(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561211
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】低炭素環境配慮型発泡剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20190805BHJP
C08J 9/14 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
C08J9/14
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-533904(P2018-533904)
(86)(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公表番号】特表2019-508517(P2019-508517A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】CN2017000461
(87)【国際公開番号】WO2018120258
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2018年6月28日
(31)【優先権主張番号】201611217438.0
(32)【優先日】2016年12月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516137993
【氏名又は名称】浙江衢化▲弗▼化学有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG QUHUA FLUOR−CHEMISTRY CO LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】洪 江永
(72)【発明者】
【氏名】楊 波
(72)【発明者】
【氏名】▲超▼ 陽
(72)【発明者】
【氏名】張 彦
(72)【発明者】
【氏名】周 華東
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 豪
(72)【発明者】
【氏名】▲ごん▼ 海涛
(72)【発明者】
【氏名】方 敏
【審査官】
吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/092211(WO,A1)
【文献】
特表2013−504658(JP,A)
【文献】
特表2013−502489(JP,A)
【文献】
特表2014−504675(JP,A)
【文献】
特開2016−069634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08J 9/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低炭素環境配慮型発泡剤組成物であって、
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン60〜98.99質量%と、
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン1〜39.9質量%と、
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン0.01〜1質量%とからなることを特徴とする低炭素環境配慮型発泡剤組成物。
【請求項2】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン69.99〜94.99質量%と、
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン5〜30質量%と、
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン0.01〜1質量%とからなることを特徴とする請求項1に記載の低炭素環境配慮型発泡剤組成物。
【請求項3】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン80〜89.99質量%と、
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン10〜19.9質量%と、
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン0.01〜1質量%とからなることを特徴とする請求項1に記載の低炭素環境配慮型発泡剤組成物。
【請求項4】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン85〜89.99質量%と、
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン10〜14.99質量%と、
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン0.01〜1質量%とからなることを特徴とする請求項1に記載の低炭素環境配慮型発泡剤組成物。
【請求項5】
前記組成物は、101.3KPaで、沸点が18〜19℃であることを特徴とする請求項1に記載の低炭素環境配慮型発泡剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の低炭素環境配慮型発泡剤組成物の製造方法であって、
各成分を、その質量百分率で、液相状態で物理的に混合することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡剤の応用分野に関し、特に低炭素環境配慮型発泡剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭用電気産業(冷蔵庫、冷凍庫や給湯器を含む)で使用されるHCFC−141bに代わる発泡剤系は主に、シクロペンタン、HFC−245fa、HFC−245fa/シクロペンタン、及び少量のR−134a、365mfcと全水発泡系があり、それぞれに長所と短所があり、異なる発泡剤の物理的特性は最終発泡製品の性能に直接影響を及ぼす。HFC−245faは、GWP値が790で、不燃性を有するため、防爆装置への投資が必要なく、それによる発泡製品はさらに低い熱伝導率、より良好な流動性、より高い強度及び寸法安定性を有するが、GWP値が高く、世界的に環境要件がますます厳しくなる中で徐々に置き換えられている。
【0003】
HFO−1233zdは、通常、ODP値が約0、GWP値が1で、不燃性を有し、毒性が低く、発泡過程に防爆装置を使用する必要がなく、沸点が室温に近い19℃であり、操作しやすい。さらに、HFC−245fa発泡装置に直接適用でき、ポリオールとの相容性に優れ、気相熱伝導率が低く、発泡製品の断熱性に優れ、現在、国際企業はHFO−1233zdのポリウレタン発泡産業への活用を押し進めている。HFO−1233zdは、各種プロセス及び環境保全要件を同時に満たす次世代発泡剤であり、効能が高く省エネで、不燃性を有し、揮発性有機物を含まず、低GWPで、安全性と環境保全性に優れる等の特徴を有する。しかし、それ単独で形成された形態には欠点があるため、他の成分と配合して使用するのが一般的である。
【0004】
公開日2011年12月28日、発明の名称をペンタフルオロプロパン、クロロトリフルオロプロペン及びフッ化水素の共沸混合物様組成物とする中国特許出願公開番号CN102300975Aがある。該出願は、三成分組成物及びその前記共沸混合物様組成物の製造方法を開示している。各種成分の共沸混合物様組成物の比率、温度及び圧力が提供されている。
【0005】
また、公開日2006年4月5日、発明の名称をハイドロフルオロカーボン化合物組成物とする中国特許出願公開番号CN1756793Aがある。該発明は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)と1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を含む組成物であり、該組成物において、HFC−365mfc/HFC−245faの重量比率は60:40−75:25である。該組成物はポリウレタン発泡の分野で使用されている。
【0006】
さらに、公開日2012年07月11日、発明の名称を1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレンとHFC−245ebの共沸混合物及び共沸様混合物の組成物とする中国特許出願公開番号CN102574756Aがある。該発明は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン(HCFO−1233zd)及び1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)を含む共沸混合物及び共沸様混合物の組成物、及びその用途に関する。
【0007】
上記特許に開示されている発泡剤組成物は、GWP値が高いか、熱伝導率が大きいか、あるいは使用時に装置全体のエネルギー消費レベルが高い等の欠点がある。従って、より優れた発泡性と環境保全性を有する発泡剤組成物の開発が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服して、GWP値が低く、熱伝導率が小さく、エネルギー消費量が低い環境保護型発泡剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、以下の技術案により達成される。
低炭素環境配慮型発泡剤組成物であって、
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン60〜98.99質量%と、
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン1〜39.9質量%と、
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン0.01〜1質量%とからなる。
【0010】
本発明に係る低炭素環境配慮型発泡剤組成物は、好ましくは、
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン69.99〜94.99質量%と、
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン5〜30質量%と、
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン0.01〜1質量%とからなる。
【0011】
本発明に係る低炭素環境配慮型発泡剤組成物は、好ましくは、
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン80〜89.99質量%と、
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン10〜19.9質量%と、
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン0.01〜1質量%とからなる。
【0012】
本発明に係る低炭素環境配慮型発泡剤組成物は、好ましくは、
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン85〜89.99質量%と、
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン10〜14.99質量%と、
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン0.01〜1質量%とからなる。
【0013】
好ましくは、本発明に係る低炭素環境配慮型発泡剤組成物は、101.3KPaで、沸点が18〜19℃である。
【0014】
本発明はさらに、各成分を、その質量百分率で、液相状態で物理的に混合して、前記低炭素環境配慮型発泡剤組成物を得る該組成物の製造方法を提供する。
【0015】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン(HFO−1233zd)は、通常、ODP値が約0、GWP値が1であり、不燃性を有し、毒性が低く、発泡過程に防爆装置を必要とせず、沸点が室温に近い19℃であり、操作しやすく、HFC−245fa発泡装置に直接適用でき、ポリオールとの相容性に優れ、気相熱伝導率が低く、発泡材の断熱性に優れる。しかし、それ単独で形成された形態には欠点がある。
【0016】
1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)は、沸点23℃で、不燃性を有し、防爆装置への投資を必要とせず、発泡製品は、より低い熱伝導率、より優れた流動性、より良好な強度と寸法安定性を有し、GWP値が290であり、HFC−245ebは、次世代の環境保全型第四世代冷媒を合成するための中間体として用いられる。
【0017】
1,2,2,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254ca)は、沸点26℃で、不燃性を有し、防爆装置への投資を必要とせず、発泡製品は、より低い熱伝導率、より優れた流動性、より良好な強度と寸法安定性を有する。
【0018】
本発明に係る発泡剤組成物は、ポリウレタン発泡産業に用いられると、従来の発泡剤系(HFC−245faとシクロペンタン)に比べて、同一型番のHFC−245fa及びシクロペンタン系冷蔵庫の熱伝導率が、それぞれ5〜50%(HFC−245faシステムと比較)と5〜30%(シクロペンタンシステムと比較)低下する。
【0019】
本発明に係る発泡剤組成物は、ポリウレタン発泡産業に用いると、従来の発泡剤系(HFC−245faとシクロペンタン)に比べて、同一型番のHFC−245fa及びシクロペンタンシステム冷蔵庫の装置全体のエネルギー消費レベルが、それぞれ2〜35%(HFC−245faシステムと比較)と3〜55%(シクロペンタンシステムと比較)低下する。
【発明の効果】
【0020】
従来技術に比べて、本発明の利点は以下のとおりである。
1、低GWP値
本発明に係る発泡剤組成物は単一作動流体HFC−245faよりもGWP値が大幅に低下する。
2、低熱伝導率
本発明に係る発泡剤組成物は、熱伝導率を著しく低下させ、冷蔵庫に使用される場合、熱伝導率が12.5〜42.8%(HFC−245faシステムと比較)、9.4〜25.9%(シクロペンタンシステムと比較)、0.4〜15.9%(HFO−1233zdとHFC−245ebを同比率で混合するが、HFC−254caを添加しないシステムと比較)低下する。
3、低エネルギー消費量
本発明に係る発泡剤組成物は、エネルギー消費量を著しく低下でき、冷蔵庫に使用される場合、装置全体のエネルギー消費レベルが、13.8〜32.3%(HFC−245faシステムと比較)、14〜50.2%(シクロペンタンシステムと比較)、8.9〜24.8%(HFO−1233zdとHFC−245ebを同比率で混合するが、HFC−254caを添加しないシステムと比較)低下する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例にて本発明の内容について更に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されない。
【0022】
(実施例1)
HFO−1233zdを600グラム、HFC−245ebを399グラム及びHFC−254caを1グラムを、液相としてボンベで混合し、低炭素環境配慮型発泡剤組成物を得る。HFO−1233zdの含有量は60質量%、HFC−245ebの含有量は39.9質量%、HFC−254caの含有量は0.1質量%であった。その特性についてテストして、結果を表1〜3に示す。そのうち、101.3KPaで、該低炭素環境配慮型発泡剤組成物の沸点は18.3℃であった。
【0023】
(実施例2)
HFO−1233zdを989.9グラム、HFC−245ebを10グラム及びHFC−254caを0.1グラムを、液相としてボンベで混合し、低炭素環境配慮型発泡剤組成物を得る。HFO−1233zdの含有量は98.99質量%、HFC−245ebの含有量は1質量%、HFC−254caの含有量は0.01質量%であった。その特性についてテストして、結果を表1〜3に示す。そのうち、101.3KPa、該低炭素環境配慮型発泡剤組成物の沸点は18.9℃であった。
【0024】
(実施例3)
HFO−1233zdを699グラム、HFC−245ebを300グラム及びHFC−254caを1グラムを、液相としてボンベで混合し、低炭素環境配慮型発泡剤組成物を得る。HFO−1233zdの含有量は69.9質量%、HFC−245ebの含有量は30質量%、HFC−254caの含有量は0.1質量%であった。その特性についてテストして、結果を表1〜3に示す。そのうち、101.3KPaで、該低炭素環境配慮型発泡剤組成物の沸点は18.5℃であった。
【0025】
(実施例4)
HFO−1233zdを799グラム、HFC−245ebを200グラム及びHFC−254caを1グラムを、液相としてボンベで混合し、低炭素環境配慮型発泡剤組成物を得る。HFO−1233zdの含有量は79.9質量%、HFC−245ebの含有量は20質量%、HFC−254caの含有量は0.1質量%であった。その特性についてテストして、結果を表1〜3に示す。そのうち、101.3KPaで、該低炭素環境配慮型発泡剤組成物の沸点は18.6℃であった。
【0026】
(実施例5)
HFO−1233zdを849グラム、HFC−245ebを150グラム及びHFC−254caを1グラムを、液相としてボンベで混合し、低炭素環境配慮型発泡剤組成物を得る。HFO−1233zdの含有量は84.9質量%、HFC−245ebの含有量は15質量%、HFC−254caの含有量は0.1質量%であった。その特性についてテストして、結果を表1〜3に示す。そのうち、101.3KPaで、該低炭素環境配慮型発泡剤組成物の沸点は18.7℃であった。
【0027】
(実施例6)
890グラム、HFC−245ebを100グラム及びHFC−254caを10グラムを、液相としてボンベで混合し、低炭素環境配慮型発泡剤組成物を得る。HFO−1233zdの含有量は89質量%、HFC−245ebの含有量は10質量%、HFC−254caの含有量は1質量%であった。その特性についてテストして、結果を表1〜3に示す。そのうち、101.3KPaで、該低炭素環境配慮型発泡剤組成物の沸点は18.8℃であった。
【0028】
(実施例7)
HFO−1233zdを750グラム、HFC−245ebを249グラム及びHFC−254caを1グラムを、液相としてボンベで混合し、低炭素環境配慮型発泡剤組成物を得る。HFO−1233zdの含有量は75質量%、HFC−245ebの含有量は24.9質量%、HFC−254caの含有量は0.1質量%であった。その特性についてテストして、結果を表1〜3に示す。そのうち、101.3KPaで、該低炭素環境配慮型発泡剤組成物の沸点は18.6℃であった。
【0029】
実施例1〜7で得られた低炭素環境配慮型発泡剤組成物とHFC−245fa及びシクロペンタンについて、性能を比較して、本発明の特徴と効果を説明し、結果を表1〜3に示す。
【0030】
熱伝導率測定はGB10295−88に準じて行われた。
【0031】
エネルギー消費量測定は、GB/T8059.3−1995に準じて行われた。
【0032】
沸点測定は自動比較沸点計で測定された。
【0034】
表1に、実施例1〜7で得られた環境保護型発泡剤組成物の環境パフォーマンスが示されている。表1から明らかなように、実施例1〜7で得られた環境保護型発泡剤組成物は、ODP値が0で、大気のオゾン層に対する破壊作用がなく、GWP値がすべてHFC−245fa(GWP790)より小さかった。
【0036】
表2に、実施例1〜7で得られた環境保護型発泡剤組成物の熱伝導率が示されている。表2から明らかなように、実施例1〜7で得られた環境保護型発泡剤組成物は、HFC−245faシステム、シクロペンタンシステム及びHFO−1233zdとHFC−245ebを同比率で混合するが、HFC−254caを添加しないシステムに比べて、熱伝導率が大幅に低下した。
【0038】
表3に、実施例1〜7で得られた環境保護型発泡剤組成物が冷蔵庫に使用される場合の冷蔵庫の装置全体のエネルギー消費レベルを比較した。表3から明らかなように、実施例1〜7で得られた環境保護型発泡剤組成物は、HFC−245faシステム、シクロペンタンシステム及びHFO−1233zdとHFC−245ebを同比率で混合するが、HFC−254caを添加しないシステムに比べて、冷蔵庫装置全体のエネルギー消費レベルが大幅に低下し、優れたエネルギー消費量レベルを有することが確認された。