(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー膜形成部はエレクトロスプレー装置であり、前記カバー膜材料供給時の前記第1の減圧チャンバー内の圧力は0.2Pa以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の保護膜形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の封止膜の形成方法だと、それでも封止膜のバリア性が低くなる可能性があるおそれがあった。具体的には、カバー膜を形成した後ドライプロセスで封止膜を形成するためにドライプロセス装置まで基材を搬送して基材周辺を減圧する際に大きな気流が発生するため、カバー膜上にパーティクルなどの異物が付着する可能性がある。その結果、
図7に示すように封止膜90は異物94の周辺で途切れが生じ、バリア性が低くなる可能性があった。
【0007】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、バリア性の高い封止膜を安定して形成することができる封止膜形成装置および封止膜形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の封止膜形成装置は、基材を収容する第1の減圧チャンバーと、前記第1の減圧チャンバー内に収容された基材へウェットプロセスによりカバー膜材料を供給し、カバー膜を形成するカバー膜形成部と、基材を収容する第2の減圧チャンバーと、前記第1の減圧チャンバーから前記第2の減圧チャンバーへの基材の搬送経路であり、減圧される減圧搬送路と、前記第2の減圧チャンバー内に収容された基材に形成されている前記カバー膜へドライプロセスにより封止膜材料を供給し、封止膜を形成する封止膜形成部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
上記封止膜形成装置によれば、バリア性の高い封止膜を安定して形成することができる。具体的には、第1の減圧チャンバー、減圧搬送路、および第2の減圧チャンバーを有していることにより、カバー膜が形成されてからカバー膜の表面に封止膜が形成されるまで常に減圧環境を維持することができるため、カバー膜の表面に異物が付着することを防ぐことができ、ならだかなカバー膜表面にバリア性の高い封止膜を安定して形成することができる。
【0010】
また、前記カバー膜材料は、無溶剤系の液体であると良い。
【0011】
こうすることにより、減圧環境下でウェットプロセスを行う際にカバー膜内の溶剤が揮発して塗布完了前に硬化してしまうことを防ぐことができる。
【0012】
また、前記カバー膜材料は、加熱硬化型または紫外線硬化型もしくは吸水硬化型の液体であると良い。
【0013】
こうすることにより、減圧環境下でも容易にカバー膜を硬化させることができる。
【0014】
また、前記カバー膜形成部はエレクトロスプレー装置であり、前記カバー膜材料供給時の前記第1の減圧チャンバー内の圧力は0.2Pa以下であると良い。
【0015】
こうすることにより、減圧環境下であっても第1の減圧チャンバーとエレクトロスプレー装置の間やノズルとステージ間で異常放電が起こることを防ぎ、安定してカバー膜を形成することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するために本発明の封止膜形成方法は、第1の減圧チャンバー内に収容された基材へ減圧環境下でウェットプロセスによりカバー膜材料を供給し、カバー膜を形成するカバー膜形成工程と、減圧環境下で基材を前記第1の減圧チャンバーから第2の減圧チャンバーへ搬送する減圧搬送工程と、前記第2の減圧チャンバー内に収容された基材に形成されている前記カバー膜へ減圧環境下でドライプロセスにより封止膜材料を供給し、封止膜を形成する封止膜形成工程と、を有することを特徴としている。
【0017】
上記封止膜形成方法によれば、バリア性の高い封止膜を安定して形成することができる。具体的には、カバー膜形成工程、減圧搬送工程、および封止膜形成工程とを有することにより、カバー膜が形成されてからカバー膜の表面に封止膜が形成されるまで常に減圧環境を維持することができるため、カバー膜の表面に異物が付着することを防ぐことができ、なだらかなカバー膜表面にバリア性の高い封止膜を安定して形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の封止膜形成装置および封止膜形成方法によれば、バリア性の高い封止膜を安定して形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態における封止膜形成装置を示す概略図であり、断面図である。
【0022】
封止膜形成装置1は、カバー膜形成部2および封止膜形成部3を有し、基材Wの表面にカバー膜形成部2によってカバー膜93を形成し、このカバー膜93の表面に封止膜形成部3によって封止膜90を形成する。
【0023】
また、カバー膜形成部2は第1の減圧チャンバー4に収容されており、減圧環境下でカバー膜93が形成される。また、封止膜形成部3は第2の減圧チャンバー5に収容されており、減圧環境下で封止膜90が形成される。
【0024】
また、第1の減圧チャンバー4と第2の減圧チャンバー5とは、第1の減圧チャンバー4から第2の減圧チャンバー5への基材Wの搬送経路である減圧搬送路6を介して連結されており、減圧搬送路6の内部が減圧されていることによって、減圧状態を維持したまま基材Wにカバー膜93および封止膜90を形成することが可能である。
【0025】
カバー膜形成部2は基材Wへウェットプロセスによりカバー膜材料を供給する装置であり、本実施形態ではエレクトロスプレー装置である。なお、ウェットプロセスにより成膜対象に数百nm〜数十umの膜厚のカバー膜93を形成することが可能である。なお、カバー膜93のバリア性は高くなく、後述の封止膜90によってバリア性が確保される。
【0026】
カバー膜形成部2はノズル21、シリンジ22、電源23、およびステージ24を有し、シリンジ22から供給されたカバー膜材料が内部に充填されたノズル21に対して電源23が電圧を印加することにより、ステージ24に載置された基材Wに向かって溶液材料がスプレーされる。
【0027】
ノズル21は、導電体製の管状の部材であり、開口がZ軸方向(上下方向)を向いている。また、ノズル21はシリンジ22と接続されており、シリンジ22からノズルの中空部にカバー膜材料が充填される。なお、本実施形態ではノズル21として内径0.8mm、外径1.2mmの管状体を用いている。
【0028】
また、ノズル21には電源23が接続されており、ノズル21の中空部を通るカバー膜材料に電圧を印加した状態で、溶液材料を下方から上方に向かって噴霧するように構成されている。そして、ノズル21から噴霧された溶液材料は、ノズル21と基材Wとの間でスプレーを形成し、基材Wにカバー膜93として堆積される。
【0029】
シリンジ22は、筒状のシリンダおよび当該シリンダの内壁を摺動するピストンを有し、シリンダに対してピストンが押し込まれる方向に駆動することによってシリンダ内に貯留されたカバー膜材料がピストンに対して反対側から押し出され、押し出されたカバー膜材料がノズル21に供給される。また、ピストンは図示しない駆動源に接続されており、この駆動源によりピストンは精密駆動して5〜100ul/min程度の微量のカバー膜材料をノズル21に送り出す。なお、シリンジ22は第1の減圧チャンバ4―内ではなく、チャンバー外の大気側に設置してもよい。
【0030】
ステージ24は、基材Wを把持する機構を有するプレートであり、導電性を有する。本実施形態では、ステージ24は金属板である。ステージ24は、カバー膜の形成時に基材Wに対してノズル21と反対側から基材Wに接触して基材Wを把持するとともに接地するように構成されている。これにより、電源23により電圧が印加されるノズル21とステージ24との間に電位差が生じ、ノズル21とステージ24との間に電気力線が形成される。そして、電圧が印加されてノズル21から噴出するカバー膜材料は、電気力線の影響を受けてステージ24に向かって飛行し(すなわちZ軸方向に飛行し)、スプレーを形成する。
【0031】
封止膜形成部3は、基材Wへドライプロセスにより封止膜材料を供給する装置であり、本実施形態ではプラズマCVD装置である。なお、ドライプロセスによって成膜対象に数十nm〜数umの膜厚の封止膜90を形成することが可能である。
【0032】
封止膜形成部3は、成膜チャンバー31、電極ユニット32、プラズマガス供給源33、原料ガス供給源34、高周波電源35、およびステージ36を有しており電極ユニット32が成膜チャンバー内に設けられている。成膜チャンバー31の内部が減圧された状態でプラズマガス供給源33および原料ガス供給源34からプラズマガスおよび原料ガスが供給され、高周波電源35によって電極ユニット32に高周波電力が印加されることにより、プラズマガスがプラズマ化して誘導結合プラズマが発生し、この誘導結合プラズマが原料ガスを分解させる。この分解された原料ガスがステージ36に載置された基材Wに堆積することにより、封止膜90が形成される。
【0033】
成膜チャンバー31は、たとえば複数のステンレス板が直方体状に組み合わされて構成される中空の箱状体であり、この成膜チャンバー31の内部の空間に電極ユニット32が配置される。
【0034】
また、成膜チャンバー31は一部開口しており、この開口部にメッシュ37が設けられ、メッシュ37を介して後述する第2の減圧チャンバー5と連結している。そして、第2の減圧チャンバー5の内部が減圧されることに連動して、成膜チャンバー31の内部も減圧される。
【0035】
成膜チャンバー31を形成する外壁部には、プラズマガス供給源33および原料ガス供給源34が設けられており、これらから成膜チャンバー31内にプラズマガスおよび原料ガスが供給される。
【0036】
なお、本実施形態では原料ガスとしてHMDS(ヘキサメチルジシラザン)ガスを用いている。これに対し、プラズマガスとしてアルゴンガスおよび水素ガスを用いることにより、封止膜としてSi化合物膜が形成され、また、プラズマガスとして酸素ガスが用いられることにより、封止膜としてSiO2膜が形成される。Si化合物膜はSiO2膜よりも密着性が高く、SiO2膜はSi化合物膜よりもバリア性が高い。本実施形態ではSi化合物膜とSiO2膜とが交互に形成されるよう複数回の成膜を行っており、高いバリア性と密着性の両方を具備する封止膜90を形成させている。
【0037】
電極ユニット32はたとえば銅などの導電性を有する材料で構成され、略U字状の形状を有しており、成膜チャンバー31の壁面に固定されている。
【0038】
また、電極ユニット32の両端は高周波電源35に接続されており、高周波電源35が作動して電極ユニット32に高周波電力が印加されることにより、成膜チャンバー31の内部空間にて略U字状の電極ユニット32の間で絶縁破壊が生じ、プラズマガスをプラズマ化させる。
【0039】
ステージ36は基材Wを把持する機構を有するプレートであり、メッシュ37を挟んで電極ユニット32と反対側、すなわち第2の減圧チャンバー5側に設けられている。これにより、成膜チャンバー31内で分解された原料ガスはメッシュ37を通ってステージ36へ向かい、ステージ36に載置された基材Wに封止膜を形成する。ここで、メッシュ37が接地されていることにより、分解された原料ガスのうち成膜に必要なラジカルのみがメッシュ37を通過し、成膜に不要な電子、イオン等はメッシュ37に付着もしくは跳ね返される。
【0040】
第1の減圧チャンバー4は真空ポンプ41を有し、真空ポンプ41を動作させることにより、内部空間を減圧環境(大気圧よりも低い気圧である環境)にする。そして、第1の減圧チャンバー4の内部にはカバー膜形成部2が設けられており、カバー膜形成部2を用いたウェットプロセスによるカバー膜形成作業を減圧環境下で実施することができる。
【0041】
また、第1の減圧チャンバー4にはシャッター42およびシャッター43が設けられており、シャッター42が開くことにより、カバー膜形成部2より前の工程の装置から基材Wを搬入し、シャッター43が開くことにより、カバー膜形成部2より後の工程の装置(本実施形態では封止膜形成部3)へ基材Wを搬出することができる。
【0042】
第2の減圧チャンバー5は真空ポンプ51を有し、真空ポンプ51を動作させることにより、内部空間を減圧環境にする。そして、第2の減圧チャンバー5の内部には封止膜形成部3が設けられており、封止膜形成部3を用いたドライプロセスによる封止膜形成作業を減圧環境下で実施することができる。
【0043】
また、第2の減圧チャンバー5にはシャッター52およびシャッター53が設けられており、シャッター52が開くことにより、封止膜形成部3より前の工程の装置(本実施形態ではカバー膜形成部2)から基材Wを搬入し、シャッター53が開くことにより、封止膜形成部3より後の工程の装置へ基材Wを搬出することができる。
【0044】
減圧搬送路6は、第1の減圧チャンバー4から第2の減圧チャンバー5への基材Wの搬送経路であり、隔壁61、真空ポンプ62を有している。
【0045】
隔壁61は第1の減圧チャンバー4と第2の減圧チャンバー5との間を外気から遮断する壁部であり、隔壁61で仕切られた内部を基材Wが搬送される。そして、真空ポンプ62が動作することにより減圧搬送路6内を減圧環境にすることができ、第1の減圧チャンバー4内において基材Wにカバー膜93が形成される時から第2の減圧チャンバー5内において基材Wに封止膜90が形成されるまでの間、減圧環境を維持することができる。
【0046】
ここで、第1の減圧チャンバー4内、第2の減圧チャンバー5内、および減圧搬送路6内の圧力は必ずしも同一である必要はない。たとえば、減圧搬送路6内の圧力を第1の減圧チャンバー4内および第2の減圧チャンバー5内の圧力よりも低くすることにより、第1の減圧チャンバー4内でカバー膜93が硬化するときに発生するアウトガスが第2の減圧チャンバー5内に入り込むことを防ぐことができる。
【0047】
また、減圧搬送路6内に減圧環境を維持しながらArなどの不活性ガスを供給し、第1の減圧チャンバー4や第2の減圧チャンバー5の圧力よりも高くすることにより、気体などが第1の減圧チャンバー4から減圧搬送路6内に混入することを防ぎ、また第2の減圧チャンバー5から減圧搬送路6内に混入することも防ぐことも可能となる。
【0048】
また、減圧搬送路6には基材Wを搬送する搬送装置63が設けられており、搬送装置のハンド64が第1の減圧チャンバー4へ移動することにより、基材Wをステージ24から取り出すことができ、また、ハンド64が第2の減圧チャンバー5へ移動することにより、基材Wをステージ36に載置することができる。
【0049】
次に、上記封止膜形成装置1を用いた本発明の封止膜形成方法の動作フローを
図2に示す。なお、本実施形態では真空ポンプ41、真空ポンプ51、および真空ポンプ62は常に動作しており、第1の減圧チャンバー4、第2の減圧チャンバー5、および減圧搬送路6の内部は常に減圧されているものとする。
【0050】
まず、シャッター42が開き、ウェットプロセスの前の工程の装置から第1の減圧チャンバー4内へ図示しない搬送装置によって基材Wが搬入され、ステージ24へ載置される(ステップS1)。
【0051】
次に、シャッター42が閉まり、第1の減圧チャンバー4内の圧力が所定の値となった後、ウェットプロセスにより基材Wの表面にカバー膜93が形成される(ステップS2)。
【0052】
カバー膜93が形成された後、第1の減圧チャンバー4内でカバー膜93が硬化される(ステップS3)。カバー膜93を硬化する手段は、加熱、紫外線照射などが挙げられる。
【0053】
次に、減圧搬送路6を介して第1の減圧チャンバー4から第2の減圧チャンバー5へ基材Wが搬送される(ステップS4)。これにより、カバー膜93の形成が開始する時点から封止膜90の形成が完了する時点まで減圧環境が維持される。
【0054】
ここで、基材Wの搬送時はシャッター43およびシャッター52が開き、搬送装置63によって基材Wの搬送が行われる。このとき、万が一カバー膜93の硬化の際に生じたアウトガスが第2の減圧チャンバー5に入り込んで封止膜90の形成に悪影響が生じることを防ぐために、シャッター43が開いてハンド64がステージ24から基材Wを受け取る間はシャッター52は閉まっており、ハンド64が基材Wを受け取って減圧搬送路6内に収納されてシャッター43が閉じた後にシャッター52が開くようにしている。そして、ハンド64が第2の減圧チャンバー5内に進入し、ステージ36へ基材Wを受け渡す。
【0055】
次に、シャッター52が閉まり、第2の減圧チャンバー5内の圧力が所定の値となった後、ドライプロセスによりカバー膜93の表面に封止膜90が形成される(ステップS5)。
【0056】
最後に、シャッター53が開いて、図示しない搬送装置によって第2の減圧チャンバー5から基材Wが搬出され、次の工程の装置へ搬送される(ステップS6)。
【0057】
以上の封止膜形成装置1および封止膜形成方法を用いて形成された封止膜90は
図6に示すような形態をとる。すなわち、基材Wの表面にカバー膜93が形成され、そのカバー膜93の表面に封止膜90が形成される。
【0058】
カバー膜93は流動性があるカバー膜材料をウェットプロセスを用いて基材Wに塗布することによって形成されるため、万が一第1の減圧チャンバー4に搬送された基材Wに異物91が付着していたとしてもカバー膜93が異物91を包み込み、その表面は封止膜材料が回り込めないような急峻な窪みが無い、なだらかなものとなる。そして、封止膜90はそのカバー膜93の表面に形成される。
【0059】
また、カバー膜93の形成が開始する時点から封止膜90の形成が完了する時点まで減圧環境が維持されることにより、
図7に示すようにカバー膜93の表面に異物94が付着するようなことが無いため、途切れが無くバリア性の高い封止膜90を得ることができる。
【0060】
一方、電子デバイスを製造する一連の工程では、他の工程も減圧環境下で行われるものが多いため、カバー膜93の形成が開始する時点から封止膜90の形成が完了する時点まで減圧環境が維持されることは、ウェットプロセスを行うために気圧を大気圧に戻し、ウェットプロセスを行った後再度減圧を行うといった手間を省くことができるという特徴もある。
【0061】
ここで、カバー膜93が異物91を包み込み、カバー膜93の表面がなだらかとなるためには、ウェットプロセス中はカバー膜材料は液体状態を保持することが望ましい。ただし、低圧環境下では溶剤は揮発し易くなるため、液体状態を維持することは困難である。そこで、カバー膜材料の溶剤は蒸気圧の低い溶媒を含まないことが好ましい。また、カバー膜材料自体がたとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂といった無溶剤系の液体であれば、溶剤の揮発を考慮する必要が無いため、さらに好ましい。
【0062】
また、カバー膜材料の硬化の形態については、カバー膜材料が加熱硬化型または紫外線硬化型の液体であれば、減圧環境下でも硬化の進行を制御しやすいため好ましい。また、吸水硬化型であっても良い。このとき、第1の減圧チャンバー4内に含まれる僅かな水分によって硬化するようにしても構わないが、基材Wへのカバー膜材料の供給完了後に図示しない水供給手段によって第1の減圧チャンバー4の外側から内側へ水を供給しても良い。
【0063】
次に、ウェットプロセスとしてエレクトロスプレー塗布を採用した場合における第1の減圧チャンバー4内の圧力と放電電圧との関係を
図3のグラフに示す。
【0064】
エレクトロスプレー塗布では、前述の通りノズル21に電圧を印加するが、減圧環境下ではノズル21と第1の減圧チャンバー4の壁面との間やノズル21とステージ24との間で異常放電が生じてエレクトロスプレー塗布が行いにくくなる可能性がある。
【0065】
図3は複数パターンのチャンバ内圧力におけるノズル21と第1の減圧チャンバー4の壁面との間の放電電圧をプロットしたものである。なお、本実施形態において、ノズル21と第1の減圧チャンバー4の壁面との距離は約200mmであり、ノズル21とステージ24の距離は50〜100mmである。この結果、たとえば
図3に二点鎖線で示す通り、放電電圧の変化はパッシェンの法則に従ってある圧力で極小値をとり、その圧力以下では圧力が低くなるほど放電電圧が高くなっている。
【0066】
ここで、本実施形態ではエレクトロスプレー塗布ではノズル21に約12kVの電圧を印加しており、チャンバ内圧力が0.2Pa以下であればチャンバ壁面との間での異常放電を抑えてエレクトロスプレー塗布を行い、安定してカバー膜93を形成することができる。
【0067】
以上の封止膜形成装置および封止膜形成方法により、バリア性の高い封止膜を安定して形成することができる。
【0068】
ここで、本発明の封止膜形成装置および封止膜形成方法は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、
図1の実施形態では第1の減圧チャンバー4と第2の減圧チャンバー5との間に隔壁61を有する減圧搬送路6を別個設けているが、
図4に示すように第1の減圧チャンバー4と第2の減圧チャンバー5とを直接連結させても良い。この場合、第1の減圧チャンバー4と第2の減圧チャンバー5のそれぞれの外壁の開口部が連結して形成される空間が減圧搬送路6となる。
【0069】
また、基材Wは
図1などに示すような枚葉状のものに限らず、長尺のフィルム状のものであっても良い。この場合、基材Wはロールトゥロールで搬送しても良く、このとき第1の減圧チャンバー4および第2の減圧チャンバー5に基材Wが通る最低限の寸法の開口を設け、基材Wの搬送経路とすることにより、第1の減圧チャンバー4や第2の減圧チャンバー5のプロセスで発生するガスが別チャンバーに混入しにくい構造にすることができる。
【0070】
また、カバー膜形成部2はエレクトロスプレー装置に限らず他のウェットプロセス装置であっても良い。たとえば、スリットノズル塗布装置やインクジェット塗布装置などでも良い。
【0071】
また、封止膜形成部3はCVD装置に限らず他のドライプロセス装置であっても良い。たとえば、スパッタリング装置であっても良い。