特許第6561179号(P6561179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561179分散的通電抽出を使用した解析的分析のための迅速な試料調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561179
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】分散的通電抽出を使用した解析的分析のための迅速な試料調製
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20190805BHJP
   B01D 11/02 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   G01N1/10 F
   B01D11/02 A
   G01N1/10 E
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-128266(P2018-128266)
(22)【出願日】2018年7月5日
(65)【公開番号】特開2019-15727(P2019-15727A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年8月10日
(31)【優先権主張番号】15/644,920
(32)【優先日】2017年7月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500119569
【氏名又は名称】シーイーエム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・コリンズ,シニア
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ジェイ・ランバート
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エヌ・ベアード
(72)【発明者】
【氏名】ポール・シー・エリオット
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05601707(US,A)
【文献】 国際公開第2008/101670(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00932355(EP,A1)
【文献】 特開2005−214785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/93
G01N 1/10− 1/44
B01D 15/00−15/42
B01J 20/00−20/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出に基づく試料調製方法であって、
液体抽出溶媒及び分析物を含有する試料マトリックスを耐圧反応チャンバによって包囲された熱伝導性試料カップ内に設置することであって、前記熱伝導性試料カップが1つの開放濾過端と前記開放濾過端の反対側に口部とを有する、前記設置することと、
液体抽出溶媒を前記試料カップの内部及び前記試料カップの外部の前記反応チャンバの両方に添加することと、
前記カップの口部の密閉カバーと、前記反応チャンバ内の反対側の前記開放濾過端側に配置されている弁との間に前記試料カップを密閉することをさらに含み、これにより、加熱ステップが、前体抽出溶媒の蒸気圧を周囲温度及び圧力での前記溶媒の蒸気圧を超えて上昇させるようになることと、
温度が大気圧を超える気圧を発生させ、上昇した温度とともに、前記分析物を駆動して実質的に前記試料マトリックスから前記液体抽出溶媒内に入らせるまで、前記試料カップの外部の前記反応チャンバ内の前記液体抽出溶媒を加熱して、次いで、前記試料カップ、前記試料マトリックス、及び前記液体抽出溶媒を加熱することと、
体溶媒抽出物を大気圧で前記試料カップから冷却管内に放出することであって、前記冷却管が、前記液体溶媒抽出物を周囲温度または周囲温度近くまで実質的に冷却するのに十分な長さを有する、前記放出することと、を含む、前記抽出に基づく試料調製方法。
【請求項2】
前記液体抽出溶媒を前記試料カップ内に前記設置するステップが、前記試料カップの上部、前記試料カップの底部、ならびに前記試料カップの上部及び底部からなる群から選択される位置から行われる、請求項1に記載の抽出方法。
【請求項3】
記開放濾過端がフィルタまたは濾過媒体を支持し、前記液体前記溶媒抽出物が前記試料カップから排出することを可能にする、請求項1または2に記載の抽出方法。
【請求項4】
前記試料カップの底部を通して前記試料マトリックスに不活性のガスを気泡化することによって、前記液体抽出溶媒及び前記試料マトリックスを分散させることをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抽出方法。
【請求項5】
前記分散ステップが、前記反応チャンバの前記加熱及び前記加圧の前に行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記加圧加熱ステップ中に超音波撹拌を適用することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抽出方法。
【請求項7】
前記反応チャンバを約90℃〜180℃の温度まで伝導的に加熱することと、約50〜250psi(約345kPa〜約1724kPa)の結果として生じる圧力を発生させることと、をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記液体抽出溶媒が、水、弱酸、弱塩基、酢酸エチル、メチル第三ブチルエーテル(「MTBE」)、塩化メチレン、ヘキサン、アセトン、ヘキサン2−プロパノール、シクロヘキサン、アセトニトリル、メタノール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、本出願と同時に出願された出願第______号、Instrument for Analytical Sample Preparation、及び本出願と同時に出願された出願第______号、Rapid Energized Dispersive Solid Phase Extraction(SPE)for Analytical Analysisに関連する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、分析化学に関し、具体的には、分子分析のための試料調製に関する。
【0003】
任意の生成物の分子分析(試料中の1つ以上の化合物を特定するタスク)を行うために、生成物の試料は、それがクロマトグラフィー、分光法、質量分析、及び/または核磁気共鳴器具使用によって容易に分析され得るような形態でなければならない。
【0004】
これらの分析器具が実質的に純粋な単離された分析物を必要とするため、一般に「試料調製」と称されるいくつかの中間ステップが行われて、目的とする化合物を、それらが見つけられ得る試料マトリックスから単離し、器具使用によって分析のためにそれらを調製しなければならない。
【0005】
試料中の1つ以上の化合物を特定するタスクは、試料調製に関連する極めてより大きい一連の可能性及び課題を提示する。「天然に存在する」化合物(植物または動物によって産生されるもの)の数は非常に多く、現代の有機及び無機合成の能力により、同様の数の合成化合物が比喩的にまたは逐語的に生成されている。
【0006】
目的とする化合物の特定または量的測定が産業プロセスに関連するため、かつ廃水、土壌、及び空気中の汚染物質についての環境試験のため、目的とする化合物の特定または量的測定に多大な関心が集まっている。
【0007】
小群の認識可能な代表的な試料でさえも、食品中の農薬、食品中の他の合成化学物質(抗生物質、ホルモン、ステロイド)、土壌中の合成組成物(ベンゼン、トルエン、精製炭化水素)、及び日用品中の望ましくない組成物(例えば、ポリカーボネートボトル及び他のプラスチック食品包装中のビスフェノール−A(「BPA」))を含むであろう。
【0008】
一般に、抽出、すなわち、試料を溶媒と混合することによって目的とする1つ以上の化合物を試料から取り出すこと(溶媒中で所望の化合物(複数可)が試料から抽出されて、それが分析的技法によって測定され得るようになる)は、試料調製の主な形態になっている。
【0009】
数世代にわたって(かつ現在に至るまで)、抽出形態での試料調製は、19世紀に発明された十分に理解されているソックスレー法によって行われている。ソックスレー技法では、溶媒の単一部分は、抽出が完了するまで試料マトリックスを通って繰り返し循環する。ソックスレー法が有利である限り、ソックスレー法は、沸騰フラスコが加熱され、コンデンサが冷却される限り、抽出が独力で継続することを可能にする。
【0010】
この抽出方法は、目的とする化合物を完全に抽出するのに何時間もかかる場合がある。可燃性溶媒、有害廃棄物、及び割れやすいガラス製品の安全性に対する他の懸念は、この方法の大きな不利点である。
【0011】
別の一般に知られている抽出方法は、超音波処理、すなわち、撹拌をもたらす超音波(20kHz超)での液体試料の照射である。超音波処理が抽出プロセスを加速する利点を有するが、不利点は、それが労働集約型であり、手動プロセスであり、大量の溶媒を使用することである。
【0012】
より近年では、分析規模のマイクロ波支援抽出(MAE)が利用されている。MAEは、分析物を試料マトリックスから溶媒に分配するために、マイクロ波エネルギーを使用して試料と接触している溶媒を加熱する。MAEの主な利点は、試料溶媒混合物を迅速に加熱する能力である。閉鎖加圧槽を使用する場合、抽出は、目的とする化合物の試料マトリックスからの抽出を加速する高温で行われ得る。MAEは、抽出プロセスを加速するが、不利点も有する。マイクロ波加熱プロセスでは、典型的には、双極子の逆転ならびに溶質及び溶媒中に存在する荷電イオンの変位によって双極子回転及びイオン伝導をもたらし、非極性溶媒の使用を制限するために、極性溶媒が必要とされている。MAEは、抽出物を濾過する手段を提供しない高価な高圧槽を使用し、それらは、圧力が解放され得る前に冷却されなければならない。
【0013】
1990年代に、分析物を抽出するための自動装置が開発された。これらの装置は、高温及び圧力下で加圧セル内に溶媒抽出を組み込んでおり、「加圧流体抽出」(「PFE」)または「加速溶媒抽出」(「ASE」)」と称される。PFEは、溶媒が高い抽出特性を呈する高温であることを除いて、ソックスレー抽出に類似していることが示されている。この手技は、Dionexによって最初に開発された(Richter DE et al.,Anal Chem 1996,68,1033)。1つのかかるPFE自動抽出システム(Dionex ASE)が市販されている。
【0014】
PFEは、当初は、土壌中の環境汚染物質(EPA法3545、除草剤、農薬、炭化水素)、堆積物、及び動物組織のために使用されていたが、食品、医薬品、及び他の生体試料での使用に拡大している。
【0015】
PFEは、効率的な抽出を提供するが、分析のために試料調製に必要な多くのステップに関連する主な障害を依然として打開していない。PFEは、複合成分セル及び多くのステップを利用する。セルには試料及び他の充填材料が密に充填されており、セル内のいずれの空隙領域も排除し、分離を促進し、チャネリングを回避する。分析のためにセルを調製するのに、典型的には、15分かかり得る。セルは、最大1500psiの圧力で予加圧され、200℃まで加熱された後に、溶媒が添加される抽出は、クロマトグラフ原理に基づいており、高温の溶媒をカラムに通過させる。サイクル時間は、最大20分かかり得、高圧の要件により、費用及び維持に関して二次的不利点がもたらされる。
【0016】
より新たなPSEまたはASE技法は、これらの問題のうちのいくつかに対処するよう試みているが、セルが密に充填されることを依然として要求し、複雑性及び各抽出に必要な全時間を増す。
【0017】
試料調製は、長年にわたって発展しているが、それにもかかわらず、分子分析において主な障害を残している。したがって、ソックスレー、超音波処理、MAE及びPFE技法が各々利点を有するが、これらは各々、比較的多大な時間を必要とするままである。結果として、必要または所望の情報を提供するために複数の試料が必要または所望される場合、任意の所与の抽出に基づく分子調製ステップを行うのに必要な時間は、任意の所与の時間内に調製され得る試料の数を減らし、それ故に、任意の所与の時間間隔内に入手可能な情報の量を減らす。測定が連続プロセスにおいて有用または必要である限り、これは、試料間での、または異常または厄介な結果が特定され得る前の、より長い隔たりを表す。
【0018】
要約すれば、現在の試料調製技法は、遅く、複雑であり、非効率的であり、多数の別個のステップを必要とし、過剰な溶媒を使用し、自動化が困難であり、高液体圧下で動作する。
【0019】
したがって、抽出に基づく試料調製は、分析技法における主な障害と認識され続けている。
【発明の概要】
【0020】
一態様では、本発明は、抽出溶媒及び分析物を含有する試料マトリックスが試料カップ内に設置され、撹拌され、加熱され、加圧され、その後、溶媒抽出物が冷却された後に、試料カップから排出された冷却抽出溶媒抽出物を分析のために収集することを含む、分子分析のために分析物を調製するための抽出方法である。
【0021】
別の態様では、本発明は、抽出溶媒及び分析物を含有する試料マトリックスを試料カップ内に設置するステップと、その後、試料カップ内の抽出溶媒及び試料マトリックスを撹拌し、加熱し、加圧して、分析物を加熱された試料マトリックスから加熱された抽出溶媒中に抽出するステップと、その後、排出された抽出溶媒抽出物が周囲温度に近づくか、またはそれに到達するまで、大気圧で加圧加熱抽出溶媒抽出物を大気圧で試料カップから排出するステップと、分析のために冷却抽出溶媒抽出物を収集するステップとを含む、分子分析のために分析物を調製するための抽出方法である。
【0022】
なお別の態様では、本発明は、抽出溶媒及び分析物を含有する試料マトリックスを試料カップ内に設置するステップを含む、抽出に基づく試料調製方法である。本方法は、試料カップ内の試料マトリックス及び抽出溶媒を撹拌しながら、温度が大気圧を超える気圧を発生させ、上昇した温度とともに、分析物を駆動して実質的に試料マトリックスから抽出溶媒内に入らせるまで、耐圧反応チャンバ内の試料カップ、試料マトリックス、及び抽出溶媒を加熱するステップと、溶媒抽出物を大気圧で試料カップから冷却コイル内に放出するステップであって、冷却コイルが、溶媒抽出物を周囲温度または周囲温度近くまで実質的に冷却するのに十分な長さを有する、放出するステップとを含む。
【0023】
なお別の態様では、本発明は、1つ以上の分析物を含有する試料マトリックスを試料カップ内に設置するステップと、試料カップを耐圧反応チャンバ内に位置付けるステップと、溶媒を試料カップ内に分注するステップと、反応チャンバ内の試料カップ内で溶媒及び試料マトリックスを分散させるステップと、反応チャンバ内の試料カップ内の試料マトリックス及び抽出溶媒を分注された溶媒が大気圧を超える気圧を発生させる温度まで加熱するステップと、抽出溶媒抽出物を試料カップから冷却コイル内に放出するステップであって、冷却コイルが、コイル内で溶媒抽出物の温度を周囲温度または周囲温度近くまで低下させるのに十分な長さを有する、放出するステップと、濾過された溶媒抽出物をコイルから収集するステップとを含む、解析的分析のために試料を調製するための抽出方法である。
【0024】
なお別の態様では、本発明は、抽出溶媒及び分析物を含有する試料マトリックスを耐圧反応チャンバによって包囲された熱伝導性試料カップ内に設置するステップであって、熱伝導性試料カップが1つの開放濾過端を有する、設置するステップと、抽出溶媒を試料カップの内部及び試料カップの外部の反応チャンバの両方に添加するステップと、温度が大気圧を超える気圧を発生させ、上昇した温度とともに、分析物を駆動して実質的に試料マトリックスから抽出溶媒内に入らせるまで、試料カップの外部の反応チャンバ内の溶媒を加熱して、次いで、試料カップ、試料マトリックス、及び抽出溶媒を加熱するステップと、溶媒抽出物を大気圧で試料カップから冷却管内に放出するステップであって、冷却管が、溶媒抽出物を周囲温度または周囲温度近くまで実質的に冷却するのに十分な長さを有する、放出するステップとを含む、抽出に基づく試料調製方法である。
【0025】
なお別の態様では、本発明は、試料カップ内の抽出溶媒と分析物を含有する試料マトリックスとの加熱加圧撹拌混合物である。
【0026】
本発明の前述及び他の目的及び利点、ならびにそれらが達成される様式は、添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態に基づいてより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の方法を行うために使用された要素のうちのいくつかの概略図である。
図2】実施例1に基づくBNA CMR抽出の例示のフルスキャンクロマトグラムである。
図3】ASE抽出と比較した本発明による実施例1の抽出のオーバーレイである。
図4】本発明を使用した実施例2のポリエチレンCRM抽出の試料フルスキャンクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本方法を説明するために、いくつかの用語が本明細書で使用される。
【0029】
「溶媒」という用語は、その十分に理解されている化学的意味で使用され、例えば、「別の物質(溶質)を分解して、分子またはイオンサイズレベルで均一に分散した混合物(溶液)を形成することができる物質」である。「有機」という形容詞は、炭素と、酸素、硫黄、及び金属、ある場合には、ハロゲンとのある特定の小分子組み合わせ以外の「全ての炭素化合物を包含する」ように、その十分に理解されている意味で使用される。Lewis,HAWLEY’S CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY,15th Edition,2007,John Wiley & Sonsを参照されたい。
【0030】
「試料マトリックス」とは、分析物の存在及び任意にその量について試験される材料である。
【0031】
「分析物」とは、目的とする分子化合物である。本明細書で使用される場合、「分析物」は、複数の分析物が単一の試料内に存在する試料を含み得る。
【0032】
「溶媒抽出物」とは、抽出後の溶媒中の分析物の溶液である。
【0033】
「試料カップ」とは、試料マトリックス及び溶媒の容器である。
【0034】
「収集槽」とは、冷却後の溶媒抽出物を収集する容器である。
【0035】
第1の態様では、本発明は、分子分析のために試料を調製するための抽出方法である。本方法では、抽出溶媒及び試料マトリックスが試料カップ内に設置され、試料カップが耐圧加熱チャンバ内に位置付けられる。典型的な(限定されない)試料マトリックスとしては、食品、食品包装、及び土壌が挙げられる。
【0036】
当業者によって認識されるように(例えば、US EPA法3545)、試料は、試料マトリックスからの目的とする分析物の最適な再現可能な回収をもたらす溶媒系を使用して目的とする濃度で抽出されなければならない。抽出溶媒の選択は、目的とする分析物に依存し、全ての分析物に普遍的に適用可能な溶媒はない。
【0037】
分子分析のための典型的な(限定されない)固体−液体抽出溶媒としては、水、弱酸、弱塩基、アセトン、ヘキサン2−プロパノール、シクロヘキサン、ジクロロメタン、アセトニトリル、メタノール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
本明細書にさらに記載されるように、かつ理論に拘束されることなく、反応チャンバを加熱して、次いで、試料カップを加熱するステップが、溶媒及び試料の混合及び撹拌を助けるのに十分な予平衡温度勾配を作り出すように見える。いくつかの実施形態では、反応チャンバが予加圧されて(約25psiが十分であることが分かっている)、抽出を強化し、潜在的には、予平衡温度勾配及びその潜在的利益を強化する。
【0039】
本発明の方法では、試料マトリックスは、試料カップ内で緩く充填されていると説明される場合もある。「緩い」という用語が同様に相対的であるが、この用語は、拘束もしくは抑制するものがなく、かつ締結もしくは付着なしまたはそれから解放されたものとして、その通常の意味で、本明細書で使用される(Urdang,THE RANDOM HOUSE COLLEGE DICTIONARY,Random House Inc.(1972))。試料マトリックスが緩いため、上部、底部、またはこれらの両方からの溶媒の添加は、試料マトリックスを溶媒中に分散させる助けとなる。
【0040】
抽出溶媒及び試料マトリックスは、さもなければ試料マトリックス、分析物、または溶媒に不活性の撹拌ガス流を使用して、チャンバ内のカップ内でも混合され得る。抽出技術分野の技術者であれば、ガスが既知のパラメータに基づいて選択され得、ある場合には、圧縮空気が適切である一方で、他の場合では、窒素または水素(水素の可燃性特性に基づいて注意を払って)が最良であり得ることを認識する。他の場合では、希ガスのうちの1つ(例えば、ヘリウム、アルゴン)が最良であり得る。
【0041】
他の混合技法が使用され得る(例えば、磁気撹拌棒または他の機械デバイス)が、より複雑な器具使用を必要とする傾向がある。
【0042】
その後、試料マトリックス及び溶媒は、反応チャンバ内の試料カップ内で蒸発溶媒が大気圧を超える気圧を発生させる温度まで加熱される。90℃〜180℃の温度が例示であり(米国環境保護庁は、土壌の場合、120℃を提案している)、この温度で、典型的な有機抽出溶媒は、1平方インチ当たり50〜250ポンド(psi)の対応する圧力を発生させる。現在までの実験では、この温度に到達するまでの時間は約90秒であり、この時点で、抽出は実質的に完了する(抽出が平衡プロセスであることが理解される)。その後、溶媒からの蒸気により発生した圧力は、溶媒抽出物を試料カップから冷却コイル内に排出するために使用され、冷却コイルは、溶媒抽出物がコイル内にある間に抽出物の温度を周囲温度(例えば、25℃)まで低下させるのに十分な長さを有する。その後、溶媒抽出物がコイルから、典型的には、収集槽内に収集される。例示の実験では、約10フィートの長さを有する金属管類が約30秒の滞留時間を提供する傾向があり、これは、溶媒抽出物を周囲温度または周囲温度近くまで冷却するのに十分である。したがって、コイルは、典型的には、スペース節約目的のために使用されるが、コイルの形状は、必須ではなく任意である。
【0043】
試料マトリックス及び抽出溶媒は、本分野で典型的な量で添加され得る。例えば、固体マトリックスは、約5〜10グラム(g)の目的とする試料マトリックスを提供する様式で収集される。抽出溶媒の量は比例しており、典型的には、約30〜100ミリリットル(mL)である。
【0044】
図1は、本発明の方法ステップを行うための器具の基本的要素の概略図である。
【0045】
図1は、概略図との関連で本方法のいくつかの特徴部を図解する。図1は、耐圧反応チャンバ12によって包囲された熱伝導性耐圧試料カップ10を図解する。
【0046】
本発明との関連で、典型的な試料カップは、熱伝導性材料の円筒形態である。試料カップ10が反応チャンバ12の内部にあるため、試料カップ10は差圧をほとんどまたは全く受けず、それ故に、その質量は、熱伝達を促進するために最小限に抑えられ得る。本実施形態では、長さ約3.5インチ(8.9cm)及び直径約1.25インチ(3.2cm)であり、約0.1インチ(2.54mm)の壁厚を有するアルミニウム円筒が適切であることが分かっている。「熱伝導性(heat conductive)」または「熱伝導(thermally conductive)」という用語は、熱が比較的素早く通過する材料を表すためにそれらの十分に理解されている意味で使用される。その反対は、言うまでもなく、「絶縁」という用語であり、これは、熱がより緩徐に通過する材料を説明するものとして同様に十分に理解されている。これに基づいて、多くの金属及び合金は、かかる伝導性が大半の金属及び合金の顕著な特性のうちの1つであることを考慮して、槽に特に有用である。あるいは、多くのポリマー材料は、絶縁とみなされており、通常、本発明との関連であまり有用ではない。多くの金属及び合金の熱伝導性が公開され、広く普及しており、適切な金属または合金は、過度の実験を行うことなく当業者によって選択され得る。
【0047】
適切な試料カップは、一方の端に開放口部及び反対側の端にまたはその近くに部分的開放フロアを有するシリンダーである。(すなわち、カップ、その口部、または開放端の形状または位置)のわずかな変化は、言うまでもなく、本発明の予想範囲内である。部分的開放フロアは、フィルタまたは濾過媒体を支持することができ、溶媒抽出物が試料カップから排出することを可能にし得る。溶媒は、試料カップの上部から、試料カップの底部を通して、またはこれらの両方で、試料カップ内に分注され得る。
【0048】
抽出溶媒と分析物を含有する試料マトリックスとの組み合わせ(水平線11で概略的に図示される)は、1つの開放濾過端13を使用して試料カップ10内で維持される。濾過媒体は、14と指定される。
【0049】
図1は、追加の抽出溶媒が、任意に、点線15で示されるように、試料カップ10の外部の反応チャンバ12に添加されて、試料カップ10をジャケット被覆することができることも示す。クロージャ46は、試料カップ10を反応槽12内に密閉する。
【0050】
加熱器16は、温度が大気圧を超える気圧を発生させ、上昇した温度とともに、分析物を駆動して実質的に試料マトリックスから抽出溶媒に入らせるまで、試料カップ10の外部の反応チャンバ12内の溶媒15を加熱し、次いで、試料カップ10、試料マトリックス11、及び抽出溶媒を加熱する。
【0051】
その後、溶媒抽出物は、反応チャンバを開放端で大気圧に開放することによって(例えば、弁21を使用して)放出され、これにより、溶媒抽出物が、溶媒抽出物を周囲温度または周囲温度近くまで冷却するのに十分な長さを有する冷却管17に移動することができるようになり、冷却された溶媒抽出物が、分析に備えて、例えば、収集槽20内に収集されるようになり得る。
【0052】
分子分析のために試料を調製する際、試料マトリックスが試料カップ10内に設置され、次いで、熱伝導反応チャンバ12内に設置される。供給物22からの溶媒は、弁33、関連通路24及び25、ならびに送達ヘッド26を通って試料カップ10に(ひいては、試料マトリックスに)送達される。液体マトリックス試料は、シリンジポンプ27、30、及び弁33から送達され得る。加えて、溶媒は、弁33、ライン28、弁21、及びライン31を使用して、反応チャンバ12の底部に添加され得る。
【0053】
図1は、ガス撹拌が、弁42によって制御されるように、通路40及び41を使用して不活性ガスを供給物37から試料カップの底部またはその近くの位置まで送達することによって行われることも図解する。二次撹拌が必要とされる場合、典型的には圧電変換器である超音波発生器43等のデバイスを用いて行われ得る。
【0054】
弁21が大気圧に開放されているときに排出ステップが行われ、これにより、熱伝導チャンバ12内の加圧された溶媒蒸気が通路31を通して、その後、弁21を通して液体溶媒抽出物を押し出し、その後、冷却コイル17に入れる。冷却コイルは、収集管32によって収集槽20に接続される。
【0055】
さらに図1を参照して、かつ可能性の説明を完了するために、溶媒は、溶媒供給物22からライン24を通って回転弁30まで流れることができる。ライン47は、回転弁30を補助弁33に接続する。ライン28は、補助弁33をガス弁21に接続し、次いで、ライン31を使用して、溶媒を反応チャンバ12の底部に送達することができる。
【0056】
ライン48は、回転弁30をシリンジ40に接続し、これにより、供給物22からの液体が、供給物22からシリンジ40内に、その後、シリンジ40から試料カップ内に、かつライン35から25に、かつディスペンサーヘッド26を通って計量され得る。点線15は、溶媒を使用して試料カップ10をジャケット被覆したときの試料カップ10と反応チャンバ12との間の溶媒の位置を表す。
【0057】
ガス供給物37は、ライン50及び47を通して追加の圧力をヘッドスペースに供給することができ、これは、いくつかの他の品目へのガス流に加えて、弁32によって制御される。ライン51は、弁32を通気孔35に連結する。
【0058】
ガス圧力監視の一環として、ライン52は、弁32を圧力計23に接続し、圧力計23は、連通ライン53を通してプロセッサ38に配線される。プロセッサ38は、連通ライン54を使用して熱電対44にも接続され、これにより、様々な試料抽出物の温度と蒸気圧との監視された組み合わせを使用して、有用な標準化情報を築くことができるようになる。
【0059】
反応チャンバ12及び試料カップ10の底部に撹拌ガスを提供するために、ガス供給物37も、適切なラインまたは管184を通して弁21に接続される。
【0060】
圧力ヘッドシール46は、試料カップを反応チャンバ内に密閉する。ライン56は、溶媒を弁21からコイル17に排出し、ライン32は、コイル17から収集槽46に排出する。
【0061】
本方法の本質は、いくつかの追加の態様で表され得るようなものである。第2の態様では、それらのステップは、抽出溶媒及び分析物を含有する試料マトリックスを試料カップ内に設置することを含む。その後、試料マトリックス及び抽出溶媒が試料カップ内で撹拌され、加熱され、加圧されて、分析物を加熱された試料マトリックスから加熱された抽出溶媒内に抽出する。その後、加圧加熱抽出溶媒抽出物は、排出された抽出溶媒抽出物が周囲温度に近づくか、またはそれに到達するまで、大気圧で試料カップから冷却コイルを通して排出される。その後、冷却された抽出溶媒抽出物が分析のために収集される。
【0062】
図1では、溶媒11の上部の試料カップ10内のヘッドスペースは、弁32及びライン47を使用してガス源37から加圧され得る。
【0063】
明らかに、広範囲にわたる選択が当業者に利用可能であり、本発明が他の方法と同じ溶媒及び固定相を使用するため、適切な選択が過度の実験を行うことなく行われ得る。
【0064】
第2の撹拌ステップが必要とされる場合、典型的には超音波振動を使用して、加熱ステップ及び加圧ステップの前に、またはそれらと同時に行われ得る。あるいは(または加えて)、撹拌は、溶媒及び分析物に不活性のガスを供給することによって行われ得る。
【0065】
前述の実施形態にあるように、放出溶媒を排出するステップは、加熱された放出溶媒を、放出溶媒がコイル内にある間に排出された放出溶媒を周囲温度に近づくか、またはそれに到達するように冷却するのに十分な長さを有するコイル内に排出することを含む。その時点で、分析物を含有する放出溶媒は、従来の機器における分子分析に備えた温度である。
【0066】
基本的には、本発明の方法は、予想温度及び圧力で安定した任意の分析物を調製するのに適切である。
【0067】
各実施形態では、溶媒は、水、弱酸、弱塩基、酢酸エチル、メチル第三ブチルエーテル(「MTBE」)、塩化メチレン、ヘキサン、アセトン、ヘキサン2−プロパノール、シクロヘキサン、アセトニトリル、メタノール及びそれらの混合物からなる群から選択され得るが、この特定の群に限定されない。
【0068】
各実施形態は、加圧加熱ステップ中に第2の超音波撹拌ステップを使用し得る。
【0069】
各実施形態では、溶媒抽出物の大気圧への放出を使用して、溶媒抽出物を駆動して試料カップから冷却コイル内に入らせる。
【0070】
各実施形態では、代表的な加熱温度は、90〜180℃であり、代表的な結果として生じる圧力は、約50〜250psiである。
【0071】
なお別の態様では、本発明は、試料カップ内の抽出溶媒と分析物を含有する試料マトリックスとの加熱加圧撹拌混合物として表され得る。
【0072】
実験
【0073】
【表1】
【0074】
表1は、ソックスレー(EPA 3540C)、本発明(実施例1)、及び加速溶媒抽出(ASE、EPA 3545)を比較する、土壌からの塩基中性酸(bases neutrals and acids、「BNA」)の抽出からのデータをプロットする。指示されたASEの体積及び時間を、Dionex application note 317に記載のパラメータを使用したランから測定する。分析を、ガスクロマトグラフィー、続いて、質量分析(GCMS、EPA 8270)を使用して行った。
【0075】
本発明の方法は、他の方法よりも著しく少ない溶媒しか使用せず、著しく少ない時間しかかからない。具体的には、ASE抽出セルの調製が、一般に、10を超える成分及びステップを伴ってうんざりするものである一方で、本発明は、3つの単純な部品のみを使用する。平均して、ASE抽出セルの調製に約15分かかる一方で、本発明は、数秒以内に準備完了である。
【0076】
【表2】
【0077】
表2は、Waters Corporation(Milford,MA 01757 U.S.A.、ERAカタログ番号727)から入手された認定基準材料(CRM)土壌におけるBNAの割合でのデータを要約する。当業者に理解されるように、CRM試料中に存在することが知られている材料の100%の回収率を得ることが目標である。各方法について、回収率は全て品質管理性能容認限度内であったが、本発明(実施例1)が39個全ての分析物を回収した一方で、ASEは、38個しか回収せず、2−メチルナフタレンを特定することができなかった。したがって、本発明は、分析物の回収及び分析物の回収パーセントの観点から最良の全体的性能を有した。
【0078】
図2は、実施例1に基づくBNA CMR抽出の例示のフルスキャンクロマトグラムである。
【0079】
図3は、ASE抽出と比較した本発明による実施例1の抽出のオーバーレイである。より高いピークは各々、回収の点でASEよりも著しく優れた実施例1の抽出を表す。加えて、保持時間10.36でのASEピーク(2−メチルナフタレン)の不在は、ASEがこの分析物を特定することができなかったことを実証する。
【0080】
【表3】
【0081】
表3は、ポリエチレンからのフタル酸エステルの抽出についてのソックスレーと本発明(実施例2)とASEとの間の比較チャートである。ASEの体積及び時間は、Dionex刊行物(Knowles,D;Dorich,B;Carlson,R;Murphy,B;Francis,E;Peterson,J,Richter,B.“Extraction of Phthalates from Solid Liquid Matrices,”Dionex Corporation,2011)に明記されるパラメータを使用したランからのものであり、全ての方法は、CPSC−CH−C1001−09.1に基づいた(Consumer Products Safety Commission,Test Method:CPSC−CH−C1001−09.3 Standard Operating Procedure for Determination of Phthalates;http://www.cpsc.gov/about/cpsia/CPSC−CH−C1001−09.3.pdf)。
【0082】
この場合もやはり、本発明の方法(実施例2)は、他の方法よりも著しく少ない溶媒しか使用せず、著しく少ない時間しかかからなかった。
【0083】
【表4】
【0084】
表4は、CRM試料(SPEX CertiPrep CRM−PE001、Metuchen,NJ 08840,USA)中のポリエチレンからのフタル酸エステルの抽出の割合での回収データを比較する。この実験では、加熱前に、撹拌を30秒間の気泡化及び超音波処理の両方とともに行った。この場合もやはり、本発明(実施例2)の回収データは、ASEよりも著しく良好であり、撹拌の使用による改善を示した。撹拌ありの実施例2の結果は、抽出について「ゴールドスタンダード」とみなされるソックスレーデータと一致する。全ての方法において、CRM中の全ての分析物が回収された。
【0085】
図4は、本発明を使用した実施例2のポリエチレンCRM抽出の試料フルスキャンクロマトグラムである。
【0086】
図面及び明細書では、本発明の好ましい実施形態が記載されており、特定の用語が用いられているが、それらは、包括的及び記述的意味でのみ使用されており、限定目的には使用されておらず、本発明の範囲は、特許請求の範囲で定義される。
図1
図2
図3
図4