特許第6561281号(P6561281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561281有機EL素子および有機EL素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561281
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】有機EL素子および有機EL素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190808BHJP
   H05B 33/24 20060101ALI20190808BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190808BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20190808BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20190808BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H05B33/22 A
   H05B33/14 A
   H05B33/24
   H05B33/10
   H05B33/28
   H05B33/26 Z
   H05B33/04
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-251727(P2014-251727)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-115748(P2016-115748A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】白波瀬 英幸
(72)【発明者】
【氏名】安喰 博之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 潤
【審査官】 三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−33872(JP,A)
【文献】 特開2004−335468(JP,A)
【文献】 特開2006−135337(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/076948(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/020452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−33/28
H01L 27/32
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性の陽極と、
前記陽極の上方に配された発光層と、
前記発光層上に配され、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層と、
前記第1中間層の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層と、
前記機能層の上方に配され、金属層を含む光透過性の陰極と、
を有し、
前記機能層は、前記第1中間層に隣接する領域に、前記第1金属のフッ化物における前記第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含み、
前記機能層は、前記第2金属の単体からなり前記第1中間層の直上に形成された第2中間層と、前記第2中間層の上に積層され電子輸送性の有機材料からなる有機層とで構成されており、
前記第1金属に対する前記第2金属のモル比は、1%以上10%以下である
有機EL素子。
【請求項2】
前記金属層は、
銀、銀合金、アルミニウム及びアルミニウム合金から選択される材料で形成されている、
請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項3】
前記第2金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、
請求項1または2に記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記機能層は、電子輸送性の有機材料で形成され、前記第2金属がドープされている、
請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記機能層中における前記第2金属のドープ濃度は、
5wt%以上、40wt%以下である、
請求項4に記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記有機層に、前記第2金属がドープされている、
請求項5記載の有機EL素子。
【請求項7】
前記第2金属は、バリウムである、
請求項1〜6のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項8】
前記第1金属は、ナトリウムである、
請求項1〜7のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項9】
前記発光層が青色光を発光し、前記陽極と陰極との間に共振器構造が形成され、
前記発光層から前記機能層までの合計の光学膜厚は、
当該光学膜厚を変化させたときに取り出される青色光の輝度/y値が示す特性において、1次干渉のピークに相当する光学膜厚の範囲内で、且つ輝度/y値が2次干渉のピークの極大値以上となる光学膜厚に設定されている、
請求項1〜8のいずれかに記載の有機EL素子。
ここで、上記輝度/y値は、有機EL素子から取り出される青色光の輝度とxy色度のy値との比である。
【請求項10】
前記第1中間層において、前記第1金属の濃度は、前記有機層側よりも前記発光層側で高く、前記第2金属の濃度は、前記発光層側よりも前記有機層側で高い
請求項1〜9のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項11】
前記第1中間層の膜厚に対する前記第2中間層の膜厚の比は、3%以上25%以下である
請求項1〜9のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項12】
光反射性の陽極を形成し、
前記陽極の上方に発光層を形成し、
前記発光層上に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層を形成し、
前記第1中間層の上に、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層を形成し、
前記機能層の上方に、金属層を含む光透過性の陰極を形成し、
前記機能層を形成する際に、
前記第1中間層に隣接する領域に、前記第1金属のフッ化物における前記第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含有させ、
前記機能層を形成する際に、
前記第1中間層の上に、
前記第2金属の単体で第2中間層を形成し、
当該第2中間層の上に、電子輸送性の有機材料からなる有機層を形成し、
前記第1金属に対する前記第2金属のモル比は、1%以上10%以下である
有機EL素子の製造方法。
【請求項13】
前記金属層は、
銀、銀合金、アルミニウム及びアルミニウム合金から選択される材料で形成される、
請求項12に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項14】
前記第2金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、
請求項12または13に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項15】
前記機能層を形成する際に、
電子輸送性の有機材料に、前記第2金属をドープする
請求項14に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項16】
前記機能層を形成する際に、
前記有機材料に前記第2金属をドープする濃度は、5wt%以上、40wt%以下である、
請求項15に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項17】
前記第2金属は、バリウムである、
請求項12〜16のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項18】
前記第1金属は、ナトリウムである、
請求項12〜17のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項19】
前記第1中間層において、前記第1金属の濃度は、前記有機層側よりも前記発光層側で高く形成されており、前記第2金属の濃度は、前記発光層側よりも前記有機層側で高い形成されている
請求項12〜18のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項20】
前記第1中間層の膜厚に対する前記第2中間層の膜厚の比は、3%以上25%以下である
請求項12〜18のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子および有機EL素子の製造方法に関し、特に、光反射性の陽極と光透過性の陰極 を備えた有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、自己発光を行うため視認性が高く、さらに完全固体素子であるため耐衝撃性に優れるなどの特徴を有し、近年、表示装置に有機EL素子を利用したものが普及しつつある。
有機EL素子は、一対の電極(陽極および陰極)間に、少なくとも発光層が挟まれた構成を有している。そして、有機EL素子は、多くの場合、発光層の他に、発光層に電子を供給するための機能層(電子輸送層、電子注入層)や、正孔注入層、正孔輸送層等が発光層と陰極との間にさらに挟まれた構成を有している。
【0003】
有機EL素子において、消費電力の低減や長寿命化の観点から、各色発光素子から光取り出し効率を向上させることも望まれている。この光取り出し効率を向上させるために、例えば特許文献1に示されるように、各色の有機EL素子において、共振器構造を採用する技術も知られている。
また有機EL素子において、機能層に仕事関数の低いアルカリ金属やアルカリ土類金属を含む層を用いることによって、良好な電子注入性が得られることも知られている。
【0004】
一方、仕事関数が低いアルカリ金属やアルカリ土類金属は、水分や酸素といった不純物と反応しやすい。そのため、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む機能層は、不純物が存在すると劣化が促進しやすく、有機EL素子における発光効率の低下や発光寿命の短縮といった悪影響を引き起こして保管安定性が低下する原因となる。
これに対して特許文献2には、発光層上に無機バリア層を設けた構成の有機EL素子が開示されている。このように無機バリア層を設けると、その無機バリア層よりも前に形成された有機発光媒体層の表面に吸着された不純物によって機能層が劣化するのを防止する働きをなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2012/020452A1公報
【特許文献2】特許第4882508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された有機EL素子において、発光層上に設ける無機バリア層は、絶縁体または半導体もしくは仕事関数が4.0eV以上の金属から成り、電子注入性が低いため、陰極から発光層に電子が十分に供給されず、良好な発光特性が得られないこともある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、不純物に対する十分なブロック性を確保して良好な保管安定性を確保しつつ、良好な発光特性を得ることのできる有機EL素子および有機EL素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様にかかる有機EL素子は、光反射性の陽極と、陽極の上方に配された発光層と、発光層上に配され、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層と、第1中間層の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層と、機能層の上方に配され、金属層を含む光透過性の陰極と、を有し、機能層には、第1中間層に隣接する領域に、第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含ませた。
【0008】
ここで「第1金属」は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択された元素を指し、「第1金属のフッ化物」は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択された元素のフッ化物を指す。また、「第2金属」は、第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する元素を指す。
次に「金属層」は、Ag,Alをはじめとする金属元素の単体で形成された層であってもよいが、複数の金属元素の合金で形成された層であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記態様の有機EL素子においては、第1中間層は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含んでいる。この第1金属のフッ化物は、水分や酸素などの不純物をブロックする性能が高いので、発光層側から機能層に不純物が浸入するのをブロックして、機能層の劣化を防止し、良好な保管安定性を実現することができる。
また、機能層には、第1中間層に隣接する領域に第2金属が含まれ、その第2金属は、第1中間層に含まれる第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切って第1金属を遊離させる。遊離した第1金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるため、仕事関数が小さく電子注入性が高い。従って、機能層から発光層への電子供給性が良好となり、駆動電圧を低減できる。
【0010】
また、上記態様の有機EL素子においては、陰極が金属層を含むので、有機EL素子の光共振器構造における光取り出し効率を高めるのに適し、陰極のシート抵抗値も低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る有機EL素子1の構成を模式的に示す断面図である。
図2】第2中間層の膜厚の違いによる電流密度の変化を示すグラフである。
図3】第2中間層の膜厚の違いによる発光効率比の変化を示すグラフである。
図4】(a)は、第1中間層の膜厚の違いによる輝度保持率の違いを示すグラフ、(b)は、第1中間層の膜厚の違いによる発光効率比の違いを示すグラフである。
図5】第1中間層の膜厚に対する第2中間層の膜厚の割合に対する発光効率比の変化を示すグラフであって、(a)と(b)では正孔輸送層に用いている物質が異なっている。
図6】機能層における有機材料に対する金属のドープ濃度の違いによる発光効率比の変化を示すグラフである。
図7】有機EL素子に形成された光共振器構造における光の干渉について説明する図であって、(a)は実施の形態1、(b)は実施の形態2に関する.
図8】機能層21の光学膜厚を変化させて、青色発光素子から取り出される青色光の輝度/y値をシミュレーションで算出した結果を示すグラフである。
図9】青色有機EL素子1(B)から取り出される青色光の輝度/y値をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図10】実施形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、基板上にTFT層および層間絶縁層が形成された状態、(b)は、層間絶縁層上に画素電極が形成された状態、(c)は、層間絶縁層および画素電極上に隔壁材料層が形成された状態を示す。
図11図10の続きの有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、隔壁層が形成された状態、(b)は、隔壁層の開口部内において画素電極上に正孔注入層が形成された状態、(c)は、隔壁層の開口部内において正孔注入層上に正孔輸送層が形成された状態を示す。
図12図11の続きの有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、隔壁層の開口部内において正孔輸送層上に発光層が形成された状態、(b)は、発光層および隔壁層上に第1中間層が形成された状態、(c)は、第1中間層上に第2中間層が形成された状態を示す。
図13図12の続きの有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、第2中間層上に機能層が形成された状態、(b)は、機能層上に対向電極が形成された状態、(c)は、対向電極上に封止層が形成された状態を示す。
図14】実施形態に係る有機EL素子の製造過程を示す模式工程図である。
図15】実施形態に係る有機EL素子を備えた有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<発明に到る経緯>
上記のように、アルカリ金属やアルカリ土類金属から選択された元素(本明細書における「第1金属」)を含む機能層を発光層の上に形成することで、当該機能層から発光層に対して優れた電子注入性を得ることができるが、水分や酸素といった不純物が発光層から機能層に移行することによって機能層が劣化する課題も存在するので、機能層の電子注入性を確保しながら、機能層の劣化を防止する方法が求められる。
【0013】
ここで、NaF、LiFをはじめとして、第1金属のフッ化物は、吸湿性が低く、水や酸素などの不純物をブロックする性質に優れているので、この第1金属のフッ化物で形成した層を発光層と機能層との間に介在させることによって、不純物による機能層の劣化を防止できることを見出した。ただし、第1金属のフッ化物からなる層を、発光層と機能層との間に介在させると、発光層に対する電子注入性が低下することもわかった。
【0014】
これに対して、アルカリ金属やアルカリ土類金属とフッ素との結合を切る第2金属を含む層を中間層の上に設けて、第1金属を遊離させれば、中間層による不純物をブロックする性質と、発光層への電子供給性の両方を確保できることを見出し、本発明を案出するに到った。
<発明の態様>
本発明の一態様にかかる有機EL素子は、光反射性の陽極と、陽極の上方に配された発光層と、発光層上に配され、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層と、第1中間層の上方に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層と、機能層の上方に配され、金属層を含む光透過性の陰極と、を有し、機能層には、第1中間層に隣接する領域に、第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含ませた。
【0015】
アルカリ金属、アルカリ土類に該当する第1金属のフッ化物は、不純物をブロックする性能が高いので、これを含む第1中間層は、発光層側から機能層に不純物が浸入するのをブロックして、機能層の劣化を防止し、良好な保管安定性を実現することができる。
また、機能層に含まれる第2金属は、第1中間層に含まれる第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切って第1金属を遊離させる。遊離した第1金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、仕事関数が小さく電子注入性が高いので、機能層から発光層への電子供給性が良好となり、駆動電圧の低減に寄与する。
【0016】
また、上記態様の有機EL素子においては、陰極が光反射性を有する金属材料で形成されているので、陽極と陰極との間の光共振器構造における光取り出し効率を高めるのに適し、陰極のシート抵抗値も低くできる。
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、光反射性の陽極を形成し、陽極の上方に発光層を形成し、発光層上に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層を形成し、第1中間層の上に、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層を形成し、機能層の上方に、金属層を含む光透過性の陰極を形成する。そして、機能層を形成する際に、第1中間層と隣接する領域に、第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含ませる。
【0017】
この製造方法によって形成した有機EL素子においても上記と同様の効果が得られる。
上記態様の有機EL素子、及び製造方法において、以下のようにしてもよい。
陰極を構成する金属材料を、銀、銀合金、アルミニウム及びアルミニウム合金から選択する。これらの金属材料は、反射率及び導電率が良好なので、光共振構造において光取り出し効率を高めたり、陰極のシート抵抗値を低くするのに適している。
【0018】
第2金属として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いる。
アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、比較的仕事関数が低く電子供給能が高い。また、フッ素との反応性が比較的高いので、第1金属とフッ素との結合を切って第1金属を遊離させる作用効果を得やすい。
機能層を、第2金属がドープされた有機材料で形成する。これによって、機能層が電子輸送性を持ち、陰極から発光層に電子を効率よく供給することができる。
【0019】
機能層中にドープされる第2金属の濃度を、5wt%以上、40wt%以下とする。これによって、機能層の電子供給能が良好となり、良好な発光効率が得られる。
機能層を、電子輸送性の有機材料からなる有機層と、当該有機層と第1中間層との間に介在し第2金属の単体で形成された第2中間層とで構成する。
これによって、第1中間層に隣接する領域に第2金属の単体で形成された第2中間層が存在するので、第1金属とフッ素との結合を切って第1金属を遊離させる効果が優れたものとなる。
【0020】
第2金属として、バリウムを用いる。バリウムは汎用性のある材料なので、これを用いて機能層や第2中間層を形成することによって、コスト低減に資することができる。
第1金属として、ナトリウムを用いる。これによって、中間層は、吸湿性が低く、酸素との反応性が低いフッ化ナトリウムを含むため、不純物をブロックする性質に優れた層となる。また、ナトリウムは仕事関数が低いので、中間層から発光層に対する電子注入性が優れたものとなる。
【0021】
発光層が青色光を発光する場合、発光層から機能層までの合計の光学膜厚を、
当該光学膜厚を変化させたときに、有機EL素子から取り出される青色光の輝度とxy色度のy値との比(輝度/y値)が示す特性に関し、1次干渉に相当する光学膜厚の範囲内で、且つ輝度/y値が2次干渉の極大値以上となる光学膜厚に設定する。
これによって、青色発光素子から、輝度/y値の高い青色光が取り出されるので、色純度の良好な青色光を効率よく取り出すことができる。
【0022】
<実施の形態1>
以下、実施の形態にかかる有機EL素子について説明する。なお、以下の説明は、本発明の一態様に係る構成および作用・効果を説明するための例示であって、本発明の本質的部分以外は以下の形態に限定されない。
[1.有機EL素子の構成]
図1は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル100(図15参照)の部分断面図である。有機EL表示パネル100は、3つの色(赤色、緑色、青色)を発光する有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)で構成される画素を複数備えている。図1では、その1つの青色の有機EL素子1(B)を中心としてその周辺の断面を示している。
【0023】
有機EL表示パネル100において、各有機EL素子1は、前方(図1における紙面上方)に光を出射するいわゆるトップエミッション型である。
有機EL素子1(R)と、有機EL素子1(G)と、有機EL素子1(B)は、ほぼ同様の構成を有するので、以下では、まとめて有機EL素子1として説明する。
図1に示すように、有機EL素子1は、基板11、層間絶縁層12、画素電極13、隔壁層14、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、第1中間層18、第2中間層19、機能層21、対向電極22、および封止層23を備える。なお、基板11、層間絶縁層12、第1中間層18、第2中間層19、機能層21、対向電極22、および封止層23は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル100が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
【0024】
<基板>
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、画素毎に駆動回路が形成されている。基材111は、例えばガラス材料からなる基板である。ガラス材料としては、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英等のガラスなどが挙げられる。
【0025】
<層間絶縁層>
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、図1の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、画素毎にコンタクトホールが形成されている。
【0026】
<画素電極>
画素電極13は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素毎に個々に設けられ、コンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
本実施形態においては、画素電極13は、陽極として機能する。
【0027】
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
【0028】
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITOやIZOのような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
<隔壁層>
隔壁層14は、画素電極13の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で画素電極13上に形成されている。画素電極13上面において隔壁層14で被覆されていない領域(以下、「開口部」という。)は、サブピクセルに対応している。即ち、隔壁層14は、サブピクセル毎に設けられた開口部14aを有する。
【0029】
本実施形態においては、隔壁層14は、画素電極13が形成されていない部分においては、層間絶縁層12上に形成されている。即ち、画素電極13が形成されていない部分においては、隔壁層14の底面は層間絶縁層12の上面と接している。
隔壁層14は、例えば、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。隔壁層14は、発光層17を塗布法で形成する場合には塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、発光層17を蒸着法で形成する場合には蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。本実施形態では、隔壁層14は、樹脂材料からなり、隔壁層14の材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。本実施形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。
【0030】
<正孔注入層>
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔の注入を促進させる目的で、画素電極13上の開口部14a内に設けられている。正孔注入層15は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなる正孔注入層15は、正孔(ホール)を安定的に、または正孔(ホール)の生成を補助して、発光層17に対し正孔(ホール)を注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。本実施の形態においては、正孔注入層15は、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる。
【0031】
ここで、正孔注入層15を遷移金属の酸化物で形成すると、複数の酸化数をとるため、複数の準位をとることができ、その結果、正孔注入が容易になり、駆動電圧の低減に寄与する。
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、親水基を備えない高分子化合物を用い開口部14a内に形成されている。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
【0032】
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有する。
<発光層>
発光層17は、開口部14a内に形成されている。発光層17は、正孔と電子の再結合によりR,G,Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層17の材料としては公知の材料を利用することができる。例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質や、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の燐光物質を用いることができる。
【0033】
<第1中間層>
第1中間層18は、発光層17上に形成されており、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される第1金属のフッ化物で形成されている。
アルカリ金属に該当する金属は、リチウム,ナトリウム,カリウム,ルビジウム,セシウム,フランシウムであり、アルカリ土類金属の該当する金属は、カルシウム,ストロンチウム,バリウム,ラジウムである。これらのフッ化物で形成した膜は、不純物をブロックする働きをなす。
【0034】
従って、第1中間層18は、発光層17、正孔輸送層16、正孔注入層15、隔壁層14の内部や表面に存在する不純物が、機能層21や対向電極22へと侵入するのを防止する働きをなす。
第1金属としては、特に、NaあるいはLiが好ましく、第1中間層18を、NaF(フッ化ナトリウム)あるいはLiF(フッ化リチウム)で形成することが好ましい。
【0035】
<機能層>
機能層21は、対向電極22から注入された電子を発光層17へと輸送する機能を有する有機材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択され、第1金属のフッ化物(NaF)の結合を切る性質を持つ第2金属とを含む層である。
機能層21は、第2金属の単体からなり第1中間層18の直上に形成された第2中間層19と、第2中間層19の上に積層され電子輸送性の有機材料からなり第2金属がドープされた電子輸送層20とで構成されている。
【0036】
電子輸送層20に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
第2金属は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなど)またはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)の中で、第1中間層に含まれる第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する金属を用いる。
【0037】
本実施形態においては、第2金属として、アルカリ土類金属に属するBa(バリウム)を選択することとする。このBaは、NaFにおけるNaとFの結合を切ってNaを遊離させる性質を有する元素である。
<対向電極>
対向電極22は、各サブピクセル共通に設けられており、陰極として機能する。
【0038】
この対向電極22には、金属材料で形成された金属層が含まれているが、金属層の膜厚は10nm〜30nm程度に薄く設定されて光透過性を有している。金属材料は光反射性の材料であるが、金属層の膜厚を30nm以下と薄くすることによって、光透過性を確保することができる。
従って、発光層17からの光の一部は対向電極22において反射されるが、残りの一部は対向電極22を透過する。
【0039】
このように対向電極22に金属層が含まれることによって、そのシート抵抗値を低くすることができる。金属層の膜厚が10nm以上であれば、その表面抵抗(Rs)を10Ω/□以下の低抵抗にすることができる。
また対向電極22に金属層が含まれることによって、画素電極13と対向電極22との間に形成される光共振器構造においてそのキャビティ効果を高めることができる。
【0040】
金属層を形成する金属材料としては、銀(Ag)、Agを主成分とする銀合金、アルミニウム(Al)、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。Ag合金としては、マグネシウム−銀合金(MgAg)、インジウム−銀合金が挙げられる。Agは、基本的に低抵抗率を有し、Ag合金は、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できる点で好ましい。
【0041】
Al合金としては、マグネシウム−アルミニウム合金(MgAl)、リチウム−アルミニウム合金(LiAl)が挙げられる。
その他の合金として、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、が挙げられる。
金属層は、例えばAg層あるいはMgAg合金層の単層で構成してもよいし、Mg層とAg層の積層構造(Mg/Ag)、あるいは、MgAg合金層とAg層の積層構造(MgAg/Ag)にしてもよい。
【0042】
また、対向電極22は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITOやIZOのような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
<封止層>
対向電極22の上には、発光層17が水分や酸素等に触れて劣化することを抑制する目的で封止層23が設けられている。有機EL表示パネル100はトップエミッション型であるため、封止層23の材料としては、例えばSiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の光透過性材料が選択される。
【0043】
<その他>
なお図1には示されないが、封止層23の上に、封止樹脂を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。上部基板を貼り合せることによって、正孔輸送層16、発光層17、機能層21を水分および空気などから保護できる。
[2.不純物ブロック性と電子注入性]
正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17をウェットプロセスで形成する場合、これらの層の内部および表面に存在する不純物が機能層21に到達すると、機能層21の有機材料にドープされている金属と反応して、機能層21の機能を低下させる。
【0044】
また、不純物が有機材料と反応すると、有機材料が変質し、安定性を損なう虞もある。
隔壁層14をウェットプロセスで形成する場合にも、隔壁層14の内部および表面に存在する不純物が、同様に機能層21の機能低下を引き起こす原因となる。
これに対して、本実施形態に係る有機EL素子1は、発光層17と機能層21との間に、第1中間層18および第2中間層19を備え、第1中間層18は、アルカリ金属のフッ化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物を含んでいるので、このフッ化物が発光層17側からの不純物の侵入を防ぐ。
【0045】
特にNaFは、吸湿性が低く、酸素との反応性が低いため、不純物をブロックする性能が優れ、発光層17側からの不純物の侵入を防ぐ。それによって機能層21に含まれるアルカリ金属・アルカリ土類金属が不純物と反応するのを防ぎ、機能層21の電子供給能の低下を抑制することができ、さらに、対向電極22が不純物によって劣化するのを防止する。
【0046】
一方NaFは電気絶縁性が高いため、対向電極22および機能層21から供給される電子の発光層17への移動を阻害し、発光特性を低下させる問題があるが、有機EL素子1の機能層21には、第1中間層18に隣接して、第2金属としてのBaで形成された第2中間層19が設けられている。このBaは、第1中間層18中の第1金属であるNaのフッ化物(NaF)におけるNaとFとの結合を切る働きがあるので、第1中間層18中のNaFの一部が乖離して、Naが遊離する。
【0047】
Naは仕事関数が低く、電子供給能が高いため、機能層21から発光層17への電子の移動をアシストする。それによって、発光特性の低下を抑制し、駆動電圧を低減することができる。同時に第1中間層18中のNaFにより良好な不純物ブロック性を得ることができる。
なお、第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を分解する機構は、上記に限られない。第1中間層18、第2中間層19、発光層17、機能層21等の機能を損なわない限り、何れの機構によって第1金属とフッ素との結合が切れてもよい。
【0048】
このように、第1中間層18が、高い不純物ブロック性を有する第1金属のフッ化物を含むことにより、発光層17側からの不純物の侵入をブロックして機能層21(および対向電極22)の電子供給能の低下を抑制することができ、第2中間層19が、第1金属とフッ素との結合を切る第2金属を含むことにより、第1金属が遊離し、絶縁性の高い第1中間層18を超えて機能層21から発光層17へと電子が移動しやすくなり、良好な発光特性を得ることができる。
【0049】
なお実際は、第1中間層18と第2中間層19の境界は明確には分かれておらず、第1中間層18を形成する材料と、第2中間層19を形成する材料とが、製造の過程で多少混ざり合って形成されている場合もある。即ち、第1中間層18および第2中間層19の膜厚が、それぞれ正確にD1,D2〔nm〕というわけではなく、その境界がはっきりしていない場合もある。
【0050】
ただしその場合でも、第1金属の濃度は、電子輸送層20側よりも発光層17側で高く、第2金属の濃度は、発光層17側よりも電子輸送層20側で高いので、上述した効果を奏する。
ここでは、第1中間層18および第2中間層19を形成する際に、それぞれ膜厚がD1およびD2となるように意図した方法で形成した場合、形成された第1中間層18および第2中間層19の膜厚がそれぞれD1およびD2であるということとする。他の層の膜厚についても同様である。
【0051】
[3.第2中間層による電流密度向上効果に関する実験]
第2中間層19の膜厚D2が互いに異なる4種類の有機EL表示パネル100を試験体として作製し、それぞれの試験体に電圧を印加して電流密度を測定した。第2中間層19の膜厚D2は、0nm,0.5nm,1nm,2nmの4種類である。4つの試験体における第1中間層18の膜厚D1は、何れも4nmである。
【0052】
図2はその結果を示すグラフである。
図2に示すように、第2中間層19の膜厚D2が0nmの試験体(即ち、第2中間層19を備えない試験体)と比べて、膜厚D2=0.5nm,1nm,2nmの試験体は、何れも高い電流密度を示した。この結果は、第2中間層19を設けることによって、有機EL素子1の発光層17により多くの電流が流れることを示している。
【0053】
また、膜厚D2=0.5nm,1nm,2nmの3試験体同士を比べると、膜厚D2が2nmの試験体が最も高い電流密度を示したものの、膜厚D2が0nmのものと0.5nmのものとの間の違いに比べると、3試験体間の電流密度の差は小さい。
従って、第2中間層19の膜厚D2は、0.5nmあれば十分な電流密度が得られるといえる。
【0054】
[4.第2中間層の膜厚と発光効率比]
図3は、第2中間層19の膜厚D2が互いに異なる6種類の有機EL表示パネル100についての発光効率比を示すグラフである。6種類の膜厚D2は、0nm,0.1nm,0.2nm,0.5nm,1,2nmである。なお、6種類の有機EL表示パネル試験体において、第1中間層18の膜厚D1はいずれも4nmとした。
【0055】
この6種類の各試験体に対して、電流密度が10mA/cm2となるように電圧を印加した際の輝度を測定し、測定された輝度の値から発光効率を算出した。そして、基準となる有機EL表示パネルの発光効率の値を発光効率基準値として、発光効率基準値に対する比(発光効率比)をグラフにプロットした。
なお発光効率の基準値としては、第2中間層19を備えず、正孔輸送層16に正孔注入性の低い物質(具体的には、酸化タングステン)を用いた有機EL表示パネルの発光効率の値を用いた。
【0056】
図3に示すように、第2中間層19の膜厚D2が0.2nmである試験体が、最も高い発光効率比を示した。そして、膜厚D2が2nmの試験体では、膜厚D2が0nmの試験体と略同じ発光効率比であった。これは、正孔輸送層16から発光層17へと注入される正孔の量が一定であるため、それよりも過剰な電子が発光層17に注入されて電流が増加しても、輝度は増加せず、結果として発光効率が低下し、発光効率比も低下したと考えられる。
【0057】
図3に示すように、膜厚D2が2nmの試験体では、膜厚D2が0nmの試験体と略同じ発光効率比であることから、第2中間層19の膜厚D2は、0.1nm≦D2≦1nmの範囲が好ましいといえる。
[5.第1中間層の膜厚と保管安定性]
第1中間層18の膜厚D1が互いに異なる3種類の有機EL表示パネル100を試験体として保管安定性試験を行った。
【0058】
試験体における第1中間層18の膜厚D1は、1nm,4nm,10nmである。
保管安定性試験においては、各試験体に通電して初期輝度を測定し、80℃の環境下に7日間保管した後、再び通電して高温保管後の輝度を測定した。そして各試験体について、輝度保持率(初期輝度に対する高温保管後の輝度の割合〔%〕)を算出した。
この高温保管後の輝度保持率で保管安定性を評価した。
【0059】
図4(a)は、その結果を示すグラフである。
図4(a)に示すように、第1中間層18の膜厚D1が1nmの場合、輝度保持率が59〔%〕であって、保管安定性は低いが、膜厚D1が4nm以上の場合、輝度保持率が95%以上であり、良好な保管安定性を示している。
これより、第1中間層18の膜厚D1が4nm以上あれば、良好な保管安定性が得られることがわかる。
【0060】
なお、膜厚D1が10nmの試験体では、輝度保持率が100%を超える結果となっている。これは、高温保管前の状態において、正孔と電子とのバランスが最適な状態からずれていたのが、高温保管により、最適なバランス状態に近づいたためと考えられる。
[6.第1中間層の膜厚と発光効率比]
図4(b)は、第1中間層18の膜厚D1が互いに異なる3種類の有機EL表示パネル100についての発光効率比を示すグラフである。膜厚D1は、1,4,10〔nm〕の3種類である。発光効率比は、図3に示す発光効率比の場合と同様に、電流密度が10mA/cm2となるような電圧を印加した際の輝度を測定し、測定された輝度の値から発光効率を算出した。そして、基準となる有機EL表示パネルの発光効率の値を発光効率基準値として、発光効率基準値に対する比(発光効率比)をグラフにプロットした。
【0061】
図4(b)に示すように、3種類の試験体うち、膜厚D1=4〔nm〕の試験体が、最も高い発光効比を示し、膜厚D1が1nmおよび10nmの試験体は、ほぼ同じ発光効率比を示した。
この結果から、第1中間層18の膜厚D1が、1nmよりも薄い場合および10nmよりも厚い場合には、さらに発光効率比が低くなると考えられる。これは、第1中間層18の膜厚D1が薄くなりすぎると、乖離する第1金属(本実施形態においてはNa)の絶対量が少なくなり、機能層21から発光層17への電子の移動が促進されなくなり、一方、第1中間層18の膜厚D1が厚くなりすぎると、絶縁層としての機能が強くなって、発光効率が低下するためと考えられる。
【0062】
従って、第1中間層18の膜厚D1は、1nm以上、10nm以下の範囲に設定することが好ましい。
[7.第1中間層の膜厚に対する第2中間層の膜厚の割合と発光効率比]
以上説明したように、第1中間層18の膜厚D1については、不純物ブロック性を確保するための最低限の膜厚が必要である。一方、膜厚D1が厚くなりすぎると、絶縁膜としての性質が強くなって発光層17へ電子が注入されにくくなり、十分な輝度が得られなくなる。
【0063】
また、第2中間層19の膜厚D2が薄すぎると、第2中間層19に含まれる第2金属(本実施形態ではBa)が、第1中間層18に含まれる第1金属(本実施形態ではNa)を十分に遊離させることができず、発光層17に十分な電子を供給することができない。一方、D2が厚くなりすぎると、発光層17に供給される正孔の量に対して過剰な電子を発光層に供給することとなり、発光効率が低下する。
【0064】
さらには、第1中間層18の膜厚D1に対して第2中間層19の膜厚D2が厚すぎると、第2金属が第1金属を過剰に遊離させて、第1金属のフッ化物が減少する結果、第1中間層18の不純物ブロック性が十分得られないことがある。
以上の結果から、本発明者らは、第1中間層18および第2中間層19は、それぞれの膜厚の好適な値の範囲が存在するのみならず、膜厚D1と膜厚D2との比率(D2/D1)にも好適な範囲が存在するのではないかと考え、膜厚D1に対する膜厚D2の比(D2/D1)を変えて、発光効率比がどのように変わるかを調べた。
【0065】
その結果を、図5(a)および(b)に示す。
図5(a)に示す試験体と、図5(b)に示す試験体とでは、正孔輸送層16に用いられた正孔輸送物質が異なるが、それ以外の基本的な構成は同じである。図5(a)の試験体の正孔輸送層16に用いられた正孔輸送物質Aは、図5(b)の試験体の正孔輸送層16に用いられた正孔輸送物質Bよりも、正孔供給能が高い。
【0066】
図5(a)は、膜厚比D2/D1を、1.25%,2.5%,5%,25%,37.5%の5種類に設定した試験体について、発光効率比をプロットしたグラフである。図5(b)は、膜厚比D2/D1=0%,1.25%,5%,12.5%,25%の5種類の試験体について、発光効率をプロットしたグラフである。
図5(b)に示すように、正孔供給能が比較的低い正孔輸送物質Bを用いた場合、膜厚比D2/D1が3〜5〔%〕の範囲に、発光効率比のピークが観察された。図5(a)に示すように、正孔供給能が比較的高い正孔輸送物質Aを用いた場合、膜厚比D2/D1が20%〜25%の範囲に、発光効率比のピークが観察された。
【0067】
そして図5(a),(b)のグラフから、膜厚比D2/D1が3〜25%の範囲において、発光効率比が好適である(即ち良好な発光効率が得られる)ことがわかる。
なお、上述したように、実際には、第1中間層18と第2中間層19の境界は、明確には分かれておらず、第1中間層18を形成する材料と、第2中間層19を形成する材料とが、製造の過程で多少混ざり合って形成されている場合もあると考えられる。そのような場合には、第1金属と第2金属の成分比(モル比)が、1〔%〕≦第2金属/第1金属≦10〔%〕であれば、良好な発光効率が得られると考えられる。
【0068】
[8.電子輸送層のドープ金属濃度と発光効率比]
図6は、電子輸送層20におけるドープ金属濃度の違いによる発光効率比の違いを示すグラフである。ここではドープ金属はBa(バリウム)であり、ドープ金属濃度は、5,20,40wt%の3つの値である。なお、各試験体における第1中間層18の膜厚D1はいずれも4nmであり、第2中間層19の膜厚D2はいずれも0.2nmである。
【0069】
図6に示すように、ドープ金属濃度が20wt%の試験体が最も高い発光効率比を示した。また、3つの試験体はいずれも発光効率比が1以上であり、発光効率基準値よりも良好な発光効率を示したことから、機能層21におけるドープ金属濃度は5〜40wt%の範囲内で良好な発光効率が得られることがわかる。
ただし、電子輸送層20におけるドープ金属(Ba)の濃度が20wt%のところで発光効率が最大値を示しているので、ドープ金属の濃度は、5〜40wt%の範囲の中でも、20wt%以下の範囲(5〜20wt%の範囲)内に設定することが好ましい。
【0070】
なお、本実施形態では、第1中間層18の上に、Ba単体からなる第2中間層19が存在しているため、電子輸送層20におけるドープ金属の濃度は低くても電子注入性を向上する効果が得られる。
さらに、電子輸送層20において第2金属をドープしなくても(すなわち電子輸送層20におけるドープ金属濃度が0であっても)、第2中間層19による電子注入性向上効果を得ることができる。
【0071】
[9.各層の光学膜厚と光共振器構造について]
図7(a)は、本実施形態にかかる有機EL素子の光共振器構造における光の干渉を説明する図である。当図では青色発光の発光層17を有する有機EL素子1(B)について示し、ここでは特に有機EL素子1(B)について説明する。
この有機EL素子1(B)の光共振器構造において、発光層17における正孔輸送層16との界面近傍から出射されて各層を透過していく。この各層界面において光の一部が反射されることによって光の干渉が生じる。その主なものを例示すると以下のような干渉が挙げられる。
【0072】
(1)発光層17から出射され対向電極22側に進行した光の一部が、対向電極22を透過して発光素子の外部に出射される第1光路C1と、発光層17から、画素電極13側に進行した光の一部が、画素電極13で反射された後、発光層17および対向電極22を透過して発光素子の外部に出射される第2光路C2とが形成される。そして、この直接光と反射光との干渉が生じる。
【0073】
図7(a)に示す光学膜厚L1は、第1光路C1と第2光路C2との光学距離の差に対応している。この光学膜厚L1は、発光層17と画素電極13との間に挟まれた正孔注入層15、正孔輸送層16の合計の光学距離(膜厚と屈折率との積、nm)である。
(2)発光層17から対向電極22側に進行した光の一部が、対向電極22で反射されて、さらに画素電極13で反射された後、発光素子の外部に出射される第3光路C3も形成される。
【0074】
そして、この第3光路C3を経由する光と、上記第1光路C1を経由する光との干渉が生じる。
第2光路C2と第3光路C3との光学距離の差は図7(a)に示す光学膜厚L2に対応する。この光学膜厚L2は、発光層17、第1中間層18、第2中間層19、機能層21の合計の光学距離である。
【0075】
特に、有機EL素子1(B)においては、対向電極22に金属層が含まれているので、対向電極が金属酸化物だけで構成される場合よりも、対向電極22で反射されやすいので、このような干渉も生じやすい。
(3)第3光路C3を経由する光と、上記第2光路C2を経由する光との干渉も生じる。
第1光路C1と第3光路C3との光学距離の差は、図7(a)に示す光学膜厚L3に対応する。光学膜厚L3は、上記光学膜厚L1と光学膜厚L2の和である(L3=L1+L2)。
【0076】
光学膜厚L3は、画素電極13と対向電極22との間に挟まれた正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、第1中間層18、機能層21の合計の光学距離である。
通常、共振器構造において、光取り出し効率が極大値を示す光学膜厚に調整される。上記の各光路を経由する光が、互いに干渉によって強め合って光取り出し効率が高まるように、発光層17と画素電極13との間の光学膜厚L1、発光層17と対向電極22との間の光学膜厚L2、そして、画素電極13と対向電極22との間の光学膜厚L3は設定される。
【0077】
これらの基本的な光干渉については、赤色の有機EL素子1(R)、緑色の有機EL素子1(G)においても同様に生じる。
ただし本発明者の考察によると、青色発光素子に関しては、光取り出し効率が極大値となる光学膜厚に設定すると、取り出される青色光の色度が目標色度に近いとはいえず、むしろ光取り出し効率が極大値をとる光学膜厚からずらして、色度y値の小さい青色光を取り出す光学膜厚を選択する方が好ましいといえる。
【0078】
すなわち、青色の有機EL素子1(B)の共振器構造において、発光層17と画素電極13との間の光学膜厚L1を変化させたり、発光層17と対向電極22との間の光学膜厚L2を変化させると、取り出される青色光の光取り出し効率が変化すると共に色度も変化する。
そこで、以下に詳細に説明するように、青色発光素子については、輝度とxy色度のy値との比(輝度/y値)が高い値を示すような光学膜厚に調整することとする。
【0079】
青色の有機EL素子1(B)から最終的に取り出す青色光の色度としては、xy色度のy値が0.08以下であることが一般的な色度目標とされている。
青色の有機EL素子1(B)から取り出される青色光の色度y値がこの目標色度から遠ければ、カラーフィルタ(CF)で大きく色度補正をする必要がある。その場合、光透過率の低いCFを用いざるを得ないので、もとの青色発光素子からの光取り出し効率が大きくても、CF通過後の光取り出し効率は大幅に低下してしまう。
【0080】
従って、色度y値が0.08程度以下の青色光を効率よく取り出すには、光取り出し効率を大きくすることだけではなく、色度Y値を小さくすることも考慮することが必要である。すなわち、青色発光素子における各層の光学膜厚を設定するときに、光取り出し効率と色度y値の両方を考慮して、光学膜厚を設定することが必要である。
本発明者等は、さらに検討を行った結果、上記特許文献1にも開示されているように、色度y値が0.08以下の青色光を効率よく取り出すには、輝度/y値が高い値を示すように各層の光学膜厚の設定を行えばよいことも見出した。
【0081】
このような考察に基づいて、青色の有機EL素子1(B)については、輝度/y値を指標とし、この指標が高い値を示すように光学膜厚L1,L2を設定することとする。以下にその具体例を光学シミュレーションに基づいて説明する。
(光学シミュレーション)
本実施形態に基づく一実施例にかかる青色の有機EL素子1(B)において、正孔輸送層16の膜厚、及び発光層17から機能層21までの合計膜厚を、それぞれ変化させたときに、素子から取り出される青色光の輝度/y値がどのように変化するかをシミュレーションで算出した。
【0082】
このシミュレーションは、マトリックス法を用いた光学シミュレーションとして知られている。
このシミュレーションにおいて用いた有機EL素子1(B)の層構造は、図7(a)の表に示す構造であって、正孔輸送層16の膜厚を5nm〜200nmの範囲で変えてシミュレーションを行った。
【0083】
図8のグラフにおいて、横軸は正孔輸送層16の膜厚を示し、縦軸は、発光層17〜機能層21の合計膜厚を示しており、各膜厚は5nm間隔で変化させている。
ここで、光学膜厚L1は、正孔輸送層16、正孔注入層15、画素電極13の金属酸化物層の光学膜厚の合計であって。図8の横軸にはその光学膜厚L1の値も表示している。
同様に、光学膜厚L2は、発光層17〜機能層21の合計光学膜厚であって、図8の縦軸にはその光学膜厚L2の値も表示している。
【0084】
なお、光学膜厚L3は、光学膜厚L1と光学膜厚L2の和なので、図8中に矢印L3で示す斜め方向に光学膜厚L3が増加するということもできる。
輝度/y値の最高値を1としたときの輝度/y値の相対値を、数値範囲(0.2、0.3〜0.4、0.5〜0.6、0.7〜0.8、0.9〜1.0)に分けてグラフ内にマッピングした。
【0085】
図8に示すグラフを見ると、正孔輸送層16の膜厚が20nm及び155nmを示す縦方向に伸長する破線と、発光層17〜機能層21の合計膜厚が、35nm及び160nmを示す横方向に伸長する破線とが交差する4つの箇所(a,b,c,d)に、輝度/y値のピーク(極大値)が明確に表れている。すなわち、正孔輸送層16の膜厚が20nmあるいは155nm、且つ、発光層17〜機能層21の合計膜厚が35nmあるいは160nmのときに、輝度/y値が極大値を示している。
【0086】
光学膜厚L1(正孔輸送層16の膜厚)に対する輝度/y値の関係を見ると、a点、b点は1次干渉ピーク、c点、d点は2次ピークに相当し、1干渉ピークでは、2次干渉ピークと比べて輝度/y値が高い値を示している。一方、光学膜厚L2(発光層17〜機能層21の合計膜厚)に対する輝度/y値の関係を見ると、a点、c点は1次干渉ピーク、b点、d点は2次ピークに相当し、1干渉ピークでは2次干渉ピークと比べて輝度/y値が高い値を示している。
【0087】
ここで、1次干渉のピークは、輝度/y値が極大値を示す光学膜厚の中で最小の光学膜厚に相当し、2次干渉のピークは、輝度/y値が極大値を示す2番目に小さい光学膜厚に相当する。
以上のことから、有機EL素子1(B)から輝度/y値の高い青色光を取り出すには、光学膜厚L1を干渉ピークに合せて設定するだけでなく、光学膜厚L2も干渉ピークに合せて設定することによって、より高い輝度/y値の青色光を取りせることがわかる。
【0088】
また、特に、光学膜厚L1に関する1次干渉ピークと、光学膜厚L2に関する1次干渉ピークとが重なったa点においては、高い輝度/y値が得られること(高い光共振効果が得られること)がわかる。
ここで、光学膜厚L2に関する干渉ピークが大きくなっているのは、対向電極22に金属層が含まれていることが要因と考えられるので、対向電極22に金属層が含まれていることが、光共振効果を高めるのに寄与しているということもいえる。
【0089】
光学膜厚L2と輝度/y値:
以下では、光学膜厚L2に着目し、光学膜厚L1を、1次干渉に相当する一定値に固定して、光学膜厚L2を変化させたときに、輝度/y値がどのように変化するかを考察する。
光学膜厚L1が1次干渉に相当するのは、図8に示すように、正孔輸送層16の膜厚20nmのときで、光学膜厚L1が76nmのときである。
【0090】
図9は、光学膜厚L1が1次干渉に相当するときに、発光層17〜機能層21の合計膜厚を5nm〜200nm(光学膜厚L2を9.5〜380nmに相当する)の範囲で変化させて、青色有機EL素子1(B)から取り出される青色光の輝度/y値をシミュレーションした結果を示すグラフである。
なお、光学膜厚L2は、横軸の発光層17〜機能層21の膜厚に屈折率を掛けた値の合計である。
【0091】
図9のグラフに示されるように、光学膜厚L1が小さい方から順に、1次干渉のピーク,2次干渉のピークが存在する。そして、1次干渉のピークaにおける輝度/y値の極大値は、2次干渉のピークbにおける輝度/y値の極大値よりも高い値である。
従って、青色有機EL素子において、機能層21の膜厚を、1次干渉のピークに相当する膜厚に設定すれば、素子から取り出される青色光の輝度/y値が高くなるので、色度が良好な青色光を効率よく取り出せることになる。
【0092】
特に、図9のグラフにおいて、1次干渉のピークに相当する発光層17〜機能層21の合計膜厚範囲の中で、2次干渉のピークの極大輝度/y値以上の輝度/y値を示す範囲Aに設定することは、色度が良好な青色光を効率よく取り出す上で好ましい。
この範囲Aは、発光層17〜機能層21の合計膜厚が29nm〜44nmの範囲であって、光学膜厚L2の範囲としては、29×1.9=55nmから44×1.9=84nmに相当する。
【0093】
従って有機EL素子1(B)から色度の良好な青色光を効率よく取り出すには、光学膜厚L1を1次干渉に相当する76nm付近(例えば光学膜厚L1が60〜90nmの範囲)に設定し、光学膜厚L2を55nm〜84nmの範囲に設定することが特に好ましい。
なお、図9には、光学膜厚L1が1次干渉ピークに相当するとき(正孔輸送層16の膜厚20nmのとき)について示したが、図8を参照すると、光学膜厚L1が2次干渉ピークに相当するとき(正孔輸送層16の膜厚155nm、光学膜厚L1が305.5nmのとき)も、輝度/Y値の値は全体的に低いものの、図9と同様の形状のグラフが得られることがわかる。
【0094】
従って有機EL素子1(B)から色度の良好な青色光を効率よく取り出す上で、光学膜厚L1を2次干渉に相当する305.5nm付近(例えば光学膜厚L1が290〜320nmの範囲)に設定し、光学膜厚L2を55nm〜84nmの範囲に設定することも好ましい。
このように、有機EL素子1(B)から色度の良好な青色光を効率よく取り出すには、光学膜厚L1を光学干渉に適した範囲に設定した上で、光学膜厚L2を57nm〜84nmの範囲に設定することが好ましい。
【0095】
以上のしたように、青色の有機EL素子1(B)については輝度/y値が高くなるように、光学膜厚L1、L2を設定することが好ましいことを説明したが、赤色の有機EL素子1(R)および緑色の有機EL素子1(B)においても、同様にして、各色の発光輝度が高くなるように、光学膜厚L1、L2を設定することが好ましい。
[10.有機EL素子の製造方法]
有機EL素子1の製造方法について、図10図13図14を参照しながら説明する。なお、図10図13は、有機EL素子1の製造過程を模式的に示す断面図であり、図14は、有機EL素子1の製造過程を示す模式工程図である。
【0096】
まず、図10(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成し(図14のステップS1)、基板11上に層間絶縁層12を成膜する(図14のステップS2)。層間絶縁層12の材料である層間絶縁層用樹脂には、本実施形態においては、ポジ型の感光性材料であるアクリル樹脂を用いる。層間絶縁層12は、層間絶縁層用樹脂であるアクリル樹脂を層間絶縁層用溶媒(例えば、PGMEA)に溶解させた層間絶縁層用溶液を基板11上に塗布し、その後、焼成することによって成膜する(図14のステップS3)。この焼成は、150℃以上210℃以下の温度で180分間行う。
【0097】
なお、図10図13の断面図および図14の工程図には示されないが、層間絶縁層12を形成するときに、パターン露光と現像を行うことによってコンタクトホールを形成する。層間絶縁層12は焼成後には硬くなるので、コンタクトホールの形成は、層間絶縁層12の焼成前に行う方が容易である。
そして、サブピクセル毎に、金属材料を真空蒸着法またはスパッタ法で厚み150nm程度に成膜して、図10(b)に示すように、画素電極13を形成する(図14のステップS4)。
【0098】
次に、画素電極13上に、隔壁層14の材料である隔壁層用樹脂を塗布し、隔壁材料層14bを形成する(図10(c))。隔壁層用樹脂には、例えば、ポジ型の感光性材料であるフェノール樹脂が用いられる。隔壁材料層14bは、隔壁層用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を画素電極13上に一様に塗布することによって形成する。
【0099】
次に、隔壁材料層14bに露光と現像を行うことで隔壁層14の形状にパターン形成し(図11(a)、図14のステップS5)、焼成することによって隔壁層14を形成する(図14のステップS6)。この焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。形成された隔壁層14によって、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。
【0100】
隔壁層14の形成工程においてさらに、隔壁層14の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理したり、プラズマ処理を施してもよい。隔壁層14の表面処理は、開口部14aに塗布するインクに対する接触角を調節したり、隔壁層14の表面に撥液性を付与する目的で行われる。
そして、マスク蒸着法やインクジェットによる塗布法によって、正孔注入層15の材料を成膜し、焼成することによって、図11(b)に示すように正孔注入層15を形成する(図14のステップS7)。
【0101】
次に、隔壁層14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを塗布し、焼成(乾燥)を経て、図11(c)に示すように正孔輸送層16を形成する(図14のステップS8)。
同様に、発光層17の材料を含むインクを塗布し、焼成(乾燥)することにより、図12(a)に示すように発光層17を形成する(図14のステップS9)。
【0102】
続いて、図12(b)に示すように、発光層17の上に、真空蒸着法などにより、第1中間層18を膜厚D1で成膜する(図14のステップS10)。発光層17は隔壁層14の上にも形成される。そして、図12(c)に示すように、第1中間層18の上に、真空蒸着法などにより、第2中間層19を膜厚D2で成膜する(図14のステップS11)。
次に、第2中間層19の上に、第2金属をドープしながら電子輸送層20の有機材料を真空蒸着法で成膜することによって、図13(a)に示すように電子輸送層20を形成する(図14のステップS12)。
【0103】
続いて、図13(b)に示すように、電子輸送層20の上に、金属材料等を、真空蒸着法、スパッタ法等で成膜することにより、対向電極22を形成する(図14のステップS13)。
そして、対向電極22の上に、SiN、SiON等の光透過性材料を、スパッタ法、CVD法等で成膜することによって、図13(c)に示すように封止層23を形成する(図14のステップS14)。
【0104】
以上の工程を経ることにより、有機EL素子1が完成すると共に、複数の有機EL素子1を備えた有機EL表示パネル100ができあがる。なお、封止層23の上にカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。
[11.有機EL表示装置の全体構成]
図15は、有機EL表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。当図に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを有している。駆動制御部200は、4つの駆動回路210〜240と制御回路250とから構成されている。
【0105】
なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
[実施の形態1のまとめ]
実施の形態1に係る有機EL素子1によれば、第1中間層18によって、発光層17側から機能層21や対向電極22への不純物が侵入するのを防止し、且つ、第2中間層19の働きで対向電極22側から発光層17への電子注入を促進するので、良好な保管安定性と発光特性を実現することができる。
【0106】
また第1中間層18の膜厚D1に対する第2中間層19の膜厚D2の比D2/D1が、3〔%〕≦D2/D1≦25〔%〕の関係を満たすので、良好な発光効率を実現することができる。
第2中間層19の膜厚D2は1nm以下であるため、第2中間層19における光吸収量を低く抑えて、良好な光取出し性を実現することができる。
【0107】
また、対向電極22に、金属材料からなる金属層が含まれているので、対向電極22を、ITOのような金属酸化物の材料だけで形成する場合と比べると、Agのような金属材料層が含まれることによって、そのシート抵抗を低減することができる。そして、対向電極22の導電性が向上することによって、有機EL表示パネル100の中央部に存在する有機EL素子1に電力を供給する際の電圧降下を低減することができる。
【0108】
また対向電極22に、金属材料の層が含まれることによって、対向電極22を金属酸化物材料だけで形成する場合と比べると、有機EL素子1における共振器構造のキャビティ効果を高めることができる。それによって、有機EL素子1における光取り出し効率を高めることができる。
なお、上記説明における膜厚の範囲や膜厚の割合についての条件は、必ずしも開口部14aで規定されるサブピクセルの全領域で満たさなくてもよく、サブピクセルの中央部での膜厚が、上記説明における膜厚の条件を満たしていればよい。
【0109】
<実施の形態2>
本実施形態にかかる有機EL素子は、上記実施の形態1で説明した有機EL素子1と同様の構成であるが、機能層21において、Ba単体の第2中間層19はなく、第1中間層18の上に、Baを含む電子輸送層20が直接形成されている。これは、以下のような点を考慮している。
【0110】
上記実施の形態1では、第1金属(Na)のフッ化物からなる第1中間層19の上に、第2金属(Ba)からなる第2中間層19を積層した構造とした。その場合、良好な発光特性を得るために、第2金属(Ba)からなる第2中間層の膜厚は薄く、2nm以下に形成することが求められる。これは、第1中間層18に対して第2中間層19の膜厚が厚すぎると、第1中間層中のNaFが必要以上に分解され、電子注入性が必要以上に高くなる結果、発光層中における正孔の供給量と電子の供給量とのバランスが崩れ、発光効率が低下するからである。
【0111】
しかし、蒸着で膜厚の薄い中間層を形成しようとすると、低いレートでゆっくり蒸着する必要があるので、成膜に長時間を要する上に、成膜時の制御も難しくなる。
それに加えて、第2中間層の膜厚を薄くしようとすると、均一な膜を形成することが難しく、層が形成されている部分と形成されていない部分とがまだらになることもある。
このような点を考慮して、本実施形態では、第1中間層18の上に、Baの単体からなる第2中間層を形成せずに、Baをドープした電子輸送層20を直接形成することとした。
【0112】
図7(b)は、実施の形態2にかかる青色の有機EL素子の層構造を示す。
本実施形態の有機EL素子においても、実施の形態1の有機EL素子1と同様に、第1中間層18を構成している第1金属のフッ化物(具体的にはNaF)が、発光層17側からの不純物の侵入を防止し、機能層21に含まれるBaが不純物と反応するのを防いで、機能層21の電子供給能の低下を抑制し、さらに、対向電極22が不純物によって劣化するのを防止する。
【0113】
また、本実施形態の有機EL素子では、第1中間層19の上にBa単体からなる第2中間層19は存在しないが、第1中間層19に隣接する電子輸送層20にドープされているBaが、第1中間層18中のNaFにおけるNaとFとの結合を切って、Naを遊離させる。そして遊離したNaが、電子輸送層20から発光層17への電子の移動をアシストするので、第1中間層18の電子注入特性が確保される。
【0114】
電子輸送層20におけるBaのドープ濃度としては、実施の形態1で図6のグラフに基づいて説明したように、本実施の形態でも、良好な発光効率を得る上で電子輸送層20におけるBaのドープ濃度5〜40wt%の範囲内に設定するのが好ましいと考えられる。
ただし、上記実施の形態1の有機EL素子では、電子輸送層20の直下に、第2金属(Ba)からなる第2中間層19が存在するので、電子輸送層20におけるドープ金属(Ba)の濃度を低く設定しても良好な発光効率が得られるのに対して、本実施の形態では第2中間層19が存在しないので、電子輸送層20におけるBaのドープ濃度は5〜40wt%の範囲の中でも、比較的高い濃度に設定することが好ましく、20〜40wt%の範囲が好ましいと考えられる。
【0115】
また、本実施形態では第2中間層19がなく、第1中間層18に隣接する領域におけるBaの量が実施の形態1と比べて少ないので、実施の形態1と比べてNaFの結合を切る働きも少ない。従って、実施の形態1と比べて、第1中間層18の膜厚を、より小さい膜厚に設定することが好ましく、第1中間層18の膜厚を2nm以下に設定することが好ましい。
【0116】
本実施形態の有機EL素子における各層の光学膜厚に関しては、第2中間層19が存在しない点を除いて、実施の形態1で説明した内容を適用することができる。
<変形例>
以上、実施の形態1,2について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、例えば以下に示すような変形例を実施することも出来る。
【0117】
(変形例1)上記実施形態における有機EL素子は、正孔注入層15、正孔輸送層16を備えていたが、これらのうち1つ以上の層を備えない構成の有機EL素子も同様に実施することができる。
(変形例2)さらに、電子注入層や、透明導電層などの層を含む構成とすることもできる。電子注入層を備える場合には、電子注入層と電子輸送層とをまとめて、機能層として扱ってもよい。また、電子輸送層を備えず、電子注入層を備える場合には、電子注入層を機能層として扱ってもよい。
【0118】
(変形例3)上記実施形態においては、有機EL素子1の基材111は、絶縁材料としてガラスを用いた例について説明したが、これに限られない。基材111を構成する絶縁材料として、例えば、樹脂やセラミック等を用いてもよい。基材111に用いる樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂等の絶縁性材料が挙げられる。基材111に用いるセラミックとしては、例えばアルミナが挙げられる。
【0119】
(変形例4)上記実施形態においては、トップエミッション型であって、画素電極13が光反射性の陽極であり、対向電極22が光透過性の陰極であったが、逆に、画素電極が光透過性の陰極で、対向電極が光反射性の陽極であるボトムエミッション型も実施できる。
その場合、例えば、層間絶縁層12上に陰極としての画素電極13および隔壁層14を形成し、開口部14a内において、画素電極13の上に、機能層21、第1中間層18、発光層17を順に形成し、その上に、正孔輸送層16、正孔注入層15を形成し、その上に陽極としての対向電極22を形成する。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の有機EL素子、有機EL表示パネルは、家庭用、公共施設、あるいは業務用の各種表示装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 有機EL素子
13 画素電極(陽極)
17 発光層
18 第1中間層
19 第2中間層
20 電子輸送層
21 機能層
22 対向電極(陰極)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15