特許第6561103号(P6561103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

特許6561103光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物及びその硬化物を用いた光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561103
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物及びその硬化物を用いた光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/48 20060101AFI20190805BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20190805BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20190805BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190805BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C08F2/48
   C08F220/20
   C08F220/30
   C08F2/44 B
   G02B1/04
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-209191(P2017-209191)
(22)【出願日】2017年10月30日
(62)【分割の表示】特願2014-559637(P2014-559637)の分割
【原出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2018-53255(P2018-53255A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2017年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-17168(P2013-17168)
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-224192(P2013-224192)
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 優
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳一郎
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−063698(JP,A)
【文献】 特開2009−037204(JP,A)
【文献】 特開2007−025623(JP,A)
【文献】 特開2014−114402(JP,A)
【文献】 特開2012−116923(JP,A)
【文献】 特開平10−241206(JP,A)
【文献】 特開平05−255462(JP,A)
【文献】 特開2009−007568(JP,A)
【文献】 特開2008−286845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60,6/00−246/00
G02B 1/00−1/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのホモポリマーのガラス転移温度が200℃を超えるラジカル重合反応性基(x1)を2個以上有するモノマー(A)、そのホモポリマーのガラス転移温度が−15℃未満であるラジカル重合反応性基(x2)を2個以上有するモノマー(C)、および光重合開始剤(E)を必須成分として含有し、前記モノマー(C)が下記一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレート及び下記一般式(4)で示される2官能(メタ)アクリレートを含有し、モノマー(A)およびモノマー(C)の合計重量に基づいて、(A)を3〜40重量%および(C)を60〜97重量%含有し、1価の脂環式アルコールの(メタ)アクリレートを含有しないことを特徴とする光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
[一般式(1)中、Xは水酸基、メチル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、一般式(2)で示される基、または一般式(3)で示される基を表す。R〜RおよびRは水素原子またはメチル基であり同じでも異なっていてもよい。Y〜Yは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり同じでも異なっていてもよい。a、b、c、dおよびeはそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。ただしa+b+c+d+eは6〜40である。]
【化4】
(一般式(4)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、m及びnは、それぞれ独立して3〜10の整数を表す。)
【請求項2】
モノマー(A)が、ラジカル重合反応性基(x1)を4個以上有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラジカル重合反応性基(x1)〜(x2)が、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基及びアリルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
モノマー(A)が、ラジカル重合反応性基(x1)を4〜6個有し、オキシアルキレン基を0〜5個有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
さらにスリップ剤(D)を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
スリップ剤(D)が、シリコン系スリップ剤(D1)および/またはフッ素系スリップ剤(D2)である請求項に記載の組成物。
【請求項7】
スリップ剤(D)が、分子内に2〜100個のオキシアルキレン基を有する請求項又はに記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物が活性エネルギー線により硬化されてなる硬化物。
【請求項9】
動摩擦係数が0.05〜0.5である請求項に記載の硬化物。
【請求項10】
損失弾性率E”が5×10Pa以下である請求項またはに記載の硬化物。
【請求項11】
請求項10のいずれか1項に記載の硬化物を用いた光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物、およびその硬化物と硬化物から得られる光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より液晶ディスプレイに使用されるプリズムシートや拡散シート、プロジェクションTVに使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズといった光学レンズは、熱可塑性樹脂の射出成形、あるいは熱プレス成形により製造されるのが一般的であった。
これらの製造方法では、製造時の加熱および冷却に長時間を必要とするため生産性が低く、また、光学レンズの熱収縮により、微細構造の再現性が悪いという問題点があった。
これらの問題点を解決するため、金型内面に透明樹脂基材がセットされた型内に活性エネルギー線硬化性組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が実施されている。
【0003】
近年、ディスプレイの高輝度化に伴い、光学レンズの輝度を向上させるという試みがなされており、この目的のため例えば芳香環の含有量を高くした高屈折率のレンズを成型する技術(特許文献1)が検討されている。
しかし、特許文献1の芳香環の含有量を高くした高屈折率タイプの活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物は剛直となるため、硬化成型後の光学レンズの微細な形状が変形したり、壊れたりして傷となり、時間が経ってもその傷が元の状態に回復しない。その結果として、透過率や輝度などの光学特性が低下するという問題があった。
また、硬く、微細な凹凸形状を有する光学レンズが他の部材と接触すると、他の部材を傷つけてしまうという問題があった。
【0004】
硬化物が硬く、微細な凹凸形状であるため構造が壊れてしまう、また他の部材を傷つけてしまうという問題点を解決する手法として、光学レンズの形状そのものを工夫して、光学レンズの微細な形状を壊れにくくする方法(例えば特許文献2)が提案されている。
また、傷が回復し易いようにするためにレンズ形状の変形量を少なくする方法があり、例えば、シリコーンオイルなどのスリップ剤を添加してレンズ表面の摩擦係数を下げる方法(例えば特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−094987号公報
【特許文献2】特開2006−309248号公報
【特許文献3】特開平07−070219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の方法では微細な凹凸形状のレンズについた傷の回復のし易さ(傷の回復性)が不十分であるという問題がある。
また、特許文献3の方法では、傷の回復性は向上するものの、スリップ剤がブリードアウトし、密着性および光学レンズの透明性を低下させるという問題がある。
そこで、本発明の課題は、傷の回復性、プラスチック基材との密着性、硬化時の透明性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、そのホモポリマーのガラス転移温度が200℃を超えるラジカル重合反応性基(x1)を2個以上有するモノマー(A)、そのホモポリマーのガラス転移温度が−15℃未満であるラジカル重合反応性基(x2)を2個以上有するモノマー(C)、および光重合開始剤(E)を必須成分として含有することを特徴とする光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物;上記の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物が活性エネルギー線により硬化されてなる硬化物;並びに上記の硬化物を用いた光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルム;である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物は傷の回復性に優れる。さらに、プラスチック基材との密着性、硬化時の透明性に優れた硬化物を与える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートまたはメタクリレート」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基またはメタクリロイル基」を意味する。
また、n(2以上の整数)官能以上とは、ラジカル重合反応性基(x)の数がn個以上であることを意味し、以下同様の記載法を用いる。
【0010】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物は、重合性モノマーとして、そのホモポリマーのガラス転移温度が200℃を超えるラジカル重合反応性基(x1)を2個以上有するモノマー(A)、そのホモポリマーのガラス転移温度が−15℃未満であるラジカル重合反応性基(x2)を2個以上有するモノマー(C)を併用することで、またスリップ剤(D)を添加する場合においても、プラスチック基材との密着性や硬化時の透明性に優れた硬化物が得られる。
【0011】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物における第1の必須成分であるラジカル重合反応性基(x1)を2個以上有するモノマー(A)は、透明性確保の観点から、そのホモポリマーのガラス転移温度が200℃を超えるものである。(A)として好ましくは、201℃以上のガラス転移温度を有するかガラス転移温度が観測されないものであり、さらに好ましくは、230℃以上のガラス転移温度を有するかガラス転移温度が観測されないものである。
【0012】
ここで、そのホモポリマーのガラス転移温度とは、そのモノマーを単独重合させた硬化物の動的粘弾性を、下記の方法で測定した際の、損失正接(tanδ)が最大値を示す温度のことである。
【0013】
<テストピースの作成>
開始剤として、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、BASF社製]を、モノマーに対して3重量%添加した後、紫外線照射装置により、紫外線を1000mJ/cm照射して、硬化させ、縦幅40mm、横幅5mm、厚み1mmのテストピースを作成する。
【0014】
<動的粘弾性測定方法>
このテストピースを用いて、動的粘弾性測定装置(例えば、Rheogel−E4000、UBM社製)により、周波数:10Hz、昇温速度:4℃/分の条件で測定する。
【0015】
ラジカル重合反応性基(x1)を2個以上有するモノマー(A)は、そのホモポリマーのガラス転移温度が上記の範囲であればとくにその化学構造は限定されないが、分子内のラジカル重合反応性基(x1)基の数が2〜6個、好ましくは4〜6個であり、分子内のオキシアルキレン基の数が0〜5個であるモノマー(A1)が好ましい。
ラジカル重合反応性基(x1)としては、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基及びアリルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましく、より好ましくはアクリレート基、メタクリレート基であり、さらに好ましくはアクリレート基である。
【0016】
上記オキシアルキレン基としては、炭素数が2〜4のものが好ましく、炭素数2〜3のものがさらに好ましい。
具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等が挙げられる。
以下に記載のオキシアルキレン基についても同様である。
【0017】
ラジカル重合反応性基(x1)を2個有するモノマー(A11)としては具体的にはビスフェノキシフルオレンジアクリレートが挙げられる。
【0018】
ラジカル重合反応性基(x1)を3個有するモノマー(A12)としては、具体的にはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル等が挙げられる。このうち好ましいのはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0019】
ラジカル重合反応性基(x1)を4個有するモノマー(A13)としては具体的にはペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド(以下EOと記載)2モル付加物、ペンタエリスリトールのEO4モル付加物、ジトリメチロールプロパンのEO4モル付加物、およびジペンタエリスリトールのEO4モル付加物の各テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等が挙げられる。このうち好ましいのは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールのEO2モル付加物のテトラ(メタ)アクリレートである。
【0020】
ラジカル重合反応性基(x1)を5個有するモノマー(A14)としては具体的にはジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのEO2モル付加物、およびジペンタエリスリトールのEO4モル付加物の各ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル等が挙げられる。このうち好ましいのは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールのEO2モル付加物のペンタ(メタ)アクリレートである。
【0021】
ラジカル重合反応性基(x1)を6個有するモノマー(A15)としては具体的にはジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのEO2モル付加物、およびジペンタエリスリトールのEO4モル付加物の各ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等が挙げられる。このうち好ましいのは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールのEO2モル付加物のヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0022】
これら(A1)の中でもさらに好ましくは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートである。
【0023】
傷回復性および透明性の観点から、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における、このラジカル重合反応性基(x1)を2個以上有するモノマー(A)の含有量は、(A)およびそのホモポリマーのガラス転移温度が−15℃未満であるラジカル重合反応性基(x2)を2個以上有するモノマー(C)の合計重量に基づいて、好ましくは3〜50重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。
【0024】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物における第2の必須成分であるラジカル重合反応性基(x2)を2個以上有するモノマー(C)は、傷回復性の観点からそのホモポリマーのガラス転移温度が−15℃未満である。好ましくは−50〜−20℃である。
【0025】
このラジカル重合反応性基(x2)を2個以上有するモノマー(C)は、そのホモポリマーのガラス転移温度が上記の範囲であればとくにその化学構造は限定されないが、分子内のラジカル重合反応性基(x2)の数が2〜6個であり、分子内に6〜40個のオキシアルキレン基を有するモノマー(C1)が好ましい。
ラジカル重合反応性基(x2)としては、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基及びアリルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましく、より好ましくはアクリレート基、メタクリレート基であり、さらに好ましくはアクリレート基である。
【0026】
(x2)がビニルオキシ基であるモノマーの例としては、ポリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
分子内のラジカル重合反応性基(x2)の数が2〜6個であり、分子内に6〜40個のオキシアルキレン基を有するモノマー(C1)としては以下の(x2)を2個有するモノマー(C11)、(x2)を3個有するモノマー(C12)、(x2)を4個有するモノマー(C13)、(x2)を5個有するモノマー(C14)および(x2)を6個有するモノマー(C15)が挙げられる。
【0028】
(C11)としては、具体的には以下の(C111)および(C112)が挙げられる。
【0029】
ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート(C111)
ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
2価フェノール化合物のアルキレンオキサイド(6〜40モル)付加物のジ(メタ)アクリレート(C112)
2価フェノール化合物[単環フェノール(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等)、縮合多環フェノール(ジヒドロキシナフタレン等)、ビスフェノール化合物(ビスフェノールA、−Fおよび−S等)]のアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、例えば、カテコールのEO8モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシナフタレンのプロピレンオキサイド(以下POと記載)10モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO10モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO20モル付加物のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
(C12)としては、具体的にはトリメチロールプロパンのEO6モル付加物、トリメチロールプロパンのEO9モル付加物、トリメチロールプロパンのEO15モル付加物、トリメチロールプロパンのEO20モル付加物、トリメチロールプロパンのPO9モル付加物、グリセリンのEO6モルおよびPO3モル付加物、ペンタエリスリトールのEO6モル付加物の各トリ(メタ)アクリレート、各トリビニルエーテル等が挙げられる。
【0032】
(C13)としては、具体的にはペンタエリスリトールのEO10モル付加物、ペンタエリスリトールのEO20モル付加物、ペンタエリスリトールのEO35モル付加物、ジトリメチロールプロパンのEO10モル付加物、ジペンタエリスリトールのEO10モル付加物の各テトラ(メタ)アクリレート、各テトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0033】
(C14)としては、具体的にはジペンタエリスリトールのEO10モル付加物、ジペンタエリスリトールのEO15モル付加物の各ペンタ(メタ)アクリレート、各ペンタビニルエーテル等が挙げられる。
【0034】
(C15)としては、具体的にはジペンタエリスリトールのEO10モル付加物、ジペンタエリスリトールのEO15モル付加物の各ヘキサ(メタ)アクリレート、各ヘキサビニルエーテル等が挙げられる。
【0035】
また、モノマー(C)が下記一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレートであることも望ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
[一般式(1)中、Xは水酸基、メチル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、一般式(2)で示される基、または一般式(3)で示される基を表す。R〜RおよびRは水素原子またはメチル基であり同じでも異なっていてもよい。Y〜Yは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり同じでも異なっていてもよい。a、b、c、dおよびeはそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。ただしa+b+c+d+eは6〜40である。]
なお、上記一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレートには、モノマー(C1)として例示したモノマーのうち、一般式(1)を満たすものが含まれる。
【0036】
また、モノマー(C)が下記一般式(4)で示される2官能(メタ)アクリレートであることも望ましい。
【化4】
(一般式(4)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、m及びnは、それぞれ独立して3〜10の整数を表す。)
なお、上記一般式(4)で示される2官能(メタ)アクリレートには、モノマー(C1)として例示したモノマーのうち、一般式(4)を満たすものが含まれる。
【0037】
傷回復性および透明性の観点から、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における、このモノマー(C)の含有量は、モノマー(A)および(C)の合計重量に基づいて、好ましくは50〜97重量%、さらに好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは30〜80重量%である。
【0038】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物における第3の必須成分である光重合開始剤(E)としては、フォスフィンオキサイド系化合物(E1)、ベンゾイルホルメート系化合物(E2)、チオキサントン系化合物(E3)、オキシムエステル系化合物(E4)、ヒドロキシベンゾイル系化合物(E5)、ベンゾフェノン系化合物(E6)、ケタール系化合物(E7)、1,3αアミノアルキルフェノン系化合物(E8)などが挙げられる。
【0039】
フォスフィンオキサイド系化合物(E1)としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0040】
ベンゾイルホルメート系化合物(E2)としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
【0041】
チオキサントン系化合物(E3)としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0042】
オキシムエステル系化合物(E4)としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0043】
ヒドロキシベンゾイル系化合物(E5)としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0044】
ベンゾフェノン系化合物(E6)としては、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0045】
ケタール系化合物(E7)としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0046】
1,3αアミノアルキルフェノン系化合物(E8)としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
【0047】
近年、透明性の観点から透明プラスチック基材としてトリアセチルセルロースを使用することが多くなっている。
トリアセチルセルロース基材は可とう性、耐黄変性の観点から、一般に、可塑剤および紫外線吸収剤が使用されている。この紫外線吸収剤を含むため、上述したような成型プロセスにおいて400nm以下の紫外線で活性エネルギー線硬化樹脂を硬化することは困難である。
そこで最近、400nm以上の可視光線領域に輝線を有するランプ、例えばフュージョンUVシステムズ(株)製のVバルブを用いて成型するプロセスがとられている。
【0048】
光重合開始剤(E)のうち、400nm以上に吸収波長を有するものが好ましく、400〜450nmに吸収波長を有するものがさらに好ましい。
これらの光重合開始剤(E)のうち、400nm以上の可視光線領域での硬化性および硬化物の着色防止の観点から好ましいのは、フォスフィンオキサイド系化合物(E1)であり、さらに好ましくは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドである。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における光重合開始剤(E)の含有量は、(A)および(C)の合計重量に基づいて、好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは0.8〜9重量%、特に好ましくは1〜8重量%である。
0.5重量%以上であると、光硬化反応性が良好であり、10重量%以下であると、活性エネルギー線照射により硬化させた硬化物のガラス転移温度が低下せず、好ましい。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらにそのホモポリマーのガラス転移温度が−15℃以上100℃以下であるラジカル重合反応性基(x3)を2個以上有するモノマー(B)を含有していてもよい。
【0051】
ラジカル重合反応性基(x3)を2個以上有するモノマー(B)は傷回復性および透明性の観点からそのホモポリマーのガラス転移点温度が−15〜100℃である。好ましくは−12〜70℃、さらに好ましくは−10〜30℃である。
ラジカル重合反応性基(x3)としては、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基及びアリルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましく、より好ましくはアクリレート基、メタクリレート基であり、さらに好ましくはアクリレート基である。
【0052】
このラジカル重合反応性基(x3)を2個以上有するモノマー(B)は、そのホモポリマーのガラス転移温度が上記の範囲であればとくにその化学構造は限定されないが、分子内のラジカル重合反応性基(x3)の数が2〜6個であり、一般式(5)で表される有機基(b)を分子内に1〜15個有するモノマー(B1)が好ましい。
【0053】
【化5】
【0054】
[一般式(5)中のpは4または5を表す。]
【0055】
分子内のモノマー(B1)としては、以下の(x3)を4個有するモノマー(B11)、(x3)を5個有するモノマー(B12)および(x3)を6個有するモノマー(B13)が挙げられる。
【0056】
モノマー(B1)は、一般式(5)で表される有機基(b)のうち、pが5の場合は、2〜6価の多価アルコールにε−カプロラクトンを、pが4の場合は2〜6価の多価アルコールにδ−バレロラクトンを付加反応させ、さらにアクリル酸またはメタクリル酸により(メタ)アクリロイル化(エステル化)、またはアルカリ金属アルコラート触媒の存在下アセチレンへの付加させることにより生成する。
【0057】
モノマー(B11)としては、4価のアルコールにε−カプロラクトンまたはδ−バレロラクトンが1〜15モル開環付加し、さらに(メタ)アクリル酸によりエステル化、またはアルカリ金属アルコラート触媒の存在下アセチレンへの付加された化合物が挙げられ、具体的にはペンタエリスリトールのδ−バレロラクトン4モル付加物のテトラ(メタ)アクリレート、テトラビニルエーテルが挙げられる。
【0058】
モノマー(B12)としては、5価のアルコールにε−カプロラクトンまたはδ−バレロラクトンが1〜15モル開環付加し、さらに(メタ)アクリル酸によりエステル化、またはアルカリ金属アルコラート触媒の存在下アセチレンへの付加された化合物が挙げられ、具体的にはジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン6モル付加物のペンタ(メタ)アクリレート、ペンタビニルエーテルが挙げられる。
【0059】
モノマー(B13)としては、6価のアルコールにε−カプロラクトンまたはδ−バレロラクトンが1〜15モル開環付加し、さらに(メタ)アクリル酸によりエステル化、またはアルカリ金属アルコラート触媒の存在下アセチレンへの付加された化合物が挙げられ、具体的にはジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン6モル付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン12モル付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサビニルエーテルが挙げられる。
【0060】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物が(B)を含有する場合は、該組成物における、このモノマー(B)の含有量は、傷回復性および密着性の観点から、モノマー(A)、(B)、および(C)の合計重量に基づいて、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは8〜30重量%、特に好ましくは10〜25重量%である。
【0061】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線照射により硬化し、その硬化物のガラス転移温度は−50〜80℃が好ましく、さらに好ましくは−40〜75℃であり、より好ましくは−40〜70℃、特に好ましくは−40〜60℃である。−50℃以上であると透明性がより良好であり、80℃以下であると傷回復性がより向上する。
【0062】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物は、さらにスリップ剤(D)を含有することが好ましい。スリップ剤としてはシリコン系スリップ剤(D1)とフッ素系スリップ剤(D2)が挙げられる。また(D)はラジカル重合反応性基を含有していてもよい。
【0063】
スリップ剤(D)としては、本発明で用いるモノマー(A)およびモノマー(C)と相溶することが好ましい。この相溶性の指標として、溶解度パラメーター(SP)で表すことができ、スリップ剤(D)の溶解度パラメーターは、好ましくは8.0〜9.0であり、さらに好ましくは8.1〜8.8である。
【0064】
なお、ここで溶解度パラメータ(SP)の値は次式で求められるものである。
SP=(ΔH/V)1/2
【0065】
但し、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal/モル)、Vはモル体積(cm/モル)を表す。また、ΔHおよびVは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,February,1974,Vol.14,No.2,Robert F. Fedors.(147〜154頁)」に記載の原子団のモル蒸発熱(△ei)の合計(ΔH)と、モル体積(△vi)の合計(V)を用いることができる。
【0066】
スリップ剤(D)は、分子内に2〜100個のオキシアルキレン基を有するものが好ましい。
オキシアルキレン基を2個以上含有するスリップ剤(D)は、活性エネルギー線硬化性組成物を構成する他の原料との相溶性が良好であり、オキシアルキレン基が100個以下のスリップ剤(D)は、硬化物の動摩擦係数が小さくなり好ましい。
【0067】
シリコン系スリップ剤(D1)としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジアルキルシロキサンが挙げられ、末端がアルキレンオキサイドで変性されたポリジアルキルシロキサン(D11)、側鎖がアルキレンオキサイドで変性されたポリジアルキルシロキサン(D12)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。なお、(D11)および(D12)は、さらにラジカル重合反応性基を含有されたものであってもよい。
【0068】
(D11)としては、末端がEOで変性されたポリジメチルシロキサン、末端がEOおよびPOで変性されたポリジメチルシロキサン、末端がEOで変性されたポリジエチルシロキサン、およびこれらの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
(D12)としては、側鎖がPOで変性されたポリジメチルシロキサン、側鎖がEOおよびブチレンオキサイドで変性されたポリジメチルシロキサン、側鎖がEOおよびPOで変性されたポリジメチルシロキサン、およびこれらの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
これらのポリエーテル変性ポリジアルキルシロキサンのうち、傷回復性の観点から好ましいのは(D12)であり、さらに好ましくは側鎖がEOおよびPOで変性されたポリジメチルシロキサンである。
【0071】
フッ素系スリップ剤(D2)としては、例えば、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物等が挙げられ、末端がアルキレンオキサイドで変性されたパーフルオロ化合物(D21)、側鎖がアルキレンオキサイドで変性されたパーフルオロ化合物(D22)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。なお、(D21)および(D22)は、さらにラジカル重合反応性基を含有されたものであってもよく、例えば、フルオロ基含有アクリロイル変性オリゴマー等であってもよい。
【0072】
スリップ剤(D)の数平均分子量(Mn)の好ましい範囲は300〜50,000である。
【0073】
スリップ剤(D)のMnが300以上であると、プラスチック基材との密着性が良好である。また、50,000以下であると、樹脂との相溶性が良好であり好ましい。
【0074】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物におけるスリップ剤(D)の含有量は、(A)および(C)の合計重量に基づいて、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは0.8〜5重量%である。含有量が0.5重量%以上であると、硬化物の傷回復性がより良好であり、硬化物本来の性能を発揮することができる。また10重量%以下であると、プラスチックフィルムへの密着性がより良好である。
【0075】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物は、モノ(メタ)アクリレート(F)を含有してもよい。
モノ(メタ)アクリレート(F)としては、以下の(F1)〜(F4)が挙げられる。
【0076】
1価アルコール(脂肪族、脂環式および芳香脂肪族)の(メタ)アクリレート(F1)
ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、o−、m−、またはp−フェニルフェノールのモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモノ(メタ)アクリレート、2.5モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのモノ(メタ)アクリレートなど
【0077】
1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート(F2)
上記(F1)における1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、例えばラウリルアルコールのEO2モル付加物の(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレートなど
【0078】
アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート(F3)
フェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、フェノールのEO2モル付加物の(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、o−、m−、またはp−フェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのアルキレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレート、2.5モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレート、3モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレートなど
【0079】
アクリルアミドおよびアクリロイルモルホリン(F4)
ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびアクリロイルモルホリンなど
【0080】
また、本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物は、帯電防止剤(G)を含有してもよい。
帯電防止剤(G)としては、以下の(G1)〜(G3)が挙げられる。
【0081】
環状構造を有さない3級アミン塩化合物(G1)
トリエチルアミンとドデシルベンゼンスルホン酸の塩、ジメチルステアリルアミンとパラトルエンスルホン酸の塩、ジメチルアミノエチルアクリレートとドデシルベンゼンスルホン酸の塩など
【0082】
環状アミジン塩化合物(G2)
ドデシルベンゼンスルホン酸と1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸と1−メチル−3−エチルイミダゾールの塩、安息香酸と1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5の塩など
【0083】
有機リチウム塩化合物(G3)
パラトルエンスルホン酸のリチウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のリチウム塩、トリフルオロメタンスルホニルイミドのリチウム塩、高分子型リチウム塩など
【0084】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤を含有させてもよい。
添加剤には、可塑剤、有機溶剤、分散剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤および紫外線吸収剤が挙げられる。
【0085】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに塗工時の粘度調整のために種々の溶剤を含有させてもよい。
溶剤にはメチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、トルエン、メタノール等が挙げられる。
【0086】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物を用いた成形体の製造方法は、特に限定されないが、例えば次の方法で塗工、成形することができる。すなわち、本発明の組成物を予め20〜50℃に温調し、成形体形状(例えば光学レンズ形状)が得られる金型(型温は通常20〜50℃、好ましくは25〜40℃)にディスペンサー等を用いて、硬化後の厚みが50〜150μmとなるように塗工(または充填)し、塗膜上から透明基材(透明フィルムを含む)を空気が入らないように加圧積層し、さらに該透明基材上から後述の活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させた後に、型から離型し成形体(レンズシート)を得る。
【0087】
上記透明基材(透明フィルムを含む)としては、メチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリトリアセチルセルロース、ポリシクロオレフィン等の樹脂からなるものが挙げられる。
【0088】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化の観点から好ましいのは紫外線と電子線である。
【0089】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線により硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置[例えば、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]を使用できる。使用するランプとしては、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。紫外線の照射量(mJ/cm)は、組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000、さらに好ましくは100〜5,000である。
【0090】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物の動摩擦係数は、傷回復性の観点から、好ましくは0.05〜0.5であり、さらに好ましくは0.07〜0.4、特に好ましくは0.08〜0.3である。
動摩擦係数の測定は後述する方法による。
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物の損失弾性率E”は、傷回復性の観点から、好ましくは5×10Pa以下であり、さらに好ましくは1×10Pa以下である。
損失弾性率E”の測定は後述する方法による。
【0091】
本発明の光学部品用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化物は、光学レンズ、光学レンズ用シートまたはフィルムとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0093】
実施例1〜19および比較例1〜3
表1に記載の各成分と配合量に従って、一括で配合し、ディスパーサーで均一になるまで混合攪拌し、実施例1〜19および比較例1〜3の活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0094】
【表1】
【0095】
モノマー(A−1)〜(A−3)、(A−5)の各ホモポリマーのTgは観測されず、各ホモポリマーは200℃以上の分解温度を有している。分解温度をTgと見なすことができるのでモノマー(A−1)〜(A−3)、(A−5)の各ホモポリマーのTgは200℃以上であるとみなした。
【0096】
なお、表1中に記載した化合物の記号は、以下の化合物を表す。
(A−1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[商品名「カヤラッドDPHA」、日本化薬(株)製]
(A−2):ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名「ネオマーEA−300」、三洋化成工業(株)製]
(A−3):トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名「SR−350」、アルケマ(株)製]
(A−4):ビスフェノキシフルオレンジアクリレート[商品名「A−BPEF」、新中村化学工業(株)製]
(A−5):トリメチロールプロパントリビニルエーテル[日本カーバイド工業(株)製]
(B−1):ジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン12モル付加物のヘキサアクリレート[商品名「カヤラッドDPCA−120」、日本化薬(株)製]
(C−1):ポリエチレングリコールジアクリレート[商品名「ライトアクリレート9EG−A」、共栄社化学(株)製]
(C−2):トリメチロールプロパンのEO15モル付加物のトリアクリレート[商品名「SR−9035」、アルケマ(株)製]
(C−3):ビスフェノールAのEO20モル付加物のジアクリレート[商品名「ニューフロンティアBPE−20」、第一工業製薬(株)製]
(C−4):ペンタエリスリトールのEO35モル付加物のテトラアクリレート[商品名「ATM−35E」、新中村化学工業(株)製]
(C−5):トリメチロールプロパンのEO9モル付加物のトリアクリレート[商品名「SR−502」、アルケマ(株)製]
(C−6):ビスフェノールAのEO10モル付加物のジアクリレート[商品名「SR−480」、アルケマ(株)製]
(C−7):ポリエチレングリコールジビニルエーテル[商品名「TDVE」、丸善石油化学(株)製]
(C’−1):ジシクロペンタジエンジアクリレート[商品名「ライトアクリレートDCP−A」、共栄社化学(株)製]
なお、それぞれのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)を表1に記載した。
【0097】
(D1−1):ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン[商品名「BYK−333」、ビックケミー・ジャパン(株)製、SP値8.7]
(D1−2):ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン[商品名「BYK−349」、ビックケミー・ジャパン(株)製、SP値8.4]
(D1−3):ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンのアクリレート[商品名「BYK−UV3500」、ビックケミー・ジャパン(株)製、SP値8.5]
(D2−1):パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物[商品名「F−444」、DIC(株)製]
(D2−2):フルオロ基含有アクリロイル変性オリゴマー[商品名「RS−75」、DIC(株)製]
(E−1):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[商品名「ルシリンTPO」、BASF社製]
(E−2):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド[商品名「イルガキュア819」、BASF社製]
(E−3):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、BASF社製]
(E−4):2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[商品名「イルガキュア127」、BASF社製]
(G−1):トリフルオロメタンスルホニルイミドのリチウム塩[商品名「サンコノールA600−50R」、三光化学(株)製]
(G−2):高分子型リチウム塩[商品名「PC−686」、丸菱油化工業(株)製]
(G−3):高分子型リチウム塩[商品名「PC−3662」、丸菱油化工業(株)製]
【0098】
<ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)>
<テストピースの作成>
開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、BASF社製]を、モノマーに対して3重量%添加した後、紫外線照射装置により、紫外線を1000mJ/cm照射して、硬化させ、縦幅40mm、横幅5mm、厚み1mmのテストピースを作成する。
<動的粘弾性測定方法>
このテストピースを用いて、動的粘弾性測定装置、Rheogel−E4000、UBM社製により、周波数:10Hz、昇温速度:4℃/分の条件で測定する。
本測定方法によるTgの測定上限値は400℃である。
【0099】
本発明および比較のための活性エネルギー線硬化性組成物の動摩擦係数、傷の回復性、密着性、硬化物の全光線透過を下記の方法で測定した。
その結果を表1に示す。
【0100】
<テストピースの作成>
活性エネルギー線硬化性組成物をガラス板の片面に厚さが100μmになるようにアプリケーターで塗工した後、厚さ100μmのポリエステルフィルムを樹脂側に貼り合わせ、ローラーを上から転がして空気を押し出した。ポリエステルフィルム側から紫外線照射装置により、紫外線を1000mJ/cm照射して、硬化させた。PETフィルムに密着した硬化物をガラス板から剥離し、テストピースを作成した。
【0101】
<動摩擦係数>
ASTM D1894の方法に従って、表面性測定機[商品名「トライボギア TYPE:14FW」新東科学(株)製]を用いて測定した。測定は下記手順で行った。
(1)硬化膜面が上になるように、上記のテストピース用の硬化膜をセロハンテープで表面性測定機の台座に固定した。
(2)付属のステンレス板を表面性測定機のさおの下部に取り付け、それを硬化膜の表面に置き、さおの上部には200gの分銅を載せた。
(3)200mm/分の速度でテストピースを貼り付けた台座を移動させ、ステンレス板に対する硬化膜の表面の動摩擦係数を測定した。
損失弾性率E”の測定
動的粘弾性測定装置、Rheogel−E4000、UBM社製により、周波数:10Hz、昇温速度:4℃/分の条件で行い、25℃での損失弾性率E”を測定した。
【0102】
<傷の回復性の評価>
(1)溝の深さが50μmでピッチ幅を20μmで平行線を刻んで微細に凹凸処理を施したステンレス製の金型を用意する。
(2)活性エネルギー線硬化性組成物をこの金型の片面に厚さが100μmになるようにアプリケーターで塗工した後、厚さ100μmのポリエステルフィルム[商品名「コスモシャインA4300」東洋紡績(株)製]を樹脂側に貼り合わせ、ローラーを上から転がして空気を押し出した。ポリエステルフィルム側から紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]により、紫外線を1000mJ/cm照射して、硬化させ、硬化膜を作成した。
(3)硬化膜の表面を、クロムキャップを装着した鉛筆でJIS K 5600−5−4に準拠して引っかき試験を行った。
(4)10分間放置後に目視で観察し、引っかき傷が完全に消失しているものを○、引っかき傷の一部が残っているものを△、引っかき傷が全て残っているものを×と判定した。
【0103】
<密着性の評価>
前記テストピースを23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後、JIS K5600−5−6に準拠し、1mm幅にカッターナイフで切込みを入れて碁盤目(10×10個)を作成し、該碁盤目上にセロハン粘着テープを貼り付け90度剥離を行い、PETフィルムからの硬化物の剥離状態を目視で観察し、評価した。
【0104】
下記の基準で判定した。
○:100個の碁盤目のうち90個以上が剥離せずに基材に残っている
△:100個の碁盤目のうち10〜89個が剥離せずに基材に残っている
×:100個の碁盤目のうち9個以下が剥離せずに基材に残っている
【0105】
<硬化物の透明性の評価>
前記テストピースを、JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」、BYK gardner(株)製]を用いて全光線透過率(%)を測定した。
【0106】
表1の結果から、本発明の光学部品活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた硬化フィルムは、傷の回復性、密着性、硬化物の透明性のすべてに優れることがわかる。
一方、2官能以上の(メタ)アクリレート(C)を含有しない比較例1および比較例3は、傷の回復性が悪い。
また、ガラス転移温度が200℃を超える2官能以上の(メタ)アクリレート(A)を含有しない比較例2は、透明性が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の光学部品活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて得られる本発明の硬化物は、傷の回復性、基材密着性、透明性に優れているため、光学部材、電気・電子部材としても有用である。また、本発明の硬化物を用いた光学部品は、光学レンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角向上レンズ等)、光学レンズ用シートまたはフィルム(光学補償フィルム、位相差フィルム)、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路として有用である。