特許第6561092号(P6561092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561092
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ベンディングロール
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/14 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   B21D5/14 J
   B21D5/14 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-126043(P2017-126043)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-5793(P2019-5793A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2017年9月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】坪田 勝利
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 拓児
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−229424(JP,A)
【文献】 特開2006−263872(JP,A)
【文献】 特開2000−288635(JP,A)
【文献】 特開平09−076022(JP,A)
【文献】 特開2004−298911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ロールと、前記上ロールの下方の前後両側に配された一対の下ロールとを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールを第1電動機で回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形するベンディングロールにおいて、
前記上ロールは、第2電動機によって駆動される油圧ポンプを動力源とし、その油圧ポンプから作動油を供給される油圧シリンダによって昇降されるものであり、前記第1電動機で各下ロールを回転駆動して金属板を曲げ成形している間で、前記上ロール昇降しないときは、前記油圧ポンプから油圧シリンダへ作動油を供給しない状態で、その上ロール昇降するときの回転数よりも低い回転数で前記第2電動機を駆動するか、あるいは前記第2電動機を停止させることを特徴とするベンディングロール。
【請求項2】
前記油圧ポンプを駆動する第2電動機がインバータ制御されるものであることを特徴とする請求項1に記載のベンディングロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上ロールと一対の下ロールの間で金属板を往復移動させながら曲げ成形するベンディングロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ベンディングロールは、上ロールとこれに平行な一対の下ロールとを備え、上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形する装置である。
【0003】
一般的なベンディングロールでは、各下ロールは電動機から減速機を介して回転駆動されるが、その他の作動部材は、別の電動機によって駆動される油圧ポンプを動力源とし、その油圧ポンプから作動油を供給される油圧駆動部材の運動によって作動するようになっている。例えば、上ロールは、通常、金属板の成形の際に、油圧ポンプから作動油を供給される油圧シリンダの直線運動によって昇降し、同じ油圧ポンプから作動油を供給される油圧モータの回転運動によって、上ロールを支持する両側のフレームと一体に前後方向(軸方向と直交する水平方向)に移動するようになっており、金属板とのスリップを防止するために別の油圧モータによって回転駆動される場合もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、上ロール以外でも、上ロールの一端部を回転自在に支持し、成形後の金属板を取り出すときに転倒する一側のフレーム(以下、「転倒フレーム」とも称する。)や、金属板の成形前に上ロールと各下ロールの間に通された金属板の進行を遮る位置に上昇して、金属板を所定位置で停止させる材料ストッパ等が、油圧ポンプを動力源として作動するようになっていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−219225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようなベンディングロールでは、通常、下ロール以外の作動部材の動力源となる油圧ポンプを駆動する電動機が常時定格回転で運転されており、油圧ポンプを動力源とする作動部材を作動させないときは、前記油圧ポンプから送り出される作動油をアンロード回路によってタンクに放出し、油圧駆動部材へは作動油を供給しないようにしている。このため、油圧ポンプを駆動する電動機の消費電力が大きいこと、およびその電動機や油圧ポンプの騒音が問題となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、ベンディングロールの油圧ポンプを駆動する電動機の消費電力および騒音を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、上ロールと、前記上ロールの下方の前後両側に配された一対の下ロールとを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形するベンディングロールにおいて、前記各下ロール以外の作動部材の少なくとも一つは、電動機によって駆動される油圧ポンプを動力源とし、その油圧ポンプから作動油を供給される油圧駆動部材の運動によって作動するものであり、前記油圧ポンプを動力源とする作動部材を作動させないときは、前記油圧ポンプから油圧駆動部材へ作動油を供給しない状態で、その作動部材を作動させるときの回転数よりも低い回転数で前記電動機を駆動するか、あるいは前記電動機を停止させる構成を採用した。
【0009】
すなわち、油圧ポンプを動力源とする作動部材を作動させないときは、その油圧ポンプを駆動する電動機の回転数を、その作動部材を作動させるときよりも低くするか、あるいは電動機を停止させることにより、その電動機を常時定格回転で運転する場合よりも消費電力および騒音が小さくなるようにしたのである。
【0010】
ここで、前記各下ロール以外の作動部材は、金属板の成形の際に昇降、回転または前後移動する前記上ロールと、前記上ロールの一端部を回転自在に支持し、成形後の金属板を取り出すときに転倒する転倒フレームと、金属板の成形前に前記上ロールと各下ロールの間に通された金属板の進行を遮る位置に上昇して、金属板を所定位置で停止させる材料ストッパのうち、少なくとも一つを含むものとする。
【0011】
また、前記油圧ポンプを駆動する電動機は、インバータ制御されるものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のベンディングロールは、上述したように、油圧ポンプを動力源とする作動部材を作動させないときは、その油圧ポンプを駆動する電動機の回転数を、その作動部材を作動させるときよりも低くするか、あるいはその電動機を停止させるようにしたものであるから、その電動機を常時定格回転で運転する場合よりも消費電力および騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のベンディングロールの正面図
図2図1の右側面図
図3図1の左側面図
図4図1のベンディングロールによる金属板成形作業の説明図
図5図1のベンディングロールの材料ストッパの概略説明図
図6図1のベンディングロールの油圧ポンプを駆動する電動機の電力挙動を示すグラフ
図7】従来のベンディングロールの油圧ポンプを駆動する電動機の電力挙動を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このベンディングロールは、図1乃至図3に示すように、上ロール1と、上ロール1の下方の前後両側に上ロール1と平行に配された一対の下ロール2と、各下ロール2の軸方向中央部を下方の前後両側から支持する二対のバックアップロール3と、上ロール1の両端部を支持する左右の上部フレーム4、5と、各下ロール2の両端部を支持する下部フレーム6とを備えている。そして、図4に示すように、その上ロール1を成形条件に応じた前後方向位置に移動させ、上ロール1と各下ロール2の間で金属板Aを挾持し、各下ロール2の撓みをバックアップロール3で補正した状態で、各下ロール2を回転駆動することにより、金属板Aを往復移動させながら曲げ成形するようになっている。
【0015】
前記各上部フレーム4、5は略門型に形成されており、それぞれの脚部が下部フレーム6の上面に設けられた軸受部6aと下部フレーム6の前後面に固定された支持板7との間に配され、その軸受部6aおよび前後の支持板7とともに前後方向に延びる支軸8を通されている。その支軸8は下部フレーム6の軸受部6aおよび支持板7に固定されており、各上部フレーム4、5の脚部は支軸8に対して摺動可能となっている。
【0016】
これにより、図1における左側の上部フレーム4は、前後移動可能で、かつ、成形後の金属板Aを取り出すときに、上ロール1の一端部から離れて左側へ回動する(転倒する)転倒フレームとなっている。一方、図1における右側の上部フレーム5は、上ロール1の他端部が軸方向外側へ延長されているので、上ロール1の他端部から離れて回動することはできず、前後移動のみが可能となっている。
【0017】
また、各上部フレーム4、5の上端部には油圧シリンダ9がロッド9aを下方に向けた姿勢で取り付けられ、そのロッド9aの下端が上ロール1の端部を回転自在に支持する軸受10に接続されており、両油圧シリンダ9の作動によって上ロール1が昇降するようになっている。なお、上ロール1の上昇は、上ロール1の他端部の延長部分1aを跨ぐ状態で下部フレーム6に固定された門型のストッパ11によって規制されている。
【0018】
前記下部フレーム6は、その一端面の下部に、2段式の油圧シリンダ12の閉塞側端部が回動可能に取り付けられている。そして、その油圧シリンダ12の2段目のロッド12aの先端が転倒フレーム4に回動可能に接続され、油圧シリンダ12が回動しながら伸縮することにより、転倒フレーム4の転倒・復元動作が行われるようになっている。
【0019】
また、下部フレーム6の他端部の上面には、直方体状のモータケース13が設けられている。そのモータケース13内では、第1電動機の主軸14がベルト15を介してプーリ16に連結され、プーリ16に減速機(図示省略)を介して連結されたギヤ17が、各下ロール2の他端部外周に嵌合固定されたギヤ18と噛み合っており、各下ロール2が前記第1電動機によって回転駆動されるようになっている。
【0020】
そして、モータケース13の上面には直方体状のポンプケース19が設けられており、ポンプケース19内に収容された油圧ポンプ(図示省略)を駆動する第2電動機20がポンプケース19の上面に設置されている。その第2電動機20はインバータ制御されるものが用いられている。そして、前記油圧ポンプは、上ロール1の他端部の延長部分1aに連結された油圧モータ21に接続されて、上ロール1を回転駆動するための動力源となっている。
【0021】
また、下部フレーム6には、中央部の前面に、各バックアップロール3の両端部を支持するスタンド22を昇降させる機構の一部である油圧モータ23が固定されている。そして、そのバックアップロール3の昇降用の油圧モータ23よりも右側の上面に、各上部フレーム4、5を上ロール1と一体に前後移動させる機構の一部である油圧モータ24が固定されている。
【0022】
また、図5に概略を示すように、後面側の下ロール2の後方には、金属板Aの成形前に上ロール1と各下ロール2の間に通された金属板Aの進行を遮る位置に上昇して、金属板Aを所定位置で停止させる材料ストッパ25が設けられている。この材料ストッパ25は図示省略した油圧シリンダの作動によって昇降するようになっている。
【0023】
そして、前記第2電動機20によって駆動される油圧ポンプは、前述のように上ロール1回転駆動用の油圧モータ21に接続されているほか、上ロール1昇降用の油圧シリンダ9、転倒フレーム4転倒・復元用の油圧シリンダ12、バックアップロール3昇降用の油圧モータ23、上ロール1(各上部フレーム4、5)前後移動用の油圧モータ24および材料ストッパ25昇降用の油圧シリンダに接続されて、下ロール2以外の作動部材、すなわち上ロール1、転倒フレーム4、バックアップロール3および材料ストッパ25の動力源となっている。
【0024】
なお、前記モータケース13の前面側には、下ロール2を含む各作動部材を制御する制御盤26が取り付けられ、右側の上部フレーム5の上面にはデジタル表示盤27が取り付けられている。
【0025】
このベンディングロールは上記の構成であり、その成形作業は次のとおりである。すなわち、まず、図5に示したように、上ロール1と材料ストッパ25を上昇させた状態で上ロール1と各下ロール2の間に金属板Aを通し、材料ストッパ25で金属板Aを所定位置で停止させる。次に、上ロール1と材料ストッパ25を下降させて、上ロール1と各下ロール2の間で金属板Aを挾持し、各下ロール2を回転駆動することにより、金属板Aを往復移動させながら曲げ成形する。その曲げ成形の際には、成形条件に応じて、上ロール1の高さや前後方向位置、各バックアップロール3の高さを調整し、場合によっては上ロール1を回転駆動する。そして、成形が完了すると、各下ロール2(および上ロール1)の回転を停止させ、転倒フレーム4を転倒させて金属板Aを取り出す。その後、次の成形作業に備えて転倒フレーム4を起こして復元させておく。
【0026】
ここで、下ロール2の回転駆動は前記第1電動機によって行われるが、それ以外の作動部材(上ロール1、転倒フレーム4、バックアップロール3および材料ストッパ25)は第2電動機20によって駆動される油圧ポンプを動力源とし、その油圧ポンプから作動油を供給される各油圧駆動部材(油圧シリンダおよび油圧モータ)の運動によって作動するようになっている。
【0027】
そして、この実施形態では、第2電動機20を常時運転しているが、前記油圧ポンプを動力源とする各作動部材をいずれも作動させないときは、油圧ポンプから各油圧駆動部材へ作動油を供給しない状態で、一つ以上の作動部材を作動させるときよりも、第2電動機20の回転数を低くしている。これにより、従来のように油圧ポンプを駆動する電動機を常時定格回転で運転する場合に比べて、消費電力を低減することができる。また、従来よりも金属板成形作業中の電動機や油圧ポンプの騒音が小さくなり、環境にやさしい装置となっている。
【0028】
上記の実施形態の消費電力低減効果を確認するために、以下に述べる実験を行った。実験は、実施形態と従来のベンディングロールで同じ金属板成形作業を行い、その作業中に油圧ポンプを駆動する第2電動機の電力量を測定して、その測定結果を比較した。図6および図7は、それぞれ実施形態と従来のベンディングロールの電力挙動の一例を示す。なお、図6および図7の例では、上ロールの昇降と前後移動、下ロールの回転、転倒フレームの転倒と復元を行っており、上ロールは回転駆動しておらず、材料ストッパの昇降およびバックアップロールの昇降は測定範囲に含まれていない。
【0029】
図6図7の比較からわかるように、下ロール以外の作動部材を作動させていないときの実施形態の皮相電力は、従来よりもかなり低くなっている。そして、図示は省略するが、この例では、実施形態の積算電力が従来の1/2程度となっており、本発明により消費電力が大幅に低減されることが確認された。
【0030】
なお、下ロール以外の作動部材を作動させていないときの実施形態の第2電動機の回転数は任意に設定することができ、その回転数を小さくするほど実施形態の省電力効果は大きくなる。
【0031】
また、上述した実施形態では、下ロール以外の作動部材をいずれも作動させないときに第2電動機の回転数を低くしたが、第2電動機を停止させることもできる。その場合は、油圧ポンプの圧力をセンサで監視し、圧力が所定値以下に低下したことを感知したときにのみ第2電動機を駆動する制御を行うようにする。
【0032】
また、本発明は、実施形態のようなバックアップロールや材料ストッパをもたないベンディングロールにも、もちろん適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 上ロール
2 下ロール
3 バックアップロール
4 上部フレーム(転倒フレーム)
5 上部フレーム
6 下部フレーム
9、12 油圧シリンダ(油圧駆動部材)
20 第2電動機
21、23、24 油圧モータ(油圧駆動部材)
25 材料ストッパ
A 金属板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7