(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光トランシーバや光トランスポンダ等の光通信機器には、光パワー減衰器、光パワーモニタ等の様々な光デバイスが内蔵される。この光通信機器の大きさは、CFP、CFP2、CFP4等の規格によって制限されており、小型化が要求されている。
【0005】
この小型化を実現するためには、光パワー減衰器及び光パワーモニタを一つの空間内に集積した集積型光デバイスを用いることが考えられる。しかしながら、光通信機器において良く用いられるシャッター式の光パワー減衰器には、次のような欠点がある。
【0006】
即ち、シャッター式の光パワー減衰器では、光の一部をけらして、光を減衰させる。このため、出力側の光ファイバに伝播する、けらされた後の光の強度分布が、回折により円形形状から歪む。
【0007】
この光を光パワーモニタで検出する場合、受光するフォトダイオードは、光の形状によらず受光パワーに比例した電流を出力する。一方、出力側の光ファイバを通じて出力される光は、光ファイバ内を伝播する光の電界分布と、光ファイバに入射する光の電界分布との重なり積分に対応する。
【0008】
従って、出力側の光ファイバを通じて外部に伝播する、けらされた後の光のパワー、即ち出力光パワーは、光パワーモニタで検出されるパワーと対応しない。即ち、シャッター式の光パワー減衰器を制御して出力光パワーを制御するために、シャッター式の光パワー減衰器によりけらされた後の光のパワーを光パワーモニタで検出する方法では、出力光パワーのモニタ精度が悪いといった問題があった。
【0009】
勿論、光ファイバを実際に伝播する光のパワーを検出すれば、上述したモニタ精度の悪化は生じない。しかしながら、この場合には、光パワー減衰器とは独立して離れた位置に、光パワーモニタを配置する必要がある。
【0010】
シャッター式の光パワー減衰器と同様の問題は、チルトミラー式の光パワー減衰器においても生じる。チルトミラー式の光パワー減衰器は、チルトミラーにより反射光の向きを変更して、出力側の光ファイバに結合する反射光の量を調整するように構成される。
【0011】
従って、本開示の一側面によれば、光パワー減衰器及び光パワーモニタを備える高性能な集積型光デバイスを提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一側面にかかる集積型光デバイスは、筐体と、光パワー減衰器と、光分岐器と、光パワーモニタと、第一及び第二の光ファイバと、を備える。光パワー減衰器、光分岐器、及び光パワーモニタは、筐体の内側に収容される。第一及び第二の光ファイバは、筐体の内側に少なくとも部分的に収容される。
【0013】
筐体の内側には、上記光パワー減衰器として、液晶型の光パワー減衰器が収容される。第一の光ファイバは、筐体の外側からの光信号を光パワー減衰器へ入力するように配置される。光パワー減衰器は、偏光状態の操作により第一の光ファイバからの光信号を減衰させるように構成される。第二の光ファイバは、光パワー減衰器からの減衰された光信号を、筐体の外側に出力するように配置される。
【0014】
光分岐器は、第一の光ファイバから光パワー減衰器へ伝播する光信号、及び、光パワー減衰器から第二の光ファイバへ伝播する減衰された光信号の少なくとも一方を分岐することにより、分岐信号を生成するように配置される。光パワーモニタは、分岐信号を受光して、そのパワーを検出するように配置される。
【0015】
液晶による偏光状態の操作により光信号を減衰させる場合には、シャッター式やチルトミラー式の光パワー減衰器のようには、ビーム形状を歪ませずに光信号を減衰させることができる。このため、第二の光ファイバを通じて出力される光信号のパワーを、分岐信号のパワーを検出することにより、精度よく観測することができる。
【0016】
従って、本開示の一側面によれば、光パワー減衰器及び光パワーモニタを備える高性能な集積型光デバイス、具体的には、光パワーのモニタ精度に優れた集積型光デバイスを提供することができる。
【0017】
本開示の一側面によれば、光分岐器は、第一の光ファイバから光パワー減衰器へ伝播する光信号を分岐することにより、第一の分岐信号を生成し、光パワー減衰器から第二の光ファイバへ伝播する減衰された光信号を分岐することにより、第二の分岐信号を生成するように配置されてもよい。この場合、集積型光デバイスは、光パワーモニタとして、第一の分岐信号を受光して、そのパワーを検出する第一の光パワーモニタと、第二の分岐信号を受光して、そのパワーを検出する第二の光パワーモニタと、を備えることができる。
【0018】
第一及び第二の光パワーモニタを備える集積型光デバイスによれば、光信号の入力パワー及び出力パワーを精度よく観測して、コントローラを通じて光の減衰を精度よく制御することができる。
【0019】
本開示の一側面によれば、光パワー減衰器は、複屈折結晶と、液晶素子と、を備え、液晶素子から複屈折結晶を通って第二の光ファイバに結合される戻り光の量が戻り光の偏向状態に応じて変化するように構成されてもよい。複屈折結晶は、第一の光ファイバからの光信号が通過するように配置され得る。液晶素子の駆動電圧は、コントローラにより制御され得る。液晶素子は、複屈折結晶を通過した光信号を、駆動電圧に応じた偏向状態で複屈折結晶への戻り光として反射することができる。この場合、上記減衰された光信号は、複屈折結晶を通じて第二の光ファイバに結合される戻り光の一部に対応する。
【0020】
本開示の一側面によれば、第一の光ファイバからの光信号は、複屈折結晶によって互いに直交する二つの直線偏光成分に変換され得る。上記液晶素子は、この互いに直交する二つの直線偏光成分に対して45度傾いた液晶配向角を有した状態で動作してもよい。
【0021】
本開示の一側面によれば、光パワー減衰器は、上記液晶素子として、第一及び第二の液晶素子を備えていてもよい。この場合、第一の液晶素子は、二つの直線偏光成分に対して45度傾いた第一の液晶配向角を有してもよく、第二の液晶素子は、二つの直線偏光成分に対して45度傾いた第二の液晶配向角であって、第一の液晶配向角に直交する第二の液晶配向角を有してもよい。こうした直交する配光角を有する第一及び第二の液晶素子を用いれば、光応答の温度依存性及び波長依存性をキャンセルすることができる。
【0022】
本開示の一側面によれば、集積型光デバイスは、第一及び第二のコリメートレンズを備えていてもよい。第一のコリメートレンズは、第一の光ファイバと複屈折結晶との間に配置されてもよい。第二のコリメートレンズは、第二の光ファイバと複屈折結晶との間に配置されてもよい。
【0023】
本開示の一側面によれば、集積型光デバイスは、第一の光ファイバからの光信号が、第一のコリメートレンズ及び複屈折結晶を通って液晶素子に伝播し、液晶素子からの戻り光が、複屈折結晶及び第二のコリメートレンズを通って第二の光ファイバに伝播するように、第一及び第二のコリメートレンズを備えることができる。第一及び第二のコリメートレンズは、焦点距離の設計自由度を向上させ、集積型光デバイスの小型化に貢献する。
【0024】
本開示の一側面によれば、集積型光デバイスは、光路変換プリズムを備えていてもよい。光路変換プリズムは、第一及び第二のコリメートレンズと、複屈折結晶との間に位置することができる。具体的に、光路変換プリズムは、第一のコリメートレンズを通過した第一の光ファイバからの光信号を、複屈折結晶を通って液晶素子に向かうように屈折させ、複屈折結晶からの戻り光を第二のコリメートレンズに向かうように屈折させるように配置され得る。
【0025】
このように光路変換プリズムを配置すれば、第一及び第二のコリメートレンズを軸外で使用することなしに、第一の光ファイバから第二の光ファイバまでの光信号の光路を適切に形成することができ、レンズ収差の影響を抑えることができる。
【0026】
本開示の一側面によれば、光パワーモニタの受光面上に、迷光の受光面への到達を抑制し、上記分岐信号を選択的に受光面に照射するためのアパーチャが設けられてもよい。アパーチャは、光パワーモニタと一体化されていてもよいし、光パワーモニタとは独立したアパーチャであってもよい。アパーチャは、迷光によるパワーの検出誤差を抑えて、分岐信号に対応する光パワーの高精度に検出することに役立つ。
【0027】
本開示の一側面によれば、集積型光デバイスは、コントローラから入力された直流電圧を、交流電圧に変換する変換回路を備えていてもよく、液晶素子は、変換回路から印加される交流電圧により駆動されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の光通信機器1は、光伝送路Lに接続された集積型光デバイス10と、集積型光デバイス10を制御するコントローラ90と、を備える。
【0030】
集積型光デバイス10は、光パワー減衰器として機能する。この集積型光デバイス10は、光伝送路Lの上流部L1からの光信号である入力光信号、及び、光伝送路Lの下流部L2への光信号である出力光信号のパワーをそれぞれ検出する機能を更に有する。コントローラ90は、これらの検出信号に基づき、入力光信号に対する出力光信号のパワー、換言すれば、集積型光デバイス10による光パワー減衰率を制御するように構成される。
【0031】
図1では、単一の集積型光デバイス10を備える光通信機器1を示す。しかしながら、光通信機器1は、マルチポート通信機器であってもよく、ポート毎の光伝送路に個別の集積型光デバイス10を備えていてもよい。光通信機器1は、例えば、光通信ネットワーク上に配置され、例えば、CFP規格の光トランシーバとして構成される。
【0032】
詳述すると、集積型光デバイス10は、
図2に示すようにピッグテール型の光部品として構成される。集積型光デバイス10は、両端が実質的に閉塞された概略円筒形状の筐体15の第一の端部を通じて、光信号を入力するための第一の光ファイバ21と、光信号を出力するための第二の光ファイバ25とが筐体15の内側から外側に配線された構成にされる。このように第一及び第二の光ファイバ21,25のそれぞれは、その一部が筐体15の内側に収容され、残りが筐体15の外部に配置されるように配線される。
【0033】
これら第一及び第二の光ファイバ21,25は、
図2の上下方向に対応する縦方向に並んだ形態で、縦方向に垂直な横方向に配線される。第一及び第二の光ファイバ21,25は、例えば、筐体15の内側に配置される図示しないキャピラリに保持されて、筐体15の内側で位置決めされる。
【0034】
図3に示すように、筐体15の内側には更に、第一及び第二のコリメートレンズ31,35と、光分岐器41と、光路変換プリズム45と、複屈折結晶49と、第一及び第二の液晶素子51,55と、第一及び第二の光パワーモニタ61,65と、第一及び第二のアパーチャ71,75とが、収容される。筐体15の第二の端部には、第一及び第二の光パワーモニタ61,65からの検出信号を伝送するための信号線及び集積型光デバイス10を制御するための信号線等の各種信号線C(
図2参照)が、筐体15の内側から外側に配線される。
【0035】
第一のコリメートレンズ31は、第一の光ファイバ21と光分岐器41との間における入力光信号の光路上に配置される。この第一のコリメートレンズ31は、第一の光ファイバ21からの入力光信号をコリメートして下流に伝送する。
【0036】
具体的に、第一のコリメートレンズ31は、レンズ収差の影響を抑えるために、第一のコリメートレンズ31の中心軸が第一の光ファイバ21の光軸に一致するように配置される。これにより、第一の光ファイバ21からの入力光信号は、実質的に、第一のコリメートレンズ31の中心を通って下流に伝播する。
【0037】
第二のコリメートレンズ35は、第二の光ファイバ25と光分岐器41との間における出力光信号の光路上に配置される。光分岐器41からの出力光信号は、この第二のコリメートレンズ35を介して、第二の光ファイバ25に伝播する。第二のコリメートレンズ35も、第一のコリメートレンズ31と同様に、第二のコリメートレンズ35の中心軸が、第二の光ファイバ25の光軸に一致するように配置される。これにより、光分岐器41からの出力光信号は、実質的に、第二のコリメートレンズ35の中心を通って、第二の光ファイバ25へ伝播する。
【0038】
光分岐器41は、第一及び第二のコリメートレンズ31,35と光路変換プリズム45との間に配置される。具体的には、光分岐器41は、第一のコリメートレンズ31と光路変換プリズム45との間の入力光信号の光路、及び、光路変換プリズム45と第二のコリメートレンズ35との間の出力光信号の光路を横断するように配置される。この光分岐器41は、例えばタップ膜が形成された面を有するプレート状部材として構成される。
【0039】
光分岐器41は、光分岐器41を通過する第一のコリメートレンズ31からの入力光信号を、所定の分岐比で透過信号と反射信号とに分岐する。本実施形態では、入力光信号のごく一部が反射信号として分岐される。ここでは、入力光信号から分岐される反射信号のことを、第一の分岐信号として表現し、透過信号のことを、分岐される前と同じく入力光信号と表現する。
【0040】
同様に、光分岐器41は、光路変換プリズム45からの出力光信号を、所定の分岐比で透過信号と反射信号とに分岐する。具体的には、出力光信号のごく一部が反射信号として分岐される。ここでは、出力光信号から分岐される反射信号のことを、第二の分岐信号として表現し、透過信号のことを、分岐される前と同じく出力光信号と表現する。
【0041】
第一の光パワーモニタ61は、この光分岐器41にて生成される第一の分岐信号の光路上に配置され、第一の分岐信号を受光して、そのパワーを検出する。具体的に、第一の光パワーモニタ61は、受光面にフォトダイオードを備えることができる。第一のアパーチャ71は、第一の光パワーモニタ61の受光面上に配置されて、迷光の受光面への到達を抑制し、第一の分岐信号を選択的に受光面に通過させるように配置される。
【0042】
具体的に、第一のアパーチャ71は、
図4A及び
図4Bに示すように、第一の分岐信号のビーム径に対応した開口径を有する開口部71Aが、非透明部材に形成された開口プレートとして構成される。開口部71Aは、第一の分岐信号の光路上に配置される。この構成により、第一のアパーチャ71は、開口部71Aを通じて第一の分岐信号を選択的に第一の光パワーモニタ61の受光面に通過させ、開口部71Aの周りの非透明部71Bで、第一の分岐信号以外の迷光を当該迷光が受光面へ到達しないように遮断する。
【0043】
第二の光パワーモニタ65は、光分岐器41にて生成される第二の分岐信号の光路上に配置され、第二の分岐信号を受光して、そのパワーを検出するように構成される。具体的に、第二の光パワーモニタ65は、受光面にフォトダイオードを備えることができる。第二のアパーチャ75は、この第二の光パワーモニタ65の受光面上に配置されて、第二の分岐信号以外の迷光の受光面への到達を抑制し、第二の分岐信号を選択的に受光面に通過させるように配置される。第二のアパーチャ75も、第一のアパーチャ71と同様に、第二の分岐信号のビーム径に対応した開口径を有する開口部が、非透明部材に形成された開口プレートとして構成される。この開口部は、第二の分岐信号の光路上に配置される。
【0044】
一例によれば、第一及び第二のアパーチャ71,75は、それぞれ、第一及び第二の光パワーモニタ61,65の受光面に接触するように配置される。しかしながら、この例に限定されず、第一及び第二のアパーチャ71,75は、それぞれ、第一及び第二の光パワーモニタ61,65の受光面から離れて配置されてもよいし、第一及び第二の光パワーモニタ61,65と一体に形成されてもよい。例えば、第一及び第二の光パワーモニタ61,65は、受光面上にパターン形成された、アパーチャとして機能する非透明層を有した構成にされてもよい。非透明層の形成は、半導体プロセスで実現されてもよい。
【0045】
光路変換プリズム45は、光分岐器41と複屈折結晶49との間に配置される。具体的には、光路変換プリズム45は、光分岐器41と複屈折結晶49との間の入力光信号の光路、及び、複屈折結晶49と光分岐器41との間の出力光信号の光路を横断するように配置される。
【0046】
この光路変換プリズム45は、縦方向に異なる位置に配置された第一及び第二の光ファイバ21,25の位置関係に合わせて、光信号を屈折させ、第一の光ファイバ21から第二の光ファイバ25までの光信号の光路を形成するために用いられる。
【0047】
この光路変換プリズム45は、第一の光ファイバ21から横方向に直進する入力光信号が、横方向に対して所定角度を有するように屈折して、第一及び第二の液晶素子51,55に向かうように、入力光信号の光路を変換し、更には、複屈折結晶49からの出力光信号が屈折して、第二の光ファイバ25の光軸に平行に伝播するように、出力光信号の光路を変換する。
【0048】
複屈折結晶49は、複屈折結晶49を通る入力光信号を、互いに直交する二つの直線偏光に分離する。このため、光路変換プリズム45からの入力光信号は、複屈折結晶49を通じて分離された光路の異なる二つの直線偏光として、第一の液晶素子51に伝播する。
【0049】
図5には、入力光信号に対応する二つの直線偏光が分離して、第一の液晶素子51に到達する様子を、実線で示す。
図3が、筐体15の横からみた、筐体15の内側の部品配置を示すのに対し、
図5が、筐体15の縦からみたときの、特に第二の光ファイバ25の下側から見上げたときの、筐体15の内側の部品配置を示す点に留意されたい。
【0050】
図5では、第二の液晶素子55を向く矢印が、入力光信号の伝播方向を表し、第二液晶素子とは反対を向く矢印が出力光信号の伝播方向を表す。
図5において上下の短い矢印は、第一の直線偏光の向きを例示的に示し、中心に黒丸が描かれた白丸は、第一の直線偏光と直交する第二の直線偏光の向きを例示的に示す。
【0051】
第一の液晶素子51は、複屈折結晶49からの入力光信号に対応する二つの直線偏光である第一及び第二の直線偏光が伝播する光路上に配置される。具体的に、第一の液晶素子51は、
図6に示すように、第一及び第二の直線偏光に対して45度傾いた第一の液晶配向角を有するように配置される。
【0052】
第二の液晶素子55は、第一の液晶素子51の下流で、第一の液晶素子51を通過する第一及び第二の直線偏光の光路上に配置される。この第二の液晶素子55は、第一の液晶素子51と同一の液晶層厚を有する同一の液晶材料で構成される。但し、第二の液晶素子55は、
図6に示すように、第一及び第二の直線偏光に対して45度傾いた液晶配向角であって、第一の液晶素子51とは90度異なる第二の液晶配向角を有するように配置される。第二の液晶素子55に対して90度ずれた液晶配向角を有する第一の液晶素子51は、光応答の温度依存性及び波長依存性をキャンセルするのに役立つ。
【0053】
第二の液晶素子55は、コントローラ90から指定された電圧振幅で駆動される。また、第二の液晶素子55は、第一の液晶素子51とは反対側を向く面に反射ミラー55Aを有する。これにより第二の液晶素子55は、第一及び第二の直線偏光を、電圧振幅に対応する偏光状態に変換して、複屈折結晶49への戻り光として反射するように動作する。即ち、本実施形態によれば、入力光信号に対応する戻り光の偏光状態が、第二の液晶素子55に印加される駆動電圧の電圧振幅の調整により操作されて、これにより、出力光信号の減衰率が調整される。
【0054】
図5に例示されるように、入力光信号の第二の液晶素子55からの反射光である戻り光は、入力光信号と同じ偏光状態を有するとき、複屈折結晶49内で、横方向に関して入力光信号と同じ経路で、複屈折結晶49を通過し、光路変換プリズム45側に伝播する(
図5の実線矢印参照)。これに対し、戻り光は、入力光信号と異なる偏光状態を有するとき、複屈折結晶49内で、横方向に関して入力光信号とは異なる経路で、光路変換プリズム45側に伝播する(
図5の破線矢印参照)。
【0055】
即ち、戻り光が複屈折結晶49を通過するときには、戻り光に含まれる入力光信号と同じ偏光成分のみが、出力光信号の正規光路上を伝播するように複屈折結晶49を通過し、異なる偏光成分は、出力光信号の正規光路を外れて伝播する。
【0056】
このように、複屈折結晶49は、戻り光のうち、入力光信号と同じ偏光成分のみを、出力光信号として正規光路上に伝送し、戻り光のうち、入力光信号と異なる偏光成分を、非出力光信号として正規光路外に伝送する。
【0057】
この複屈折結晶49の機能により、入力光信号は、第二の液晶素子55の電圧振幅に対応する減衰比で減衰されて、減衰された光信号として光路変換プリズム45に伝送される。即ち、戻り光の一部が、出力光信号に対応し、複屈折結晶49を通じて第二の光ファイバ25に結合される。このように、本実施形態の集積型光デバイス10では、複屈折結晶49、第一の液晶素子51、及び第二の液晶素子55の組合せが、光パワー減衰器として機能する。
【0058】
複屈折結晶49の正規光路を通る出力光信号は、光路変換プリズム45、光分岐器41、第二のコリメートレンズ35を通って、第二の光ファイバ25に入力され、第二の光ファイバ25内を伝播して外部に出力される。
【0059】
この他、第二の液晶素子55は、
図7に示す駆動回路80により、コントローラ90から指定された振幅を有する周期的な交流電圧の印加を受けて駆動される。この駆動回路80は、集積型光デバイス10の筐体15の内側に配置されてもよいし、集積型光デバイス10の筐体15の外側に配置されてもよい。
【0060】
駆動回路80は、第二の液晶素子55の陽極及び陰極側にそれぞれ接続されるスイッチ回路81,85を備え、スイッチ回路81,85は、コントローラ90から入力される電圧振幅の指定値にした直流電圧Vin及びグランド電圧GNDを、アナログスイッチ89から出力される所定周期のスイッチ信号に従って、所定周期で交互に出力する。これにより、第二の液晶素子55の陽極及び陰極には、
図7において破線内に示すように、コントローラ90から指定された電圧振幅を有する逆相の交流電圧が印加される。このようにして、第二の液晶素子55は、コントローラ90から指定された電圧振幅で駆動される。
【0061】
以上に説明した本実施形態の集積型光デバイス10によれば、複屈折結晶49及び液晶素子51,55により光パワー減衰器を構成していることが特徴的である。液晶による光信号の偏光状態の操作により、第二の光ファイバ25に結合される光信号のパワーを制御する本実施形態の場合には、シャッター式のように、シャッターブレードで光信号の一部をけらしたり、チルトミラー式のように、光ファイバに対して光信号の位置をずらすことにより、光信号の一部をけらしたりする場合に発生する、ビーム形状の歪みを抑制することができる。
【0062】
即ち、本実施形態によれば、第二の液晶素子55により光信号の偏光状態を操作し、複屈折結晶49により光信号を偏光成分毎に分離して、光信号の一部の偏光成分のみを第二の光ファイバ25に結合させることができる。従って、シャッター式及びチルトミラー式のようにはビーム形状の歪みを生じさせることなく、光信号を減衰させて第二の光ファイバ25から出力させることができる。
【0063】
このため、本実施形態によれば、第二の光パワーモニタ65で第二の分岐信号のパワーを検出することにより、第二の光ファイバ25から出力される出力光信号のパワーを高精度に観測することができ、光信号の減衰を制御する際の光パワーのモニタ精度を向上させることができる。
【0064】
即ち、第二の光パワーモニタ65は、ビーム形状の歪みに関係なく受光パワーに対応した電流を有する検出信号を出力するのに対し、第二の光ファイバ25を通じて出力される光は、光ファイバ25内を伝播する光の電界分布と、光ファイバに入射する光の電界分布との重なり積分に対応する。
【0065】
このため、ビーム形状に歪みがある場合には、歪みに対応する誤差が、光パワーモニタ65の検出信号から推定される出力光信号のパワーと、実際に第二の光ファイバ25を伝播する出力光信号のパワーとの間に生じる。従来技術では、この誤差の影響を抑えることができず、光パワーモニタで検出されるパワー(フォトダイオード電流)と、出力光信号のパワーとの間には線形性がなかった。
【0066】
これに対し、本実施形態によれば、シャッター式及びチルトミラー式のようにはビーム形状の歪みを生じさせないため、第二の光パワーモニタ65で検出されるパワー(フォトダイオード電流)と、出力光信号のパワーとの間には線形性があり、第二の光パワーモニタ65の検出信号から、出力光信号のパワーを正確に特定することができる。
【0067】
従って、本実施形態によれば、光パワー減衰器で減衰された光パワーのモニタ精度を向上させることができる。特に本実施形態によれば、第二の光ファイバ25に伝播した光信号ではなく、第二の光ファイバ25に伝播する前の光信号のパワーを検出する手法で、モニタ精度を向上させることができるので、光パワーモニタ機能と光パワー減衰機能とを一つの機能空間に集積しつつ、モニタ精度を向上させることができる。
【0068】
更に言えば、本実施形態では、第一及び第二の光パワーモニタ61,65の受光面上に、第一及び第二のアパーチャ71,75が設けられているので、複屈折結晶49により正規光路から外れる戻り光や、各種部品表面で生じる乱反射成分が、第一及び第二の光パワーモニタ61,65で受光されるのを抑制することができ、高精度に目的の光パワーを検出することができる。
【0069】
従って、本実施形態によれば、光パワーモニタ機能と光パワー減衰機能を集積した小型の集積型光デバイス10であって、光パワーのモニタ精度及び光パワーの制御精度に優れた高性能な集積型光デバイス10を提供することができる。
【0070】
本開示が、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができることは言うまでもない。例えば、光応答の温度依存性及び波長依存性をキャンセルする必要がない場合、第一の液晶素子51は、集積型光デバイス10に設けられなくてもよい。
【0071】
第一及び第二のコリメートレンズ31,35に代えて、共通する一つのコリメートレンズが設けられてもよい。この場合には、コリメートレンズの中心から外れた位置を、入力光信号及び出力光信号が通過することになるため、レンズ収差の影響を考慮する必要がある。
【0072】
更に言えば、第一及び第二のコリメートレンズ31,35は、集積型光デバイス10に必ずしも必要ではない。但し、第一及び第二のコリメートレンズ31,35を設けることによっては、焦点距離の設計自由度が高まる。これは、集積型光デバイス10の小型化に貢献する。
【0073】
光分岐器41及び光路変換プリズム45を含む各種部品は、図示された形態に限定されない。光分岐器41及び光路変換プリズム45は、等価な機能を有する他の光部品に置き換えられてもよい。コリメートレンズの光軸と光ファイバの光軸とをずらして配置することにより、光路変換を実現してもよい。
【0074】
この他、第一及び第二の光パワーモニタ61,65のうちの一方のみが、集積型光デバイス10に設けられてもよい。例えば、第一及び第二の光パワーモニタ61,65のうち、第二の光パワーモニタ65のみが、集積型光デバイス10に設けられてもよい。
【0075】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【解決手段】集積型光デバイスは、筐体と、液晶型の光パワー減衰器と、光分岐器と、光パワーモニタと、第一及び第二の光ファイバと、を備える。光パワー減衰器、光分岐器、及び光パワーモニタは、筐体の内側に収容される。第一の光ファイバは、筐体の外側からの光信号を光パワー減衰器へ入力する。光パワー減衰器は、偏光状態の操作により第一の光ファイバからの光信号を減衰させる。第二の光ファイバは、光パワー減衰器からの減衰された光信号を、筐体の外側に出力する。光分岐器は、第一の光ファイバから光パワー減衰器へ伝播する光信号、及び、光パワー減衰器から第二の光ファイバへ伝播する減衰された光信号の少なくとも一方を分岐することにより、分岐信号を生成する。光パワーモニタは、分岐信号を受光して、そのパワーを検出する。