特許第6561277号(P6561277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノーリツの特許一覧 ▶ 株式会社アールビーの特許一覧

<>
  • 特許6561277-アッパーキャビネット 図000002
  • 特許6561277-アッパーキャビネット 図000003
  • 特許6561277-アッパーキャビネット 図000004
  • 特許6561277-アッパーキャビネット 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561277
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】アッパーキャビネット
(51)【国際特許分類】
   A47B 77/04 20060101AFI20190808BHJP
   A47B 55/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A47B77/04 A
   A47B55/00
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-41290(P2015-41290)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-158926(P2016-158926A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(73)【特許権者】
【識別番号】397071436
【氏名又は名称】株式会社アールビー
(74)【代理人】
【識別番号】100110179
【弁理士】
【氏名又は名称】光田 敦
(72)【発明者】
【氏名】新井 智大
(72)【発明者】
【氏名】北川 輝久
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−047622(JP,U)
【文献】 実開昭57−166758(JP,U)
【文献】 中国実用新案第202077871(CN,U)
【文献】 独国実用新案第202009000934(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/00−77/18
A47B 55/00−55/06
A47B 96/20−97/00
A47B 1/00−41/06
E06B 7/00− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に設置されるアッパーキャビネットであって、
前面が開放するように箱状に形成され、内部を収納部とするキャビネット本体部と、
前記キャビネット本体部の前面側に取り付けられ、前記キャビネット本体部の側板または天板のいずれかに沿った軸を中心として回動するように開閉する前面扉と、を備え、
前記キャビネット本体部の底壁部における前面端部の下面が、底壁部の他の部分、前面扉および側板の下面よりも高い位置になるように、部分的に切り欠かれることにより手掛かり部を形成しており、
前記手掛かり部には、切り欠かれた部分を保護するための保護カバーが取り付けられており、また、前記手掛かり部には、前記底壁部の上面および下面と平行な方向に延び、切り欠かれた部分の下面に沿って欠かれた部分の奥面から底壁部の内部に向かって溝部が形成されており、
前記保護カバーは、前記手掛かり部の表面を覆う保護部と、前記溝部に差し込まれるための差し込み部と、を備えており、
前記保護部は、前記底壁部の上面側の前面寄りの部分を覆う上面保護部をさらに備え、前記差し込み部は、該上面保護部と略同じ長さに形成されており、
前記上面保護部と前記差し込み部の両方を貫通するように打ち込まれた固定部材によって前記保護カバーが前記手掛かり部に固定されていることを特徴とするアッパーキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパーキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチンのキャビネットにおいて、扉に取手が設けられた構成は知られている。また、扉に取手は設けられておらず、扉の下端部がキャビネットの底板より下方まで延びて手掛かり部とされた構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−85921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の扉に取手が設けられた構成は、見た目ですっきりしたデザインとならない。また、扉の下端部がキャビネットの底板より下方まで延びて手掛かり部とされた構成は、上方に設けられるアッパーキャビネットでは、下方から扉の下端部とキャビネットの底板の高さが異なることにより、必ずしも見た目ではすっきりしたデザインとはならない。
【0005】
また、扉の下端部がキャビネットの底板より下方まで延びていると、レンジフードと隣接している場合には、レンジフードの下端とキャビネット本体部の下端の高さが合わず、見た目ではすっきりしたデザインとはならない。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とし、シンプルな構成で、見た目もすっきりしたデザインの取手レスタイプのアッパーキャビネットを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、壁面に設置されるアッパーキャビネットであって、前面が開放するように箱状に形成され、内部を収納部とするキャビネット本体部と、前記キャビネット本体部の前面側に取り付けられ、前記キャビネット本体部の側板または天板のいずれかに沿った軸を中心として回動するように開閉する前面扉と、を備え、前記キャビネット本体部の底壁部における前面端部の下面が、底壁部の他の部分、前面扉および側板の下面よりも高い位置になるように、部分的に切り欠かれることにより手掛かり部を形成しており、前記手掛かり部には、切り欠かれた部分を保護するための保護カバーが取り付けられており、また、前記手掛かり部には、前記底壁部の上面および下面と平行な方向に延び、切り欠かれた部分の下面に沿って欠かれた部分の奥面から底壁部の内部に向かって溝部が形成されており、前記保護カバーは、前記手掛かり部の表面を覆う保護部と、前記溝部に差し込まれるための差し込み部と、を備えており、前記保護部は、前記底壁部の上面側の前面寄りの部分を覆う上面保護部をさらに備え、前記差し込み部は、該上面保護部と略同じ長さに形成されており、前記上面保護部と前記差し込み部の両方を貫通するように打ち込まれた固定部材によって前記保護カバーが前記手掛かり部に固定されていることを特徴とするアッパーキャビネットを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、取手レスタイプのアッパーキャビネットにおいて、キャビネット本体部における底壁部の前面端部の下面が、底壁部の他の部分の下面、前面扉の下面および側板の下面よりも高い位置になるように、底壁部の前面端部が部分的に切り欠かれることにより手掛かり部を形成しているので、シンプルな構成で、見た目もすっきりしたデザインとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るアッパーキャビネットの実施例1、2の全体構成を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B断面図である。
図2】本発明に係るアッパーキャビネットの実施例1の要部を説明する図であり、(a)は図1(b)の要部拡大図であり、(b)、(c)は保護カバーおよびその取り付けについての構成を説明する図である。
図3】(a)は上記実施例1の保護カバーの変形例およびその取り付けにつての構成を説明する図であり、(b)は別の変形例の保護カバーおよびその取り付けについての構成を説明する図であり、(c)は保護カバーの別の態様を説明する構成である。
図4】本発明に係るアッパーキャビネットの実施例2の要部を説明する図であり、(a)は底壁部の前端部の構成を示す断面図であり、(b)〜(d)は保護カバーおよびその取り付けの構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るアッパーキャビネットを実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。本明細書では、アッパーキャビネットを正面視したときに、手前側を前方とし、奥側を後方とし、前後方向に直交する方向を左右方向という。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
本発明に係るアッパーキャビネットの実施例1を、図1〜3において説明する。この実施例1のアッパーキャビネット1は、図1(a)、(b)に示すように、キャビネット本体部2と前面扉3を備えている。
【0015】
キャビネット本体部2は、前面が開放するように箱状に形成され、内部を収納部4とする構成であり、左右の側板6、底壁部7、天板8および後板9を備えている。収納部4には、棚板13が設けられている。
【0016】
前面扉3は、キャビネット本体部2の前面側に取り付けられ、キャビネット本体部2の側板6または天板8のいずれかに沿ったヒンジ14の軸を中心として回動するように構成されている。
【0017】
前面扉3の下面15は、図2(a)に示すように、左右の側板6の下面18および底壁部7の下面19(但し、後記する切り欠かれている部分23は除く)と、同じ高さの位置になるように形成されている。
【0018】
本発明のアッパーキャビネット1の特徴的構成として、キャビネット本体部2の底壁部7における前面端部を部分的に切り欠いて、切り欠かれた部分23(図2(b)参照)を設けることにより、手掛かり部24を形成している。
【0019】
より具体的には、切り欠かれた部分23は、その下面20(図2(b)参照)が、底壁部7における前面端部以外の他の部分の下面19、前面扉3の下面15および側板6の下面18よりも高い位置となるように、底壁部7における前面端部が切り欠かれて形成される。
【0020】
切り欠かれた部分23は、下面20と奥面28を有する。このように切り欠かれた部分23が形成されることで、手掛かり部24には、前面扉3の後方に手掛かり用の空間25(図2(a)参照)が設けられる。つまり、手掛かり部24は、前面扉3の裏面の下端部付近に手を掛けて扉を開くために切り欠かれた部分23と、この部分に形成される空間25を含んでいる。
【0021】
そして、手掛かり部24には、図2(a)に示すように、切り欠かれた部分23を保護するための保護カバー29が取り付けられている。即ち、少なくとも、底壁部7の材料である木部材の素地が露出する前面21、下面20および奥面28をカバーする保護カバー29が取り付けられる。保護カバー29およびその取り付けについての構成を、図2図3において説明する。
【0022】
図2(b)は、保護カバー29として樹脂製の木口テープを使用し、それを底壁部7の切り欠かれた部分23に取り付ける構成を示している。この場合は、図2(b)に示すように、木部材の素地が露出する前面21、下面20および奥面28に対応し、それぞれ樹脂製の接着剤付きの木口テープ32、33、34を貼り付けて、保護カバー29を形成する。
【0023】
図3(a)は、実施例1の変形例の保護カバー36およびその取り付け構造を説明する図である。この変形例の保護カバー36は、切り欠かれた部分23の形状に対応して、予め一体に形成された樹脂製の保護カバーであり、切り欠かれた部分23に、接着剤で貼り付られる。接着する方が確実に保護カバー36を固定できるが、接着は必須ではない。
【0024】
保護カバー36は、切り欠かれた部分23を保護する本体部37に加えて、上面保護部38および下面保護部39を備えている。上面保護部38は、底壁部7の前端部の上面42を覆う部分である。下面保護部39は、底壁部7における切り欠かれた部分23に隣接する下面43を覆う部分である。
【0025】
保護カバー36は、その内面に接着剤を塗布してから、図3(a)に示すように、手掛かり部24における切り欠かれた部分23と、底壁部7の前端部の上面42および切り欠かれた部分23に隣接する下面43を覆うようにして底壁部7に嵌着されて貼り付けられる。このような構成により、保護カバー36は、より安定して底壁部7に取り付けられる。
【0026】
図3(b)は、別の変形例の保護カバー45およびその取り付け構造を説明する図である。この保護カバー45は、上面保護部38がより長い寸法に形成されており、その取り付けは、底壁部7に嵌着して貼り付けてから、タッカー46を上方から上面保護部38を貫通して打ち込んで固定する構造である。これにより、保護カバー45は、より強固に底壁部7に取り付けられる。
【0027】
なお、図3(c)に示す保護カバー48は、保護カバー45のような上面保護部38および下面保護部39が形成されておらず、底壁部7を構成する木部材の素地が露出する前面21、下面20および奥面28のみに対応する保護部49(図3(a)、(b)に示す本体部37に相当する部分)を備えた構成である。このような保護カバー48は、切り欠かれた部分を覆うようにして底壁部7に嵌着されて貼り付けられる。
【0028】
(作用)
以上の構成から成る実施例1のアッパーキャビネット1の作用について説明する。アッパーキャビネット1の使用に際して、前面扉3を開く際には、前面扉3の下端部の後方に形成された手掛かり用の空間25に下方から手を差し込み、前面扉3の後面を手で前方に引くことによって、簡単に開くことができる。
【0029】
前面扉3の下面15は、図2(a)に示すように、左右の側板6の下面18および底壁部7の下面19と同じ高さの位置になるように揃って形成されているので、段差がなく、シンプルな構成で見た目ではすっきりしたデザインとなる。
【0030】
また、アッパーキャビネット1がレンジフード(図示せず)と隣接して設置されている場合に、キャビネット本体部2の下端(底壁部7の下面19)および前面扉3の下面15は、それぞれレンジフードの下端との間に段差が生じないので、見た目ですっきりしたシンプルなデザインとなる。
【0031】
切り欠かれた部分23は、木材の素地が露出しないように保護カバー29で覆われデザイン性が付与されているので、仮に下方から切り欠かれた部分23が視野に入っても、見栄えが悪いようなことがない。
【0032】
また、保護カバー29によって、切り欠かれた部分23の木材の素地が露出することがないので、防水性、防湿性が担保され、木材の素地に水や湿気が直に触れて生じる腐食や劣化が抑制できる。
【0033】
(実施例2)
本発明に係るアッパーキャビネットの実施例2について、図4において説明する。この実施例2のアッパーキャビネットは、実施例1のアッパーキャビネットと略同じであるので、異なる特徴的な構成を中心に説明する。
【0034】
実施例2のアッパーキャビネットでは、切り欠かれた部分23には、図4(a)に示すように、底壁部7における上面42および下面43と平行な方向に延びる溝部52が形成されている。より具体的には、切り欠かれた部分23の下面20に沿って奥面28から底壁部7の内部に向かって溝部52が形成されている。
【0035】
一方、実施例2において、底壁部7の切り欠かれた部分23を保護する保護カバー55は、図4(b)に示すように、実施例2の別の変形例の保護カバー45(図3(b)参照)と同様に、上面保護部38および下面保護部39を備えているとともに、さらに、溝部52に差し込まれる差し込み部56を備えている。
【0036】
この保護カバー55は、図3(b)に示す保護カバー45と同様に、接着剤を保護カバー55の内面だけでなく、差し込み部56の表面にも塗布し、図4(c)に示すように、差し込み部56を溝部52に差し込んで、底壁部7に嵌着して貼り付ける。
【0037】
これにより、保護カバー55は、切り欠かれた部分23と、底壁部7の上面42および下面43を覆う。差し込み部56が溝部52に差し込まれて接着されるので、より強力に、保護カバー55を底壁部7に取り付けることができる。
【0038】
ところで、保護カバーが、差し込み部56および溝部52が設けられていない保護カバー45(図3(b)参照)に示すような構成であると、切り欠かれた部分23における下面20と奥面28の角部において、保護カバーとの間に隙間が生じて浮いてしまうこともある。
【0039】
その原因は、下面20と奥面28の角部と、この角部に対応する保護カバー45の角部は、互いにぴったりと合うように製造することは困難であるので、両角部間に隙間が生じることもあるからである。
【0040】
このような隙間が生じると、保護カバーはその角部から剥離しやすいという問題が生じる。しかしながら、実施例2の保護カバー55によれば、差し込み部56が溝部52に差し込まれて接着されるので、上記問題が解消される。
【0041】
さらに、図4(d)に示すように、タッカー46を上方から上面保護部38および差し込み部56を貫通して、底壁部7に打ち込んだ構成としてもよい。このような構成とすることにより、保護カバー55は、より強固に底壁部7に取り付けられる。
【0042】
以上、本発明に係るアッパーキャビネットを実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。なお、手掛かり部は、キャビネットの底壁部の幅方向全域に形成される必要はなく、一部のみに形成されるのでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るアッパーキャビネットは上記のような構成であるから、キッチンに設置されるキャビネットだけでなく、居間、書斎、その他建物の他の空間に設置されるキャビネットにも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 アッパーキャビネット
2 キャビネット本体部
3 前面扉
4 収納部
6 側板
7 底壁部
8 天板
9 後板
13 棚板
14 ヒンジ
15 前面扉の下面
18 側板の下面
19 底壁部の下面
20 底壁部の前面端部の下面
21 底壁部の前面端部の前面
23 切り欠かれた部分
24 手掛かり部
25 手掛かり用の空間
28 切り欠かれた部分の奥面
29 保護カバー
32、33、34 木口テープ
36 保護カバー
37 保護カバーの本体部
38 上面保護部
39 下面保護部
42 底壁部の前端部の上面
43 切り欠かれた部分に隣接する下面
45 保護カバー
46 タッカー
48 保護カバー
49 保護部
52 溝部
55 保護カバー
56 差し込み部
図1
図2
図3
図4