【実施例】
【0014】
(実施例1)
本発明に係るアッパーキャビネットの実施例1を、
図1〜3において説明する。この実施例1のアッパーキャビネット1は、
図1(a)、(b)に示すように、キャビネット本体部2と前面扉3を備えている。
【0015】
キャビネット本体部2は、前面が開放するように箱状に形成され、内部を収納部4とする構成であり、左右の側板6、底壁部7、天板8および後板9を備えている。収納部4には、棚板13が設けられている。
【0016】
前面扉3は、キャビネット本体部2の前面側に取り付けられ、キャビネット本体部2の側板6または天板8のいずれかに沿ったヒンジ14の軸を中心として回動するように構成されている。
【0017】
前面扉3の下面15は、
図2(a)に示すように、左右の側板6の下面18および底壁部7の下面19(但し、後記する切り欠かれている部分23は除く)と、同じ高さの位置になるように形成されている。
【0018】
本発明のアッパーキャビネット1の特徴的構成として、キャビネット本体部2の底壁部7における前面端部を部分的に切り欠いて、切り欠かれた部分23(
図2(b)参照)を設けることにより、手掛かり部24を形成している。
【0019】
より具体的には、切り欠かれた部分23は、その下面20(
図2(b)参照)が、底壁部7における前面端部以外の他の部分の下面19、前面扉3の下面15および側板6の下面18よりも高い位置となるように、底壁部7における前面端部が切り欠かれて形成される。
【0020】
切り欠かれた部分23は、下面20と奥面28を有する。このように切り欠かれた部分23が形成されることで、手掛かり部24には、前面扉3の後方に手掛かり用の空間25(
図2(a)参照)が設けられる。つまり、手掛かり部24は、前面扉3の裏面の下端部付近に手を掛けて扉を開くために切り欠かれた部分23と、この部分に形成される空間25を含んでいる。
【0021】
そして、手掛かり部24には、
図2(a)に示すように、切り欠かれた部分23を保護するための保護カバー29が取り付けられている。即ち、少なくとも、底壁部7の材料である木部材の素地が露出する前面21、下面20および奥面28をカバーする保護カバー29が取り付けられる。保護カバー29およびその取り付けについての構成を、
図2、
図3において説明する。
【0022】
図2(b)は、保護カバー29として樹脂製の木口テープを使用し、それを底壁部7の切り欠かれた部分23に取り付ける構成を示している。この場合は、
図2(b)に示すように、木部材の素地が露出する前面21、下面20および奥面28に対応し、それぞれ樹脂製の接着剤付きの木口テープ32、33、34を貼り付けて、保護カバー29を形成する。
【0023】
図3(a)は、実施例1の変形例の保護カバー36およびその取り付け構造を説明する図である。この変形例の保護カバー36は、切り欠かれた部分23の形状に対応して、予め一体に形成された樹脂製の保護カバーであり、切り欠かれた部分23に、接着剤で貼り付られる。接着する方が確実に保護カバー36を固定できるが、接着は必須ではない。
【0024】
保護カバー36は、切り欠かれた部分23を保護する本体部37に加えて、上面保護部38および下面保護部39を備えている。上面保護部38は、底壁部7の前端部の上面42を覆う部分である。下面保護部39は、底壁部7における切り欠かれた部分23に隣接する下面43を覆う部分である。
【0025】
保護カバー36は、その内面に接着剤を塗布してから、
図3(a)に示すように、手掛かり部24における切り欠かれた部分23と、底壁部7の前端部の上面42および切り欠かれた部分23に隣接する下面43を覆うようにして底壁部7に嵌着されて貼り付けられる。このような構成により、保護カバー36は、より安定して底壁部7に取り付けられる。
【0026】
図3(b)は、別の変形例の保護カバー45およびその取り付け構造を説明する図である。この保護カバー45は、上面保護部38がより長い寸法に形成されており、その取り付けは、底壁部7に嵌着して貼り付けてから、タッカー46を上方から上面保護部38を貫通して打ち込んで固定する構造である。これにより、保護カバー45は、より強固に底壁部7に取り付けられる。
【0027】
なお、
図3(c)に示す保護カバー48は、保護カバー45のような上面保護部38および下面保護部39が形成されておらず、底壁部7を構成する木部材の素地が露出する前面21、下面20および奥面28のみに対応する保護部49(
図3(a)、(b)に示す本体部37に相当する部分)を備えた構成である。このような保護カバー48は、切り欠かれた部分を覆うようにして底壁部7に嵌着されて貼り付けられる。
【0028】
(作用)
以上の構成から成る実施例1のアッパーキャビネット1の作用について説明する。アッパーキャビネット1の使用に際して、前面扉3を開く際には、前面扉3の下端部の後方に形成された手掛かり用の空間25に下方から手を差し込み、前面扉3の後面を手で前方に引くことによって、簡単に開くことができる。
【0029】
前面扉3の下面15は、
図2(a)に示すように、左右の側板6の下面18および底壁部7の下面19と同じ高さの位置になるように揃って形成されているので、段差がなく、シンプルな構成で見た目ではすっきりしたデザインとなる。
【0030】
また、アッパーキャビネット1がレンジフード(図示せず)と隣接して設置されている場合に、キャビネット本体部2の下端(底壁部7の下面19)および前面扉3の下面15は、それぞれレンジフードの下端との間に段差が生じないので、見た目ですっきりしたシンプルなデザインとなる。
【0031】
切り欠かれた部分23は、木材の素地が露出しないように保護カバー29で覆われデザイン性が付与されているので、仮に下方から切り欠かれた部分23が視野に入っても、見栄えが悪いようなことがない。
【0032】
また、保護カバー29によって、切り欠かれた部分23の木材の素地が露出することがないので、防水性、防湿性が担保され、木材の素地に水や湿気が直に触れて生じる腐食や劣化が抑制できる。
【0033】
(実施例2)
本発明に係るアッパーキャビネットの実施例2について、
図4において説明する。この実施例2のアッパーキャビネットは、実施例1のアッパーキャビネットと略同じであるので、異なる特徴的な構成を中心に説明する。
【0034】
実施例2のアッパーキャビネットでは、切り欠かれた部分23には、
図4(a)に示すように、底壁部7における上面42および下面43と平行な方向に延びる溝部52が形成されている。より具体的には、切り欠かれた部分23の下面20に沿って奥面28から底壁部7の内部に向かって溝部52が形成されている。
【0035】
一方、実施例2において、底壁部7の切り欠かれた部分23を保護する保護カバー55は、
図4(b)に示すように、実施例2の別の変形例の保護カバー45(
図3(b)参照)と同様に、上面保護部38および下面保護部39を備えているとともに、さらに、溝部52に差し込まれる差し込み部56を備えている。
【0036】
この保護カバー55は、
図3(b)に示す保護カバー45と同様に、接着剤を保護カバー55の内面だけでなく、差し込み部56の表面にも塗布し、
図4(c)に示すように、差し込み部56を溝部52に差し込んで、底壁部7に嵌着して貼り付ける。
【0037】
これにより、保護カバー55は、切り欠かれた部分23と、底壁部7の上面42および下面43を覆う。差し込み部56が溝部52に差し込まれて接着されるので、より強力に、保護カバー55を底壁部7に取り付けることができる。
【0038】
ところで、保護カバーが、差し込み部56および溝部52が設けられていない保護カバー45(
図3(b)参照)に示すような構成であると、切り欠かれた部分23における下面20と奥面28の角部において、保護カバーとの間に隙間が生じて浮いてしまうこともある。
【0039】
その原因は、下面20と奥面28の角部と、この角部に対応する保護カバー45の角部は、互いにぴったりと合うように製造することは困難であるので、両角部間に隙間が生じることもあるからである。
【0040】
このような隙間が生じると、保護カバーはその角部から剥離しやすいという問題が生じる。しかしながら、実施例2の保護カバー55によれば、差し込み部56が溝部52に差し込まれて接着されるので、上記問題が解消される。
【0041】
さらに、
図4(d)に示すように、タッカー46を上方から上面保護部38および差し込み部56を貫通して、底壁部7に打ち込んだ構成としてもよい。このような構成とすることにより、保護カバー55は、より強固に底壁部7に取り付けられる。
【0042】
以上、本発明に係るアッパーキャビネットを実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。なお、手掛かり部は、キャビネットの底壁部の幅方向全域に形成される必要はなく、一部のみに形成されるのでもよい。