特許第6561210号(P6561210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561210
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/879 20180101AFI20190805BHJP
   B60N 2/80 20180101ALI20190805BHJP
   B60N 2/809 20180101ALN20190805BHJP
【FI】
   B60N2/879
   B60N2/80
   !B60N2/809
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-519256(P2018-519256)
(86)(22)【出願日】2017年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2017018920
(87)【国際公開番号】WO2017204125
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2018年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2016-104273(P2016-104273)
(32)【優先日】2016年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093953
【弁理士】
【氏名又は名称】横川 邦明
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 勤
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】竹井 真悟
(72)【発明者】
【氏名】高田 直樹
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−11005(JP,A)
【文献】 特開2016−74409(JP,A)
【文献】 特開2002−172042(JP,A)
【文献】 米国特許第4977600(US,A)
【文献】 国際公開第2015/076120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
H04R 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、音響スピーカと、音響マイクと、を有するヘッドレストにおいて、
前記音響マイクは前記芯材に設けた凹部の中に設けられており、
前記音響マイクの集音面は前記音響スピーカの振動面よりも後方の位置に設けられていることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
前記凹部の先端の開口は前記音響スピーカの振動面の先端よりも前方の位置にあることを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記凹部は開口から底面へむけてすぼまる形状を有することを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記凹部の先端の開口と前記凹部の底面とを結ぶ凹部の壁面は直線状であることを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記凹部の内壁は植毛塗装が施された材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記凹部の先端は前記芯材の外側へ張り出しており、その張り出した部分にも植毛塗装が施されていることを特徴とする請求項5記載のヘッドレスト。
【請求項7】
前記凹部の内壁はラバー塗装が施された材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項8】
前記凹部の先端は前記芯材の外側へ張り出しており、その張り出した部分にもラバー塗装が施されていることを特徴とする請求項7記載のヘッドレスト。
【請求項9】
前記凹部の内壁はシボ加工が施された材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項10】
前記凹部の先端は前記芯材の外側へ張り出しており、その張り出した部分にもシボ加工が施されていることを特徴とする請求項9記載のヘッドレスト。
【請求項11】
着座者の臀部を受けるシートクッションと、着座者の背中部を受けるシートバックと、着座者の頭部を受けるヘッドレストとを有する車両用シートにおいて、前記ヘッドレストは請求項1記載のヘッドレストであることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートへ座った着座者の頭部を受けるヘッドレストに関する。また、本発明は、自動車、電車、飛行機、船舶、その他の車両に用いられるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特開2015−097682号公報)に開示されたヘッドレストが知られている。この従来のヘッドレストは、例えば図9に符号104示すように、音声信号に基づいて音を発生する音響スピーカ125a,125bと、音を集めて電気信号に変換する音響マイク152とを有している。
【0003】
この従来のヘッドレスト104においては、音響マイク152の集音部と音響スピーカ125a,125bの振動部とがヘッドレストの芯材114の表面に並んで配置されている。このため、この従来のヘッドレスト104においては、音響スピーカ125a,125bから発生した音が音響マイク152に集音されてしまい、音声認識の正確性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−097682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のヘッドレストにおける問題点に鑑みて成されたものであり、音響マイクが音響スピーカの近くに設けられる場合であっても、音響マイクによる音声認識の正確性が低下することのないヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘッドレストは、芯材と、音響スピーカと、音響マイクと、を有するヘッドレストにおいて、前記音響マイクは前記芯材に設けた凹部の中に設けられており、前記音響マイクの集音面は前記音響スピーカの振動面よりも後方の位置に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るヘッドレストの第2の発明態様において、前記凹部の先端の開口は前記音響スピーカの振動面の先端よりも前方の位置にある。
【0008】
本発明に係るヘッドレストの第3の発明態様において、前記凹部は開口から底面へむけてすぼまる形状を有する。
【0009】
本発明に係るヘッドレストの第4の発明態様において、前記凹部の先端の開口と前記凹部の底面とを結ぶ凹部の壁面は直線状である。
【0010】
本発明に係るヘッドレストの第5の発明態様において、前記凹部の内壁は植毛塗装が施された材料によって形成されている。
【0011】
本発明に係るヘッドレストの第6の発明態様において、前記凹部の先端は前記芯材の外側へ張り出しており、その張り出した部分にも植毛塗装が施されている。
【0012】
本発明に係るヘッドレストの第7の発明態様において、前記凹部の内壁はラバー塗装が施された材料によって形成されている。
【0013】
本発明に係るヘッドレストの第8の発明態様において、前記凹部の先端は前記芯材の外側へ張り出しており、その張り出した部分にもラバー塗装が施されている。
【0014】
本発明に係るヘッドレストの第9の発明態様において、前記凹部の内壁はシボ加工が施された材料によって形成されている。
【0015】
本発明に係るヘッドレストの第10の発明態様において、前記凹部の先端は前記芯材の外側へ張り出しており、その張り出した部分にもシボ加工が施されている。
【0016】
次に、本発明に係る車両用シートは、着座者の臀部を受けるシートクッションと、着座者の背中部を受けるシートバックと、着座者の頭部を受けるヘッドレストとを有する車両用シートにおいて、前記ヘッドレストは上記の各発明態様のヘッドレストであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のヘッドレスト及び車両用シートによれば、音響マイクが音響スピーカの近くに設けられる場合であっても、音響マイクによる音声認識の正確性が低下することのないヘッドレストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る車両用シートの一実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明に係るヘッドレストの一実施形態を示す斜視図である。
図3図2のヘッドレストの主要部であるヘッドレストフレームを示す斜視図である。
図4図3のヘッドレストフレームの分解斜視図である。
図5図2のA−A線に従った縦断面図である。
図6図2のB−B線に従った縦断面図である。
図7図2のC−C線に従った平面断面図である。
図8図5に示すヘッドレストの主要部品であるメッシュ板を示す平面図である。
図9】従来のヘッドレストの主要な内部構造を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るヘッドレスト及び車両用シートを実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0020】
図1は本発明に係る車両用シートの一実施形態を示している。図1において、車両用シート1は、着座者の臀部を受けるシートクッション2と、着座者の背中部を受けるシートバック3と、着座者の頭部を受けるヘッドレスト4とを有している。シートクッション2はベース部材5の所で車両の床に固定される。ベース部材5は図1ではシートクッション2の3つの角部に設けられた3個が示されているが、実際には、シートクッション2の残りの1つの角部にも設けられている。
【0021】
本実施形態ではヘッドレスト4が支柱7a,7bを有している。これらの支柱7a,7bをシートバック3の上部に設けた孔6a,6bに差し込むことにより、ヘッドレスト4がシートバック3に装着されている。ヘッドレスト4はシートバック3の上面において上下方向へ移動可能である。また、ヘッドレスト4はシートバック3から取外すこともできる。このような構成に代えて、ヘッドレスト4がシートバック3と一体に設けられることもある。このような構成は、ヘッドレスト一体型シートバックとか、ヘッドレスト一体型車両用シートと呼ばれることがある。
【0022】
ヘッドレスト4は、図2に示すように、ヘッドレストフレーム8とカバー9とを有している。ヘッドレストフレーム8は、図3に示すように、芯材14と、支柱7a,7bとを有している。芯材14は、前側芯材14aと後側芯材14bとを結合することによって形成されている。芯材14a,14bは硬質樹脂、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS樹脂によって形成されている。芯材14の側面にはインターフェース部15が設けられている。
【0023】
図2において、カバー9は前側表皮材18と後側表皮材19とを互いに縫い合わせることによって形成されている。カバー9の底部には開口が形成されている。ヘッドレストフレーム8の芯材14をカバー9の底部の開口からカバー9の内部へ挿入することにより、芯材14がカバー9で覆われている。支柱7a,7bはカバー9の外部へ延出している。図1において、支柱7a,7bをシートバック3の上面の孔6a,6bへ差し込むことにより、ヘッドレスト4がシートバック3に装着されている。
【0024】
図4(e)において、支柱7a,7bは、上クロスメンバ16aと下クロスメンバ16bとによって互いに連結されている。前側芯材14aは内部突部19aの所で上クロスメンバ16aにビス止めされ、内部突部19b,19cの所で下クロスメンバ16bにビス止めされている。
【0025】
後側芯材14bは、内部突部20a,20bの所で上クロスメンバ16aにビス止めされ、内部突部20c,20dの所で下クロスメンバ16bにビス止めされている。こうし前側芯材14aが支柱7a,7bの前側に固定され、後側芯材14bが支柱7a,7bの後側に固定され、そして前側芯材14aと後側芯材14bとが互いに結合されている。支柱7a,7bは図3に示すように、それらの上部が芯材14の内部に収納され、それらの下部が芯材14の外部へ延出している。これらの延出した部分が図1のシートバック3の孔6a,6bに挿入されることは既に説明した通りである。
【0026】
図5図2のA−A線に従った縦断面図である。図6図2のB−B線に従った縦断面図である。図6では支柱7a,7bの図示を省略している。図7図2のC−C線に従った平面断面図である。図4図5及び図7に示すように、前側芯材14aの周囲部分には嵌合凹部14abが形成されている。後側芯材14bの周囲部分は嵌合凸部14baとなっている。図5において前側芯材14aの内部の下部には横方向(図5の紙面を貫通する方向)に延びる嵌合凸部14aaが形成されている。そして、後側芯材14bの内部の下部には横方向(図5の紙面を貫通する方向)に延びる嵌合凹部14bbが形成されている。
【0027】
前側芯材14aが上クロスメンバ16a及び下クロスメンバ16bにビス22a(図5参照)によって固定され、後側芯材14bが上クロスメンバ16a及び下クロスメンバ16bにビス22b(図5参照)によって固定されたとき、後側芯材14bの周辺部の嵌合凸部14baと前側芯材14aの周辺部の嵌合凹部14abとが嵌合し、さらに前側芯材14aの下部の嵌合凸部14aaと後側芯材14bの下部の嵌合凹部14bbとが嵌合する。これらの嵌合により、芯材14の内部の上部に大きな空間K1が形成され、内部の下部に小さな空間K2が形成される。図5において、下側の内部空間K2の中に制御部26が格納されている。
【0028】
制御部26は、外部の機器との間で信号のやりとりを行う通信部や、音響スピーカへ駆動信号を供給するスピーカ駆動部や、音響マイクから出力される音声信号を処理する音声信号処理部、等を含んでいる。
【0029】
上側の内部空間K1は、周辺部における嵌合凸部14baと嵌合凹部14abとの嵌合、及び下部における嵌合凸部14aaと嵌合凹部14bbとの嵌合により、密閉されている。凹部14ab,14bbと凸部14aa,14baとの間には図7(c)に示すようにシール材17を介在させることができる。シール材17は、例えばスポンジである。図5の下側の内部空間K2は本実施形態では密閉されていない。このように、芯材14は、前後に2分割された構造となっており、且つ支柱7a,7bを挟み込んだ状態で当該支柱7a,7bに固定されている。なお、芯材14の密閉構造は上記のような凹凸の嵌合構造に限られず、種々の構造や方法を採用できる。例えば、超音波溶着による密閉構造を採用することもできる。
【0030】
なお、支柱7a,7bは筒形状、本実施形態では円筒形状の金属管又は樹脂管によって形成されている。そして、内部空間K1内において支柱7a,7bの上端の開口はキャップ12によって塞がれている。このように支柱7a,7bの上端の開口をキャップ12によって塞ぐのは、1つの好ましい音響効果を得るためである。必要に応じて他の好ましい音響効果を得るために、キャップ12を使うことなく、支柱7a,7bの上端開口を開口のままで存在させることも可能である。
【0031】
図4(a)及び図4(b)において、前側芯材14aの上部に音響スピーカ25a及び25bが固定されている。音響スピーカ25a,25cは例えばフルレンジの音域のスピーカである。音響スピーカ25a,25bの振動板27は左右方向よりも上下方向に長い長円状又は楕円状に形成されている。音響スピーカ25a,25bからの音は、図5に符号S1で示すように前側芯材14aの前方へ出力される。音響スピーカ25a,25bはほぼ水平に音声を出力できるように振動板27を前方へ向けて設けられている。音響スピーカ25a,25bの振動板27は左右方向に狭く、上下方向に広いので、音響スピーカ25a,25bの音S1の指向性は、左右方向で狭く、上下方向で広くなっている。
【0032】
図6において、前側芯材14aの下部に音響スピーカ25cが固定されている。音響スピーカ25cは例えばウーハである。音響スピーカ25cからの音S2は、前下方に向けて出力される。ウーハである音響スピーカ25cを下向きに設けることで、着座者の身体の下の部分に音を伝達でき、着座者に低音を感じ易くさせることができる。
【0033】
図4(a)において、音響スピーカ25aと音響スピーカ25bとの間の前側芯材14aに凹部51が形成されている。凹部51は芯材14の内部へ向けて窪んでいる。この凹部51の中に音響マイク52が設けられている。凹部51は集音部として機能する。凹部51は音響スピーカ25a,25bの間でヘッドレスト4(図2参照)の幅方向の中央部に配置されている。また、凹部51は音響スピーカ25cの上方でヘッドレスト4(図2参照)の上下方向の中央部に配置されている。また、凹部51は着座者の後頭部の後方に位置するようになっている。
【0034】
凹部51は図6及び図7(a)に示すように、開口55が開いている端(図6の左端)から底面(図6の右端面)へ向けてすぼまる形状、すなわち長い四角錐形状又は円錐形状に形成されている。凹部51の中心線X0は前方へほぼ水平に延びている。凹部51の前面は開口55となっており、この開口55によって音が取り込まれる。
【0035】
本実施形態では、凹部51の先端の開口55と凹部51の底面とを結ぶ凹部51の壁面は直線状である。但し、凹部51の内壁面は、必要に応じて階段形状に変化する形状であっても良いし、必要に応じて凹状又は凸状に湾曲する形状であっても良い。
【0036】
図7(a)に示すように、音響マイク52の先端面(すなわち集音面52a)は、音響スピーカ25a,25bの振動面(すなわち振動板27)の先端周縁よりも後方(図7(a)の下方)に設けられている。音響スピーカ25a,25bは芯材14の前方(図7(a)の上方)へ音を発生する。他方、音響マイク52は芯材14の前面(図7(a)の上面)から音を集音する。換言すれば、音響マイク52の集音の指向方向は、音響スピーカ25a,25bから発生される音の指向方向と同じ方向である。
【0037】
さらに、凹部51の先端の開口55を形成しているフランジ56は音響スピーカ25a,25bの振動面(すなわち振動板27)の先端周縁のフランジよりも前方(図7(a)の上方)にある。凹部51のフランジ56と音響スピーカ25a,25bのフランジとの間に前側芯材14aが存在することがある。この場合には、凹部51のフランジ56はその前側芯材14aよりも前方に配置される。
【0038】
本実施形態において、集音部としての凹部51の内壁は植毛塗装が施された材料、ラバー塗装が施された材料、又はシボ加工が施された材料によって形成される。植毛塗装は、塗装処理によってパイル(短繊維)を素材上に植え付ける処理を含んだ塗装である。この直毛塗装は、例えば、
(1)素材に接着剤をスプレーガン等で塗布し、高電圧をかけて発生させた静電気を利用して、パイル(短繊維)を植え付けて行くという一連の処理や、
(2)下処理を行い、プライマ処理を行い、接着剤を塗布し、パイル(短繊維)を満遍なく吹き掛け、乾燥するという一連の処理、
等によって実現できる。
【0039】
ラバー塗装は、素材上にラバー状の柔らかい塗膜を形成するための塗装である。このラバー塗装は、例えば、
(1)合成樹脂、顔料及び有機溶剤を混合して成る柔らかい油性の樹脂を素材に複数回、重ねて吹き付けることによってラバー状の塗膜を形成する処理や、
(2)合成樹脂、顔料及び水を混合して成る柔らかい水性の樹脂を素材に複数回、重ねて吹き付けることによってラバー状の塗膜を形成する処理、
等によって実現できる。
【0040】
シボ加工は、金属やプラスチックなどの素材の表面に細かい凹凸の模様(パターン)を付けて質感を表現する加工である。シボ加工に用いられるパターンは他種多様であり、砂をまぶしたような微細なざらつきの模様や、皮革や木目などを再現した模様や、無機的で幾何学的な模様、等がある。
【0041】
図7(a)に示すように、集音部としての凹部51の先端の開口55を形成しているフランジ56は、音響スピーカ25a,25bの先端周縁のフランジよりも前方(図7(a)の上方)へ張り出している。換言すれば、凹部51の先端フランジ56は前側芯材14aの外側(すなわち前側、すなわち図7(a)の上側)へ張り出している。そして、このように前側芯材14aの外側へ張り出している凹部51の先端部分の前側面にも、植毛塗装、ラバー塗装、シボ加工、等が施されている。
【0042】
このように、集音部としての凹部51の内壁面及び先端の張出し面に植毛塗装、ラバー塗装、シボ加工、等を施したことにより、凹部51の表面を単なる合成樹脂面、金属面、等とした場合に比べて、音響スピーカ25a,25bから出た音が音響マイク52によって拾われてしまう可能性をより一層、低減できるようになった。
【0043】
図2において、前方側(すなわち車両としての自動車の前方側)から見て音響スピーカ25aと音響スピーカ25bは左右に分けて設けられ、ウーハとしての音響スピーカ25cはそれらの音響スピーカ25a,25bの左右方向の中間位置に設けられている。
【0044】
図5及び図6において、前側芯材14aと後側芯材14bと内部空間K1は互いに協働して音響スピーカ25a,25b,25cのためのエンクロージャとして使用される。エンクロージャは、音響スピーカ25a,25b,25cの後部から出る音がそれらの音響スピーカ25a,25b,25cの前部から出る音に干渉することを防止するための音響要素である。
【0045】
図5及び図7において、音響スピーカ25a,25b,25cの前部にメッシュ板29が設けられ、さらにその前部に第1の弾性体30が設けられている。メッシュ板29は樹脂によって平面状態の網目状に形成されており、図8に示すように、音響スピーカ25a,25b,25cを覆うことができる平面形状に形成されている。このメッシュ板29は音響スピーカ25a,25b,25cを衝撃から守るためのものである。第1の弾性体30は、着座者が頭を当てたときにクッション性を発揮でき、且つ音響スピーカ25a,25b,25cから出た音を通過し易い材料によって形成されている。
【0046】
このようなクッション性及び音通過性を備えた材料としては、例えば、音を通過させたい部分に孔を空けたウレタンパッドや、立体微細網状の弾性材料を用いることができる。孔を空けたウレタンパッドを用いれば、孔を通して音を通過させることができる。
【0047】
立体微細網状の弾性材料は、例えば次の性質を有する弾性材料である。
(1)繊維状の樹脂を3次元的に絡み合わせることにより、多数の微細な内部空間を保有しており、これらの内部空間の合計の容量はかなり大きくなっている。
(2)パッド状、すなわち当て物状、敷物状、板状である。
(3)柔らかいが、全体的な形状を維持できる程度の硬さを有している。
(4)自然状態で10〜40mmの厚さ、好ましくは20〜40mmの厚さを有している。
(5)大人の人が両手で挟んで押し付けたときに厚さが2/3〜1/2程度に縮まり、さらにその押し付け力を解除すると比較的短時間の後に厚さが弾性復元力によって元の状態に自然に復帰する。
この立体微細網状の弾性材料によって音を通過させることができる。
【0048】
後側芯材14bの背面に第2の弾性体31が設けられている。この第2の弾性体31は人が触れたときに金属的な硬い感触を与えることがなく、柔軟性を有しており、しかし適度の形状保持機能を有している材料、例えばウレタン製のパッド材料によって形成されている。この第2の弾性体31は音を通過させ易い機能を有していない方が好ましい。
【0049】
前側表皮材18と後側表皮材19とを縫い合わせて成るカバー9は、第1の弾性体30及び第2の弾性体31を覆っている。特に、前側表皮材18が第1の弾性体30を覆っており、後側表皮材19が第2の弾性体31を覆っている。前側表皮材18は音を通過し易い加工が施された材料によって形成されている。
【0050】
上記の「音を通過し易い加工が施された材料」は、例えばパンチングレザーを含んだ材料や3次元ネット材である。「パンチングレザーを含んだ材料」は、例えばパンチングレザーにウレタンを貼付け、音を通過させるためにウレタンも含めて孔加工(パンチング加工)を施したものである。「3次元ネット材」は、3Dネット材とも呼ばれるネット材である。3次元ネット材は、上記の立体微細網状の弾性材料のようなパッド状の部材ではなく、大きな網目ができるように繊維を絡み合わせて布状に形成された材料である。3次元ネット材は大きな網目部分によって音を通すことができる。
【0051】
後側表皮材19は、布、革、皮、合成皮革、縫い合わせが可能な合成樹脂、等によって形成することができる。「縫い合わせが可能な合成樹脂」は、例えばエラストマ、軟質樹脂、成形不織布、又はそれらの同等品であって、自然状態で特定の形状を維持する性質である形状維持特性を有する材料である。
【0052】
(インターフェース部)
図2において、後側表皮材19の側面の下部に芯材視認用開口33が形成されている。インターフェース部15は、この芯材視認用開口33を通してカバー9を取り囲んでいる外部領域(すなわち外部空間)とつながっている。換言すれば、インターフェース部15は芯材視認用開口33を介して外部から視認でき、さらに指で触れることができる。制御部26は通信線53によって電子機器54につながっている。通信線53は有線又は無線の通信線である。通信線53はインターフェース部15を通して芯材14の内部と外部をつないでいる。電子機器54は、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット端末である。
【0053】
図7(a)に示すように、前側芯材14aと後側芯材14bとを結合させた状態において、インターフェース部15の周囲領域の前側芯材14a及び後側芯材14bは図3に示すような環状の溝41を有している。そして、図2及び図7(b)に示すように、後側表皮材19に形成した芯材視認用開口33の環状の縁部33aが環状の溝41の中に押し込まれている。これにより、後側表皮材19の開口33の開口33の縁部33aが、前側芯材14a及び後側芯材14bにしっかりと止められている。
【0054】
また、前側芯材14a及び後側芯材14bは溝41を形成している環状の部分で外部方向へ突出する環状の凸部を形成している。そして、このため、後側表皮材19芯材視認用開口33の所で外部方向へ突出する環状の凸部を形成している。これらの凸形状の縁形状は、保安基準の測定用の直径φ165mmの球体の内部突起要件を満たす形状である。
【0055】
図7(b)に示す後側表皮材19を縫い合わせ可能な合成樹脂や、エラストマ等といった形状維持特性を有する材料によって形成した場合には、芯材視認用開口33の縁部33aは溝41の幅とほぼ同じ厚さに形成される。このため、縁部33aを溝41の中に挿入すれば、縁部33aは溝41から容易には抜け出ないようになる。また、後側表皮材19を布、革、皮によって形成した場合には、図7(d)に示すように表皮材19の先端を樹脂板42を挟んで折り返した上でその折り返し部分を縫う(符号N)ことによって、溝41への挿入縁部を形成することができる。
【0056】
このように本実施形態においては、図3の芯材14の一部分であるインターフェース部15が、図2において後側表皮材19の芯材視認用開口33を通して、後側表皮材19を取り囲んでいる外部領域(すなわち外部空間)につながっている。つまり、本実施形態では、芯材14の一部分であるインターフェース部15がカバー9の芯材視認用開口33を通して外部へ臨み出ている、すなわち露出している。
【0057】
(ヘッドレストの機能)
本実施形態のヘッドレスト4は以上のように構成されているので、図1において着座者がカバー9の前側表皮材18に後頭部を当てたとき、着座者は好ましいクッション性を体感できる。また、図5において制御部26から音響スピーカ25a,25b,25cへ所望の音声信号を供給することにより、それらの音響スピーカから所望の音声や音楽を発生させることができる。着座者はカバー9に後頭部を当てた状態で音響スピーカ25a,25b,25cからの音を認識できる。
【0058】
このとき、前側芯材14a、後側芯材14b及び内部空間K1は協働してエンクロージャとして機能し、音響スピーカ25a,25b,25cの前方へ望ましい音を供給する。また、メッシュ板29、第1の弾性体30及び前側表皮材18は、いずれも音を通過し易い材料によって形成されているので、着座者による音の聞こえ方に支障が生じることはない。一方、図5及び図6において、音響スピーカ25a,25b及び音響スピーカ25cの後方に配置された第2の弾性体31及び後側表皮材19は、音を通過させ易くない材料によって形成されているので、ヘッドレスト4の後方に音が漏れ出ることを防止できる。
【0059】
本実施形態では、図2の電子機器54から読み出されたコンテンツの音声データや、車両を目的地まで誘導するための誘導音声データ等を、音響スピーカ25a,25b,25cから音声として出力できる。また、着座者が発生した音声を音響マイク52で集音して音声信号に変換し、その音声信号に基づいて電子機器54を操作することができる。また、着座者は、音響マイク52を介してハンズフリーで通話したりすることができる。
【0060】
図6及び図7(a)において、音響マイク52は円柱形状に形成されている。音響マイク52の軸線は凹部51の軸線X0とほぼ一致している。このように、集音部として機能する凹部51の内部に音響マイク52を設けたことにより、音響マイク52によって音を効率良く集めることができる。このため、着座者が前方へ向かって音声を発した場合であっても、音響マイク52によってその音声を確実に受け取ることができる。
【0061】
音響スピーカ25a,25b、音響スピーカ25c及び音響マイク52は、保安基準の内部突起要件及びR要件(曲率半径要件)に適合するように配置されている。具体的には、音響マイク52は凹部51内の奥まった位置に配置されているので、測定用の直径165mmの球体が音響マイク52に接触しないようになっている。
【0062】
図7(a)に示すように、音響マイク52の先端面(すなわち集音面52a)は、音響スピーカ25a,25bの振動面(すなわち振動板27)の先端周縁よりも後方位置(図7(a)の下位置)に設けられている。これにより、音響スピーカ25a,25bから出た音が音響マイク52によって集音されることを防止できる。この結果、音響マイク52で集音する音声のノイズが低減され正確な音声認識を行うことが可能となる。
【0063】
さらに、集音部としての凹部51の先端の開口55は、音響スピーカ25a,25bの振動面(すなわち振動板27)の先端周縁よりも前方(図7(a)の上方)にある。これにより、音響スピーカ25a,25bから出た音が凹部51の内部へ進入することを防止でき、その結果、音響マイク52による音声認識の正確性を高めることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、図7(a)において、集音部としての凹部51の内壁面及び先端フランジ56(すなわち張出し面)に植毛塗装、ラバー塗装、シボ加工、等を施した。これにより、凹部51の表面を単なる合成樹脂面、金属面とした場合に比べて、音響スピーカ25a,25bから出た音が音響マイク52によって拾われてしまう可能性をより一層、低減できる。
【0065】
本実施形態によれば、凹部の先端の開口は音響スピーカの振動面の先端よりも前方の位置にある。この構成によれば、音響スピーカから出た音が凹部の内部へ進入することを防止でき、その結果、音響マイクによる音声認識の正確性を高めることができる。
【0066】
本実施形態によれば、凹部は開口から底面へむけてすぼまる形状を有している。この構成によれば、音響マイクによる集音機能の低下を防止でき、しかも音響マイクへの雑音の進入を効率良く抑えることができる。
【0067】
本実施形態によれば、凹部の先端の開口と凹部の底面とを結ぶ凹部の壁面は直線状である。この構成によれば、凹部を簡単に形成でき、しかも植毛塗装、ラバー塗装、シボ加工等といった付加的な処理を行い易くなる。
【0068】
本実施形態によれば、前記凹部の内壁は植毛塗装が施された材料、ラバー塗装が施された材料、又はシボ加工が施された材料によって形成される。これらの構成により、凹部の表面を単なる合成樹脂面、金属面等とした場合に比べて、音響スピーカから出た音が音響マイクによって拾われてしまう可能性をより一層、低減できる。
【0069】
凹部の内壁に植毛塗装、ラバー塗装、シボ加工、等を施す場合には、凹部の先端を芯材の外側へ張り出させ、その張り出させた部分にも植毛塗装、ラバー塗装、シボ加工、等を施こすことが望ましい。これにより、音響スピーカから出た音が音響マイクによって拾われてしまう可能性をより一層、低減できる。
【0070】
次に、本発明に係る車両用シートは、着座者の臀部を受けるシートクッションと、着座者の背中部を受けるシートバックと、着座者の頭部を受けるヘッドレストとを有する車両用シートにおいて、前記ヘッドレストは上述した実施形態に係るヘッドレストである。この車両用シートによれば、構成部品の1つであるヘッドレストにおいて、音響マイクの先端面(すなわち集音面)が、音響スピーカの振動面よりも後方位置に設けられるので、音響スピーカから出た音が音響マイクによって集音されることを防止できる。この結果、音響マイクで集音する音声のノイズが低減され正確な音声認識を行うことが可能である。
【0071】
(他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0072】
例えば、上記の実施形態では、図4(a)に示すように、2つの音響スピーカ25a,25bの中間位置に音響マイク52を設けた。しかしながら、音響マイク52を設ける位置は2つの音響スピーカ25a,25bの中間位置以外の任意の位置とすることができる。また、音響スピーカは1個の場合もあるし、3個以上の場合もある。
【0073】
上記の実施形態では、フルレンジの音響スピーカ25a,25bに関して音響マイク52を設けた。しかしながら、音響マイクに関連する音響スピーカはフルレンジのスピーカに限られず、任意の音域のスピーカとすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1.車両用シート、 2.シートクッション、 3.シートバック、 4.ヘッドレスト、 5.ベース部材、 6a,6b.孔、 7a,7b.支柱、 8.ヘッドレストフレーム、 9.カバー、 12.キャップ、 14.芯材、 14a.前側芯材、 14aa.嵌合凸部、 14ab.嵌合凹部、 14b.後側芯材、 14ba.嵌合凸部、 14bb.嵌合凹部、 15.インターフェース部、 16a.上クロスメンバ、
16b.下クロスメンバ、 17.シール材、 18.前側表皮材、 19.後側表皮材、 19a〜19c.内部突部、 20a〜20d.内部突部、 22a,22b.ビス、 25a,25b.音響スピーカ、 25c.ウーハ(音響スピーカ)、 26.制御部、 27.振動板、 29.メッシュ板、 30.第1の弾性体、 31.第2の弾性体、 33.芯材視認用開口、 41.環状の溝、 42.樹脂板、 51.前側芯材14aの凹部、 52.音響マイク、 52a.集音面、 53.通信線、 54.電子機器、 55.開口、 56.フランジ、 K1,K2.空間、 N.縫い部分、 S1、S2.音、 X0.中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9