(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鉱物粒子が、0.1〜15ミクロンのメジアン粒径を有し、前記粒塊性研磨粒子が40〜400ミクロンのメジアン粒径を有する、請求項4に記載の集塊性研磨粒子を製造するための方法。
鉱物粒子と第1のガラス状結合剤とを含む粒塊性研磨粒子を含み、前記粒塊性研磨粒子が、第2のガラス状結合剤により結合されており、前記第1のガラス状結合剤は、前記第2のガラス状結合剤とは:
i)元素組成、又は
ii)固有の物理的特性
のうちの少なくとも1点で異なる、集塊性研磨粒子。
結合剤材料内に保持された集塊性研磨粒子を含み、前記集塊性研磨粒子が粒塊性研磨粒子を含み、前記粒塊性研磨粒子が鉱物粒子と第1のガラス状結合剤とを含み、前記粒塊性研磨粒子が、第2のガラス状結合剤により結合されており、前記第1のガラス状結合剤が前記第2のガラス状結合剤とは:
i)元素組成、又は
ii)固有の物理的特性、
のうちの少なくとも1つの点で異なる、研磨物品。
裏材の主面に固着された研磨層を含む構造化研磨物品を含み、前記研磨層が、成形研磨複合体を含み、かつ、少なくとも一部の前記成形研磨複合体が、前記結合剤材料内に保持された前記集塊性研磨粒子を含む、請求項18に記載の研磨物品。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで
図1を参照すると、集塊性研磨粒子100は、粒塊性粒子110を含む。粒塊性粒子110は、第1のガラス状結合剤材料130により結合された鉱物粒子120を含む。粒塊性粒子110は、第2のガラス状結合剤材料140により結合されている。
【0018】
粒塊性研磨粒子とその製造方法とを、以下詳細に論じていく。1つの代表的な方法においては、液体キャリア中に鉱物粒子、ガラスフリット、及び第1の有機性一時結合剤を含む第1のスラリーが、噴霧乾燥され、粒塊性研磨粒子前駆体を形成する。次に好ましくは第2の鉱物粒子の存在下において、その研磨粒子前駆体を加熱し、研磨粒子前駆体が互いに融合するのを防ぎ、典型的には実質的に球形状の粒塊性研磨粒子を形成する。加熱している間に、第1の有機性一時結合剤が燃え尽きて、ガラスフリットは、鉱物粒子を保持するガラス状(すなわち、ガラス様)結合剤材料を形成する。このような手順の詳細が、例えば、米国特許第6,551,366号(D’Souzaら)に記載されている。
【0019】
好適な鉱物粒子は、好ましくは、少なくとも約5のモース硬度を有する。鉱物粒子は、第1の鉱物粒子と、場合により、第2の鉱物粒子とを含む。
【0020】
一部の実施形態においては、第1の鉱物粒子のモース硬度は、少なくとも6、7、8、若しくは9もの高さになり、又は10もの高さにさえなる。少なくとも約5のモース硬度を有する鉱物粒子の例としては、ダイヤモンド粒子、炭化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、変性セラミックス酸化アルミニウム粒子、立方晶窒化ホウ素(CBN)粒子、炭化チタン粒子、窒化チタン粒子、酸化セリウム粒子、二酸化ケイ素粒子、及びそれらを組み合わせたものが含まれる。好ましくは少なくとも一部の、より好ましくは重量比で半分より多くの、かつ、より好ましくはすべての粒塊性鉱物粒子が、ダイヤモンド粒子、炭化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、変性セラミックス酸化アルミニウム粒子、立方晶窒化ホウ素粒子、炭化チタン粒子、窒化チタン粒子、酸化セリウム粒子、二酸化ケイ素粒子、及びそれらを組み合わせたものからなる群から選択される。
【0021】
第1の鉱物粒子の粒径は、さまざまであり得る。第1の鉱物の平均粒径(すなわち、最大寸法)は特に制限されないが、望ましい研削率と、最終的な用途において望ましい表面仕上げとに基づいて選択される。したがって、鉱物の平均粒径は、約0.01ミクロン〜約0.1mmの間で変化し得る。典型的には、第1の鉱物の平均粒径(すなわち、最大寸法)は、約0.01〜約100ミクロン、好ましくは約0.05〜約50ミクロン、より好ましくは約0.1〜約25ミクロン、かつ、より好ましくは約0.1〜15ミクロンの範囲内にさえある。複数の粒塊性鉱物粒子の中に含有される第1の鉱物粒子の、それらの粒塊性鉱物粒子の平均粒径に対する平均粒径は、さまざまであり得る。典型的には、第1の鉱物粒子の平均粒径は、粒塊性鉱物粒子の平均粒径の約0.5〜約50%、好ましくは約1〜約40%、かつ、より好ましくは約2〜約20%である。
【0022】
ガラスフリットは、加熱の最中に少なくとも部分的に融解し、次に、噴霧乾燥され、主として第1の鉱物粒子を互いに結合するのに役立つ。例えば、シリカガラスフリット、シリケートガラスフリット、ボロシリケートガラスフリット、及びそれらを組み合わせたものからなる群から選択されるガラスフリットを含む、異なるタイプのガラスフリットを用いることができる。シリカガラスフリットは、典型的には、100重量%のシリカからなる。代表的なシリケートガラスフリットの組成物は、ガラスフリットの総重量の約70〜約80重量%のシリカ、約10〜約20%の酸化ナトリウム、約5〜約10%の酸化カルシウム、約0.5〜約1%の酸化アルミニウム、約2〜約5%の酸化マグネシウム、及び約0.5〜約1%の酸化カリウムを含む。他の代表的なシリケートガラスフリットの組成物は、ガラスフリットの総重量の約73重量%のシリカ、約16重量%の酸化ナトリウム、約5重量%の酸化カルシウム、約1重量%の酸化アルミニウム、約4重量%の酸化マグネシウム、及び約1重量%の酸化カリウムを含む。代表的なボロシリケートガラスフリットの組成物は、ガラスフリットの総重量の約50〜約80重量%のシリカ、約10〜約30重量%の酸化ホウ素、約1〜約2重量%の酸化アルミニウム、約0〜約10重量%の酸化マグネシウム、約0〜約3重量%の酸化亜鉛、約0〜約2重量%の酸化カルシウム、約1〜約5重量%の酸化ナトリウム、約0〜約2重量%の酸化カリウム、及び約0〜約2重量%の酸化リチウムを含む。他の代表的なボロシリケートガラスフリットの組成物は、ガラスフリットの総重量の約52重量%のシリカ、約27重量%の酸化ホウ素、約9重量%の酸化アルミニウム、約8重量%の酸化マグネシウム、約2重量%の酸化亜鉛、約1重量%の酸化カルシウム、約1重量%の酸化ナトリウム、約1重量%の酸化カリウム、及び約1重量%の酸化リチウムを含む。他の代表的なアルミナ−ボロシリケートガラスフリット組成物は、約63.6重量%のSiO
2、約18重量%のB
2O
3、約8.5重量%のAl
2O
3、約2.8重量%のBaO、1.1重量%のCaO、2.1重量%のNa
2O、2.9重量%のK
2O、1.0重量%のLi
2Oの組成を有し、Specialty Glass社(フロリダ州、Oldsmar)から「SP 1086」として入手可能なガラスフリットを含む。
【0023】
ガラス−セラミックスを製造するためのガラスフリットは、マグネシウムアルミノシリケート、リチウムアルミノシリケート、亜鉛アルミノシリケート、カルシウムアルミノシリケート、及びそれらを組み合わせたものからなる群から選択され得る。上に列挙した系内でガラスを形成することが可能な既知の結晶質セラミック層には、コルジエライト(2MgO.2Al
2O
3.5SiO
2)、ゲーレナイト(2CaO.Al
2O
3.SiO
2)、灰長石(2CaO.Al
2O
3.2SiO
2)、ハーディストナイト(2CaO.ZnO.2SiO
2)、オケルマナイト(2CaO.MgO.2SiO
2)、リシア輝石(2Li
2O.Al
2O
3.4SiO
2)、ウィレマイト(2ZnO.SiO
2)、及び亜鉛スピネル(ZnO.Al
2O
3)が含まれる。ガラス−セラミックスを製造するためのガラスフリットは、成核剤を含む場合がある。成核剤は、ガラス−セラミックス内に結晶質セラミック層が形成されるのを容易にするためのものであることが知られている。
【0024】
ガラス−セラミックスを形成するための特定のガラスの加熱処理は、当該技術分野において周知である。核形生成してガラス−セラミックスを成長させる加熱条件は、種々のガラスについて既知である。あるいは、当業者であれば、当該技術分野において既知の技法を使用して、ガラスの温度時間変態(TTT)を検討することにより、適当な条件を求めることができる。
【0025】
通常、ガラス−セラミックスは、それらが形成される材料となるガラスより高強度である。したがって、第1のガラス状結合剤の強度を、例えば、ガラスが結晶質セラミック層に転換される程度によって調節し得る。あるいは、又はそれに加えて、第1のガラス状結合剤の強度はまた、例えば、生成された核生成域の数によっても影響をされ得るが、生成された核生成域の数は、結晶相の結晶の数に影響を及ぼすために、更にその結晶の寸法に影響を及ぼすために用いられ得る。
【0026】
第1のスラリーに用いられるガラスフリットのサイズは、さまざまであり得る。ガラスフリットの平均粒径は特に限定されず、第1の鉱物粒子の粒径に基づいて選択される。典型的には、ガラスフリットの平均粒径は、第1の鉱物粒子の平均粒径の約1〜約200%であり、好ましくは約10〜約100%であり、かつ、より好ましくは約15〜約50%である。典型的には、ガラスフリットの平均粒径は、約0.01〜約100ミクロンの、好ましくは約0.05〜約50ミクロンの、かつ、より好ましくは約0.1〜約25ミクロンの範囲である。少なくとも約5のモース硬度を有する第1の鉱物粒子の平均粒径に対する、ガラスフリットの平均粒子サイズは、さまざまであり得る。典型的には、ガラスフリットの、第1のスラリー内に存在する第1の鉱物粒子に対する重量比は、約10:90〜約90:10の範囲である。ガラスフリット粒子の形状もまた、さまざまであり得る。典型的には、ガラスフリット粒子は不規則な形状である。
【0027】
第1のスラリーは、典型的には、第1のスラリーの総重量の約5〜約75重量%の、好ましくは約10〜約50重量%の、かつ、より好ましくは約20〜約30重量%のガラスフリットを含む。本開示の方法にしたがって調製された粒塊性鉱物粒子は、典型的には、それぞれ対応する粒塊性研磨グレインの総重量の約1〜約90重量%の、好ましくは約10〜約80重量%の、かつ、より好ましくは約40〜約60重量%のガラス結合材を含む。
【0028】
好適な液体キャリアの例には、水及び非水性の有機溶剤が含まれる。有用な非水性溶剤の例には、例えばエチルアルコール及びイソプロパノールのようなアルコール類、並びに、例えばメチルエチルケトンのようなケトンが含まれる。典型的には、用いられる液体キャリアは水である。液体キャリアは、結合剤材料を分散及び/又は溶解させ、かつガラスフリット及び第1の鉱物粒子を分散させるための役に立ち、更に固形分含有量及び粘度などの第1のスラリーの特性に影響を及ぼすのに役立つものである。典型的には、第1のスラリーは、第1のスラリーの総重量の約20〜約80重量%の、好ましくは約40〜約60重量%の、かつ、より好ましくは約30〜約50重量%の液体キャリアを含む。
【0029】
溶剤に溶解可能な、第1のスラリー内に存在する結合剤材料及び/又は溶剤に分散可能な、第1のスラリー内に存在する結合剤材料は、水が好ましい液体キャリアであるため、好ましくは、水溶性結合剤材料、水分散性結合剤材料、及びそれらを組み合わせたものからなる群から選択される。結合剤材料は、好ましくは、噴霧乾燥工程中に、ガラスフリットと第1の鉱物粒子とを結合する。有用な水溶性結合剤材料の例には、メチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリビニルアルコールからなる群から選択されるものが挙げられるが、それらに限られない。有用な水分散性結合剤材料の例には、ろうが挙げられるが、それらに限られない。
【0030】
第1のスラリー内に含有される、溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤材料の量は、さまざまであり得る。典型的には、第1のスラリーは、第1のスラリーの総重量の約0.5〜約40重量%の、好ましくは約3〜約30重量%の、かつ、より好ましくは約5〜約15重量%の溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤材料を含む。
【0031】
噴霧乾燥される粒塊性研磨粒子前駆体の形成に続く加熱の最中に、溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤材料は、好ましくは少なくとも部分的に熱分解され、より好ましくは実質的に熱分解され(すなわち、溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤材料のうちの約50%超、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90重量%が熱分解され)、かつ、より好ましくは完全に熱分解される。したがって、粒塊性研磨粒子前駆体は、典型的には、粒塊性研磨粒子前駆体の総重量の約0〜約40重量%の、好ましくは約0〜約30重量%の、より好ましくは約0〜約5重量%の、かつ、より好ましくは約0重量%の溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤材料を含む。
【0032】
場合により、第1のスラリーは、1種類以上の添加剤を更に含み得るが、その添加剤には、充填剤、孔形成剤、界面活性剤、及びシランカップリング剤からなる群から選択されるものが含まれるが、それらに限られない。望ましい結果を得るために、十分な量の添加剤が含まれ得る。
【0033】
好適な充填剤の例には、金属の炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、方解石、石灰石、炭酸ナトリウム及び炭酸マグネシウム)、シリケート(例えば、滑石、粘土、長石、雲母、カルシウムシリケート、ナトリウムシリケート、及びカリウムシリケート無水物)、金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウムナトリウム、及び硫酸アルミニウム)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、ナトリウムクライオライト、カリウムクライオライト、及び塩化マグネシウム)、石膏、バーミキュライト、木粉、カーボンブラック、硫黄、黒鉛、及び金属の硫化物、並びにそれらを組み合わせたものからなる群から選択されるものが含まれる。
【0034】
好適な孔形成剤の例には、フェノール粒子、ポリウレタン発泡粒子、スチレン粒子、及びアルミナ粒子からなる群から選択されるものが含まれるが、それらに限られない。
【0035】
好適な界面活性剤の例には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びそれらを組み合わせたものからなる群から選択されるものが含まれるが、それらに限られない。有用な具体的界面活性剤の例には、例えばエトキシ化ノニルフェノールのような非イオン性界面活性剤、例えばステアリン酸ナトリウム及びジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、並びに例えば塩化ドデシルトリメチルアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤が含まれるが、それらに限られない。第1のスラリーが界面活性剤を含む場合には、第1のスラリーは、典型的には、第1のスラリーの総重量の約0〜約5重量%の、好ましくは約0.1〜約2重量%の、かつ、より好ましくは約0.2〜約1重量%の界面活性剤を含む。
【0036】
第1のスラリーの粘度は、さまざまであり得る。しかしながら、粘度が高すぎる場合には、噴霧乾燥ヘッドの汚損が起こり得る。第1のスラリーの粘度が低すぎる場合には、好ましくないことに中空粒塊性研磨グレイン前駆体が複数発生することになる。好ましくは、少なくとも一部の、より好ましくは過半数の、かつ、より好ましくは全部の粒塊性研磨粒子前駆体が、複数の最終粒塊性研磨粒子とともに、実質的に固体であるが、それらはその内部に空隙を有していてよく、その密度がさまざまであってよい。
【0037】
第1のスラリーの固形分含有量は、さまざまであり得る。しかしながら、固形分含有量が高すぎる場合には、噴霧乾燥ヘッドの汚損が起こり得る。第1のスラリーの固形分含有量が低すぎる場合には、好ましくないことに、複数の中空粒塊性研磨粒子前駆体が形成され得る。典型的には、第1のスラリーの固形分充填量は、第1のスラリーの総重量の約1〜約50重量%の、好ましくは約10〜約40重量%の、かつ、より好ましくは約20〜約35重量%の範囲である。
【0038】
粒塊性研磨粒子を製造するために用いられる第1のスラリーは、典型的には、第1のスラリーの総重量の約5〜約75重量%の、好ましくは約10〜約50重量%の、かつ、より好ましくは約20〜約30重量%の第1の鉱物粒子を含む。
【0039】
好適な噴霧乾燥機が市販されている。有用な市販の噴霧乾燥器の一例としては、GEA Process Engineering社(デンマーク、Soborg)から、MOBIL MINORとして入手可能なものがある。
【0040】
噴霧乾燥工程中に、第1のスラリーは、典型的には、霧化ヘッドを通じて送出されるが、その霧吹きヘッドにおいて第1のスラリーから粒塊性研磨粒子前駆体に形成され、その粒塊性研磨粒子前駆体は引き続いて、乾燥チャンバにおいて、場合により減圧下で、熱によって乾燥される。
【0041】
噴霧乾燥機は、例えば、回転ホイール式アトマイザ、一流体式アトマイザヘッド、又は二流体式アトマイザヘッドを用い得る。多くの異なる設計のヘッドが、多くの供給メーカー(例えば、GEA Process Engineering社)から入手可能である。噴霧乾燥機は、場合により超音波振動を、その霧化工程の一部として採用してもよい。乾燥した粒塊性研磨粒子前駆体のサイズは、例えば加工時のパラメータと第1のスラリーの特性とによって、さまざまであってよい。流体アトマイザヘッドを通じて流体の圧力を高め、超音波振動の周波数を上げ、かつ/又は回転ホイール式アトマイザの回転速度を上げた場合、その結果として、典型的には、より小さいサイズの粒塊性研磨粒子前駆体が形成される。同様に、第1のスラリーの粘度及び表面張力を減少させた場合には、第1のスラリーの固形分含有量を減らした場合と同様に、その結果として、典型的には、粒塊性研磨粒子前駆体サイズが小さくなる。逆に、例えば、流体アトマイザヘッドを通じて流体の圧力を下げ、超音波振動の周波数を下げ、回転ホイールの回転速度を下げ、第1のスラリーの粘度を上げ、第1のスラリーの表面張力を上げ、固形分充填量を増やし、かつ/又はフィード速度を上げた場合、その結果として、典型的には、粒塊性研磨粒子前駆体はより大きくなる。
【0042】
典型的には、ひとたび粒塊性研磨粒子前駆体が形成され空気中に放たれると、その粒子前駆体は、通常わずかに減圧下にある加熱/乾燥チャンバを通過し、そこで乾燥される。噴霧乾燥機の入口及び出口の温度は、好ましくは、典型的には粒塊性研磨粒子前駆体中に存在する液体キャリア(例えば、水及び/又は有機溶剤)を追い払い、それにより、噴霧乾燥チャンバ内及び/又はそこから延びる配管内に、粒塊性研磨粒子前駆体が堆積するのを最小化又は防止するのに十分に高い。
【0043】
噴霧乾燥機の入口の温度は、例えば、乾燥速度に影響を及ぼし、かつ、最終的には、粒塊性研磨粒子前駆体の形態に影響を及ぼす。入口の温度が低すぎる場合には、粒塊性研磨粒子前駆体の乾燥が不完全なものとなる場合がある。入口の温度が高すぎる場合には、例えば、多くの非球形の乾燥粒塊性研磨粒子前駆体が不適切な形状で形成されたり、溶剤分散性及び/又は溶剤可溶性の結合剤材料が加熱される前に、不適切に早く部分的熱分解をしてしまったり、かつ/又は霧化ヘッドが汚損したりということが起こり得る。好ましくは、噴霧乾燥機の入口の温度は、約90〜約400℃の、より好ましくは約90〜約300℃の、かつ、より好ましくは約90〜約250℃の範囲である。
【0044】
出口の温度が低すぎる場合には、粒塊性研磨粒子前駆体が十分に乾燥されない場合がある。出口の温度が高すぎる場合には、その結果として、深刻に不適切な形状の粒塊性研磨粒子前駆体が、多数できてしまう場合がある。入口の温度がより低いこと、フィードする速度がより速いこと、及び/又は第1のスラリー内の固形分の充填量がより少ないこととは、出口の温度がより低くなるのに寄与し得る。好ましくは、出口の温度は、約40〜約250℃の、より好ましくは約40〜150℃の、より好ましくは約40〜約120℃の範囲である。
【0045】
噴霧乾燥された粒塊性研磨粒子前駆体の形状は、典型的には、主に乾燥速度に依存して決まる。急速に乾燥させた場合には、その結果として、不適切な形状の、中空の、又はドーナツ形の粒塊性研磨粒子前駆体ができる場合がある。ゆっくりと乾燥させると、その結果として、典型的には、球形状の粒塊性研磨粒子前駆体ができる。球形状の粒塊性研磨粒子前駆体が望ましい場合には、入口の温度が低く(約90〜約250℃)、かつ出口の温度が低い(約40〜約120℃)ことが一般に好ましいが、それは、そのような温度であれば、乾燥はよりゆっくりとなりがちであり、粒塊性研磨粒子前駆体が乾燥する前に球形状に安定化するのを可能にするからである。
【0046】
乾燥後、粒塊性研磨粒子前駆体は、典型的には、連続的に動く空気の流れに乗せられて、乾燥チャンバから取り出され、バッグハウス式のフィルター及び/又は重力アシスト式サイクロン装置により集められ、後続の処理のために取り出される。
【0047】
場合により、典型的には少なくとも部分的にガラスフリットを融合させるのに十分な温度にまで加熱される前に、複数の粒塊性研磨粒子前駆体の少なくとも一部が、第2の鉱物粒子と混合され得る。第2の鉱物粒子は、好ましくは、ガラスフリットがガラス化する間に、粒塊性研磨グレインが互いに融合することを防ぐのに役立つ。第2の鉱物粒子が用いられる場合には、その第2の鉱物粒子は、好ましくは、加熱している間に用いられる最も高い温度よりも高い軟化点、融点、又は熱分解温度を有する。有用な第2の鉱物粒子は、好ましくかつ典型的には、ガラスフリットの軟化点よりも高い軟化点(ガラス材料等の場合)、融点(結晶質材料等の場合)、又は熱分解温度を有すが、ここで、全ての材料が融点、軟化点、又は熱分解温度のそれぞれを有するとは限らないことが理解される。融点、軟化点、又は熱分解温度のうちの2つ以上を実際に有する材料の場合には、融点、軟化点、又は熱分解温度のうちのより低いものが、ガラスフリットの軟化点よりも高い、ということが理解される。有用な第2の鉱物粒子の例には、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム及び非晶質融合シリカ)、金属窒化物(例えば、窒化シリコン)、及び黒鉛が、第1の鉱物粒子のための材料として既に列挙した物質とともに含まれるが、それらに限られない。
【0048】
第2の鉱物粒子が存在する場合、その第2の鉱物粒子は、典型的には、粒塊性研磨粒子前駆体の平均粒径の約1〜約50%の、好ましくは約2〜約20%の、かつ、より好ましくは約5〜約10%の範囲の平均粒径を有する。典型的には、第2の鉱物粒子と粒塊性研磨粒子前駆体との合計重量の約1〜約75重量%の、好ましくは約5〜約50重量%の、かつ、より好ましくは約10〜約30重量%の第2の鉱物粒子が、粒塊性研磨粒子前駆体と組み合わされる。
【0049】
第2の鉱物粒子、又は少なくともその相当の部分が、典型的には、加熱後に必要に応じて、例えば、ふるいにかけ、遠沈させ、又はデカントさせることにより複数の粒塊性鉱物粒子から分離される。
【0050】
第2の鉱物粒子の硬度は、さまざまであり得る。第2の鉱物粒子が加熱後に粒塊性鉱物粒子から分離されることを意図されない場合には、典型的には、研磨物品の研磨品質が主として第1の鉱物粒子によるものとなるように、第2の鉱物粒子は、第1の鉱物粒子の硬度よりも低い硬度を有するように選択される。第2の鉱物粒子が粒塊性鉱物粒子から取り除かれることになっている場合には、第2の鉱物粒子の硬度はそれほど問題にならない。しかしいずれの状況でも、融点、熱分解温度、及び/又は軟化点は、既に述べたようにして適切に選択されるべきである。
【0051】
噴霧乾燥された粒塊性研磨粒子前駆体(及び第2の鉱物粒子が存在する場合には、その第2の鉱物粒子)は、ガラスフリットが少なくとも部分的に融合し、ガラス結合剤材料を介して互いに結合している第1の鉱物粒子からそれぞれがなる複数の粒塊性鉱物粒子を提供するような温度にまで少なくとも加熱される。そのような加熱は、典型的には、炉内で行われる。好適な炉は、例えば、Fisher Scientific社(ペンシルバニア州、Pittsburgh)から市販されている。噴霧乾燥された粒塊性研磨粒子前駆体は、典型的には、加熱されて、溶剤分散性及び/又は溶剤可溶性の結合剤材料を少なくとも部分的に、好ましくは完全に熱分解し、かつ、ガラスフリットを少なくとも部分的に融合(完全に融合させる場合を含む)させて、粒塊性鉱物粒子を提供する。加熱温度は、好ましくは、溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤を部分的に又は完全に熱分解するのを可能にし、かつ、ガラスフリットを部分的又は完全に融合するのを可能にするのに十分に高くなるように、しかしながら、すべての粒塊性鉱物粒子が完全に融合して1つの固体の塊が形成されたり、又は第1の鉱物粒子が相当程度に化学変化(例えば、酸化)したりする事態をもたらすほどには高くならないように選択される。
【0052】
加熱は、1つの段階のみで行われても、多段階で行われてもよい。加熱工程は、最も典型的には、2段階の工程である。2段階の工程の場合には、典型的には、溶剤分散性及び/又は溶剤可溶性の結合剤を少なくとも部分的に熱分解するのに十分な温度であって、ガラスフリットを少なくとも部分的に融合するには十分に高くはない温度にまで、粒塊性研磨粒子前駆体が加熱されて保持される。この第1段階は、典型的には、約50〜約600℃の、より典型的には約75〜約500℃の範囲内の温度で実行される。続く加熱第2段階は、典型的には、ガラスフリットを少なくとも部分的に融合させるのに好適な温度で実行される。この第2段階は、典型的には、約400〜約1200℃の、より典型的には約500〜約850℃の範囲内の温度で実行される。1段階の工程の場合には、典型的には、溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤を少なくとも部分的に熱分解すること、及びガラスフリットを少なくとも部分的に融合することの両方に好適な温度にまで、粒塊性研磨粒子前駆体が加熱されて保持される。1段階の工程の場合に粒塊性鉱物粒子が保持される温度は、典型的には、約400〜約1200℃の、より典型的には約500〜約850℃の範囲である。1段階の工程又は多段階の工程のいずれかの場合にも、温度は、典型的には、所望の温度にまで徐々に上昇させられる。1段階の工程又は多段階の工程のいずれが用いられているかに関わらず、典型的には、加熱工程は、約500〜約1500分間、より典型的には約700〜約1000分間にわたり継続される。
【0053】
加熱温度の選択は、多くの要因に依存し得るが、それらには、例えば、ガラスフリットの軟化点、粒塊性研磨グレイン前駆体内の鉱物粒子の温度安定性、並びに加熱後に望まれる粒塊性鉱物粒子の最終的空隙率及び強度が含まれる。加熱時間の選択は、多くの要因に依存し得るが、それらには、粒塊性研磨粒子前駆体内に存在する溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤の量、並びに加熱後に望まれる粒塊性研磨粒子の最終的強度及び空隙率が含まれるが、それらに限られない。
【0054】
ガラスフリットを少なくとも部分的に融合させるため、加熱温度は、ガラスフリットの軟化点よりも高くするべきである。好ましくは、加熱温度は、第1の鉱物粒子の軟化点、融点、又は熱分解温度のうちの少なくとも1つの低い方未満である。第2の鉱物粒子が含まれる場合には、加熱温度は、好ましくは、第2の鉱物粒子の軟化点、融点、又は熱分解温度のうちの少なくとも1つの低い方未満である。溶剤可溶性の及び/又は溶剤分散性の結合剤の量が増えると、典型的には、加熱時間が長くなる。典型的には、粒塊性研磨粒子に求められる望ましい強度が大きければ、加熱時間は長くなる。典型的には、結果として得られる粒塊性研磨粒子に望ましい空隙率が大きければ、加熱時間は短くなる。
【0055】
粒塊性研磨粒子前駆体内に存在する第1の鉱物粒子が酸化されやすい場合には、加熱は、好ましくは、例えば、真空、窒素、又はアルゴンのような、非酸化雰囲気において実行される。
【0056】
粒塊性研磨粒子は、微細な等級(すなわち、小さな粒径)を有し得る。典型的には,本開示の方法によって製造された粒塊性研磨粒子は、約1〜約500ミクロンの、より典型的には約1〜約400ミクロンの、更により典型的には約40〜約400ミクロンの、かつ最も典型的には約40〜約200ミクロンの範囲の平均粒径を有するが、それは必須事項ではない。
【0057】
粒塊性研磨粒子は多孔性のものであっても、無孔性のものであってもよい。空隙率は、走査型電子顕微鏡によって観察した結果では、典型的には約0〜約60体積%、より典型的には約0〜約25体積%である。
【0058】
1つの実施形態においては、本開示の方法は、加熱後に、複数の粒塊性研磨粒子を類別して、研磨産業界の認定する規定公称等級を有する、複数の粒塊性研磨粒子を提供する工程を更に含むが、その規定公称等級は、微細粒から粗粒の範囲の粒径分布を有するものである。
【0059】
好ましくは、本開示の方法にしたがって調製された粒塊性研磨粒子のうちの少なくとも一部、より好ましくは重量ベースで過半数、かつ、より好ましくはすべてが、実質的に球形状(すなわち、楕円体)である。球形状の粒塊性研磨粒子は、扱いが容易であり、かつ典型的には、より均質な研磨特性を提供する。しかしながら、例えば、楕円体及び不規則な形状で丸みのある粒塊性研磨グレインのような他の形状もまた、それらの意図された目的のためには満足できるものであり得る。本開示の方法にしたがって調製された複数の粒塊性研磨粒子の、好ましくは少なくとも一部の、より好ましくは重量ベースで過半数の、かつ、より好ましくはすべてのものが、空隙を包含していてもよいものの実質的に固体である。典型的には、本開示の方法にしたがって製造された粒塊性研磨粒子は、自由流動性を有する。
【0060】
典型的には、粒塊性研磨粒子のそれぞれは、それぞれ対応する粒塊性研磨グレインの総重量の約1〜約90重量%の、好ましくは約10〜約80重量%の、かつ、より好ましくは約40〜約60重量%の、少なくとも約5のモース硬度を有する第1鉱物の粒子を含む。
【0061】
集塊性研磨粒子を形成するために、粒塊性研磨粒子は、第2のガラス状結合剤により互いに結合される。この結合は、液体キャリア中に分散された、粒塊性研磨粒子、ガラスフリット、第2結合剤材料、及び場合により添加される充填剤を含む第2のスラリーの工程を通じて実現される。第2のスラリーは、空洞を形成された(好ましくは「精密に形成された」)製造工具上にコーティングされ、その空洞に充填される。コーティングされた第2のスラリーは、少なくとも部分的に乾燥され、その結果、集塊性研磨粒子前駆体が得られ、得られた粒子は、製造工具から分離され、更に、ガラスフリットが、少なくとも部分的に融合/ガラス化して、集塊性研磨粒子前駆体が形成されるのに十分な時間にわたって十分な温度で加熱される。この工程中に、成形型の空洞の一部の形状が、典型的には維持されるが、しかし一部は失われる。好ましい実施形態においては、成形型の空洞は立方体状である。ここで、そのプロセスについて詳しく論じていく。
【0062】
集塊性研磨粒子は、例えば、一定形状に成形された(精密に成形されたものを含む)もの、又は不規則に成形されたものであり得る。「精密に成形された集塊性研磨粒子」とは、集塊性研磨粒子がその中に成形された成形型の空洞を反転したものである、型成形された形状を有する集塊性研磨粒子を意味する。その形状は、集塊性研磨粒子が成形型から取り外された後にも、集塊性研磨粒子により維持される。別の実施形態においては、精密に又は規則的に成形された集塊性研磨粒子は、液滴を固結したもののような球形状である。集塊性研磨粒子は、好ましくは、研磨物品が使用された状態になる前には、集塊性研磨粒子の露出した表面を越えて大きく突き出す粒塊性研磨粒子を実質的に含まないが、これは必須事項ではない。型成形の技法により、精密に成形された集塊性研磨粒子を製造する方法の例が、米国特許第5,152,917号(Pieperら)及び同第5,975,988号(Christianson)に記載されており、両文献はともに、参照により本明細書に組み込まれる。「不規則に成形された研磨複合体」とは、精密でない形状又は不規則な形状を有する研磨複合体を意味する。その形状は、例えば、より大きな粒子を押しつぶすことにより形成されて、不規則に成形された研磨複合体が形成される。
【0063】
集塊性研磨粒子は、典型的には、約10〜90重量%の粒塊性研磨粒子と、90〜10%の第2のガラス状結合剤とを含むが、これは必須事項ではない。典型的には、集塊性研磨粒子は、約15〜85重量%の粒塊性研磨粒子と、85〜15重量%の第2のガラス状結合剤とを含む。
【0064】
第2の結合剤は、粒塊性研磨粒子を互いにくっつける。粒塊性研磨粒子と第2のガラス状結合剤とにより、集塊性研磨粒子が形成される。
【0065】
第2のガラス状結合剤として用いるために好適なガラス状結合剤には、第1の結合剤として用いるものとして言及されたものを含む。一部の実施形態においては、第1及び第2のガラス状結合剤は同じものであるが、一方で他の実施形態においては、元素の組成及び/又は固有の物理的特性(例えば、密度、結晶度、破壊力学、破砕性、及び/又は硬度)について、両結合剤は異なっている。例えば、第2のガラス状結合剤は、第1のガラス状結合剤よりも破砕しにくい場合がある。
【0066】
集塊性研磨粒子は、一般に、第2の有機性一時結合剤、第2結合剤材料前駆体、粒塊性研磨粒子、場合により添加される充填剤粒子、及び材料となる成分を型成形するのを容易にするための十分な量の液体キャリア(例えば、水及び/又は有機溶剤)であって、典型的には水、を混合することにより製造することが可能である。得られる混合物は、型成形可能な第2のスラリーである。この第2のスラリーを好適な成形型に入れ、乾燥させ、少なくとも部分的に固化させる。その後、集塊性研磨粒子前駆体を成形型から取り外す。次に、集塊性研磨粒子前駆体を、例えば既に論じた粒塊性研磨粒子の調製において説明されているように、例えば焼成又は焼結することによって、集塊性研磨粒子前駆体が集塊性研磨粒子に転換される。例えば既に論じた粒塊性研磨粒子の調製において説明されているように、焼成又は焼結は、第2の鉱物粒子の存在下に実行され得るが、それにより、研磨粒子前駆体が互いに融合することを防ぐことができる。本開示の研磨物品の集塊性研磨粒子は、例えば、第2の有機性一時結合剤が燃え尽きた結果として多孔性である場合があり、かつ典型的にはそうであり、また更に好ましくは、測定できるほどの空隙率を有する。本明細書において使用される場合、「多孔性」という用語は、集塊性研磨粒子全体にわたって、粒塊性研磨粒子の間に分布する孔又は空隙を有することにより特徴づけられる集塊性研磨粒子の構造を記述するために用いられ得る。
【0067】
典型的には、集塊性研磨粒子の空隙率は、集塊性研磨粒子の体積の少なくとも約4%であるが、ただし、一部の実施形態においては、0%に近い空隙率を有することが望ましい場合がある。それに代わって、又はそれに加えて、孔は集塊性研磨粒子の体積の約70%以下しか占めない。典型的には、孔は、体積の約5〜60%、好ましくは約6〜50%を占める。多孔性の第2の結合剤は、例えば、マトリクス前駆体を制御しながら焼成すること、又はガラスバブルのような孔形成剤をマトリクス前駆体に含ませることのような、周知の技術により形成することが可能である。高いレベルの複合体内空隙率を有する集塊性研磨粒子は、一般に、高い機械的強度を有する第2の結合剤を必要とする。
【0068】
集塊性研磨粒子は、例えば、充填剤、研削助剤、顔料、接着促進剤、切削助剤、及びその他の加工材料のようなその他の添加剤を、更に含有し得る。これらの添加剤は、複合体の孔内に置かれてもよく、粒塊性研磨粒子上のコーティングとして提供されてもよく、又は第2の結合剤全体にわたって分散されてもよい。
【0069】
本開示の研磨物品に有用な集塊性研磨粒子を製造する方法は、例えば、出発原料を混ぜることを含むが、その出発原料には、第2結合剤材料前駆体、粒塊性研磨粒子、及び第2の有機性一時結合剤が含まれる。第2結合剤材料前駆体は、第2の結合剤に転換されることになる。第2の有機性一時結合剤は、混合物が容易に成形されるのを可能とし、かつ、更なる加工の間にその形状を維持するのを可能にするが、典型的には、第2の有機性一時結合剤は、集塊性研磨粒子を製造する最終盤のステップの間に、犠牲にされる(例えば、燃え尽きる)。場合により、例えば、無機充填剤、研削助剤、及び/又は液体媒体のような、その他の添加剤及び加工助剤が用いられ得る。
【0070】
これらの出発原料は、均質な混合物を得ることができる任意の従来型の技法により、混ぜ合わされることが可能である。好ましくは、粒塊性研磨粒子は、第2の有機性一時結合剤と、遊星運動型混合器のような機械的混合装置により完全に混合される。次に、得られた混合物に結合剤材料前駆体を加え、典型的には10〜30分間にわたり、均質な混合物が得られるまで混ぜ合わせる。より微細な粒塊性研磨粒子の場合、研磨粒子と結合剤材料前駆体とを混合する好ましい方法は、超音波槽を用いて、典型的には約20〜30分間にわたり、毎秒約47,000〜50,000サイクルで振動する超音波クリーナの助けを得て混合するものである。
【0071】
得られた第2のスラリーを次に成形し、加工して、集塊性研磨粒子前駆体を形成する。混合物は、例えば、型成形、押出成形、打抜きにより形成され得る。あるいは、混合物は、例えば、スクリーンを通過させること、又は、その混合物を、輪転グラビアロールを用いて、成形された空洞を有する製造工具にコーティングすることにより成形され得る。第2の有機性一時結合剤が失われることに関連して、典型的には、いくらかの収縮が起こるが、集塊性研磨粒子の望ましい形状及び寸法を決める際には、この収縮を考慮に入れておくべきである。成形の工程は、バッチ式の工程として行われることも、連続的な方法で行われることも可能である。集塊性研磨粒子を成形するのに好ましい1つの技法は、あらかじめ組み合わせてあり、均質な混合物に形成された複数の出発原料を、可撓性のある成形型に入れることである。例えば、切頭角錐形状の集塊性研磨粒子を形成するのであれば、成形型は、この形状に圧痕形成される。その可撓性のある成形型は、集塊性研磨粒子前駆体を容易に離型させるのを可能にする任意の成形型であり得るが、例えば、シリコーン又はポリプロピレン製の成形型である。また、成形型は、乾燥済みの複合体を取り出す際の助けとなる離型剤を含有し得る。混合物を入れた成形型を次に、オーブンに入れ、少なくとも部分的に液体をすべて除去するように加熱する。温度は、用いられ得る第2の有機性一時結合剤次第でさまざまに変化するが、典型的には35〜200℃、好ましくは、70〜150℃である。少なくとも部分的に乾燥され又は固化された混合物が、次に成形型から取り外される。複合体を得るために、成形型を完全に破壊する、すなわち、完全に焼き尽くすこともまた可能である。
【0072】
集塊性研磨粒子は、無機粒子のコーティングを含むことが可能であり、表面積を増やし、かつ製造中に集塊性研磨粒子が互いに集合するのをも最小化する。コーティングを実現する1つの方法は、集塊性研磨粒子前駆体が成形された(例えば、成形型から取り外された)後で、その集塊性研磨粒子前駆体を無機粒子と混ぜて、無機粒子を集塊性研磨粒子前駆体に塗布することである。また、少量(例えば、集塊性研磨粒子前駆体の量の5〜15重量%の、好ましくは6〜12重量%の範囲の量)の液体キャリア、又は第2の有機性一時結合剤を添加して、無機粒子を集塊性研磨粒子前駆体の表面にしっかりとつける助けとすることもできる。
【0073】
次に集塊性研磨粒子前駆体を加熱して、集塊性研磨前駆体を調製するために用いられたあらゆる有機物質、例えば第2の有機性一時結合剤を焼き尽くし、かつ第2のガラス状結合剤を融解又はガラス化させるが、これは、それぞれ分離して実行しても、あるいは1つの連続的なステップとして実行してもよい。有機物質を焼き尽くすための加熱温度及び加熱速度は、過度の気泡が生じること(それにより集塊性研磨粒子内に望ましくないほど大きな孔が結果として生じ得る)を回避するように選択され、一般に、第2の有機性一時結合剤を含む、場合により用いられる成分の化学的性質に依存して決まる。典型的には、有機物質を焼き尽くすための温度は、約100〜600℃の、好ましくは200〜500℃の範囲であるが、より高い温度を用いることも可能である。無機結合剤を融解又はガラス化させるための温度は、典型的には600〜1150℃の、好ましくは600〜950℃の範囲である。一部の方法においては、結合剤は完全にガラス化又は硬化されない場合もあり、むしろ、部分的にガラス化又は硬化される場合もある。一部の実施形態においては、集塊性研磨粒子前駆体は、粒塊性研磨粒子を形成するために用いられる最も高い加熱温度よりも、少なくとも15℃低い第2の温度で加熱される。
【0074】
次に、得られた集塊性研磨粒子が熱処理加工されて、結合特性の最適化が行われる。その熱処理加工は、300〜1,000℃の、好ましくは350〜900℃の、かつ、より好ましくは400〜800℃の範囲の温度で加熱することを含む。
【0075】
集塊性研磨粒子は、1mmの目を有する試験用ふるいを通過することが可能である。典型的には、集塊性研磨粒子は比較的小さい最大粒子寸法を有するが、例えば、約10mm未満、5mm未満、2mm未満、1mm未満、200ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、20ミクロン未満、又は10ミクロン未満であるが、他のサイズのものも用いられ得る。
【0076】
一部の実施形態においては、集塊性研磨粒子(及び、場合により、従来の方法で粉砕された、任意の追加的研磨粒子)は、研磨産業で認められている規定の公称等級に従って寸法設定される。代表的な研磨産業で認められている等級規格としては、ANSI(American National Standards Institute)、FEPA(Federation of European Producers of Abrasives)、及びJIS(日本工業規格)によって公表されているものが挙げられる。そのような、業界で認められている等級規格には、例えば:ANSI 120、ANSI 150、ANSI 180、ANSI 220、ANSI 240、ANSI 280、ANSI 320、ANSI 360、ANSI 400、及びANSI 600;FEPA P40、FEPA P50、FEPA P60、FEPA P80、FEPA P100、FEPA P120、FEPA P150、FEPA P180、FEPA P220、FEPA P320、FEPA P400、FEPA P500、FEPA P600、FEPA P800、FEPA P1000、及びFEPA P1200;並びに、JIS 60、JIS 80、JIS100、JIS150、JIS180、JIS 220、JIS 240、JIS 280、JIS 320、JIS 360、JIS 400、JIS 400、JIS 600、JIS 800、JIS1000、JIS 1500、JIS 2500、JIS 4000、JIS 6000、JIS 8000、及びJIS10000、が挙げられる。
【0077】
用語「研磨産業で認められている規定の公称等級」は、研磨産業で認められている規定の公称ふるい等級も包含する。例えば、規定の公称ふるい分け等級は、ASTMのE11−13「Standard Specification for Wire Cloth and Sieves for Testing Purposes(試験目的のワイヤ布及びふるいの標準仕様)」に準拠する米国標準試験用ふるいを用いる。1つの典型的な表記としては、「−18+20」というものがあるが、それは、その粒子が、18号ふるい用のASTMのE11−13仕様を満たす試験用ふるいを通過し、かつ、20号ふるい用のASTMのE11−13仕様を満たす試験用ふるい上には残るということを意味する。
【0078】
1つの実施形態においては、集塊性研磨粒子は、少なくとも90%の粒子が18号メッシュの試験用ふるいを通過するが、20号、25号、30号、35号、40号、45号、又は50号メッシュの試験用ふるい上には残るような粒径を有する。さまざまな実施形態においては、集塊性研磨粒子は、−35+40、−40+45、−45+50、
−50+60、−60+70、−70+80、−80+100、−100+120、−120+140、−140+170、−170+200、−200+230、
−230+270、−270+325、−325+400、−400+450、−450+500、又は−500+635を含む、公称ふるい分け等級を有することができる。
【0079】
本開示にしたがって製造される集塊性研磨粒子は、例えば、コーティングされた研磨材、結合された研磨材(ガラス化及び樹脂状物質研削ホイールを含む)、不織研磨材、及び研磨材ブラシのような、さまざまな研磨物品に組み込まれ得る。研磨物品は、典型的には、本開示にしたがって製造される集塊性研磨粒子と結合剤材料とを含む。
【0080】
典型的には、研磨物品は、結合剤マトリクスによって研磨物品内に固定された本開示による集塊性研磨粒子を含む。研磨物品を製造する方法は、当業者には周知のものである。更に、本開示の方法にしたがって製造された集塊性研磨粒子は、研磨用コンパウンド(例えば、磨き用コンパウンド)のスラリー、フライス加工媒体、ショットブラスト媒体、振動フライス加工媒体等を用いる研磨用途において用いることができる。
【0081】
コーティングされた研磨物品の代表的なものは、裏材の主面上に配置され固定された研磨層を含む。研磨層は、構造層(「構造コート」とも呼ばれる)と、構造層に部分的に埋め込まれた集塊性研磨粒子と、少なくとも一部(好ましくはすべて)の構造層及び集塊性研磨粒子との上に配置された礬砂層(「礬砂コート」とも呼ばれる)と、を含み得る。
【0082】
あるいは、研磨層は、集塊性研磨粒子が分散されている結合剤マトリクス前駆体のスラリー層(「スラリーコート」とも呼ぶ)を含み得る。スラリー層という名前は、硬化性結合剤マトリクス前駆体と集塊性研磨粒子とのスラリーが、裏材上に配置され、少なくとも部分的に硬化されている、そのようなコーティングされた研磨材を製造する、よくある方法の1つに関連するものである。一部の実施形態においては、スラリーは、裏材に接触させ、硬化性結合剤マトリクス前駆体を少なくとも部分的に硬化させ、工具から分離させると、得られる研磨層が空洞のパターンにしたがって構造化されるように、製造工具の表面に形成された空洞内に堆積される。そのようなコーティングされた研磨材は、通常「構造化研磨物品」と呼ばれる。
【0083】
ここで
図2を参照すると、代表的な構造化研磨物品200は、第1面212aと逆側の第2面212bとを有する裏材212に結合された複数の研磨粒子を有する。研磨層214は、裏材212の第1面212a上に存在する。研磨層214は、複数の成形研磨複合体218を含むが、その複数の成形研磨複合体は、結合剤マトリクス216に分布された(例えば、分散された)集塊性研磨粒子215を含む。成形研磨複合体218は、その形状に関連する境界線(複数可)により分離されており、その結果、1つの成形研磨複合体218は、他の隣接した研磨複合体218とある程度分離されているが、裏材212のセクションが成形研磨複合体どうしの間から見えるようになっている。精密に成形された研磨複合体を有する構造化研磨物品に関する最も初期の参照例の1つに、米国特許第5,152,917号(Pieperら)がある。多くの他のものがそれに続いている。
【0084】
ここで
図3を参照すると、代表的な構造化研磨物品300が、図示されている。構造化研磨物品300は、研磨層314を含み、その研磨層314は、構造化研磨物品を形成する裏材312に取り付けられた複数の成形研磨複合体318を含む。裏材312は、結合剤マトリクス316中に分布(例えば分散)した本開示による集塊性研磨粒子315が、実質的に連続する層を有し、複数の成形研磨複合体318を、成形研磨複合体318どうしの間の谷部に、裏材312がもう見えないように形成する。場合により設けられる補強層320がもし存在する場合には、構造化研磨物品300は補強層320の第1面320aに研磨層322によって取り付けられるか、又は裏材312に研磨層322によって取り付けられる。一部の実施形態においては、場合により設けられる取り付け研磨層324が、補強層320の第2面320b上に存在し、構造化研磨物品300を研削又は研磨機械のプラテンに取り付けている。場合により設けられる、取り外し可能な剥離ライナー326が、場合により設けられる研磨層324上に提供され得る。構造化研磨物品300を研削工具に取り付けるためのインターフェイス研磨層324の代わりに、例えば面ファスナー又は機械式ファスナーのような、他の取り付けシステムを用いることも可能である。
【0085】
ここで
図4を参照すると、構造化研磨物品300の上面図が図示されている。構造化研磨物品300は、図示されるように研磨ディスクの形状をとることができるが、例えば、無端ベルトのような他のよくある形態に転換されることもできる。それぞれが六角形の柱を含む複数の成形研磨複合体318は、隣接する成形研磨複合体とは、ネットワーク状の谷領域328で分離されている。ネットワーク状の谷領域328は、研削用潤滑剤がそれぞれの成形研磨複合体に容易に運ばれるのを可能にし、研削残留物(削りくず)が、成形研磨複合体の作業面から運び去られるのを可能にする。成形研磨複合体の他の形状には、例えば、平らな上面を有する柱(例えば、円柱、菱形柱、三角柱、四角柱、正四角柱)、テーパー状の構造体(例えば、円錐、モンゴルのゲルのような形状の構造体、ピラミッド形、及び、上部を切り落として台状にしたピラミッド形で3〜6の側面を有するもの、及びそれらを組み合わせたもの)が挙げられる。
【0086】
成形研磨複合体どうしの間隔は、1cmの直線上に約0.3〜約100個の、約0.4〜約20個の、約0.5〜10個の、又は約0.6〜3.0個の成形研磨複合体が並ぶ間隔のようにさまざまであり得る。研磨物品の1つの態様においては、1cm
2あたり少なくとも約2個の成形研磨複合体が存在するか、又は1cm
2あたり少なくとも約5個の成形研磨複合体が存在する。本発明の更なる実施形態においては、成形研磨複合体の平面上の間隔としては、1cm
2あたり約1〜約200個の成形研磨複合体の、又は1cm
2あたり約2〜約10個の成形研磨複合体の範囲である。
【0087】
隣接する成形研磨複合体どうしの間の谷の最上部から、成形研磨複合体の最上部までを測った研磨複合体の高さは、研磨物品300全体で一定であるが、さまざまな高さの成形研磨複合体を有するようにすることも可能である。成形研磨複合体の高さは、約10〜約25,000ミクロン(2.5cm)の、約25〜約15,000ミクロンの、約100〜約10,000ミクロンの、又は約500〜約4,000ミクロンの値である。
【0088】
さまざまな実施形態においては、担持面積率は、約20〜約80%、約20〜約70%、又は約50〜約70%であり得る。パーセントで表される担持面積率であるが、これは、成形研磨複合体318の遠位端319の総面積の、ネットワーク状の谷領域328の面積を含む研磨物品の総面積に対する割合である。
図3に示すように、一部の実施形態においては、テーパー状の縁部を有する(例えば、上部を切り落として台状にしたピラミッド形の構造体の)成形研磨複合体は、研磨物品が使用され、成形研磨複合体の遠位端が、加工対象に接触して摩滅するにつれて変化する担持面積率を有する。その用途又は加工対象に応じて、担持面積率がより大きいもの又はより小さいものが望ましい場合があり、更に、研磨材の等級、加工対象の素材、単位面積あたりにかかる圧力、望ましい切削率、及び仕上げによっても、望ましい担持面積率は変化する。
【0089】
有用な裏材には、研磨物品において有用であることが知られているものが挙げられるが、例えば、ポリマーフィルム、処理を施したものを含む布、紙、発泡材、不織布、それらに処理又は下塗りを施したもの、及びそれらを組み合わせたものが含まれる。例としては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレン及びプロピレンフィルム)、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。裏材が薄い場合には、例えばより厚みのあるフィルム、ポリカーボネートシートのような他の支持層を用いて裏材を補強することができる。加えて、研磨物品は、土台又はシートに取り付けることが可能であり、また、直接研磨装置又は機械に任意の既知の手段を介して取り付けることもできるが、例えば感圧性の粘着剤を含む粘着剤は、そのために有用である。
【0090】
裏材は、成形研磨複合体を支持する機能を果たす。裏材は、結合剤マトリクス前駆体が硬化条件に曝露された後で、結合剤マトリクスにくっつくことが可能になっているべきであり、かつ、得られる研磨物品が長期の使用に耐えるよう強度と耐久性とを有するものであるべきである。更に、裏材は、本発明の方法において用いられる物品が、加工対象の表面の輪郭、半径、及び凹凸に沿うように十分な可撓性を有しているべきである。
【0091】
既に言及したように、裏材は、ポリマーフィルム、紙、硬化繊維、型成形若しくは鋳型成形したエラストマー、処理を施した不織布製裏材、又は処理を施した布であり得る。ポリマーフィルムの例には、ポリエステルフィルム、コポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム等が挙げられる。紙を含む、不織性の材料は、必要な特性を付与するため、熱硬化性材料又は熱可塑性材料により飽和させてもよい。上に挙げた裏材の素材の任意のものは、例えば、充填剤、繊維、染料、顔料、湿潤剤、カップリング剤、可塑剤等のような添加剤を更に含んでいてもよい。1つの実施形態においては、裏材は、約0.05〜約5mmの厚さである。
【0092】
場合により設けられる補強層は、追加的な剛性、弾力性、形状安定性、及び/又は平坦性を構造化研磨物品に付与するために用いることができる。補強層は、研磨物品が形状転換される工程(例えば、レーザー又はジェット水流による切断)中に、研磨物品を安定させるために用いることができる。望ましくは、補強層は、例えばポリカーボネート又はアクリルのようなプラスチック、金属、ガラス、複合材フィルム、又はセラミックを含む。1つの実施形態においては、場合により設けられる補強層は、その厚さが実質的に均一である。裏材層しか有しない研磨物品を変形させかねないような引っかき傷又はみぞを有する研磨用プラテンによって構造化研磨物品が変形してしまうのを、補強層が、減少させるか又はそのような変形を起こらなくしてしまうことが望ましい場合が多い。
【0093】
構造化研磨物品において使用する場合、個々の、ダイヤモンド粒子のような鉱物粒子を含む集塊性研磨粒子の平均サイズは、好ましくは約1〜約1000ミクロンの範囲である。しばしば、集塊性研磨粒子内の個々の鉱物粒子が、約15ミクロン以上である場合には、粒塊全体は、典型的には約100〜約1000ミクロン、約100〜約400ミクロン、又は約210〜約360ミクロンである。しかしながら、個々の鉱物粒子が、約15ミクロン以下の平均サイズを有する場合には、粒塊全体はしばしば、約20〜約450ミクロン、約40〜約400ミクロン、又は約70〜約300ミクロンである。
【0094】
研磨層内の集塊性研磨粒子の好ましい量は、構造化研磨物品全体の構造と、それが用いられる工程とによって変化する。集塊性研磨粒子は、研磨層の約1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%を占める。
【0095】
研磨物品は、場合によっては、希釈粒子を含み得る。この希釈粒子の粒径は、研磨粒子の大きさと同桁のレベルであり得る。そのような希釈粒子の例には、石膏、大理石、石灰石、フリント、シリカ、ガラスバブル、ガラスビーズ、ケイ酸アルミニウム、及びそれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0096】
集塊性研磨粒子は、結合剤マトリクスによって接着され、成形研磨複合体が形成される。結合剤マトリクスは、無機のものであってもよいが、より好ましくは有機性であってよく、好ましくは架橋有機ポリマーを含む有機性のものであってよく、また結合剤マトリクスは、結合剤マトリクス前駆体由来のものである。コーティングされた/構造化された研磨物品の製造中に、結合剤マトリクス前駆体がエネルギー源にさらされるが、これは、結合剤マトリクス前駆体の重合又は硬化を開始する助けになる。エネルギー源の例には、熱エネルギー及び放射線エネルギーが挙げられるが、そのうちの後者は、電子線、紫外線、及び可視光線を含む。この重合プロセス中に、結合剤マトリクス前駆体が重合又は硬化され、固化結合剤に転換される。結合剤マトリクス前駆体が固化されると、結合剤材料のマトリクスが形成される。
【0097】
結合剤マトリクスは、硬化性(例えば紫外線又は熱のようなエネルギーを介して硬化可能な)有機材料から形成することが可能である。例としては、アミノ樹脂、アルキル化尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、及びアルキル化ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、アクリレート樹脂(アクリレート及びメタクリレートを含む)(ビニルアクリレート、アクリレート化エポキシ、アクリレート化ウレタン、アクリレート化ポリエステル、アクリレート化アクリル、アクリレート化ポリエーテル、ビニルエーテル、アクリレート化油脂、及びアクリレート化シリコーンなど)、アルキド樹脂(ウレタンアルキド樹脂など)、ポリエステル樹脂、反応性ウレタン樹脂、フェノール樹脂(レゾール樹脂及びノボラック樹脂など)、フェノール/ラテックス樹脂、エポキシ樹脂(ビスフェノールエポキシ樹脂)、イソシアネート、イソシアヌレート、ポリシロキサン樹脂(アルキルアルコキシシラン樹脂を含む)、反応性ビニル樹脂、フェノール樹脂(レゾール及びノボラック)などが挙げられる。これらの樹脂は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組み合わせとして提供することができる。
【0098】
結合剤マトリクス前駆体は、縮合硬化性樹脂、添加重合性樹脂、フリーラジカル硬化性樹脂、及び/又はそのような樹脂を組み合わせたもの及びブレンドしたものであり得る。結合剤マトリクス前駆体の一例としては、フリーラジカルメカニズムを介して重合する樹脂又は樹脂混合物がある。重合プロセスは、例えば、熱エネルギー又は放射線エネルギーのようなエネルギー源に、適切な触媒とともに、結合剤マトリクス前駆体を曝露することによって開始される。放射線エネルギーの例には、電子線、紫外線、又は可視光線が含まれる。
【0099】
好適な結合剤マトリクス前駆体の例には、フェノール系樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、(メタ)アクリレート樹脂(例えば、(メタ)アクリレート化ウレタン、(メタ)アクリレート化エポキシ、エチレン性不飽和フリーラジカル重合性化合物、ペンダントα,β−不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト誘導体、少なくとも1個のペンダントアクリレート基を有するイソシアヌレート誘導体、及び少なくとも1個のペンダントアクリレート基を有するイソシアネート誘導体)、ビニルエーテル、エポキシ樹脂、並びに、それらの混合物及びそれらを組み合わせたものが挙げられる。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル及びメタクリルを含む。エチレン性不飽和モノマー若しくはオリゴマー、又は(メタ)アクリレートモノマー若しくはオリゴマーは、一官能性、二官能性、三官能性、四官能性、又は更に高い官能性のものであってもよい。
【0100】
フェノール系樹脂は、良好な熱的特性と入手可能性とを有し、かつ比較的低いコストであり、取り扱いも容易である。フェノール系樹脂には、レゾール及びノボラックの2つの種類がある。レゾールフェノール系樹脂は、ホルムアルデヒド対フェノールのモル比が1以上対1、通常1.5対1.0〜3.0対1.0の範囲である。ノボラック樹脂は、ホルムアルデヒド対フェノールのモル比が、1未満対1である。市販のフェノール系樹脂の例には、Occidental Chemicals社(テキサス州、Dallas)から入手可能な、DUREZ及びVARCUMの商標名で知られるもの、Monsanto社(ミズーリ州、Saint Louis)から入手可能な、RESINOXの商標名で知られるもの、並びに、Ashland Specialty Chemical社(オハイオ州、Dublin)から入手可能な、AEROFENE及びAROTAPの商標名で知られるものが含まれる。
【0101】
(メタ)アクリレート化ウレタンには、ヒドロキシル末端NCO延長ポリエステル又はポリエーテルのジ(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。市販のアクリレート化ウレタンの例には、Cytec Industries社(ニュージャージー州、West Paterson)から、CMD 6600、CMD 8400、及びCMD 8805として入手可能なものが挙げられる。
【0102】
(メタ)アクリレート化エポキシには、例えばビスフェノールAエポキシ樹脂のジアクリレートエステルのような、エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。市販のアクリレート化エポキシの例には、Cytec Industries社から、CMD 3500、CMD 3600、及びCMD 3700として入手可能なものが含まれる。
【0103】
エチレン性不飽和フリーラジカル重合性化合物には、炭素、水素、及び酸素、並びに場合により、窒素及びハロゲンの原子を含有する、モノマー性及びポリマー性化合物がともに挙げられる。酸素原子若しくは窒素の原子、又はそれらの両方が、エーテル基、エステル基、ウレタン基、アミド基、及び尿素基に、一般に存在する。エチレン性不飽和フリーラジカル重合性化合物は、典型的には、約4,000g/モルの分子量を有し、かつ典型的には、1つの脂肪族ヒドロキシル基又は複数の脂肪族ヒドロキシル基と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等のような不飽和カルボン酸と、を含有する化合物の反応から作られるエステルである。(メタ)アクリレート樹脂の代表的な例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。他のエチレン性不飽和樹脂には、モノアリル、ポリアリル、及びポリメタアリルエステル、並びに、例えばジアリルフタレート、ジアリルアジペート、及びN,N−ジアリルアジパミドのようなカルボン酸のアミドが含まれる。更に他の窒素含有化合物には、トリス(2−アクリロイル−オキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−メチルアクリルオキシエチル)−s−トリアジン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルピペリドンが含まれる。
【0104】
有用なアミノプラスト樹脂は、分子又はオリゴマー当たり少なくとも1つの、ペンダントα、β不飽和カルボニル基を有する。これらの不飽和カルボニル基は、アクリレート、メタクリレート、又はアクリルアミド型の基であり得る。かかる材料の例としては、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N,N’−オキシジメチレンビスアクリルアミド、オルト−及びパラ−アクリルアミドメチル化フェノール、アクリルアミドメチル化フェノールノボラック、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの材料は、米国特許第4,903,440号及び同第5,236,472号(ともにKirkら)に、更に説明されている。
【0105】
少なくとも1つのペンダントアクリレート基を有するイソシアヌレート誘導体、及び少なくとも1つのペンダントアクリレート基を有するイソシアネート誘導体は、米国特許第4,652,274号(Boettcherら)に、更に説明されている。あるイソシアヌレート材料の例は、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレートである。
【0106】
エポキシ樹脂は、エポキシ基の開環により重合され得る1つ以上のエポキシ基を有する。そのようなエポキシ樹脂には、モノマー性エポキシ樹脂及びオリゴマー性エポキシ樹脂が含まれる。有用なエポキシ樹脂の例には、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニルプロパン](ビスフェノールのジグリシジルエーテル)、並びにMomentive Specialty Chemicals社(オハイオ州、Columbus)から、EPON 828、EPON 1004、及びEPON 1001Fとして入手可能な材料が含まれ、かつ、Dow Chemical社(ミシガン州、Midland)から、DER−331、DER−332、及びDER−334として入手可能なものが含まれる。他の好適なエポキシ樹脂には、Dow Chemical社から、DEN−431及びDEN−428として市販の、フェノールホルムアルデヒドノボラックのグリシジルエーテルが含まれる。
【0107】
エポキシ樹脂は、適切なカチオン性硬化剤の添加によりカチオン機構を経て重合することができる。カチオン性硬化剤は、エポキシ樹脂の重合を開始するための酸源を生じさせる。これらのカチオン性硬化剤としては、オニウムカチオンと金属又はメタロイドの錯体アニオンを包含するハロゲンとを有する塩を挙げることができる。エポキシ樹脂及びフェノール系樹脂用のその他の硬化剤(例えば、アミン硬化剤及びグアニジン)もまた、用いることができる。
【0108】
その他のカチオン性硬化剤には、有機金属錯体カチオン及び金属又はメタロイドのハロゲン含有錯体アニオンを有する塩が含まれ、それらは、米国特許第4,751,138号(Tumeyら)に、更に説明されている。米国特許第4,985,340号(Palazzottoら)、同第5,086,086号(Brown−Wensleyら)、及び同第5,376,428号(Palazzottoら)に説明されているように、他の例としては、有機金属塩及びオニウム塩が含まれる。更に他のカチオン性硬化剤としては、金属が周期表のIVB族、VB族、VIB族、VIIB族、及びVIIIB族の元素から選択される、有機金属錯体のイオン性塩が含まれ、それについては、米国特許第5,385,954号(Palazzottoら)に説明されている。
【0109】
フリーラジカル重合性エチレン性不飽和化合物は、フリーラジカル熱開始剤及び/又は光開始剤の分解によって形成されたフリーラジカルに曝露されると、あるいは、粒子放射線(電子線)又は高エネルギー放射線(γ線)に曝露されると、重合する。化学線の電磁放射線(例えば、紫外光域又は可視光域の電磁放射線)に曝露されるとフリーラジカル源を生成する化合物は、一般に、光開始剤と呼ばれる。
【0110】
フリーラジカル熱開始剤の例には、例えば過酸化ベンゾイルのような過酸化物、及びアゾ化合物が挙げられる。
【0111】
光開始剤の例には、ベンゾイン及びその誘導体が挙げられ、その例としてはαメチルベンゾインと;αフェニルベンゾインと;αアリルベンゾインと;αベンジルベンゾインと;例えば、ベンジルジメチルケタル(例えば、IRGACURE 651としてCiba Specialty Chemicals社(ニューヨーク州、Tarrytown)から市販のもの)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルのようなベンゾインエーテルと;例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(例えば、DAROCUR 1173として、Ciba Specialty Chemicals社から市販のもの)及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、IRGACURE 184として、Ciba Specialty Chemicals社から市販のもの)のようなアセトフェノン及びその誘導体と;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(例えば、IRGACURE 907として、Ciba Specialty Chemicals社から市販のもの)と;2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(例えば、IRGACURE 369として、Ciba Specialty Chemicals社から市販のもの)と、が挙げられる。その他の有用な光開始剤には、例えば、ピバロインエチルエーテル、アニソインエチルエーテル、アントラキノン(例えば、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、1−メトキシアントラキノン、又はベンズアントラキノン)、ハロメチルトリアジン、ベンゾフェノン及びその誘導体、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩、例えば、ビス(eta.sub.5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム(例えば、CGI 784DCとして、Ciba Specialty Chemicals社から市販のもの)のようなチタニウム錯体;並びにハロニトロベンゼン(例えば、4−ブロモメチルニトロベンゼン)、モノ−及びビス−アシルホスフィン(例えば、IRGACURE 1700、IRGACURE 1800、IRGACURE 1850、DAROCUR 4263、及びDAROCUR 4265として、いずれもCiba Specialty Chemicals社から市販のもの)、及び2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(LUCIRIN TPOとして、BASF社(ノースカロライナ州、Charlotte)から市販のもの)が挙げられる。光開始剤を組み合わせたものも、使用され得る。
【0112】
典型的には、硬化剤(例えば、フリーラジカル(光若しくは熱)開始剤、又はカチオン性硬化触媒)は、結合剤材料前駆体の重量の0.1〜10%、好ましくは2〜4重量%の範囲の量で用いられるが、その他の量もまた用いられ得る。加えて、例えば研磨粒子及び/又は充填剤粒子のようないかなる粒子材料を添加する前に、開始剤を結合剤マトリクス前駆体中に均一に分散又は溶解させることが好ましい。1種類以上の分光増感剤(例えば、染料)を、例えば、光開始剤(複数可)と組み合わせて用いて、特定の化学線源に対する光開始剤の感受性を高めることもできる。好適な増感剤の例としては、チオキサントン及び9,10−アントラキノンが挙げられる。一般的に、光増感剤の量は、結合剤材料前駆体の重量の約0.01〜10重量%、より好ましくは0.25〜4.0重量%の範囲で、さまざまであり得る。光増感剤の例には、QUANTICURE ITX、QUANTICURE QTX、QUANTICURE PTX、QUANTICURE EPDとして、Biddle Sawyer社(ニューヨーク州、New York)から入手可能なものが挙げられる。
【0113】
上述の結合剤と研磨粒子との間の架橋結合を促すため、研磨粒子と結合剤前駆体とのスラリー中に、典型的には約0.01〜5重量%、より典型的には約0.01〜3重量%、更により典型的には約0.01〜1重量%のシランカップリング剤を含んでもよいが、例えば、研磨粒子の粒径によっては、他の量を用いてもよい。好適なシランカップリング剤としては、例えば、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γメルカプトプロピルトリメトキシシラン(例えば、それぞれ、商品名A−174、A−151、A−172、A−186、A−187、及びA−189として、Witco社(コネチカット州、Greenwich)から入手可能なもの)、アリルトリエトキシシラン、ジアリルジクロロシラン、ジビニルジエトキシシラン、メタパラスチリルエチルトリメトキシシラン(例えば、商品名A0564、D4050、D6205、及びS1588として、United Chemical Industries社(ペンシルバニア州、Bristol)から市販のもの)、ジメチルジエトキシシラン、ジヒドロキシジフェニルシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラノール、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、テトラメチルオルトシリケート、エチルトリエトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、アミルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、及びそれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0114】
結合剤マトリクス前駆体は、場合により、例えば、着色剤、研削助剤、充填剤、粘度修正剤、湿潤剤、分散剤、光安定剤、及び酸化防止剤のような添加剤を含有し得る。
【0115】
研磨層は、場合により、充填剤粒子を更に含み得る。充填剤は一般に、0.1〜50ミクロンの、典型的には1〜30ミクロンの範囲の平均粒径を有する。本発明に有用な充填剤の例としては:金属の炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム−白亜、方解石、大理石、石灰華、大理石、及び石灰石;カルシウム炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸マグネシウム)、シリカ(例えば石英、ガラスビーズ、ガラスバブル、及びガラス繊維)、シリケート(例えば、タルク、モンモリロナイト粘土;長石、雲母、カルシウムシリケート、カルシウムメタシリケート、ナトリウムアルミノシリケート、ナトリウムシリケート、リチウムシリケート、並びに含水及び無水のカリウムシリケート)、金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム、アルミニウム硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム)、石膏、バーミキュライト、木粉、アルミニウムトリハイドレート、カーボンブラック、金属酸化物(例えば、酸化カルシウム−石灰;酸化アルミニウム;酸化スズ−例えば、酸化第二スズ;二酸化チタン)、及び金属の硫酸塩(例えば、亜硫酸カルシウム)、熱可塑性粒子(例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、ポリプロピレン、アセタールポリマー、ポリウレタン、ナイロン粒子)、並びに熱硬化性粒子(例えば、フェノールバブル、フェノールビーズ、ポリウレタン発泡粒子)、が挙げられる。充填剤はまた、例えばハロゲン化物の塩のような塩であってもよい。ハロゲン化物塩の例としては、ナトリウムクロライド、カリウムクリオライト、ナトリウムクリオライト、アンモニウムクロライド、カリウムテトラフルオロホウ酸塩、ナトリウムテトラフルオロホウ酸塩、フッ化シリコン、カリウムクロライド、及びマグネシウムクロライドが挙げられる。金属充填剤の例には、スズ、鉛、ビスマス、コバルト、アンチモン、カドミウム、鉄、及びチタニウムが挙げられる。他の雑多な充填剤には、硫黄、有機硫黄化合物、黒鉛、及び金属硫化物が挙げられる。
【0116】
一部の実施形態においては、結合剤マトリクスは高い熱抵抗性を有する。例えば、硬化させた結合剤マトリクスは、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも175℃、又は少なくとも200℃のガラス転移温度(T
g)を有し得る。
【0117】
研磨層及び/又は裏材は、例えば、研磨粒子表面改質添加剤、研削助剤、カップリング剤、充填剤、膨張剤、繊維、孔形成剤、帯電防止剤、硬化剤、懸濁剤、光増感剤、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、顔料、染料、紫外線安定剤、及び抗酸化剤のような添加剤を含有し得る。これらの材料の量は、一般に、望ましい特性を付与できるように選択される。
【0118】
研磨層は、孔形成剤を含み得る。孔は、粒塊性又はコーティングを素早く破壊することが望ましい構成体の場合に望ましいことがある。孔形成剤の例には、犠牲とされる有機物質が挙げられるが、例えば、有機物質は、粒塊性又は研磨コーティング中に一定の体積を占めるように用いた後に、焼却又は溶解させることにより取り除かれるようにして用いることが可能である。犠牲式孔形成剤の例には、スチレン球及びデキストリン粉末が挙げられる。孔は、例えばガラス又はアルミナ中空ビーズ又はバブルのような恒久的孔形成剤により形成されてもよく、あるいは、発泡無機材料により形成されてもよい。
【0119】
懸濁剤の1つの例としては、OX−50として、DeGussa社(ニュージャージー州、Ridgefield Park)から市販されている、150m
2/g未満の表面積を有する非晶質シリカ粒子がある。懸濁剤を添加すると、研磨スラリーの全体的な粘度が低下する場合がある。懸濁剤の使用については、米国特許第5,368,619号(Palazzottoら)に、更に説明されている。
【0120】
研磨物品は、周知の方法によって製造することが可能である。構造化研磨物品は、米国特許第5,152,917号(Pieperら)、同第5,435,816号(Spurgeonら)、同第5,437,754号(Calhoun)、同第5,454,844号(Hibbardら)、及び同第5,304,223号(Pieperら)に記載の方法により、製造することが可能である。
【0121】
三次元研磨複合体を有する有用な研磨物品であって、複合体が、構造コート内に固定され、場合により礬砂コーティングを有する研磨粒塊を含む物品を製造する他の有用な方法が、米国特許第6,217,413号(Christianson)に記載されている。
【0122】
本開示による集塊性研磨粒子を用いて研磨する方法は、スナッギング(すなわち、高圧高ストック除去)から艶出し仕上げ(例えば、被覆研磨材ベルトで医療用インプラントを艶出し仕上げする)を含み、後者は、典型的には、より微細な等級(例えば、ANSI 220未満のもの及びそれよりも微細なもの)の研磨粒子で完了される。研磨粒塊性グレインはまた、例えばガラス化結合されたホイールによりカムシャフトを研削することのような、精密な研磨用途においても用いることができる。特定の研磨用途に用いられる集塊性研磨粒子(及び粒塊性研磨グレインを含む鉱物粒子)のサイズは、当業者には明らかであろう。
【0123】
本開示による集塊性研磨粒子を用いる研磨は、乾式で実行されても、あるいは湿式で実行されてもよい。湿潤研磨に関しては、液体は、薄いミストから完全な浸水の形態で導入又は供給され得る。一般に用いられる液体の例には、例えば、水、水溶性油、有機潤滑剤、及び乳剤が挙げられる。液体は、研磨に伴う熱を減少させるように作用するか、かつ/又は潤滑剤として作用することが可能である。液体は、殺菌剤、消泡剤等の少量の添加物を含有してもよい。液体は、新たな鉱物粒子を露出させることが可能な、目立て粒子(すなわち、研磨複合体及び/又は集塊性研磨粒子の表面を研磨し破壊することが可能な粒子)を含み得る。当該技術分野において既知の標準的な目立て技法をまた、研磨物品を目立てするために用いることもあり得る。
【0124】
したがって、本開示は、集塊性研磨粒子を用いて研磨する方法を更に提供するが、その方法においては、スラリーにより提供されるあるいは固定された研磨物品内に提供されるコンディション調整粒子により集塊性研磨粒子のコンディション調整を行い、コンディション調整粒子が研磨複合体内の集塊性研磨粒子を目立てすることが可能なようになっている。研磨粒塊のコンディション調整を行うためのコンディション調整粒子を用いるコンディション調整方法の一例が、米国特許第7,494,519号(Fletcherら)に記載されている。典型的には、作業対象物と固定された研磨物品とが摩擦接触させられ、互いに対して相対的に動かされた場合、コンディション調整粒子は、作業対象物の表面を感知できるほどには改質しないが、他方で固定された研磨物品内の鉱物粒子は、作業対象物の表面を実際に改質する。一部の実施形態においては、コンディション調整粒子は、研磨複合体内の集塊性研磨粒子内の鉱物粒子の平均粒径の約25〜約200%の、好ましくは約50〜約150%の平均粒径を有する。
【0125】
固定された研磨物品内の鉱物粒子は、作業対象物を研磨することが可能な第1の硬度を有し得るが、コンディション調整粒子は、鉱物粒子の硬度よりも低い第2の硬度を有する。好ましくは、コンディション調整粒子が、研磨複合体の第1のガラス状結合剤、第2のガラス状結合剤、及び結合剤マトリクスのうちの少なくとも1つを研磨できるように、コンディション調整粒子の硬度が選択される。コンディション調整粒子は、もしそのような影響を持ち得たとしても、作業対象物にほとんど影響を及ぼさないであろう。例えば、典型的な擦り合わせ加工は、作業対象物を磨き上げるのに数分間から数時間を要し得るが、コンディション調整粒子(第2の硬度を有する)だけでは、同様の作業対象物を磨き上げるのに(磨き上げることが最終的に可能であるとして)少なくとも数日、数週間、又は数カ月を要する。コンディション調整粒子は、固定された研磨物品の一部として提供され、あるいは、別個のスラリーとして提供され得る(すなわち、固定された研磨物品と作業対象物との界面に、作業対象物の研磨中に分注される液体内に含まれ得る)。
【0126】
集塊性研磨粒子及びそのような粒子を含む研磨物品を用いて、例えばアルミニウム金属、炭素鋼、軟鋼、工具鋼、ステンレス鋼、硬化鋼、チタニウム、ガラス、セラミックス、木材、木材様材料、塗料、塗装表面、有機コーティング表面等のような作業対象物を研磨することができる。研磨中に印加される力は、典型的に、約1〜約100キログラムの範囲である。
【0127】
本開示の選択された実施形態
第1の実施形態においては、本開示は、集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供し、その方法は:
第1のガラス状結合剤内の鉱物粒子を含む粒塊性研磨粒子を提供する工程;
粒塊性研磨粒子を第2のガラス状結合剤材料前駆体と組み合わせ、集塊性研磨粒子前駆体を形成する工程;及び、
集塊性研磨粒子前駆体を加熱して、第2のガラス状結合剤材料前駆体を第1のガラス状結合剤とは異なる第2のガラス状結合剤に転換し、それにより集塊性研磨粒子を形成する工程、を含み、第1のガラス状結合剤は第2のガラス状結合剤とは:
i)元素組成、又は
ii)固有の物理的特性のうちの少なくとも1点で異なる方法である。
【0128】
第2の実施形態においては、本開示は、第1のガラス状結合剤と第2のガラス状結合剤とが、同じ元素組成を有する、第1の実施形態による集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0129】
第3の実施形態においては、本開示は、第1のガラス状結合剤と第2のガラス状結合剤とが、異なる元素組成を有する、第1の実施形態による集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0130】
第4の実施形態においては、本開示は、鉱物粒子が、ダイヤモンド粒子を含む、第1〜第3の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0131】
第5の実施形態においては、本開示は、鉱物粒子が、0.1〜15ミクロンのメジアン粒径を有し、粒塊性研磨粒子が40〜400ミクロンのメジアン粒径を有する、第4の実施形態による集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0132】
第6の実施形態においては、本開示は、粒塊性研磨粒子が、楕円体状に形成されている、第1〜第5の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0133】
第7の実施形態においては、本開示は、粒塊性研磨粒子を提供する工程が:
鉱物粒子と第1のガラス状結合剤材料前駆体とを含む粒塊性研磨粒子前駆体を形成する工程;及び、
粒塊性研磨粒子前駆体を、第1の最高温度で加熱して、粒塊性研磨粒子を形成する工程、を含み、
集塊性研磨粒子前駆体が、第1の最高温度よりも少なくとも15℃低い第2の最高温度で加熱される、第1〜第6の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0134】
第8の実施形態においては、本開示は、鉱物粒子と第1のガラス状結合剤材料前駆体とを含む粒塊性研磨粒子前駆体を形成する工程が、
鉱物粒子と第1のガラス状結合剤材料前駆体とを含む組成物を、複数の成形型の空洞に入れて、粒塊性研磨粒子前駆体を形成する工程を含む、第7の実施形態による集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0135】
第9の実施形態においては、本開示は、研磨産業において規定される公称等級に準拠するように、集塊性研磨粒子を類別する工程を更に含む、第1〜第8の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0136】
第10の実施形態においては、本開示は、第2のガラス状結合剤が、第1のガラス状結合剤よりも破砕しにくい、第1〜第9の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を製造するための方法を提供する。
【0137】
第11の実施形態においては、本開示は、粒塊性研磨粒子を含み、粒塊性研磨粒子が鉱物粒子と第1のガラス状結合剤とを含み、粒塊性研磨粒子が、第2のガラス状結合剤により結合されており、第1のガラス状結合剤は、第2のガラス状結合剤とは:
i)元素組成、又は
ii)固有の物理的特性、
のうちの少なくとも1つの点で異なる、集塊性研磨粒子を提供する。
【0138】
第12の実施形態においては、本開示は、第1のガラス状結合剤と第2のガラス状結合剤とが、同じ元素組成を有する、第11の実施形態による集塊性研磨粒子を提供する。
【0139】
第13の実施形態においては、本開示は、第1のガラス状結合剤と第2のガラス状結合剤とが、異なる元素組成を有する、第11の実施形態による集塊性研磨粒子を提供する。
【0140】
第14の実施形態においては、本開示は、鉱物粒子が、ダイヤモンド粒子を含む、第11〜第13の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を提供する。
【0141】
第15の実施形態においては、本開示は、ダイヤモンド粒子が、0.1〜15ミクロンのメジアン粒径を有し、粒塊性研磨粒子が40〜400ミクロンのメジアン粒径を有する、第14の実施形態による集塊性研磨粒子を提供する。
【0142】
第16の実施形態においては、本開示は、粒塊性研磨粒子が楕円体状に形成されている、第11〜第15の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を提供する。
【0143】
第17の実施形態においては、本開示は、鉱物粒子が、研磨産業の規定公称等級に準拠する、第11〜第16の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を提供する。
【0144】
第18の実施形態においては、本開示は、第2のガラス状結合剤が、第1のガラス状結合剤よりも破砕しにくい、第13〜第17の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を提供する。
【0145】
第19の実施形態においては、本開示は、集塊性研磨粒子のメジアン粒径が、粒塊性研磨粒子のメジアン粒径より少なくとも2.5倍大きい、第11〜第18の実施形態のいずれか1つによる集塊性研磨粒子を提供する。
【0146】
第20の実施形態においては、本開示は、結合剤材料内に保持された集塊性研磨粒子を含み、集塊性研磨粒子が粒塊性研磨粒子を含み、粒塊性研磨粒子が鉱物粒子と第1のガラス状結合剤とを含み、粒塊性研磨粒子が、第2のガラス状結合剤により結合されており、第1のガラス状結合剤が第2のガラス状結合剤とは:
i)元素組成、又は
ii)固有の物理的特性、
のうちの少なくとも1つの点で異なる、研磨物品を提供する。
【0147】
第21の実施形態においては、本開示は、裏材の主面に固定された研磨層を含む構造化研磨物品を含み、研磨層が、成形研磨複合体を含み、かつ、少なくとも一部の成形研磨複合体が、結合剤材料内に保持された集塊性研磨粒子を含む、第20の実施形態による研磨物品を提供する。
【0148】
第22の実施形態においては、本開示は、研磨層が、約20〜約70%の担持面積率を有する、第20〜第21の実施形態による研磨物品を提供する。
【0149】
第23の実施形態においては、本開示は、鉱物粒子が、ダイヤモンド粒子を含む、第20〜第22の実施形態のいずれか1つによる研磨物品を提供する。
【0150】
第24の実施形態においては、本開示は、ダイヤモンド粒子が、0.1〜15ミクロンのメジアン粒径を有し、粒塊性研磨粒子が、40〜400ミクロンのメジアン粒径を有する、第23の実施形態による研磨物品を提供する。
【0151】
第25の実施形態においては、本開示は、集塊性研磨粒子のメジアン粒径が、粒塊性研磨粒子のメジアン粒径より少なくとも2.5倍大きい、第20〜第24の実施形態のいずれか1つによる研磨物品を提供する。
【0152】
第26の実施形態においては、本開示は、第2のガラス状結合剤が、第1のガラス状結合剤よりも破砕しにくい、第20〜第24の実施形態のいずれか1つによる研磨物品を提供する。
【0153】
本開示の目的及び利点は、以下の非限定的な実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0154】
特に断らないかぎり、実施例及び本明細書の残りの部分における部、百分率、比などはすべて重量に基づいたものである。
【0155】
【表1】
【0156】
試験方法及び調製手順
研磨試験方法
Bruker社(マサチューセッツ州、Billerica)から入手可能なCETR CP−4研磨機を用いて、研磨を実施した。次に、3M両面コートテープ442PCとして、3M社(ミネソタ州、St.Paul)から入手可能な1枚の両面感圧性接着テープを、構造化研磨パッドの側、例えば、実施例1aでは、形成部とは反対側に貼り付けた。厚さ50ミル(0.13mm)のポリカーボネートシートであるサブパッドを、構造化研磨パッドに、442PCテープを介して貼り付けた。次に、ポリカーボネートのサブパッドを有する直径7 3/8インチ(187mm)の構造化研磨パッドを、上の積層体からダイカットした。サブパッドを有するパッドを、CP−4のプラテンに、両面接着テープを用いて取り付けた。それぞれが直径約3インチ(7.62cm)の3つのポケットを有する真ちゅうキャリアを、CP−4の上側ドライブシャフトに取り付けた。GT Crystal Systems LLC社(マサチューセッツ州、Salem)から入手可能な、3つの直径3インチ(7.62cm)のC−平面サファイヤウェハが、キャリアポケット内に配置された。キャリアの穴の直径は、サファイヤウェハの直径よりもわずかに大きいので、ウェハがキャリアの穴の中で自由に回転することが可能になっていた。研磨の間、プラテンを120rpmで回転させ、研磨機のヘッドを121rpmで回転させ、6psi(13.8kPa)の圧力をかけた。Intersurface Dynamics社(コネチカット州、Bethel)から入手可能で、重量%のPWA−5を有するCHALLENGE 543HTの5重量%溶液である潤滑剤を、研磨試験中ずっとパッド中央に、約20ml/分の流速で流した。一部のケースでは、比較例CE−Aに対するPWA−5の代わりに、PWA−5が用いられた。3枚のウェハを用いて、研磨を30分間にわたり実行した。各固定研磨パッドに対して3枚のウェハを研磨した。ウェハ密度が3.97g/cm
3であることに基づき、測定された重量損失を用いて、除去された材料の量を求めた。ミクロン/分で報告する除去速度は、30分の研磨間隔で、3枚のウェハの厚みが減少した量の平均値である。
【0157】
噴霧乾燥粒塊1(SDA−1)の調製
米国特許第6,551,366号(D’Souzaら)に開示されている一般的な手順にしたがって、研磨粒塊を調製した。
【0158】
以下のようにして噴霧乾燥技法を用いて、水性分散液から噴霧乾燥粒塊を調製した。約40.0gの脱イオン化水に、1.8gのStandex 230を、カウレスブレードを備えたエアミキサーを用いて撹拌することにより溶解した。次に、約23.3gの、粉砕したGFを、溶液に添加した。GFは使用前に、メジアン粒径が約2.5μmになるように粉砕しておいた。約34.9gのMCD−1ダイヤモンドを、溶液に添加し、ダイヤモンド対ガラスフリット比が約60:40(重量/重量)となるようにした。上に挙げたすべての材料成分を添加した後、得られた液体をエアミキサーを用いて更に30分間撹拌した。
【0159】
次に溶液を、GEA Process Engineering社(デンマーク、Soborg)から入手可能な、MOBILE MINER 2000遠心アトマイザで霧化した。霧化ホイールは、20000rpmで運転された。ポンプ速度流速の設定値を4にして、スラリーを回転ホイールの入口に送り込んだ。150℃の空気を、霧化チャンバに供給し、液滴が形成されるとそれを乾燥するように用い、噴霧乾燥研磨粒塊の前駆体を製造した。噴霧乾燥器の出口温度は、90〜95℃で変化させた。
【0160】
次に研磨粒塊前駆体を、40重量%のPWA−3と混合することによりガラス化したが、粒塊前駆体/PWA−3粉末混合物を、Ipsen Ceramics社(イリノイ州、Pecatonica)から入手可能な耐火性匣鉢に入れて、炉内で空気中で加熱し、研磨粒塊を形成した。PWA−3は、離型剤として用いられ、ガラス化の工程中に、粒塊性研磨粒子前駆体が、互いに凝集してしまうのを防ぐ。ガラス化工程の加熱スケジュールは、以下の通りであった:2℃/分の温度勾配で400℃まで昇温し、1時間にわたり400℃でアニールして、2℃/分の温度勾配で720℃まで昇温し、1時間にわたり720℃でアニールして、2℃/分の勾配で35℃まで降温した。研磨粒塊前駆体の有機性一時結合剤である、Standex230は、ガラス化ステップ中に燃え尽きた。
【0161】
ガラス化後、研磨粒塊/PWA−3粉末混合物を、106μmの目を有するスクリーンを通してふるいにかけた。ふるい分けた研磨粒塊を、走査型電子顕微鏡を用いて検査した。光学顕微鏡を通して研磨粒塊を観察したところ、約20〜約80μmの範囲の粒径であり、平均の粒径は約50μmであった。粒塊性研磨グレインは、球形状のものが優勢であった。
【0162】
研磨粒塊/PWA−3粉末混合物を脱イオン化水で洗浄して、粒塊表面に付着したPWA−3粒子及び遊離したPWA−3粒子を、以下の手順にしたがって取り除いた。ふるいにかけた後の粒塊/PWA−3粉末混合物、約200gを、約2,000mlの脱イオン化水とともにステンレス製の容器に入れた。容器を47kHzに設定した超音波浴槽(Cole−Palmer Instrument社(イリノイ州、Chicago)製、モデル8852)内に配置し、従来型のミキサーを用いてスラリーを5分間にわたり混合した。混合後、容器を浴槽から取り出して、5分間静置した。この間に、研磨粒塊が容器の底に沈殿するが、PWA−3粒子の大半は、液体中に懸濁した状態で残っていた。液体を慎重にデカントして、水中に懸濁したPWA−3粒子を除去した。洗浄工程を、追加的に少なくとも3回繰り返した。この工程の後で、研磨粒塊の入った容器を、120℃のオーブンに入れて3時間にわたって、水を蒸発させ研磨粒塊を乾燥させて、SDA−1を得た。
【0163】
噴霧乾燥粒塊2(SDA−2)の調製
SDA−2を、粒塊前駆体/PWA−3粉末混合物を、720℃ではなく765℃でガラス化した点以外はSDA−1と同様にして調製した。
【0164】
噴霧乾燥粒塊3(SDA−3)の調製
SDA−3を、粒塊前駆体/PWA−3粉末混合物を、720℃ではなく830℃でガラス化した点以外はSDA−1と同様にして調製した。
【0165】
噴霧乾燥粒塊4(SDA−4)の調製
SDA−4を、粉砕したGFの量が26.2gで、用いたMCD−1ダイヤモンドの量が32.0gであった点、及び粒塊前駆体/PWA−3粉末混合物を、720℃ではなく820℃でガラス化した点以外はSDA−1と同様にして調製した。
【0166】
噴霧乾燥粒塊5(SDA−5)の調製
SDA−5を、粉砕したGFの量が34.9gで、用いたMCD−1ダイヤモンドの量が23.3gであった点以外はSDA−1と同様にして調製した。
【0167】
噴霧乾燥粒塊6(SDA−6)の調製
SDA−6を、粉砕したGFの量が34.9gで、用いたMCD−1ダイヤモンドの量が23.3gであった点、及び粒塊前駆体/PWA−3粉末混合物を、720℃ではなく765℃でガラス化した点以外はSDA−1と同様にして調製した。
【0168】
噴霧乾燥粒塊7(SDA−7)の調製
SDA−7を、粉砕したGFの量が34.9gで、用いたMCD−1ダイヤモンドの量が23.3gであった点、及び粒塊前駆体/PWA−3粉末混合物を、720℃ではなく830℃でガラス化した点以外はSDA−1と同様にして調製した。
【0169】
(実施例1)
研磨粒子SDA−1を有する集塊性研磨粒子を、以下のようにして調製した。36.4重量部のStandex230を、63.6重量部の脱イオン化水に、カウレスブレードを備えたエアミキサーを用いて撹拌することにより溶解させた。別の容器内で、61.5gのStandex230溶液と、55.40gの粉砕したGFと、83.1gのSDA−1を、標準的プロペラブレードで5分間にわたり完全に混合し、続いて、30分間にわたり超音波浴槽内で撹拌して、スラリーを形成した。GFは使用前に、メジアン粒径が約2.5μmになるように粉砕しておいた。スラリーを、テクスチャをつけたポリプロピレンの工具のシートにコーティングしたが、テクスチャは空洞のアレイであり、余分なスラリーは、ドクターブレードで除去した。ポリプロピレンの工具の空洞は、頭を切り落とした四角錐であり、180μmの深さを有し、ベース部分の寸法が250μm×250μmであり、かつ遠位端の寸法が150μm×150μmであった。空洞は、正方形のグリッドのアレイ状に配列されており、そのピッチ、すなわち、空洞の中心間の距離は、375μmであった。空洞を形成する側面は、遠位端に向かって幅が狭くなるテーパー状であり、集塊性研磨粒子が容易に工具から取り外せるようになっていた。テクスチャをつけたポリプロピレンの工具は、望ましいポリプロピレンのシートのテクスチャの逆のテクスチャを有する金属製のマスター工具からのテクスチャがポリプロピレンに形成される、型押し加工工程により形成された。マスター工具の角錐配列は、従来の金属のダイヤモンド旋削プロセスによって製造した。マスター工具によるポリプロピレンシートの型押しは、ポリプロピレンの融解温度付近で、従来の型押し技術に従って行われた。
【0170】
工具の空洞内に入った状態のスラリーを室温で1時間にわたって乾燥させ、引き続いて、オーブン内において75℃で1時間にわたって更に乾燥させた。乾燥した集塊性研磨粒子前駆体(すなわち、まだ火を入れていない集塊性研磨粒子)を工具から、超音波駆動されたバー(Branson Ultrasonic Instruments社(コネチカット州、Danbury)製のモデル902R)を用いて取り外した。
【0171】
乾燥した集塊性研磨粒子前駆体は、集塊性研磨粒子前駆体の7重量%のHy−AlOxと混合し、集塊性研磨粒子/Hy−AlOx粉末混合物を耐火性匣鉢(Ipsen Ceramics社(イリノイ州、Pecatonica)から入手可能なもの)に入れて、炉内で空気中で加熱し、集塊性研磨粒子を形成することによりガラス化した。ガラス化工程の加熱スケジュールは、以下の通りであった:2℃/分の温度勾配で400℃まで昇温し、2時間にわたり400℃でアニールして、2℃/分の温度勾配で750℃まで昇温し、1時間にわたり750℃でアニールして、2℃/分の勾配で室温まで降温した。研磨粒塊前駆体の有機性一時結合剤である、Standex230は、ガラス化ステップ中に燃え尽きた。焼成工程後に、粒塊性研磨グレインを、150μmの目のスクリーン及び250μmの目のスクリーンでふるいにかけて、250ミクロン以上の粒径の粒塊を取り除き、150ミクロン未満の粒径を有するHy−AlOx粒子を取り除き、集塊性研磨粒子を得た。
【0172】
(実施例2〜18)
実施例2〜18を、集塊性研磨粒子中の噴霧乾燥した粒塊性粒子の重量百分率(噴霧乾燥粒塊と集塊性研磨粒子内の粉砕したガラスフリットとの総重量約138.5gに対する重量百分率)と、ガラス化温度(すなわち、成形された集塊性研磨粒子の1時間の最高アニーリング温度)とを、表1(下記)に報告されているように調整した点以外は実施例1と同様にして調製した。
【0173】
【表2】
【0174】
図5は、実施例13において製造した集塊性研磨粒子を示す。
【0175】
集塊性研磨粒子を含む構造化研磨物品を、米国特許第5,152,917号(Pieperら)に一般に説明され、以下に更に説明されているように調製した。
【0176】
(実施例1A)
構造化研磨パッドを、実施例1の集塊性研磨粒子を用いて、以下の手順にしたがって調製した。SR368D、28.0g;OX50、1.0g;IRG819、0.3g;VAZO 52、0.3g;SP32000、1.2g;A174、0.7g;W400、57.6g;及び、実施例1の集塊性研磨粒子、10.9gを混合し、樹脂ベースのスラリーを得た。樹脂ベースのスラリーを、テクスチャをつけたポリプロピレン工具のシートにコーティングしたが、テクスチャは空洞のアレイであった。ポリプロピレン工具の空洞は、直方体様の形状であり、深さが800μm、空洞の底部の寸法が2.36mm×2.36mmで、空洞開口部の寸法が2.8mm×2.8mmであった。空洞は、正方形のグリッドのアレイ状に配列されており、そのピッチ(すなわち、空洞の中心間の距離)は、4.0mmであった。テクスチャをつけたポリプロピレン工具は、実施例1に対して説明したのと同様の型押し加工により用意した。樹脂ベースのスラリーのコーティング幅は、10インチ(25.4cm)であった。厚さ5ミル(0.127mm)のポリエステルフィルム裏材のシートが、樹脂ベースのスラリーコーティングに、ポリエステルフィルム裏材上に適用されるゴムのローラを用いて手で貼り付けられ、スラリーがポリエステルフィルム裏材の表面を濡らした。次に、樹脂ベースのスラリーコーティングは、コーティング、工具、及び裏材を、American Ultra社(インディアナ州、レバノン)から市販の2つの紫外線ランプ(400ワット/インチ(157.5W/cm))を発生させる中圧力水銀灯下を、約30フィート/分(9.1m/分)の速度で通過させることにより、裏材を介して硬化された。硬化したスラリーは、ポリエステルフィルム裏材に粘着していたが、工具から取り除かれ、立方体形状の特徴部分を裏材に取り付けられた状態にしていた。特徴部分を有する裏材は、従来型の空気透過型オーブン90℃で12時間にわたり、更に後硬化され、構造化研磨パッドを形成した。
【0177】
(実施例2A〜実施例18A)
構造化研磨パッドは、固定した研磨パッド組成内の集塊性研磨粒子の量を調整し、表1の最終列にあるような、固定した研磨パッド内の集塊性研磨粒子の百分率を得たという点以外は、実施例1aに対して説明した手続きによって準備した。
【0178】
比較実施例A(比較例A)
比較実施例Aは、3M 677XA EL TRIZACT DIAMOND TILE(直径6ミクロン)として3M社(ミネソタ州、St.Paul)から入手可能な、固定された研磨パッドであった。
【0179】
実施例1a〜18aに対応する構造化研磨パッドを、その研磨性能について、既に説明した研磨試験方法にしたがって、評価した。その結果を表2(下記)に示す。
【0180】
【表3】
【0181】
特許証のための上記の出願において引用された参照文献、特許、又は許出願はいずれも一貫性を有するようにそれらの全容を参照することにより本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本願の部分との間に不一致又は矛盾がある場合、上記の説明文における情報が優先するものとする。特許請求される開示を当業者が実施することを可能ならしめるために示される上記の説明は、特許請求の範囲及びその全ての均等物によって規定される本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。