、少なくとも上下に所定の間隔を有して対向配置された上部ゲート金型と下部ゲート金型によって構成されており、
前記上部ゲート金型および前記下部ゲート金型の一方のみが、駆動手段により搖動自在又は摺動自在に構成されている
ことを特徴とするタイヤのビードワイヤ除去装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3のビードワイヤ除去装置はパネルに廃タイヤを当てて保持した状態でビードワイヤに引抜き手段の爪部を引っ掛けてビードワイヤを引き抜くことから、廃タイヤを押し当てるパネルには引抜き手段を出し入れするための開口部が形成されている。この開口部は特許文献1では爪部と、爪部で引っ掛けたビードワイヤを挿脱するための大きな円形の孔で構成され、特許文献2、3では開口部が爪部を挿脱する垂直方向に延びる爪溝と、この爪溝から左右両側に連設された左右一対の側溝とから成り、爪部が爪溝を通って内方に引き込まれ、爪部で引っ掛けたビードワイヤは左右の側溝から内方に引き込まれるように構成している。
【0006】
ところで、廃タイヤに埋め込まれた爪部に引っ掛けてビードワイヤを引く抜く際、ビードワイヤの周囲に廃タイヤが付着した状態で引き込まれることになるため、特許文献1で示すような大径な孔からビードワイヤを引き込むとビードワイヤの周囲に付着した廃タイヤまでもが大径な孔から引き込まれることになるためビードワイヤのみを効率的に除去することができない。
【0007】
この点に関し、特許文献2、3では、爪部を垂直方向に延びる爪溝から引き込み、爪部で引っ掛けたビードワイヤは左右の側溝から引き込まれることになるため、ビードワイヤに付着した余分な廃タイヤが側溝によって削ぎ落とされ、ビードワイヤのみを効率的に除去することができる。しかし、削ぎ落とされた廃タイヤは側溝の前面側に残ることになるため、削ぎ落とされた廃タイヤを除去しないままビードワイヤの引抜き工程を繰り返すと、側溝の前面側に残った廃タイヤがビードワイヤの引抜き動作と連動して側溝内に入り込んで側溝を塞いでしまい、ビードワイヤの引抜く際、側溝にビードワイヤが引っ掛かるなど、ビードワイヤの引抜きに支障をきたすという懸念がある。このため、従来のビードワイヤ除去装置では定期的に削ぎ落とされた廃タイヤを取り除くといったメンテナンスが必要となり、作業効率を悪化させる要因となっていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、ビードワイヤの引抜き時に残るビードワイヤを効果的に取り除いて簡単に排除することができるビードワイヤの除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の
タイヤのビードワイヤ除去装置は、連続して供給される廃タイヤを引抜き溝を備えた装置前面プレートに当てて保持し、前記廃タイヤに埋め込まれているビードワイヤに対してビードワイヤ引抜き手段の爪部を引っ掛けて引っ張ることによって廃タイヤからビードワイヤを除去するタイヤのビードワイヤ除去装置であって、前記引抜き溝を備えた装置前面プレートは、少なくとも上下に所定の間隔を有して対向配置された上部ゲート金型と下部ゲート金型によって構成されており、前記上部ゲート金型および前記下部ゲート金型の一方のみが、駆動手段により搖動自在又は摺動自在に構成されていることを特徴とする。
タイヤのビードワイヤ除去装置は、連続して供給される廃タイヤを引抜き溝を備えた装置前面プレートに当てて保持し、前記廃タイヤに埋め込まれているビードワイヤに対してビードワイヤ引抜き手段の爪部を引っ掛けて引っ張ることによって廃タイヤからビードワイヤを除去するタイヤのビードワイヤ除去装置であって、前記引抜き溝を備えた装置前面プレートは、少なくとも上下に所定の間隔を有して対向配置された上部ゲート金型と下部ゲート金型によって構成されており、前記上部ゲート金型と下部ゲート金型との間に爪部に引っ掛けたビードワイヤをガイドする左右一対の側溝を形成するとともに、前記上部ゲート金型と下部ゲート金型の少なくとも一方を駆動手段により搖動自在又は摺動自在に構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のタイヤのビードワイヤ除去装置は、前記駆動手段が前記上部ゲート金型又は下部ゲート金型を前後に搖動させる油圧シリンダであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のタイヤのビードワイヤ除去装置は、前記駆動手段が前記上部ゲート金型又は下部ゲート金型を上下に摺動させる油圧シリンダであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のタイヤのビードワイヤ除去装置は、
前記引抜き溝にビードワイヤが引っ掛かった際に
前記駆動手段を自動的に駆動する
構成を有していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のタイヤのビードワイヤ除去装置は、
ビードワイヤの除去サイクルの終わりに
前記駆動手段を自動的に駆動する
構成を有していることを特徴とする。
本発明のタイヤのビードワイヤ除去装置で用いられるビードワイヤ除去方法は、連続して供給される廃タイヤを引抜き溝を備えた装置前面プレートに当てて保持し、前記廃タイヤに埋め込まれているビードワイヤに対してビードワイヤ引抜き手段の爪部を引っ掛けて引っ張ることによって廃タイヤからビードワイヤを除去するタイヤのビードワイヤ除去装置で用いられるビードワイヤの除去方法であって、前記装置前面プレートを構成する、少なくとも上下に所定の間隔を有して対向配置された上部ゲート金型と下部ゲート金型との一方のみを、前記引抜き溝にビードワイヤが引っ掛かった際に、又は、ビードワイヤの除去サイクルの終わりに、前後に揺動させ又は上下に摺動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤのビードワイヤ除去装置によれば、爪部でビードワイヤを引き抜きながら後退させると、廃タイヤは装置前面プレートに当って支持され、ビードワイヤだけが引き抜かれる。この時、ビードワイヤは引抜き溝の側溝に嵌ってガイドされ、後方側に引き込まれる。これにより、ビードワイヤに付着した廃タイヤが引抜き溝に削ぎ落とされ、装置前面プレートの前面に付着して残る。そして、ビードワイヤの引抜き工程を繰り返すうちに、残存する廃タイヤよって引抜き溝内入り込んで引抜き溝が塞がれてしまうが、駆動手段によって上部ゲート金型と下部ゲート金型の少なくとも一方を前後に搖動あるは上下又は前後に摺動させることによって、残存する廃タイヤを除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細について添付図面を参照して説明する。なお、本実施例は、
図2において2台の除去装置を並設した例を示しているが、これに限らず単体若しくは2台以上の除去装置を並設したものであってもよい。また、本実施例は、
図1において図示左方をビードワイヤ除去装置の「前(又は前方)」、図示右方を「後(又は後方)」、図示上方を「上(又は上方)」、図示下方を「下(又は下方)」と定義する。さらに、後述する仰角及び後退角は、下方の回転中心から見て仰角或いは後退角となる方向の傾斜角と定義する。
図1に説明した方向と角度のとおりとする。
【0017】
図1〜
図5は、本発明のビードワイヤ除去装置を示す実施例であり、
図1は各部材の構成及び機能を理解しやすく表示するものであり、各部材が
図1に示した位置関係となる場合があることを意味するものではない。同図において、1は廃タイヤ(大小廃タイヤを同時に図示している)、2は廃タイヤ1を連続的に搬送する投入コンベヤ、3はビードワイヤ除去装置のフレーム、4はフレーム3の前面パネル3A(
図1左側)に配置した装置前面プレート、5はビードワイヤ引抜き手段、6は廃タイヤ2を載置して昇降する昇降リフトを夫々表している。廃タイヤ1,1・・は、人手或いは自動的に投入コンベヤ2に積載されて、フレーム3の前方(
図1左端)まで搬送され、フレーム3の前面に廃タイヤ1を落下されて昇降リフト6上に供給される。次いで、昇降リフト6により廃タイヤ1の位置を定めて装置前面プレート4に当接させるとともに、廃タイヤ1のリム部に埋設されたビードワイヤ1Aにビードワイヤ引抜き手段5の爪部21を引っ掛け、ビードワイヤ引抜き手段5を駆動してビードワイヤ1Aを引き抜くように構成している。以下、各部の構成について詳述する。
【0018】
投入コンベヤ2は、モータ7と、このモータ7で回転する搬送ベルト8で構成され、投入コンベヤ2の後部側(
図1右側)は作業者が投入コンベヤ2に廃タイヤ1を積込むための積込部2Aとなっている。この積込部2Aは、フレーム3よりも後方(
図1右側)に延設され、かつ、作業者が投入コンベヤ2に廃タイヤ1を積み込みやすいように後方側に向かって低くなるように、より傾斜した構成としている。また、積込部2A終端から投入コンベヤ2の前端部までの間は前端部に向かって次第に高くなるように所定の仰角θ°を持って緩やかに傾斜している。この積込部2A終端から投入コンベヤ2の前端部までの間は、水平方向に対して仰角θ°だけ傾斜させている。本実施例においては、投入コンベヤ2の水平方向に対しての仰角θ°は10°だけ傾斜した構成であるが、必ずしも10°に限定されるものではなく、その仰角の範囲は5≦θ≦30で適宜選択すればよい。そして、投入コンベヤ2の積込部2Aで載せられた廃タイヤ1は前方(
図1左側)へと搬送され、投入コンベヤ2の前端部(終端部)から落下されて昇降リフト6へと供給される。
【0019】
昇降リフト6は、
図2に示すように、平行する2本の支持シャフト10,10を備えた昇降台11と、この昇降台11を昇降自在に案内する左右一対のガイドシャフト12,12と、左右一対の昇降用シリンダ13,13とから構成される。ガイドシャフト12及び昇降用シリンダ13は、フレーム3の前面パネル3Aと平行に配置され、昇降用シリンダ13によって昇降される廃タイヤ1は前面パネル3Aと装置前面プレート4に沿って昇降する。昇降リフト6の支持シャフト10,10は上昇位置で待機し、投入コンベヤ2から落下して供給される廃タイヤ1が支持シャフト10,10上に載置される。
図1及び
図2は、昇降リフト6の支持シャフト10,10の上昇位置(
図2)と下降位置(
図1)の両方の状態を図示している。昇降リフト6の上昇・降下動作とタイヤビードの引き抜き動作の関係は後述する。
【0020】
投入コンベヤ2の前方(
図1左端)の廃タイヤ1の落下位置には、廃タイヤ1を前面パネル3A及び装置前面プレート4に対して押し付けるように当接保持するタイヤ押え手段9を備えている。このタイヤ押え手段9は、前面パネル3A及び装置前面プレート4に対向して傾斜状に配置した案内板15とタイヤ押えシリンダ16とから成り、投入コンベヤ2から落下した廃タイヤ1は先ず案内板15に当接し、タイヤ押えシリンダ16によって案内板15を前面パネル3Aから離間させる方向にスライド運動させることによって、廃タイヤ1は案内板15に傾斜に沿って起立方向に向きを変えながら昇降リフト6の支持シャフト10,10上へと案内され、次いで、案内板15を前面パネル3A及び装置前面プレート4と近接させて廃タイヤ1を押し付けるように当接保持する。なお、装置前面プレート4は、
図5(A)に示すように、タイヤビード引き抜き時には前面パネル3Aとは面一に連続するように、前面パネル3Aに形成する開口部3Bに臨んで配置されている。また、支持シャフト10,10は装置前面プレート4と前面パネル3Aに対して直交する方向に配置されている。かつ、装置前面プレート4と前面パネル3Aは、
図1などに示すように、垂直方向に対して後退角β°だけ傾斜させて配置している。本実施例において、装置前面プレート4と前面パネル3Aは、垂直方向に対して後退角として5°だけ傾斜しているが、必ずしも5°に限定されるものではなく、2.5≦β≦30の範囲内で適宜選択すればよい。
【0021】
ビードワイヤ引抜き手段5は、
図1,
図3及び
図4などで示すように、プレート状の刃体20と、この刃体20の先端下部に下向きとなるように設けたフック状の爪部21と、刃体20の引抜き駆動手段たるワイヤ引抜き用シリンダ22と、刃体20をスライド自在に案内する一対のガイドシャフト23(
図3)から成り、刃体20をビードワイヤ1Aに引っ掛けて、ワイヤ引抜き用シリンダ22によって刃体20をスライドさせて引き込むことによって、廃タイヤ1のリムに埋設されたビードワイヤ1Aを爪部21で引き抜くように構成している。このビードワイヤ1Aの引き抜き方向、すなわち、
図1及び
図4に示すように、ワイヤ引抜き用シリンダ22の引抜き駆動方向Fは、水平方向に対して仰角α°だけ傾斜させて配置させている。本実施例ではワイヤ引抜き用シリンダ22の引抜き駆動方向Fが水平方向に対して仰角として5°だけ傾斜しているが、必ずしも5°に限定されるものではなく、2.5≦α≦15の範囲内で適宜選択すればよい。さらに、装置前面プレート4と前面パネル3Aに対して直交方向に延びる支持シャフト10,10についてもワイヤ引抜き用シリンダ22の引抜き駆動方向Fと同様に、水平方向に対して仰角としてα°(本実施例において5°)だけ傾斜しているが、これも2.5≦α≦15の範囲内で適宜選択すればよい。このように、本実施例において支持シャフト10,10を水平方向に対して仰角として5°だけ傾斜させることによって、支持シャフト10,10で支持される廃タイヤ1の重心が装置前面プレート4側(後方側つまり
図1の右側)へと傾くように支持され、廃タイヤ1が装置前面プレート4及びと前面パネル3Aに密着するように傾き、廃タイヤ1が装置前面プレート4に当接支持される。
【0022】
さらに、前述したように装置前面プレート4と前面パネル3Aを垂直方向に対して後退角として5°だけ傾斜させることによって、装置前面プレート4に支持される廃タイヤ1は、常に後傾となるような付勢力が作用するため、支持シャフト10,10による廃タイヤ1の昇降移動時やビードワイヤ引抜き手段5の引抜き動作時において廃タイヤ1が前方に倒れ難くい。さらに、図示はしないが、昇降リフト6の支持シャフト10,10を前面パネル3Aに対して所定角の仰角を持って設けることにより、供給された廃タイヤ1を更に前面パネル3Aに向けて倒すように構成しても良い。
【0023】
次に、主に
図2及び5を参照して装置前面プレート4に形成する引抜き溝30について詳述する。引抜き溝30は、
図2に示すように、垂直方向に延びる爪通過溝31と、この爪通過溝31から左右両側に連設された左右一対の側溝32,32とから成る。側溝32,32は爪通過溝31に向かって中央部が低くなるように30°程傾斜して形成されている。この爪通過溝31と側溝32,32は左右一対の上部ゲート金型40,40と、この上部ゲート金型40,40の下端縁部と所定の隙間(側溝32の幅分の隙間に相当)を持って隣接するように配置した左右一対の下部ゲート金型41,41により形成されている。そして、本実施例においては、上部ゲート金型40,40と、下部ゲート金型41,41は、ビードワイヤの引き抜き時には、前記装置前面プレート4と面一になるように構成されて、所定の隙間を持った引抜き溝30を形成している。つまり、一対の上部ゲート金型40,40と一対の下部ゲート金型41,41は、
図2に示すように、爪通過溝31の幅分だけ、左右方向に間隔をおいて配置されており、かつ、上下方向にも間隔をおいて配置されており、一対の上部ゲート金型40,40の下縁部と、それに隣接する一対の下部ゲート金型41,41の上縁部の間にそれぞれ側溝32,32が形成されている。
【0024】
上部ゲート金型40,40の間に位置して爪通過溝塞ぎバー45が配置されている。この爪通過溝塞ぎバー45は、詳細な説明はしないが、上下方向にスライドするように構成することができ(上下のスライド機構は図示せず)、ビードワイヤ1Aに刃体20を引っ掛けて、ビードワイヤ1Aを爪部21で引き抜いた後に爪通過溝塞ぎバー45をスライドさせて爪通過溝31を塞ぐことができる。一対の上部ゲート金型40,40は、
図4に示すように、水平な軸部46,46に搖動自在に軸支されている。それにより、一対の上部ゲート金型40,40はそれぞれがシリンダ50,50によって軸部46,46を中心として回転して側溝32,32を夫々開閉するように制御される。つまり、刃体20の爪部21によって廃タイヤ1から引き抜かれるビードワイヤ1Aは、側溝32,32を通ってビードワイヤ除去装置の内方に引き込まれる。この時、爪部21は下向きで配置されているため、ビードワイヤ1Aが側溝32,32から抜け出た段階でビードワイヤ1Aが爪部21から離脱し、ビードワイヤ1Aが自重により排出用コンベア25上に落下し、ビードワイヤ1Aは排出用コンベア25によって搬出される。このとき、ビードワイヤ引抜き手段の引抜き駆動手段の引抜き駆動方向Fが水平方向に対して仰角α°だけ傾斜させて配置しているために、ビードワイヤ1Aがα°だけ傾斜した爪部21からより離脱し易い構成となっている。
【0025】
以上のように構成される本発明の実施例の作用について説明する。投入コンベヤ2の積込部2Aから載せられた廃タイヤ1は、前方(
図1左側)へと搬送され、投入コンベヤ2の前端部から前記昇降リフト6へと供給される。この時、昇降リフト6の支持シャフト10,10は最上昇位置近傍(好ましくは、最上昇位置の少し下方位置)で待機するとともに、刃体20は内方(
図1右側)に引き込まれた状態で待機している。そして、投入コンベヤ2の前端部(
図1左端)まで移送された廃タイヤ1は、投入コンベヤ2から落下し、タイヤ押え手段たる案内板15に当接し、タイヤ押えシリンダ16によって案内板15を前面パネル3Aから離間させるようにスライドさせることによって、廃タイヤ1は起立方向に向きを変えながら昇降リフト6の支持シャフト10,10上へと案内される。
【0026】
支持シャフト10,10は水平方向に対して仰角として5°だけ傾斜しており、支持シャフト10,10で支持される廃タイヤ1が前面パネル3Aに対して後方側(つまり
図1の右側)へと傾くように支持される。さらに、前面パネル3Aと装置前面プレート4は垂直方向に対して後退角として5°だけ傾斜させているため、支持シャフト10,10と装置前面プレート4及び前面パネル3Aで支持される廃タイヤ1は、常に後方に傾くような付勢力が作用し、装置前面プレート4及び前面パネル3Aに密着するように保持される。
【0027】
このようにして廃タイヤ1を装置前面プレート4及び前面パネル3Aに保持した状態で昇降用シリンダ13を起動し、昇降リフト6によって爪部21を廃タイヤ1の内径に入る待機位置まで下降させ、次で爪部21をワイヤ引抜き用シリンダ22によって前進させる。
【0028】
この時、刃体20の爪部21が下側を向いているために、廃タイヤ1をビード引き抜き位置にセットするためには、昇降リフト6を少しだけ上昇させる必要がある。このようにして、廃タイヤ1がビード引き抜き位置にセットされ、一対の上部ゲート金型40,40と一対の下部ゲート金型41,41によって側溝32,32が形成されており、刃体20は、後退した爪通過溝塞ぎバー45によって形成される爪通過溝31から突出し、ビードワイヤ1Aが引き抜き可能となる。
【0029】
この際、例えば図示しないセンサによって、廃タイヤ1の内縁を検出して爪部21とタイヤ内側の引掛かり具合が最良にするように、所定の位置に昇降リフト6を停止させる構成であってもよい。これにより廃タイヤ1に埋設したビードワイヤ1Aに係止する位置に廃タイヤ1が正確にセットさせる。
【0030】
この後、爪部21をワイヤ引抜き用シリンダ22でF方向に後退させると、爪部21が廃タイヤ1のリム部に喰い込み廃タイヤ1を引き裂いて、引抜き溝30内に引き込み、廃タイヤ1のリム部のビードワイヤ1Aのみが爪部21に引っ掛けられビード引き抜きが開始される。
【0031】
このように爪部21がビードワイヤ1Aを引き抜きながら爪通過溝31内を後退すると、廃タイヤ1は、前面パネル3A及び装置前面プレート4(実質的には、一対の上部ゲート金型40,40及び一対の下部ゲート金型41,41)に当って支持され、ビードワイヤ1Aだけが引抜き溝30を通って引き抜かれる。この時、ビードワイヤ1Aは、左右の引抜き溝32,32に嵌ってガイドされ、装置の後方側に引き込まれる。このように、爪部21の後退動作に連動して爪通過溝31と爪通過溝塞ぎバー45にガイドされながら後退し、爪部21によって引く抜かれるビードワイヤ1Aが爪通過溝31に入り込むことなく、左右の引抜き溝32,32に確実にガイドされる。ビードワイヤ1Aはタイヤのリム部全体に埋められていることから、ビードワイヤ1Aの引き抜き度合いに応じて、昇降リフト6を降下させて廃タイヤ1を順次下方に移動させることが好ましい。
【0032】
ここにおいて、廃タイヤ1に埋め込まれたビードワイヤ1Aを引く抜く際、ビードワイヤ1Aの周囲に廃タイヤ1が付着した状態で引抜き溝32,32に嵌り、引抜き溝32,32によってガイドされた状態で引き込まれるため、ビードワイヤ1Aに付着した廃タイヤ1が引抜き溝32,32に削ぎ落とされ、ビードワイヤ1Aを引き抜いた後、抜き溝32,32の前面や引抜き溝32,32に内部に廃タイヤ1が残ることもある。このため、ビードワイヤ1Aの引抜き動作に追従して残存する廃タイヤ1によって引抜き溝32,32が塞がってしまう虞れがある。しかし、本発明の実施例においては、一対の上部ゲート金型40,40を夫々搖動自在に軸支し、ビードワイヤ1Aの引抜き工程の後に、該上部ゲート金型40,40をシリンダ50によって回転させて側溝32,32を広く開放することによって、引抜き溝32,32の周囲などに残った廃タイヤ1を除去する構成を採用することができる。なお、この残存する廃タイヤ1を除去するための上部ゲート金型40,40を搖動させる動作のタイミングとしては、前記引抜き溝30にビードワイヤ1Aが引っ掛かった際、あるいは1回のビードワイヤ1Aの除去サイクルが終わった段階、さらには所定回数、ビードワイヤ1Aの除去サイクルを繰り返した段階で自動的に油圧シリンダ50を駆動して上部ゲート金型40,40を搖動させるようにして構成してもよい。
【0033】
以上のように、本実施例によれば、爪部21にビードワイヤ1Aに引っ掛けて廃タイヤ1からビードワイヤ1Aを引き抜いて除去する際、ビードワイヤ1Aは左右の側溝32,32に嵌ってガイドされ、後方側に引き込まれる。この時、ビードワイヤ1Aに付着した廃タイヤ1が側溝32,32で削ぎ落す構成であるため、ビードワイヤ1Aの除去サイクルを繰り返すうちに、抜き溝32,32の前面側に残った廃タイヤ1がビードワイヤ1Aの引抜き動作と追従して側溝32,32内などに入り込んで引抜き溝30が塞がれてしまう。しかし、本実施例において、
図5に示すように、上部ゲート金型40,40を搖動自在に軸支し、油圧シリンダ50によって上部ゲート金型40,40を前後に搖動させることによって、側溝32,32の周囲に残った廃タイヤ1を簡単に除去することができる。これにより、引抜き溝30の目詰まりを防止し、ビードワイヤ1Aの引抜き作業を円滑に行うことができる。また、定期的に廃タイヤ1を取り除くといったメンテナンス作業を省略することができる。
【0034】
以下、本発明の実施例のタイヤのビードワイヤ除去装置を用いたタイヤのビードワイヤ除去手順を継時的に説明する。
(1)廃タイヤ1は、投入コンベ2の後端部(
図1右端)において自動的に或いは人手により順次投入される。
(2)廃タイヤ1は仰角θを備えた投入コンベ2により、投入コンベ2終端(
図1左端)に至り、投入コンベ終端部より一ずつ落下する。
この状態において、上部ゲート金型40及び下部ゲート金型41から成る装置前面プレート4をフレーム3と面一の状態にしておくことが好ましいが、装置前面プレート4をフレーム3と面一の状態にするタイミングは、(6)の「爪部21をワイヤ引抜き用シリンダ22でF方向に後退させる」ときまでのタイミングで選択可能である。
(3)投入コンベ終端部より一ずつ落下した廃タイヤ1は、最上昇位置近傍(好ましくは、最上昇位置の少し下方位置)で待機する昇降リフト6の支持シャフト10,10により保持される。
(4)上記(3)の状態で、爪部21が下側に向いた刃体20を、保持された廃タイヤ1の開口部に挿入する。
(5)刃体20の下向き爪部21を保持された廃タイヤ1のビードワイヤ1Aに引っ掛けるために、昇降リフト6を少し上昇させる(昇降リフト6の最上昇位置)。
(6)爪部21をワイヤ引抜き用シリンダ22でF方向に後退させる。
(7)爪部21が廃タイヤ1のリム部に喰い込み廃タイヤ1を引き裂いて、引抜き溝30内に引き込み、ビードワイヤ1Aのみが爪部21に引っ掛かりビードの引き抜きが開始される。
(8)爪部21がビードワイヤ1Aを引き抜きながら爪通過溝31内を後退すると、廃タイヤ1は、上部ゲート金型40,40及び下部ゲート金型41,41によって引きちぎられ、ビードワイヤ1Aだけが引抜き溝30を通って廃タイヤ1から引き抜かれる。
(9)ビードワイヤ1Aは、左右の引抜き溝32,32に嵌ってガイドされ、装置の後方側に引き込まれる。このとき、ビードワイヤ1Aの引き抜き度合いに応じて、昇降リフト6を降下させて廃タイヤ1を順次下方に移動させる。
(10)ビードワイヤ1Aの引き抜き終了時には、刃体20の爪部21が下向きに配置されていることから、装置内に引き込まれた刃体20からビードワイヤ1Aがワイヤ排出用コンベア25上に自然に落下して装置外に排出することができる。
(11)ビードワイヤ1Aが引き抜かれた廃タイヤ1は、最下降位置において昇降リフト6上に保持されているが、これを自動的或いは人手により排出し、廃タイヤ破砕装置に導入することは容易に実現することが可能である。
(13)廃タイヤ1からのビードワイヤ1Aが引き抜終了のタイミングで、上部ゲート金型40,40を上方に搖動して側溝32を開放して、側溝32へのビードワイヤ1Aの詰まりを防止する。
【0035】
以上、本実施例について詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、本実施例においてはビードワイヤ1Aの引抜き駆動方向Fを水平方向に対して仰角として5°傾けた例を示したが2.5≦α≦15の範囲内であれば確実に爪部21からビードワイヤ1Aが離脱するものであって、ビードワイヤ1Aの引抜き駆動方向Fの傾斜は作業性や装置のレイアウトなどを考慮して2.5≦α≦15の範囲内で種々設定すればよい。同様に引抜き溝30を有する装置前面プレート4の後退角を5°として、その後退角βも5≦β≦30の範囲内で適宜設定すればよい。また、前記実施例においては、
図5に示すように上部ゲート金型40,40を搖動自在に軸支し、該上部ゲート金型40,40を油圧シリンダ50によって搖動させた例を示したが、例えば、上部ゲート金型40,40を上下方向にスライド自在に配置し、油圧シリンダ50によって上下方向に摺動させることによって、側溝32,32の周囲に残る廃タイヤ1を除去することも可能である。また、前記実施例では上部ゲート金型40,40を駆動した例を示したが下部ゲート金型41,41の方を駆動してもよい。さらに、上部ゲート金型40,40の駆動手段としては油圧リンダ50に限らずモータやアクチュエータや電磁ソレノイドなどで構成してもよい。