特許第6560929号(P6560929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560929
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】操作感覚再現装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20190805BHJP
   A61B 90/00 20160101ALI20190805BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20190805BHJP
【FI】
   G09B9/00 Z
   A61B90/00
   G05G5/03 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-154354(P2015-154354)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-32868(P2017-32868A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井中 千草
【審査官】 宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−181618(JP,A)
【文献】 特許第3872210(JP,B2)
【文献】 特開2000−042117(JP,A)
【文献】 特表2002−502058(JP,A)
【文献】 特開2010−015164(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/080625(WO,A1)
【文献】 特開2009−162920(JP,A)
【文献】 井出勝、外4名,"フォースレート制御を用いたカテーテル誘導用マスタスレーブシステムの開発",「日本ロボット学会誌 March 2010 Vol.28 No.2」,日本,社団法人日本ロボット学会,2010年 3月15日,第28巻,第2号,p.91-98,(特に、p.93「4 マスタツール」,Fig.2-5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00,19/24,23/28−23/34
A61B 90/00
G05G 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が操作を行う操作部と、
前記操作部の操作に応じて触感的駆動力を発生させるアクチュエータ部と、
前記操作部と前記アクチュエータ部とを連結する駆動軸部と、
を備え、前記操作部の操作に応じて、前記アクチュエータ部で発生する触感的駆動力が前記駆動軸部を通じて前記操作部に伝達されることにより、実際の操作感を体感できる操作感覚再現装置であって、
前記アクチュエータ部は、固定子と可動子とを有しており、一方が他方に挿通した状態で相対的に変位することにより触感的駆動力を発生し、
前記可動子と前記操作部とが前記駆動軸部で連結され、前記固定子、前記可動子、前記駆動軸部のそれぞれの中心軸が同一軸上に設けられていることを特徴とする操作感覚再現装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ部は複数設けられ、それぞれの前記アクチュエータ部の前記可動子に連結される前記駆動軸部が前記操作部とそれぞれ連結されており、
それぞれの駆動軸部は、その中心軸を共通にして、一の駆動軸部が他の駆動軸部に挿通されて設けられており、
それぞれの前記アクチュエータ部の前記固定子、前記可動子、前記駆動軸部のそれぞれの中心軸が同一軸上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の操作感覚再現装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ部は、前記可動子と前記固定子とが非接触で相対的に変位する非接触駆動モータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の操作感覚再現装置。
【請求項4】
前記固定子には、前記可動子が挿通する挿通孔が形成されており、この挿通孔には、前記可動子を非接触で支持するエアベアリングが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の操作感覚再現装置。
【請求項5】
前記アクチュエータ部で発生する触感的駆動力は、前記駆動軸部を中心軸方向に移動させる動作と、中心軸回りに回転させる動作に応じて発生させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の操作感覚再現装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実際の操作感覚を体感するためのシミュレータ装置であり、実物を用いることなく、操作感覚を模擬的に再現することにより、実験や訓練などを行うことができる操作感覚再現装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人が感じる触感的感覚、操作感覚をこれまで体感したことのない人に伝達したり、これらの感覚を習得させて実践感覚を養うために、シミュレータ装置(操作感覚再現装置)が使用されている。例えば、外科医療では、医療用のカテーテルを用いて血管内拡張用のステント・バルーンや閉塞用のコイルを送り込むことにより血管内の治療が行われており、このカテーテルの操作感覚を養うために操作感覚再現装置が用いられている。
【0003】
この操作感覚再現装置は、図5に示すように、使用者が操作を行う操作部100と、触感的駆動力を発生するアクチュエータ部101と、操作部100とアクチュエータ部101とを連結する駆動軸部102と、これらを統括的に制御する制御部103とを有しており、実際にカテーテルを人体に挿入した状態の画像や操作状況などが制御部103からモニタ104に映し出されるようになっている。そして、使用者が操作部100を操作することにより入力された変位量に対して、アクチュエータ部101で熟練医師が体感する触感的駆動力(触感的感覚)が発生するように制御され、操作部100の操作に応じた触感的駆動力が駆動軸部102を通じて操作部100に伝達されるようになっている。
【0004】
具体的には、アクチュエータ部101には例えばサーボモータ105が使用されており、使用者がモニタ104を視認しつつ操作部100を操作することにより、駆動軸部102の変位量がエンコーダ106で検出される。そして、この変位量に応じた駆動力がサーボモータ105から出力される。すなわち、制御部103により制御されたサーボモータ105の駆動力が中間部材107を介して駆動軸部102に伝達され、使用者は駆動軸部102を通じて操作部100の操作に応じた触感的感覚を得ることができる。これにより、実戦経験のない医師であっても、実際の人体に対して実践を行うことなく、カテーテルが血管の壁に突き当たった感覚や、血管内でバルーンを形成する感覚など微妙かつ繊細な触感的感覚を養うことができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−42118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記操作感覚再現装置では、実際の触感的感覚を正確に得るのが難しいという問題があった。すなわち、従来の操作感覚再現装置では、アクチュエータ部101の触感的駆動力を発生させる駆動源(サーボモータ105)の中心軸laが操作部100と連結される駆動軸部102(中心軸lb)に対してオフセットされた位置に位置しているため、アクチュエータ部101で発生された触感的駆動力の正確性を損ねてしまう虞があった。具体的には、アクチュエータ部101で発生させる触感的駆動力は、操作部100の操作に対して熟練医師が感じる微妙かつ繊細な触感的駆動力に調整されている場合であっても、駆動源の中心軸laと駆動軸部102の中心軸lbとがオフセットされていることにより、不要なモーメントの発生や、駆動源の中心軸laと駆動軸部102の中心軸lbとの間に存在する中間部材107の組付け精度、はめあい等の機械的ロスが触感的駆動力に影響し、操作部100に伝達される触感的駆動力が微妙にずれてしまい操作部100を操作する使用者に正確に伝わらないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、触感的駆動力を正確に伝達することができ、微妙かつ繊細な触感的感覚を養うことができる操作感覚再現装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の操作感覚再現装置は、使用者が操作を行う操作部と、前記操作部の操作に応じて触感的駆動力を発生させるアクチュエータ部と、前記操作部と前記アクチュエータ部とを連結する駆動軸部と、を備え、前記操作部の操作に応じて、前記アクチュエータ部で発生する触感的駆動力が前記駆動軸部を通じて前記操作部に伝達されることにより、実際の操作感を体感できる操作感覚再現装置であって、前記アクチュエータ部は、固定子と可動子とを有しており、一方が他方に挿通した状態で相対的に変位することにより触感的駆動力を発生し、前記可動子と前記操作部とが前記駆動軸部で連結され、前記固定子、前記可動子、前記駆動軸部のそれぞれの中心軸が同一軸上に設けられていることを特徴としている。
【0009】
上記操作感覚再現装置によれば、アクチュエータ部の固定子と可動子とが、一方が他方に挿通されることによって形成され、これら固定子、可動子、駆動軸部のそれぞれの中心軸が同一軸上に設けられていることにより、触感的駆動力を忠実に再現し、正確に伝達させることができる。すなわち、固定子、可動子、駆動軸部のそれぞれの中心軸が同一軸上に設けられていることにより、駆動軸部が摺動抵抗を極力減らした低抵抗で駆動させることができるため、熟練者が感じる微妙かつ繊細な触感的駆動力に調整された触感的駆動力を正確に再現することができる。また、従来の駆動源と駆動軸部との間に介在する中間部材が存在しないため、オフセット構造によるモーメント等の影響や、組付け精度、はめあい等の機械的ロスを抑えることができ、操作部に伝達される触感的駆動力が微妙にずれる問題を極力抑えることができる。したがって、駆動源の中心軸と駆動軸部の中心軸とがオフセットされる従来の操作感覚再現装置に比べて、アクチュエータ部で設定した触感的駆動力を正確に伝達させることができるため、使用者に対して微妙かつ繊細な触感的感覚を養うことができる。
【0010】
また、前記アクチュエータ部は複数設けられ、それぞれの前記アクチュエータ部の前記可動子に連結される前記駆動軸部が前記操作部とそれぞれ連結されており、それぞれの駆動軸部は、その中心軸を共通にして、一の駆動軸部が他の駆動軸部に挿通されて設けられており、それぞれの前記アクチュエータ部の前記固定子、前記可動子、前記駆動軸部のそれぞれの中心軸が同一軸上に設けられている構成にしてもよい。
【0011】
この構成によれば、触感的駆動力を発生させるアクチュエータ部が複数になっても、それぞれの固定子、可動子、駆動軸部のそれぞれの中心軸が同一軸上となるように配置することができるため、駆動源であるアクチュエータ部の中心軸と駆動軸部の中心軸とをオフセットさせる従来の操作感覚再現装置に比べて、駆動軸部が摺動抵抗を極力減らした低抵抗で駆動させることができるとともに、中心軸と直交する方向のスペースが不要になり全体をコンパクトにすることができる。
【0012】
また、前記アクチュエータ部は、前記可動子と前記固定子とが非接触で相対的に変位する非接触駆動モータであることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、アクチュエータ部にボールネジ、サーボモータ等の機械的な駆動源を用いる場合に比べて、摺動抵抗、脈動等の機械的な駆動源特有のロス、振動等の影響をなくすことができるため、より実物に近い触感的駆動力を正確に再現し伝達することができる。
【0014】
また、前記固定子には、前記可動子が挿通する挿通孔が形成されており、この挿通孔には、前記可動子を非接触で支持するエアベアリングが設けられている構成にしてもよい。
【0015】
この構成によれば、可動子が固定子に対して非接触で支持されるため、可動子と固定子とが相対的に移動する際の摺動抵抗の影響をなくすことができ、より実物に近い触感的駆動力を正確に再現し伝達することができる。
【0016】
また、前記アクチュエータ部で発生する触感的駆動力は、前記駆動軸部を中心軸方向に移動させる動作と、中心軸回りに回転させる動作に応じて発生させる構成にしてもよい。
【0017】
この構成によれば、使用者が操作部を中心軸方向に移動させる動作と、中心軸回りに回転させる動作とを組み合わせた触感的感覚を養うことができる。すなわち、固定子、可動子、駆動軸部のそれぞれの中心軸が同一軸上に設けられていることにより、モーメントや機械的ロス等の影響を抑えて中心軸方向及び中心軸回りのいずれにおいても低抵抗で駆動させることができるため、熟練者が感じる微妙かつ繊細な触感的駆動力に調整された触感的駆動力を正確に再現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の操作感覚再現装置によれば、触感的駆動力を正確に伝達することができ、微妙かつ繊細な触感的感覚を養うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態における操作感覚再現装置を示す図である。
図2】上記実施形態における主要部(装置本体)を示す図である。
図3】上記実施形態における固定子を示す図であり、(a)は中心軸L0と直交する方向から見た断面図、(b)は中心軸L0から見た断面図である。
図4】上記実施形態における可動子を示す図である。
図5】従来の操作感覚再現装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の操作感覚再現装置に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、操作感覚再現装置の一実施形態を示す全体図であり、図2は、操作感覚再現装置の主要部(装置本体)を示す図である。なお、以下の実施形態では、操作感覚再現装置を医療用カテーテルのトレーナ(訓練機)に適用した例について説明するが、本発明の操作感覚再現装置は、遠隔操作を必要とする手術用ロボットやバーチャルリアリティシステム等、微妙かつ繊細な触感的感覚を得るためのあらゆるシミュレータ装置に適用することができる。
【0022】
図1図2において、操作感覚再現装置は、触感的駆動力を発生する装置本体10と、装置本体10を統括的に制御する制御部50と、制御部50からの信号を受け装置本体10の使用状態をモニタリングするモニタ部60とを有している。そして、使用者が装置本体10(本実施形態ではカテーテル)を操作することにより、モニタ部60には、実際にカテーテルが人体に挿入される映像、及び、使用者の操作に応じた状態の映像がモニタ部60に映し出され、実際の操作に応じた触感的駆動力が装置本体10を通じて使用者に伝達され実際の操作感を体感できるようになっている。
【0023】
装置本体10は、使用者が操作を行う操作部11と、触感的駆動力を発生するアクチュエータユニット20と、操作部11とアクチュエータユニット20とを連結する駆動軸部30とを有している。
【0024】
操作部11は、使用者が手で握って操作するための部分であり、使用者がモニタ部60を確認しながら操作するものである。この操作部11は、ほぼ円筒形状であって、実際のカテーテルの操作部分とほぼ同じ形状に形成されている。本実施形態のアクチュエータユニット20には、後述するように、アクチュエータ部21が2つ設けられているため、それぞれに対して操作部11が独立して設けられている。
【0025】
駆動軸部30は、一方向に延びる棒状部材で形成されており、一方がアクチュエータユニット20に連結され、他方が操作部11に連結されている。この操作部11と駆動軸部30は、軸(中心軸L0)を共通にして連結されている。具体的には、操作部11及び駆動軸部30は、操作部11の中心軸lhと駆動軸部30の中心軸lsとが同一軸上(中心軸L0上)になるように連結されており、操作部11を中心軸lhに沿って変位させることにより駆動軸部30がアクチュエータユニット20に対して中心軸L0方向に変位し、操作部11を中心軸lh回りに変位させることにより駆動軸部30がアクチュエータユニット20に対して中心軸L0回りに変位(回転)するようになっている。
【0026】
駆動軸部30は、本実施形態では、アクチュエータ部21が2つ設けられていることにより、アクチュエータ部21a、21bそれぞれに対して駆動軸部30が独立して2つ設けられている。すなわち、操作部11から遠い側に位置するアクチュエータ部21aに連結される駆動軸部30a(図2参照)と、操作部11に近い側に位置するアクチュエータ部21bに連結される駆動軸部30b(図2参照)とが設けられている。これらの駆動軸部30a、30bは、それぞれの中心軸lsが同一軸上(中心軸L0上)になるように構成されている。具体的には、駆動軸部30aが駆動軸部30bに挿通されて設けられており、駆動軸部30aの中心軸lsが駆動軸部30bの中心軸lsが同一軸上になるように配置され、駆動軸部30aが駆動軸部30bに対して、中心軸L0方向と、中心軸L0回りに回転できるように構成されている。すなわち、操作部11を操作することにより、駆動軸部30a、及び、駆動軸部30bは、中心軸L0を共通にした状態で、それぞれ独立して中心軸L0方向に変位し、中心軸L0回りに回転するようになっている。すなわち、駆動軸部30a、及び、駆動軸部30bは、他の中間部材を介在させる場合に比べて、低抵抗で中心軸L0方向、及び、中心軸L0回りに回転できるようになっている。
【0027】
ここで、本発明でいう同一軸上とは、軸同士が完全に一致している場合のみならず、軸同士が僅かにずれている場合も含まれる。すなわち、双方の部材(この場合、操作部11と駆動軸部30)が他の部材(例えばローラやブロック等の中間部材)を使って構造的にオフセットされて連結されているものを除き、双方の部材が直接連結され一体的に共通の軸(この場合、中心軸L0)を基準軸として直線的な変位又は回転しているとみなすことができ、駆動軸部30からの駆動力を他の部材を介すことなくダイレクトに操作部11に伝達する構成を含むものである。
【0028】
また、アクチュエータユニット20は、ほぼ直方体のケーシング22内に、触感的駆動力を発生させるアクチュエータ部21と、駆動軸部30の変位量を計測する変位センサ部23とが設けられている。このアクチュエータ部21と変位センサ部23とは、制御部50に接続されており、制御部50で駆動制御されることにより使用者の操作部11の操作に応じた触感的駆動力を発生できるようになっている。すなわち、制御部50は、駆動軸部30の変位量に対して触感的駆動力を発生させるようにアクチュエータ部21を制御するように構成されており、カテーテルが血管の壁に突き当たった感覚や、血管内でバルーンを形成する感覚など微妙かつ繊細な触感的感覚等、熟練医師が体得している触感的感覚に対応した駆動力(触感的駆動力)が駆動軸部30の中心軸L0方向及び回転方向の変位量に応じて発生できるように構成されている。また、制御部50は、モニタに接続されており、駆動軸部30の変位量が入力されると、変位量に応じてカテーテルが人体内を進退する様子や、血管内でバルーンが膨らむ様子等、使用者が操作部11を操作することにより、実際にカテーテルを人体に対して使用した場合と同様の映像が出力されるようになっている。
【0029】
アクチュエータ部21は、カテーテル操作における触感的駆動力を発生させるものである。アクチュエータ部21は、可動子24と固定子25とを有しており、これらが互いに挿通した状態で設けられている。本実施形態では、アクチュエータ部21は、シャフトモータで構成されており、可動子24と固定子25が相対的に変位することにより、触感的駆動力を発生できるようになっている。
【0030】
本実施形態では、アクチュエータ部21は、駆動軸部30を中心軸L0方向に駆動させる軸方向駆動部41と、駆動軸部30を中心軸L0回りに回転駆動させる回転方向駆動部42とを有している。この軸方向駆動部41、回転方向駆動部42がそれぞれ制御されることにより、中心軸L0方向の駆動力と中心軸L0回りに回転する方向の駆動力を発生できるようになっている。すなわち、制御部50により駆動力の方向性、及び、駆動力の強弱を組み合わせて制御されることにより、微妙かつ繊細な触感的駆動力を発生できるようになっている。
【0031】
固定子25は、円筒形状を有しておりケーシング22内に固定されている。具体的には、図3に示すように、固定子25は、その中心部分に挿通孔26が形成されており、固定子25の中心軸lfが駆動軸部30、及び、操作部11の中心軸ls、lhと同一軸上(中心軸L0上)に位置するように配置されて固定されている。本実施形態では、この固定子25は、電気的コイルで形成されており、軸方向駆動部41では、中心軸回りに巻回して形成されるコイルC1が配置されている。また、回転方向駆動部42では、巻回して形成される電気的コイルC2が中心軸に沿って延びる形状で中心軸回りに複数個配置されて形成されている。
【0032】
また、可動子24は、棒状部材であって固定子25の挿通孔26に挿通されている。具体的には、可動子24は、固定子25の挿通孔26にエアベアリング27を介して挿通されており、挿通された状態では、固定子25に対して非接触で、かつ、それぞれの中心軸lm、lf、が一致する状態で保持されている。また、可動子24は駆動軸部30に連結されており、操作部11の操作に応じて固定子25に対して中心軸lm方向、及び、中心軸lm回りの回転方向に変位できるようになっている。
【0033】
具体的には、可動子24は、その中心軸lmと駆動軸部30の中心軸ls(=L0)が一致するように連結されており、操作部11で駆動軸部30を中心軸L0方向に変位させると可動子24が固定子25に対して中心軸L0方向に変位し、操作部11で駆動軸部30を中心軸L0回りに回転させると可動子24が固定子25に対して中心軸L0回りに回転するようになっている。すなわち、固定子25、可動子24、駆動軸部30は、それぞれの中心軸lf、lm、lsが同一軸上(中心軸L0上)になるように配置されており、可動子24及び駆動軸部30は、この中心軸L0を基準に軸方向に変位し、軸回りに回転できるようになっている。
【0034】
また、本実施形態の可動子24は、永久磁石で形成されている。具体的には、図4に示すように、N極とS極とが中心軸方向に交互に配列される直動磁石部24aと、N極とS極とが中心軸L0を中心とした周方向に交互に配列される回転磁石部24bとを有しており、これらが中心軸L0方向に配置されている。そして、可動子24が固定子25に挿通された状態では、直動磁石部24aが軸方向駆動部41に位置し、回転磁石部24bが回転方向駆動部42に位置するように配置される。これにより、軸方向駆動部41に通電されることにより可動子24が中心軸L0方向に変位し、回転方向駆動部42に通電されることにより可動子24が中心軸L0回りに変位させることができる。すなわち、軸方向駆動部41に通電されると、コイルC1に電流が流れて中心軸L0回りに流れる電流が形成される。そして、直動磁石部24aで形成される磁界によって、可動子24が中心軸L0方向の推力を受け中心軸方向に変位する。また、回転方向駆動部42に通電されると、コイルC2に電流が流れて中心軸L0に沿って方向に流れる電流が形成される。そして、回転磁石部24bとによって、可動子24が中心軸L0回りに推力を受け中心軸回りに変位する。制御部50では、これらの駆動力の方向、及び、駆動力の強弱を組み合わせて制御することにより、カテーテル操作における微妙かつ繊細な触感的駆動力を発生させるようになっている。
【0035】
また、駆動軸部30の変位量を計測する変位センサ部23は、ラインセンサが用いられている。本実施形態では、ケーシング22内に設けられたセンサヘッド23aにより、可動子24に取付けられたスケール28を読み取ることにより計測される。具体的には、図4に示すように、可動子24には、中心軸L0方向の変位を計測するスケール28aと、中心軸L0回りの回転方向の変位を計測するスケール28bが取り付けられており、それぞれセンサヘッド23aで読み取ることにより駆動軸部30の変位量が計測される。なお、本実施形態ではラインセンサを使用しているが、リニアエンコーダ、磁気センサなどを用いてもよい。
【0036】
以上、説明した本実施形態の操作感覚再現装置によれば、アクチュエータ部21で設定した触感的駆動力を正確に伝達し、微妙かつ繊細な触感的感覚を得ることができる。すなわち、固定子25、可動子24、駆動軸部30が、それぞれの中心軸lf、lm、lsが同一軸上(中心軸L0上)になるように配置されており、可動子24及び駆動軸部30は、この中心軸L0を基準に軸方向に変位し、中心軸L0回りに回転できるように構成されているため、摺動抵抗を極力減らした低抵抗で駆動させることができ、熟練医師が感じる微妙かつ繊細な触感的駆動力に調整された触感的駆動力を正確に再現することができる。すなわち、駆動源の中心軸と駆動軸部30の中心軸lsとがオフセットされる従来の操作感覚再現装置に比べて、オフセット構造によるモーメント等の影響や、組付け精度、はめあい等が触感的駆動力に影響し、操作部11に伝達される触感的駆動力が微妙にずれる問題を極力抑えることができる。
【0037】
また、上記実施形態では、可動子24と固定子25とが磁力による駆動源であるシャフトモータ(非接触駆動モータ)を使用する例について説明したが、機械的振動をある程度許容できる用途については、シャフトモータに変えてサーボモータとボールネジ等の機械的な駆動動力源を使用するものであってもよい。この場合であっても、可動子24(ボールネジのブロック)、固定子25(ボールネジのベース)、駆動軸部30について、それぞれの中心軸lf、lmが同一軸上(中心軸L0上)になるように配置されていることにより、駆動源の中心軸と駆動軸部30の中心軸lsとがオフセットされる構成の従来の操作感覚再現装置に比べて、オフセット構造によるモーメント等の影響を回避でき、摺動抵抗を極力減らした低抵抗で駆動させることができる操作感覚再現装置とすることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、外径側に固定子25である電気的コイルが配置され、内径側に可動子24である永久磁石を配置する例について説明したが、電気的コイルと永久磁石の配置を逆にして、内径側に電気的コイルを固定し、その外径側に永久磁石を配置して、上記同様、電気的コイルを固定子25、外径側の永久磁石を可動子24として、固定子25と可動子24とが相対的に中心軸方向に変位する構成であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、可動子24が永久磁石であって、固定子25が電気的コイルである例について説明したが、可動子24が電気的コイルであって、固定子25が永久磁石であるものであってもよい。すなわち、いずれを可動子24、固定子25に設定した場合でも、可動子24、固定子25、駆動軸部30について、それぞれの中心軸lf、lm、lsが同一軸上(中心軸L0上)になるように配置されていればよい。
【0040】
また、上記実施形態では、可動子24と固定子25との間にエアベアリング27を介装させることにより、固定子25と可動子24とが非接触で支持される例について説明したが、摺動抵抗を極限まで抑える必要がなく、ある程度許容される用途については、エアベアリング27に変えて低摺動抵抗のカラー等で構成するものであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、アクチュエータユニット20にアクチュエータ部21が2つ設けられる例について説明したが、用途に応じて、アクチュエータ部21が1つでもよく、逆に3つ以上設けられるものであってもよい。すなわち、アクチュエータ部21の数にかかわらず、可動子24、固定子25、駆動軸部30について、それぞれの中心軸lf、lm、lsが同一軸上(中心軸L0上)になるように配置されていればよい。
【0042】
また、上記実施形態では、触感的駆動力が中心軸L0の軸方向と中心軸L0回りの回転方向に発生する例について説明したが、用途に応じて、中心軸L0の軸方向のみ、又は、中心軸L0回りの回転方向のみに駆動する操作感覚再現装置としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 装置本体
11 操作部
20 アクチュエータユニット
21 アクチュエータ部
21a アクチュエータ部
21b アクチュエータ部
24 可動子
25 固定子
30 駆動軸部
L0 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5