(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561133
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】生体適合性組成物及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20190805BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20190805BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20190805BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20190805BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20190805BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20190805BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
A61K8/73
A61Q1/00
A61Q19/00
A61L27/20
A61L15/28 100
A61K47/36
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-549148(P2017-549148)
(86)(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公表番号】特表2017-537215(P2017-537215A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】KR2015006373
(87)【国際公開番号】WO2016093451
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年6月6日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0175217
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517199732
【氏名又は名称】イノ ファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イム、チェ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ピョン−チョル
【審査官】
三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−221899(JP,A)
【文献】
特開2011−026525(JP,A)
【文献】
特開2006−176765(JP,A)
【文献】
特開2005−133069(JP,A)
【文献】
特開平09−316104(JP,A)
【文献】
特開平11−071405(JP,A)
【文献】
特開平05−039303(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0196944(US,A1)
【文献】
米国特許第4582865(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第19920557(DE,A1)
【文献】
韓国登録特許第10−1003687(KR,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/315828(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−(1,3)側鎖を持つβ−(1,6)グルカンとヒアルロン酸(Hyaluronic acid)が、架橋剤によってハイブリッド架橋結合(Hybrid−Crosslinked)された生体適合性組成物であって、
前記架橋剤は、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4−Butandiol diglycidyl ether、BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(Ethylene glycol diglycidyl ether、EGDGE)、1−(2,3−エポキシプロピル)2,3−エポキシシクロヘキサン(1−(2,3−Epoxypropyl)−2,3−epoxycyclohexane)、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル(1,2−Ethandiol diglycidyl ether)及びこれらの混合からなる群から選択される、生体適合性組成物。
【請求項2】
前記β−(1,3)側鎖を持つβ−(1,6)グルカンは、30,000〜300,000Daの分子量を持つことを特徴とする、請求項1に記載の生体適合性組成物。
【請求項3】
前記β−(1,3)側鎖を持つβ−(1,6)グルカンは、マイタケ(Grifola frondosa)菌糸体から誘導されたことを特徴とする、請求項1に記載の生体適合性組成物。
【請求項4】
前記生体適合性組成物は、人体内に挿入されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の生体適合性組成物。
【請求項5】
前記生体適合性組成物は、化粧品として使われたり、皮膚及び組織充填剤、創傷被覆剤または薬物伝達体として使われることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の生体適合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性組成物及びこの製造方法に係り、より詳しくは、人体の内部に挿入、または肌に接触される医療用、化粧品などに使用可能な生体適合性組成物及びこの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体の内部に挿入される医療用道具、保形物などの素材は、血液、組織、器官などに直接接触されるものであって、必ず安定性が伴われなければならないが、このような素材を生体適合性素材と言う。現在、生体適合性素材を開発するために様々な製造方法が研究されている。特に、既存に開発された生体適合性素材の個別性質を補完するために、これらを架橋結合することで新しい素材を開発する研究に拍車をかけている。
【0003】
ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)及びその誘導体は、高い粘度を有し、生体適合性に優れて完全な生分解性を有していて、広範囲な用途で使われている。
【0004】
しかし、ヒアルロン酸及びその誘導体は、熱と生体酵素(ヒアルロニダーゼ、hyaluronidaseなど)によって容易に分解され、ヒアルロン酸固有の性質を失うことになる。生体内に挿入される保形物の場合、速い生分解性及び固有性質の喪失は、人体内への保形物挿入周期を短くするだけでなく、粘度及び弾性を減少させて保形物としての機能を低下させる要因となる。例えば、一般的なヒアルロン酸フィラーの生体内維持期間は、6月ないし1年であるが、その期間中でも本来の粘度及び弾性を容易に失って問題となっている。
【0005】
結局、ヒアルロン酸及びその誘導体は、生体適合性は確保したが、フィラーなどの再生施術周期を短くする短所などを補わなければならない。また、保形物などが生体内で分解された場合、分解された産物が人体に悪影響を与えずに、むしろ有益な効果をもたらすべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱と生体酵素に完全に分解されるが、短期間に易く分解されず、本来の粘度と弾性を維持する生体適合性組成物及びこの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するために案出されたものであって、本発明の一実施例による生体適合性組成物は、βグルカン(β−Glucan)及びヒアルロン酸(Hyaluronic acid)のハイブリッド架橋結合(hybrid−Crosslinked)物である。前記βグルカンは、植物から誘導されたβ−(1,3)−グルカン、β−(1,4)−グルカン、β−(1,6)−グルカン、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合からなってもよく、β−(1,3)側鎖を持つβ−(1,6)グルカンを使うことが好ましい。
【0008】
前記βグルカンは、30,000〜300,000Daの分子量を持つことを使うことが好ましく、マイタケ(Grifola frondosa)菌糸体から誘導されたものを使うことができる。
【0009】
本発明の一実施形態による生体適合性組成物を製造する方法は、(a)分子量が30,000〜300,000Daのβグルカンとヒアルロン酸を混合する段階、及び(b)エポキシド基(Epoxide)、エピハロヒドリン基(Epihalohydrin)及びジビルスルホン基(Divinylsulfone)のうち、少なくとも一つを含む架橋剤を添加する段階を含む。前記(a)段階のβグルカン及びヒアルロン酸は、1:9〜9:1の質量比で混合することができる。前記(b)段階の架橋剤は、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4−Butandiol diglycidyl ether、BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(Ethylene glycol diglycidyl ether、EGDGE)、1−(2,3−エポキシプロピル)2,3−エポキシシクロヘキサン(1−(2,3−Epoxypropyl)−2,3−epoxycyclohexane)、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル(1,2−Ethandiol diglycidyl ether)及びこれらの混合からなる群から選択することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による生体適合性組成物は、ヒアルロン酸及びβグルカンが架橋結合された新規素材であって、熱と生体内酵素に対する安定性が大きい理由で人体内に本来の形態及び性質を維持することができ、生体内で分解された後は、コラーゲン合成を促進する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態によるβ−(1,3)側鎖を持つβ−(1,6)グルカンの化学式。
【
図2】本発明の生体適合性組成物が生理的食塩水に膨潤された状態を撮影したイメージ。
【
図3】本発明の生体適合性組成物が注射針を通じて圧出される状態を撮影したイメージ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施できる特定の実施形態として記述されるし、当業者が本発明を十分に実施できるように詳しく説明する。本発明の多様な実施形態は互いに異なるが、相互排他的となる必要はないことを理解しなければならない。よって、後述する詳細な説明は限定的意味として行われることではなく、本発明の範囲は特許請求範囲に記載された内容及びそれと均等な全ての範囲を包括するものとして受け入れられなければならない。
【0013】
本発明の一実施形態による生体適合性組成物は、βグルカン及びヒアルロン酸がハイブリッド架橋結合(hybrid−Crosslinked)された形態を持つ。本発明の生体適合性組成物を製造するために使われる原料をまず説明する。
【0014】
<βグルカン>
本発明の生体適合性組成物の製造に使われるβグルカンは、葡萄糖(glucose)単量体がグリコシド結合(Glycosidic bond)で連結された重合体の形態を持つ。βグルカンは、自然の植物から誘導することができる。例えば、βグルカンは、きのこ類、酵母の細胞壁、穀類などから抽出して誘導されることができる。ただし、本発明の生体適合性組成物を製造するために使われるβグルカンは、自然の植物だけでなく化学的合成及び重合によっても誘導されることができる。好ましい実施形態として、他のきのこ類に比べてβグルカンの含量が高く、菌糸体の培養期間が比較的に短いマイタケ(Grifola frondosa)菌糸体の培養液からβグルカンを抽出して使うことができる。
【0015】
βグルカンの生体に対する免疫増加効果は既に報告されたことがある(FEMS immunology and medical microbiology、13(1):51−57;Vetvicka,V et al、(1996))。日本ではβグルカンが坑ガン用医薬品、または機能性食品として販売されており、米国のFDAはβグルカンの安全基準を確立して免疫力の増加効果及びその安定性を認証した。また、βグルカンは、皮膚美容関連業界で、粘弾性、補湿特性、生体適合性、コラーゲン合成促進効果、皮膚再生及び保護効果を高めるために化粧品の原料として使われる(Journal of Cosmetic Science、27(5):292)。
【0016】
βグルカンは、葡萄糖単量体が連結される位置によって、β−(1,3)−グルカン、β−(1,4)−グルカン、β−(1,6)−グルカンに分類される。本発明に使われるβグルカンは、β−(1,3)−グルカン、β−(1,4)−グルカン、β−(1,6)−グルカン、またはこれらのうち少なくとも2以上の混合を含み、各々が側鎖を持つβ−(1,3)−グルカン、β−(1,4)−グルカン、β−(1,6)−グルカンも含む。特に、前記βグルカンの中でβ−(1,3)側鎖を持つβ−(1,6)−グルカンを使うことが好ましい。
図1は、β−(1,3)側鎖を持つβ−(1,6)−グルカンの化学式である。
【0017】
前記βグルカンは、分子量が30,000〜300,000Daのβグルカンを分画して製造することが、粘度、膨潤性、注射器の圧出性向上に好ましい。
【0018】
<ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)>
ヒアルロン酸はアミノ酸とウロン酸からなる多糖類の一つで、N−アセチルグルコサミン(N−acetylglucosamine)及びグルクロン酸(Glucuronic acid)からなる高分子化合物である。本発明で使われるヒアルロン酸は、100,000〜1,000,000Daの分子量を持つ。本発明の実施例に使われたヒアルロン酸は、分子量が150,000〜300,000Daのもので、シグマ−アルドリッチ社(Sigma−Aldrich)の製品を購入して使用した。
【0019】
<生体適合性組成物の製造>
本発明の生体適合性組成物の製造方法は、(a−1)βグルカンを塩基性水溶液に希釈して水溶液を製造する段階、(a−2)水溶液のpHを9〜13に調節する段階、(a−3)βグルカンを塩基性条件で、過酸化水素及び熱を加えて低分子βグルカン(30,000〜300,000Da)に加水分解する段階、(a−4)低分子量のβグルカンを分離する段階、(a−5)βグルカン水溶液と前記ヒアルロン酸を1:9〜9:1の質量比で混合する段階、(b)架橋剤を添加する段階、(c)25℃〜80℃で2〜8時間架橋結合反応を進行させる段階を含む。
【0020】
具体的に、自然の植物からβグルカンを塩基性水溶液に溶解した後で均質化する(a−1)。前記塩基性水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、水酸化アルミニウム水溶液、アンモニア水を含む。好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液を使ってpHを9〜13に調節する(a−2)。次いで、過酸化水素を0.5〜1.5%(v/v)を添加した後、100℃〜180℃の温度及び1〜2気圧下の条件で10〜90分間加水分解する(a−3)。
【0021】
加水分解されたβグルカンは、多様な分子量を持つことができる。ろ過装置を利用して加水分解されたβグルカンから30,000〜300,000Da分子量を持つβグルカンを分離する(a−4)。次に、分離されたβグルカンを凍結乾燥する。
【0022】
凍結乾燥されたβグルカンを塩基性水溶液に溶解した後、均質化する。次いで、ヒアルロン酸を混合する(a−5)。このとき、βグルカンとヒアルロン酸は、1:9〜9:1の質量比で混合されることが好ましい。
【0023】
次いで、架橋剤を添加する(b)。前記架橋剤は、エポキシド基(Epoxide)、エピハロヒドリン基(Epihalohydrin)及びジビニルスルホン基(Divinylsulfone)のうち、少なくとも一つを含むことができる。例えば、前記エポキシド基は、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4−Butandiol diglycidyl ether、BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(Ethylene glycol diglycidyl ether、EGDGE)、1−(2,3−エポキシプロピル)2,3−エポキシシクロヘキサン(1−(2,3−Epoxypropyl)−2,3−epoxycyclohexane)、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル(1,2−Ethandiol diglycidyl ether)及びこれらの混合からなる群から選択されてもよい。この中で、安定性が検証され、他の架橋剤に比べて炎症またはアレルギー反応が少ない1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルを使うことが好ましく、前記架橋剤の添加量は、架橋剤を添加する前のβグルカン及びヒアルロン酸の混合物の全体積に対して0.1〜5.0%(v/v)を添加することができる。
【0024】
次いで、25℃〜80℃で2〜8時間ハイブリッド架橋結合反応を進行させる(c)。架橋反応が終われば、塩酸を利用して生理的pH(7.4)に中和し、洗浄して凍結乾燥することができる。
【0025】
以上の製造方法により、本発明の生体適合性組成物を製造することができる。本発明の生体適合性組成物は、人体内に挿入される手術用器具、保形物、フィラー、化粧品の素材などで多様に使われてもよい。
【0026】
以下、本発明の実施例によって、本発明の生体適合性組成物の製造方法をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限るものではない。
【0027】
<実施例>
1.βグルカン水溶液の製造及び加水分解
マイタケ(Grifola frondosa)から抽出されたβグルカンを獲得した。前記βグルカンは、β−(1,3)側鎖を持つβ−(1,6)グルカンである。前記βグルカン粉末20gを1.0%水酸化ナトリウム溶液100mlに溶解し、透明な溶液が得られるまで均質化した後、過酸化水素1.0%(v/v)を添加した。その後、βグルカンを121℃で60分間高温高圧(121℃、1.2気圧)処理して加水分解した。加水分解したβグルカンを限外ろ過装置を利用して分子量ごとに分画した後で凍結乾燥し、その結果を表1に示した。
【0029】
2.ハイブリッド架橋結合組成物の製造
30,000〜300,000Daの低分子βグルカン粉末4gを1.0%水酸化ナトリウム溶液100mlに溶解した後、透明な溶液が得られるまで均質化した。4.0%(w/v)ヒアルロン酸水溶液を製造した後、低分子βグルカン水溶液に添加し、これを撹拌することで均質に混合した。獲得されたβグルカン及びヒアルロン酸混合物の全体積に対して0.3%(v/v)のBDDE(1,4−butandiol diglycidyl ether)を添加した後、60℃で6時間架橋反応を行わせた。架橋反応を終了した後、5N塩酸(HCl)を添加し、pHを生理的なpH(7.4)に中和した。製造されたハイブリッド架橋結合組成物をエタノールで3〜4回洗浄した後、凍結乾燥して獲得した。
【0030】
<実験例1−膨潤度>
実施例で製造された生体適合性組成物(実施例)に対する膨潤度及びヒアルロン酸が架橋結合されていない低分子量のβグルカン(比較例)に対する膨潤度の測定結果を表2に示した。実施例の凍結乾燥した後、生体適合性組成物を測定した重量(乾燥重量、Wd)及び24時間生理食塩水で膨潤させた後、表面の水気を除去して測定した重量(膨潤重量、Ws)を以下の公式を利用して計算した。
[膨潤度=(Ws−Wd)/Wd]
【0032】
図2は、生体適合性組成物が実験例1で生理的食塩水に膨潤した状態を撮影したイメージである。
【0033】
<実験例2−注射器の圧出性>
実験例1において、膨潤された生体適合性組成物が圧出される力を測定するために、1ccの注射器に充填した後、27G×1/2"の注射針を通じて組成物が圧出されるのか否かを測定した。
図3は、本発明の生体適合性組成物が注射針を通じて圧出される状態を撮影したイメージである。
図3で見られるように、本発明による30,000〜300,000Daの低分子βグルカン及びヒアルロン酸のハイブリッド架橋結合組成物は、27Gの注射針を通じて容易に圧出されるし、また優秀な粘弾性を示した。
【0034】
<実験例3−熱に対する安定性>
本発明の生体適合性組成物(実施例)及び常用架橋ヒアルロン酸(比較例)の熱分解に対する安定性を比較測定するために、121℃で60分間高熱高圧処理して、滅菌前後の各粘度を比べた。粘度測定は、ブルックフィールド粘度計(Brookfield Rheometer)で測定し、その結果を表3に示した。比較例の架橋ヒアルロン酸は、シグマ−アルドリッチで購入した分子量150,000〜300,000Daのヒアルロン酸を利用して4.0%(w/v)ヒアルロン酸水溶液を製造した後、ヒアルロン酸水溶液の全体積に対して0.3%(v/v)のBDDE(1,4−butandiol diglycidyl ether)を添加した後、60℃で6時間架橋反応して製造した。
【0036】
前記表3で見られるように、本発明の生体適合性組成物が比較例より熱分解に対して安定性が優れていることが分かった。
【0037】
<実験例4−酵素分解に対する安定性>
1.0%ヒアルロン酸水溶液(比較例)及び生体適合性組成物(実施例)のヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)酵素に対する安定性を比較調査した。酵素ヒアルロニダーゼ1,500IUを実施例と比較例にそれぞれ添加し、37℃で30分間反応した後、ブルックフィールド粘度計(Brookfield Rheometer)で粘度を測定し、測定結果を表4に示した。
【0039】
前記表4で見られるように、本発明の生体適合性組成物が比較例に比べて生体内の酵素分解に対する安定性がより優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、生体適合性組成物を製造する方法と、これによって製造された生体適合性組成物に係り、人体挿入用保形物、フィラーなどのような医療用及び化粧品用素材として使われることができる。