【実施例】
【0053】
実施例1:狼毒抽出物及びその分画物の製造
本実施例においては、狼毒から狼毒抽出物を製造し、狼毒抽出物及び前記分画物が傷治療に及ぼす効果を確認した。
【0054】
1.狼毒抽出物及びその分画物の製造
(1)狼毒エタノール抽出物の製造
狼毒抽出物は、モンゴル・ウランバートル近郊で生育したものであり、地上部のみを採集した。採集された地上部を水で洗浄して乾燥させた。乾燥された狼毒地上部は、押し切り(straw cutter)を利用して、2〜3cmに細切りして使用した。ガラス三角フラスコに、前記細切りされた狼毒地上部100gと、水内95(v/v)%のエタノール1Lとを入れて混合した。該混合物を約20℃の常温で、48時間150rpmで撹拌して抽出した。
【0055】
次に、該混合物を濾過紙(Whatman、NO.2、8μm)に通過させて得られた濾過液を得た。得られた濾過液を、回転式減圧濃縮機(EYELA、N−1100)を使用して減圧濃縮し、残っている溶媒を除去するために、48時間凍結乾燥(Operon、FDCF−12003)を実施し、溶媒が除去された乾燥された狼毒抽出物3gを得た。
【0056】
(2)狼毒エタノール抽出物分画物の製造
(2.1)エタノール抽出物の分画物
乾燥された狼毒エタノール抽出物3g、及び水100mLを三角フラスコに入れて懸濁した後、250mL分別漏斗に入れ、そこにn−ヘキサン(extra pure grade、100(v/v)%)100mLを添加し、十分に振った後、常温で3時間放置した。前記混合物を、分別漏斗を利用して、ヘキサン層のみを取り、前述のような過程を3反復して実施し得られたヘキサン層は、減圧濃縮(EYELA、N−1100)を行い、ヘキサン分画物を得た。
【0057】
また、同一方法により、前記ヘキサン分画物分離過程で残った水層に対して、100(v/v)%酢酸エチルを添加して混合した後、同一過程を経て、酢酸エチル分画を得た。
また、同一方法により、前記酢酸エチル分画物分離過程で残った水層に、水泡化ブタノールを添加して混合した後、同一過程を経て、ブタノール分画を得た。その後、残ったものを水分画物として使用した。
【0058】
前記狼毒エタノール抽出物とその分画物は、ジメチルスルホキシド(DMSOdimethylsulfoxide)に、20mg/ml濃度で溶かした後、下記実験に利用した。
【0059】
(2.2)他の溶媒抽出物、及びその分画物
(2.1)における溶媒としてのエタノールの代わりに、100(v/v)%アセトン、指定された濃度のメタノール、またはブタノールを使用したことを除いては、同一過程によって、他の溶媒を使用した抽出物及びその分画物を得た。
【0060】
2.ヒト角質形成細胞の移動増加
前記狼毒抽出物またはその分画物が、ヒト角質形成細胞が移動(migration)することを増大させるか否かということを、下記のように確認した。
【0061】
牛胎児血清が2.5(v/v)%に含有されたDMEM(Hyclone、Dulbecco’s Modified Eagle’s Media)培地1mlが入っている24ウェル平板培養器(24−well microtiter plate)のウェルに、HaCaTヒト角質形成細胞を2×10
5細胞/ウェルになるように入れた。次に、前記角質形成細胞を、コンフルエンスが80%になるまで、37℃及び5% CO
2培養器で培養させた後、培地中の細胞単一層をp10ピペットチップで引っ掻き、「引っ掻き損傷」を誘導した。
【0062】
次に、前記引っ掻かれた細胞単一層上に、無血清DMEM 200μlと、前記狼毒抽出物またはその分画物とを、5μg/ml培地及び10μg/ml培地の濃度に添加した。その後、前述の培養条件と同一条件で、ヒト角質形成細胞を24時間培養させた。陰性対照群としては、前記抽出物を溶かすのに使用したDMSOを同量処理し、陽性対照群としては、壺草抽出物(10μg/ml)を指定された濃度で使用した。その後、クリスタルバイオレット(crystal violet)試薬で細胞層を染色した後、引っ掻き傷が回復する程度を確認した。前記壺草抽出物は、バイオスペクトラム(韓国)から購入したものである。
【0063】
図1は、狼毒地上部のエタノール抽出物が、角質形成細胞の移動を促進させるところを確認した結果である。
図2は、狼毒地上部のエタノール抽出物の分画物が、角質形成細胞の移動を促進させるところを確認した結果である。
図1において、A、B、C及びDは、DMSO(陰性対照群)、5μg/ml狼毒抽出物、10μg/ml狼毒抽出物及び10μg/ml壺草抽出物(陽性対照群)をそれぞれ示す。
図2において、A、B、C、D、E、F、G及びHは、DMSO(陰性対照群)、5μg/ml狼毒地上部のエタノール抽出物のヘキサン分画物、5μg/ml狼毒地上部のエタノール抽出物の酢酸エチル分画物、5μg/ml狼毒地上部のエタノール抽出物のブタノール分画物、5μg/ml壺草抽出物、10μg/ml狼毒地上部のエタノール抽出物のヘキサン分画物、10μg/ml狼毒地上部のエタノール抽出物の酢酸エチル分画物、及び10μg/ml狼毒地上部のエタノール抽出物のブタノール分画物をそれぞれ示す。
【0064】
図1及び
図2に示されているように、陰性対照群が処理された細胞の引っ掻き損傷は、24時間後、相対的に治癒されていないまま残っているのに対し、狼毒地上部のエタノール抽出物が処理された細胞においては、傷端の細胞増殖及び細胞移動により、引っ掻き損傷が治癒され、24時間後、引っ掻き面積が低減した。
【0065】
3.線維芽細胞における、COL1A1遺伝子及びCOL3A1遺伝子の発現増大
前記狼毒抽出物がヒト線維芽細胞において、コラーゲン遺伝子の発現を促進させるか否かということを下記のように確認した。
【0066】
牛胎児血清が2.5(v/v)%に含有されたDMEM(Hyclone:Dulbecco’s Modified Eagle’s Media)培地2mlが入っている6ウェル平板培養器(6−well microtiter plate)のウェルに、ヒト線維芽細胞(HDF:human dermal fibroblasts、American Type Culture Collection、米国)を、2×10
6細胞/ウェルになるように入れ、コンフルエンスが80%になるまで、前述のところと同一条件で培養した。
【0067】
かように培養した細胞に、前記狼毒抽出物を、それぞれ1μg/ml、5μg/ml及び10μg/mlの濃度で添加し、24時間、前述のところと同一条件で培養させた。陰性対照群としては、前記抽出物を溶かすのに使用したDMSOを同量使用し、陽性対照群としては、壺草抽出物(バイオスペクトラム、韓国)を使用した。24時間後、RT−PCRアッセイを介して、コラーゲン遺伝子が発現されるか否かということを確認した。具体的には、24時間経過後、細胞から、TRIzol試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA、米国)を使用して、総RNAを収穫して逆転写させた後、RT−PCRを次のように行った。まず、cDNA合成のために、前記RNAを逆転写酵素(reversetranscriptase)を使用して逆転写させた。RT−PCRは、次の特定プライマーをプライマーとして使用して行った。各遺伝子の相対的なmRNA発現量値は、β−アクチン値で標準化した。
【0068】
図3は、狼毒地上部のエタノール抽出物が、線維芽細胞において、COL1A1遺伝子及びCOL3A1遺伝子の発現を促進させるところを確認した結果である。
【0069】
図3に示されているように、狼毒地上部のエタノール抽出物は、コラーゲン合成関連因子であるCOL1A1及びCOL3A1から構成された群のうちから選択される1以上遺伝子の発現を活性化させる効果が顕著であるということが分かった。
【0070】
図4は、狼毒地上部のさまざまな溶媒抽出物が、線維芽細胞において、COL1A1遺伝子及びCOL3A1遺伝子の発現を促進させるところを確認した結果である。
図4において、試料番号1,2,3,4,5,6及び7は、アセトン抽出物、アセトン抽出物、100%エタノール抽出物、25%メタノール抽出物、50%メタノール抽出物、75%メタノール抽出物及び100%メタノール抽出物を示す。
【0071】
図5は、狼毒地上部の、異なる濃度のブタノールを使用して抽出されたブタノール抽出物が、線維芽細胞において、COL1A1遺伝子及びCOL3A1遺伝子の発現を促進させるところを確認した結果である。
図5において、試料番号1,2,3及び4は、25%ブタノール抽出物、50%ブタノール抽出物、75%ブタノールを抽出物及び100%ブタノール抽出物を示す。
【0072】
図4及び
図5に示されているように、狼毒地上部のアセトン抽出物、メタノール抽出物、エタノール抽出物及びブタノール抽出物は、コラーゲン合成関連因子であるCOL1A1及びCOL3A1から構成された群のうちから選択される1以上遺伝子の発現を活性化させる効果が顕著であるということが分かった。
【0073】
【表1】
4.UV照射によって老化が誘導された線維芽細胞におけるコラーゲン分解酵素−1分泌抑制測定実験
前記狼毒エタノール抽出物のコラーゲン分解酵素−1(MMP−1:matrix metalloproteinase−1)の生成を抑制する効能を測定した。
【0074】
まず、2.5%の牛胎児血清が含有されたDMEM培地が入っている24孔平板培養器にヒト線維芽細胞を、1×10
5細胞/孔(well)になるように入れ、90%ほどのコンフルエンスに育つまで培養した。その後、無血清DMEM培地に溶解された前記狼毒エタノール抽出物を、1,5及び10μg/ml濃度で添加し、24時間培養した後、UV照射機を利用して、UVB、すなわち、15mJを照射した。その後、無血清DMEM培地に溶解された前記狼毒エタノール抽出物を、1,5及び10μg/ml濃度で追加して添加した。24時間経過後、細胞培養液を採取し、遠心分離し、上澄み液だけ収穫した。
【0075】
その後、採取した上澄み液から、コラーゲンMMP−1 ELISAキット(QIA55、Merck & Co.、米国)を利用して、前記上澄み液中のMMP−1のレベルを測定した。まず、一次抗体として、マウス抗MMP−1抗体が均一に塗布された96孔平板(96−well plate)のウェルに、前記上澄み液を入れ、2時間常温でインキュベーションし、抗原・抗体複合体を形成させた。2時間後、発色団として、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)が接合された抗MMP−1抗体を、96孔平板のウェルに入れ、1時間インキュベーションさせた。1時間後、発色基質として、テトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine)を入れ、室温で30分間インキュベーションさせ、発色を誘発させた後、さらに終結バッファを入れて反応を中止させれば、反応液の色は、黄色を帯び、反応進行の程度によって、黄色の程度が異なって示された。黄色を帯びる96孔平板ウェルの吸光度を、吸光計を利用して、450/540nmで測定した。
【0076】
図6は、狼毒エタノール抽出物の存在が、MMP−1の発現レベルに及ぼす影響を確認した結果である。その結果、
図6に示されているように、狼毒エタノール抽出物が、MMP−1遺伝子発現の抑制にすぐれた効果を有するということが分かった。陽性対照群としては、エピカルロカテキン(EGCG:epigallocatechin gallate)を使用した。
【0077】
5.UVによって老化が誘導された線維芽細胞におけるコラーゲン生成増進測定実験
前記狼毒エタノール抽出物のタイプ−1プロコラーゲン(type−1 procollagen)の発現を促進させるか否かということを確認した。
【0078】
まず、2.5%の牛胎児血清が含有されたDMEM培地が入っている24孔平板培養器に、ヒト線維芽細胞を1×10
5細胞/孔(well)になるように入れ、90%ほどのコンフルエンスまで育つまで培養した。その後、無血清DMEM培地に溶解された前記狼毒エタノール抽出物を、1,5及び10μg/ml濃度で24時間処理した後、UV照射機を利用して、UVB、すなわち、15mJを照射した。その後、無血清DMEM培地に溶解された前記狼毒抽出物を、1,5及び10μg/ml濃度で追加して添加し、同一に培養した。24時間経過後、細胞培養液を採取して遠心分離し、上澄み液だけ収穫し、プロコラーゲンタイプIC−ペプチドEIAキット( PIP(Procollagen Type IC−Peptide) EIA Kit)(Cat.#MK101、Takara Bio Inc.、日本)を使用して、収獲された上澄み液のうちプロコラーゲンタイプ−IC−ペプチド(PIP:procollagen type−I C−peptide)のレベルを測定した。PIPは、生体内でコラーゲンを合成する過程において、プロコラーゲンからコラーゲンに転換される過程において切られて出るペプチドであり、PIPのレベルは、コラーゲンのレベルと比例するために、当業界において、コラーゲンレベル確認に指標として使用されているペプチドである。
【0079】
具体的に見れば、マウス抗PIPダンクロン抗体が均一にコーティングされた96孔平板のウェルに、ホースラディッシュペルオキシダ、ムゼ(horseradish peroxidase)(POD)が接合されたマウス抗PIPダンクロン抗体(「抗体・POD接合体」ともいう)を添加し、その後、前記細胞培養液及び標準溶液(standard solution)をそれぞれ添加し、37℃で3時間置いた。その後、ウェルを洗浄し、過酸化水素とテトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine)とを含んだ基質溶液を添加し、室温で15分インキュベーションした。その後、ウェルに反応中止溶液(stop solution)を入れ、反応を中止させ、吸光計(plate reader)を利用して、450nmで吸光度を測定した。
【0080】
図7は、UVB照射されたヒト線維芽細胞において、狼毒エタノール抽出物が、タイプ−1プロコラーゲンの発現に及ぼす程度を測定した結果を示す。その結果、
図7に示されているように、狼毒エタノール抽出物が、タイプ−1プロコラーゲンの発現を促進させるのにすぐれた効果を有するということが分かった。
【0081】
6.動物実験での傷回復増進
前記狼毒抽出物が、動物実験において、傷部位の回復を促進するか否かということを下記のように確認した。
【0082】
(1)実験動物
SD(Sprague-Dawley)ラット(雄、7週齢)を(株)コアテックから入手し、25±1℃、湿度50±10%を維持し、明暗は、昼夜12時間で自動調節しながら維持した。また、一般食餌の飼料及び水は、自由に摂取するようにし、全ての実験動物は、1週間動物室環境に適応させた後、実験に使用した。実験群に投与した食餌、投与用量及び投与方法は、下記表2に示した。
【0083】
【表2】
(2)傷誘発及び処置
SDラットを、麻酔前24時間節食させ、100mlの水を供給した。全ての実験群に傷を誘発させる1時間前、100%のゾレチルと100%のロムプンとを1:2比率で混合し、全ての実験群に対して、得られた混合物を0.1cc/kg使用して、筋肉注射で麻酔させた。その後、全ての実験群に対して、電気除毛機でラット背部位の毛を除去した。背部位に、それぞれ10%のポビドン・ヨードと、70(v/v)%のエタノールとを塗布して消毒した後、背部位に、消毒された手術用はさみを利用して、直径2cmx2cmの正方形サイズに、真皮層を含んだ全層欠損傷(full-thickness excisional wound)を誘発させた。
【0084】
(3)肉眼的傷変化の観察
それぞれの前記狼毒抽出物(1%あるいは3%(v/v))、及び傷治癒に効能があると知られている壺草抽出物(1%あるいは3%(v/v))を、2週間1日1回傷ついた皮膚に塗布した。該壺草抽出物は、実施例1の2に記載されたところと同一である。それぞれの試験物質を傷に塗布して、それぞれ1日目、4日目、8日目、11日目及び15日目に傷部位を撮影し、ImageJ(NIH、米国)を利用して、傷口面積を測定して分析した。
【0085】
(4)組織学的検査
それぞれの試験物質投与後14日目、全ての実験群をエーテルで吸入麻酔させ、試験物質の投与部位を、10%中性緩衝ホルマリン溶液で固定した。病理組織学的検査のために、傷口面を等しく検査することができるように、固定が完了した皮膚組織を、傷口面の長軸を基準に、縦横2cmx2cmの正方形サイズにそれぞれ1部位ずつ切断した。切断された組織を、一般的な組織処理方法によって、パラフィンで包埋した後、約3〜4μm厚に組織切片を製作し、スライドガラスに付着させた。付着が完了した切片に、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色を行い、染色された切片を、光学顕微鏡(Olympus BX53、日本)で検査した。傷組織(例:創傷)に対する判読は、Nisbetら(Tissue Eng Part A. 2010, Sep; 16 (9): 2833-42)とBaratiら(Diagn Pathol. 2013; 8: 120)とが評価した方法を基に点数を決め、それぞれ所見に係る基準は、下表3の通りである。
【0086】
【表3】
図8は、狼毒エタノール抽出物が、動物実験において、開いた傷の上皮化(epithelialization)に及ぼす影響を示した図面である。
図8において、横軸のG1、G2、G3、G4及びG5は、表2に示されているような実験群を示し、縦軸の点数(score)は、表3に定義される上皮化基準によって測定された値である。
【0087】
図8に示されているように、本願発明の狼毒抽出物G4及びG5は、対照群G1に比べ、有意に上皮化を増大させた。
図8及び
図9において、*は、シェッフェ試験(Scheffe’s test)p<0.05によるANOVAを示す。
【0088】
図9は、狼毒エタノール抽出物が、動物実験において、開いた傷の傷口面積低減に及ぼす影響を示した図面である。
図9において、傷口面積は、狼毒抽出物を傷に塗布した後、1日目、4日目、8日目、11日目及び15日目に傷口面積を測定した結果を示す。
図9において、横軸のG1、G2、G3、G4及びG5は、表2に示されているような実験群を示し、縦軸は、傷口面積を示す。
図9に示されているように、本願発明の狼毒抽出物G4及びG5は、対照群G1に比べ、傷口面積を顕著に低減させた。
【0089】
図10は、狼毒エタノール抽出物が、動物実験において、開いた傷の回復を促進させるところを、H&E染色法で確認した結果である。
図10に示されているように、本願発明の狼毒抽出物は、対照群に比べ、傷の再上皮化を促進した。
図8のH&E組織染色によれば、2層を確認することができるが、上層の濃いピンク色が表皮であり、下層の薄いピンク色が真皮である。対照群と、試料と処理した群とを比較したとき、上層の表皮の厚みや割れが、試料処理群において、回復するということを確認することができる。
【0090】
以上の結果から、狼毒抽出物は、動物実験において、開いた傷の再上皮化を促進し、回復を顕著に促進した。以上の結果は、狼毒地上部のエタノール抽出物を使用して得られた結果に基づいたものであるが、狼毒地上部のエタノール抽出物のヘキサン分画物、酢酸エチル分画物またはブタノール分画物、狼毒地上部のアセトン抽出物、メタノール抽出物またはブタノール抽出物、またはそのヘキサン分画物、酢酸エチル分画物またはブタノール分画物についても、類似した結果を得た。
【0091】
また、前述の実施例によれば、紫外線が照射された条件で狼毒抽出物は、ヒト線維芽細胞から、MMP−1の発現を低減させ、コラーゲン発現を促進させると確認された。すなわち、前記狼毒抽出物は、ヒト線維芽細胞において、紫外線が照射された条件で、コラーゲン分解酵素の発現は低減させながら、コラーゲンの発現を促進させた。従って、前記狼毒抽出物は、ヒト線維芽細胞を含む組織において、例えば、皮膚において、コラーゲン合成を促進させ、その組織の弾力性を維持して促進させることができる。従って、前記狼毒抽出物は、ヒト線維芽細胞を含む組織、例えば、皮膚しわを改善させるか、あるいは皮膚老化を防止するのに効果がある。
【0092】
実施例2:狼毒幹抽出物及びその分画物の製造
本実施例においては、狼毒から、狼毒幹抽出物及びその分画物を製造し、狼毒幹抽出物及び前記分画物が傷治療に及ぼす効果を確認した。
【0093】
1.狼毒幹抽出物及びその分画物の製造
(1)狼毒幹抽出物の製造
狼毒抽出物は、モンゴルウランバートル近郊で生育したものであり、地上部のうち幹のみを採集した。採集された幹を水で洗浄して乾燥させた。乾燥された狼毒幹は、押し切りを利用して、2〜3cmに細切りして使用した。ガラス三角フラスコに、前記細切りされた狼毒幹100gと、95%のエタノール1Lとを入れて混合した。該混合物を常温(約20℃)で48時間150rpmで撹拌して抽出した。
【0094】
次に、該混合物を濾過紙(Whatman、NO.2、8μm)に通過させて得られた濾過液を得た。得られた濾過液を、回転式減圧濃縮機(EYELA、N−1100)を使用して、減圧濃縮し、残っている溶媒を除去するために、48時間凍結乾燥(Operon、FDCF−12003)を実施し、溶媒が除去された乾燥された狼毒抽出物3gを得た。
【0095】
(2)狼毒幹抽出物分画物の製造
乾燥された狼毒抽出物3gと水100mLとを三角フラスコに入れて懸濁した後、分別漏斗(250mL)に入れ、ここに、n−ヘキサン(extra pure grade、95%以上)100mLを添加して十分に振った後、常温で3時間放置した。前記混合物から、分別漏斗を利用してヘキサン層のみを取り、前述のような過程を3反復して実施し得られたヘキサン分画は、減圧濃縮(EYELA、N−1100)を行い、ヘキサン分画を得た。
【0096】
また、同一方法により、前記ヘキサン分画が除去された水分画に対して、酢酸エチルを添加して混合した後、同一過程を経て、酢酸エチル分画を得た。
【0097】
また、同一方法により、前記酢酸エチル分画が除去された水分画に、水泡化ブタノールを添加して混合した後、同一過程を経て、ブタノール分画を得た。
【0098】
前記狼毒抽出物とその分画物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に20mg/ml濃度で溶かした後、下記実験に利用した。
【0099】
2.ヒト角質形成細胞の移動増加
前記狼毒幹抽出物またはその分画物が、ヒト角質形成細胞が移動することを増大させるか否かということを下記のように確認した。
【0100】
牛胎児血清が2.5(v/v)%に含有されたDMEM(Hyclone:Dulbecco’s Modified Eagle’s Media)培地1mlが入っている24ウェル平板培養器のウェルに、HaCaTヒト角質形成細胞を2×10
5細胞/ウェルになるように入れた。次に、前記角質形成細胞を、コンフルエンスが80%になるまで、37℃及び5% CO
2培養器で培養させた後、培地中の細胞単一層をp10ピペットチップで引っ掻き、「引っ掻き損傷」を誘導した。
【0101】
次に、前記引っ掻かれた細胞単一層上に、無血清DMEM 200μlと、前記狼毒抽出物またはその分画物とを、5μg/ml培地及び10μg/ml培地の濃度で添加した。その後、前述の培養条件と同一条件で、ヒト角質形成細胞を24時間培養させた。陰性対照群としては、前記抽出物を溶かすのに使用したDMSOを同量処理し、陽性対照群としては、PPARδ活性体であるGW501516(Sigma Aldrich、米国)または壺草抽出物を、指定された濃度で使用した。その後、クリスタルバイオレット(crystal violet)試薬で細胞層を染色した後、引っ掻き傷が回復する程度を確認した。前記壺草抽出物は、バイオスペクトラム(韓国)から購入したものである。
【0102】
図11は、狼毒幹抽出物が角質形成細胞の移動を促進させるところを確認した結果である。
【0103】
図12は、狼毒幹抽出物の分画物が、角質形成細胞の移動を促進させるところを確認した結果である。
【0104】
図11及び
図12に示されているように、陰性対照群が処理された細胞の引っ掻き損傷は、24時間後に相対的に治癒されていないまま残っているのに対し、狼毒幹抽出物または分画物が処理された細胞においては、傷端の細胞増殖及び細胞移動で引っ掻き損傷が治癒され、24時間後、引っ掻き面積が低減した。
図11において、GWは、GW501516を示す。
【0105】
3.線維芽細胞における、COL1A1遺伝子及びCOL3A1遺伝子の発現増大
前記狼毒幹抽出物またはその分画物が、ヒト線維芽細胞において、コラーゲン遺伝子の発現を促進させるか否かということを下記のように確認した。
【0106】
牛胎児血清が2.5(v/v)%に含有されたDMEM培地2mlが入っている6ウェル平板培養器のウェルに、ヒト線維芽細胞(HDF:human dermal fibroblasts、American Type Culture Collection、米国)を2×10
6細胞/ウェルになるように入れ、コンフルエンスが80%になるまで、前述のところと同一条件で培養した。
【0107】
かように培養した細胞に、前記狼毒幹抽出物を、それぞれ1μg/ml、5μg/ml、及び10μg/ml、狼毒幹抽出物の分画物を、それぞれ5μg/ml及び10μg/mlの濃度で添加し、24時間、前述のところと同一条件で培養させた。陰性対照群としては、前記抽出物を溶かすのに使用したDMSOを同量処理し、陽性対照群としては、壺草抽出物(バイオスペクトラム、韓国)を使用した。24時間後、RT−PCRアッセイを介して、コラーゲン遺伝子が発現されるか否かということを確認した。具体的には、24時間経過後、細胞から、TRIzol試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA、米国)を使用して、総RNAを収穫して逆転写させた後、RT−PCRを、次のように行った。まず、cDNA合成のために、前記RNAを逆転写酵素(reverse transcriptase)を使用して逆転写させた。RT−PCRは、表1の特定プライマーをプライマーとして使用して行った。各遺伝子の相対的なmRNA発現量値は、β−アクチン値で標準化した。
【0108】
図13は、狼毒幹抽出物が線維芽細胞において、COL1A1遺伝子及びCOL3A1遺伝子の発現を促進させるところを確認した結果である。
【0109】
図14は、狼毒幹抽出物の分画物が、線維芽細胞において、COL1A1遺伝子及びCOL3A1遺伝子の発現を促進させるところを確認した結果である。
【0110】
図13及び
図14に示されているように、狼毒幹抽出物またはその分画物は、コラーゲン合成関連因子であるCOL1A1及びCOL3A1から構成された群のうちから選択される1以上遺伝子の発現を活性化させる効果が顕著であるということが分かった。
【0111】
4.動物実験での傷回復増進
前記狼毒幹抽出物が、動物実験において、傷部位の回復を促進するか否かということを下記のように確認した。
【0112】
(1)実験動物
SD(Sprague-Dawley)ラット(雄、7週齢)を(株)コアテックから入手し、25±1℃、湿度50±10%を維持し、明暗は、昼夜12時間で自動調節しながら保管した。また、一般食餌の飼料及び水は自由に摂取するようにし、全ての実験動物は、1週間動物室環境に適応させた後、実験に使用した。実験群に投与した食餌、投与用量及び投与方法は、下記表4に示した。
【0113】
【表4】
(2)傷誘発及び処置
SDラットを、麻酔前24時間節食させ、100mlの水を供給した。全ての実験群に、傷を誘発する1時間前、100%のゾレチルと100%のロムプンとを1:2比率で混合し、全ての実験群に対して、得られた混合物を0.1cc/kg使用して、筋肉注射で麻酔させた。その後、全ての実験群に対して、電気除毛機でラットの背部位毛を除去した。背部位に、それぞれ10%のポビドン・ヨードと70%エタノールとを塗布して消毒した後、背部位に、消毒された手術用はさみを利用して、直径2cmx2cmの正方形サイズに真皮層を含んだ全層欠損傷(full-thickness excisional wound)を誘発させた。
【0114】
(3)肉眼的傷変化の観察
それぞれの前記狼毒幹抽出物及び傷治癒に効能があると知られている壺草抽出物を、2週間3%(v/v)で、1日1回傷ついた皮膚に塗布した。壺草抽出物は、実施例1の2に記載されたところと同一である。それぞれの試験物質を傷に塗布して、それぞれ1日目、4日目、8日目、11日目及び14日目に傷部位を撮影し、ImageJ(NIH、米国)を利用して、傷口面積を測定して分析した。
【0115】
(4)組織学的検査
それぞれの試験物質投与後14日目、全ての実験群に対して、エーテルで吸入麻酔し、試験物質の投与部位を10%の中性緩衝ホルマリン溶液で固定した。病理組織学的検査のために、傷口面を等しく検査することができるように、固定が完了した皮膚組織を、傷口面の縦方向(longitudinal)に、縦横で2cmx2cmの正方形サイズに、それぞれ1部位ずつ切断した。切断された組織を、一般的な組織処理方法によって、パラフィンで包埋した後、約3〜4μm厚に組織の切片を製作し、スライドガラスに付着させた。付着が完了した切片に、ヘマトキシリン・エオシン染色を行い、染色された切片を光学顕微鏡(Olympus BX53、日本)で検査した。傷組織に対する判読は、当該技術分野に公知の評価方法で点数を決めて行った(Nisbetら(Tissue Eng Part A. 2010, Sep; 16 (9): 2833-42))及びBaratiら(Diagn Pathol. 2013; 8: 120))。判読時、それぞれの所見に係る基準は、下記表5に示されている通りであり、その判読結果を表6に示した。
【0116】
表6に示されているように、狼毒幹抽出物は、線維組織形成、血管形成及び上皮化が顕著であるということが分かる。
【0117】
図15は、狼毒幹抽出物が、動物実験において、開いた傷の回復を促進させるところを臨床学的に確認した結果である。
図16は、狼毒幹抽出物が、動物実験において、開いた傷の回復を促進させるところを定量的に確認した結果である。また、
図15及び
図16に示されているように、狼毒抽出物は、傷部位の再上皮化を促進させ、開いた傷を回復する効果が顕著であるということが分かる。
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
製剤1:薬学的製剤の製造
1.軟質カプセル制の製造
狼毒幹エタノール抽出物または分画物150mg、パーム油2mg、パーム硬化油8mg、黄蝋4mg及びレシチン6mgを混合し、一般的な方法によって、1カプセル当たり400mgずつ充填し、軟質カプセル剤を製造した。
【0120】
2.錠剤の製造
狼毒幹エタノール抽出物または分画物150mg、ブドウ糖100mg、紅参抽出物50mg、澱粉96mg及びステアリン酸マグネシウム4mgを混合し、30%エタノールを40mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥させ、打錠機を利用して、錠剤に打錠して錠剤を製造した。
【0121】
3.顆粒剤の製造
狼毒幹エタノール抽出物または分画物150mg、ブドウ糖100mg、紅参抽出物50mg及び澱粉600mgを混合し、30%エタノールを100mg添加し、顆粒を形成した後、60℃で乾燥させて顆粒を形成した後、包みに充填した。内容物の最終重量は、1gにした。
【0122】
製剤2:化粧料組成物の製造
本製剤例に使用された狼毒抽出物は、幹のエタノール抽出物である。
【0123】
1.柔軟化粧水(スキンローション)の製造
【0124】
【表7】
2.栄養化粧水(ミルクローション)の製造
【0125】
【表8】
3.栄養クリームの製造
【0126】
【表9】
4.マッサージクリームの製造
【0127】
【表10】
5.パックの製造
【0128】
【表11】
6.軟膏の製造
【0129】
【表12】