(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縦畝部を構成する繊維の配向方向及び前記横畝部を構成する繊維の配向方向が、それぞれの畝部の延びる方向に向いている請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の不織布。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る不織布の好ましい一実施形態(第1実施形態)について、
図1〜5を参照しながら、以下に説明する。
【0013】
図1〜5に示す本実施形態の不織布10は、後述する例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品、ワイピングシート等に適用することができる。吸収性物品に用いる場合、表面シートとして用いることが好ましく、また、どちらの面を着用者の肌面に向けて用いてもよい。以下、図面に示した不織布10の一方の面側Z1を肌面に向けて用いる実施態様を考慮して説明する。ただし、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0014】
本実施形態の不織布10は熱可塑性繊維を有する。熱可塑性繊維が少なくとも一部の繊維同士が互いに交点において融着してなり、従来のシート状の不織布とは異なる形状に賦形された厚さを有する。
【0015】
具体的には
図1〜5に示すように、不織布10(10A)は、一方の面Z1と、一方の面に対して反対側の反対面Z2との表裏面を有する。不織布10Aは、表裏面のうち、一方の面側Z1に、不織布10Aの厚さ方向に突出する複数の縦畝部11が、平面視した一方の面側Z1の一方向に延び、かつ一方の面側Z1の一方向とは異なる平面視した一方の面側Z1の他方向に離間して並んで配されている。加えて、横畝部21が、一方の面側Z1の他方向に延び、縦畝部11、11間を繋いで配されている。「縦畝部11、11間を繋いで」いるとは、縦畝部11を挟んで隣り合う横畝部21同士が直線状に並んでいることをいう。具体的には、横畝部21の幅中心線と、縦畝部11を挟んで隣り合った他の横畝部21の幅中心線とのズレが、横畝部21の幅の範囲であることをいい、例えば5mm以内であることをいう。縦畝部11と横畝部21とに囲まれた部分は、一方の面側Z1から反対面側Z2に窪んだ谷部14となっている。
【0016】
不織布10Aの一方の面側Z1における一方向と不織布10Aの一方の面側Z1における他方向とは、例えば、
図1に示す通り、一方の面側Z1の一方向(Y方向)と、これと交差する他方向(X方向)である。一方の面側Z1における一方向と他方向とは直交していることが好ましく、不織布10Aの長手方向、幅方向であることがより好ましい。以下、一方の面Z1における一方向をY方向、他方向をX方向として説明する。
【0017】
縦畝部11は、一方向(Y方向)に沿って同等の高さを有する。同等とは、株式会社キーエンス製マイクロスコープVHX900を用いて不織布断面を観察し、不織布断面の高さを測定した際に、高さが測定平均値に対して0.9倍〜1.1倍の間に入っていることをいう。なお、本明細書において、「高さが同等」とは、全てこの定義である。
より具体的には、縦畝部11が不織布10の厚さ方向に頂部領域11Tと壁部11Wとに区分され、頂部領域11Tが一方向(Y方向)に同等の高さにて延在している。頂部領域11Tは一方の面側Z1の外面繊維層をなしている。壁部11Wは頂部領域11Tから反対面側Z2に向けて厚さ方向に延出している。縦畝部11の内部には、一方向(Y方向)に延びる内部空間12を有している。
【0018】
横畝部21は、不織布10の厚さ方向に、頂部領域21Tと壁部21Wとに区分される。頂部領域21Tは一方の面側Z1に位置しており、壁部21Wは頂部領域21Tから反対面側Z2に向けて厚さ方向に延出している。横畝部21は内部空間22を有している。横畝部21の内部空間22と縦畝部11の内部空間12とが反対面側Z2において互いに連通した状態になっている。
【0019】
さらに縦畝部11を構成する繊維の配向方向と横畝部21を構成する繊維の配向方向とが異なっている。具体的には、頂部領域11Tを構成する繊維の配向方向と頂部領域21Tを構成する繊維の配向方向とが異なっている。繊維の配向方向が異なっているとは、後述する[繊維配向度の測定方法]に従って得られた両者の繊維配向が上面から見て5°以上異なって交わっていることをいう。繊維配向が畝部と平行になっている場合、その各畝部が上面から見て、畝部の幅中心線の角度を分度器で測定する。
【0020】
[繊維配向度の測定方法]
不織布を2cm×2cmの正方形に切出して試料とし、一方の面側Z1から観察する。観察には、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることが好ましい。SEMには、例えばJCM−6100Plus(日本電子株式会社製)を用いる。SEM観察では、事前に推奨の方法で試料に蒸着処理を行っておくことが好ましい。50倍の倍率で縦畝部の中心を拡大し、観察画面の中央に示す。次に縦畝部と平行になるように、画面の中心を対角線の交点とした一辺が500μmの正方形を描き、縦畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N1とする)。また同様に縦畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N2とする)。縦畝部の繊維配向度は下記(式1)に基づいて求める。
【0021】
縦畝部の繊維配向度(%)
={繊維数N2/(繊維数N1+繊維数N2)}×100 (式1)
【0022】
これを任意の3か所測定し、平均を取る。繊維配向度の平均が50%を超えたときに、その領域の繊維は縦畝部の延びる方向と同方向に配向していると判定し、その方向を配向方向とする。数値が大きいほど、縦畝部の延びる方向と同じ方向に繊維が強く配向していることを示している。
横畝部にある繊維配向度を測定する場合は、上記と同様に50倍の倍率で横畝部の中心を拡大し、観察画面の中央に示す。次に前記縦畝部と平行になるように、画面の中心を対角線の交点とした一辺が500μmの正方形を描き、縦畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N1とする)。また同様に縦畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N2とする)。横畝部の、縦畝部の延びる方向を基準とした繊維配向度は前記(式1)に基づいて求める。
【0023】
横畝部の繊維が横畝部の延びる方向と同じ方向に配向しているかを判定するには、上記方法のように縦畝部と平行した正方形ではなく、横畝部と平行になるように正方形を描く。横畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N3とする)。また同様に横畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N4とする)。この方法で横畝部に沿った繊維配向度(%)を下記(式2)に基づいて求め、50%を超えたときに横畝部の延びる方向と同方向に配向していると判定する。
横畝部に沿った繊維配向度(%)
={繊維数N4/(繊維数N3+繊維数N4)}×100 (式2)
【0024】
上記のように、縦畝部11の頂部領域11Tの繊維の配向方向と横畝部21の頂部領域21Tの繊維の配向方向とが異なることから、不織布10Aをある方向から撫でた場合、撫でる方向に近いか沿っている繊維配向をもつ外面が存在することになる。そのため、撫でた感触がより滑らかな風合いを感じ取ることができ、風合いの向上を実現することができる。
また、不織布10Aに一方の面側Z1から肌面(図示せず)によって荷重をかけた場合、一方の面側Z1の肌面との接触が縦畝部11による線状の接触になることから、縦畝部11の全体で荷重をしっかりと支えることができる。しかも縦畝部11に繋がる横畝部21によって縦畝部11の他方向(X方向)への変形が抑制されるため、不織布10が厚さ方向(Z方向)において変形(へたり)が生じ難くなり、形状が保持されやすくなる。したがって、不織布10は、厚さが保持されやすく、通常の凹凸不織布に比べて厚さが出やすい。即ち、圧縮時に変形量が大きくクッション感が得られやすい。また、異なる配向方向によって、荷重が分散しやすく、同じ方向に倒れづらい。つまり、圧縮方向に対して垂直に荷重がかかりやすく、触った時に変形量が大きくさらにクッション感が得られやすくなる。
【0025】
一方、不織布10Aの反対面側Z2においては、複数の凸条部31が、平面視した反対面側Z2の一方向に延び、かつ反対面側Z2の一方向とは異なる反対面側Z2の他方向に離間して並んで配されていることが好ましい。また、隣り合う凸条部31、31に挟まれた凹条部36が、反対面側Z2の一方向に延びていることが好ましい。この一方向に延びる凸条部31と凹状部36とが複数交互に配されて筋状の凹凸面を成していることが好ましい。凸条部31の内部には、上記一方向に延びる内部空間32を有していることが好ましく、凹条部36が、前述した一方の面側Z1の縦畝部11の内部空間12に相当することが好ましい。例えば、反対面側Z2の一方向とはY方向であり、反対面側Z2の他方向とはX方向である。このように、前述した一方の面側Z1の一方向と反対面側Z2の一方向とが一致していることが好ましい。以下、反対面側Z2についても、一方向をY方向、他方向をX方向として説明する。
【0026】
凸条部31は、不織布10の厚さ方向に、頂部領域31Tと壁部31Wに区分される。壁部31Wが壁部11Wと共通である。頂部領域31Tとは、厚さ方向上部側(反対面側Z2)、すなわち不織布10の厚さの中央より上部側(反対面側Z2)の部分をいう。その頂部領域31Tには複数の凸部34が尾根状に連なって配されていることが好ましい。具体的には、凸条部31は、延在方向における凸部34、34間に、反対面側Z2から一方の面側Z1に厚さ方向に窪む凹部35が配され、頂部領域31Tに凸部34と凹部35とが交互に尾根状に連なって配されて凹凸構造を成していることが好ましい。不織布10Aの厚さ方向において、各凸部34の高さh1が同等であり、また各凹部35の高さh2がほぼ同等であり、高さh1より低くなっている。高さh1、h2は、頂部領域11Tの一方の面側Z1の面を基準面とした高さである。低くなっているとは高さh2が高さh1の0.9倍未満であることを言う。この凸部34は、中空であることが好ましい。
このように、凸条部31の頂部領域31Tに配された上記凹凸構造を有する反対面側Z2を肌当接面側に配して、不織布10Aを吸収性物品の表面シートとして用いた場合、肌面に対して凹凸構造の凸部34が点接触の状態になることから、通気性に優れる。また、凸条部31は、複数の凸部34を尾根状に連ねた起伏のある形状であることで、両側に凹状部を備える凹凸形状と相俟って、ふっくらした嵩高い風合いが感じられ、適度な弾力感を有してクッション性に優れる。この観点から、凸部34は前述のとおり中空であることが好ましく、これにより圧縮変形量を大きくすることができる。
【0027】
さらに凸条部31が、幅が細い部分と太い部分とが交互に繋がって配されていることが好ましい。
【0028】
不織布10Aの一方の面側Z1において、前述した横畝部21が、縦畝部11を、縦畝部11の延びる方向と異なる他方向(X方向)に繋いでいるため、縦畝部11にかけられた荷重が縦畝部11に偏ってかけられることがない。そのため、縦畝部11のX方向への変形が抑制され、縦畝部11が厚さを保ちやすくなる。また、横畝部21が一方の面側Z1の他方向に縦畝部11を繋いでいることで、両方向に力を均一に分散させることができる。それによって荷重を四方向に分散させることができるため、より厚さを保ちやすくなる。さらに、横畝部21は一つの耐荷重性が低くても、縦畝部11を繋いで配置されることで大きな荷重に耐えられる。つまり不織布10Aは、変形が抑制されることで、低荷重において容易に潰れることがなく(形状保持性が高く)、低荷重での適度な弾力性と触った時のクッション性を両立できることから、風合いがよくなる。
【0029】
また、不織布10Aは、一方の面側Z1の横畝部21に対し、反対面側Z2の凸条部31を構成する凹部35が配される(
図3〜5)と、一方の面側Z1からの押圧でも、横畝部21が潰れ難くなり好ましい。すなわち、縦畝部11は反対面側Z2の凸条部31の高さh1を有する凸部34において接地面に接するが、横畝部21は、反対面側Z2の凸条部31の高さh2を有する凹部35において吊り床のようにされて接地面による変形が抑えられる。
【0030】
横畝部21は、上記の変形抑制の観点から、縦畝部11、11間を一方の面側Z1の他方向(X方向)に繋ぎ、一方の面側Z1の一方向(Y方向)、すなわち縦畝部11の延びる方向に複数離間して並んで配されていることが好ましい。
【0031】
不織布10Aは、縦畝部11と横畝部21とによって、一方の面側Z1に格子状の凹凸面を有することが好ましい。ここで言う「格子状」とは、縦畝部と横畝部とが、平面視において格子点と辺を備える形状をなしていることをいい、正方格子に限らず、三角格子、六角格子など種々の格子形状を含む。一方の面側Z1におけるX方向、Y方向が直交している場合は、一方の面側Z1から見た場合、縦畝部11と横畝部21とからなる畝部が直交格子状に配される。以下、畝部という場合、縦畝部11と横畝部21の両方を意味する。畝部が格子状になっていることから、不織布10Aに一方の面側Z1から荷重がかけられた場合、縦畝部11にかけられた荷重は横畝部21に分散される。
【0032】
さらに、不織布10Aにおいて、一方の面側Z1の縦畝部11を構成する繊維の配向方向及び一方の面側Z1の横畝部21を構成する繊維の配向方向が、それぞれの畝部の延びる方向に向いていることが好ましい。すなわち、縦畝部11を構成する繊維の配向方向は一方の面側Z1のY方向(一方向)に向いており、横畝部21を構成する繊維の配向方向は一方の面側Z1のX方向(他方向)に向いていることが好ましい。本明細書における「向いている」とは、前述した繊維配向度の測定方法に従って得られた配向方向と畝部の延びる方向とが5°未満であることを言う。
【0033】
各畝部が上記のような繊維の配向方向を有すると、前述した不織布10Aの形状保持性、弾力性、クンション性等がより高められる。すなわち、縦畝部11に荷重がかかって、縦畝部11が潰れようとするとき、該荷重が横畝部21の構成繊維の配向方向に分散し、横畝部21によって縦畝部11が幅方向(X方向)に変形するのを抑制する。このようにして縦畝部11の幅方向の過度な変形が抑制されて縦畝部11の厚さが維持され、不織布10Aの形状保持性、弾力性、クンション性等がより高められる。
【0034】
以上のとおり、不織布10Aは、一方の面側Z1に、前述した縦畝部11と横畝部12を有する構造を有することで、適度な弾力感を有して柔らかなクッション性に優れたものとなる。また不織布10Aは、従来に無いふっくらした嵩高さを保持して風合いの良いものとなる。これらの特性は、反対面側Z1の凸条部31と凹状部36とを有する構成によって更に高められる。
【0035】
(圧縮変形量の測定方法)
不織布10Aの上記特性は次の測定によって評価することができる。すなわち、株式会社カトーテック製KES−FB3(商品名)にて端子のスピードを0.1mm/sに設定した以外、すべて通常モードで5.0kPaまでの圧縮特性評価を行う。その後0.15kPa〜2.5kPaまでに変形した量を不織布10Aの「圧縮変形量」とする。「圧縮変形量」に基づいて、弾力性、クッション性を判定する。この数値が大きいほど、小さい荷重で圧縮方向に潰れにくいことを示し、同様に適度に弾力性がある。また、数値が大きいほど2.5kPaの荷重の間に潰れやすいことを示しており、数値が大きいと触った時に大きく変形するために、クッション性を感じやすい。
【0036】
また、畝部の延びる方向に繊維配向された縦畝部11及び横畝部21は、それぞれの畝部の頂部領域11T、21Tにおいて繊維の配向方向が異なるので、前述したように、風合いを向上させる作用を持っている。風合いを確かめるときに人は押す動作以外に撫でる動作を行う。この際に、撫でる方向に沿っている配向をもつ外面が存在することによって、より滑らかな風合いを実現することができる。このように畝部の延びる方向への繊維配向により奏される滑らかさと、縦畝部11の厚さ方向のクッション感とを持つことによって従来にはない感触を実現している。
【0037】
また不織布10Aにおいて、形状保持性やクッション感が高いために、空間が広く、尿などの液を注入したときに効率よく吸収体へと尿が移行できるという理由から、さらに液広がりも分散して狭くなる。
液の広がりの測定方法は、花王株式会社2016年製のメリーズテープSサイズを用いて、表面材とサブレイヤーをコールドスプレーで剥がして、測定対象の不織布を載せる。着色した40mLの人工尿を4秒間に注入し、10分間放置し、これを計4回繰り返す。その後表面材の上にOHPシートを載せて、着色が残っている部分を囲む。囲んだ面積を測定し、その値を液広がりとする。なお、前記人工尿は、尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.110質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号(染料)0.010質量%、水(約96.88質量%)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(約0.07質量%)の組成を有する混合物を、表面張力を53±1mN/m(23℃)に調整したものを用いる。
【0038】
さらに、不織布10Aにおいて、
図2(A)に示したように、例えば、不織布10Aの反対面側Z2を平面S上に置いたとき、縦畝部11の高さH1と横畝部21の高さH2とが異なることが好ましい。縦畝部11の高さH1は、横畝部21の高さH2よりも高いことがより好ましい。このとき、横畝部21は、縦畝部11、11間において、X方向に沿って高さが変化していてもよい。例えば、横畝部21が、縦畝部11、11間を反対面側Z2方向に凹むように、凹状に湾曲した状態に配されていることが好ましい。言い換えれば、横畝部21をY方向に沿って切った断面形状が、厚さを有する逆U字形をしていて、いわゆる馬に用いる鞍のような形状を成していることが好ましい。この場合の横畝部21の高さは、
図2(A)のように、凹状に湾曲した部分の最も低い部分(または曲率が最も大きくなる部分)の高さである。または、
図2(B)に示すように、横畝部21が、縦畝部11、11間において、均等な高さになっていてもよい。平面Sとは、不織布10の反対面側Z2を平面に置いた面をいう。
縦畝部11の高さH1を横畝部21の高さH2より高くすることにより、反対面側Z2から不織布10を見た場合、凸条部31間に横畝部21に相当する部分に凹部35が配されることになるので、反対面側Z2に空間が広くなる。これによって、不織布10Aをワイピングシートとして用いて反対面側Z2でゴミを捕集しようとした場合、凸条部31に凹み部分が配される分、捕集空間が広くなり、ゴミの捕集量が増加してゴミの捕集効果が高められる。
また縦畝部11の高さH1を横畝部21の高さH2よりも高くすることにより、一方の面側Z1を肌面として吸収性物品の表面材として使ったときに、液が残っても肌に接触する部位が高さH1の部分のみになることから、液残りの観点と通気性の観点から、より肌にやさしい。
【0039】
横畝部21が前述のように凹む構成を有していることにより、反対面側Z2において、凹部35の両端部は凹部形状を保持できるような強度を持っている。これは縦畝部11に荷重がかかったときに、最も近傍にある横畝部21の凹部35の両端部にまず荷重がかかるが、凹部形状を保持できる強度をもっているために、縦畝部11からの荷重を受け止めることができるためである。これにより形状を保持しやすく、適度な弾力性をもたせることができる。また形状を保持しやすいために、横畝部21の内部空間が保持され、吸収性物品の表面材として使ったときに、液広がりが少なくなる。また、凹部35に沿って、液が流れて吸収を高める。
【0040】
次に、第1実施形態の変形例について、
図6を参照しながら、以下に説明する。なお、第1実施形態の不織布10Aと同様の構成部品には、同一符号を付す。
【0041】
具体的には
図6に示すように、不織布10(10B)は、前述の不織布10Aにおいて、横畝部21が縦畝部11と同等の高さに配されたものである。横畝部21の高さ以外は前述の不織布10Aと同様の構成である。この不織布10Bは、一方の面側Z1において、横畝部21の高さが高いために、反対面側Z2に存する横畝部21の内部空間が広くなり、それにともなってさらに液広がりが少なくなる。また、ゴミの捕集効果も高いという特徴を有する。
【0042】
次に、本発明に係る不織布の好ましい別の一実施形態(第2実施形態)について、
図7〜11を参照しながら、以下に説明する。なお、第1実施形態の不織布10Aと同様の構成部品には、同一符号を付す。
【0043】
図7〜11に示すように、不織布10(10C)は、一方の面Z1と、一方の面に対して反対側の反対面Z2との表裏面を有する。
不織布10Cは、表裏面のうち、反対面側Z2に、複数の凸条部31が平面視した反対面側Z2の一方向に延び、かつ反対面側Z2の一方向とは異なる反対面側Z2の他方向に離間して並んで配されている。また、隣り合う凸条部31、31に挟まれた凹条部36が、反対面側Z2の一方向に延びている。この一方向に延びる凸条部31と凹状部36とが複数交互に配されて、前述した不織布10Aと同様の筋状の凹凸面を成している。凸条部31の内部には、上記一方向に延びる内部空間32を有している。内部空間32は、一方向に対して高さが高い部分と低い部分とが交互に繰り返し存在している。例えば、
図7に示す通り、反対面側Z2の一方向とはY方向であり、反対面側Z2の他方向とはX方向である。またY方向とX方向は直交していることが好ましく、不織布10Cの長手方向、幅方向であることがより好ましい。本実施形態においても、以下、一方向をY方向、他方向をX方向として説明する。
【0044】
不織布10Cおいては、前述の不織布10Aと同様に、凸条部31が、不織布10の厚さ方向に、頂部領域31Tと壁部31Wとに区分される。頂部領域31Tは凸部34と凹部35とが交互に尾根状に連なって配されて凹凸構造を成しており、前述の不織布10Aと同様の効果を奏する。凸部34は中空であることが好ましく、これにより圧縮変形量を大きくすることができる。
【0045】
図12に示すように、凸条部31が、幅が細い部分37と太い部分38とが交互に繋がって配されていることが好ましい。凸条部31の幅とは、反対面側Z2から見た凸条部31の壁部31Wの上面から見て、厚さの中央までで壁部31Wに挟まれた最も太い位置において測定した幅をいう。測定した幅の中で凸条部31の最も細い部分37を幅Q1、凸条部31の最も太い部分38を幅Q2とする。
凸条部31の細い部分37と太い部分38とは、繊維密度が低くやわらかい太い部分と、繊維密度が高く細くなった圧縮に強い細い部分とが交互にあることで、やわらかさと低荷重では潰れにくいという二つの要素を作り出している。
このような不織布10Cでは、不織布10Cの反対面側Z2を指で撫でたとき、幅の細い部分37と幅の太い部分38とが交互に繋がって配されている凸条部31に触れることによって、柔らかな風合いを感じとることができる。この幅の細い部分37と幅の太い部分38は、前述の凹部35と凸部34にそれぞれ対応していることが好ましい。
【0046】
さらに第2実施形態の不織布10Cにおいては、一方の面側Z1に、一方の面側Z1に複数の縦畝部11と横畝部21とが配されていることが好ましい。縦畝部11は、不織布10Cの厚さ方向における高さH1が一定の凸条に成されたものであって、平面視した一方の面側Z1の一方向に延び、かつ一方の面側Z1の一方向とは異なる平面視した一方の面側Z1の他方向に離間して並んで配されていることが好ましい。この縦畝部11は、その内部に上記一方向に延びる内部空間12を有していて、内部空間12は凹条部36に相当することが好ましい。
不織布10Cは、不織布10Aと同様に、縦畝部11を構成する繊維の配向方向と横畝部21を構成する繊維の配向方向とは、異なっていることが好ましく、それぞれの畝部の延びる方向に向いていることが好ましい。
【0047】
不織布10Cは、一方の面側Z1の構成が前述した不織布10Aと同様であることが好ましく、例えば、縦畝部11と横畝部21とによって、一方の面側Z1に格子状の凹凸面を有することが好ましい。このような不織布10Cに反対面側Z2から荷重がかかった場合、凸条部31は、横畝部21により形成された幅の細い部分37の影響で低荷重のときに潰れにくく、適度な弾力性がある。また、凸条部31が配された反対面側Z2から荷重がかかって、凸条部31が潰れようとするとき、同じ方向に倒れづらいので、適度な弾力性とクッション性があることから、風合いがよくなる。また、この場合の凸条部31において、凹部35は、隣接部位である凹状部36同士を繋ぐ横畝部21によって底部を支えられている(
図8及び9)。そのため凸条部31は、凹部35において、横畝部21の無い凸部34に比べて厚みが残りやすい。これにより、不織布10Cを反対面側Z2から押圧したときに、凸部34の柔らかいクッション感と共に、凹部35のふっくらした風合いをより感じることができる。
【0048】
以上のとおり、不織布10Cは、反対面側Z2に、前述した凸条部31と凹状部36とを有する構造を有することで、不織布10Aと同様に、適度な弾力感を有して柔らかなクッション性に優れ、風合いの良いものとなる。これらの特性は、一方の面側Z1の縦畝部11と横畝部21を有する構成によって更に高められる。
【0049】
不織布10A〜10Cにおいて、反対面側Z2から平面視した凸条部31の幅方向の輪郭を構成する二本の線のそれぞれが複数の弧を有する曲線であることが好ましい。より具体的には、曲線は、弧の凸部の向きを反対方向に交互に変えて、弧を連ねてなる滑らかな連続したものである。
上記構成の不織布10では、凸条部31の側部が弧を有する曲線になっていることから、不織布10の反対面側Z2を触った感触が直線より柔らかく感じられる。そのため、風合いが良いと感じられる。
【0050】
不織布10A〜10Cにおいて、凸条部31の側部に毛羽を有することが好ましい。
毛羽は繊維が融着せず、繊維の一端が凸条部31から外に出ている状態である。繊維が融着していないことで、不織布を圧縮しクッション性を感じたときに、繊維に包まれる感触を得ることができる。毛羽は畝部や凸部の側部に存在することで、柔らかく包まれるような触感を向上できる。
【0051】
上記構成の不織布10は、押圧力の吸収時においても不織布10の見掛け厚さ(嵩高さ)とふっくらした柔らかさとを保持できる。すなわち、深い沈み込みが、不織布10の限定された範囲で生じ、不織布10全体の立体構造が保持される。さらに凸条部31の側部に毛羽を有することから、押した指の周りには厚さのある不織布に包まれているような感覚が得られる。風合いは指の腹だけでなく周りでも感じていると言われている(日本バーチャルリアリティ学会論文誌 Vol.9, No.2, 2004、指先の接触面積と反力の同時制御による柔軟弾性物体の提示)。そのため、全体の包まれる感触によってさらに風合いがよいものだと感じていると考えられる。
このように凸条部31の側部に毛羽を有することによって、不織布10を指で押した際に、指の回りが毛羽の柔らかさを感じとって、風合いに優れていると感じとることができる。
また、上記毛羽を有する不織布10は、毛羽がゴミを絡め取るため、ゴミの捕集効果が高くなる。
【0052】
不織布10は、縦畝部11と谷部14、横畝部21と谷部14、凸条部31と凹条部36、縦畝部11と横畝部21等は、相互に、少なくとも一部の繊維同士が融着して継ぎ目なく一体化している。このように不織布10は、各部位を繋いで支えることで嵩高く厚さのあるものとなっている。不織布10の厚さとは、縦畝部11、凸条部31や横畝部21のような局所の厚さではなく、不織布全体の賦形された形状における見掛け厚さを指すものである。
なお、不織布10において、各部位どうしの接続部分以外の各部位においても少なくとも一部の繊維同士の交点で融着している。不織布10には融着しない交点があってもよい。また、不織布10は熱可塑性繊維以外の繊維を含んでもよく、熱可塑性繊維がそれ以外の繊維との交点で融着する場合を含む。
【0053】
不織布10は、厚さ方向の立体構造によって、繊維量を増加させずに、クッション性を付与するに十分な厚さ(嵩高さ)を備えるものとなる。そのため、不織布10は、単に繊維量を増やして厚さを持たせたものよりも柔軟性があり、不織布を曲げた際に抵抗なく曲がり易くなる。さらに、前述した繊維の配向により風合いにより優れる。
【0054】
不織布10は、柔軟性とクッション性とを優れたものとする観点から、見掛け厚さ及び目付量について次の範囲であることが好ましい。
不織布の見掛け厚さは、クッション性を確保する観点から、1.5mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。また、見掛け厚さの上限は特に制限されるものでは無いが、吸収性物品の表面シートとして使用する場合に、携帯性等に優れる観点から、10mm以下が好ましく、9mm以下がより好ましく、8mm以下が更に好ましい。
上記見掛け厚さを有する不織布10全体の目付量は、100g/m
2以下が好ましく、60g/m
2以下がより好ましく、40g/m
2以下が更に好ましい。また、目付量の下限は特に制限されるものでは無いが、不織布の地合を担保する観点から、8g/m
2以上が好ましく、10g/m
2以上がより好ましく、15g/m
2以上が更に好ましい。
【0055】
<不織布の見掛け厚さ測定方法>
測定対象の不織布を10cm×10cmに切る。10cm×10cmの大きさがとれない場合はできるだけ大きな面積に切る。レーザー厚さ計(オムロン株式会社製、高精度変位センサZS−LD80)を使用し、50Paの荷重時の厚さを測定する。三箇所測定し、平均値を厚さとする。
この測定方法を準用して、不織布10の厚さ方向において、縦畝部11の高さH1、横畝部21の高さH2、並びに、凸条部31における凸部34の高さh1及び凹部35の高さh2を測定することができる。また、前述した反対面側Z2の凸条部31の幅が細い部分37の幅Q1及び幅が太い部分38の幅Q2は、反対面側Z2からの平面視において、上記測定方法を準用して測定することができる。
【0056】
<不織布の目付量の測定方法>
測定対象の不織布を10cm×10cmに切る。10cm×10cmがとれない場合はできるだけ大きな面積に切る。天秤を用いて、重さを測定し、不織布の面積で割り、その値を目付量とする。
市販の吸収性物品等から測定対象の不織布を取り出す場合は、コールドスプレー等の冷却手段を用いて吸収性物品に用いられている接着剤を固化させ、測定対象の不織布を丁寧に剥がして測定する。この際、接着剤は有機溶媒を用いて取り除く。この手段は、本明細書における他の不織布の測定に関して、すべて同様である。
【0057】
さらに、一方の面側Z1に縦畝部11と横畝部21とで囲まれた空間が開口していることにより、その空間に、押圧する人の身体、例えば指の肌表面が部分的に入ることができる。これにより、一方の面側Z1から不織布10を押したときに、頂部領域11Tの沈み込みのクッション性とともに、上記空間の部分において、よりふんわりとした感触を得ることができ好ましい。さらに見た目にも、開口していることで立体感を生み出し、心理的にも風合いがよいように見える。また、吸収性物品の表面シートとして使用した際には開口は通気性の高さを想起させ、快適感を与える。さらに空間が保持されることで空気の通り道を作り、通気性が実際によく蒸れを抑える。
【0058】
一方の面側Z1の頂部領域11Tよりも反対面側Z2の頂部領域31Tの繊維量が少ないことが好ましい。これにより、触る表面には繊維が多く、なめらかな風合いが感じられる。一方で触らない裏面には形状を保持できる最低限の繊維を配置することで、より表面への繊維を多くできる。また裏面の繊維を少なくすることで、シートの表面シートに用いる際に、繊維が吸収を阻害せず効率的に液体を吸収する。また、通気性も向上できる。
【0059】
次に、不織布10の製造方法の好ましい一例について、
図13〜15を参照して以下に説明する。
不織布10の製造方法においては、不織布化する前の繊維ウエブ110を賦形するため、
図13(A)に示す支持体雄材120と
図13(B)に示す支持体雌材130とを用いる。このとき支持体雄材120は一方向とそれに直交する方向に突起121が間隔を空けて配置されている。一方、支持体雌材130は突起131が一方向に連続している。支持体雄材120の突起121と支持体雌材130の突起131は互いに干渉せず遊挿できるような形態を有する(
図14(A)も併せて参照)。
図13(C)に示すように、支持体雄材120の上に繊維ウエブ110を載置し、繊維ウエブ110の上から支持体雌材130にて抑えて挟み込んで賦形する。
【0060】
支持体雄材120は、不織布10の縦畝部11、11と横畝部21、21によって囲まれる谷部14が賦形される位置に対応して複数の突起121を有する。突起121、121間は、一方の面側Z1の縦畝部11の頂部領域11Tが賦形される位置に対応する支持体凹部122とされている。これにより、支持体雄材120は凹凸形状を有しており、突起121と支持体凹部122とが平面視異なる方向に交互に配されている。支持体凹部122の支持体底部123は熱風が吹き抜ける構造となっており、例えば複数の孔が配されている(図示せず)。例えば、不織布10を製造する支持体としては、不織布10のY方向とX方向に相当するのは機械流れ方向と機械流れ方向に直交する幅方向である。ただし「異なる方向」は、本発明の不織布の凹凸構造によって異なるものであり、Y方向及びX方向に限定されない。より効果的に熱風をあてるために、支持体凹部122に相当する支持体雄材120に穴を開けることもできる。支持体雄材120の突起121の高さは、不織布10の厚さを決める要因となるため、突起121の高さは3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、7mm以上が更に好ましい。この下限以上であると、よりクッション感のある不織布10を作ることができる。突起121は角柱であっても円柱であってもよい。平面視した場合、図では不織布10の機械流れ方向(MD方向)に対して、四角形状に描いてあるが、ひし形であってもよい。より繊維が支持体雄型120に入りこみ、不織布10の形状が保持され、不織布10の厚さが形成されやすい観点から、突起121の形状は、角柱であり、上面から見た形状が正方形であることが好ましい。出来上がった不織布10が形状を保持しやすい観点から、平面視した突起121の一つの上面の面積は3mm
2以上が好ましい。また隣り合った支持体雄材120の突起121同士は、平面視して2mm以上離れている方が繊維を効果的に押し込むスペースが確保されるので好ましい。
【0061】
支持体雌材130は、支持体雄材120の支持体凹部122に対応し、かつ、平面視して一方向に連続する突起131を有する。突起131、131間は、支持体雄材120の突起121に対応し、かつ、前記一方向に連続する支持体凹部132とされている。これにより、支持体雌材130は凹凸形状を有しており、突起131と支持体凹部132とが交互に配されている。支持体凹部132の支持体底部133は熱風が吹き抜ける構造となっており、例えば複数の孔が配されている。突起131、131間の距離は、支持体雄材120の突起121の幅よりも広くされている。その距離は、支持体雄材120の突起121と支持体雌材130の突起131とによって繊維ウエブ110を挟み込んで繊維が厚さ方向に配向する壁部を好適に賦形できるよう適宜設定される。支持体雌材130の押し込まれる突起131の長さは、支持体雄材120の突起121同士の間に挿入される必要があるために、1mm以上の長さを有することが好ましい。また支持体雌材130の押し込まれる突起131の隣り合ったピッチは支持体雄材120の突起121一つを跨ぐ長さに繊維が押し込まれるスペースが必要であるため、支持体雄材120の突起121の平面視した上面の一辺の長さに1mm以上加えた長さが好ましい。なお、上記突起121の上面の1辺の長さは、突起121の上面形状が円形又は長円形の場合はその直径又は長径の長さとする。
【0062】
まず、上記の製造方法においては、融着する前の繊維ウエブ110を所定の厚さとなるようカード機(図示せず)からウエブを賦形する装置に供給する。
【0063】
次に
図13(C)に示すように、支持体雄材120上に、熱可塑性繊維を含む繊維ウエブ110を配し、繊維ウエブ110上から、支持体雌材130を支持体雄材120に押し込む。このとき、支持体雄材120の突起121を支持体雌材130の支持体凹部132に挿入する。また、支持体雄材120の支持体凹部122に支持体雌材130の突起131を挿入する。これにより繊維は厚さ方向と平面方向に配向されるようになる。また、支持体雄材120の突起121、121間の支持体凹部122のうち、支持体雌部材130の支持体凹部132に対応する部分には、支持体雌材130が入り込まない。しかし、支持体雌材130の両端の突起131に繊維ウエブ110が挟まれているために、支持体凹部122にあった繊維は伸ばされて繊維の配向が変わる。通常の突起131が伸びている一方向に配向していた繊維は、支持体凹部122内の繊維が引っ張られて配向が変わる。上面から見ると配向が変わる不織布の繊維ウエブ110をここで作ることができる。
【0064】
図14(B)に示すように、支持体雄材120の突起121を支持体雌材130の支持体凹部132に挿入する。これにより、上記囲む領域の底部に相当する繊維層が賦形される。また、支持体凹部122の底部と突起131の頂部との間で、繊維が平面方向に配向する。突起131は熱風を阻害しているので、形成される繊維層には融着が少なく、滑らかな繊維層が実現する。これにより、一方の面側Z1の縦畝部11の頂部領域11Tに相当する繊維層が賦形される。
【0065】
次に、支持体雄材120に挿入した支持体雌材130を取り外し、
図15に示すように、繊維ウエブ110の各繊維が適度に融着可能な温度の熱風Wを吹きつけて、繊維同士をさらに融着させる。この場合、繊維ウエブ110に対し、不織布10における反対面となる側から熱風Wを吹き付ける。このときの熱風Wの温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、繊維ウエブ110を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上70℃以下高いことが好ましく、5℃以上50℃以下高いことがより好ましい。
熱風Wの風速は、支持体雄材120の突起121の高さにもよるが、2m/s以上が好ましく、3m/s以上がより好ましい。これにより、繊維への熱伝達を十分なものとして繊維同士を融着させ、凹凸形状の固定を十分なものとすることができる。また、熱風Wの風速は、100m/s以下が好ましく、80m/s以下がより好ましい。これにより、繊維へ過度な熱伝達を抑えて、不織布10の風合いを良好なものとすることができる。
なお、支持体雌材の表面粗さを小さくすることによって、融着していない繊維をまとわりつかせることがなく、熱風Wの吹き付け工程において支持体雌材130を取り外すことが可能である。つまりウエブを作製後、支持体雄材120を支持体雌材130に挿入し、そのまま支持体雌材130を取り外し、上記の熱風Wによって処理をすることが可能である。これにより、より簡便な加工となる。また、本実施形態においては、製造時に熱風があてられた面が反対面側Z2であるとしているが、一方の面側Z1から熱風をあて、一方の面側Z1の繊維同士の融着点が多くなるようにしてもよい。
【0066】
熱可塑性繊維としては、不織布の素材として通常用いられるものを特に制限なく採用できる。例えば、単一の樹脂成分からなる繊維や、複数の樹脂成分からなる複合繊維などであってもよい。複合繊維としては、例えば芯鞘型、サイドバイサイド型などがある。
熱可塑性繊維として低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維(例えば鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘型複合繊維)を用いる場合、繊維ウエブ110に吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上、高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。また適度な弾力性と形状保持性の観点から、芯鞘型複合繊維の中でも、高融点成分である芯が多いほど弾力性が高い。そのため断面面積比で芯成分が大きいほうが好ましい。鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘型複合繊維の具体例としては、鞘がポリエチレン(PE)、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)である芯鞘型複合繊維が挙げられる。
【0067】
また、芯鞘型複合繊維において、芯の樹脂成分よりも鞘の樹脂成分の方が、ガラス転移温度が低い場合(以下、低ガラス転移温度樹脂という)(例えば、芯の樹脂成分がPETで鞘の樹脂成分がPE)、低ガラス転移温度樹脂成分の質量比を小さくすることで、不織布の厚みの回復性を高められる。このようになる要因としては、次のようなことが考えられる。低ガラス転移温度樹脂は、緩和弾性率が低いことが知られている。また、緩和弾性率が低いと変形に対して回復しづらいことも知られている。従って、低ガラス転移温度樹脂成分をできるだけ少なくすることによって、より高い厚み回復性を不織布に付与できると考えられる。
この芯鞘型複合繊維の場合、繊維総量における低ガラス転移温度樹脂成分(PE等)の割合は、質量比で、繊維総量におけるガラス転移温度の高い樹脂成分(PET等)の割合よりも小さいことが好ましい。具体的には、繊維総量における低ガラス転移温度樹脂成分の割合は、質量比で、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。低ガラス転移温度樹脂成分の割合を小さくすることで、不織布の厚みの回復性を高めることができる。また、不織布の製造上の観点から、前記割合は、質量比で、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
このことは、
図16に示すグラフからも分かる。
図16では、芯の樹脂成分(PET)及び鞘の樹脂成分(PE)の割合を変えた場合における、不織布の1日圧縮後の回復率を示している(測定方法は、後述の実施例にて示した[1日圧縮後の回復性の評価方法]に示す方法による。)。なお不織布は、
図6に示す不織布にて計測した。繊維以外の条件は実施例2の条件で作製できる。作製した各不織布の見掛け厚みは、「芯比30」のものが6.0mm、「芯比50」のものが6.9mm、「芯比70」のものが6.6mm、「芯比90」のものが6.0mmであった。ガラス転移温度が低いPEすなわち鞘の樹脂成分の割合が小さい(芯の樹脂成分の割合が大きい)ほど、1日圧縮後の回復率は高い。特に、鞘の樹脂成分の割合が50質量%未満(芯の樹脂成分の割合が50質量%超)になると、1日圧縮後の回復率が70%以上となり好ましい。
【0068】
得られた不織布10は、
図15における下側の面が一方の面側Z1であり、その反対側の面が反対面側Z2となる。つまり、不織布10における一方の面側Z1は支持体雄材120が配された側であり、反対面側Z2は熱風Wが吹き付けられた側である。そのため、熱風Wの吹き付け量の相違から、一方の面側Z1の頂部領域11Tよりも、反対面側Z2の頂部領域31Tの繊維同士の融着点が多くなる。さらに、熱量の相違から、反対面側Z2の頂部領域31Tの表面よりも、一方の面側Z1の頂部領域11Tの表面が、ざらつき感が少なく肌触りがよいものとなる。また熱風Wからの距離により同様の効果が得られる。また、繊維ウエブ110を挟んだ状態にして支持体雄材120を支持体雌材130に挿入することによって、反対面側Z2の頂部領域31Tの繊維は引っ張られて、より支持体雄材120へと向かう。そのため支持体雄材120の支持体凹部122の底部に賦形された一方の面側Z1の頂部領域11Tよりも、支持体雄材120の突起121の頂部に賦形された反対面側Z2の頂部領域31Tの繊維量が少なくなる。
【0069】
実施形態にて説明した不織布10(10A〜10C)は、例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の表面シート等に適用することができる。表面シートとして用いる場合、どちらの面を着用者の肌面に向けて用いてもよい。ただし、繊維の配向方向の観点から、一方の面側Z1を着用者の肌面側に向けて用いることがより好ましい。一方、柔らかな風合いが得られ、通気性がより確保できる観点から、反対面側Z2を着用者の肌面側に向けて用いることがより好ましい。
【0070】
次に、
図17を参照しながら本発明に係る不織布を表面シートに用いた吸収性物品の好ましい一実施形態としておむつ200の吸収性本体204への適用例について以下に説明する。同図に示したおむつはテープ型の乳幼児用使い捨ておむつであり、平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)から見た状態で示している。
【0071】
図17に示すように、本発明のおむつ200に使用される吸収性本体204は以下の基本構成を有する。すなわち、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート201と、非肌当接面側に配置される液難透過性の裏面シート202と、表面シート201と裏面シート202との間に介在される液保持性を有する吸収体203とを有する。
【0072】
表面シート201には上記実施形態の不織布10が適用されている。裏面シート202は展開状態で、その両側縁が長手方向中央部Cにおいて内側に括れた形状を有しており、1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。本例においては、サイドシート205がなす横漏れ防止ギャザー206が設けられている。なお、
図17においては各部材の配置関係や境界を厳密には図示しておらず、この種のおむつの一般的な形態とされていれば特にその構造は限定されない。
【0073】
上記おむつ200はテープ型のものとして示しており、背側Rのフラップ部にはファスニングテープ207が設けられている。ファスニングテープ207を腹側Fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して、おむつを装着固定することができる。このとき、おむつ中央部Cを緩やかに内側に折り曲げて、吸収体203が臀部から下腹部にわたって沿わされるように着用する。不織布10を表面シート201として適用したことにより、肌触りが柔らかでしなやかな風合いの良さを示すことができる。
【0074】
吸収性本体204の形状は、装着時に着用者の股下部分を介して下腹部側から臀部側へと配される長手方向とこれと直交する幅方向とを有する縦長の形状である。本明細書においては、吸収性本体204の平面視において相対的に長さのある方向を長手方向といい、この長手方向と直交する方向を幅方向という。上記長手方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0075】
表面シート201は、前述の本発明の不織布10で構成され、親水性不織布であることが好ましい。親水性不織布としては、その繊維がポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンの複合繊維等で親水化処理が施された繊維が好ましく使用できる。
上記裏面シート202及び吸収体203には、例えば特開2013−147784号公報、特開2014−005565号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0076】
おむつ200の表面シート201として、本発明の不織布10は、縦畝部11や横畝部21の繊維配向が各畝部の延びる方向に向かっていることによって、風合いに優れたものとなっている。
【0077】
本発明の不織布は各種用途に用いることができる。例えば、成人用や乳幼児用の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の吸収性物品の表面シートとして好適に使用することができる。さらに、生理用品やおむつ等の表面シートと吸収体との間に介在させるサブレイヤー、吸収体の被覆シート(コアラップシート)などとして用いることもできる。さらには、清掃用ワイピングシートに用いることができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の不織布及び吸収性物品を開示する。
【0078】
<1>
不織布の表裏面のうち一方の面と、該一方の面に対して反対側の反対面とを有する不織布であって、
前記一方の面側に、
前記不織布の厚さ方向において該一方の面側に突出する複数の縦畝部が、平面視した一方の面側の一方向に延び、かつ該一方の面側の一方向とは異なる平面視した一方の面側の他方向に離間して並んで配され、
前記一方の面側の他方向に延びる横畝部が前記縦畝部を繋いで配されており、
前記縦畝部を構成する繊維の配向方向と前記横畝部を構成する繊維の配向方向とが異なる不織布。
【0079】
<2>
前記反対面側に、
平面視した反対面側の一方向に延び、かつ該反対面側の一方向とは異なる反対面側の他方向に離間して並ぶ複数の凸条部を有し、
複数の該凸条部に挟まれた凹条部を有し、該凹条部が前記反対面側の一方向に延びている<1>記載の不織布。
<3>
前記凸条部は、複数の凸部が尾根状に連なってなる<2>に記載の不織布。
<4>
前記凸条部は、平面視において幅が細い部分と太い部分とが交互に繋がって配されている<2>又は<3>に記載の不織布。
<5>
前記反対面側に、
平面視した反対面側の一方向に延び、かつ該反対面側の一方向とは異なる反対面側の他方向に離間して並ぶ複数の凸条部を有し、
複数の該凸条部に挟まれた凹条部を有し、該凹条部が前記反対面側の一方向に延びており、
前記凸条部は、複数の凸部が尾根状に連なってなり、平面視において幅が細い部分と太い部分とが交互に繋がって配されている<1>〜<4>のいずれか1に記載の不織布。
【0080】
<6>
不織布の表裏面のうち一方の面と、該一方の面に対して反対側の反対面とを有する不織布であって、
前記反対面側に、
平面視した反対面側の一方向に延び、かつ該反対面側の一方向とは異なる反対面側の他方向に離間して並ぶ複数の凸条部を有し、
複数の該凸条部に挟まれた凹条部を有し、該凹条部が前記反対面側の一方向に延びており、
前記凸条部は、複数の凸部が尾根状に連なってなり、平面視において幅が細い部分と太い部分とが交互に繋がって配されている不織布。
<7>
前記一方の面側に、
前記不織布の厚さ方向において該一方の面側に突出する複数の縦畝部が、平面視した一方の面側の一方向に延び、かつ該一方の面側の一方向とは異なる平面視した一方の面側の他方向に離間して並んで配されている<6>に記載の不織布。
<8>
前記一方の面側の他方向に延びる横畝部が前記縦畝部を繋いで配されている<6>又は<7>に記載の不織布。
<9>
前記縦畝部を構成する繊維の配向方向と前記横畝部を構成する繊維の配向方向とが異なる<6>〜<8>のいずれか1に記載の不織布。
【0081】
<10>
前記繊維の配向方向が異なっているとは、下記[繊維配向度の測定方法]に従って得られる両者の配向方向が5°以上異なっていることである<1>〜<5>及び<9>のいずれか1に記載の不織布。
[繊維配向度の測定方法]
不織布を2cm×2cmの正方形に切出して試料とし、一方の面側Z1から観察する。観察には、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることが好ましい。SEMには、例えばJCM−6100Plus(日本電子株式会社製)を用いる。SEM観察では、事前に推奨の方法で試料に蒸着処理を行っておくことが好ましい。50倍の倍率で縦畝部の中心を拡大し、観察画面の中央に示す。次に縦畝部と平行になるように、画面の中心を対角線の交点とした一辺が500μmの正方形を描き、縦畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N1とする)。また同様に縦畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N2とする)。縦畝部の繊維配向度は下記(式1)に基づいて求める。
縦畝部の繊維配向度(%)
={繊維数N2/(繊維数N1+繊維数N2)}×100 (式1)
これを任意の3か所測定し、平均を取る。繊維配向度の平均が50%を超えたときに、その領域の繊維は縦畝部の延びる方向と同方向に配向していると判定し、その方向を配向方向とする。数値が大きいほど、縦畝部の延びる方向と同じ方向に繊維が強く配向していることを示している。
横畝部にある繊維配向度を測定する場合は、上記と同様に50倍の倍率で横畝部の中心を拡大し、観察画面の中央に示す。次に前記縦畝部と平行になるように、画面の中心を対角線の交点とした一辺が500μmの正方形を描き、縦畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N1とする)。また同様に縦畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N2とする)。横畝部の、縦畝部の延びる方向を基準とした繊維配向度は前記(式1)に基づいて求める。
横畝部の繊維が横畝部の延びる方向と同じ方向に配向しているかを判定するには、上記方法のように縦畝部と平行した正方形ではなく、横畝部と平行になるように正方形を描く。横畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N3とする)。また同様に横畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N4とする)。この方法で横畝部に沿った繊維配向度(%)を下記(式2)に基づいて求め、50%を超えたときに横畝部の延びる方向と同方向に配向していると判定する。
横畝部に沿った繊維配向度(%)
={繊維数N4/(繊維数N3+繊維数N4)}×100 (式2)
<11>
複数の前記横畝部が前記一方の面側の一方向に離間して並んで配されている<1>〜<5>及び<8>〜<10>のいずれか1に記載の不織布。
<12>
前記縦畝部と前記横畝部とによって前記一方の面側に格子状の凹凸面を有する<11>に記載の不織布。
<13>
前記縦畝部を構成する繊維の配向方向及び前記横畝部を構成する繊維の配向方向が、それぞれの畝部の延びる方向に向いている<1>〜<5>及び<8>〜<12>のいずれか1に記載の不織布。
<14>
前記向いているとは、下記[繊維配向度の測定方法]に従って得られる繊維配向度が50%以上であることをいう<13>に記載の不織布。
[繊維配向度の測定方法]
不織布を2cm×2cmの正方形に切出して試料とし、一方の面側Z1から観察する。観察には、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることが好ましい。SEMには、例えばJCM−6100Plus(日本電子株式会社製)を用いる。SEM観察では、事前に推奨の方法で試料に蒸着処理を行っておくことが好ましい。50倍の倍率で縦畝部の中心を拡大し、観察画面の中央に示す。次に縦畝部と平行になるように、画面の中心を対角線の交点とした一辺が500μmの正方形を描き、縦畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N1とする)。また同様に縦畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N2とする)。縦畝部の繊維配向度は下記(式1)に基づいて求める。
縦畝部の繊維配向度(%)
={繊維数N2/(繊維数N1+繊維数N2)}×100 (式1)
これを任意の3か所測定し、平均を取る。繊維配向度の平均が50%を超えたときに、その領域の繊維は縦畝部の延びる方向と同方向に配向していると判定し、その方向を配向方向とする。数値が大きいほど、縦畝部の延びる方向と同じ方向に繊維が強く配向していることを示している。
横畝部にある繊維配向度を測定する場合は、上記と同様に50倍の倍率で横畝部の中心を拡大し、観察画面の中央に示す。次に前記縦畝部と平行になるように、画面の中心を対角線の交点とした一辺が500μmの正方形を描き、縦畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N1とする)。また同様に縦畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N2とする)。横畝部の、縦畝部の延びる方向を基準とした繊維配向度は前記(式1)に基づいて求める。
横畝部の繊維が横畝部の延びる方向と同じ方向に配向しているかを判定するには、上記方法のように縦畝部と平行した正方形ではなく、横畝部と平行になるように正方形を描く。横畝部の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N3とする)。また同様に横畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N4とする)。この方法で横畝部に沿った繊維配向度(%)を下記(式2)に基づいて求め、50%を超えたときに横畝部の延びる方向と同方向に配向していると判定する。
横畝部に沿った繊維配向度(%)
={繊維数N4/(繊維数N3+繊維数N4)}×100 (式2)
<15>
前記縦畝部の高さと前記横畝部の高さとが異なる<1>〜<5>及び<8>〜<14>のいずれか1に記載の不織布。
<16>
前記縦畝部の高さが前記横畝部の高さより高い<1>〜<5>及び<8>〜<15>のいずれか1に記載の不織布。
<17>
前記横畝部が前記不織布の厚さ方向に湾曲している<1>〜<5>及び<8>〜<16>のいずれか1に記載の不織布。
<18>
前記横畝部が凹状に湾曲している<1>〜<5>及び<8>〜<17>のいずれか1に記載の不織布。
<19>
前記横畝部は、前記縦畝部間を反対面側方向に凹むように、湾曲した状態に配されている<1>〜<5>及び<8>〜<18>のいずれか1に記載の不織布。
【0082】
<20>
前記反対面側から平面視した前記凸条部の幅方向の輪郭を構成する二本の線のそれぞれが複数の弧を有する曲線である<2>〜<9>のいずれか1に記載の不織布。
<21>
前記凸条部の側部に毛羽を有する<2>〜<9>のいずれか1に記載の不織布。
<22>
前記毛羽を有するとは、繊維が融着せず、繊維の一端が前記凸条部から外に出ている状態である<2>〜<9>のいずれか1に記載の不織布。
<23>
前記複数の凸部が尾根状に連なっているとは、前記複数の凸部の間に厚さ方向に窪む凹部が配されている<3>〜<9>のいずれか1に記載の不織布。
<24>
前記一方の面側の一方向と前記反対面側の一方向とが一致している<2>及び<4>〜<9>のいずれか1に記載の不織布。
【0083】
<25>
前記不織布の見掛け厚さは、1.5mm以上10mm以下であり、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、また、好ましくは9mm以下、より好ましくは8mm以下である<1>〜<24>のいずれか1に記載の不織布。
<26>
前記不織布の見掛け厚さは、3mm以上8mm以下である<1>〜<24>のいずれか1に記載の不織布。
【0084】
<27>
前記不織布全体の目付量は、8g/m
2以上100g/m
2以下、好ましくは60g/m
2以下、より好ましくは40g/m
2以下であり、また、好ましくは10g/m
2以上、より好ましくは15g/m
2以上である<1>〜<26>のいずれか1に記載の不織布。
<28>
<1>〜<27>のいずれか1に記載の前記不織布を有する吸収性物品。
<29>
<1>〜<27>のいずれか1に記載の前記不織布を、前記一方の面側を肌当接面に向けて表面シートとして用いた吸収性物品。
<30>
<1>〜<27>のいずれか1に記載の前記不織布を、前記一方の面側を非肌当接面に向けて表面シートとして用いた吸収性物品。
<31>
前記一方の面側の一方向又は前記反対面側の一方向が、前記吸収性物品の長手方向と一致している<28>〜<30>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、下記表中における、「−」は、項目に該当する値を有さないこと等を意味する。
【0086】
(実施例1)
繊度1.8dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を用いて繊維ウエブを作製した。繊維ウエブを支持体雄材120上に配し、
図13に示ように、繊維ウエブ110上から、支持体雌材130を支持体雄材120に押し込んで賦形処理を行った。次いで、支持体雌材130を取り外し、熱風Wの吹き付けによって融着処理を行い、
図1に示す不織布を作製した。このとき支持体雄材120として、突起121の高さを8mmとし、角柱形状、上面から見ると2mm×2mmの正方形のものを用いた。角柱のピッチはMD方向、CD方向それぞれ5mmとした。支持体雌材130として、幅2mmの直線状の突起131を有する金属製のものを用い、支持体雄材120の突起121間に押し込んだ。支持体雌材130の隣り合った突起121、121間は5mmピッチで配置されており、支持体雄材120と支持体雌材130が押し込まれた時の繊維が入る空間は片側0.5mmで、支持体雄材120の突起120の両側合わせて1mmあった。これを実施例1の不織布試料とした。熱風による吹き付け処理は、温度160℃、風速6m/s、吹き付け時間6sの条件にて行った。
実施例1の不織布試料は、繊度1.8dtexであった。実施例1の不織布試料は縦畝部と横畝部とを有し、縦畝部の延びる方向と横畝部の延びる方向とは互いに直交する方向であった。また、表1に示す配向度から分かるとおり、縦畝部の繊維の配向方向及び横畝部の繊維の配向方向は、それぞれ縦畝部及び横畝部の延びる方向であり、互いに直交する方向(異なる方向)であった。
【0087】
(実施例2)
図6に示す不織布を、実施例1のものと同じ繊維ウエブを雄材にMD、CD逆方向にセットすることで作製した。それ以外はすべて実施例1と同じである。これを実施例2の不織布試料とした。
【0088】
(実施例3)
実施例1の不織布試料を裏返しにした、
図7に示す不織布を作製し、その不織布を実施例3の不織布試料とした。そのため、一方の面側Z1において、実施例1と同様に、縦畝部の繊維の配向方向及び横畝部の繊維の配向方向は、それぞれ縦畝部及び横畝部の延びる方向であり、互いに直交する方向(異なる方向)であった。
【0089】
(実施例4)
繊維径3.2dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=7:3(質量比))の熱可塑性繊維を用いた以外は実施例1と同様の製造方法に従い、実施例4の不織布試料を作製した。
【0090】
(比較例1)
特開2012−136790号公報の
図1に示す不織布を、繊度1.8dtexの熱可塑性繊維を用いて同公報に記載された製造方法に準拠して作製し、その不織布を比較例1の不織布試料とした。
(比較例2)
繊維径1.8dtexの熱可塑性繊維を用い、エアスルー製造方法によって凹凸賦形しないフラットな不織布を作製し、比較例2の不織布試料とした。
(比較例3)
メリーズパンツLサイズ花王株式会社2016年製の表面材に用いられているフラットな不織布を剥がし、比較例3の不織布試料とした。
(比較例4)
メリーズMサイズ花王株式会社2016年製の表面材に用いられている凹凸不織布を剥がし、比較例4の不織布試料とした。
【0091】
上記実施例及び比較例について、各畝部の繊維配向度(配向方向)、横畝部の高さH2、凸条部の細い部分の幅Q1及び太い部分の幅Q2、圧縮エネルギーWC、圧縮回復性RC、圧縮変形量、風合いについて求めた。各測定項目の測定は、前述の(圧縮変形量の測定方法)、下記の測定方法による。繊維配向度に関しては、畝がないものは、上面から見た任意の部位で測定した値を記録した。さらに、上記実施例については、1日圧縮後の回復性も評価した。
【0092】
[クッション性(圧縮エネルギーWC)及び形状保持性(圧縮回復率RC)の評価方法]
クッション性及び形状保持性の評価法は、上述のKES圧縮試験機を用いた。測定は、22℃65%RH環境下にて行った。KES圧縮試験機は、通常モードで5.0kPaまでの圧縮特性評価を行い、最大圧力5.0kPaまでの圧縮エネルギーWC値及び圧縮回復率RC値を読み取った。測定値としては、不織布内の3点を測定してその平均値を求め、それを3回行ってその平均値をWC値及びRC値とした。
上記WC値は、単位面積当たりの圧縮に必要なエネルギーを表すものであり、WC値が大きいほど圧縮されやすくクッション感が高い。さらに同程度のWCでも圧縮変形量が大きいほど適度な弾力性をもち大きなクッション感を感じ、風合いがよい。
上記RC値は、圧縮時のエネルギーに対する回復されるエネルギーの割合を%表示したものであり、RC値が大きいほど、圧縮に対する回復性が高い。
【0093】
[風合いの評価方法]
不織布の風合い研究開発に従事している研究員3人(20代〜30代)で、比較例3のフラット不織布を3点、比較例4の凹凸不織布を4点として、10点でこれまで触ってきた布や不織布でもっとも風合いのよいものを想定してもらい、10段階の評価を行い、評価値の平均をとり、小数点以下第一位を四捨五入して整数でまとめた。おむつの表面材を触る想定で、平面に置いたサンプルの表面を利き手で触った。評価は目視のまま行った。
【0094】
[1日圧縮後の回復性の評価方法]
厚さ0.7mmのワッシャーとともに不織布を2枚のアクリル板で挟み、その上から錘(20kg)を載置して荷重をかけ、不織布を厚さ0.7mmに圧縮した。この状態で1日放置後、錘とアクリル板を不織布から取り外し、10分後に不織布の見掛け厚みを測定した。この測定値と、事前に測定した圧縮前の不織布の見掛け厚みから、不織布の厚みの回復率を求め、不織布の1日圧縮後の回復性を評価した。
【0095】
【表1】
【0096】
表1が示すとおり、比較例1は実施例1〜4と同じく凹凸を有していたが、繊維配向が同じ方向であり、圧縮変形量は、縦畝部の繊維の配向方向と横畝部の繊維の配向方向が異なる実施例1〜4の方が優れていた。比較例2は実施例と同等以上の見掛け厚さを有していたが、形状がフラットであるため、圧縮変形量は実施例1〜4の方が優れていた。比較例3は実施例と同程度に繊維量が少ないが、実施例1〜4の方が厚みを有していた。また、圧縮変形量は実施例1〜4の方が大きかった。比較例4は実施例と同じく凹凸を有していたが、配向方向が同じため、圧縮変形量が実施例1〜4の方が大きかった。
以上のように実施例1〜4では縦畝部と横畝部とにおいて配向が異なるために圧縮変形量が多く、適度な弾力性とクッション感から、風合いがよいと感じられた。また、液広がりも少ないことが確認された。
さらに、実施例1〜4の中でも、鞘樹脂であるPE(ガラス転移成分の温度が芯樹脂であるPETよりも低い)の質量比を小さくした実施例4は、1日圧縮後の回復性に優れ、パック等で不織布を潰した後でも厚みの回復性が高いことが分かった。