(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記部分駆動モードでの飛行時に一または複数の前記他の水平回転翼の回転数が所定の閾値を上回ったときに、前記駆動モードを前記全駆動モードに自動的に切り替えることを特徴とする請求項4に記載の回転翼航空機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の水平回転翼で飛行するマルチコプターには、ペイロードを含む機体の重量を安定して支持可能な揚力が必要である。同じ揚力を得る場合、小径のプロペラを高速で回転させるよりも、大径のプロペラを低速で回転させた方がエネルギー効率がよい。動力源としてバッテリーを用いるマルチコプターはその飛行可能時間の短さが課題の一つとされている。そのため、このようなマルチコプターでは搭載可能な最大サイズのプロペラが採用される傾向にある。
【0005】
ピッチ角が固定されたプロペラ(固定ピッチプロペラ)を使用するマルチコプターは、各プロペラの回転数(本願では回転速度と同義。以下同じ。)を制御することでこれらプロペラの揚力を調節する。固定ピッチプロペラで飛行するマルチコプターは、例えば飛行中に上昇気流で機体が押し上げられたときには、プロペラの回転数を下げることでその高度を維持する。当然、強い上昇気流に煽られたときには、相応に回転数を下げる必要がある。一方、プロペラがその本来の機能を発揮するためには、十分な揚力やジャイロ効果が得られる回転数が必要である。プロペラの回転数がその下限を超えて下げられると、プロペラは機体の制御機能を失い、マルチコプターが操舵不能に陥る。特に、上昇気流の中で機体を降下させるときにはこのようなトラブルが生じやすい。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、低揚力での飛行時における機体の安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の回転翼航空機は、固定ピッチプロペラを有する複数の水平回転翼を備え、前記複数の水平回転翼は第1回転翼および第2回転翼を有し、前記第1回転翼は、回転数に下限値が設定され、飛行中はその下限値を下回らないように回転数が制御される回転翼であり、前記第2回転翼は、ジャイロ効果または揚力が失われる回転数以下まで回転数を下げることができる回転翼であることを要旨とする。
【0008】
例えば上昇気流中での降下操作など、機体の揚力を著しく下げる必要のある状況では、プロペラの回転数が過度に下げられることで制御機能が失われたり、またはプロペラの回転数を安全域に保つために降下操作が受け付けられない状態に陥ったりすることがある。本発明の回転翼航空機は、一部の水平回転翼(第1回転翼)の回転数を安全域に保ちつつ、他の水平回転翼(第2回転翼)の回転数をそのジャイロ効果または揚力が失われる回転数以下まで下げることができる。これにより、機体の制御機能を確保しつつ、機体全体としての揚力を安全に引き下げることが可能となる。
【0009】
このとき、本発明の回転翼航空機は、6基以上の前記水平回転翼を備え、3基または4基の前記第1回転翼を有することが好ましい。さらには、8基の前記水平回転翼を備え、4基の前記第1回転翼を有することがより好ましい。
【0010】
回転翼航空機が6基以上の水平回転翼を備えることにより、本発明の第1回転翼および第2回転翼の構成を容易に実装することができる。第1回転翼が少なくとも3基あれば第1回転翼のみで飛行する場合でも機体の水平を維持することができ、第1回転翼が4基あればさらにヘディングの方向も維持することができる。特に、回転翼航空機が8基の水平回転翼を備えるオクタコプタであり4基の第1回転翼を有していれば、例えば、隣接する2基の水平回転翼を一組として、回転翼航空機を4セットの水平回転翼を有するクアッドコプタとみなすことにより、全ての水平回転翼で飛行する場合でも、第1回転翼のみで飛行する場合でも、共通の制御方法で機体を制御することが可能となる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明の回転翼航空機は、固定ピッチプロペラを有する複数の水平回転翼と、前記複数の水平回転翼の駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は前記複数の水平回転翼の駆動モードとして、すべての前記水平回転翼を駆動して飛行する全駆動モードと、一部の前記水平回転翼の回転数をそのジャイロ効果または揚力が失われる回転数以下に下げて他の前記水平回転翼で飛行する部分駆動モードと、を有し、前記制御部は、前記全駆動モードでの飛行時に一または複数の前記水平回転翼の回転数が所定の閾値を下回ったときに、前記駆動モードを前記部分駆動モードに自動的に切り替えることを要旨とする。
【0012】
制御部が全駆動モードと部分駆動モードとを動的に切り替えることにより、例えば飛行に必要な揚力が著しく下がる徴候を検知したときには、一部の水平回転翼を早々に停止し、他の水平回転翼の回転数を高く維持するような制御が可能となる。これにより、他の水平回転翼のみでより安全に飛行することが可能となる。
【0013】
また、本発明の回転翼航空機は、前記制御部が前記部分駆動モードでの飛行時に一または複数の前記他の水平回転翼の回転数が所定の閾値を上回ったときに、前記駆動モードを前記全駆動モードに自動的に切り替えることが好ましい。
【0014】
全駆動モードから部分駆動モードへの切替と、部分駆動モードから全駆動モードへの切替の両方を制御部が自動で行うことにより、オペレータは駆動モードを意識することなく回転翼航空機を操縦することが可能となる。また、手動による駆動モードの切替が困難な目視外での自律飛行をより安全に行うことも可能となる。
【0015】
このとき、本発明の回転翼航空機は、6基以上の前記水平回転翼を備え、前記部分駆動モードでは3基または4基の前記水平回転翼で飛行することが好ましい。さらには、8基の前記水平回転翼を備え、前記部分駆動モードでは4基の前記水平回転翼で飛行することがより好ましい。
【0016】
回転翼航空機が6基以上の水平回転翼を備えることにより、本発明の駆動モード切替機能を容易に実装することができる。部分駆動モードで駆動する水平回転翼が少なくとも3基あれば機体の水平を維持することができ、4基あればさらにヘディングの方向も維持することができる。特に、回転翼航空機が8基の水平回転翼を備えるオクタコプタであり、部分駆動モードで駆動する水平回転翼が4基あれば、例えば、隣接する2基の水平回転翼を一組として回転翼航空機を4セットの水平回転翼を有するクアッドコプタとみなすことにより、全駆動モードで飛行する場合でも、部分駆動モードで飛行する場合でも、共通の制御方法で機体を制御することが可能となる。
【0017】
また、本発明の回転翼航空機は無人航空機であってもよい。
【0018】
無人航空機には軽量な機体が多く、有人機と比較してプロペラの回転数が下限に至りやすい傾向がある。このような無人航空機に本発明の第1回転翼および第2回転翼の構成を実装することにより、その飛行安全性を顕著に改善することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の回転翼航空機によれば、低揚力での飛行時における機体の安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に挙げる第1実施形態および第2実施形態は、いずれも、複数の水平回転翼で飛行する無人回転翼航空機の例である。なお、本発明でいう「水平回転翼」とは、回転軸の軸線方向が鉛直に延び、回転面が水平面となる回転翼をいう。回転軸や回転面を多少傾けたものであっても、その揚力が主に鉛直方向の成分で構成されるものであれば本発明の「水平回転翼」に含まれる。
【0022】
[第1実施形態]
(構成概要)
図1は、第1実施形態にかかるマルチコプター10の外観を示す斜視図である。本形態のマルチコプター10は上空から写真を撮影する空撮用の機体である。
【0023】
マルチコプター10は、主に、機体の中心部であるボディ11、ボディ11から平面視放射状に延びる複数本のアーム12、各アーム12の先端に配置されたロータ60A,60B、およびカメラ91を備えている。
【0024】
ボディ11は略円盤形状の中空モノコック構造のケース体である。ボディ11の中には、後述するフライトコントローラFC等の電子機器が収容されている。ボディ11の上面には収容物を出し入れする開口が設けられており、かかる開口には蓋体であるボディカバー111が被せられている。
【0025】
本形態のマルチコプター10は6本のアーム12を備えている。アーム12はCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製の円筒パイプ材である。アーム12はボディ11から水平方向に延びており、ボディ11を中心として周方向等間隔に配置されている。
【0026】
ロータ60A,60Bは水平回転翼であり、これらは個々に、駆動源であるモータと、モータに装着された固定ピッチプロペラと、を有している。マルチコプター10は、各ロータ60A,60Bの回転数を制御することでこれら各ロータ60A,60Bの揚力を調節する。なお、水平回転翼の駆動源は電動機には限られず、エンジンであってもよい。
【0027】
カメラ91は静止画および動画を撮影可能な一般的なカメラである。カメラ91はボディ11に取り付けられたいわゆる3軸ジンバルである姿勢安定化装置にマウントされている。
【0028】
(機能構成)
図2はマルチコプター10の機能構成を示すブロック図である。本形態のマルチコプター10の機能は、制御部であるフライトコントローラFC、ロータ60A,60B、ロータ60A,60Bの駆動回路であるESC(Electronic Speed Controller)50A,50B、および、操縦者(オペレータ端末41)と通信を行う通信装置42により構成されている。なお、これらに電力を供給するバッテリーの記載は省略している。
【0029】
フライトコントローラFCは制御装置20を有している。制御装置20は、中央処理装置であるCPU21と、RAMやROM・フラッシュメモリなどの記憶装置からなるメモリ22とを有している。
【0030】
フライトコントローラFCはさらに、IMU31(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、GPS受信器32、気圧センサ33、および電子コンパス34を含む飛行制御センサ群Sを有しており、これらは制御装置20に接続されている。
【0031】
IMU31はマルチコプター10の傾きを検出するセンサであり、主に3軸加速度センサおよび3軸角速度センサにより構成されている。GPS受信器32は、正確には航法衛星システム(NSS:Navigation Satellite System)の受信器である。GPS受信器32は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)または地域航法衛星システム(RNSS:Regional Navigational Satellite System)から現在の経緯度値を取得する。気圧センサ33は、検出した気圧高度からマルチコプター10の海抜高度(標高)を特定する高度センサである。本例の電子コンパス34には3軸地磁気センサが用いられている。電子コンパス34はマルチコプター10の機首の方位角を検出する。
【0032】
フライトコンローラFCは、これら飛行制御センサ群Sにより、機体の傾きや回転のほか、飛行中の経緯度、高度、および機首の方位角を含む自機の位置情報を取得することが可能とされている。
【0033】
なお、本形態の飛行制御センサ群Sは一例であり、フライトコンローラFCを構成するセンサ類は本形態の組み合わせには限られない。例えば、気圧センサ33に代えて、あるいは気圧センサ33に加えて、測定方向を下方に向けたレーザ測距センサやステレオカメラ等で対地高度を取得することが考えられる。また、GPS受信器32が電波を受信不能な場所では、機体の水平移動をオプティカルフローセンサや画像認識等で検知することが考えられる。その他、レーザや赤外線、超音波などを利用した複数の測距センサで周辺物との距離を測定し、その距離からマルチコプター10の空間位置を特定することも可能である。
【0034】
制御装置20は、マルチコプター10の飛行時における姿勢や基本的な飛行動作を制御するプログラムである飛行制御プログラムFSを有している。飛行制御プログラムFSは、飛行制御センサ群Sから取得した情報を基に個々のロータ60A,60Bの回転数を調節し、機体の姿勢や位置の乱れを補正しながらマルチコプター10を飛行させる。
【0035】
制御装置20はさらに、マルチコプター10を自律飛行させるプログラムである自律飛行プログラムAPを有している。そして、制御装置20のメモリ22には、マルチコプター10の目的地や経由地の経緯度、飛行中の高度や速度などが指定されたパラメータである飛行計画FPが登録されている。自律飛行プログラムAPは、オペレータ端末41からの指示や所定の時刻などを開始条件として、飛行計画FPに従ってマルチコプター10を自律的に飛行させることができる。
【0036】
このように、本形態のマルチコプター10は高度な飛行制御機能を備えた無人航空機である。ただし、本発明の回転翼航空機はマルチコプター10の形態には限定されず、例えば飛行制御センサ群Sから一部のセンサが省略された機体や、自律飛行機能を備えず手動操縦のみにより飛行可能な機体を用いることもできる。
【0037】
(低揚力飛行機能)
以下、マルチコプター10の低揚力飛行機能について説明する。マルチコプター10のロータは、ロータ60Aおよびロータ60Bにより構成されている。ロータ60Aは本発明の第1回転翼である。第1回転翼とは、回転数に下限値が設定され、飛行中はその下限値を下回らないように回転数が制御される回転翼である。ロータ60Bは本発明の第2回転翼である。第2回転翼とは、ジャイロ効果または揚力が失われる回転数以下まで回転数を下げることができる回転翼である。なお、ここでいう「ジャイロ効果または揚力が失われる回転数以下」とは停止(回転数ゼロ)も含んでいる。
図1に示されるように、本形態のマルチコプター10はヘキサコプタであり、3基のロータ60Aと3基のロータ60Bとを備えている。
【0038】
本形態のロータ60Aは、例えば上昇気流の中で機体を降下させるときのように、飛行に必要な揚力が著しく低くなったときに、ロータ60Aの揚力のみでも一応は機体の水平を維持可能な回転数がその下限値mとして設定されている。なお、下限値mはすべてのロータ60Aの平均回転数であってもよく、個々のロータ60Aについて設定してもよい。一方、ロータ60Bには回転数の下限値は設定されておらず、ロータ60Bが停止に至るまで回転数を下げることができる。
【0039】
図3は、マルチコプター10の飛行時におけるロータ60A,60Bの回転数の変化を示す模式図である。
図3の各グラフにおいて「A」と表示された値は3基のロータ60Aの平均回転数であり、「B」と表示された値は3基のロータ60Bの平均回転数である。各グラフの縦軸は回転数の大小を表している。縦軸の下端の回転数はゼロであり、縦軸の上に向かうにつれて回転数は大きくなる。以下、
図3の左上のグラフから時計回りに説明する。
【0040】
(左上のグラフ)通常環境下におけるマルチコプター10はロータ60A,60Bの両方を駆動して飛行しており、その飛行方法に一般的なヘキサコプタとの違いはない。(上段中央のグラフ)オペレータが降下操作を行うと、フライトコントローラFCはマルチコプター10の高度が下がり始めるまでロータ60A,60Bの回転数を下げていく。(右上のグラフ)ここで例えば強い上昇気流に吹き上げられ、マルチコプター10が降下を開始しないときは、フライトコントローラFCはロータ60A,60Bの回転数をさらに下げていく。ロータ60Aの回転数が下限値mに至ったときにはロータ60Aの回転数はそれ以上下げられることはなく下限値mに維持される。一方、ロータ60Bの回転数は停止に至るまで制限なく下げられる。(右下のグラフ)結果的にロータ60Bが停止し、フライトコントローラFCはロータ60Aのみでマルチコプター10の降下を試みる。ここで、本形態のロータ60Aは3基であるため、ロータ60Aは機体の水平をかろうじて維持可能なものの、ヨー方向のトルクがどちらかに偏ることで一方に回転しながら降下することになる。(下段中央のグラフ)ここで例えば飛行環境が回復し、回転数が下限値mのロータ60Aだけでは揚力が不足すると、フライトコントローラFCはロータ60Bの駆動を再開する。(左下のグラフ)ロータ60Bの回転数がロータ60Aの下限値mと同等まで上昇し、それでもまだ揚力が足りない場合には、ロータ60Aおよびロータ60B両方の回転数が引き上げられる。このように、本形態のマルチコプター10では、ロータ60A,60Bの両方を用いた飛行とロータ60Aのみでの飛行とがシームレスに切り替えられる。
【0041】
本形態のマルチコプター10は、回転数の下限値が異なる2種類のロータ60A,60Bを備えることにより、一方のロータ(ロータ60A)についてはその回転数を安全域に保ちつつ、他方のロータ(ロータ60B)についてはその回転数をジャイロ効果または揚力が失われる回転数以下まで下げることが可能とされている。これにより、最低限の機体制御機能は確保しつつ、機体全体としての揚力を極めて小さくすることが可能とされている。
【0042】
なお、本形態のマルチコプター10は無人航空機であるが、これは有人航空機であってもよい。無人航空機には軽量な機体が多く、有人機と比較してロータの回転数が下限に至りやすい傾向がある。本形態ではこのような無人航空機に第1回転翼(ロータ60A)および第2回転翼(ロータ60B)の構成が実装されることにより、その飛行安全性が顕著に改善されている。
【0043】
(変形例)
以下、マルチコプター10の低揚力飛行機能の変形例について説明する。
図4は、本変形例にかかるフライトコントローラFCによるロータ60A,60Bの駆動モードの切替方法を説明する模式図である。なお、本変形例のロータ60Aは上記実施形態のロータ60Aと同じ構造であるが、本発明の第1回転翼ではないため下限値は設定されていない。
【0044】
上記実施形態では、ロータ60Aの回転数に下限値mが設定され、ロータ60A,60Bの両方を用いた飛行とロータ60Aのみを用いた飛行とが飛行環境に合わせてシームレスに切り替えられる。本変形例のマルチコプター10では、すべてのロータ60A,60Bを駆動してマルチコプター10を飛行させる全駆動モードと、ロータ60Bを停止してロータ60Aのみでマルチコプター10を飛行させる部分駆動モードと、が区別されており、フライトコントローラFCはこれら駆動モードを予め定められた条件に基づいて明示的に切り替える。
【0045】
図4の縦軸はロータ60A,60Bの回転数の大小を示している。縦軸の下端の回転数はゼロであり、縦軸の上に向かうにつれて回転数は大きくなる。本変形例のフライトコントローラFCは、全駆動モードでの飛行中にロータ60A,60Bのいずれかの回転数が所定の閾値Lを下回ったときには駆動モードを部分駆動モードに自動的に切り替え、そして、部分駆動モードでの飛行中にロータ60Aのいずれかの回転数が所定の閾値Uを上回ったときには、駆動モードを全駆動モードに自動的に切り替える。
【0046】
本変形例の閾値Lには、通常の飛行環境下ではロータ60A,60Bがその回転数に至ることはないと見込まれる回転数が設定されている。すなわち、本変形例における部分駆動モードは、強い上昇気流や突風など、飛行環境に異常が生じたときの緊急離脱手段という位置付けである。
【0047】
図5は、本変形例のマルチコプター10の飛行時におけるロータ60A,60Bの回転数の変化を説明する模式図である。
図5の各グラフにおいて「A」と表示された値はロータ60Aの回転数であり、「B」と表示された値はロータ60Bの回転数である。なお、ロータ60A,60Bの回転数は実際には操舵により個々に変動するが、説明の便宜上、ロータ60A,60Bについてそれぞれ代表となる1基の値を示している。各グラフの縦軸は回転数の大小を表している。縦軸の下端の回転数はゼロであり、縦軸の上に向かうにつれて回転数は大きくなる。以下、
図5の左上のグラフから時計回りに説明する。
【0048】
(左上のグラフ)マルチコプター10は全駆動モードで飛行しており、ロータ60A,60Bの回転数はすべて閾値L(
図4の回転数2)以上である。このときのマルチコプター10の飛行方法には先の実施形態との違いはない。なお、本変形例のマルチコプター10は、離陸時には部分駆動モードではなく全駆動モードで離陸するよう設定されている。(上段中央のグラフ)ここで例えば機体が突風に吹き上げられたりすると、フライトコントローラFCは高度を維持するためロータ60A,60Bの回転数を下げる。(右上のグラフ)そして、いずれか1基のロータ60A,60Bの回転数が閾値Lを下回ると、フライトコントローラFCは駆動モードを部分駆動モードに切り替え、ロータ60Bを意識的に停止させる。なお、回転数が閾値Lを下回ったロータ60A,60Bは1基であり、このときの他のロータ60A,60Bの回転数は閾値Lよりも高い。(右下のグラフ)ここで、ロータ60Bを停止したことによりロータ60Aの回転数は増大する。(下段中央のグラフ)その後、フライトコントローラFCは、ロータ60Aのいずれかの回転数が閾値U(
図4の回転数7)を超えるまで部分駆動モードでの飛行を継続する。ここで、例えば飛行環境が回復して部分駆動モードでは十分な揚力が得られなくなった場合、ロータ60Aの回転数は急速に増大する。(左下のグラフ)そしてロータ60Aのいずれかの回転数が閾値Uを超えると、フライトコントローラFCは駆動モードを全駆動モードに切り替え、ロータ60Bの駆動を再開する。これによりロータ60Aの回転数は妥当値まで引き下げられる。
【0049】
先の実施形態では、ロータ60Aのみで飛行しているときのロータ60Aの回転数は下限値mに維持される。本変形例では、フライトコントローラFCが全駆動モードと部分駆動モードとを明確に切り替えることにより、ロータ60Aのみで飛行する場合でもロータ60Aの回転数を高く維持することが可能となる。すなわち、飛行に必要な推力が著しく下がる徴候を検知したときにロータ60Bを早々に停止することで、ロータ60Aの回転数が安全上の下限値に至ることを防ぐことができる。これにより、ロータ60Aのみでの飛行をより安全に行うことが可能となる。また、本変形例では、全駆動モードから部分駆動モードへの切替と、部分駆動モードから全駆動モードへの切替の両方をフライトコントローラFCが自動で行うことにより、オペレータは駆動モードを意識することなくマルチコプター10を操縦することができる。また、手動による駆動モードの切替が困難な目視外での自律飛行をより安全に行うことも可能となる。
【0050】
なお、全駆動モードを部分駆動モードに切り替える閾値L、および、部分駆動モードを全駆動モードに切り替える閾値Uは、本変形例の値には限られず、機体の仕様や飛行環境に応じて適宜変更してよい。また、本変形例では部分駆動モードのときにはロータ60Bを停止しているが、これを停止させず低速で空転させておいてもよい。また、本変形例のフライトコントローラFCは、ロータ60A,60Bのいずれか1基の回転数が閾値Lを下回ったときに全駆動モードを部分駆動モードに切り替えるが、例えばこれをロータ60A,60Bの2基以上の回転数が閾値Lを下回ったとき、またはロータ60A,60Bの平均回転数が閾値Lを下回ったときに切り替えるようにしてもよい。同様に、本変形例のフライトコントローラFCは、ロータ60Aのいずれか1基の回転数が閾値Uを上回ったときに部分駆動モードを全駆動モードに切り替えるが、例えばこれをロータ60Aの2基以上の回転数が閾値Uを上回ったとき、またはロータ60Aの平均回転数が閾値Uを上回ったときに切り替えるようにしてもよい。
【0051】
[第2実施形態]
(構成概要)
以下、本発明の回転翼航空機の他の実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態にかかるマルチコプター10aの外観を示す斜視図である。本形態のマルチコプター10aは液剤タンクに充填された農薬をスプレー散布する農薬散布機である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一または同様の構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0052】
マルチコプター10aは、主に、機体の中心部であるボディ11、ボディ11から平面視放射状に延びる複数本のアーム12、各アーム12の先端に配置されたロータ60A,60B、およびポンプ装置92を備えている。第1実施形態のマルチコプター10と同様に、ロータ60Aは本発明の第1回転翼であり、ロータ60Bは本発明の第2回転翼である。
【0053】
ボディ11は略円盤形状の中空モノコック構造のケース体である。ボディ11の中にはフライトコントローラFC等の電子機器が収容されている。ボディ11の上面には収容物を出し入れする開口が設けられており、かかる開口には蓋体であるボディカバー111が被せられている。
【0054】
本形態のマルチコプター10aは8本のアーム12を備えている。アーム12はCFRP製の円筒パイプ材である。アーム12はボディ11から水平方向に延びており、ボディ11を中心として周方向等間隔に配置されている。
【0055】
ロータ60A,60Bは水平回転翼であり、これらは個々に、駆動源であるモータと、モータに装着された固定ピッチプロペラと、を有している。マルチコプター10aは、各ロータ60A,60Bの回転数を制御することでこれら各ロータ60A,60Bの揚力を調節する。
【0056】
ポンプ装置92は液剤タンク内の農薬をスプレーノズルから散布する。マルチコプター10aは満充填された液剤タンクが空になるまで農薬を散布しながら飛行する。そのため、農薬の散布前と散布後とで機体重量が著しく変化する。
【0057】
(機能構成)
図7はマルチコプター10aの機能構成を示すブロック図である。マルチコプター10aと第1実施形態のマルチコプター10との機能上の違いは、外部装置であるカメラ91がポンプ装置92に置き換わった点と、ロータ60A,60Bの数の違い、およびこれに伴う飛行制御方法の違いのみである。
【0058】
(低揚力飛行機能)
以下、マルチコプター10aの低揚力飛行機能について説明する。
図6に示されるように、本形態のマルチコプター10aはオクタコプタであり、4基のロータ60Aと4基のロータ60Bとを備えている。
【0059】
本形態のフライトコントローラFCは、隣接する2基のロータ60A,60Bを一組として、マルチコプター10aを4セットのロータを有するクアッドコプタのように制御する。これにより、全てのロータ60A,60Bで飛行する場合でも、ロータ60Aのみで飛行する場合でも共通の制御方法で機体を制御することが可能とされている。本形態のマルチコプター10aも第1実施形態のマルチコプター10と同様に、ロータ60A,60Bの両方を用いた飛行とロータ60Aのみでの飛行とがシームレスに切り替えられる。
【0060】
図8は、マルチコプター10aの飛行時におけるロータ60A,60Bの回転数の変化を説明する模式図である。
図8の各符号やグラフの値が意味するものは第1実施形態の
図3と同様である。以下、
図8の左端のグラフから右端のグラフに向かって説明する。
【0061】
(左端のグラフ)液剤タンクに農薬が満充填されたマルチコプター10aは、ロータ60A,60Bの両方を駆動して飛行する。その飛行方法に一般的なオクタコプタとの違いはない。(中央左側のグラフ)農薬の散布が開始されると機体の重量が次第に軽くなる。フライトコントローラFCはマルチコプター10aの飛行高度を一定に維持するためロータ60A,60Bの回転数を徐々に下げていく。(中央右側のグラフ)液剤タンクが空に近づくとロータ60Aの回転数は下限値mに至り、ロータ60Bの回転数はさらに下げられていく。(右端のグラフ)液剤タンクが空になった状態で着陸するときにはロータ60Bはほぼ停止する。なお、ロータ60Aの下限値mには、ロータ60Aのみでも機体の水平を維持可能な回転数が設定されている。ここで、マルチコプター10aは4基のロータ60Aを備えているため、機体の水平だけでなくヘディングの向きも維持しながら降下することができる。
【0062】
(変形例)
以下、マルチコプター10aの低揚力飛行機能の変形例について説明する。
図9は、本変形例にかかるフライトコントローラFCによるロータ60A,60Bの駆動モードの切替方法を説明する模式図である。
図9の各符号やグラフの値が意味するものは第1実施形態の
図4と同様である。なお、本変形例のロータ60Aは上記第2実施形態のロータ60Aと同じ構造であるが、本発明の第1回転翼ではないため下限値は設定されていない。
【0063】
本変形例のマルチコプター10aでは、すべてのロータ60A,60Bを駆動してマルチコプター10aを飛行させる全駆動モードと、ロータ60Bを停止してロータ60Aのみでマルチコプター10aを飛行させる部分駆動モードと、が区別されている。本変形例のフライトコントローラFCは、全駆動モードでの飛行中にロータ60A,60Bのいずれか1基の回転数が所定の閾値Lを下回ったときには駆動モードを部分駆動モードに自動的に切り替え、そして、部分駆動モードでの飛行中にロータ60Aのいずれか1基の回転数が所定の閾値Uを上回ったときには、駆動モードを全駆動モードに自動的に切り替える。
【0064】
本変形例の閾値Lには、液剤タンクが空に近づいたときにロータ60A,60Bが至る回転数(
図9の回転数3)が設定されている。すなわち、本変形例における部分駆動モードは飛行環境に異常が生じたときの緊急離脱手段ではなく、正常な飛行環境下における通常の農薬散布作業においても使用される駆動モードである。また、本変形例のマルチコプター10aは部分駆動モードにおいても4基のロータ60Aで飛行し、機体の上昇を含むあらゆる操舵が可能である。つまり、部分駆動モードで飛行可能なうちは駆動モードを全駆動モードに戻す必要がない。そのため、部分駆動モードを全駆動モードに切り替える閾値Uの回転数(
図9の回転数8)は、第1実施形態の閾値Uよりも高く設定されている。
【0065】
図10は、本変形例のマルチコプター10aの飛行時におけるロータ60A,60Bの回転数の変化を説明する模式図である。
図10の各符号やグラフの値が意味するものは第1実施形態の
図5と同様である。以下、
図10の左端のグラフから右端のグラフに向かって説明する。
【0066】
(左端のグラフ)液剤タンクに農薬が満充填されたマルチコプター10aは、ロータ60A,60Bの両方を駆動して飛行する。その飛行方法に一般的なオクタコプタとの違いはない。なお、本変形例のマルチコプター10aは、離陸時には部分駆動モードで始動する。そして部分駆動モードの揚力では離陸できないときにはロータ60Aの回転数が閾値Uに至ることで全駆動モードに切り替えられる。(中央左側のグラフ)農薬の散布が開始されると機体の重量が次第に軽くなる。フライトコントローラFCはマルチコプター10aの飛行高度を一定に維持するためロータ60A,60Bの回転数を徐々に下げていく。(中央右側のグラフ)液剤タンクが空に近づき、ロータ60A,60Bのいずれか1基の回転数が閾値Lを下回ると、フライトコントローラFCは駆動モードを部分駆動モードに切り替え、ロータ60Bを意識的に停止させる。ここで、ロータ60Bを停止したことによりロータ60Aの回転数は増大する。(右端のグラフ)その後、ロータ60Aの回転数は閾値Uに至ることなく、部分駆動モードのまま作業を終え、マルチコプター10aは着陸する。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。例えば、上記実施形態ではヘキサコプタとオクタコプタを例として挙げたが、水平回転翼の数は6基または8基には限られない。
【解決手段】固定ピッチプロペラを有する第1回転翼および第2回転翼を備え、第1回転翼は、回転数に下限値が設定され、飛行中はその下限値を下回らないように回転数が制御され、第2回転翼は、ジャイロ効果または揚力が失われる回転数以下まで回転数を下げることができる回転翼航空機、および、固定ピッチプロペラを有する複数の水平回転翼と制御部とを備え、制御部は、すべての水平回転翼を駆動して飛行する全駆動モードと、一部の水平回転翼の回転数をそのジャイロ効果または揚力が失われる回転数以下に下げて他の水平回転翼で飛行する部分駆動モードと、を有し、制御部は、全駆動モードでの飛行時に水平回転翼の回転数が所定の閾値を下回ったときに、駆動モードを部分駆動モードに自動的に切り替える回転翼航空機により解決する。