(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不織布の表裏の面を備えた可動層を有し、該可動層が、前記表裏の面の一方の面が他方の面に対して該一方の面に沿う方向に5mm以上可動し得る可動域を有する、不織布。
前記不織布が厚さ方向に該不織布の基準面から突出する凸部を有しており、前記基準面に対する前記凸部の壁部の外角が110°以下である請求項1又は2に記載の不織布。
前記可動層の内部側の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数の40%以上80%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の不織布。
前記可動層の内部側の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数の30%以上70%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の不織布。
前記可動層の内部側の領域における繊維配向度が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における繊維配向度に対して1.1倍以上1.4倍以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の不織布。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る不織布の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら、以下に説明する。ただし、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の不織布10は、表裏の面を有する。本実施形態においては、表裏の面を、表面10SAと、該表面10SAとは反対側の面を裏面10SBとして説明する。また、不織布10の厚さ方向をZ方向とする。本実施形態においては、特に断らない限り、表面10SAを目視する面(観察面)として示すが、本発明の不織布がこれに限定されるものではなく、裏面10SBを目視する面(観察面)としてもよい。
【0013】
不織布10は、表面10SA及び裏面10SBを備えた可動層4を有する。具体的には、可動層4は、不織布10の厚さ方向に、表面側4S、裏面側4B及び可動層の内部側4Mの領域を有する。表面側4Sの領域とは、不織布10の表面10SAから見て、見ることができる繊維が存在している厚さ方向の領域をいい、裏面側4Bの領域とは、不織布10の裏面10SBから見て、見ることができる繊維が存在している厚さ方向の領域をいう。可動層の内部側4Mの領域とは、厚さ方向に表面側4Sと裏面側4Bとに挟まれた領域をいう。すなわち、可動層4の表面側4Sの領域は不織布10の表面10SAを含み、可動層4の裏面側4Bの領域は裏面10SBを含む。
【0014】
可動層4は、不織布10の一方の面が他方の面に対して、即ち、表面10SA、裏面10SBがそれぞれ裏面10SB、表面10SAに対して、平面方向に5mm以上可動し得る可動域を有する(以下、可動域の大きさを「動く範囲」又は「可動量」ともいう。)。可動層4の可動量は、好ましくは6mm以上であり、より好ましくは7mm以上である。可動量の上限は、特に制限されるものではないが、肌への貼りつきを防止する観点から10mm以下であり、好ましくは9mm以下であり、より好ましくは8mm以下である。
可動層4の可動域において、不織布10の表面10SAと裏面10SBとが互いに反対の方向に動き得る。このような動きは、可動層4の内部側4Mが、肌と不織布10との摩擦力以下の力で可動し始め得る変形性の高い中間領域となっていることによる。
以下、可動層4について、表面10SAが裏面10SBに対して表面10SAに沿う方向に可動する場合について説明するが、裏面10SBが表面10SAに対して可動する場合についても適用される。
【0015】
図1は、不織布10の表面10SAが肌面SKに当接し、裏面10SBに対して表面10SAに沿う方向に可動し得る可動層4を示している。表面10SAに沿う方向とは、不織布10を広げてその裏面10SB側を平面上に置いた場合、不織布10の表面10SAに接触するように配した仮想平面に沿う方向をいう。沿う方向とは平行な方向を意味する。上記可動層4とは、不織布10の表面10SAに沿う方向に外力EF(
図1中、矢印EFで示す)が加わった場合に、その外力EFが加わった方向に表面10SAが裏面10SBに対して動く層をいう。不織布10全体が可動層4になることが好ましい。
可動層4の好ましい態様としては、後述する凹凸部を有し、壁部を有する構成が挙げられる。不織布10の表面10SA又は裏面10SBに凸部を有する場合、表面の動く範囲をD、見掛け厚さをt、外角をθとすると、下記式(1)なる関係を有する。
D=|t・cosθ| (1)
また、不織布10が凹凸を有さず、表面10SA及び裏面10SBともにフラットな面である場合であっても可動層4を備えることができる。この場合、表面10SAの動く範囲は不織布10の見掛け厚さに制限されない。可動層4の繊維が折り畳まれて見掛け厚さが薄くなっていても、動く範囲が確保され得る。すなわち、見掛け厚さ以上に可動するものであってもよい。見掛け厚さとは、後述する測定方法によって測定した不織布10の厚さである。
【0016】
可動層4の可動性は、可動層の内部側4Mの繊維が自由に動ける状態にあることに起因する。例えば、可動層の内部側4Mに、可動層の表面側4S及び裏面側4Bよりも、単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数が少ない領域があること、単位面積当たりの構成繊維の本数が少ない領域があること、繊維が垂直方向に配向している領域があること等に起因する。これにより、肌面SKの動きに追従して表面10SAが肌面SKに対して滑ることなく動くようになる。しかも、表面10SAが、肌面SKとの間に働く摩擦力よりも小さい力で、可動し始める。そのため、特に不織布10の表面10SAに対して肌面SKとの間における摩擦力を高めるようなことをしなくとも、可動層4の可動性によって表面10SAが肌面SKに追従するようになる。可動層4の上記の可動性は、肌面SKのランダムな動きに対しても不織布10の表面10SAが追従することを可能にする。このような不織布10の追従性によって、肌面SKに対して生じる不織布10の表面10SAによる擦れを抑制することができる。また、不織布10の可動層4が、一度撓んで回復しなくとも、可動層4の可動性から、追従性は確保される。
【0017】
[不織布10の表面10SAが動く範囲の測定方法]
図2に示すように、以下のようにして測定を行う。
(i)測定試料の作製:
測定試料として、50mm×50mmの大きさの不織布試料を用意する。
図2(A)に示すように、裏面側台紙52の全面に、接着剤を塗布して接着層51を形成し、不織布試料の裏面10SBを接着層51に接着して固定する。接着剤には、コニシ株式会社製、ボンドG103を用い、0.5gを塗布する。また表面側台紙54の全面に上記同様の接着剤を塗布して接着層53を形成し、不織布試料の表面10SAを接着層53に接着して固定する。また、50mm×50mmの大きさで不織布を採取できない場合、上記の大きさになるように複数枚を並べて台紙に接着するものとする。
なお、市販の吸収性物品に組み込まれた不織布を測定対象とする場合、コールドスプレーを用いて吸収性物品から不織布を丁寧に剥がして取り出し、上記測定試料を作製する。この際、試料にホットメルト接着剤が付着している場合には、有機溶媒を用いてホットメルト接着剤を除去する。この手法は、本明細書における不織布の他の測定に用いる試料に関して、すべて同様である。
【0018】
(ii)動く範囲の測定:
次に、
図2(B)に示すように、固定具55を用いて裏面側台紙52を測定用の基盤56上に固定する。不織布試料の表面10SAに対して該表面10SAに沿う方向の一方向に引張力を印加するための糸57の一端57Aを表面側台紙54に取り付ける。糸57の他端57Bを回動自在な滑車58を介して鉛直下方に垂らす。測定時には、糸57の他端57Bに錘59をぶら下げるよう取り付ける。したがって、糸57の他端57Bに錘59が取り付けられたとき、錘59の重さによって、糸57は表面側台紙54を不織布試料の表面に沿う方向(
図2(B)においては、図面向かって右方向)に引っ張る。
測定は、先ず錘59を取り付けない状態にして、不織布試料の初期位置を測定して測定値M1を得る。その後、錘59(50g)を取り付けて、錘59を静かに離すことによって、錘59によって不織布10の表面10SAを該表面10SAに沿う方向(滑車方向)に引っ張る。
図2(B)は引っ張る直前の状態を示している。引っ張った際に不織布試料の表面10SAにせん断応力(上記条件では200Pa)がかかる。
錘59を離して不織布試料の表面10SAの動きが停止した後、不織布試料の停止位置を測定し、測定値M2を得る。そして、測定値M2と測定値M1との差を求め、不織布試料の表面10SAが可動した量を算出し、この可動した量を不織布10の表面10SAが動く範囲とする。
【0019】
次に、不織布10の好ましい態様について説明する。
図3〜5は、不織布10の好ましい態様(不織布10A)を示している。不織布10Aは、第1面側Z1に凹凸部8を有し、第2面側Z2に凹凸部9を有する。凹凸部8が、第1面側Z1側から見た凹部81と凸部82とを有する。ここでは、前述した不織布10の表面10SAが動く範囲の測定方法における裏面10SBを第2面側Z2とし、表面10SAを第1面側Z1として説明する。不織布を平面上に広げて置いた場合の平面を「基準面」とする。この場合、不織布10の第2面側Z2を下にして不織布10を平面に広げて載置したときの第2面側Z2の面を不織布基準面10SSとする(以下、基準面10SSともいう。)(
図4参照)。したがって、裏面10SBと基準面10SSとが同一面となる(
図4参照)。すなわち、凸部82が、基準面10SSから不織布10の厚さ方向に畝状に突出しているものである。また、凹凸部9が、第2面側Z2側からみて凹部91と凸部92とを有する。ここで、凹部81と凸部92とは表裏の関係にあり、凹部91と凸部82とは表裏の関係にある。なお、前記測定方法における裏面10SB側を第1面側Z1としてもよく、この場合は、凹凸部8が凹凸部9となり、凹部81が凸部92となる。
【0020】
凹凸部8及び凹凸部9は、
図4及び
図5に示すように、次のような構成を有する。
凹凸部8が、凹部81の底部81B(以下、凹底部81Bともいう。)、凸部82の頂部82T(以下、凸頂部82Tともいう。)、及び凸頂部82Tと凹底部81Bを繋ぐ壁部3を備える。凹底部81Bが、第2面側Z2をなす外面繊維層2から構成されている。凸頂部82Tが、第1面側のZ1の平坦面をなす外面繊維層1から構成されている。壁部3が、凹部81及び凸部82の側面部をなし、凹部81と凸部82とを区分する共通の壁である。
また、凹凸部9が、凹部91の底部91B(以下、凹底部91Bともいう。)、凸部92の頂部92T(以下、凸頂部92Tともいう。)、凸頂部92Tと凹底部91Bを繋ぐ壁部3を備える。凹底部91Bが、第1面側Z1の外面繊維層1から構成されている。凸頂部92Tが、第2面側Z2の平坦面をなす外面繊維層2から構成されている。壁部3が、凹部91及び凸部92の側面部をなし、凹部91と凸部92とを区分する共通の壁である。
加えて、頂部82Tと底部91Bとが共通の外面繊維層1にて構成される。頂部92Tと底部81Bとが共通の外面繊維層2にて構成される。
また凹部91が、外面繊維層1の第1外面繊維層11及び第2外面繊維層12のそれぞれに対応して、第1外面繊維層11が底部となる凹部911及び外面繊維層12が底部となる凹部912を有する。そして第2面側Z2において、凹部911がY方向に連通し、凹部912がX方向に連通し、凹部911と凹部912とが連通している。
【0021】
また、壁部3が、第1面側Z1の凹部81の四方を囲む外壁をなしている。すなわち、壁部3によって囲まれた凹部81の内部が、独立した空間を成している。本実施態様においては、4つの壁部3によって箱型の空間を成している。ただし、凹部81を囲む壁部3の数や、壁部3によって成される凹部形状は、これに限定されるものではない。
【0022】
さらに第2面側Z2を基準面10SSとしたとき、凸部82の壁部3の外角θが110°以下であることが好ましい。
凸部82を構成する壁部3の外角θは、不織布10の一方向に沿い、凹凸部8の凹部81中央における縦断面において、壁部3の最上端部と最下端部とを通る直線と基準面10SSとがなす、凸部82外側の角度と定義される。
図3に示す凸部82を構成する壁部3の外角θは、不織布10の一方向に沿い、凹凸部8の凹部81中央における縦断面において、壁部3の上端部と下端部とを通る直線と基準面10SSとがなす外角θ1と(
図4)、不織布10の一方向と直交する方向に沿い、凹凸部8の凹部81中央における縦断面において、壁部3の上端部と下端部とを通る直線と基準面10SSとがなす外角θ2(
図5)とを有する。外角θ1及びθ2は、
図3におけるF1−F1線に沿ったX方向の縦断面、F2−F2線に沿ったY方向の縦断面の互い直交する方向から測定される外角である。外角θ1、θ2はいずれも、下記の規定値内にあることが好ましい。なお、第1面側Z1を基準面10SSにしたときは、凸部92の壁部3の外角θが110°以下であることが好ましい。
【0023】
上記外角θは、可動層4を前述した可動域を備えたものとする観点から、好ましくは110°以下であり、より好ましくは100°以下であり、更に好ましくは90°以下である。そして、好ましくは60°以上であり、より好ましくは70°以上であり、更に好ましくは80°以上である。外角θを前述の上限値以下とすることによって、表面10SA(外面繊維層1の表面)に表面に沿う方向に加えられる外力によって、壁部3全体が不織布基準面10SSの起点から傾くように可動しやすくなり、表面10SAの可動量が大きくなり、十分な可動範囲が得られる。他方、外角θを前述の下限値以上とすることによって、凸部82同士が離間し、平面視した場合に凹凸構造が得られる。
なお、壁部3の上端部3Aと下端部3Bとの間において、不織布基準面10SSに対する壁部3の外角θが部分的に上記範囲外であっても許容される。例えば、壁部3の上端部3Aと下端部3Bとの間において、上記縦断面にて見た壁部3が波打った形状であってもよい。
【0024】
凹部81を側部から囲む壁部3は、それぞれ同程度に傾いていることが好ましい。つまり各壁部の外角θの値が同じであることが好ましい。
例えば、壁部の一方向から測定される外角θ(例えばθ1)が、該一方向と直交する方向から測定される外角θ(例えばθ2)と、同程度であることが好ましい。
同程度であるとは、両者の外角θ1、θ2の差が0°以上10°以下であり、好ましくは8°以下、より好ましくは6°以下、さらに好ましくは4°以下である。
【0025】
[外角θの測定方法]
前述した[不織布10の表面10SAが動く範囲の測定方法]の(i)測定試料の作製に示した方法によって、測定試料を作製する。
次に、不織布10の測定試料を、凹凸部8または凹凸部9を含むように、第1面側Z1面から第2面側Z2面に向かって、もしくは第2面側Z2面から第1面側Z1面に向かって切り、縦断面(F1−F1断面(
図4参照)又はF2−F2断面(
図5参照))を得る。このとき、各断面には、凹部81、凸部82、壁部3、又は凹部91、凸部92、壁部3を含むようにする。次に不織布10の基準面10SSが水平になるように静置して、凹部81、凸部82、壁部3、又は凹部91、凸部92、壁部3を含むように、上記各縦断面を撮影し、断面画像を得る。撮影した各断面画像から壁部3の外角θを測定する。外角θの測定方法の一つとしては、断面画像上に、壁部3の上端部3Aと下端部3Bとを通る直線と基準面10SSを表す基準線とを引き、直線と基準線とがなす外角を、例えば分度器にて測定し、壁部3の外角θを得る。目視される壁部3の面が平坦ではなく凹凸面である場合も、上記同様に測定することができる。
【0026】
不織布10は、可動層4の内部側4M(
図1参照)の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数(融着点数)が、可動層4の表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれにおける単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数よりも少ないことが好ましい。
【0027】
上記の関係を有することによって、表面側4S又は裏面側4Bよりも可動層の内部側4Mが表面に沿う方向に動きやすくなる。これは、可動層の内部側4Mが構成繊維の融着点によって構成繊維の動きが阻害されることが少なくなり、動きやすくなるためである。これによって、可動層4の表面側4S又は裏面側4Bに加えられた表面10SAに沿う方向の外力(例えば、肌面からの荷重)に対して可動層4の表面10SAが追従して動きやすくなる。
【0028】
具体的には、肌面SKと可動層4の表面10SAとの間に働く静止摩擦力より小さな力で可動層4を可動させる観点から、可動層4における構成繊維同士の融着点の数を下記の範囲にて設定することが好ましい。可動層4の内部側4Mの領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数が、可動層4の表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれにおける単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数の70%以下であることが好ましい。より好ましくは65%以下であり、さらに好ましくは60%以下である。そして、可動層の不織布強度を確保する観点から、好ましくは30%以上であり、より好ましくは35%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。なお、構成繊維の融着点数が上記下限値内以上とすることによって不織布強度が確保され可動層4がへたりにくくなり、形状が保持されやすくなる。
【0029】
[融着点数の測定方法]
(i)測定試料の作製:
前述した[不織布10の表面10SAが動く範囲の測定方法]の(i)測定試料の作製に示した方法によって、測定試料を作製する。
(ii)不織布10の可動層4の表面側4S及び裏面側4Bの領域:
図6(A)に示すように、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJCM−5100(商品名))を用いて、不織布10を第1面側Z1及び第2面側Z2より平面視した状態で倍率100倍にて観察を行い、例えば観察領域Pの観察画像を取得する。
次いで、取得した観察画像内に、直径0.5mm(観察画像内の寸法)の基準円Cを付し(
図6(B)参照)、基準円C内の融着点数(j)を数え、下記式(2)に基づいて1mm
2あたりの融着点数(J)に換算する。
融着点数J(個/mm
2)=j×5.1 (2)
なお、
図6(B)は、第1面側Z1からの観察画像について示している。図示例では、黒丸部分が基準円C内の融着点Yの位置であり、その数を数えて融着点数の測定値とする。それぞれの面側について測定し換算した数値を表面側4S及び裏面側4Bの数値とする。
(iii)不織布10の可動層4の内部側4Mの領域:
可動層4の内部側4M(
図1参照)については、不織布10の厚さ方向中心部の厚さ方向不織布断面(不織布平面に直交する断面)と、該不織布10の厚さ方向中心部の厚さ方向不織布断面に直交する断面について、前記(ii)の走査電子顕微鏡を用いた観察方法と同様の方法によって融着点数を測定する。そして、融着点数が多い断面の値を不織布10の可動層4の内部側4Mの領域の1mm
2あたりの融着点数として採用する。
(iv)上記(ii)及び(iii)それぞれの測定を、同一測定試料において各3か所の観察画像を用意して測定し、平均したものを各領域にける測定値とする。
【0030】
不織布10は、積層されたものではなく、1枚の不織布からなることが好ましい。ここで不織布とは繊維ウエブを熱融着した後のものを指し、熱融着前に繊維ウエブを積層したものは1枚の不織布と定義される。熱融着前に繊維ウエブを積層したものか否かは、不織布を顕微鏡観察することで判別できる。製造された不織布において、フィルム状に溶けた状態の繊維が見つからなければ、「1枚の不織布」であると定義できる。例えばヒートエンボスによる融着点を持つものは「不織布を貼り合せたもの」として1枚の不織布ではない。
不織布10が1枚の不織布からなることによって、可動層4の内部側4Mに可動を阻害する融着点の数が少なくなることから、可動層4が動きやすくなる。例えば、積層不織布では、不織布を積層するために繊維同士を接着する融着点を、積層不織布の内部側の領域に有し、この融着点が平面方向への前述した可動を阻害する方向に働く。しかし、不織布が1枚で構成されていれば、積層不織布のような層間の融着点を必要としないため、動きやすくなる。このため、可動層4の可動域が広くなる。
【0031】
不織布10は、可動層4の内部側4M(
図1参照)の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数が、可動層4の表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれにおける単位面積当たりの構成繊維の本数よりも少ないことが好ましい。これにより、可動層4の内部側4Mの領域が、可動層4の表面側4S又は裏面側4Bの領域よりも繊維間の距離を確保し可動しやすくなる。
具体的には、可動層4の内部側4M(
図1参照)の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数は、可動層4の表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれにおける単位面積当たりの構成繊維の本数の80%以下が好ましく、より好ましくは75%以下であり、さらに好ましくは70%以下である。そして、可動層の不織布強度を確保する観点から、40%以上が好ましく、より好ましくは45%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。
上記のような単位面積当たりの構成繊維の本数の構成とすることによって、可動層の内部側4Mの領域の可動性が高くなる。なお、構成繊維の本数が上記下限値以上とすることによって可動層4のクッション性が得られ易くなる。
【0032】
[繊維本数の測定方法]
(i)測定試料の作製:
前述した[不織布10の表面10SAが動く範囲の測定方法]の(i)測定試料の作製に示した方法によって、測定試料を作製する。
(ii)不織布10の可動層4の表面側4S及び裏面側4Bの領域:
前述した[融着点数の測定方法]の(ii)と同様に、第1面側Z1及び第2面側Z2からの観察画像を取得する(例えば
図7の符号Pで示される観察画像)。それぞれの観察画像について、前述の
図6に示した基準円Cを付す(
図7参照)。該基準円Cの線を通る繊維Fbの本数を数え、該本数の総和の半分をその面積中に存在する繊維本数(n)とし、下記式(3)に基づいて1mm
2あたりの繊維本数(N)に換算する。なお、
図7は、第1面側Z1からの観察画像について示している。この図示例では、黒丸部分が基準円Cを通る繊維Fbの位置であり、その数を数えて換算を行う。
繊維本数N(本/mm
2)=(n/2)×5.1 (3)
(iii)不織布10の可動層4の内部側4Mの領域:
前述した[融着点数の測定方法]の(iii)と同様に、不織布10の厚さ方向中心部の厚さ方向不織布断面(不織布平面に直交する断面)と、該不織布10の厚さ方向中心部の厚さ方向不織布断面に直交する断面の観察画像を取得し、前記(ii)の走査電子顕微鏡を用いた観察方法と同様の方法を用いて測定する。そして、繊維本数が多い断面の値を不織布10の可動層4の内部側4Mの領域の繊維本数として採用する。
なお不織布10が凹凸部を有する場合、不織布10の可動層4の内部側4Mの領域は、例えば、凹凸部の壁部3の厚さ方向の中心を通り、壁部3に直交した壁部3の厚さ方向に沿う断面と、その断面に直交する壁部に沿った断面とについて測定する。
(iv)上記(ii)及び(iii)それぞれの測定を、同一サンプルにて各3か所の観察画像を用意して測定し、平均したものを測定値とする。
【0033】
不織布を平面視した平面方向に対し不織布を構成する繊維が垂直である方が、繊維が倒れるように可動する。そのため、繊維相互の可動が容易になる観点から、可動層の内部側4Mの領域における繊維配向度が、可動層4の表面側4S及び裏面側4B(
図1参照)の領域のいずれか一方又は両方における繊維配向度の1.1倍以上であることが好ましい。より好ましくは1.15倍以上であり、さらに好ましくは1.2倍以上である。そして、可動層の不織布強度を確保する観点から、1.4倍以下が好ましく、より好ましくは1.35倍以下であり、さらに好ましくは1.3倍以下である。
上記の関係を有することによって、可動層の内部側4Mが表面10SAに沿う方向に動きやすくなる。すなわち可動層4の動く範囲が広くなる。なお、繊維配向度が上記上限値以下とすることによって可動層4が十分な可動性を有する。一方、繊維配向度が上記下限値以上とすることによって可動層4の厚さ方向の強度が十分に確保できる。そのため、厚さ方向の荷重に対しても潰れ難くなり、可動層4の可動域が確保され、肌面SKの表面に沿う方向への動きに対して追従し易くなり、肌面との擦れが発生しにくくなる。
なお、前記繊維配向度は下記<繊維配向度の定義>に示される数値であり、下記[繊維配向度の測定方法]によって測定される。
【0034】
<繊維配向度の定義>
繊維が一方向に並んでいる度合いを繊維配向度とし、可動層4の表面側4S又は裏面側4Bについては、平面視した状態における方向(例えば、MD方向、CD方向)に繊維が配向している度合いを、繊維配向度の測定方法に基づいて測定する。可動層の内部側4Mの繊維配向度は、厚さ方向の断面について、垂直方向または水平方向に繊維が配向している度合いとする。ここで、MD方向とは機械流れ方向(Machine Direction)であり、CD方向は前記MD方向の直交方向(Cross Direction)である。
可動層の内部側4Mにおける繊維配向度が、表面側4S又は裏面側4Bよりも高いことから、可動層の内部側4Mが表面に沿う方向に動きやすくなっている。このため、可動層4の動く範囲が広くなる。
【0035】
[繊維配向度の測定方法]
(i)測定試料の作製:
前述した[不織布10の表面10SAが動く範囲の測定方法]の(i)測定試料の作製に示した方法によって、測定試料を作製する。
(ii)不織布10の可動層4の表面側4S及び裏面側4Bの領域:
前述した[融着点数の測定方法]の(ii)と同様に、第1面側Z1及び第2面側Z2からの観察画像を取得する(例えば
図8の符号Pで示される観察画像)。それぞれの観察画像について、0.5mm×0.5mm(観察画像内の寸法)の正方形SQをなす基準線Lを付す(
図8参照)。ここで基準線Lは、不織布又は不織布が組み込まれた物品の長手方向(例えばMD方向)または該長手方向と直交する方向(例えばCD方向)と一致するよう作成する。すなわち、上下基準線が正方形SQの上辺L1、下辺L2にて構成され、上下基準線を通る繊維を「上下繊維本数」とし、左右基準線が正方形の左右辺L3、L4にて構成され、左右基準線を通る繊維を「左右繊維本数」とする。
繊維配向度(K)は、上下繊維本数と左右繊維本数のうち値の大きい方をA、値の小さい方をBとし、下記式(4)に基づいて算出する。
繊維配向度K(度)=[A/(A+B)]×100 (4)
なお、
図7は、第1面側Z1からの観察画像について示している。この図示例では、黒丸部分が正方形の各辺(基準線)を繊維Fbが通る位置である。
(iii)不織布10の可動層4の内部側4Mの領域:
可動層の内部側4Mについては、不織布10の厚さ方向中心部の厚さ方向不織布断面(不織布平面に直交する断面)について、前記(ii)の走査電子顕微鏡を用いた観察方法と同様の方法を用いて測定する。
(iv)上記(ii)及び(iii)それぞれの測定を、同一サンプルにて各3か所の観察画像を用意して測定し、平均したものを測定値とする。
【0036】
不織布10において、可動層4の内部側4Mの領域と可動層4の表面側4S及び裏面側4Bとの間の関係が、前述した繊維の融着点、繊維本数及び繊維配向度の好ましい数値範囲の少なくとも1を満たすことが好ましく、2以上を満たすことがより好ましく、全てを満たすことが特に好ましい。全てを満たす場合、肌面と不織布10の表面10SA(可動層4の表面側4Sの領域)との間における摩擦ゼロ(肌追従しない)となる状態を最も強く排除することができ、肌面に対する不織布の擦れ抑制効果をより発生させやすくなる。
【0037】
次に、
図3〜5に示す不織布10Aのより具体的な構造について説明する。
不織布10Aは、可動層4の表面側4Sの領域に、第1面側Z1の外面繊維層1が第1、第2外面繊維層11、12を有する。第1、第2外面繊維層11、12は、不織布10Aの平面視して交差する異なる方向のそれぞれに沿って延出する長さを有する。延出する方向は、不織布10Aの辺に沿う、互いに直交するX方向とY方向である。一例として、Y方向が不織布10Aの長手方向であり、X方向が不織布10Aの幅方向である。
【0038】
第1外面繊維層11は、不織布10Aの平面視において、Y方向に切れ目なく連続して延出している。すなわち、第1外面繊維層11が、不織布10Aの長さ方向全体に亘って切れ目なく連続し、Y方向と直交するX方向に、複数が互いに離間して配されている。
【0039】
第2外面繊維層12は、X方向に延出しており、X方向に離間して並列する第1外面繊維層11、11の間を繋いで配されている。「第1外面繊維層11、11間を繋いで」いるとは、第1外面繊維層11を挟んで隣り合う第2外面繊維層12同士が直線状に並んでいることをいう。具体的には、第2外面繊維層12のX方向に延びる幅中心線と、第1外面繊維層11を挟んで隣り合った第2外面繊維層12のX方向に延びる幅中心線とのズレが、第2外面繊維層12の幅(Y方向の長さ)の範囲であることをいい、例えば5mm以内であることをいう。
第2外面繊維層12は、第1外面繊維層11よりも第1面側Z1の位置が若干低く形成されていることが好ましい。そのため第2外面繊維層12が、第1外面繊維層11の介在によりX方向の長さが分断され、複数個が互いに離間しながらX方向に列をなしている。また、第2外面繊維層12の幅(Y方向の長さ)が、第1外面繊維層11の幅(X方向の長さ)よりも狭くされていることが好ましい。この第2外面繊維層12のX方向の列は、更にY方向について複数が互いに離間して配されている。なお、第2外面繊維層12の形状は本実施形態のものに限定されず、例えば、前記第1面側Z1の位置や幅を第1外面繊維層11と同様にしてもよい。
【0040】
上記外面繊維層1が延出方向の異なる複数種を有する場合、延出方向とされる「平面視交差する異なる方向」はX方向及びY方向に限定されない。不織布10の平面方向(表面に沿う方向と平行な方向)における交差する方向であれば種々の態様をとり得る。
【0041】
第2面側Z2の外面繊維層2は、可動層4の裏面側4Bの領域にあり、複数互いに離間して配されている。具体的には、外面繊維層2は、第2面側Z2において、第1面側Z1の第1外面繊維層11、11の間の離間空間を覆い、外面繊維層11の延出方向(Y方向)に沿って複数互いに離間して列をなしている。さらに、外面繊維層2のY方向の列が、Y方向と直交するX方向について、複数が互いに離間して配される。すなわち、外面繊維層2がX方向にも配列される。外面繊維層2の配列方向が、平面視して、外面繊維層1と面が重ならない位置において、外面繊維層1の延出方向に一致している。そのため、外面繊維層1の延出方向が上記X方向及びY方向と異なる方向を取る場合、外面繊維層2の配列方向もこれに応じて上記X方向及びY方向と異なる方向となる。
【0042】
また、壁部3は、可動層4の内部側4Mの領域にあり、第1面側Z1の第1外面繊維層11と第2面側Z2の外面繊維層2とを繋ぐ第1壁部31と、第1面側Z1の第2外面繊維層12と第2面側Z2の外面繊維層2とを繋ぐ第2壁部32とを有する。壁部3(第1壁部31及び第2壁部32)が、外面繊維層1及び2の離間配置に合わせて、不織布10の平面方向に複数が互いに離間して配されている。
【0043】
壁部3を構成する第1壁部31及び第2壁部32が、不織布10の平面視交差する異なる方向に沿って複数が配される。具体的には、第1壁部31が、第2面側Z2の外面繊維層2のY方向の辺に一致する長さを有し、第1面側Z1の第1外面繊維層11の延出方向に沿った面を備える。すなわち、第1壁部31の面がY方向に沿って配される。一方、第2壁部32が、第2面側Z2の外面繊維層2のX方向の辺に一致する長さを有し、第1面側Z1の第2外面繊維層12の延出方向に沿った面を備える。すなわち、第2壁部32の面がX方向に沿って配される。壁部3(第1壁部31及び第2壁部32)の面の沿う方向が、外面繊維層1(第1外面繊維層11及び第2外面繊維層12)の延出方向に一致している。そのため、外面繊維層1の延出方向が上記X方向及びY方向と異なる方向を取る場合、壁部3の面の沿う方向もこれに応じて上記X方向及びY方向と異なる方向となる。
【0044】
次に、別の好ましい実施形態について、
図9を参照しながら、以下に説明する。なお、
図3〜5によって示した上記実施形態の不織布10Aと同様の構成部品には、同一符号を付す。
【0045】
図9に示す不織布10(10B)は、前述の不織布10Aの第2面側Z2の全面に被覆層70が配されたものである。被覆層70以外は前述の不織布10Aと同様である。被覆層70が可動層4の裏面側4Bの領域に位置する。この不織布10Bは、表面10SA(可動層4の表面側4Sの領域)が肌面SKに追従する際、裏面10SB(可動層4の裏面側4Bの領域)である被覆層70が滑らず、表面10SAが表面10SAに沿う方向に動きやすくなる。
【0046】
上記不織布10は、以下の要件を満たすことが好ましい。
不織布10内にて目付量が異なっており、可動層4の厚さ方向(Z方向)について、可動層4の内部側4Mの領域に、表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれよりも目付量が少ない領域を有することが好ましい。この目付量の少ない部分では繊維同士の空間が広いため、表面10SAに沿う方向への動きが容易となる。
【0047】
不織布10の見掛け厚さは、繊維間の可動空間を確保する観点から、1.5mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。そして、見掛け厚さの上限は特に制限されるものではないが、吸収性物品などの商品形態において、携帯性等に優れたものとする観点から、10mm以下が好ましく、9mm以下がより好ましく、8mm以下が更に好ましい。
【0048】
[不織布の見掛け厚さの測定方法]
測定対象の不織布を10cm×10cmに裁断し、測定試料を作製する。該大きさがとれない場合はできるだけ大きな面積に切って、測定試料を作製する。レーザー厚さ計(オムロン株式会社製、高精度変位センサZS−LD80)を使用し、50Paの荷重時の厚さを測定する。三箇所測定し、平均値を見掛け厚さとする。
【0049】
[不織布の目付量の測定方法]
上記見掛け厚さの測定方法と同様にして測定試料を作製する。天秤を用いて、測定試料の質量をg単位で小数点第2位まで測定し、その測定値を測定試料の面積にて割った値を目付量とする。
不織布の各部位の目付の測定方法は、測定対象の不織布から各部位を切り出し、切り出した幅及び長さをmm単位で小数点第1位まで精密に測定する。そして合計が50mm
2以上になるまで測定試料を切り出し、その合計が50mm
2以上になった測定試料の質量を、精密天秤を用いてg単位で小数点第4位まで測定し、その測定値を測定試料の面積にて割った値を目付量とする。
【0050】
不織布10は、構成する繊維が芯鞘構造を有し、不織布10内にて該芯鞘構造の繊維の芯鞘比が異なっていることが好ましい。そして、可動層4の厚さ方向について、可動層4の内部側4Mの領域に、表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれよりも鞘比が少ない領域を有することが好ましい。芯鞘比は、繊維作製時の芯樹脂量と鞘樹脂量の質量比(質量%)によって定義される。鞘比の小さい箇所では、繊維間の融着樹脂量が少ないため融着部分が変形しやすくなり動きやすい構造となる。
繊維が芯鞘構造を有する場合、芯成分と鞘成分とで異なる樹脂を用いることができる。中でも、繊維同士を効果的に融着させる観点から、低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維(例えば鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘型複合繊維)を用いることが好ましい。鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘型複合繊維の具体例としては、鞘がポリエチレン(PE)、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)である芯鞘型複合繊維が挙げられる。
【0051】
また、芯鞘型複合繊維において、芯の樹脂成分よりも鞘の樹脂成分の方が、ガラス転移温度が低い場合(以下、低ガラス転移温度樹脂という)(例えば、芯の樹脂成分がPETで鞘の樹脂成分がPE)、低ガラス転移温度樹脂成分の質量比を小さくすることで、不織布の厚みの回復性を高められる。このようになる要因としては、次のようなことが考えられる。低ガラス転移温度樹脂は、緩和弾性率が低いことが知られている。また、緩和弾性率が低いと変形に対して回復しづらいことも知られている。従って、低ガラス転移温度樹脂成分をできるだけ少なくすることによって、より高い厚み回復性を不織布に付与できると考えられる。
この芯鞘型複合繊維の場合、繊維総量における低ガラス転移温度樹脂成分(PE等)の割合は、質量比で、繊維総量におけるガラス転移温度の高い樹脂成分(PET等)の割合よりも小さいことが好ましい。具体的には、繊維総量における低ガラス転移温度樹脂成分の割合は、質量比で、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。低ガラス転移温度樹脂成分の割合を小さくすることで、不織布の厚みの回復性を高めることができる。また、不織布の製造上の観点から、前記割合は、質量比で、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
このことは、
図10に示すグラフからも分かる。
図10では、芯の樹脂成分(PET)及び鞘の樹脂成分(PE)の割合を変えた場合における、不織布の1日圧縮後の回復率を示している(測定方法は、後述の実施例にて示した「1日圧縮後の回復性」に示す方法による。)。なお不織布は
図12に示す工程を含むエアスルー製造方法によって作製した。第1の熱風W1による吹き付け処理は、温度160℃、風速54m/s、吹き付け時間6s条件で行った。第2の熱風による吹き付け処理は、温度160℃、風速6m/s、吹き付け時間6s条件で行った。作製した不織布の見掛け厚みは、「芯比30」のものが6.0mm、「芯比50」のものが6.9mm、「芯比70」のものが6.6mm、「芯比90」のものが6.0mmであった。ガラス転移温度が低いPEすなわち鞘の樹脂成分の割合が小さい(芯の樹脂成分の割合が大きい)ほど、1日圧縮後の回復率は高い。特に、鞘の樹脂成分の割合が50質量%未満(芯の樹脂成分の割合が50質量%超)になると、1日圧縮後の回復率が70%以上となり好ましい。
【0052】
不織布10は、不織布内の単位面積当たりの捲縮している繊維数が異なっている。そして、可動層4の厚さ方向について、可動層4の内部側4Mの領域に、表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれよりも捲縮している繊維数が少ない領域を有することが好ましい。この捲縮繊維の少ない箇所では、繊維の絡み合いが起きにくいため、繊維が絡まって動きを阻害されることがほとんど無く、動きやすくなる。具体的には、可動層4の厚さ方向の一部に捲縮している繊維数が少ない領域を有することが好ましい。例えば、壁部3の高さ方向の一部の領域に捲縮している繊維数が少ない領域を有することが好ましい。
または、壁部3の全体を捲縮している繊維数が少ない領域としてもよい。
【0053】
不織布10は、構成繊維の繊維径が異なっており、可動層4の厚さ方向について、可動層4の内部側4Mの領域に、表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれよりも繊維径が太い領域を有することが好ましい。具体的には、壁部3の高さ方向の一部の領域に繊維径が太い領域を有することが好ましい。この繊維径が太い領域では、繊維が密集しないため、繊維の絡み合いが起きにくく、繊維が絡まって動きが阻害されることが無く、動きやすくなる。
【0054】
不織布10は、構成繊維の熱伸縮率が異なっており、可動層4の厚さ方向について、可動層4の内部側4Mの領域に、表面側4S及び裏面側4Bの領域のいずれか一方又は両方それぞれよりも熱伸長する領域を有することが好ましい。例えば、可動層4の厚さ方向に熱伸長する領域を有することが好ましい。この熱伸長する領域は、凸部高さが高くなり、見掛け厚さが厚くなることから、次式の通り、表面10SAの動く範囲が大きくなる。表面10SAの動く長さをD、見掛け厚さをt、外角をθとしたとき、前述の式(1)なる関係が得られる。具体的には、壁部3に熱伸長する領域を有することが好ましい。
または、壁部3の全体を熱伸長する繊維領域としてもよい。
【0055】
さらに、図示はしていないが、不織布10は、外面繊維層1、2及び壁部3は相互に、少なくとも一部の繊維同士が融着して継ぎ目なく一体化している。不織布10は、壁部3が第1面側Z1の外面繊維層1と第2面側Z2の外面繊維層2とを連結して支えることによって嵩高く厚さのあるものとなる。不織布10の厚さとは、外面繊維層1、2や壁部3の局所の厚さではなく、不織布全体の賦形された形状における見掛け厚さを指すものである。
なお、不織布10において、外面繊維層1、2、壁部3及び接続部分以外の各部位においても少なくとも一部の繊維同士の交点にて融着している。また不織布10には融着しない交点があってもよい。また、不織布10が熱可塑性繊維以外の繊維を含んでもよく、熱可塑性繊維がそれ以外の繊維との交点にて融着する場合を含んでもよい。
【0056】
本発明の不織布は、前述したように、表面に沿う方向に表面が5mm以上の可動域を有する限り、上記した形状のものに限らず、種々の形状をとることができる。
上記説明した以外に、例えば、表面や裏面に凹凸を有さないフラット面を有する不織布についても、可動層4の内部側4Mの領域を備えることにより、5mm以上の可動域を有する本発明の不織布とすることができる。可動層4の内部側4Mの領域は、前述した融着点数、繊維本数、繊維配向度、目付量、芯鞘比、捲縮数、繊維径、熱伸長領域等の条件を満たすことが好ましい。また、特開2012−136791号公報の
図1に示された構成の不織布及び特開2016−79529号公報の
図1に示され構成の不織布についても、上記融着点数等の各条件、及び壁部の外角等を適切に設定するなどして、本発明の不織布とすることができる。
【0057】
次に、
図11を参照して、本発明に係る不織布を表面シートに用いた吸収性物品の好ましい一実施形態としておむつ200の本体204への適用例について以下に説明する。同図に示したおむつはテープ型の乳幼児用使い捨ておむつであり、平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)からみた状態で示している。
【0058】
図11に示すように、本発明のおむつ200に使用される吸収性本体204は以下の基本構成を有する。すなわち、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート201と、非肌当接面側に配置される液難透過性の裏面シート202と、表面シート201と裏面シート202との間に介在される液保持性を有する吸収体203とを有する。
【0059】
表面シート201には上記実施形態の不織布10が適用される。表面シート201は、
図3に示す不織布10Aをその第1面側Z1を肌当接面側に向けて配したものである。裏面シート202は展開状態にて、その両側縁が長手方向中央部Cにおいて内側に括れた形状を有しており、1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。本例においては、サイドシート205がなす横漏れ防止ギャザー206が配される。なお、
図11においては各部材の配置関係や境界を厳密には図示しておらず、この種のおむつの一般的な形態とされていれば特にその構造は限定されない。
【0060】
上記おむつ200はテープ型のものを示しており、背側Rのフラップ部にはファスニングテープ207が設けられている。ファスニングテープ207を腹側Fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して、おむつを装着固定する。このとき、おむつ中央部Cを緩やかに内側に折り曲げて、吸収体203が臀部から下腹部にわたって沿わされるように着用する。不織布10を表面シート1として適用したことにより、肌面の動きに対する不織布表面の追従性が良くなり、さらに肌触りが柔らかでしなやかな風合いの良さを示すことができる。
【0061】
吸収性本体204の形状が、装着時に着用者の股下部分を介して下腹部側から臀部側へと配される長手方向とこれと直交する幅方向とを有する縦長の形状である。本明細書においては、吸収性本体204の平面視において相対的に長さのある方向を長手方向といい、この長手方向と直交する方向を幅方向という。上記長手方向が典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0062】
表面シート201は、前述の本発明の不織布10で構成され、親水性不織布であることが好ましい。親水性不織布としては、その繊維がポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンの複合繊維等で親水化処理が施された繊維が好ましく使用できる。
上記裏面シート202及び吸収体203には、例えば特開2013−147784号公報、特開2014−005565号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0063】
おむつ200の表面シート201として、本発明の不織布10が、可動層4が表面に沿う方向に5mm以上可動可能であることから、着用者の臀部の動きに追従し易くなる。そのため、表面シート201による肌面に対する擦れが抑制され、肌面に優しい表面シートになる。また、排せつ点に表面シート201が常に合うようになり、漏れが抑制されるという、優れたものとなる。さらに常に所望の位置に表面シートを存在させることができるので、表面シートを従来よりも小さい面積にすることも可能になる。
【0064】
本発明の不織布は各種用途に用いることができる。例えば、成人用や乳幼児用の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の吸収性物品の表面シートとして好適に使用することができる。さらに、生理用品やおむつ等の表面シートと吸収体との間に介在させるサブレイヤー、吸収体の被覆シート(コアラップシート)などとして用いることもできる。さらには、清掃用ワイピングシートに用いることができる。
【0065】
次に、本実施形態の不織布10の製造方法の好ましい一実施形態について、
図12を参照して以下に説明する。
本実施形態の不織布10の製造方法においては、不織布化する前の繊維ウエブ110を賦形するための支持体雄材120と支持体雌材130とを用いる。
図12(A)に示すように、支持体雄材120の上に繊維ウエブ110を載置し、繊維ウエブ110の上から支持材雌材130にて抑えて挟み込んで賦形する。
【0066】
支持体雄材120は、不織布10の空間を囲む4つの壁部3及び第2面側Z2の外面繊維層2(
図3等参照)が賦形される位置に対応して複数の突起121を有する。突起121、121間は、第1面側Z1の外面繊維層1が賦形される位置に対応する凹部122とされている。これにより、支持体雄材120は凹凸形状を有しており、突起121と凹部122とが平面視異なる方向に交互に配されている。凹部122の底部123は熱風が吹き抜ける構造となっており、例えば複数の孔が配されている(図示せず)。
【0067】
支持体雌材130は、支持体雄材120の凹部122に対応する格子状の突起131を有する。突起131、131間は、支持体雄材120の突起121に対応する凹部132とされている。これにより、支持体雌材130は凹凸形状を有しており、突起131と凹部132とが平面視異なる方向に交互に配されている。凹部132の底部133は、熱風が吹き抜ける構造となっており、例えば多数の孔が配されている。突起131、131間の距離は、支持体雄材120の突起121の幅よりも広くされている。その距離は、支持体雄材120の突起121と支持体雌材130の突起131とで繊維ウエブ110を挟み込んで繊維が厚さ方向に配向する壁部3を好適に賦形できるよう適宜設定される。
【0068】
また、支持体雌材130における突起131の配置は、上記格子状に限らず、他のパターンを有していてもよい。例えば、図示しないが、支持体雌材130が、支持体雄材120の支持体凹部122に対応し、かつ、平面視して一方向に連続する突起131を有するものであってもよい。この場合、突起131、131間は、支持体雄材120の突起121に対応し、かつ、前記一方向に連続する支持体凹部132とされる。これにより、支持体雌材130は凹凸形状を有しており、突起131と支持体凹部132とが、前記一方向と直交する方向に交互に配される。具体的には、リング状の円盤を回転軸方向に複数、等間隔に繋げたドラム形状のものなどが挙げられる。この場合、支持体雌材130が突起131を格子状に配置したものである場合に比べ、
図3に示すX方向に延びる凸部82の高さが低く形成されることとなる。
【0069】
まず、本実施形態においては、融着する前の繊維ウエブ110を所定の厚さとなるようカード機(図示せず)からウエブを賦形する装置に供給する。
【0070】
次いで、
図12(A)に示すように、支持体雄材120上に、熱可塑性繊維を含む繊維ウエブ110を配し、繊維ウエブ110上から、支持体雄材120の突起121を支持体雌材130の支持体凹部132に挿入する。また、支持体雄材120の支持体凹部122に支持体雌材130の突起131を挿入する。これにより繊維は厚さ方向と平面方向に配向されるようになる。
【0071】
この状態で、
図12(B)に示すように支持体雌材130の側から繊維ウエブ110に対し第1の熱風W1を吹き付ける。これにより、繊維ウエブ110は不織布10の凹凸形状を保持可能な程度に融着される。
突起121の頂部と凹部132の底部との間では、第1の熱風W1の吹き抜けが抑えられ、繊維が平面方向で融着される。これにより、第2面側Z2の外面繊維層2に相当する繊維層が賦形される。また、凹部122の底部と突起部131の頂部との間で、繊維が平面方向に配向する。突起部131は熱風を阻害しているので、形成される繊維層には融着が少なく、滑らかな繊維層が実現される。これにより、第1面側Z1の外面繊維層1に相当する繊維層が賦形される。このとき厚さ方向に配向している壁部3の形状が保持される。
なお、図面矢印は第1の熱風W1の流れを模式的に示している。
【0072】
第1の熱風W1の温度が、熱可塑性繊維が縦配向形状に保持できる温度に設定されることが好ましい。この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、繊維ウエブ110を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上70℃以下高いことが好ましい。
第1の熱風W1の風速は、効果的に融着させる観点から、2m/s以上が好ましい。
このようにして、繊維ウエブ110を凹凸形状に保持させる仮融着を施す。
【0073】
次に、支持体雌材130を取り外す。そして、
図12(C)に示すように、凹凸形状に賦形された繊維ウエブ110の各繊維が適度に融着可能な温度の第2の熱風W2を吹きつけて、繊維同士をさらに融着させる。この場合も第1の熱風W1と同様に、繊維ウエブ110に対し、不織布10における第2面側Z2から第2の熱風W2を吹き付けることが好ましい。第2の熱風W2の温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、繊維ウエブ110を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上70℃以下高いことが好ましい。
第2の熱風W2の風速は、支持体雄材120の突起121の高さにもよるが、3m/s以上が好ましい。これにより、繊維への熱伝達を十分なものとして繊維同士を融着させ、凹凸形状の固定を十分なものとすることができる。
熱可塑性繊維としては、不織布の素材として通常用いられるものを特に制限なく採用でき、単一の樹脂成分からなる繊維や、複合繊維としては、例えば芯鞘型、サイドバイサイド型などがある。
以上説明したようにして、不織布10が作製される。
【0074】
得られた不織布10が、第2面側Z2は第1の熱風W1及び第2の熱風W2が吹き付けられた側であるため、第2面側Z2の外面繊維層2の繊維同士の融着点が多くなる。このように不織布10の厚さ方向に融着点数に差が生じることから、不織布の表面は表面に沿う方向に動きやすくなる。支持体雄材120の凹部122の底部に賦形された第1面側Z1の外面繊維層1よりも、支持体雄材120の突起121の頂部に賦形された第2面側Z2の外面繊維層2に向かうに従って繊維量が少なくなる。このため、不織布の表面が表面に沿う方向に動きやすくなる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の不織布及び吸収性物品を開示する。
【0075】
<1>
不織布の表裏の面を備えた可動層を有し、該可動層が、前記表裏の面の一方の面が他方の面に対して該一方の面に沿う方向に5mm以上可動し得る可動域を有する、不織布。
【0076】
<2>
前記可動層の前記表面に沿う方向に動く範囲が、5mm以上10mm以下であり、好ましくは6mm以上、より好ましくは7mm以上であり、また、好ましくは9mm以下、より好ましくは8mm以下である<1>に記載の不織布。
<3>
前記可動層の動く範囲は、下記[不織布の表面が動く範囲の測定方法]に基づいて測定される、<1>又は<2>に記載の不織布。
[不織布の表面が動く範囲の測定方法]
(i)測定試料の作製:
測定試料として、50mm×50mmの大きさの不織布試料を用意する。裏面側台紙の全面に、接着剤を塗布して接着層を形成し、不織布試料の裏面を接着層に接着して固定する。また表面側台紙の全面に接着剤を塗布して接着層を形成し、不織布試料の表面を接着層に接着して固定する。
(ii)動く範囲の測定:
次に、固定具を用いて裏面側台紙を測定用の基盤上に固定する。不織布試料の表面に対して該表面に沿う方向の一方向に引張力を印加するための糸の一端を表面側台紙に取り付ける。前記糸の他端を回動自在な滑車を介して鉛直下方に垂らす。測定時には、前記糸の他端に50gの錘をぶら下げるよう取り付ける。したがって、前記糸の他端に錘が取り付けられたとき、該錘の重さによって、前記糸は表面側台紙を不織布試料の表面に沿う方向に引っ張る。
測定は、先ず前記錘を取り付けない状態にして、不織布試料の初期位置を測定して測定値M1を得る。その後、前記錘を取り付けて、該錘を静かに離すことによって、該錘によって不織布試料の表面を該表面に沿う方向(滑車方向)に引っ張る。
前記錘を離して不織布試料の表面の動きが停止した後、不織布試料の停止位置を測定し、測定値M2を得る。そして、測定値M2と測定値M1との差を求め、不織布試料の表面が可動した量を算出し、この量を不織布の表面が動く範囲とする。
<4>
前記可動層における構成繊維同士の融着点の数が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域よりも前記可動層の内部側の領域において少ない<1>〜<3>のいずれか1に記載の不織布。
<5>
前記可動層の内部側の領域とは、前記可動層の表面側と前記可動層の裏面側とに挟まれた領域をいう<1>〜<4>のいずれか1に記載の不織布。
<6>
前記不織布が厚さ方向に該不織布の基準面から突出する凸部を有しており、
前記基準面に対する前記凸部の壁部の外角が110°以下である<1>〜<5>のいずれか1に記載の不織布。
<7>
前記基準面が、前記不織布を平面上に広げて置いた場合の平面である<6>に記載の不織布。
<8>
前記凸部を構成する壁部の外角が、前記不織布の一方向に沿い、凹凸部の凹部中央における縦断面において、前記壁部の上端部と下端部とを通る直線と基準面とがなす外角θ1と、前記一方向と直交する方向に沿い、凹凸部の凹部中央における前記縦断面と直交する縦断面において、前記壁部の上端部と下端部とを通る直線と基準面とがなす外角θ2とを有し、該外角θ1、θ2ともに、110°以下である<6>又は<7>に記載の不織布。
<9>
前記外角が、60°以上110°以下であり、好ましくは70°以上、より好ましくは80°以下、また、好ましくは100°以下、より好ましくは90°以下である<6>〜<8>のいずれか1に記載の不織布。
<10>
前記壁部の一方向から測定される前記外角θ1と、該一方向と直交する方向から測定される前記外角θ2とが同程度である<8>又は<9>に記載の不織布。
<11>
前記外角θ1と前記外角θ2とが同程度であるとは、両者の角度の差が0°以上10°以下であり、好ましくは8°以下、より好ましくは6°以下であり、さらに好ましくは4°以下である<10>に記載の不織布。
<12>
前記外角θ1と前記外角θ2とが同程度であるとは、両者の角度の差が0°以上4°以下である<10>に記載の不織布。
<13>
前記不織布が1枚の不織布からなる<1>〜<12>のいずれか1に記載の不織布。
<14>
前記1枚の不織布とは、フィルム状に溶けた繊維を有さないものである<13>に記載の不織布。
<15>
前記可動層の内部側の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数の40%以上80%以下である<1>〜<14>のいずれか1に記載の不織布。
<16>
前記可動層の内部側の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数の40%以上80%以下であり、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、また、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下である<1>〜<15>のいずれか1に記載の不織布。
<17>
前記可動層の内部側の領域における単位面積当たりの構成繊維の本数が、前記可動層の表面側及び裏面側の領域おける単位面積当たりの構成繊維の本数の40%以上80%以下であり、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、また、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下である<16>に記載の不織布。
<18>
前記可動層の内部側の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数の30%以上70%以下である<1>〜<17>のいずれか1に記載の不織布。
<19>
前記可動層の内部側の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数の30%以上70%以下であり、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、また、好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下である<1>〜<18>のいずれか1に記載の不織布。
<20>
前記可動層の内部側の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数が、前記可動層の表面側及び裏面側の領域における単位面積当たりの構成繊維同士の融着点の数の30%以上70%以下であり、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、また、好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下である<19>に記載の不織布。
<21>
前記可動層の内部側の領域における繊維配向度が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における繊維配向度に対して1.1倍以上1.4倍以下である<1>〜<20>のいずれか1に記載の不織布。
<22>
前記可動層の内部側の領域における繊維配向度が、前記可動層の表面側又は裏面側の領域における繊維配向度に対して1.1倍以上1.4倍以下であり、好ましくは1.15倍以上、より好ましくは1.2倍以上、また、好ましくは1.35倍以下、より好ましくは1.3倍以下である<1>〜<21>のいずれか1に記載の不織布。
<23>
前記可動層の内部側の領域における繊維配向度が、前記可動層の表面側及び裏面側の領域における繊維配向度に対して1.1倍以上1.4倍以下であり、好ましくは1.15倍以上、より好ましくは1.2倍以上、また、好ましくは1.35倍以下、より好ましくは1.3倍以下である<22>に記載の不織布。
<24>
前記不織布内にて目付量が異なっており、前記可動層の内部側の領域に、前記可動層の表面側又は裏面側の領域よりも前記目付量が少ない領域を有する<1>〜<23>のいずれか1に記載の不織布。
<25>
前記不織布を構成する繊維が芯鞘構造を有し、前記不織布内にて該芯鞘構造の繊維の芯鞘比が異なっており、前記可動層の内部側の領域に、前記可動層の表面側又は裏面側の領域よりも鞘比が小さい領域を有する<1>〜<24>のいずれか1に記載の不織布。
<26>
前記不織布内にて該不織布の単位面積当たりの捲縮している繊維数が異なっており、前記可動層の内部側の領域に、前記可動層の表面側又は裏面側の領域よりも捲縮している繊維が少ない領域を有する<1>〜<25>のいずれか1に記載の不織布。
<27>
前記不織布内にて該不織布の繊維径が異なっており、前記可動層の内部側の領域に、前記可動層の表面側又は裏面側の領域よりも繊維径が太い領域を有する<1>〜<26>のいずれか1に記載の不織布。
<28>
前記不織布内にて該不織布の構成繊維の熱伸縮率が異なっており、前記可動層の内部側の領域に、前記可動層の表面側又は裏面側の領域よりも熱伸長する領域を有する<1>〜<27>のいずれか1に記載の不織布。
【0077】
<29>
<1>〜<28>のいずれか1に記載の不織布を有する吸収性物品。
<30>
<1>〜<28>のいずれか1に記載の不織布を表面シートに用いた吸収性物品。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0079】
(実施例1)
図3に示す不織布を、繊度1.2dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を用い、
図12に示す製造工程を含むエアスルー製造方法によって作製した。これを実施例1の不織布試料とした。第1の熱風W1による吹き付け処理は、温度160℃、風速54m/s、吹き付け時間6sの条件にて行った。第2の熱風による吹き付け処理は、温度160℃、風速6m/s、吹き付け時間6sの条件にて行った。
【0080】
(実施例2)
目付量を表1の通りとした以外は実施例1と同様の製造方法に従い、実施例2の不織布試料を作製した。
(実施例3)
繊度を表1の通りとした以外は実施例1と同様の製造方法に従い、実施例3の不織布試料を作製した。
(実施例4)
繊度3.2dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=7:3(質量比))の熱可塑性繊維を用いた以外は実施例1と同様の製造方法に従い、実施例4の不織布試料を作製した。
【0081】
(実施例5〜7)
図12に示す支持体雌材130について、突起131を格子状に配置したものではなく、突起131をリング状の円盤を回転軸方向に複数、等間隔に繋げたドラム形状のものとした以外は、実施例1〜3と同様の製造方法に従い、実施例5〜7の不織布試料を作製した。
【0082】
(比較例1)
特開2012−136791号公報に記載の不織布の製造方法によって製造した不織布を比較例1の不織布試料とした。
(比較例2)
エアスルー製造方法によって厚さが一定のフラットな不織布を作製し、比較例2の不織布試料とした。
(比較例3)
特開2016−79529号公報に記載された発明の不織布の製造方法の歯溝延伸加工によって製造した波板状の不織布を比較例3の不織布試料とした。
【0083】
上記実施例、比較例について、前述の[不織布10の表面10SAが動く範囲の測定方法]に基づいて「可動量」を測定し、前述の[外角θの測定方法]に基づいて「壁部外角」を測定した。また、上記実施例、比較例について、[融着点数の測定方法]、[繊維本数の測定方法]、[繊維配向度の測定方法]及び[不織布の見掛け厚さの測定方法]に基づいて各値を測定し、[不織布の目付量の測定方法]に基づいて「凸部頂部の目付量」を測定した。
【0084】
さらに上記実施例については、下記の通り、「1日圧縮後の回復性」の試験も行った。
すなわち、厚さ0.7mmのワッシャーとともに不織布を2枚のアクリル板で挟み、その上から錘(20kg)を載置して荷重をかけ、不織布を厚さ0.7mmに圧縮した。この状態で1日放置後、錘とアクリル板を不織布から取り外し、10分後に不織布の見掛け厚みを測定した。この測定値と、事前に測定した圧縮前の不織布の見掛け厚みから、不織布の厚みの回復率を求め、不織布の1日圧縮後の回復性を評価した。
【0085】
【表1】
表1中、「Y」は1枚の不織布からなることを示し、「N」は不織布を貼り合せたものを示す。
【0086】
表1より、以下のような結果が得られた。実施例1〜7の不織布の方が、比較例1〜3の不織布の何れよりも、可動量が5mm以上であり、大幅に長かった。このため、実施例1〜7の不織布は、肌面の動きに対して優れた追従性を備えるものとなっていた。また、実施例1〜7の不織布は、前記追従性によって、肌面の動きによって生じる肌面に対する不織布の擦れを抑制し得ることが分かった。また、実施例1〜7の不織布の方が、比較例1〜3の不織布よりも、繊維本数及び融着点数のいずれも、可動層の表面側又は裏面側よりも厚さ中心(可動層の内部側)の方が少なかった。このため、実施例1〜7の不織布は、可動層の内部側の繊維がより動きやすくなり、比較例1〜3の不織布よりも可動層が動き易くなった。さらに、実施例1〜7の不織布の方が、比較例1〜3の不織布に比して、厚さ中心(可動層の内部側)において、表面側又は裏面側よりも高い繊維配向度を有することから、表面側又は裏面側の方が動きやすかった。このため、実施例1〜7の不織布の方が、比較例1〜3の不織布よりも可動層の動く範囲がより広くなるので、上記の肌面に対する効果がより奏された。
さらに、実施例1〜7の中でも、鞘樹脂であるPE(ガラス転移成分の温度が芯樹脂であるPETよりも低い)の質量比を小さくした芯鞘型複合繊維を用いた実施例4は、1日圧縮後の回復性に優れ、パック等で不織布を潰した後でも厚みの回復性が高いことが分かった。