(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1,2の場合、その外周面に作用する摩擦対策としては十分なものではなかった。そのため、鋼管杭が長尺であったり、鋼管杭を圧入する地盤が細粒分の多い砂地盤や硬質地盤であったりすると、鋼管杭の外周面の摩擦が問題となる場合がある。
【0005】
本発明は、流体物により鋼管杭の内周面及び外周面の摩擦を十分に低減し、鋼管杭を地盤に良好に圧入することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、地盤に圧入される鋼管杭であって、
流体供給用のパイプが付設され、
前記パイプを通じた流体物の吐出口が当該鋼管杭の外周面側に設けられ、
当該鋼管杭の周面に貫通する複数の内外連絡孔が形成され、
圧入施工の過程で前記吐出口から吐出された流体物が、その一部は前記内外連絡孔を通り、当該鋼管杭の内周面及び外周面に沿って
上方へ流れるようにされたことを特徴とする鋼管杭である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記吐出口が、当該鋼管杭の中心軸に沿った異なる高さに配設された複数とされた請求項1に記載の鋼管杭である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、地盤に圧入される鋼管杭であって、
流体供給用のパイプが付設され、
前記パイプを通じた流体物の吐出口が、当該鋼管杭内で下方に向けて設けられるか、当該鋼管杭内で斜め上方に向けて設けられるか、当該鋼管杭内で斜め下方に向けて設けられるか、又は当該鋼管杭内で当該鋼管杭の内周面の接線方向より内方に向けて設けられ、
当該鋼管杭の周面に貫通する複数の内外連絡孔が形成され、
圧入施工の過程で前記吐出口から吐出された流体物が、その一部は前記内外連絡孔を通
り、当該鋼管杭の内周面及び外周面に沿って
上方へ流れるようにされたことを特徴とする鋼管杭である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記内外連絡孔と連通する小孔が形成された板状部材が前記外周面に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の鋼管杭である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、流体供給用のパイプが付設され、複数の内外連絡孔が側面に貫通して形成されている鋼管杭を地盤に圧入する鋼管杭の圧入方法であって、
前記パイプを通じた流体物の吐出口を前記鋼管杭の外周面側に設け、
前記鋼管杭を地盤に回転圧入する過程で、前記吐出口から吐出された流体物を、その一部は前記内外連絡孔に通し、当該鋼管杭の内周面及び外周面に沿って
上方へ流すことを特徴とする鋼管杭の圧入方法である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、流体供給用のパイプが付設され、複数の内外連絡孔が側面に貫通して形成されている鋼管杭を地盤に圧入する鋼管杭の圧入方法であって、
前記パイプを通じた流体物の吐出口を、前記鋼管杭内で下方に向けて設けるか、前記鋼管杭内で斜め上方に向けて設けるか、前記鋼管杭内で斜め下方に向けて設けるか、又は前記鋼管杭内で当該鋼管杭の内周面の接線方向より内方に向けて設け、
前記鋼管杭を地盤に回転圧入する過程で、前記吐出口から吐出された流体物を、その一部は前記内外連絡孔に通し、当該鋼管杭の内周面及び外周面に沿って
上方へ流すことを特徴とする鋼管杭の圧入方法である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記内外連絡孔を含む貫通孔を前記鋼管杭の中心軸を介して相対する一対の対角位置に限定して設け、
複数の前記鋼管杭を地盤に隣接、連続して圧入して連続壁を構築するにあたり、前記一対の対角位置を結ぶ対角線が当該連続壁の連続方向に沿うようにして前記鋼管杭を地盤に設置することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の鋼管杭の圧入方法である。
【0013】
請求項8に記載の発明は、側面に貫通する貫通孔が中心軸を介して相対する一対の対角位置に限定して設けられた鋼管杭が複数隣接、連続して地盤に設置されてなる連続壁であって、
隣接する前記鋼管杭同士の間は地盤により断絶されており、
前記一対の対角位置を結ぶ対角線が当該連続壁の連続方向に沿うように前記鋼管杭が設置されてなる鋼管杭連続壁である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パイプ、内外連絡孔を通じて供給される流体物により鋼管杭の内周面及び外周面の摩擦が十分に低減され、鋼管杭を地盤に良好に圧入することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る鋼管杭及び鋼管杭の圧入方法の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態につき
図1〜
図3を参照して説明する。
本実施形態の鋼管杭10は、
図1〜
図3に示すように、円筒状の鋼管杭10にその周面に貫通する複数の内外連絡孔11が設けられたものである。この鋼管杭10の先端側には、鋼管杭10の回転圧入を補助するために、複数の切削ビット4がリング部材4rを介して取り付けられている。
内外連絡孔11は、鋼管杭10を地盤に圧入施工する過程で、鋼管杭10の内又は/及び外に供給される水などの流体物を、内周面側から外周面側に流出させたり、外周面側から内周面側に流入させたりして、同流体物を鋼管杭10の内周面及び外周面に十分に行き渡らせ、当該流体物により鋼管杭10の内周面及び外周面の摩擦を十分に低減するために形成されている。
配管用孔12は、流体供給用のパイプ2が接続され、吐出口eを鋼管杭10の外周面側に設けるために形成されている。
内外連絡孔11も、配管用孔12も、鋼管杭10の側壁に穿設された貫通孔である。内外連絡孔11は鋼管杭10の本体鋼管10aに穿設されている。配管用孔12は本体鋼管10aに穿設することも、リング部材4rに穿設することも可能である。本実施形態ではリング部材4rに穿設されている。内外連絡孔11にあっては、その内側開口は鋼管杭10の内部主空間に、その外側開口は鋼管杭10の外部空間に開放され、配管用孔12にあっては、その内側開口にはパイプ2が接続され、その外側開口は鋼管杭10の外部空間に開放されている。ここで、内部主空間とは、鋼管杭10の内周面を外縁とし鋼管杭10の上端開口から下端開口まで続く空間である。但し、パイプ2等の設置物で占有される空間は除かれる。
【0018】
この鋼管杭10の内周面には、水供給用のパイプ2が配設されている。このパイプ2の後端側はスイベルジョイントを介して送水ポンプ3に接続されている。なお、本実施の形態では流体物として水を使用しており、流体供給用として水供給用のパイプ2および送水ポンプ3を配設した。
パイプ2を通じた流体物の吐出口eは、
図1(c)に示すように鋼管杭10内で下方に向けて設けられるか、又は
図1(d)に示すように鋼管杭10の外周面側に設けられる。
図1(c)に示すように吐出口eが鋼管杭10内で下方に向けて設けられる場合、配管先端部1の先端開口が吐出口eとなり、吐出口eから下方に流体物が吐出される。その場合、配管先端部1は、ノズル部品によって構成するなどして、吐出口eに向かって先細りするノズル形状のものとしてもよいが、ノズル形状でないものを図示する。なお、吐出口eの高さ位置は、リング部材4r内でも本体鋼管10a内でもよい。
図1(d)に示すように吐出口eがリング部材4rの外周面側に設けられる場合、パイプ2が配管用孔12に接続され、配管用孔12の外側開口などが吐出口eになる。
図1(d)に示すようにパイプ2の側面に穿設した孔1aを配管用孔12に接続する構成のほか、パイプ2を配管用孔12に接続するための配管継手部品や吐出口eを形成するノズルは適宜に用いられる。前者の配管継手部品としては、L字状に曲がったものを適用し、配管用孔12に挿入してもよい。さらに、鋼管杭10の外周面側でもL字状に曲がったものを適用して流路を形成し鋼管杭10の外周面側において吐出口eを同外周面に沿った方向に向けてもよい。したがって、吐出口eを向ける方向(流体物を吐出する方向)は、
図1(d)に示すように鋼管杭10の径方向外方でもよいし、鋼管杭10の外周面に沿った水平方向、上方向、下方向、斜め上方向、斜め下方向などその他任意である。
【0019】
鋼管杭10の外周面における内外連絡孔11が形成されている箇所には、小孔5aを有する板状部材5が設けられている。
板状部材5は、平板状の鋼板の略中央に小孔5が形成された部材であり、内外連絡孔11と小孔5aとが連通するように、鋼管杭10の外周面に溶接によって固設されている。この板状部材5は、鋼管杭10に形成された内外連絡孔11部分を補強するために設けられている。なお、板状部材5のサイズや厚みは任意であり、鋼管杭10の長さや厚さ、また内外連絡孔11のサイズに応じて適宜調整したものを用いればよい。
配管接続孔12が形成されている箇所に対しても同様に板状部材5で補強してもよい。
【0020】
次に、上記した鋼管杭10を地盤に圧入する方法について説明する。
【0021】
この鋼管杭10を地盤に圧入するには、杭圧入機を用いる。
杭圧入機は、機械本体の下部に設けられ、既設の杭を掴むクランプ装置と、機械本体の前端部に設けられ、既設の杭に隣接した位置に圧入する杭を挟んで保持するチャック装置とを備えている。この杭圧入機は、クランプ装置で既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取った状態で、杭を把持するチャック装置を降下させるようにして、杭を地中に圧入するようになっている。なお、杭圧入機の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0022】
鋼管杭10の地盤への圧入施工は、回転圧入で行うことが好ましい。回転圧入であれば、鋼管杭10の先端に切削ビット4を取り付けることで既設の構造物を打ち抜けるうえ、地盤が硬質であっても騒音・振動もほとんどなく圧入でき、既設構造物および周辺地盤への影響を抑えることができる。
【0023】
そして、鋼管杭10を地盤に圧入施工する際に送水ポンプ3を作動させて、鋼管杭10内外に水を供給する。具体的には、鋼管杭10を地盤に回転圧入する過程で、パイプ2を通じて送給された水を吐出口eから噴射するように吐出させる。
この吐出口eから吐出された水(ジェット水)は、
図2又は
図3に示すように、その一部は内外連絡孔11を通り、鋼管杭10の内周面及び外周面に沿って流れる。
なお、
図2は、
図1(c)に示すように吐出口eが鋼管杭10内で下方に向けて設けられる場合の水の流れの一例を、
図3は、
図1(d)に示すように吐出口eが鋼管杭10の外周面側に設けられる場合の水の流れの一例を示す。
【0024】
図2、
図3に拘わらず、複数本あるパイプ2のうち、一部を
図1(c)に示すように吐出口eが鋼管杭10内で下方に向けて設けられる場合に適用し、残りの一部を
図1(d)に示すように吐出口eが鋼管杭10の外周面側に設けられる場合に適用してもよい。この場合、鋼管杭10の内部及び外周面側に流体物の吐出口eを設けることができる。
【0025】
以上のように、鋼管杭10の周面に複数の内外連絡孔11を形成していることで、鋼管杭10の内部又は/及び外周面側に配設されている吐出口eから吐出(噴射)された水が、その一部は内外連絡孔11を通じて鋼管杭10の逆側周面へ流動するので、鋼管杭10の内周面と外周面の両面にそれぞれ適量の水を流しながら、鋼管杭10を地盤に回転圧入させることができる。
つまり、複数の内外連絡孔11が形成されている鋼管杭10であれば、その内周面と外周面にそれぞれ適量の水を流しながら、回転圧入施工を行うことができるので、その施工時に鋼管杭10の内周面と外周面に作用する地盤や土砂との摩擦を水流によって低減することができる。
これに対し、
図9に示す、従来の鋼管杭20の場合、その周面に内外連絡孔11が形成されていないため、鋼管杭20の外周面には鋼管杭20の先端(下端)開口から流出した水しか流れないので、従来の鋼管杭20を回転圧入する際、その外周面には地盤や土砂との摩擦が大きな負荷となって作用してしまう。
なお、鋼管杭10に形成する内外連絡孔11の数や位置は任意であり、鋼管杭10の長さや厚さや径のサイズに応じて適宜調整し、鋼管杭10の内周面と外周面の両面に水が適量流れるように設計すればよい。
【0026】
また、鋼管杭10の内外連絡孔11部分を補強するために設けた板状部材5はその厚み分、鋼管杭10の外周面から突出しているので、鋼管杭10を回転圧入する際、板状部材5はフリクションカットとしての効果を発揮することができる。
つまり、この鋼管杭10は、その外周面に作用する摩擦を低減する水流に加え、その外周面にフリクションカットとして機能する板状部材5を備えているので、地盤に良好に圧入することができる。
【0027】
〔第2実施形態〕
次に上記第1実施形態に対する変形形態を開示する。
まず、本発明の第2実施形態として、これを、
図4を参照して説明する。
図4に示すように本実施形態の鋼管杭10にあっては、内外連絡孔11が鋼管杭10の中心軸に沿った異なる高さに配設された複数とされ、同じく、流体供給用のパイプ2が接続された配管用孔12(従って吐出口e)が鋼管杭10の中心軸に沿った異なる高さに配設された複数とされたものである。鋼管杭10の中心軸に沿って配管用孔12を内外連絡孔11,11の間に配置した。なお、内外連絡孔11が鋼管杭10の中心軸に沿った異なる高さに配設された複数とされる点は、上記第1実施形態も同様である。
内外連絡孔11を含む貫通孔11,12は、鋼管杭10の中心軸を介して相対する一対の対角位置に限定して設けられている。内外連絡孔11は当該対角位置の双方に設けられており、配管用孔12は当該対角位置の片方に設けられている。これに拘わらず、当該対角位置に限定されるので、配管用孔12を当該対角位置の双方に設けてもよい。
吐出口eを最下端に配置するための配管先端部1においては、
図1(c)に示すように吐出口eが鋼管杭10内で下方に向けて設けられる構造を採用する。
以上のように、鋼管杭10の外周面側に設けられる吐出口eを異なる高さに複数設けることによって、高さ方向に広範な範囲に及んで確実に鋼管杭10の外周面に流体物を供給することができる。吐出口eから吐出され外周面に沿って流れる流体物の一部は、内外連絡孔11を通って内周面側に流入する。
以上のようにして、内外連絡孔11及び配管用孔12(従って吐出口e)を軸方向に分散させて配置することができ、その結果、鋼管杭10の内周面と外周面にそれぞれ適量の水を流すこと、上述したフリクションカットとして機能する板状部材5をも同様に軸方向に分散させて配置することができる。なお、板状部材5を配管用孔12に対して設けてもよい。その場合、内外連絡孔11とは異なる高さに上述したフリクションカットとして機能する板状部材5を設置することができる。
【0028】
以上のように、鋼管杭10内に設けられる最下端の吐出口eより上位置に、鋼管杭10の外周面側に設けられる吐出口eを互いに異なる高さ位置で配置した。異なる高さの吐出口eからの流体の吐出は、操作弁などによって、それぞれ独立してその吐出を開始・停止操作可能に構成されている。
鋼管杭10の下端が透水層に突入した場合やさらにその透水層を突き抜けた場合に、鋼管杭10内の下端部に設けられた吐出口eから吐出された流体物が透水層に吸引されて、鋼管杭10の透水層より上位置には流体物が供給されなくなる場合があり、このような場合でも、透水層より上位置で地面より下位置に配置された吐出口eから流体物を吐出することによって、鋼管杭10の透水層より上位置にも流体物を供給することができるからであり、地面下に埋没した吐出口eから順次吐出を開始することができるからである。
また、鋼管杭が長尺になるほど、最下端の吐出口eから吐出された流体物がそれより上方に(好ましくは地面付近まで)十分に供給されないおそれ、供給されるまでに長時間を要するおそれがある。この場合にも、最下端の吐出口eより上位置で地面より下位置に配置された吐出口eから流体物を吐出することによって、最下端の吐出口eより上位置にも流体物を早期かつ十分に供給することができ、地面下に埋没した吐出口eから順次吐出を開始することができる。
なお、鋼管杭10内に設けられる吐出口は、最下端の吐出口eに限らず、これに加えてそれより上位置に、一の吐出口又は、互いに高さの異なるものを含んだ複数の吐出口を設けて実施してもよい。各吐出口の向く方向(流体物の吐出方向)は、下方、側方、斜め上方、斜め下方等を適宜に選択して実施し得る。これにより、地盤や土砂に接触する鋼管杭の内周面及び外周面に流体物を、より早期かつ十分に供給することができる。
【0029】
〔その他の変形〕
上記第1実施形態のうち吐出口eが鋼管杭10内に設けられる場合では、
図1(c)に示すように吐出口eを下方に向けて設けたが、
図5に示すように吐出口eを側方に向けて設けてもよい
図5(a)示す構成では、吐出口eは鋼管杭10の周方向(=鋼管杭の内周面の接線方向)に向けて配置される。
図5(b)示す構成では、吐出口eは鋼管杭10の径方向内方に向けて配置される。その他、鋼管杭10の長手方向軸回りに角度を付けて鋼管杭10の内周面の接線方向より内方に向けて配置してもよい。
【0030】
また、
図1(d)及び
図5に示す構成では、鋼管杭10の中心軸と平行な方向に軸を配置した配管円筒部(配管先端部1)の側部に穿設するように吐出口eを設けたが、鋼管杭10の中心軸と平行な方向から曲げ形成された配管円筒部(配管先端部1)の先端開口を吐出口eとしてもよい。この場合、吐出口eの向く方向(流体物の吐出方向)を、
図6に示すように斜め上方とする形態、
図7に示すように斜め下方とする形態を実施し得る。いずれの形態でも、配管継手部品、ノズル部品は適宜に用いられる。
【0031】
内外連絡孔11を通した流体物の内外流通を有効に利用した実施形態として、パイプ(2)を通じた流体物の吐出口(e)が当該鋼管杭内で下方に向けて設けられる形態、当該鋼管杭の外周面側に設けられる形態のほか、当該鋼管杭内で斜め上方に向けて設けられる形態、当該鋼管杭内で斜め下方に向けて設けられる形態、当該鋼管杭内で当該鋼管杭の内周面の接線方向より内方に向けて設けられる形態を実施し得る。
【0032】
〔効果その他〕
以上のように、本実施形態の鋼管杭10は、鋼管杭10の内部又は/及び外周面側に配設されている吐出口eから水を吐出(噴射)させて、その内周面と外周面にそれぞれ適量の水を流すことができるので、その水流によって鋼管杭10に作用する地盤や土砂との摩擦を低減して回転圧入施工を好適に行うことができる。
つまり、鋼管杭10の内周面と外周面にそれぞれ適量の水を流し、その水流によって内周面と外周面に作用する摩擦の低減を図りつつ、鋼管杭10を回転圧入することができるので、従来技術では施工が困難であった地盤に対しても良好に鋼管杭10を圧入することが可能になる。地盤の質的範囲のみならず、杭長さも増加できる。
また、鋼管杭10に作用する摩擦を低減して回転圧入施工を行うことができるため、従来よりもスムーズに鋼管杭10を圧入することが可能になる。その結果、鋼管杭10を地盤に圧入して埋設する施工期間を短縮することができ、工費の削減を図ることができる。
【0033】
なお、以上の実施の形態においては、鋼管杭10の先端側に切削ビット4を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、切削ビット4を設けない構成であってもよく、また、鋼管杭10の先端側に螺旋状の掘削翼(スパイラル翼)を設けたものであってもよい。
【0034】
また、吐出口e、水供給用のパイプ2の数は限定されるものではなく、地盤条件に応じて適宜変更可能である。
鋼管杭10を圧入した後は、パイプ2を回収せず、鋼管杭10に付属したままとしてもよいが、回収してもよい。回収したものを再利用してもよい。
再利用可能に回収するには、断面Ω状のバンドでパイプ2を鋼管杭10の内周面に固定しておき、鋼管杭10を圧入した後に、パイプを上方へ引き上げることで、そのバンドを切断する方法が知られている。この方法においては、パイプのずれ止め及び回収時にバンドを切断するための突起がパイプの外周面に設けられる。
複数のパイプ2をユニット化して取り付け、また回収可能にすることで効率的に取付作業及び回収作業が行える。その場合、複数のパイプ2を他の大径パイプ内に挿通させてユニット化し、この大径パイプに断面Ω状のバンドを掛けて固定するとなお効率的である。大径パイプ内に挿通にされる複数のパイプ(以下「内部パイプ」)がそれぞれ流体供給路となることはもちろんこと、大径パイプの内周面と内部パイプとの間の隙間も流体供給路となる。それらの流体供給路を、異なる吐出口(鋼管杭の外周面側に設けられる吐出口、鋼管杭内に設けられる吐出口、高さ位置や向きの異なる吐出口など)へ連通するものに適用したり、さらには、液体(水)供給用と気体(空気)供給用など流体物の種類で使い分けたりすることができる。
【0035】
また、流体物は水や空気であることに限らず、任意の液体や気体を使用してもよく、液体と気体の混合体であってもよい。
【0036】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
以上説明したように、内外連絡孔11も、配管用孔12も、鋼管杭10の側壁に穿設された貫通孔であるから、鋼管杭10の側壁に穿設された複数の貫通孔から適宜に内外連絡孔11と配管用孔12とに使い分けて実施することができる。例えば、複数の鋼管杭10を同様に製作しておき、1本ごとに配管用孔12を選択し、従って残りを内外連絡孔11として選択して実施することができ、地盤状況に合わせた臨機応変な対応が可能である。
【0037】
〔鋼管杭連続壁〕
以上説明した鋼管杭及び圧入方法によって、複数の鋼管杭を地盤に隣接、連続して圧入して連続壁を構築するにあたっては、以下のように貫通孔を配置することが好ましい。
すなわち、
図8に示すように、又上述したように内外連絡孔11を含む貫通孔11,(設けられる場合にはさらに12)を鋼管杭10の中心軸を介して相対する一対の対角位置に限定して設け、当該一対の対角位置を結ぶ対角線が当該連続壁の連続方向に沿うようにして鋼管杭を地盤に設置する。
図8に示す連続壁のセンターラインLは、連続壁の連続方向を示す線であって、かつ、上記対角線を含む線である。
内外連絡孔11を含む貫通孔11,(12)を鋼管杭10の中心軸を介して相対する一対の対角位置に限定して設けたことによって、それ以外の位置にも貫通孔を設ける場合に比較して鋼管杭10の剛性の低下を抑えることができ、圧入施工時に必要な内外連絡孔11を180度ごとに分散させて配置することができる。何より、各鋼管杭10を
図8に示す向きに配置することによって、連続壁が横荷重(センターラインLに直交する横荷重)を受けるときに生じうる曲げ応力が比較的小さい部位に貫通孔を配置しておくことができ、鋼管杭連続壁を高強度な構造に構築することができる。