特許第6561053号(P6561053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561053光源からオフセットされた発光要素を備える、特に自動車の照明部材のための照明システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561053
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】光源からオフセットされた発光要素を備える、特に自動車の照明部材のための照明システム
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/50 20180101AFI20190805BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20190805BHJP
   F21S 41/50 20180101ALI20190805BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20190805BHJP
   F21S 41/43 20180101ALI20190805BHJP
   B60Q 3/74 20170101ALI20190805BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20190805BHJP
   F21W 103/15 20180101ALN20190805BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20190805BHJP
   F21W 103/45 20180101ALN20190805BHJP
   F21W 103/55 20180101ALN20190805BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190805BHJP
【FI】
   F21S43/50
   F21S43/14
   F21S41/50
   F21S41/143
   F21S41/43
   B60Q3/74
   F21W102:30
   F21W103:15
   F21W103:35
   F21W103:45
   F21W103:55
   F21Y115:10
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-528583(P2016-528583)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公表番号】特表2017-506792(P2017-506792A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】FR2014051854
(87)【国際公開番号】WO2015011382
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年6月16日
(31)【優先権主張番号】1357169
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グロディディエ, フランソワ
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−282935(JP,A)
【文献】 特表2009−512151(JP,A)
【文献】 特表2008−533726(JP,A)
【文献】 特表2011−528162(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0264201(US,A1)
【文献】 特表2006−521667(JP,A)
【文献】 特開昭63−006702(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0116258(US,A1)
【文献】 特開2003−317507(JP,A)
【文献】 特開2008−047455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21S 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のヘッドライト(1)のための照明システム(10)であって、
−照明方向(L)に光ビーム(15)を放出するために適した発光ダイオード(14)を装備するプリント回路基板(12)と、
−前記光ビームを受信することを意図した受光面(18)と前記光ビームを再電送するための放出表面(19)とを有する、前記光ビーム(15)を伝播及び伝送するように形成された光モジュール(16)と、
前記発光ダイオードによって放出された前記光ビームを遮蔽するための少なくとも一のマスキング要素(20)であって、
−少なくとも一の発光ダイオードから前記受光面に向かって、
−前記少なくとも一の発光ダイオードの前記照明方向に実質的に平行に、前記少なくとも一の発光ダイオードの周縁の少なくとも一部及び前記発光ダイオードと前記受光面とを隔てる距離の少なくとも一部の上に延びる、少なくとも一のマスキング要素(20)と、を備え、
前記少なくとも一のマスキング要素(20)は、テーパ付きクラウン環形状の溝を画定し、前記溝は、前記溝の開放端(28)に向かうに連れて断面寸法が増加しており
前記光モジュール(16)は、フロント側外表面(160)、フロント側外表面(160)に平行なリア側外表面(161)を有するテーパ付きクラウン環の形状を有し、前記フロント側外表面(160)及び前記リア側外表面(161)はそれぞれ平面状で、前記フロント側外表面(160)に向かって収束する円錐台の側壁を形成する、それぞれ外側及び内側の側方外表面(162、163)により連結されている、
照明システム(10)。
【請求項2】
前記少なくとも一のマスキング要素(20)は、前記発光ダイオードのすべてによって放出された前記光ビームを遮蔽するための単一の要素である、請求項1に記載の照明システム(10)。
【請求項3】
前記少なくとも一のマスキング要素(20)が、ハウジング(3)に組み込まれて前記ハウジング内部に位置するか、又はハウジングを形成する、請求項1又は2に記載の照明システム(10)。
【請求項4】
前記少なくとも一のマスキング要素(20)が前記少なくとも一の発光ダイオードから、前記発光ダイオードと前記受光面とを隔てる前記距離の少なくとも50%にわたって、及び/又はこの距離の最大95%にわたって延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の照明システム(10)。
【請求項5】
各発光ダイオード(14)に関連付けられて、前記発光ダイオード(14)からの前記光ビーム(15)を前記受光面(18)に向かってコリメートするように配置されたコリメーション装置(36)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の照明システム(10)。
【請求項6】
前記少なくとも一のマスキング要素(20)が、前記照明方向(L)に実質的に平行な少なくとも二の側壁(22、24)を含み、前記側壁は、外に現れて前記光モジュールの前記受光面(18)に対向する開放端(28)と、前記開放端(28)から前記照明方向(L)において遠位側にある遠位端(30)とを含む溝(26)を画定し、前記プリント回路基板(12)が、前記溝(26)の内側又は外側の前記遠位端(30)に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載の照明システム(10)。
【請求項7】
前記溝(26)の前記遠位端(30)が、前記少なくとも一の発光ダイオードの前記照明方向(L)に実質的に直角の底壁(32)によって閉鎖され、前記底壁(32)は任意で穿孔されている、請求項6に記載の照明システム(10)。
【請求項8】
前記光モジュールを、ハウジング(3)又は前記少なくとも一のマスキング要素(20)上に固定するための、有利には光ビームを伝播及び伝送するために適した材料からなる少なくとも一の要素(7)を更に備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の照明システム(10)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の照明システム(10)を装備する自動車用照明部材(1)。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも一の照明システム(10)を装備する自動車であって、前記少なくとも一の照明システムが、以下の部材、即ち:
−車両客室内部に位置するアンビエントライト、
−車両の信号灯
のうちの少なくとも一方を装備する、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からオフセットされた発光要素を含み、特に光源が隠されている、特に自動車の照明部材のための照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの照明システムは、プリント基板に電気的に接続された、一般にLEDと呼ばれる発光ダイオードを装備するプリント回路基板を備えている。しばしば頭字語によりPCBと呼ばれるプリント回路基板は、複雑な電子回路を製造するために一組の電子コンポーネントを電気的に連結することを可能にする支持体、通常はプレートである。このプレートは、平面状であり、絶縁材料により隔てられた一又は複数の銅の薄層のアセンブリから作製される。このようなプレートは剛性又は柔軟性とすることができる。照明装置において、LEDを装備するプリント回路基板、又はプレートは、光ビームの大部分がダイオードによってプリント回路基板に直角の方向に放出される良好な光の提供のために、所望の照明方向に対し、通常直角に配置される。しかしながら、自動車の分野において、特にヘッドライトの用途において、照明方向に直角というこのような位置決めは、ヘッドライトに大きな容積を強いており、設計上の制約となっている。
【0003】
更には、光ガイド機能を保証するために、LEDに関連付けられた光モジュールを採用する照明システムが存在する。この場合、LEDは、光モジュールがLEDによって放出された光を受けることができるように、光モジュールから短距離に配置される。光モジュールは、しばしば照明システムの別の要素、例えばマスク又はデフレクタに組み込まれる。このようなマスクは時に、LEDの照明方向に直角に、LEDから一定の距離を置いて延びる。したがって、このような照明システムは、互いに相対配置される多数の要素から構成され、それらのアセンブリは複雑となりうる。更に、このような照明システムは、その配置及び形態を制限しうる大きな容積を有することがあり、これは特に自動車の分野において望ましくない。更に、この種の照明システムでは、各LEDは分化しており、眼に見える。美的理由から、照明システムの外観スタイルを、その照明機能を保持しながら改善することは賢明である。
【0004】
したがって、これらの欠点を少なくとも部分的に是正し、設計を変更することを可能にする照明システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
このために、本発明の一の課題は、特に自動車のヘッドライトのための照明システムに関し、このシステムは:
−照明方向に光ビームを放出するために適した発光ダイオードを装備するプリント回路基板、及び
−前記光ビームを受信することを意図した受光面と前記光ビームを再伝送するための放出表面とを有する、前記光ビームを伝播及び伝送するように形成された光モジュール
を備え、
前記発光ダイオードによって放出された光ビームを遮蔽するための少なくとも一の要素であって、
−少なくとも一の発光ダイオードから前記受光面に向かって、
−前記少なくとも一の発光ダイオードの照明方向に実質的に平行に、前記少なくとも一の発光ダイオードの周縁の少なくとも一部及び前記発光ダイオードと前記受光面を隔てる距離の少なくとも一部の上に
延びる要素を備えることを特徴とする。
【0006】
発光ダイオードは通常、複数の光線を複数の方向に放出する:したがって、通常はこれら光線からなる光ビームは通常円錐形状を呈する。本出願において、LEDの照明方向は、LEDによって放出される光ビームを画定する円錐の対称軸の方向と考える。
【0007】
本発明による少なくとも一のマスキング要素の存在は、少なくとも一のマスキング要素が少なくとも一のLEDによって放出された光ビームを少なくとも部分的に囲む又は包囲することで、LEDからの光ビームがLEDと光モジュールの間において照明方向を横断する方向から見えることなく、LEDを光モジュールから一定の距離に配置することを可能にする。したがって、光モジュールは、照明システムの他の要素、特にマスキング要素とは別個の要素によって形成することができ、それでも継続的且つ均一にLEDによって照射されうる。このようにLEDと光モジュールの間に間隔を空けることにより、照明の美観を改善することが可能になる。実際、LEDが少なくとも一のマスキング要素によって遮蔽され、光モジュールのみが照明されて見えることで、シグナリング要素は、シグナリングモジュール中に目に見える支持又は保持要素がなく、ある意味浮かんで見えるため、「だまし絵」式の美的外観を有することができる。
【0008】
マスキング要素は、光線を通過させない任意の材料から製造することができる。有利には、マスキング要素は、不透明(opaque)なポリマー材料、例えばポリプロピレンから製造することができる。
【0009】
光モジュールは、その容積内で循環する少なくとも一の光ビーム、特に発光ダイオードによって放出される光ビームを伝播させて導くのに適した、好ましくは半透明(translucent)又は透明(transparent)の、ポリマー材料又はガラスから形成することができる。使用される材料は、ガラス又はポリマータイプの、有色又は無色の材料といった、光線を導くのに適したいずれかの材料、例えばポリカーボネート又はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)とすることができる。各光モジュールは、このように簡単に製造することができ、その形状は照明システムを受容するように意図された部材に適合させることができる。
【0010】
本発明による照明システムは、複数のマスキング要素を備えることができ、そのうち一のマスキング要素が一又は複数のLEDに関連付けられる。この場合、LEDが照明システムの外側から気づかれる可能性をすべて回避するために、各マスキング要素が一又は複数のLEDを完全に囲むか、又はこれらマスキング要素がLEDの照明方向に実質的に直角な壁によって互いに連結されることが有利でありうる。しかしながら、この実施形態は好ましくない。
【0011】
有利には、但し非限定的に、照明システムは、すべてのLEDによって放出される光ビームを遮蔽するための単一の要素を備えることができ、これにより照明システムの製造及び組立てを単純化することが可能になりうる。
この場合、単一のマスキング要素は:
−例えば同じ平面内に配置されている、すべてのLEDから、前記受光面に向かって、
−前記LEDの照明方向に実質的に平行に、LEDの組の周縁の少なくとも一部及びLEDの組と光モジュールの受光面とを隔てる距離の少なくとも一部の上に
延びる。
【0012】
この場合、LEDが照明システムの外側から気づかれる可能性をすべて回避するために、単一のマスキング要素がLEDの組を完全に囲むか、又はこの単一のマスキング要素がLEDの照明方向に実質的に直角な少なくとも一の壁を含むことが有利でありうる。
【0013】
更に単純な実施形態の場合、プリント回路基板を、LEDの放射方向が照明方向Lに平行又は実質的に平行となるように配置することが有利でありうる。
【0014】
更に単純な実施形態の場合、直線又は曲線、例えば輪状線に沿った同じ平面内にLEDを配置することも有利であろう。この場合、プリント回路基板は、多角形又は楕円形状、例えば円形又は場合によっては環状の平坦なプレートとすることができる。
【0015】
この場合、光モジュールは、断面(LEDの照明方向を横断する)形状がLEDによって形成されるラインの形状に類似の形状を有することができる。例えば、LEDが円形に配置される場合、光モジュールは円筒形状又はテーパ付きクラウン環の形状に、又は円錐又は半球形状にすることができる。
【0016】
有利には、この場合、単一のマスキング要素は光モジュールの形状に類似の形状、例えば円筒形状又はテーパ付きクラウン環形状、又はテーパ形状を有することもできる。
【0017】
有利には、但し非限定的に、光モジュールはLEDの照明方向に直角に延びることができる、及び/又は光モジュールの受光面はLEDの照明方向に実質的に直角の面内に延びる。更に、光モジュールを、一又は複数のマスキング要素と、LEDを装備するプリント回路基板も支持するハウジングによって支持することができる。
【0018】
部品の数を更に制限するために、前記少なくとも一のマスキング要素は、ハウジングに取り込むことができ、特にハウジング内部に位置させるか、又はハウジングを形成することができる。このハウジングは、プリント回路基板及び光モジュール、及び場合によっては照明システムの他の要素を支持する機能を有することができる。
【0019】
少なくとも一のマスキング要素は光モジュールまで延びることができる。しかしながら、この実施形態は、美的観点から好ましくなく、光モジュールの受光面がマスキング要素に接しないことが好ましい。一例として、5mmから2cmの距離だけ少なくとも一のマスキング要素を受光面から隔てることができる。
【0020】
有利には、但し非限定的に、少なくとも一のマスキング要素は、前記少なくとも一の発光ダイオードから、この発光ダイオードと前記受光面とを隔てる距離の少なくとも50%、場合によっては少なくとも60%にわたって延びることができる。有利には、少なくとも一のマスキング要素は、LEDとプリント回路基板を隠すために十分な距離にわたって延びることができる。
【0021】
有利には、但し非限定的に、少なくとも一のマスキング要素は、前記少なくとも一の発光ダイオードから、この発光ダイオードと前記受光面とを隔てる距離の最大で95%、場合によっては最大で75%にわたって延びることができる。少なくとも一のマスキング要素と受光面の間の距離が延びることにより、照明システムの美的効果を改善することが可能になる。
【0022】
有利には、但し非限定的に、照明システムは、各発光ダイオードに関連付けられ、光ビームを前記受光面に向かってコリメートするために配置されたコリメーション装置を備えることができる。これは、光ビームをその受光面上に収束させることにより、光モジュールの照射を改善することを可能にする。
【0023】
コリメーション装置は、発光ダイオードにより放出される光放射の70から100%、好ましくは放射の80から100%、場合によっては放射の90から100%が、前記受光面上に収束するように配置することができる。
【0024】
このようなコリメーション装置は、好ましくはLEDのすぐ近くに位置させる。
【0025】
通常、光線コリメーション装置は、フレネルレンズ、ジオプター、プリズム又はファセットタイプの一又は複数の従来式光学要素を用いることができる。
【0026】
任意選択的に、受光面の寸法は、発光ダイオードによって放出される光照射のすべてを(恐らくはコリメーション装置を通過した後で)捉えるように形成することができる。
【0027】
有利には、但し非限定的に、少なくとも一のマスキング要素は、前記照明方向に実質的に平行な少なくとも二の側壁を含むことができ、これら側壁の間には、外に現れて前記光モジュールの受光面に対向する開放端と、前記開放端から前記照明方向において遠位側の遠位端とを含む溝が画定され、前記プリント回路基板が、溝の内側又は外側の前記遠位端に位置する。
【0028】
このような構成により、少なくとも一のマスキング要素を、特にそれがハウジングに組み込まれる場合、簡単に製造することが可能になる。実際には、側壁の一つはハウジングの縁の延長として製造することができる。
【0029】
このように溝は、一方が外側側壁と、他方が内壁側壁と呼ばれる二の側壁によって画定される。この場合、外側側壁は、ハウジングに、ハウジングの縁の延長部として固定することができ、内側側壁は、照明方向に実質的に直角に固定して内側側壁とハウジングの間に形成される空きスペースを閉鎖することができるか、例えば内側側壁が円筒又は円錐台を形成する場合に、内側側壁の一縁から他方の縁までを形成することができる。このような構成により、特にプリント回路基板が溝の外側に位置する場合に、LEDを更にうまく隠すことが可能となる。
【0030】
有利には、但し非限定的に、溝の遠位端は、前記少なくとも一の発光ダイオードの照明方向に実質的に直角な底壁により閉鎖することができる。この底壁は、この場合、前記少なくとも二の側壁を連結し、プリント回路基板を固定するための支持体及び/又は固定化として機能することができる。プリント回路基板が溝の外側に位置する場合、底壁は、LEDによって放出された光ビームの通路のために穿孔される。
【0031】
コリメーション装置は、プリント回路基板又はマスキング要素上、例えばマスキング要素の底壁上に、直接固定することができる。一変形例として、コリメーション装置は、各LEDに対向する溝の前記遠位端を閉鎖することもできる。
【0032】
本発明は、少なくとも一のマスキング要素の特定の形態によって限定されるものではない。特定の実施形態によれば、単一のマスキング要素は単一の溝を画定することができ、その形状(照明方向を横切る断面)はLEDの配置に類似する。
【0033】
有利には、LEDが同じ面内において輪状線に沿って配置される場合、単一のマスキング要素は、クラウン環形状の単一の溝を画定してこの溝の開口部に対向することができ、光モジュールは中空の円筒形状又は中空の円錐台形状を有することができ、溝の軸と光モジュールの軸は一致する。
【0034】
有利には、但し非限定的に、照明システムは更に、ハウジング又は少なくとも一のマスキング要素上に光モジュールを固定するための少なくとも一の要素を保つことができる。特に、少なくとも一の固定要素は、光モジュールをマスキング要素から一定の距離に維持することを可能にすることができる。
【0035】
一又は複数の固定要素は、異なる形状及び大きさの、例えば長方形のロッド又はストリップとすることができる。好ましくは、一又は複数の固定要素は、光モジュールの材料と同一材料、特に光ビームを伝播及び伝送するために適した材料から作製され、これにより、このような要素は光の伝播に殆ど又は全く混乱を生じさせないため、光モジュールの「浮かんで見える」効果を増大させることができる。
【0036】
保持機能を保証できる限り、固定要素の数は限定されない。通常、少なくとも二の固定要素が使用されるが、単一の固定要素も可能である。
【0037】
一又は複数の固定要素は、前記要素の端部ゾーンにより光モジュールの外表面に固定することができ、反対の端部ゾーンは、ハウジング又は少なくとも一のマスキング要素に固定することができる。
【0038】
本発明は、本発明による照明システムを装備する自動車の照明部材にも関する。
【0039】
この照明部材は特に、車両のシグナリングのためのヘッドライト(又は光学ブロック)及び車両客室内部に位置させることを意図したアンビエントライトから選択されうる。好ましくは、部材はヘッドライトである。
【0040】
照明部材は通常、光ビームの出力のために半透明又は透明な一面を有するハウジングを備える。本発明による照明システムは、この場合、ハウジングの内部に配置され、LEDの照明方向は、ハウジングの半透明又は透明な面から出てゆく。
【0041】
本発明の照明システムの少なくとも一のマスキング要素は、照明部材のハウジングに組み込むことができる。例えば、少なくとも一のマスキング要素は、ハウジングと単一ピースとして製造することができる。
【0042】
本発明の別の課題は、本発明による少なくとも一の照明システムを装備する自動車に関する。
【0043】
特に、前記照明システムは、以下の部材のうちの少なくとも一を備えることができる:
−車両客室内部に位置するアンビエントライト、
−車両の信号灯。
【0044】
フロント側又はリア側のこの信号灯は特に、日中走行用ライト(車両が発進すると自動的に点灯する、頭字語「DRL」によっても知られるライト)、サイドライト、バックライト、フォグランプ、点滅灯、ストップライト、又は他のいずれかの信号灯から選択されうる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
ここで、本発明を、非限定的な添付図面を参照して説明する。
図1】本発明による照明システムを装備する車両用ヘッドライトの斜視図である。
図2図1の照明システムの部分的断面の斜視図である。
図3図1の照明システムの断面の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
「実質的に平行」とは、特定の方向と、±20°以下又は±10°以下の角度を形成する方向を意味する。
【実施例】
【0047】
図1は、光ビームの出力のために半透明又は透明である一面5を有するハウジング3を備えた、車両のシグナリングのためのヘッドライト1を示している。この面5は、提示する実施例のように、任意の平面形状又は更に複雑な形状をとることができる。
【0048】
このヘッドライト1は、図2及び3に詳細に示す、本発明による照明システム10を装備する。
【0049】
したがって、照明システム10は:
−照明方向(L)に光ビームを放出するために適した発光ダイオード14を装備するプリント回路基板12(より明瞭に示すために、図3には単一のダイオードを示す)、及び
−前記光ビームを受信することを意図した受光面18と前記光ビームを再伝送するための放出表面19とを有する、前記光ビームを伝播及び伝送するように形成された光モジュール16
を備える。
【0050】
図示の実施例では、すべてのLED14の光ビームの照明方向は、同じ照明方向Lに実質的に平行である。これらLED14は、照明方向Lに直角な同じ面内において輪状線上に配置される。これらLEDは、それ自体が環状形状を有するプリント回路基板12によって支持及び電力供給される。
【0051】
本発明によれば、照明システム10は、LED14によって放出される光ビームを遮蔽するための要素20を備える。このマスキング要素20は:
−LED14から受光面18に向かって、
−LED14の照明方向Lに実質的に平行に、すべてのLED14の周縁の少なくとも一部及びLEDの組と受光面18とを隔てる距離の少なくとも一部の上に
延びる。
【0052】
マスキング要素20は、光線を通さない材料、例えば不透明なポリマー材料からなる。しかしながら、図1では、このマスキング要素は、プリント回路基板12とLED14を区別することを可能にするために透明に表されている。
【0053】
図示のマスキング要素20は、前記照明方向Lに実質的に平行な二の側壁22、24を含んでいる。これら側壁22、24は、前記照明方向Lに沿って開放端28とは反対側に、外に現れて前記光モジュールの受光面18に対向する開放端28を含む溝26を画定する。
【0054】
プリント回路基板12は、この遠位端30に位置している。
【0055】
提示される実施例では、図2に示すように、溝26は、その開放端28に向かって広がるテーパ付きクラウン環形状を有する。溝26はまた、開放端28からみて遠位にある遠位端30の側で底壁32によって閉鎖される。プリント回路基板12は、溝26の外側の、この底壁32の近くに配置され、底壁32に設けられた貫通オリフィス34は、LED14によって放出された光ビームの通過を可能にする。
【0056】
この実施例では、底壁32はLED14と同数の貫通オリフィス34を有し、各オリフィス34は一のLED14に対向して位置する。
【0057】
しかしながら、図示しない変形例では、この底壁32はオリフィス34を持たな中実とすることができ、この場合プリント回路基板12は溝26内部に配置される。場合によっては、プリント回路基板12は溝26の底壁を形成してもよい。
【0058】
最終的に、マスキング要素20は、図2に具体的に示すように、ハウジング3の一部を形成する。この図2では、マスキング要素20が、照明方向Lに実質的に平行な方向に延びるハウジングの壁3aと単一のピースにより製造されていることが分かるであろう。ハウジングの壁3aは、環状ボード12と同心の、テーパ付き又は円筒形状とすることもできる。マスキング要素20は、ハウジング内部に、このハウジングの壁3aの内面3bに対向するように位置する。具体的には、その外側側壁24は、溝26の開放端28の側の壁3aと連結する。このようにして、LED14全体が隠される。更に、この実施例では、照明方向Lに実質的に直角のマスキング壁35が、溝26の開放端28の側の内側側壁22からハウジングの内表面全体の上に延びる。しかしながら、このマスキング壁35は、別の照明要素(図示しない)によって置き換えてもよい。
【0059】
図1及び2に示される実施例では、光モジュール16は、フロント側外表面160、フロント側外表面160に平行なリア側外表面161を有するテーパ付きクラウン環の形状を有し、これら二のフロント側及びリア側外表面160及び161はそれぞれ平面状で、フロント側外表面160に向かって収束する円錐台の側壁を形成する、それぞれ外側及び内側の側方外表面162、163により連結されている。この光モジュール16は、例えば透明なPMMA製である。図示の実施例では、前方160と側方162及び163の外表面は、光モジュール16の放出表面19を形成し、後方の外表面161は光モジュール16の受光面18を形成する。光モジュール16の受光面18は、マスキング要素20の開放端28から一定の距離をおいて位置し、照明方向Lに直角に伸びている。
【0060】
このように、光モジュール16、マスキング要素20及びプリント回路基板12はすべて(照明方向に垂直な)円形形状の断面を有し、それらの軸は同心である。しかしながら、これら要素は、やはり同心に構成される回転対称な他の形状を有してもよい。
【0061】
光モジュール16は、図1に示す、直径方向に向かい合う二の固定要素7により、ケーシング3に固定することができる。各固定要素7は、光モジュール16と同じ材料(ここでは、PMMA)からなる長方形のストリップから形成され、その一端7aは光モジュール16に固定され、他方の端部7bは、ハウジング3の壁3aの外側でハウジング3に固定される。これら固定要素7は、光モジュール16がマスキング要素20及びハウジング3から一定の距離に保持されることを保証する。
【0062】
図3は、図2の照明システム10を模式的に示し、LED14によって放出された光線がとる方向を具体的に示す。このようにして、LED14は、受光面18から光モジュール16に入る光ビーム15を放出する。光モジュール16によって伝送される光ビーム17は、放出表面19を通って光モジュールを出る。
【0063】
LED14によって放出される光放射の損失を回避するために、コリメーション装置36はLED14の正面に配置され、この装置は、光ビーム15の円錐がマスキング要素20に接しないように配置される。更に、すべての光ビーム15を捉えるために、受光面18が溝26の開放端28の断面より大きいことに注意されたい。
【0064】
図を参照して記載した照明部材1は、自動車のヘッドライトである。
【0065】
しかしながら、本発明は、この照明部材の種類及び形状によっていかなる意味でも限定されず、車両又は建造物のための、内部又は外部照明部材とすることもできる。
【0066】
本発明による照明システムは、実際に、特に容積及び重量の低減と外観の改善とに焦点を当てた取り組みがなされている多数の部材に使用できるという利点を提供する。
図1
図2
図3