(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561227
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】表面仕上げ材の混合物へ添加するための添加剤混合物およびそれから形成される複合表面仕上げ系
(51)【国際特許分類】
C04B 14/20 20060101AFI20190808BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20190808BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20190808BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20190808BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20190808BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20190808BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20190808BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20190808BHJP
E04F 15/08 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
C04B14/20 A
C04B28/02
C04B14/28
C04B14/02 A
C09D7/47
C09D201/00
C09D175/04
C09D163/00
E04F15/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-563245(P2016-563245)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公表番号】特表2017-505281(P2017-505281A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2014075976
(87)【国際公開番号】WO2015104096
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年9月22日
(31)【優先権主張番号】00025/14
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】516207104
【氏名又は名称】ズュンフォラ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SYNFOLA GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】カスパー、ハウザー
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−198650(JP,A)
【文献】
特開平01−308852(JP,A)
【文献】
特開2003−292360(JP,A)
【文献】
特開2007−146174(JP,A)
【文献】
特開平08−257490(JP,A)
【文献】
特開2002−127348(JP,A)
【文献】
特許第4638888(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
C09D 7/47
C09D 163/00
C09D 175/04
C09D 201/00
E04F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動可能または塗布可能な表面仕上げ材混合物から形成される、床の分野のための複合表面仕上げ系であって、
前記表面仕上げ材混合物が添加されるか、または前記表面仕上げ材混合物が組み込まれる添加剤混合物が、少なくともある量の白雲母マイカを含み、それによって、6重量%から50重量%の重量基準の量の少なくとも2つの異なる粒子サイズの白雲母マイカが、前記表面仕上げ材混合物および前記添加剤混合物を含む複合表面仕上げ系中に得られ、
前記添加剤混合物が、白雲母マイカおよび添加剤から成り、
前記添加剤混合物の50重量%から95重量%の量が白雲母マイカであり、
前記添加剤混合物中の前記量の白雲母マイカが、少なくとも2つの異なる粒子サイズの白雲母マイカから成り、
前記少なくとも2つの異なる粒子サイズが、
150μm超および300μm未満である微細粒子サイズの第一区分の粒子と、400μm超および800μm未満である中間微細粒子サイズの第二区分の粒子
から成り、
充分な前記添加剤混合物が添加される前記表面仕上げ材混合物として、硬質コンクリート、セメント‐合成樹脂、モルタル、キシロリット、マグネシア、または硬石こう表面仕上げ材混合物などの無機表面仕上げ材混合物が選択され、それによって、前記白雲母マイカの重量基準の前記量が、前記得られる複合表面仕上げ系の6重量%から20重量%であることを特徴とする、複合表面仕上げ系。
【請求項2】
流動可能または塗布可能な表面仕上げ材混合物から形成される、床の分野のための複合表面仕上げ系であって、
前記表面仕上げ材混合物が添加されるか、または前記表面仕上げ材混合物が組み込まれる添加剤混合物が、少なくともある量の白雲母マイカを含み、それによって、6重量%から50重量%の重量基準の量の少なくとも2つの異なる粒子サイズの白雲母マイカが、前記表面仕上げ材混合物および前記添加剤混合物を含む複合表面仕上げ系中に得られ、
前記添加剤混合物が、白雲母マイカおよび添加剤から成り、
前記添加剤混合物の50重量%から95重量%の量が白雲母マイカであり、
前記添加剤混合物中の前記量の白雲母マイカが、少なくとも2つの異なる粒子サイズの白雲母マイカから成り、
前記少なくとも2つの異なる粒子サイズが、
150μm超および300μm未満である微細粒子サイズの第一区分の粒子と、400μm超および800μm未満である中間微細粒子サイズの第二区分の粒子
から成り、
充分な前記添加剤混合物が添加される前記表面仕上げ材混合物として、合成樹脂表面仕上げ材混合物またはプラスチックを含む表面仕上げ材混合物が選択され、それによって、前記白雲母マイカの重量基準の前記量が、前記得られる複合表面仕上げ系の12重量%から50重量%であることを特徴とする、複合表面仕上げ系。
【請求項3】
流動可能または塗布可能な表面仕上げ材混合物から形成される、床の分野のための複合表面仕上げ系であって、
前記表面仕上げ材混合物が添加されるか、または前記表面仕上げ材混合物が組み込まれる添加剤混合物が、少なくともある量の白雲母マイカを含み、それによって、6重量%から50重量%の重量基準の量の少なくとも2つの異なる粒子サイズの白雲母マイカが、前記表面仕上げ材混合物および前記添加剤混合物を含む複合表面仕上げ系中に得られ、
前記添加剤混合物が、白雲母マイカおよび添加剤から成り、
前記添加剤混合物の50重量%から95重量%の量が白雲母マイカであり、
前記添加剤混合物中の前記量の白雲母マイカが、少なくとも2つの異なる粒子サイズの白雲母マイカから成り、
前記少なくとも2つの異なる粒子サイズが、
150μm超および300μm未満である微細粒子サイズの第一区分の粒子と、400μm超および800μm未満である中間微細粒子サイズの第二区分の粒子
から成り、
充分な前記添加剤混合物が添加される前記表面仕上げ材混合物として、ポリウレタン表面仕上げ材混合物またはエポキシ表面仕上げ材混合物が選択され、それによって、前記白雲母マイカの重量基準の前記量が、前記得られる複合表面仕上げ系の40重量%から50重量%であることを特徴とする、複合表面仕上げ系。
【請求項4】
前記添加剤混合物が、流動性最適化剤、分離防止安定化剤、防火成分、コーティング安定化剤、および/または白色顔料の形態の添加剤をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合表面仕上げ系。
【請求項5】
前記添加剤混合物が、ポートランドセメントを例とするバインダーならびに/または炭酸カルシウムを例とする充填剤およびバインダーの形態の添加剤をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合表面仕上げ系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面仕上げ材の混合物へ添加して、床、壁、もしくはファサードの分野のための複合表面仕上げ系を形成するための添加剤の混合物、表面仕上げ材の流動可能もしくは塗布可能混合物から形成される床、壁、もしくはファサードの分野のための複合表面仕上げ系、ならびに表面仕上げ材の混合物および添加剤の混合物を含む床、壁、もしくはファサードの分野のための複合表面仕上げ系の製造方法について記載する。
【背景技術】
【0002】
通常は白雲母マイカの形態であるマイカをある量で含んでいる添加剤混合物を含有するコンクリート混合物、コーティング、および塗料などの建築産業のための建築材料が市販されている。
【0003】
白雲母マイカは、KAl
2[(OH,F)
2|AlSi
3O
10]の一般化学組成を有し、単斜晶系または三方晶系で結晶化し、ケイ酸塩およびゲルマニウム酸塩(germinates)の鉱物クラスからの鉱物であり、フィロケイ酸塩に属する。白雲母マイカは、アルミナマイカとも称され、非常に一般的に存在し、天然鉱床からの採掘によって得られる。
【0004】
塗料またはコーティングに少量の白雲母マイカを添加することによって、コーティングの特別な視覚的印象を得ることができることが知られている。白雲母マイカは、ガラス光沢または真珠光沢の表面を有し、通常は灰色がかった白色の薄片状物質であることから、当業者は、長い間、化粧効果を得るために少量の添加を用いてきた。コーティングの形態で建築産業において用いられる公知の混合物は、特に微細な粒子サイズの粒子の形態で、0.5重量%から最大で1重量%の量で白雲母マイカを含んでいる。そのような少量の白雲母マイカであっても、所望される化粧効果の発生がもたらされる。
【0005】
また、例えばコンクリートの形態である建築材料混合物に極めて少量の白雲母マイカを添加することによって、ある種の強化が達成されることも知られている。白雲母マイカの粒子は、水に不溶性であり、化学的に不活性であり、建築材料混合物の製造および処理中に維持される層板状構造を有する。その層板状構造のために、少量の白雲母マイカを添加することによって、キャストコンクリート構成材のクラックの発生し易さを大きく低減することができる。白雲母マイカの特性に起因して、1重量%以下の少量を建築材料混合物に添加することにより、この建築材料混合物が設置された際の収縮の低減を達成することができ、従って、このことは、クラック成長のリスクを低減する。
【0006】
建築材料混合物の1重量%以下である白雲母マイカの最小限の添加が、公知の先行技術で報告されている。この少量の白雲母マイカは、所望される機械特性をもたらし、建築材料混合物の設置挙動(setup behavior)を改善する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、床、壁、もしくはファサードの分野で用いるためのコーティング系の熱伝導性および/または熱の消散を低下させることである。コーティング系でコーティングされた物体および基材を通しての熱の消散は、コーティング系を備えたそのような基材上を歩いても、足が冷たい感覚を伴うことがなくなり、従ってより強い足の温かさが得られることから、低減されるべきである。
【0008】
公知の表面仕上げ混合物および/または公知の表面仕上げ材混合物のドライミックスと添加剤との混合物のキャスト用組成物に添加剤混合物を導入することにより、複合表面仕上げ系が、様々な表面および基材上に形成される。乾燥および/または設置の後、この材料でコーティングされた物体による、複合表面仕上げ系でコーティングされた表面に対する主として法線方向の熱伝導性を大きく低減する複合表面仕上げ系が得られる。人が複合表面仕上げ系を有する基材表面に触れるか、またはその上を歩く場合に、手または足が冷たくなる傾向が減少する。複合コーティング系に起因するこの熱消散低減効果は、主観的に知覚可能であるだけでなく、熱消散測定の手段によって客観的に測定もされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
明確に述べた通りの目的は、大量の白雲母マイカを含む添加剤が、複合コーティング系が設置され、そうして形成される前に、建築混合物に添加および/または分散されることによって達成される。
【0010】
この目的は、好ましくは、添加剤が、60重量%から95重量%の量で白雲母マイカを含有することによって達成される。得られた複合表面仕上げ系中における少なくとも5重量%から50重量%の白雲母マイカ含有量が、熱の消散に測定可能な影響を有する所望される結果をもたらした。
【0011】
本発明の主題を以下で述べるが、ここで、添付の図面を用いて、様々な複合表面仕上げ系によって達成された、測定された熱伝導特性および/または熱消散特性を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、4つの複合表面仕上げ系について、熱の消散時の銅ブロックの冷却を時間の関数としてプロットしたグラフを示し、測定は、EMPAデューベンドルフによって導入されたSIA252規格に従う測定方法で行った。
【
図2】
図2は、添加剤混合物が分散された工業用エポキシ樹脂コーティングを含む複合表面仕上げ系を有する試験体への熱消散による銅ブロックの冷却の過程にて、30分間の測定時間で記録された測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
公知の市販表面仕上げ材混合物と組み合わされた場合に、複合表面仕上げ系を形成する鉱物ベース添加剤混合物について以下で述べる。
【0014】
この添加剤混合物は、ISOPOWDERの商品名で、様々な配合で本出願者から販売されている。用いられるべき対応する配合、すなわち添加剤混合物の組成は、添加剤混合物がその中に組み込まれ、および/または分散されることになる選択された表面仕上げ材混合物に応じて異なる。
【0015】
複合表面仕上げ系は、物体の様々な表面に適用され、従って、床、壁、天井、もしくはファサードの形態の様々な基材、有用な表面、または工業的表面に適用される。純粋な表面仕上げ材混合物は、ほとんどまたはまったく断熱特性を持たないが、得られる複合表面仕上げ系の熱伝導特性は、添加剤混合物の添加によって大きく変化される。複合表面仕上げ系の得られる厚さは、数ミリメートルの範囲である。
【0016】
既存の適切に処理された表面上に所望される複合表面仕上げ系を形成するために用いることができる表面仕上げ材混合物は、建築の分野でのスイス規格協会の登録規格であるSAI 252に該当する。このような表面仕上げ材混合物は、添加剤が添加された後、シームレス工業用床材の形態の複合表面仕上げ系を形成することができる。硬質コンクリート表面仕上げ材、セメント‐合成樹脂表面仕上げ材、モルタル表面仕上げ材、キシロリット表面仕上げ材、マグネシア表面仕上げ材、または水、砂利、および硬石こうファインダー(anhydrite finder)から形成される硬石こう表面仕上げ材などの無機表面仕上げ材が、表面仕上げ材混合物として用いられてよい。
【0017】
さらなる表面仕上げ材混合物として、合成樹脂表面仕上げ材またはプラスチック含有表面仕上げ材が用いられてよく、これらは、通常、より薄い層として基材に適用される。純粋な表面仕上げ材混合物および/または添加剤混合物と組み合わされた表面仕上げ材混合物は、少なくとも1回の作業で適用される。
【0018】
薄層系での発明者らが行った適用では、添加剤混合物の量は、無機コーティングの場合、表面仕上げ材混合物の量の7重量%から20重量%であり、工業用ポリウレタンおよびエポキシ樹脂系の場合、その量は、分散層において、表面仕上げ材混合物の量の40重量%から50重量%であってもよい。
【0019】
ドライミックス
最初に、適用する前に、表面仕上げ材混合物および添加剤混合物を含む粉末または顆粒の形態のドライミックスが、混合によって製造されてよい。このドライミックスは、それを混合水および添加剤と組み合わせて注入可能もしくは塗布可能であるキャスト用配合物を形成することにより、ブレンドによってキャスト用配合物が形成されてよい。このキャスト用配合物は、次に、所望される層厚さで基材に適用される。乾燥および/または設置の後、追加の層、例えば少なくとも1つのシーリング層が適用されてよい。
【0020】
キャスト用配合物中での拡散
しかし、ポリウレタン表面仕上げ材またはエポキシ樹脂表面仕上げ材を例とするプラスチックまたは合成樹脂表面仕上げ材の形態での表面仕上げ材混合物が用いられる場合、添加剤混合物は、後から分散投入されてもよい。表面仕上げ材混合物を適用、および塗布、および/またはスパックリング(spackling)した後、所望される量の添加剤混合物が、表面仕上げ材混合物中に分散され、それによって、添加剤混合物は、表面仕上げ材混合物の適用後に初めて、表面仕上げ材混合物と組み合わされる。
【0021】
表面仕上げ材混合物または表面仕上げ材混合物および添加剤混合物を含むキャスト用配合物は、容易に、および迅速に、1回の作業で、シームレスな形で、1つの層として適用することができる。得られる複合表面仕上げ系は、充分に高い圧縮強度および引張耐荷力(tensile load−bearing capacity)、ならびに基材からの熱の消散を有し、熱の消散は、添加剤混合物の添加によって、所望される度合いまで低減されている。
【0022】
添加剤の定義
添加剤混合物の主成分は、白雲母マイカであり、それは、添加剤混合物中に、50重量%から95重量%の量で、粉末または顆粒の形態で利用可能である。
【0023】
白雲母マイカ分は、様々な粒子サイズで存在する必要がある。粒子サイズの異なる少なくとも2つの量を用いる場合、得られる複合表面仕上げ系で、良好な熱消散値が確立されることが見出された。用いられる表面仕上げ材混合物に応じて、白雲母マイカ分は、400μm超および800μm未満の中間微細粒子サイズならびに/または800μm以上の粒子サイズである粗粒子サイズと共に、微細粒子サイズ、すなわち、150μm超および300μm未満の粒子から構成される必要がある。MU85(平均粒子サイズ>160μm)、MU450(>630μm)、およびMU800(>800μm)の形態の白雲母マイカMUを用いることによって、良好な結果が得られた。粒子サイズの特定は、対応する白雲母マイカのランダムサンプルの走査型電子顕微鏡観察において平均粒子径を特定することによって行われる。
【0024】
1つの微細粒子分および1つの中間微細粒子サイズ分の形態の白雲母マイカを含有する添加剤混合物が、良好な結果をもたらすことが見出された。
【0025】
粗粒子サイズの白雲母マイカの追加分を混合すると、所望される熱力学的特性の良好な結果がもたらされた。
【0026】
実験から示されるように、得られる複合表面仕上げ系の所望される熱力学的特性は、粗粒子サイズ分および中間微細粒子サイズ分の白雲母マイカを含有する添加剤混合物で、ならびに粗粒子サイズ分および微細粒子サイズ分の白雲母マイカを有する添加剤混合物で得られた。
【0027】
高濃度で白雲母マイカを含む添加剤混合物を添加することにより、キシロリット表面仕上げ材に類似の足の温かさ(foot warmth)を有する複合表面仕上げ系を得ることができる。ここでの足の温かさとは、複合表面仕上げ系の上を歩いた場合に人の足が冷たくならないような、低減された熱伝導性を意味するものと理解される。
【0028】
添加剤混合物自体の異なる配合、および/または表面仕上げ材混合物中の添加剤混合物の定量的な量により、所望される足の温かさを有する硬質コンクリート床、硬石こう、PU、エポキシ樹脂表面仕上げ材、およびその他の表面仕上げ材もここで得ることができる。
【0029】
同時に、大量の白雲母マイカによって変化された表面仕上げ材混合物は、流動性、加工性、およびバインダー含有量、分離などの特性を回復するために、以下の成分と再度適合させる必要がある。従って、各市販の表面仕上げ材混合物を、ISOPOWDER添加剤混合物の調節された配合物と、調節された量比で混合して、所望される足の温かさを達成し、同時に複合表面仕上げ系全体に対して加工規格および設置規格に準拠させることが重要である。
【0030】
任意成分
添加剤混合物と組み合わされた表面仕上げ材混合物の加工特性および機械強度を得るために、および/または回復するために、様々な添加剤が、添加剤混合物に混合される。
【0031】
高流動化剤(superplasticizer)としても知られる少なくとも1つの流動性最適化剤(flow optimizer)、分離防止安定化剤、少なくとも1つのバインダー、例えばポートランドセメント、充填剤およびバインダー、例えば炭酸カルシウム、防火成分、コーティング安定化剤、および/または白色顔料が、添加剤として添加剤混合物に添加される。表面仕上げ材混合物と連係して作用する所望される添加剤混合物に応じて、異なる濃度の添加剤が選択され、それによって、添加剤混合物の異なる配合が、結果として得られる。
【0032】
流動性最適化剤は、Melflux(登録商標)2651 Fを用い、ある程度過剰にも添加して、コーティングまたは流動モルタルの流動性を確保した。硬質コンクリートコーティングの場合、砂、セメント、ISOPOWDERなどの均一な分布が、それによって改善され、加工が容易となる。
【0033】
水分含有量が高くなり過ぎた場合に分離を制御するために、安定化剤としてStarvis 3003 Fを添加剤混合物に添加した。この製品は、添加剤混合物の主成分である白雲母マイカが、強い吸収性であり、水分保持機構のように挙動することから、場合によっては、過剰に添加した。しかし、この特性は、特に硬質コンクリート表面仕上げ材の場合、水分が徐々に放出されることでクラックの成長が抑制されることから、非常に有効なものでもある。
【0034】
大量のISOPOWDERを添加することで失われたバインダー成分自体が添加されるように、白色ポートランドセメント(EN 197‐1−CEM I 52.5 N(sw))を、特に非常に高い純度を有するセメントベースの無機コーティングの場合にバインダーとして用いた。
【0035】
バインダーとしてポートランドセメントCEM I 42.5 Rの使用も試験し、品質の観点から白色セメントの含有を必要としない硬質コンクリート表面仕上げ材およびコーティング製品に対して用いた。これも、大量のISOPOWDERを添加することで失われたバインダー含有量に置き換わるものである。
【0036】
よく知られている無機コーティングに用いられるか、またはその他のコーティングとの適合性を有し、大量に添加したISOPOWDERに起因して、吸引挙動(呼吸作用)ならびに硬さの度合いを補償するために、補足剤として添加する必要のある炭酸カルシウムのMinema 60/10を、充填剤およびバインダーとして用いた。それはまた、特に無機コーティングにおいて、非常に少量で用いられる場合のある充填剤としても作用する。
【0037】
複合表面仕上げ系の可燃性を最小限に抑えるAPYRAL 24を、防火成分として実験で用いた。APYRAL 24は、必要な補償分を回復するものであり、それによって、添加剤混合物は可燃性ではないが、STO Creative Mineralなどの対応する製品が、防火クラスの認証を失うことがない。
【0038】
様々な無機コーティングおよび流動モルタルにおいて適合性を有し、使用可能であることから選択した非常に純粋で高品質の石英であるQuartz SIHELCO 35を、コーティング安定化剤として用いた。従って、5%から20%の添加量で、複合表面仕上げ系の加工性、光学特性、および強度に関して所望される結果を達成するためのバランスを、1種類のみの石英によって得ることができる。
【0039】
二酸化チタン(Pretiox)を、白色顔料として用いた。
【実施例】
【0040】
可能な濃度の添加剤
添加剤混合物の白雲母マイカ分は、実験において、添加剤混合物の全組成の最小値A重量パーセントから最大値B重量パーセントの量で存在した。
【0041】
【表1】
【0042】
用いた添加剤は、添加剤混合物の総質量に対して、以下の表に従うAからBの量で用い、それによって、良好な結果が得られた。
【0043】
【表2】
【0044】
配合実施例1
第一の複合表面仕上げ系を製造するために、以下の組成のBASF製の自己流動性スパックリング配合物(self−running spackling compound)を、表面仕上げ材混合物として用いた:
【0045】
【表3】
【0046】
この表面仕上げ材混合物を、以下の組成の添加剤混合物と組み合わせた:
【0047】
【表4】
【0048】
ここでの添加剤混合物は、2つの異なる粒子サイズの白雲母マイカを含有する。
【0049】
この第一の複合系は、2つの実施形態で製造し、ここで、10重量%(800g 表面仕上げ材混合物、80g 添加剤混合物2’、193.6g 水)を第一の試験I)で用い、第二の試験II)では、15重量%(800g 表面仕上げ材混合物、120g 添加剤混合物、202.4g 水)の添加剤混合物を、無機表面仕上げ材としての表面仕上げ材混合物(BASF製混合物)と組み合わせ、追加の混合水を添加した。複合表面仕上げ系の得られる流動特性、光学特性、および熱伝導特性は、所望される通りであった。
【0050】
配合実施例2
以下の組成を有する添加剤混合物を、「Sto Creative Material」の商品名で流通している第二の無機表面仕上げ材混合物に添加した。
【0051】
【表5】
【0052】
ここでの白雲母マイカの量は、3つの異なる粒子サイズを有する。
【0053】
合計で3kgの添加剤を、15kgの「Sto Creative Mineral」表面仕上げ材混合物と組み合わせ、追加の混合水と混合した。添加剤混合物の量は、従って、表面仕上げ材混合物の重量の20%であり、それによって、混合比は、表面仕上げ材混合物5部に対して添加剤混合物1部に相当していた。
【0054】
配合実施例3
以下の組成に従う添加剤混合物を、工業用硬質コンクリートコーティングの形態の表面仕上げ材混合物に添加した。
【0055】
【表6】
【0056】
ここでも、3つの異なる粒子サイズの添加剤混合物を用いる。
【0057】
熱力学的試験を行った一連の実験
様々な複合表面仕上げ系を、辺長さ400mmおよび厚さ120mmの正方形コンクリートブロックに適用した。熱消散測定を実施する前に、複合表面仕上げ系を充分に硬化し、乾燥した。2つの試験体(P1、P2)は、各々、同一の複合表面仕上げ系を備えていた。熱消散測定を実施する前に、試験体の各々を、20℃の一定温度で48時間保存した。熱消散は、同一の条件下、各々2工程で2つの試験体に対して特定し、測定された2つの試験体による熱消散の平均値を特定した。試験体当たり2回の試験測定を行ったため、4つの測定値、1AP1、1AP2、1BP1、1BP2から平均値を得た。
【0058】
表面に複合表面仕上げ系が適用された試験体を通しての熱の消散、従って垂直方向の熱伝導を測定するために、直径が120mm、前端部の接触面が113cm
2である円柱状銅ブロックを、52℃に予備加熱して用いた。この円柱状銅ブロックを、周縁面、および試験体とは逆側に向いた端部面に沿って断熱した。この方法により、銅ブロックからの熱エネルギーの移動および/または伝導が、銅ブロックが試験体の複合表面仕上げ系上に置かれた側の端部接触面を通してのみで行われることを可能とした。温度低下は、試験体上に銅ブロックを置いた後、30分以内に特定した。
【0059】
銅ブロックから周囲環境への熱の放出に起因する誤差を最小限とするために、コントロール測定も行った。それを行うにあたって、銅ブロックを20℃から50℃に加熱し、次に、ポリスチレン製の100mm厚断熱プレート上に置き、30分以内の銅ブロックの温度低下を測定した。この測定では、断熱プレートを50℃に加熱するため、熱エネルギーは、端部接触面を通して移動することはできない。従って、ここでは、加熱ブロックの温度低下を特定することによって、他の壁部分を通しての熱喪失が特定される。特定の時間で測定した加熱ブロックの温度低下を、試験体の冷却時の温度測定平均値から差し引き、それによって、それぞれ2つの試験体の各々に対する4つの測定値の補正温度平均値(補正平均)を結果として得た。
【0060】
試験体1A/1B
層厚さ40mmを有する複合表面仕上げ系を試験体の表面上に含む第一の試験体1Aおよび第二の試験体1Bによる熱の消散を、それぞれ2回ずつ測定した。複合表面仕上げ系は、工業用硬質コンクリート表面仕上げ材の形態の表面仕上げ材混合物(411kg)および組み込まれた添加剤混合物(30kg)、さらには追加の添加剤を含んでいた。添加剤混合物の定量的量は、工業用硬質コンクリート表面仕上げ材の形態の表面仕上げ材混合物の質量のおよそ7%であった。表面仕上げ材混合物および組み込まれた添加剤混合物は、ドライミックスの形態で用い、それを混合水および添加剤と組み合わせた。測定値、平均値、および補正平均値を、表1に挙げる。
【0061】
【表7】
【0062】
試験体2A/2B
添加剤混合物がその中に組み込まれた工業用エポキシ樹脂コーティングの形態の表面仕上げ材混合物が層厚さ3mmで上に配置された第一の試験体2Aおよび第二の試験体2Bによる熱の消散、および熱の消散を、別の一連の試験で特定した。添加剤混合物を、工業用エポキシ樹脂コーティングの形態の適用された表面仕上げ材混合物上に、エポキシ樹脂コーティングに対する1:1の品質比(quality ratio)で分散させた。次に、シール材を適用した。測定値、平均値、および補正平均値を、表2に挙げる。
【0063】
【表8】
【0064】
試験体3A/3B
試験体3Aおよび3Bを、試験体2A/2Bの場合の記述に従って、同量の添加剤混合物を組込んだエポキシ樹脂コーティングで製造したが、シール材は省略した。測定値、平均値、および補正平均値を、表3に挙げる。
【0065】
【表9】
【0066】
試験体4A/4B
試験体4Aおよび4Bは、分散された添加剤混合物を備えたコーティング剤混合物としての工業用PUコーティングによる複合表面仕上げ系を特徴とする。添加剤混合物およびPUコーティングは、1:1の重量比で適用し、3mm厚の複合表面仕上げ系が作られた。次に、このPUコーティング/添加剤混合物組成物に、シール材も提供した。測定値、平均値、および補正平均値を、表4に挙げる。
【0067】
【表10】
【0068】
2分および30分後の熱消散値の分析により、試験した試験体および/または複合表面仕上げ系を、シームレス工業用異種物系(seamless industrial foreign systems)に対するSIA 252:2002規格に従って分類することができる。2分後に3.6kJ以下の熱喪失を、30分後に12.6kJ以下の熱喪失を有する複合表面仕上げ系は、良好な断熱性を提供する表面仕上げ材として分類される。2分後に4.5kJ以下の熱喪失を、30分後に22.0kJ以下の熱喪失を有する複合表面仕上げ系は、断熱性表面仕上げ材として分類される。分類の基礎は、2分間および30分間の冷却時間後の対応する点により、冷却時間で
図1に示される。
【0069】
試験体2A/2B、3A/3B、および4A/4Bに対する測定値は、このように、断熱性を提供する複合表面仕上げ系として分類されることになる。
【0070】
図2
図2は、例として、試験体3Aに対する熱消散測定の測定曲線を示しており、銅ブラック(copper black)の冷却に関する測定生データ、およびそれから算出された複合表面仕上げ系への熱消散を、時間の関数としてプロットしたものである。銅ブロックによる周囲環境への熱消散の比較測定は、ここでは考慮に入れていない。
【0071】
表面仕上げ材混合物としてのエポキシ樹脂コーティングおよび等量の適切な組成の添加剤混合物を含む複合表面仕上げ系では、厚さ3.5mmのコンクリート、キシロリット、およびリノリウムを含む表面仕上げ系に対する比較測定値よりも低い熱消散が達成されている。
図2は、2つの最も低い基準が、本質的に断熱性である表面仕上げ系の場合に達成されることが容易に分かるように、分類値を点で示しており、すなわち、30分後に9.2kJ以下、および2分後に2.5kJ以下であり、これらは、コルクリノリウム、10mm厚のミニパーケット(mini parquet)、およびコルクパーケット、さらに床敷き詰め用カーペット(fitted carpet)などの非常により厚い表面仕上げ系によってのみ達成され、ここで、これらの断熱層は、シームレスに適用可能である表面仕上げ系の一部ではない。