(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561003
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】工作機械の熱変位補正方法、工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/18 20060101AFI20190805BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
B23Q15/18
G05B19/404 K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-55852(P2016-55852)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-170532(P2017-170532A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 祐司
【審査官】
武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−85581(JP,A)
【文献】
特開2013−27946(JP,A)
【文献】
特開2012−240137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00−15/28
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に設置した温度センサから得られる温度情報に基づいて所定の熱変位推定式を用いて熱変位推定量を求め、前記熱変位推定量に基づいて軸指令値を補正する熱変位補正手段を有し、前記熱変位補正手段が、前記熱変位推定量を、第1の熱変位推定式に基づいて推定した第1の熱変位推定量から、第2の熱変位推定式に基づいて推定した第2の熱変位推定量に切替可能な切替機能を備える工作機械において、前記軸指令値を補正する方法であって、
所定の座標位置で前記熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における前記第1の熱変位推定量と前記第2の熱変位推定量との差分を求め、前記差分と前記第2の熱変位推定量とに基づいて前記軸指令値の補正量を決定することを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
【請求項2】
前記熱変位推定量の差分は、ワーク原点の座標位置で求めることを特徴とする請求項1に記載の工作機械の熱変位補正方法。
【請求項3】
前記熱変位推定量の切替時点は、前記所定の座標位置での加工開始時点であり、前記第1の熱変位推定量は、当該加工開始時点以前に取得した前記温度情報に基づいて求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械の熱変位補正方法。
【請求項4】
所定位置に設置した温度センサから得られる温度情報に基づいて所定の熱変位推定式を用いて熱変位推定量を求め、前記熱変位推定量に基づいて軸指令値を補正する熱変位補正手段を有し、前記熱変位補正手段が、前記熱変位推定量を、第1の熱変位推定式に基づいて推定した第1の熱変位推定量から、第2の熱変位推定式に基づいて推定した第2の熱変位推定量に切替可能な切替機能を有する工作機械であって、
前記熱変位補正手段は、所定の座標位置で前記熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における前記第1の熱変位推定量と前記第2の熱変位推定量との差分を求め、前記差分と前記第2の熱変位推定量とに基づいて前記軸指令値の補正量を決定することを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械において温度情報を元に熱変位を推定して軸指令値を補正する熱変位補正方法と、当該方法を実施する工作機械とに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を用いて加工を行う場合、主軸や送り軸動作などの機械発熱、及び工作機械の設置環境の温度変化や、クーラントの温度変化などの影響により、工作機械各部が熱変形を起こす。こうした熱変位は、工具とワークとの相対位置を変化させることになるため、加工中に工作機械に熱変位が生じると、ワークの加工精度が悪化してしまう。
加工精度を確保する方法として、特に同一ワークを繰り返し加工する量産加工においては、ワーク寸法を計測し、それを機械の補正量にフィードバックする方法が一般に用いられている。しかしながら、フィードバックの頻度を増やすと生産性が低下する場合がある。特に、加工精度の必要な箇所が複数ある場合にはそれらを全て測定し、それぞれの部位について補正をかける必要がある。そのため計測に要する時間が長くなり、処理も複雑になるという問題もある。また、量産加工でない場合には、計測フィードバックを行うことが困難な場合が多い。
【0003】
そのような理由から、工作機械の熱変位を抑制する方法としては、工作機械の構造体各部に取り付けた温度センサにより測定した温度、あるいは主軸や送り軸などの運転条件から、予めプログラムされた熱変位推定式に基づいて変位量を推定し、それに応じて軸移動量を変化させる熱変位補正が有効であり広く用いられている。例えば特許文献1には、センサで検出したワークまたはスケールの温度と基準温度との温度差に線膨張係数と距離を掛けることで熱変位量を推定し、熱変位補正を行う方法が開示されている。
しかし、実際の加工においては、機台差による機械発熱のばらつきや、加工するワークの材質や大きさの違いなど様々な要因により、予めプログラムされた熱変位推定式では熱変位量がうまく推定できず、補正誤差が大きくなってしまうことがある。この問題に対処するため、特許文献2では、実測結果に基づいて、熱変位推定式における係数を修正し、それによって主軸および送り軸の発熱による熱変位の推定精度を向上させる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4359573号公報
【特許文献2】特許第3405965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2で提案されている熱変位推定式における係数の修正を加工の途中で実施することは以下の理由により困難であると思われる。すなわち、加工途中の主軸や送り軸の発熱がある状態で熱変位推定式を変更(切替)した場合、変更を行った時点で大きく補正量が変化することにより寸法が急激に変化したり、段差が生じて加工目が悪化したりする恐れがあるからである。そのため、一旦加工を終了し、発熱した主軸や送り軸が十分冷却された後で係数の修正を実施する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、熱変位推定式を切り替えた場合に生じる熱変位補正量の急激な変化をキャンセルする処理を行うことにより、熱変位推定式の切替による熱変位の推定精度向上のメリットを維持しつつ、加工の途中等であっても必要に応じて熱変位推定式を切り替えて加工精度を向上させることができる工作機械の熱変位補正方法及び、当該方法を実施する工作機械を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定位置に設置した温度センサから得られる温度情報に基づいて所定の熱変位推定式を用いて熱変位推定量を求め、前記熱変位推定量に基づいて軸指令値を補正する熱変位補正手段を有し、前記熱変位補正手段が、前記熱変位推定量を、第1の熱変位推定式に基づいて推定した第1の熱変位推定量から、第2の熱変位推定式に基づいて推定した第2の熱変位推定量に切替可能な切替機能を備える工作機械において、前記軸指令値を補正する方法であって、
所定の座標位置で前記熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における前記第1の熱変位推定量と前記第2の熱変位推定量との差分を求め、前記差分と前記第2の熱変位推定量とに基づいて前記軸指令値の補正量を決定することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、前記熱変位推定量の差分は、ワーク原点の座標位置で求めることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、前記熱変位推定量の切替時点は、前記所定の座標位置での加工開始時点であり、前記第1の熱変位推定量は、当該加工開始時点以前に取得した前記温度情報に基づいて求めることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、所定位置に設置した温度センサから得られる温度情報に基づいて所定の熱変位推定式を用いて熱変位推定量を求め、前記熱変位推定量に基づいて軸指令値を補正する熱変位補正手段を有し、前記熱変位補正手段が、前記熱変位推定量を、第1の熱変位推定式に基づいて推定した第1の熱変位推定量から、第2の熱変位推定式に基づいて推定した第2の熱変位推定量に切替可能な切替機能を有する工作機械であって、
前記熱変位補正手段は、所定の座標位置で前記熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における前記第1の熱変位推定量と前記第2の熱変位推定量との差分を求め、前記差分と前記第2の熱変位推定量とに基づいて前記軸指令値の補正量を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、切替時点における第1の熱変位推定量と第2の熱変位推定量との差分を求め、当該差分と第2の熱変位推定量とに基づいて軸指令値の補正量を決定することで、熱変位推定式を切り替えた場合に生じる熱変位補正量の急激な変化をキャンセルすることができる。よって、熱変位推定式の切替による熱変位の推定精度向上のメリットを維持しつつ、加工の途中等であっても必要に応じて熱変位推定式を切り替えて加工精度を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、熱変位推定量の差分をワーク原点の座標位置で求めることで、ワーク全体の加工精度を向上させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加えて、熱変位推定量の切替時点を所定の座標位置での加工開始時点として、第1の熱変位推定量を当該加工開始時点以前に取得した温度情報に基づいて求めることで、熱変位補正量の変更と同時にそれまでの基準寸法からのズレも修正されて加工精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ある加工事例における寸法変化と熱変位補正結果とを示す図である。
【
図3】ある加工事例における寸法変化と熱変位推定量とを示す図である。
【
図4】通常の方法で熱変位補正を行った結果を示す図である。
【
図5】式(2)に基づいて熱変位推定式の切替を行った結果を示す図である。
【
図6】式(4)に基づいて熱変位推定式の切替を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械の一例であるNC旋盤の説明図であるが、本発明はこれに限らず、マシニングセンタ、複合加工機のような他の形態の工作機械にも適用可能である。
NC旋盤1は、刃物台2、土台となるベッド3、主軸台4を構造体として備えた周知の構造で、これらの構造体には、温度センサ5〜7がそれぞれ取り付けられている。
一般に機械が冷えた状態から加工を開始すると、主軸発熱や切削液の温度変化により、熱変位が生じる。そこで、NC旋盤1では、熱変位補正部10を設けて、各温度センサ5〜7による検出信号を、温度測定部11によって温度数値として取得し、補正量演算部12によって熱変位補正量を演算し、演算された熱変位補正量に基づいてNC装置13が軸指令値の補正を行って図示しない送り軸モータ等を制御するようになっている。14は、補正量演算部12において熱変位補正量の演算に用いる熱変位推定式や演算された熱変位補正量、温度情報等を記憶するための記憶部である。
【0011】
図2は、NC旋盤1によってある加工を行って熱変位が生じたときの寸法変化の例、
図3はそのときの熱変位推定量変化を示す図である。以下、これらの図を用いて、熱変位補正手段となる熱変位補正部10による熱変位補正量(以下単に「補正量」という。)の決定方法について詳述する。
図2の例では、加工時間が15分のワークを4時間稼動、1時間停止、4時間稼動のサイクルで繰り返し加工している。熱変位補正なしの場合では、主軸や切削液の温度上昇による熱変位の影響により時間の経過とともにワークの加工寸法が三角点線1のように大きく変化していく。熱変位補正を適用した場合、熱変位推定式が適切であれば、
図3の太実線3のように
図2の三角点線1の変化と一致するように熱変位が推定でき、これに基づいて補正を行うことで、
図2の丸点線3のように寸法変化を抑制することができる。
【0012】
しかし、熱変位推定式の精度が悪いと、
図3の細実線2のように刃先の変化と推定した熱変位推定量とに差が生じ、補正を行ったとしても
図2の四角点線2のように寸法変化が残ってしまう。あるいはこの例とは逆に実際の熱変位に対して推定された熱変位が大きすぎるために逆方向に寸法が変化してしまう場合も起こりえる。こうした推定誤差は加工するワークの大きさや材質、切削液のかかり方、使用環境など様々な要因で生じ、完全になくすことは難しい。
【0013】
そこで、熱変位補正部10は、熱変位推定精度が悪い場合には、実際に加工した寸法変化のデータに基づいて熱変位推定式を修正する切替機能を備えている。このように熱変位推定式を切り替えれば、加工での寸法変化を抑制できる。まず、この切替機能について説明する。
熱変位推定式は、例えば以下のような式(1)で表される。
【0015】
ここで、θ
1〜θ
3は各部の温度、θ
0は寸法を必要とする基準温度(例えば20℃での寸法が必要な場合はθ
0=20℃)、xは機械の座標、k
1〜k
3は各部の温度に対する比例係数、l
1〜l
3は各部の温度と機械の座標に対する比例係数、Sは定数項である。
式(1)の熱変位推定式は温度の一次式となっており、各部の温度および機械の座標によって熱変位推定量が求められ、これが補正量となって熱変位補正が実施される。ただし、式(1)は熱変位推定式の一例であり、座標によらず温度のみに依存する式としても良い。また二次式や微分要素や積分要素を含んだ式など、さらに複雑な式を設定したとしても、本発明の手法は適用可能である。
【0016】
予め寸法変化と温度変化を分析し、式(1)での比例係数k
1〜k
3とl
1〜l
3を決定すれば、加工するワークに合わせた熱変位推定式を決定できる。例えば、
図3の三角点線1のような寸法変化に対し、最初は細実線2のような熱変位推定量変化となる熱変位推定式Aが設定されていたとする。この場合、熱変位推定量変化(グラフの線の傾き)が、三角点線1の寸法変化と一致していないため、
図2の四角点線2のように熱変位補正を行っても寸法変化が残ってしまう。
しかし、加工結果の寸法変化と温度変化のデータから、重回帰分析のような公知の多変量解析手法を用いて、式(1)の係数k
1〜k
3とl
1〜l
3を決定することにより、実際の加工結果に基づいた最適な熱変位推定式を構築できる。
【0017】
このようにして
図3の太実線3のような熱変位推定量変化となる最適な熱変位推定式Bを設定してこれに切り替えれば、熱変位推定量変化が寸法変化と一致するため、
図2の丸点線3のように寸法変化を抑制することができる。寸法変化と温度変化の相関に再現性があれば、ある日の加工結果の寸法変化と温度変化のデータから、最適な熱変位推定式を決定し、それ以降は決定した熱変位推定式を補正に適用することで加工精度を高めることが可能である。
【0018】
次に、加工の途中において、熱変位推定式を切り替えることを考える。
例えば加工開始2時間後において、最初に設定されていた熱変位推定式A(第1の熱変位推定式)から最適化された熱変位推定式B(第2の熱変位推定式)に切り替えたとする。この場合、
図4の丸点線3のように、切替時点(2時間経過時点)での熱変位推定式Aの補正量と熱変位推定式Bの補正量との差分だけ補正量が変化することになる。このとき、切り替えた後は変化が小さくなるが、切替時点では寸法が大きく変化してしまうため、変更してすぐのワークは精度不良になってしまうと考えられる。
そこで、このような急激な補正量変化を防ぐためには、切替時点での熱変位推定式Aによる熱変位推定量(第1の熱変位推定量)と熱変位推定式Bによる熱変位推定量(第2の熱変位推定量)との差分を求め、その分をシフトさせた量を切替後の熱変位推定量(第2の熱変位推定量)に加算して補正量とすればよい。このときある時点tとある座標xでの補正量は以下の式(2)で表される。
【0020】
式(2)に基づいて補正量の変更を実行したとき、加工結果は
図5の丸点線3のようになり、加工開始2時間後での突然の寸法変化の問題はなくなる。
ここで、以上の補正量の変更に加えて、熱変位推定式の切替時点での基準寸法からのズレ分をワーク原点オフセットの再設定あるいは工具補正量の変更により修正すれば、以降の加工は計測によるフィードバックを行わなくても熱変位補正を有効にしておくだけで基準寸法に近い値で加工することができる。
【0021】
なお、式(2)の例では、寸法を合わせたい位置の座標x
1での熱変位推定量の差分を計算してシフトさせている。寸法を合わせたい位置が1箇所の場合はこの方法が有効であるが、加工精度を必要とする箇所が複数ある場合には、以下の式(3)のようにワーク原点の座標x
0での熱変位推定量の差分を計算して補正した方がワーク全体の加工精度を向上させるのに都合がよい。
【0023】
但し、式(3)の方法では、ワーク原点の再測定を実施し、ワーク原点オフセットの値を再設定することにより、補正量変更時点での基準からのズレ分を修正する必要がある。この手間を省き、変更時点での基準からのズレ分についても補正量の変更で対応するためには、以下のような方法がある。
【0024】
図2のグラフの丸点線3は、加工開始時点から切替後の熱変位推定式ΔC
Bを適用した場合の加工結果であり、この場合の結果に一致するように補正量をシフトさせることを考える。これを実現するには、変更後の補正量を以下の式(4)のように決定すればよい。この式(4)は、加工開始時点における、切替前(加工前)の熱変位推定式で求められる熱変位推定量と切替後の熱変位推定式で求められる熱変位推定量とをそれぞれ計算し、その差分をオフセットさせることを表している。座標位置は式(3)と同じワーク原点位置である。
【0026】
この式(4)により、補正量を変更した場合は、加工結果は
図6の丸点線3のようになる。変更後の寸法変化は、
図2のグラフの丸点線3で示した加工開始時点から切替後の熱変位推定式ΔC
Bを適用した場合の結果に一致し、補正量変更と同時にそれまでの基準寸法からのズレも修正され加工精度が維持されていることが分かる。
【0027】
ただし、式(4)を実現するためには、加工開始時点における補正量を遡って計算できるようにする必要がある。そのため、補正量の計算に必要な温度情報を予め記憶部14に記録しておく必要がある。加工開始時点の設定としては、加工に使用するワーク原点オフセットを設定した時刻とする方法や、電源投入時、あるいはプログラム起動時とする方法が考えられる。加工開始時点に設定するタイミングで、補正量の計算に必要な温度情報をNC装置13のメモリなどに記録するシステムとしてもよい。あるいは必要な温度情報を予め一定の時間間隔で記録するシステムとしておけば、基準となるタイミングを後から任意に設定することも可能である。
【0028】
このように、上記形態の熱変位補正方法及びNC旋盤1によれば、所定の座標位置で熱変位推定量を切り替える際、当該切替時点における切替前の熱変位推定量と切替後の熱変位推定量との差分を求め、当該差分と切替後の熱変位推定量とに基づいて軸指令値の補正量を決定することで、熱変位推定式を切り替えた場合に生じる熱変位補正量の急激な変化をキャンセルすることができる。よって、熱変位推定式の切替による熱変位の推定精度向上のメリットを維持しつつ、加工の途中等であっても必要に応じて熱変位推定式を切り替えて加工精度を向上させることができる。
【0029】
なお、温度センサの設置位置や数は工作機械の形態に応じて適宜変更することができる。また、補正量を求める式(2)〜(4)の選択も任意である。
【符号の説明】
【0030】
1・・NC旋盤、2・・刃物台、3・・ベッド、4・・主軸台、5〜7・・温度センサ。