【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の範囲内で、SGLT2 阻害薬の投与が糖尿病の動物で勃起応答を改善することが今わかった。血糖調節を改善するその効果の他に、SGLT2 阻害薬は診療妥当性の更なる有利な性質、例えば、インスリン非依存性メカニズム、体重減効果及び血圧の低下効果を有する。それ故、SGLT2 阻害薬の投与の観察された勃起促進効果が勃起機能不全を患っている糖尿病の患者に高度に有益な治療選択肢になり得る。
それ故、本発明の第一の局面において、本発明は患者が勃起機能不全と診断された男性患者であることを特徴とする前糖尿病、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病又は代謝症候群と診断された患者で血糖調節を改善するための方法を提供し、この方法では、SGLT2 阻害薬が患者に投与される。
別の局面によれば、本発明はSGLT2 阻害薬が患者に投与されることを特徴とする前糖尿病、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病又は代謝症候群と診断された男性患者で勃起機能不全を治療するための方法を提供する。
SGLT2 阻害薬の投与の観察された勃起促進効果は患者における勃起機能不全の治療を支持又は改善し得る。
それ故、別の局面によれば、本発明は勃起機能不全の治療に加えて、SGLT2 阻害薬を患者に投与することを特徴とする前糖尿病、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病又は代謝症候群と診断された男性患者で勃起機能不全の治療を改善するための方法を提供する。
勃起機能不全の既知の治療として、経口PDE5阻害薬、又は局所、即ち、陰茎海綿体内、尿道内もしくはあらゆるその他の陰茎経路のアルプロスタジルからなる群から選ばれた化合物の投与が挙げられる。SGLT2 阻害薬との組み合わせが有益であり得る。
それ故、別の局面によれば、本発明はSGLT2 阻害薬とPDE5阻害薬又はアルプロスタジルからなる群から選ばれた一種以上の化合物とを含む医薬組成物を提供する。
本発明の別の局面によれば、先に、また後に記載される治療方法のための薬物の製造のためのSGLT2 阻害薬の使用が提供される。
本発明の別の局面によれば、先に、また後に記載される治療方法における使用のためのSGLT2 阻害薬が提供される。
本発明の別の局面によれば、先に、また後に記載される治療方法のための薬物の製造のための本発明の医薬組成物の使用が提供される。
本発明の別の局面によれば、先に、また後に記載される治療方法における使用のための本発明の医薬組成物が提供される。
【0005】
定義
本発明の医薬組成物の“活性成分”という用語は本発明のSGLT2 阻害薬を意味する。“活性成分”はまた本明細書で“活性物質”と時折称される。
ヒト患者の“体格指数”又は”BMI“という用語は身長(メートル)の自乗により割られた体重(キログラム)と定義され、その結果、BMI はkg/m
2 の単位を有する。
“勃起機能不全”という用語は満足な性行為に充分な陰茎勃起を得、又は維持することの持続性不能と定義される。
“正常血糖”という用語は被験者が70 mg/dL (3.89ミリモル/L) より大きく、かつ100 mg/dL (5.6ミリモル/L) 未満の正常な範囲内の空腹時血液グルコース濃度を有する状態と定義される。“空腹時”という用語は医療用語として通常の意味を有する。
“高血糖”という用語は被験者が100 mg/dL (5.6ミリモル/L) より大きい、正常な範囲より上の空腹時血液グルコース濃度を有する症状と定義される。“空腹時”という用語は医療用語として通常の意味を有する。
“低血糖”という用語は被験者が正常な範囲より下、特に70 mg/dL (3.89ミリモル/L) より下の血液グルコース濃度を有する症状と定義される。
“食後の高血糖”という用語は被験者が200 mg/dL (11.11ミリモル/L) より大きい食後2時間の血液グルコース又は血清グルコース濃度を有する症状と定義される。
“空腹時血糖異常”即ち”IFG“という用語は被験者が100 〜125 mg/dl (即ち、5.6 〜6.9 ミリモル/l) 、特に110 mg/dLより大きく、かつ126 mg/dI (7.00 ミリモル/L) 未満の範囲の空腹時血液グルコース濃度又は空腹時血清グルコース濃度を有する症状と定義される。“正常な空腹時グルコース”を有する被験者は100 mg/dl より小さく、即ち、5.6 ミリモル/lより小さい空腹時グルコース濃度を有する。
“耐糖能異常”即ち“IGT”という用語は被験者が140 mg/dI (7.78 ミリモル/L) より大きく、かつ200 mg/dL (11.11 ミリモル/L)未満の食後2時間の血液グルコース又は血清グルコース濃度を有する症状と定義される。耐糖能異常、即ち食後2時間の血液グルコース又は血清グルコース濃度は空腹後にグルコース75g を摂取した2時間後の血漿1dL当りのグルコースのmg数で血糖レベルとして測定し得る。“正常な耐糖能”を有する被験者は140 mg/dI (7.78 ミリモル/L)より小さい食後2時間の血液グルコース又は血清グルコース濃度を有する。
“高インスリン血症”という用語は正常血糖を有し、又は有しないで、インスリン耐性を有する被験者が、1.0 未満(男性につき)又は0.8 未満(女性につき)のウェスト対ヒップ比を有する、インスリン耐性を有しない正常な、やせた個体のそれよりも上に上昇された空腹時又は食後の血清又は血漿インスリン濃度を有する症状と定義される。
【0006】
“インスリン感作”、“インスリン耐性改善”又は“インスリン耐性低下”という用語は同義であり、互換可能に使用される。
“インスリン耐性”という用語はグルコース負荷に対する正常な応答を超える循環インスリンレベルが正常血糖状態を維持するのに必要とされる状態と定義される(Ford ESら, JAMA. (2002) 287:356-9)。インスリン耐性の測定方法は正常血糖−高インスリン血クランプ試験である。インスリン対グルコースの比が組み合わされたインスリン-グルコース注入技術の範囲内で測定される。グルコース吸収が調べられたバックグラウンド集団の25%より下である場合に、インスリン耐性があるとわかる (WHO 定義)。クランプ試験よりもかなり労力の少ないのが所謂最小モデルであり、この場合、静脈内耐糖能試験中に、血液中のインスリン濃度及びグルコース濃度が一定の時間間隔で測定され、これらからインスリン耐性が計算される。この方法では、肝臓インスリン耐性と末梢インスリン耐性を区別することができない。
【0007】
更に、インスリン耐性、治療に対するインスリン耐性の患者の応答、インスリン感受性及び高インスリン血は“インスリン耐性についてのホメオスタシスモデル分析 (HOMA-IR)”スコア、インスリン耐性の信頼できるインジケーターを分析することにより定量されてもよい (Katsuki Aら著, Diabetes Care 2001; 24: 362-5)。更に、インスリン感受性についてのHOMA-インデックス (Matthews ら著, Diabetologia 1985, 28: 412-19)、無傷のプロインスリン対インスリンの比 (Forst ら著, Diabetes 2003, 52(Suppl.1): A459) の測定方法及び正常血糖クランプ研究が参考にされる。加えて、血漿アジポネクチンレベルがインスリン感受性の潜在的な代用物として監視し得る。ホメオスタシス分析モデル (HOMA)-IR スコアによるインスリン耐性の推定が下記の式で計算される (Galvin Pら著, Diabet Med 1992;9:921-8)。
HOMA-IR = [空腹時血清インスリン (μU/mL)] x [空腹時血漿グルコース(ミリモル/L)/22.5]
インスリン耐性はこれらの個体でHOMA-IR スコアを計算することにより確かめられる。本発明の目的のために、インスリン耐性は個体が4.0 より大きいHOMA-IR スコア又は研究所が行なうグルコースアッセイ及びインスリンアッセイについて特定された正常な上限より上のHOMA-IR スコアを有する臨床的症状と定義される。
一般に、その他のパラメーターがインスリン耐性を分析するために毎日の臨床慣例で使用される。例えば、患者のトリグリセリド濃度が使用されることが好ましい。何とならば、増大されたトリグリセリドレベルがインスリン耐性の存在と有意に相関関係があるからである。
おそらくインスリン耐性を有する個体は下記の属性の二つ以上を有するものである:1)過剰体重又は肥満、2)高血圧、3)高脂血症、4)IGTもしくはIFG又は2型糖尿病の診断に関して一つ以上の第一級。
【0008】
IGTもしくはIFG又は2型糖尿病の発生についての素質を有する患者は高インスリン血とともに正常血糖を有するものであり、定義により、インスリン耐性である。インスリン耐性を有する典型的な患者は通常過剰体重又は肥満である。インスリン耐性が検出し得る場合、これは前糖尿病の存在の特に強い指示である。こうして、グルコースホメオスタシスを維持するために、ヒトはこれが臨床症候を生じないで、健康なヒトの2-3 倍多くのインスリンを必要とするかもしれない。
“過剰体重”という用語は個体が25 kg/m
2 より大きく、かつ30 kg/m
2 未満のBMI を有する症状と定義される。“過剰体重”及び“前肥満”という用語は互換可能に使用される。
“肥満”又は“肥満であること”等という用語は個体が30 kg/m
2 以上のBMI を有する症状と定義される。WHO 定義によれば、肥満という用語は以下のようにカテゴリー化されてもよい:“クラスI肥満”という用語はBMIが30 kg/m
2 以上であるが、35 kg/m
2より低い症状であり、“クラスII肥満”という用語はBMIが35 kg/m
2以上であるが、40kg/m
2 より低い症状であり、“クラスIII 肥満”という用語はBMIが40 kg/m
2以上である症状である。
指示肥満として、特に外因性肥満、高インスリン性肥満、形質増殖性肥満、下垂体性肥満、形質低形成性肥満、甲状腺機能低下性肥満、視床下部性肥満、症候性肥満、小児肥満、上体肥満、食事性肥満、性腺機能減退性肥満、中心性肥満、内臓肥満、腹部肥満が挙げられる。
“PDE5阻害薬”という用語はホスホジエステラーゼ型5阻害薬と定義される。PDE5阻害薬は陰茎の海綿体に供給する血管を内張りする平滑筋細胞中の環状GMPについてのcGMP特異性ホスホジエステラーゼ型5の分解作用を遮断する。PDE5阻害薬はとりわけ勃起機能不全の治療に使用される。糖尿病集団では、PDE5阻害薬による治療試験における応答障害率が観察される (Hatzichristou DG著Sildenafil citrate: lessons learned from 3 years of clinical experience.Int J Impotence Res 2002;14:S43-S51)。本発明の範囲において、“PDE5阻害薬による治療に不充分な応答者”及び“PDE5阻害薬による治療の非応答者”という用語は要求時又は毎日のPDE5阻害薬の投与にもかかわらず勃起機能不全の治療の充分な結果を有しない患者と理解されるべきである。
既知のPDE5阻害薬として、化合物アバナフィル、ロデナフィル、ミロデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル及びベンズアミドナフィル又はその合成誘導体が挙げられる。前記薬物はそれらの医薬上許される塩又はそれらの水和物もしくは溶媒和物を含む。
【0009】
本発明の範囲内の“SGLT2 阻害薬”という用語はナトリウム−グルコース輸送体2 (SGLT2)、特にヒトSGLT2 について抑制効果を示す化合物、特にグルコピラノシル誘導体、即ち、グルコピラノシル部分を有する化合物に関する。IC
50として測定されるhSGLT2についての抑制効果は好ましくは1000 nM より下、更に好ましくは100 nMより下、最も好ましくは50 nM より下である。SGLT2 阻害薬のIC
50値は通常0.01 nM より上、又は更には0.1 nM以上である。hSGLT2についての抑制効果は文献で知られた方法、特に出願WO 2005/092877又はWO 2007/093610 (23/24 頁) (これらは参考として本明細書にそのまま含まれる)に記載されたような方法により測定し得る。“SGLT2 阻薬薬”という用語はまたそれぞれの結晶性形態を含む、それらのあらゆる医薬上許される塩、それらの水和物及び溶媒和物を含む。SGLT2 阻害薬の例はダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、イプラグリフロジン、ルセオグリフロジン、ソタグリフロジン、トフォグリフロジン、セルグリフロジン及びレモグリフロジンであり、これらのプロドラッグ、医薬上許される塩、水和物及び溶媒和物を含む。これらのプロドラッグは、例えば、レモグリフロジンエタボネート及びセルグリフロジンエタボネートである。
“内臓肥満”という用語は男性で1.0 以上、また女性で0.8 以上のウェスト対ヒップ比が測定される症状と定義される。それはインスリン耐性及び前糖尿病の発生のリスクを特定する。
“腹部肥満”という用語はウェスト周囲が男性で40インチ即ち102 cmより大きく、また女性で35インチ即ち94 cm より大きい症状と通常定義される。日本民族又は日本人患者に関して、腹部肥満は男性で85 cm 以上、また女性で90 cm 以上のウェスト周囲と定義されるかもしれない(例えば、日本における代謝症候群の診断に関する調査委員会を参照のこと)。
【0010】
“前糖尿病”は正常な耐糖能 (NGT)と顕在的2型真性糖尿病 (T2DM) (また、中間高血糖と称される)の間の中間段階を表す一般用語である。このようなものとして、それは個体の三つのグループ、耐糖能異常(IGT)単独を有するもの、空腹時グルコース異常(IFG)単独を有するもの又はIGTとIFGの両方を有するものに相当する。IGT及びIFGは通常特有の病態生理学的病因を有するが、また両方の特徴を有する混合症状が患者に存在し得る。それ故、本発明の状況において、“前糖尿病”を有すると診断される患者はIGTと診断される個体もしくはIFGと診断される個体又はIGTとIFGの両方と診断される個体である。米国糖尿病協会 (ADA)による定義に従って、かつ本発明の状況において、“前糖尿病”を有すると診断される患者は
a) 空腹時血漿グルコース (FPG)濃度<100 mg/dL[1 mg/dL=0.05555 ミリモル/L]及び75-g 経口耐糖能試験(OGTT)により測定して、≧140 mg/dL〜<200 mg/dLの範囲の2時間後の血漿グルコース(PG)濃度(即ち、IGT);又は
b) ≧100 mg/dL〜<126 mg/dL の空腹時血漿グルコース (FPG)濃度及び75-g 経口耐糖能試験(OGTT)により測定して、<140 mg/dLの2時間後の血漿グルコース(PG)濃度(即ち、IFG);又は
c) ≧100 mg/dL 〜<126 mg/dLの空腹時血漿グルコース (FPG)濃度及び75-g 経口耐糖能試験(OGTT)により測定して、≧140 mg/dL〜<200 mg/dLの範囲の2時間後の血漿グルコース(PG)濃度(即ち、IGTとIFGの両方)
を有する個体である。
“前糖尿病”を有する患者は2型糖尿病の発生の素質があるとされる個体である。前糖尿病は100 mg/dL以上の高い正常範囲内の空腹時血液グルコースを有する個体を含むためにIGTの定義を拡張する(J. B. Meigs ら著. Diabetes 2003; 52:1475-1484)。前糖尿病を重大な健康脅威と同定するための科学的かつ医療の基礎が米国糖尿病協会及び国立糖尿病学会により共同発行された“2型糖尿病の予防又は遅延”と題するPosition Statement 並びにDigestive and Kidney Diseases (Diabetes Care 2002; 25:742-749) に立案されている。
【0011】
膵臓ベータ細胞の機能を調べる方法はインスリン感受性、高インスリン血又はインスリン耐性に関する上記方法と同様である。ベータ細胞機能の改善は、例えば、ベータ細胞機能についてのHOMAインデックス (Matthews ら著, Diabetologia 1985, 28: 412-19)、無傷のプロインスリン対インスリンの比 (Forst ら著, Diabetes 2003, 52(Suppl.1): A459)、経口耐糖能試験もしくは食負荷試験後のインスリン/C-ペプチド分泌を測定することにより、又は頻繁にサンプリングされる静脈内耐糖能試験後に高血糖クランプ研究及び/又は最小モデリング (Stumvoll ら著, Eur J Clin Invest 2001, 31: 380-81)を使用することにより測定し得る。
“2型糖尿病”又は“T2DM”という用語は被験者が125 mg/dL (6.94 ミリモル/L) より大きい空腹時血液グルコース又は血清グルコース濃度を有する症状と定義される。血液グルコース値の測定はルーチン医療分析における標準の操作である。耐糖能試験が行なわれる場合、糖尿病の血糖レベルはグルコース75g が空の胃で摂取された2時間後に血漿1dL 当りグルコース200mg (11.1 ミリモル/l) を超えるであろう。耐糖能試験では、グルコース75g が10-12時間の空腹後に試験される患者に経口投与され、血糖レベルがグルコース摂取の直前及びその摂取の1時間後及び2時間後に記録される。健康な被験者では、グルコース摂取前の血糖レベルが血漿1dL 当り60〜110 mgであり、グルコース摂取1時間後に1dL 当り200 mg未満であり、また2時間後に1dL 当り140 mg未満であろう。2時間後に、その値が140 〜200 mgである場合、これが耐糖能異常と見なされる。
“後期2型真性糖尿病”という用語は二次薬物失敗、インスリン治療についての指示並びに微小血管及び大血管合併症、例えば、糖尿病性腎症、又は心臓冠動脈疾患(CHD) への進行を有する患者を含む。
“HbA1c”という用語はヘモグロビンB鎖の非酵素的グリケーションの産物を表す。その測定は当業者に公知である。真性糖尿病の治療のモニタリングでは、HbA1c 値が格別重要である。その生成は実質的に血糖レベル及び赤血球の寿命に依存するので、“血糖記憶”の意味のHbA1c が先の4-6 週の平均血糖レベルを反映する。HbA1c 値が集中糖尿病治療により一貫して良く調節される(すなわち、サンプル中の全ヘモグロビンの6.5%未満)糖尿病患者は、糖尿病性微小血管障害に対し有意に良く保護されている。例えば、メトホルミンそれ自体は1.0-1.5 %のオーダの糖尿病のHbA1c 値の平均の改善を達成する。HbA1C 値のこの低下は全ての糖尿病でHbA1c 6.5 %未満、好ましくは6%未満の所望の目標範囲を達成するのに充分ではない。
【0012】
本発明の範囲内の“不十分な血糖調節”又は“不適当な血糖調節”という用語は患者が6.5 %より上、特に7.0 %より上、更に好ましくは7.5 %より上、特に8%より上のHbA1c 値を示す症状を意味する。
“代謝症候群”(また“症候群X”(代謝障害の状況で使用される場合)と称され、また“代謝異常症候群”と称される)はインスリン耐性である基本的な特徴と複合の症候群である (Laaksonen DEら著, Am J Epidemiol 2002;156:1070-7) 。ATP III/NCEP ガイドライン(Executive Summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III) JAMA: Journal of the American Medical Association (2001) 285:2486-2497) によれば、代謝症候群の診断は下記のリスク因子の三つ以上が存在する場合になされる。
1.男性で40インチ即ち102 cmより大きく、また女性で35インチ即ち94 cm より大きいウェスト周囲と定義され、又は日本民族もしくは日本人の患者に関して男性で85 cm 以上、また女性で90 cm 以上のウェスト周囲と定義される、腹部肥満;
2. 150 mg/dL以上のトリグリセリド
3.男性で< 40 mg/dL 未満のHDL-コレステロール
4. 130/85 mm Hg 以上の血圧(SBP ≧ 130 又はDBP ≧ 85)
5. 110 mg/dL以上の空腹時血液グルコース
NCEP定義が実証されていた (Laaksonen DEら著, Am J Epidemiol. (2002) 156:1070-7) 。血液中のトリグリセリド及びHDL コレステロールがまた医療分析における標準方法により測定でき、例えば、Thomas L (編集者): "Labor und Diagnose“, TH-Books Verlagsgesellschaft mbH, Frankfurt/Main, 2000に記載されている。
普通に使用される定義によれば、高血圧は収縮期血圧 (SBP)が140 mm Hgの値を超え、また拡張期血圧 (DBP)が90 mm Hg の値を超える場合に診断される。患者が顕著な糖尿病を患っている場合、収縮期血圧が130 mm Hgより下のレベルに低下され、拡張期血圧が80 mm Hg より下に低下されることが現在推奨される。
“エンパグリフロジン”という用語はWO 2005/092877に記載された下記の式のSGLT2 阻害薬1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース -1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)-ベンジル]-ベンゼンを表す。
【0013】
【化1】
【0014】
合成の方法が文献、例えば、WO 06/120208及びWO 2011/039108に記載されている。本発明によれば、エンパグリフロジンの定義はまたその水和物、溶媒和物及びこれらの多形形態、並びにこれらのプロドラッグを含むことが理解されるべきである。エンパグリフロジンの有利な結晶性形態がWO2006/117359 及びWO 2011/039107(これらは本明細書にそのまま含まれる)に記載されている。この結晶性形態はSGLT2 阻害薬の良好な生物利用能を可能にする良好な溶解性特性を有する。更に、結晶性形態は物理化学的に安定であり、こうして医薬組成物の良好な貯蔵寿命安定性を与える。好ましい医薬組成物、例えば、経口投与のための固体製剤、例えば、錠剤がWO 2010/092126(これが本明細書にそのまま含まれる)に記載されている。
“措置”及び“措置すること”という用語は特に顕著な形態で、前記症状を既に発生した患者の治療措置を含む。治療措置は特別な指示の症候を軽減するための対症措置又は指示の症状を反転もしくは部分反転し、又は疾患の進行を停止もしくは遅延するための原因措置であってもよい。こうして、本発明の組成物及び方法は、例えば、時間の或る期間にわたる治療措置としてだけでなく、慢性治療のために使用し得る。措置という用語はまた予防措置、及び予防をまた含む。これらの用語は互換可能に使用され、前記症状を発生する恐れのある患者の措置を含み、こうして前記恐れを軽減する。
“錠剤”という用語は被覆物のない錠剤及び一種以上の被覆物を含む錠剤を含む。更に、“錠剤”という用語は一層、2層、3層又は更にはそれより多い層を有する錠剤及びプレス被覆された錠剤を含み、この場合、前記型の錠剤のそれぞれが被覆物を有さなくてもよく、又は一種以上の被覆物を有してもよい。“錠剤”という用語はまたミニ錠剤、融解錠剤、咀嚼性錠剤、発泡性錠剤及び経口崩壊性錠剤を含む。
“薬局方”という用語は標準の薬局方、例えば、“第二補遺中のUSP 31-NF 26”(米国薬局方の慣例)又は“欧州薬局方 6.3”(薬物の品質及び健康ケアーについての欧州理事会、2000-2009 )を表す。