(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。
1は炊飯器の本体、3は本体1の上方開口部に着脱自在に収納される内鍋、9は本体1に設け内鍋3を収容する内容器である。内鍋3は、鉄−ステンレスなどの磁性体を用いる。内鍋3は、有底筒状であり、本体1からの着脱操作がしやすいように、その上端に外側に広がる上端部3cを設けている。2は本体1の上面開口部を上方から覆う外蓋である。外蓋2は、外蓋回転軸1aを支点として開閉する。4は外蓋2の下面に装着され、内鍋3の上面開口部3aを覆うステンレス製の内蓋である。4aは内蓋4に備えて内鍋3の上方開口部3aをシールするシール材である。外蓋2は内蓋4を加熱する蓋加熱手段10を備える。12は、内鍋3を誘導加熱する誘導加熱コイルから成る加熱手段である。12は内容器9の内部底面9aに位置し内鍋3を加熱するヒータを鋳込んだ加熱板を設ける加熱手段でもよい。前記加熱板による加熱手段12で加熱する場合の内鍋3はアルミ等の非磁性体でもよい。13は内鍋3の底面の温度を検知する温度検出手段である。
【0010】
7は設定や設定内容を確認する操作部で、炊飯と炊飯同時蒸し調理を設定する
図10に示す炊飯ボタン7aと炊飯同時蒸し調理ボタン7bを備える。6は、マイコンを備えて操作部7の設定や温度検出手段13の検出値に基づいて加熱手段12と蓋加熱手段10とを制御する制御手段である。
【0011】
24はインバータ回路であり、後述する制御手段6の出力に応じて加熱手段12に供給する電力を制御するものである。
【0012】
20は、内鍋3の内部に収容した状態で使用する支持部材で、21は支持部材20の中に着脱自在に収納する蒸し容器である。本実施例では、支持部材20と蒸し容器21が蒸し器具22を構成する部材である。なお、蒸し器具22は支持部材20と蒸し容器21にのみ限定するものではなく、被調理物の載置部材や、蒸気透過性或いは蒸気非透過性の蓋部材など、他の部材との組み合わせであっても良い。
【0013】
本体1は、マイコンを備えた制御手段6を有する。制御手段6には、メモリに記憶された制御プログラムを有しており、操作部7の設定に応じてマイコンが炊飯器としての働きを実行する。
【0014】
図9に示すように制御手段6は、操作部7からの入力情報と、温度検出手段13の温度情報により、インバータ回路24を介して加熱手段12の火力の制御と、蓋加熱手段10の火力の制御を行う。
【0015】
図10において操作部7を説明する。操作部7は、内鍋3を使ってご飯を炊飯する以外の調理を選択するメニューボタン7g、炊飯と同時に他の調理を行う炊飯同時蒸し調理ボタン7b、炊飯を開始する炊飯ボタン7aと、設定した内容を表示する表示部7d、予約タイマーを設定する予約ボタン7fと、時計設定や予約タイマーで時間を調整する調整ボタン7e、動作を停止する切ボタン7cを備える。なお、各種ボタン(炊飯ボタン7a、炊飯同時蒸し調理ボタン7b、切ボタン7c、予約ボタン7f、メニューボタン7g)は、機械式スイッチ、電気式スイッチ、静電容量式スイッチなど、各種機能を切り替えることができる公知のスイッチやボタンを採用することができる。また、各種ボタン(炊飯ボタン7a、炊飯同時蒸し調理ボタン7b、切ボタン7c、予約ボタン7f、メニューボタン7g)には、
図10では、各機能を表示する日本語の文字が記載されているが、これに限らず、炊飯器の操作を示すイラストやアイコン、各国の言語に対応した文字表示など、各種ボタンの操作でどのような機能を実現できるかを使用者に認識させる構成であれば、適用可能である。
【0016】
炊飯同時蒸し調理ボタン7bは、内鍋3で炊飯するのと同時に調理する場合に選ぶボタンで、炊飯同時蒸し調理ボタン7bを操作した後、炊飯を開始する炊飯ボタン7aを操作する。通常のご飯を炊く場合、すなわち炊飯では、炊飯同時蒸し調理ボタン7bを選択せずに炊飯ボタン7aを操作する。
【0017】
図3、4は、内鍋3に蒸し器具22を装着した状態を示し、
図5、6は支持部材20、
図7、8は蒸し容器21を示す。
【0018】
蒸し器具22は、それぞれ別体の支持部材20と蒸し容器21を有する。支持部材20は、鋼材等の金属をプレス成型した構成や、耐熱樹脂の成型品による構成であってもよい。支持部材20は、底部20bの外周に側部20aを備えた有底筒状の部材で、その上方には上部開口20cが形成されている。側部20aの上端部20kは、外向きにロール状に曲げられた状態で張り出しているフランジ部20dを備える。支持部材20は、フランジ部20dで内鍋3に設ける上段部3bに掛けて内鍋3内に着脱して固定する。ここで、内鍋3(上段部3b)と支持部材20の上縁(フランジ部20d)が同等の高さ位置であると、シール材4aの接触が内鍋3(上段部3b)或いは支持部材20(フランジ部20d)のいずれかに当接、又は両者の間に挟まれることにより、シールが不完全になる場合がある。
【0019】
そこで本実施例では、支持部材20の上縁であるフランジ部20dは、内鍋3の上縁である上端部3cよりも下方の上段部3bに係止する。この構成で、外蓋2を閉じると、内蓋4周縁のシール部材4aが支持部材20上縁のフランジ部20dに阻害されずに内鍋3に接触するので、確実にシールすることができる。
【0020】
支持部材20の底部20bには、略一面に蒸気を流通させる複数個の孔20eが形成されている。この孔20eは、丸形小径の孔で、
図6に示すように、中央部周辺に配置する複数の孔20e1と、この孔20e1よりも外周部に複数配置する孔20e2が形成されている。支持部材20は、内鍋3に水だけを入れて、汁もの以外(例えばもち米など)を蒸すためにも使用する。
【0021】
また、
図4に示すように側部20aは内鍋3の側面と略近接して蒸気が流通しにくいため、側面20aの全体には、蒸気を流通させる孔20eは設けていない。側面20aに孔20eを設けないことにより、生産コストを抑えることができる。
【0022】
また、底部20bの上面側に略中央部に円形凸状の補強用のリブ20mを設け、リブ20mを中心として複数の放射状に配置する四角形凸状の補強用のリブ20gを設けている。底部20bの下面側に、直接台に置くための下側へ張り出す脚部20nを複数設けている。
【0023】
前記孔20eは、底部20bより上方に向けた凸部の上部に形成することで、底部20bに溜まった結露水や食品から出た汁を孔20eより滴下するのを防止することができる。
【0024】
蒸し容器21は、耐熱樹脂を成型した構成を図示するが、アルミ等の金属で構成してもよい。底部21bの外周に側部21aを備えた深皿状の部材である。側部21aの上方端部21kには、外向き円弧状に張り出すフランジ部21dを備える。側部21aの対向する一対の位置は内側に凹み部を設け、上方端部21kのフランジ部21dの一部に手掛け部21hを有する。蒸し容器21は、底部21b、側部21aは無孔である。底部21bには中心部に円状で上方に凸状の補強用のリブ21Pを備え、複数の同心円で上方に凸状の環状の補強用のリブ21Pを備える。
図4の断面図に示すように、底部21bは中心部が高く外周に向けて低くなる略円錐状に湾曲している。
【0025】
蒸し容器21は、支持部材20の中に収容される大きさである。底部21bの下面21nには複数の脚部21mを設けている。
図4に示すように、蒸し容器21の底部21b、側部21aと、支持部材20の底部20b、側部20aとの間に空間22aを設ける。脚部21mにより蒸し容器21を本体1から外して台に置くときの安定を確保できる。なお、蒸し容器21の脚部21aの数と、脚部21aが載置される支持部材20のリブ20gの数は、ガタつき防止や設置の安定性が確保できれば、異なる数でもよいし、同じ数でもよい。
【0026】
このように蒸し容器21は、深皿状の容器であるため、例えば、煮物、プリン、酒蒸し等の液体の入った食材を蒸し容器21内に直接入れて料理することができる。また、炊飯中に例えおねばが上昇したとしても上昇したおねばが食材に触れることはない。
【0027】
蒸し容器21を支持部材20内にセットする際には、フランジ部21dの手掛け部21hに指を掛けて、蒸し容器21を支持部材20内に挿入して、蒸し容器21の脚部21mで支持部材20の底部20bに載置されてセットする。
【0028】
また、蒸し容器21の中には、すのこ状で蒸しものを載置する網状の台は使用しない。蒸し時に、底部21bから直接加熱するので調味料や汁を含んだ食材を加熱するのに好都合である。
【0029】
なお、蒸し器具22の高さは、内鍋3の高さの半分以下としており、蒸し器具22の下方の内鍋3内で同時に炊飯を行うことになる。この場合、内鍋3内の炊飯可能な容量が半減するため、炊飯量も少なくなり、例えば1合または2合程度である。
【0030】
本実施例の炊飯器は以上の構成よりなり、以下でその動作を説明する。
支持部材20内に蒸し容器21をセットした蒸し器具22を炊飯器1の内鍋3内にセットすると、
図3、
図4に示すように、支持部材20のフランジ部20dは、内鍋3の上方端部の上段部3bに掛けて固定される。
【0031】
図2に示すように、外蓋2を閉めると、内蓋4下面のシール材4a(
図1)は、内鍋3の最上段側の上端部3cの内周面に当接し、蒸気が外部へ逃げるのを防止する。
【0032】
操作部7で、炊飯同時蒸し調理ボタン7bを選択して設定してから、炊飯ボタン7aを操作することで炊飯工程30が開始する。
【0033】
炊飯工程30は、浸し工程31、加熱沸騰維持工程32、蒸らし工程33で構成する。浸し工程31では、お米に水を多く吸収させることで、炊き上げ後のご飯のもちもち感が強くなる。お米の水の吸収は、お米を水に浸す時間が長い程、お米の水を吸収する量は増加する。また浸し時の温度を高くすることでお米の水の吸収速度を速く出来る事は知られている。加熱沸騰維持工程32では、お米を炊き上げる工程である。高火力で加熱して沸騰して、温度検出手段13はドライアップを検出する。蒸らし工程33では、ご飯まで蒸気で水分を多く供給している。
【0034】
炊飯が行われると、加熱沸騰維持工程32中に内鍋3内で水が沸騰して蒸気が発生する。発生した蒸気は、内鍋3内の上方から満ち、蒸らし工程33時にも内鍋3内を蒸気が充満している。
【0035】
支持部材20を取り巻く前記蒸気は、支持部材20の底部20bの孔20eを介して、蒸し容器21の底部21bと側部21bと上方から蒸し容器21を加熱し、蒸し容器21内の内容物を蒸す。
【0036】
図11に示すように、制御手段6は、操作部7による入力情報によって、調理が炊飯である場合には、炊飯工程30は、炊飯加熱パターンRで制御し、ご飯が炊けた炊飯工程30の後の保温工程34は、炊飯保温パターンPで制御する。
【0037】
一方、制御手段6は、操作部7で炊飯同時蒸し調理ボタン7bを選択し設定した入力情報によって、炊飯同時蒸し調理を調理する場合には、炊飯工程30は、前述した炊飯と同じ炊飯加熱パターンRで制御し、ご飯が炊けた炊飯工程30の後の保温工程34は、同時調理保温パターンQで制御する。
【0038】
同時調理保温パターンQは、炊飯保温パターンPに比べて、蓋加熱手段10の火力を小さくした制御である。例えば、炊飯保温パターンPは蓋加熱手段10の通電率が約50%、同時調理保温パターンQは、蓋加熱手段10の通電率が約40%である。
【0039】
この理由は、炊飯同時蒸し調理のときには、蓋加熱手段10からの熱によって内蓋4が加熱されて直下に位置する蒸し容器22の内容物が乾燥しないようにするためである。
また、蒸し容器22の内容物の調理が、過度に進行するのを防ぐためである。
【0040】
更に、蓋加熱手段10をオフ(通電率は約0%)にしてしまうと、内蓋4に露が付いて蒸し容器22の内容物に滴下して調理物の食味を低下させてしまうので、内蓋4に露が付かない程度を維持しながら、内蓋4の温度を白米だけを炊飯した保温工程時より早く下げるためである。これは、白米だけを炊飯した保温工程でも内蓋4に露が付かないようにしながら内蓋4の温度を米飯の保温温度まで下げるが、炊飯同時蒸し調理では保温温度で長時間維持することは目的としていないので、内蓋4の温度を白米だけを炊飯した保温工程時より早く温度を下げるものである。
【0041】
こうして調理する炊飯同時蒸し調理には、醤油ソースの蒸し車えび、上海風蒸し鶏肉、オイスターソースのミックス野菜などがある。いずれも、内鍋3でご飯を炊き、同時に調理を仕上げることができる。こうした汁のあるものだけでなく、蒸し野菜など手軽に利用できる。
【0042】
上記した本実施例によれば、美味しくご飯が炊け、美味しく同時調理ができる。