(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数の無人移動体の動作を動的に制御するときに、個々の無人移動体に対して順次制御信号を送信することは効率的ではない。一方、これらすべての無人移動体を一の制御信号で一括して制御する場合、その制御内容は圏内にあるすべての無人移動体が同時に実行可能なもののみに限られる。
【0005】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、複数の機体を効率的かつ柔軟に制御可能な無人移動体、およびこれを用いた無人移動体システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の無人移動体は、無線信号を受信する受信器と、受信した前記無線信号を処理する制御部と、自機の現在位置を検出する位置情報取得部と、を備え、前記無線信号は位置範囲を示す情報である宛先エリア情報を含み、前記制御部は、自機の位置および前記宛先エリア情報に基づいて、前記無線信号の受理または無視を決定することを特徴とする。
【0007】
無線信号に宛先エリア情報を含め、無人移動体が自機の位置を宛先エリア情報に照らしてその無線信号の受理または無視を決定することにより、無人移動体の位置を基準とした制御が実現される。
【0008】
また、本発明の無人移動体は、記憶部をさらに備え、前記記憶部には、自機が移動する面上または空間内の複数の区域と、これら各区域を識別する情報であるブロックIDと、が対応付けられて登録されており、前記宛先エリア情報は前記ブロックIDであり、前記制御部は、自機が存在する前記区域のブロックIDと前記宛先エリア情報とに基づいて、前記無線信号の受理または無視を決定する構成としてもよい。
【0009】
例えば、無線信号の宛先エリア情報として地理上の範囲を示す経緯度値を使用し、無人移動体がその範囲に自機の現在地が含まれているかどうか都度チェックする場合、チェック処理の演算負荷により無人移動体の反応が遅れたり、制御部がハングアップしたりするおそれがある。そこで、無人移動体の移動面または移動空間を複数の区域に区切り、その区域のブロックIDを使って無線信号の受理または無視を決定することにより、宛先エリア情報のチェック処理が単純化され、チェック処理の負荷が軽減される。
【0010】
また、本発明の無人移動体は、無人回転翼航空機であることが好ましい。
【0011】
産業用無人ヘリコプターに代表される小型の無人航空機は、機体が高価で入手困難なうえ、安定して飛行させるためには操作に熟練が必要とされるものであった。しかし近年、無人航空機の姿勢制御や自律飛行に用いられるセンサ類およびソフトウェアの改良、低価格化が進み、これにより無人航空機の操作性が飛躍的に向上した。特に小型のマルチコプターについては、ヘリコプターに比べてローター構造が簡単であり、設計およびメンテナンスが容易であることから、趣味目的だけでなく、広範な産業分野における種々のミッションへの応用が試行されている。本発明をこのような無人航空機に利用することにより、無人航空機の利用可能性をさらに拡げることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明の無人移動体システムは、本発明の受信器および制御部と、前記無線信号を複数の前記受信器に対して同時に送信可能な送信機と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の無人移動体システムは、送信機から無線信号を広範囲に送信し、これを受信した複数の無人移動体(受信器および制御部)は、自機の位置をその宛先エリア情報に照らしてその無線信号の受理または無視を決定する。送信機は、宛先エリア情報の位置範囲を広く設定することで多数の無人移動体を一括制御することができ、また、この位置範囲を狭く設定することで特定の無人移動体のみを制御することもできる。これにより、多数の無人航空機の柔軟な制御が実現される。
【0014】
また、本発明の無人移動体システムは、複数の前記送信機が接続された管理装置をさらに備え、前記各送信機は、その管轄する位置範囲である管轄範囲を有している構成としてもよい。
【0015】
それぞれが管轄範囲を有する複数の送信機をその上位装置である管理装置に接続し、これら送信機を管理装置から操作することにより、より広い位置範囲を対象とした無人移動体の制御が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の無人移動体およびこれを用いた無人移動体システムによれば、複数の無人移動体を効率的かつ柔軟に制御することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態はいずれも、無人移動体である複数の無人回転翼航空機を一基の送信機で制御可能な無人移動体システムの例である。なお、本発明の無人移動体は無人回転翼航空機には限られず、例えば無人固定翼航空機や、地面または床面を走行する無人車両、さらには、無人の船舶であってもよく、機体の大型・小型も問わない。また、送信機も常に一基である必要はなく、複数基の送信機で処理を分散した構成としてもよい。
【0019】
[第1実施形態]
(構成概要)
図1は、本例の無人移動体システムS1の概要を示す模式図である。無人移動体システムS1は、無人回転翼航空機である複数のマルチコプター10と一基の送信機50とで構成されている。送信機50は、その電波圏内にある複数のマルチコプター10すべてに対して同一の無線信号を同時に送信する。
【0020】
本例の送信機50が送信する無線信号は、マルチコプター10の飛行動作を制御する制御信号である。この制御信号には、位置範囲を示す情報である宛先エリア情報が含まれている。マルチコプター10は、送信機50から制御信号を受信し、自機の位置をその宛先エリア情報に照らして、その制御信号の受理または無視を決定する。なお、本発明でいう「位置範囲」とは、水平面上の所定の範囲、鉛直方向における所定の範囲、またはこれらを組み合わせた範囲を意味しており、連続した一の範囲のみならず、分離した複数の範囲であってもよい。
【0021】
本例の送信機50が送信する制御信号には、その宛先エリア情報として、経緯度値で表される地理上の範囲が含まれている(
図1では、緯度35.xxx707〜852,経度136.xxx294〜487の範囲)。各マルチコプター10は、自機の経緯度が宛先エリア情報の位置範囲に含まれているかどうかをチェックし、含まれている場合にはその制御信号を受理し、含まれていない場合には無視する。送信機50は、宛先エリア情報の位置範囲を広く設定することで多数のマルチコプター10を一括して制御することができるとともに、この位置範囲を狭く設定することで特定のマルチコプター10のみを制御することもできる。これにより、無人移動体システムS1では、個々のマルチコプター10の位置を基準とした、多数のマルチコプター10の柔軟な制御が実現されている。
【0022】
なお、本例の宛先エリア情報は、北西端の経緯度値と南東端の経緯度値により矩形の位置範囲を表しているが、その他にも、位置範囲の中心の経緯度値と半径・直径[m]とを組み合わせて円形の位置範囲を表したり、宛先エリア情報に3つ以上の経緯度値を並べ、これを時計回り・反時計回りに直線で結んで多角形の位置範囲を表したりしてもよい。
【0023】
(マルチコプターの構成)
図2はマルチコプター10の機能構成を示すブロック図である。本例のマルチコプター10は、主に、マルチコプター10の飛行動作を制御するフライトコンローラFC、プロペラが装着された複数のブラシレスモータであるロータ40、ロータ40の駆動回路であるESC41(Electric Speed Controller)、送信機50からの制御信号を受信する受信器RX、および、これらに電力を供給するバッテリー49により構成されている。
【0024】
フライトコンローラFCは、制御部である制御装置20を備えている。制御装置20は、中央処理装置であるCPU21、RAMやROM・フラッシュメモリなどの記憶装置からなる記憶部であるメモリ22、および、ESC41を介して各ロータ40の回転数を制御するPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)コントローラ(図示せず)を有している。
【0025】
フライトコンローラFCはさらに、IMU31(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、高度センサ32、電子コンパス33、およびGPS受信器34を含む飛行制御センサ群30を有しており、これらは制御装置20に接続されている。
【0026】
IMU31は、主に3軸加速度センサおよび3軸角速度センサにより構成されており、マルチコプター10の機体の傾きを検出するセンサである。本例の高度センサ32には気圧センサが用いられており、高度センサ32は、検出した気圧高度からマルチコプター10の海抜高度(標高)を算出する。本例の電子コンパス33には3軸地磁気センサが用いられている。電子コンパス33はマルチコプター10の機首の方位角を検出する。GPS受信器34は、正確には航法衛星システム(NSS:Navigation Satellite System)の受信器である。GPS受信器34は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)または地域航法衛星システム(RNSS:Regional Navigational Satellite System)から現在の経緯度値および時刻情報を取得する。GPS受信器34は本例における位置情報取得部である。フライトコンローラFCは、これら飛行制御センサ群30により、機体の傾きや回転のほか、飛行中の経緯度、高度、および機首の方位角を含む自機の位置情報を取得することができる。
【0027】
なお、本例のマルチコプター10は屋外用の構成とされているが、本発明の無人移動体システムは、屋内を移動する無人移動体にも適用することができる。例えば、無線信号を送出するビーコンを施設内に所定間隔で配置し、これらビーコンから受信した信号の電波強度から無人移動体と各ビーコンとの相対的な距離を計測し、その施設内における無人移動体の位置を特定することが考えられる。または、無人移動体に別途カメラを搭載し、カメラで撮影した周囲の映像から画像認識により施設内の特徴箇所を検出し、これに基づいて施設内における位置を特定することも可能である。同様に、レーザや赤外線、超音波などを利用した測距センサを別途搭載し、施設内の床面(または天井面)や壁面と無人移動体との距離を計測して、その施設内における無人移動体の位置を特定することも可能である。この場合、ビーコンとの通信手段やこれらビーコンとの相対的な距離の測定手段、カメラ、測距センサなどが本発明の位置情報取得部に該当する。
【0028】
制御装置20は、マルチコプター10の飛行時における姿勢や基本的な飛行動作を制御するプログラムである飛行制御プログラムFCを有している。飛行制御プログラムFCは、飛行制御センサ群30から取得した情報を基に個々のロータ40の回転数を調節し、機体の姿勢や位置の乱れを補正しながらマルチコプター10を飛行させる。
【0029】
また、制御装置20はマルチコプター10を自律飛行させるプログラムである自律飛行プログラムAPを有している。そして、制御装置20のメモリ22には、飛行計画FPが登録されている。飛行計画FPは、マルチコプター10の目的地や経由地の経緯度、飛行中の高度や速度などのパラメータデータである。自律飛行プログラムAPは、送信機50からの指示や所定の時刻などを開始条件として、飛行計画FPに従ってマルチコプター10を自律的に飛行させる。本例ではこのような自律飛行機能を「オートパイロット」という。
【0030】
本例のマルチコプター10は基本的にオートパイロットで飛行させることを想定しており、本例の制御信号もマルチコプター10の飛行計画FPを更新する信号である。これに加え、本例の自律飛行プログラムAPには、所定高度への離陸、待機(ホバリング)、着陸、離陸地点への帰投、指定位置への直線移動など、事前に定義された特定の飛行動作であるルーチン動作が組み込まれている。本例の制御信号には、その一種として、このようなルーチン動作を実行する指示も含まれている。その他、本例の送信機50によれば、オートパイロットのサポート(機首方向や経緯度、高度の自動維持など)をうけて、マルチコプター10を逐次手動で操縦することも可能である。
【0031】
また、制御装置20は、制御信号の受理または無視を決定するプログラムである信号フィルタSFを有している。信号フィルタSFは、受信器RXが受信した制御信号の宛先エリア情報と、GPS受信器34で得た自機の経緯度とを照らし合わせ、自機の経緯度が宛先エリア情報の位置範囲に含まれている場合にはその制御信号を受理し、含まれていない場合には無視する。なお、本例の信号フィルタSFは、受信器RXとは別体の装置である制御装置20がこれを有しているが、受信器RXが信号フィルタSFを備える構成としてもよい。信号フィルタSFを受信器RXに移すことにより、制御装置20の演算負荷を軽減することができるのみならず、マルチコプター10のフライトコントローラFCとして一般的なフライトコントローラ製品を採用することが可能となる。
【0032】
(送信機の構成)
図3は送信機50の機能構成を示すブロック図である。本例の送信機50は、主に、中央処理装置であるCPU51、RAMやROMなどの記憶装置からなるメモリ52、オペレータからの入力を受け付けるインタフェースである入力装置54、各マルチコプター10の飛行状況を表示するモニタ53、および、マルチコプター10の制御信号を送信するアンテナ56と高周波モジュール55とを有している。
【0033】
本例の送信機50は、監視プログラムMPおよび飛行指示生成プログラムIPを有している。監視プログラムMPは、各マルチコプター10からテレメトリデータ(
図1および
図3の破線矢印)を取得して、これらマルチコプター10の飛行位置やバッテリー残量などの機体情報を地図データ上にマッピングし、これをモニタ53に表示する。オペレータはこれを監視しながら、飛行指示生成プログラムIPを使って、マルチコプター10に送信する指示とその位置範囲を設定する。なお、マルチコプター10からのテレメトリデータの受信や地図データへのマッピングは省略してもよい。個々のマルチコプター10の位置がモニタ53(地図データ)上に表示されていなくても、オペレータに指定された位置範囲を飛行しているマルチコプター10はその制御信号を受理する。
【0034】
なお、本発明の送信機と無人移動体(受信器)との間の通信方式は、複数の無人移動体が受信可能な無線信号をこれらに対して同時に送信することができ、その無線信号に宛先エリア情報を含めることができればよく、その具体的な方式は限定されない。例えば、無線LAN(IEEE802.11規格)による通信や、3G、LTE(Long Term Evolution)、またはWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などの移動体通信網を使った通信、その他、例えば2.4GHz帯のPPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)、PCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)などのパルス変調方式による通信でもよく、さらには、無線信号のパケットヘッダやフレームヘッダに直接宛先エリア情報を設定可能な独自の通信方式を考案してもよい。また、信号フィルタSFが受理/無視を判別する単位は、パケットやデータフレームなどを単位としてもよく、意味を成すひとまとまりの情報(アプリケーションレベルの情報)を単位としてもよい。なお、本例の信号フィルタSFは後者の単位で受理/無視を判別することを想定している。
【0035】
また、上でも述べたように、無人移動体システムS1で使用する送信機50の台数は一基には限られず、複数の送信機50を用いた構成としてもよい。この場合、送信機50ごとにその管轄する位置範囲である管轄範囲を定め、これら送信機50をその上位装置である管理装置60に接続すればよい。
【0036】
図4は、管理装置60の機能構成を示すブロック図である。本例の管理装置60は、中央処理装置であるCPU61、RAMやROMなどの記憶装置からなるメモリ62、オペレータからの入力を受け付けるインタフェースである入力装置64、各マルチコプター10の飛行状況を表示するモニタ63を有している。管理装置60としては一般的なノート型パソコンやタブレットコンピュータなどを用いることができる。
【0037】
本例の管理装置60は、送信機50と同様に、監視プログラムMPおよび飛行指示生成プログラムIPを有している。監視プログラムMPは、各マルチコプター10から送信機50経由でテレメトリデータ(
図4の破線矢印)を取得して、これらマルチコプター10の飛行位置やバッテリー残量などの機体情報を地図データ上にマッピングし、これをモニタ63に表示する。オペレータはモニタ63を監視しながら、飛行指示生成プログラムIPを使って、マルチコプター10に送信する制御信号とその位置範囲を設定し、これを送信機50経由でマルチコプター10に送信する。本例の管理装置60を備える場合には、送信機50のユーザインタフェース(入力装置54やモニタ53)や監視プログラムMPおよび飛行指示生成プログラムIPは省略することもできる。その他、例えば、管理装置60の飛行指示生成プログラムIPでは制御信号の元となるパラメータのみを生成してこれを送信機50に送信し、送信機50側の飛行指示生成プログラムIPがそのパラメータに基づいて制御信号を生成する構成としてもよい。
【0038】
本例の管理装置60はさらに、各送信機50のIDとその管轄範囲とが対応付けられて登録されたデータベースである管轄マップJMを有している。管理装置60は、制御信号の宛先エリア情報を管轄マップJMに照らしてその位置範囲を管轄する送信機50を特定し、その送信機50に対して制御信号の送信指示を送る。その他、例えば、管理装置60は全送信機50に制御信号の送信指示を出し、その制御信号の宛先エリア情報に基づいて各送信機50側でその送信要否を判別する構成とすることもできる。
【0039】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、先の実施形態と同一または同様の構成については、先の実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
(構成概要)
図5は、本例の無人移動体システムS2の概要を示す模式図である。無人移動体システムS2は、複数のマルチコプター11と一基の送信機50とで構成されている。本例の送信機50が送信する無線信号も、第1実施形態と同様に、マルチコプター11の飛行動作を制御する制御信号である。
【0041】
本例では、マルチコプター11の飛行空間が経緯度に基づいて複数の区域に区画されている。これら各区域には、個々の区域を識別する情報であるブロックID(0x0001〜0x8000)が付与されている。本例の制御信号に含まれる宛先エリア情報にはこのブロックIDが用いられており、マルチコプター11は、制御信号に含まれるブロックIDと、自機が存在する区域のブロックIDとに基づいて制御信号の受理または無視を決定する。なお、本例では合計で16の区域に飛行空間が区画されているが、例えばブロックIDの付与された区域が一つだけであったとしても、その区域と、それ以外の区域の二つの区域(複数の区域)があるものとして本例を適用することができる。
【0042】
図5の例では、ブロックIDが0x0040の区域を飛行するマルチコプター11のみに受理されるよう、宛先エリア情報として0x0040が指定された制御信号が送信されている。ここで、本例の各区域にはブロックIDとして2バイトの16進数の番号が振られている。そして、本例のブロックIDは、これらブロックIDの加算値がそのすべての組み合わせにおいて一意となるように付与されている。すなわち、これら区域のあらゆる組み合わせを2バイトで表現することができる。
【0043】
より具体的には、本例のブロックIDは、その各ビット桁がこれら区域のいずれかに対応付けられており、各ビット桁を単純にオン/オフすることにより一または複数の任意の区域を表現することができる。例えば、ブロックIDの0x0040は2進数で表すと0000 0000 0100 0000である。この、最下位ビットから7番目のビットは当該区域でのみ使用されている。宛先エリア情報に含まれるブロックIDのこのビットがオンのときは、制御信号の位置範囲に当該区域が含まれるということであり、オフのときは含まれないということである。同様に、ブロックIDの0x0080を2進数で表すと0000 0000 1000 0000であり、ブロックIDの0x2000を2進数で表すと0010 0000 0000 0000である。そのため、例えば宛先エリア情報として上記3つの区域を表すときには、宛先エリア情報のブロックIDとして、0010 0000 1100 0000、つまり0x20C0と設定すればよい。
【0044】
各マルチコプター11は、自機が存在する区域のブロックIDと宛先エリア情報のブロックIDとをAND演算し、戻り値が1以上であれば受理、0であれば無視すればよい。こうすることにより、送信機50側での複雑な位置範囲の指定、およびマルチコプター11側での受理/無視の切り分けを、それぞれ1ステップの処理で完結させることができる。また、本例の信号フィルタSFはプログラムとして実装されているが、これをハードウェアとして実装することで、より高速かつ低負荷な切り分けを行うことが可能となる。
【0045】
なお、ブロックIDの形式は本例のような番号には限られない。本発明のブロックIDは、無人移動体が移動する面上または空間内の複数の区域のいずれかを特定可能であり、無人移動体がこれに基づいてその無線信号の受理または無視を決定可能なものであればどのような形式の情報であってもよい。
【0046】
第1実施形態の無人移動体システムS1では、その宛先エリア情報として、経緯度値で表される地理上の範囲が使用されている。この場合、マルチコプター10側での受理/無視の切り分けの演算負荷によっては、制御信号に対するマルチコプター10の反応が遅延したり、マルチコプター10の制御装置20がハングアップしたりするおそれがある。本例では、経緯度値に代えてブロックIDを使用していることにより、宛先エリア情報のチェック処理が単純化され、マルチコプター11の演算負荷が軽減されている。
【0047】
図6は、マルチコプター11の飛行空間を水平方向だけでなく高さ方向にも区切った例を示す模式図である。本例の飛行空間は経緯度のみに基づいて区切られているが、
図6に示すように、これを高さ方向にも区切ることができる。こうすることにより、所定の高度範囲を飛行しているマルチコプター11のみを一括で制御することが可能となり、多数のマルチコプター11をさらに柔軟に制御することが可能となる。
【0048】
(マルチコプターの構成)
図7はマルチコプター11の機能構成を示すブロック図である。本例のマルチコプター11と第1実施形態のマルチコプター10との違いは、マルチコプター11がブロック情報BDを有している点である。ブロック情報BDとは、マルチコプター11が移動する空間内の各区域の経緯度範囲とそのブロックIDとが対応付けられた情報である。マルチコプター11は、GPS受信器34で得た自機の経緯度に基づき、自機が存在する区域のブロックIDを特定し、これをメモリ22上の高速にアクセス可能な領域に保持する。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。例えば、上記各実施形態の無線信号はいずれもマルチコプター10,11の制御信号であるが、本発明の無線信号は、無人移動体の制御以外を目的としたデータであってもよい。また、上記各実施形態のマルチコプター10,11は、自機の現在位置を基準として制御信号の受理/無視を判断しているが、基準とする位置は現在位置には限られず、例えば数秒後の予想位置や、移動中の無人移動体が目指している位置、または、無人移動体が過去に通過した位置を基準にすることもできる。また、上記各実施形態では、自機の位置が宛先エリア情報の位置範囲に含まれる場合に、その制御信号を受理しているが、逆に、自機の位置が宛先エリア情報の位置範囲に含まれない場合に受理する構成とすることもできる。