(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかる表示パネルの製造方法は、有機エレクトロルミネッセンス素子を有する画素を含む表示パネルの製造方法であって、前記表示パネルは、複数の半導体素子を有し、前記半導体素子の上方に形成された平坦化膜の上に、前記画素ごとに下部電極を形成する工程と、前記下部電極の上に発光層を含む有機層を形成する工程と、前記有機層の上に、上部電極を形成する工程と、欠陥を含む前記半導体素子または前記下部電極を検出する工程と、前記平坦化膜の上または前記下部電極の上に、前記下部電極と前記上部電極とを接続するための凸部を形成する工程とを含む。
【0013】
本態様によると、半導体素子または下部電極など基板表面から深い位置に欠陥がありレーザーによってリペアすることが困難な場合であっても、下部電極と上部電極とを短絡して欠陥画素をリペアすることができる。
【0014】
また、前記画素ごとに形成された前記下部電極の少なくとも1つは欠陥を含み、前記凸部を形成する工程において、前記凸部を、欠陥を含む前記下部電極の上に形成してもよい。
【0015】
本態様によると、下部電極に欠陥がある場合に、下部電極の上に凸部を形成することにより、下部電極と上部電極とを凸部により短絡することができる。これにより、欠陥画素をリペアすることができる。
【0016】
また、前記複数の半導体素子のうちの少なくとも1つは欠陥を含み、前記凸部を形成する工程において、前記凸部を、欠陥を含む前記半導体素子の上方の前記平坦化膜の上に形成してもよい。
【0017】
本態様によると、半導体素子に欠陥がある場合に、半導体素子の上方の平坦化膜の上に凸部を形成することにより、凸部の上に形成される下部電極を凸部の形状に沿って形成することができる。これにより、凸部の形状に沿って形成された下部電極と上部電極とを短絡することができるので、欠陥画素をリペアすることができる。
【0018】
また、前記凸部を形成する工程において、導電性材料を塗布することにより前記凸部を形成してもよい。
【0019】
本態様によると、凸部を容易に形成することができると共に、上部電極と下部電極とを容易に短絡することができる。
【0020】
また、本発明にかかる表示パネルは、有機エレクトロルミネッセンス素子を有する画素を含む表示パネルであって、基板上に形成された複数の半導体素子と、前記複数の半導体素子の上方に形成された平坦化膜と、前記平坦化膜の上に前記画素毎に形成された下部電極と、前記下部電極の上に形成された発光層を含む有機層と、前記有機層の上に形成された上部電極と、前記平坦化膜の上または前記下部電極の上に形成され、前記下部電極と前記上部電極とを接続するための凸部とを備え、前記画素ごとに形成された前記下部電極の少なくとも1つは欠陥を含み、前記凸部は、欠陥を含む前記下部電極の上に形成されている。
【0021】
本態様によると、下部電極に欠陥がある場合に、下部電極の上に形成された凸部により下部電極と上部電極とを短絡することができる。これにより、欠陥画素をリペアすることができる。
【0022】
また、本発明にかかる表示パネルは、有機エレクトロルミネッセンス素子を有する画素を含む表示パネルであって、基板上に形成された複数の半導体素子と、前記複数の半導体素子の上方に形成された平坦化膜と、前記平坦化膜の上に前記画素毎に形成された下部電極と、前記下部電極の上に形成された発光層を含む有機層と、前記有機層の上に形成された上部電極と、前記平坦化膜の上または前記下部電極の上に形成され、前記下部電極と前記上部電極とを接続するための凸部とを備え、前記複数の半導体素子のうちの少なくとも1つは欠陥を含み、前記凸部は、欠陥を含む前記半導体素子の上方の前記平坦化膜または前記下部電極の上に形成されている。
【0023】
本態様によると、半導体素子に欠陥がある場合に、半導体素子の上方の平坦化膜の上に凸部を形成することにより、凸部の形状に沿って形成された下部電極と上部電極とを短絡することができる。これにより、欠陥画素をリペアすることができる。
【0024】
また、前記凸部は、導電性材料により形成されていてもよい。
【0025】
本態様によると、上部電極と下部電極とを容易に短絡することができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態にかかる表示パネルの製造方法および表示パネルについて図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、以下では、全ての図を通じて同一または相当する要素には同じ符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0027】
(実施の形態1)
以下に、本発明の実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態では、下部電極に欠陥を含む有機EL素子を備えた有機EL表示パネルを例として、本実施の形態にかかる表示パネルの製造方法および表示パネルについて説明する。
【0028】
はじめに、本発明の課題についてより具体的に説明する。
図1は、下部電極に欠陥を含む有機EL表示パネル1の断面概略図である。
【0029】
図1に示すように、有機EL表示パネル1は、基板10上に半導体層12と、平坦化膜14と、下部電極16と、有機層20と、上部電極22とを備えている。半導体層12には、複数の半導体素子13が形成されている。また、下部電極16は、複数の半導体素子13の少なくとも1つに接続されている。
【0030】
平坦化膜14上には隔壁18が形成され、隔壁18によって囲まれた各領域が画素となる。ここで、有機層20の下に形成された下部電極16は、通常、画素ごとに隔壁18によって分離されている。しかし、下部電極16を形成する際のパターニング不良等により、有機EL表示パネル2は、隣接する画素の下部電極16同士が導通したショート不良箇所16aを有することとなる。
【0031】
下部電極16にショート不良箇所16aが存在すると、隣接する画素は、各画素での発光状態は互いに影響し合うため、それぞれの所望の明るさで点灯することができないこととなる。これを解消するために、本実施の形態にかかる有機EL表示パネル2は以下のような構成をしている。
【0032】
[1−1.有機EL素子の構成]
以下、本実施の形態にかかる有機EL素子の構成について説明する。
図2は、本実施の形態にかかる有機EL表示パネル2の構成を示す断面概略図である。
【0033】
図2に示すように、有機EL表示パネル2は、基板10の上に、平坦化膜14と、下部電極16と、有機層20と、隔壁18と、上部電極22とを備えている有機機能デバイスである。なお、本開示において、隔壁18で分離された領域に配置された平坦化膜14、下部電極16、有機層30、上部電極22、薄膜封止層、封止用樹脂層および透明ガラスを、画素と称する。また、下部電極16と、有機層20と、上部電極22とを有機EL素子と称する。
【0034】
基板10は、例えば、サファイアで構成される基板である。
【0035】
基板10の上には、半導体層12が形成されている。半導体層12には、複数の半導体素子13が形成されている。半導体素子13は、例えば駆動用の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)である。
【0036】
半導体層12の上には、平坦化膜14が形成されている。平坦化膜14は、一例として、絶縁性の有機材料で構成されている。また、平坦化膜14において、半導体素子13の上方には、平坦化膜14の上面から半導体素子13まで貫通する貫通孔に導電性材料が充填されたビア15が形成されている。
【0037】
平坦化膜14の上には、ビア15を覆うように複数の下部電極16が形成されている。複数の下部電極16のそれぞれは、ビア15を介して複数の半導体素子13の少なくとも1つと接続されている。
【0038】
下部電極16は、正孔が供給される陽極、つまり、外部回路から電流が流れ込むアノードである。下部電極16は、平坦化膜14の上に画素ごとに形成されている。すなわち、有機EL表示パネル2において、下部電極16は、平坦化膜14の上に複数形成されている。下部電極16は、例えば、Al、あるいは銀合金APC(銀−パラジウム−銅合金)などからなる反射電極が平坦化膜14上に積層された構造となっている。この場合、反射電極の厚みは、一例として500nm以下である。なお、下部電極16は、例えばITO(Indium Tin Oxide)と銀合金APCなどからなる2層構造であってもよい。
【0039】
有機層20は、下部電極16および上部電極22間に電圧が印加されることにより発光する発光層を含んでいる。発光層の厚みは、一例として150nm以下である。
【0040】
発光層は、例えば、下層としてα−NPD(Bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl]benzidine)、上層としてAlq
3(tris−(8−hydroxyquinoline)aluminum)が積層された構造となっている。
【0041】
なお、有機層20は、発光層と下部電極16との間に正孔注入層を、発光層と上部電極22との間に電子注入層を備えていてもよい。この場合、正孔注入層、発光層、電子注入層を合わせて有機層20と称する。さらに、有機層20は、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を、電子注入層と発光層との間に電子輸送層を備えていてもよい。この場合、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を合わせて有機層20と称する。このとき、有機層20の厚さは、一例として、100nm以上200nm以下である。
【0042】
正孔注入層は、正孔注入性の材料を主成分とする層である。正孔注入性の材料とは、下部電極16側から注入された正孔を安定的に、または正孔の生成を補助して有機層20へ注入する機能を有する材料であり、例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、アニリンなどの化合物が使用される。
【0043】
電子注入層は、電子注入性の材料を主成分とする層である。電子注入性の材料とは、上部電極22から注入された電子を安定的に、または電子の生成を補助して有機層20へ注入する機能を有する材料であり、例えば、ポリフェニレンビニレン(PPV)が使用される。
【0044】
正孔輸送層とは、正孔輸送性の材料を主成分とする層である。正孔輸送性の材料とは、電子ドナー性を持ち陽イオン(正孔)になりやすい性質と、生じた正孔を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を併せ持ち、下部電極16から有機層20までの電荷輸送に対して適性を有する材料のことである。
【0045】
電子輸送層とは、電子輸送性の材料を主成分とする層である。電子輸送性の材料とは、電子アクセプター性を有し陰イオンになりやすい性質と、発生した電子を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を併せ持ち、上部電極22から有機層20までの電荷輸送に対して適性を有する材料のことである。
【0046】
上部電極22は、電子が供給される陰極、つまり、外部回路へ電流が流れ出すカソードである。上部電極22は、単一の層で構成されてもよいし、複数の層が積層された構成であってもよい。例えば、上部電極22は、透明金属酸化物であるITO層と金属層とが積層された構成であってもよい。この場合、ITO層は、Mg、Ag等の材料により形成される。金属層は、ITO層よりも屈折率の高い材料、例えば銀(Ag)、銀合金APC、マグネシウム(Mg)等の材料により形成される。これにより、金属層において、有機EL表示パネル2から出射される光が集光するように屈折されるので、有機EL表示パネル2の強キャビティ化を実現することができる。なお、ITO層の厚さは、一例として30nm以上90nm以下、金属層の厚さは、一例として15nm以上30nm以下であり、上部電極22の厚さは、一例として45nm以上120nm以下である。
【0047】
隔壁18は、有機層20を複数の画素に分離するための壁であり、例えば、感光性の樹脂からなる。
【0048】
また、有機EL表示パネル2は、上部電極22の上に、さらに、図示を省略した薄膜封止層と、封止用樹脂層と、透明ガラスとを備えている。
【0049】
薄膜封止層は、例えば、窒化珪素からなり、上述した有機層20や上部電極22を水蒸気や酸素から遮断する機能を有する。薄膜封止層を形成することにより、有機EL表示パネル2は、有機層20そのものや上部電極22が水蒸気や酸素にさらされることにより劣化(酸化)してしまうことを防止することができる。
【0050】
封止用樹脂層は、アクリルまたはエポキシ系の樹脂であり、上述した基板上に形成された平坦化膜14から薄膜封止層までの一体形成された層と、透明ガラスとを接合する機能を有する。
【0051】
透明ガラスは、発光パネルの発光表面を保護する基板であり、例えば、厚みが0.5mmである透明の無アルカリガラスである。
【0052】
また、有機EL表示パネル2は、さらに、隔壁18で分離された各画素を覆うように、透明ガラスの下面に、赤、緑および青の色調整を行うカラーフィルターを備える構成であってもよい。
【0053】
上述した下部電極16、有機層20および上部電極22の構成は有機EL表示パネル2の基本構成であり、このような構成により、下部電極16と上部電極22との間に適当な電圧が印加されると、下部電極16側から正孔、上部電極22側から電子がそれぞれ有機層20に注入される。これらの注入された正孔および電子が有機層20で再結合して生じるエネルギーにより、有機層20の発光材料が励起され発光する。
【0054】
さらに、
図2に示した有機EL表示パネル2では、製造工程において、複数の下部電極16の少なくとも1つに欠陥を含んでいる。具体的には、隣接する画素の下部電極16同士が接続され、短絡しているという欠陥を含んでいる。この短絡により、下部電極16が短絡されている画素同士が影響し合い、所望の明るさで点灯できない等の発光の不具合を生じる。この不具合を解消するために、有機EL表示パネル2は、欠陥を含む下部電極16の上に凸部24を備えている。
【0055】
凸部24は、例えば、インジウム等の導電性材料で構成されている。凸部24は、欠陥を含む下部電極16の上に凸状に形成され、凸部24が形成された下部電極16とその上方に形成された上部電極22とを電気的に接続している。凸部24により下部電極16と上部電極22とが短絡しているので、欠陥を含む下部電極16を含む画素では有機層20に電流は流れず、滅点となる。したがって、下部電極16が短絡されている画素同士が影響し合い、所望の明るさで点灯できない等の発光の不具合を解消することができる。
【0056】
[1−2.有機EL素子の製造方法]
以下、有機EL表示パネル2の製造方法について、
図3〜
図13を用いて説明する。
図3は、本実施の形態にかかる有機EL素子の製造工程を示すフローチャートである。
図4〜
図13は、本実施の形態にかかる有機EL素子の製造工程を示す断面概略図である。
【0057】
以下、
図3のフローチャートに沿って説明する。
【0058】
はじめに、
図4に示すように、基板10を用意する。基板10は、例えばサファイア基板である。
【0059】
次に、
図5に示すように、基板10の上に半導体素子13を含む半導体層12を形成する(ステップS10)。半導体素子13は、例えばTFTであり、半導体材料を所定の位置および形状に成膜およびパターニングすることにより、半導体素子13を形成する。
【0060】
次に、
図6に示すように、半導体層12の上に、絶縁性の有機材料からなる平坦化膜14を形成する(ステップS10)。その後、
図7に示すように、複数の半導体素子13の位置に、平坦化膜14の表面から半導体素子13まで貫通する貫通孔を形成する。さらに、貫通孔に導電性材料を充填する。これにより、ビア15が完成する。
【0061】
続けて、
図8に示すように、平坦化膜14上に下部電極16を形成する(ステップS11)。下部電極16は、成膜およびパターニングにより形成する。まず、スパッタリング法により平坦化膜14上にAlを300nm成膜する。続けて、フォトリソグラフィーとウエットエッチングにより、成膜したAlを所定の形状にパターニングする。このとき、複数の半導体素子13の少なくとも1つと接続する形状にAlをパターニングする。これにより、複数の下部電極16が完成する。
【0062】
ここで、
図8に示すように、上述した下部電極16を形成する際に、パターニング不良等により隣接する画素の下部電極16同士が導通したショート不良箇所16aが生じる場合がある。そこで、下部電極16の形成後、欠陥を含む下部電極16を検出する(ステップS12)。
【0063】
欠陥を含む下部電極16は、例えば、顕微鏡付き撮像装置により下部電極16の形成が終了した基板の平面を撮像し、撮像した画像から下部電極16同士が導通した箇所を目視により検出する。なお、欠陥を含む下部電極16は、撮像の目視に限らず、例えば、プローブを当接して電流が流れることを検出する等の電気的な方法であってもよい。
【0064】
次に、
図9に示すように、平坦化膜14および下部電極16の上に隔壁18を形成する。隔壁18は、隣接する下部電極16の間に露出した平坦化膜14を覆うように表面感光性樹脂を塗布することにより形成する。このとき、下部電極16の一部の上にも隔壁18が形成される。なお、上述したショート不良箇所16aでは平坦化膜14は露出していないので、ショート不良箇所16aの上に隔壁18を形成する。
【0065】
続けて、
図10および
図11に示すように、ショート不良箇所16aを有する下部電極16の上に凸部24を形成する(ステップS13)。凸部24は、例えば、隔壁18または有機層20を形成する際にこれらの材料を塗布するための塗布針26を使用して形成する。塗布針26により、ショート不良箇所16aを有する下部電極16の上の少なくとも一部に凸部24を構成する材料である導電性ペーストを滴下する。そして、滴下した導電ペーストを乾燥することにより、凸部24が完成する。
【0066】
さらに、
図12に示すように、隔壁18により、複数の画素に分離された下部電極16のそれぞれの上に、有機層20(20a、20bおよび20c)を形成する(ステップS14)。なお、凸部24が形成された下部電極16では、凸部24を覆うように下部電極16上に有機層20を形成する。ここでは、発光層の他に正孔注入層および電子注入層を有する有機層を例として説明する。
【0067】
まず、下部電極16の上に正孔注入層を形成する。正孔注入層を構成する材料として、例えば、キシレンよりなる溶剤にPEDOTを溶かしたPEDOT溶液を生成する。そして、生成したPEDOT溶液を下部電極16の上にスピンコートする。さらに、スピンコートしたPEDOT溶液を乾燥させることにより、正孔注入層が完成する。
【0068】
次に、正孔注入層の上に発光層を形成する。例えば、真空蒸着法により発光層を構成する材料であるα−NPDおよびAlq
3を正孔注入層の上に積層することにより、発光層が完成する。
【0069】
次に、発光層の上に電子注入層を形成する。電子注入層を構成する材料として、例えば、キシレンまたはクロロホルムよりなる溶剤にポリフェニレンビニレン(PPV)を溶かしたPPV溶液を生成する。そして、生成したPPV溶液を発光層の上にスピンコートする。さらに、スピンコートしたPPV溶液を乾燥させることにより、電子注入層が完成する。以上により、有機層20が完成する。なお、有機層20は、配置されるR、G、Bのカラーフィルターに合わせて、有機層20a、20bおよび20cごとに厚さを変更してもよい。
【0070】
続けて、
図13に示すように、有機層20の上に上部電極22を形成する(ステップS15)。上部電極22は、例えば、有機層20を形成した後、有機層20が形成された基板を大気曝露させることなく連続して形成する。ここでは、ITO層と金属層とが積層された構成の上部電極22を例として説明する。
【0071】
まず、有機層20の上にITO層を形成する。具体的には、有機層20を構成する電子注入層の上に、スパッタリング法によりITOを積層する。このときのITOの厚さは、例えば75nmである。また、このときのITO層は、アモルファス状態になっている。
【0072】
次に、ITO層の上に、金属層を形成する。具体的には、ITO層の上に、スパッタリング法により、金属層を構成する金属、例えばAgを積層する。このときの金属層の厚さは、例えば20nmである。これにより、上部電極22が完成する。
【0073】
さらに、上部電極22の上に、薄膜封止層、封止用樹脂層、カラーフィルターおよび透明ガラスを順に形成する。
【0074】
上述のような製造工程により、有機EL表示パネル2が完成する。
【0075】
なお、下部電極16、正孔注入層、有機層20、電子注入層、上部電極22の形成工程は、本実施の形態により限定されるものではない。
【0076】
また、上述した実施の形態では、下部電極16の形成後、欠陥を含む下部電極16を検出し、続けて隔壁18を形成し、その後凸部24を形成する工程としたが、下部電極16の不具合を検出した後、隔壁18を形成する前に凸部24を形成し、その後隔壁18を形成することとしてもよい。
【0077】
[1−3.効果等]
以上、本実施の形態にかかる表示パネルの製造方法によると、下部電極16に欠陥がある場合に、下部電極16の上に凸部24を形成することにより、下部電極16と上部電極22とを凸部24により短絡することができる。これにより、欠陥画素を滅点化することができる。したがって、レーザーを照射することが困難な場合であっても欠陥画素をリペアすることができる。
【0078】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、有機EL表示パネル2は、下部電極16に欠陥を含んでいたのに対し、本実施の形態にかかる有機EL表示パネルは、TFT13に欠陥を含んでいる点が異なっている。
【0079】
図14は、TFTに欠陥を含む有機EL表示パネル3の断面概略図である。
【0080】
図14に示すように、有機EL表示パネル3は、実施の形態1に示した有機EL表示パネル1と同様、基板10上に半導体層12と、平坦化膜14と、下部電極16と、有機層20と、上部電極22とを備えている。半導体層12には、複数の半導体素子33が形成されている。下部電極16は、複数の半導体素子33の少なくとも1つに接続されている。また、平坦化膜14上には隔壁18が形成され、隔壁18によって囲まれた各領域が画素となる。
【0081】
ここで、複数の半導体素子33には、製造工程においてパターニング不良等により所望の半導体素子33が形成されず、欠陥を含む半導体素子33aも存在する。したがって、欠陥を含む半導体素子33aが形成された画素は、所望の明るさで点灯することができないこととなる。これを解消するために、本実施の形態にかかる有機EL表示パネル4は以下のような構成をしている。
【0082】
[2−1.有機EL素子の構成]
以下、本実施の形態にかかる有機EL素子の構成について説明する。
図15は、本実施の形態にかかる有機EL表示パネル2の構成を示す断面概略図である。
【0083】
図15に示すように、有機EL表示パネル4は、基板10の上に、平坦化膜14と、下部電極16と、有機層20と、隔壁18と、上部電極22とを備えている有機機能デバイスである。これらの構成は、上述した実施の形態1に示した有機EL表示パネル2と同様であるため、詳細な説明は省略する。有機EL表示パネル4の構成により、下部電極16と上部電極22との間に適当な電圧が印加されると、下部電極16側から正孔、上部電極22側から電子がそれぞれ有機層20に注入される。これらの注入された正孔および電子が有機層20で再結合して生じるエネルギーにより、有機層20の発光材料が励起され発光する。
【0084】
ここで、
図15に示した有機EL表示パネル4では、製造工程において、複数の半導体素子33の少なくとも1つに欠陥を生じている。この欠陥は、例えば、半導体素子33のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極をパターニングにより形成したときのパターニング不良や部材の欠落などである。これにより、半導体素子33aは正常に動作しないので、この半導体素子33aを有する画素は、所望の明るさで点灯できない等の発光の不具合を生じる。
【0085】
この不具合を解消するために、有機EL表示パネル4は、欠陥を含む半導体素子33aが形成された画素における上部電極16と下部電極22とを短絡させて画素を滅点化する。画素を滅点化するために、有機EL表示パネル4は、欠陥を含む半導体素子33aが配置された画素における平坦化膜14の上に凸部34を備えている。
【0086】
凸部34は、例えば、インジウム等の導電性材料で構成されている。凸部34が形成された部分では、凸部34の上に形成される下部電極16は、凸部34の形状に沿って盛り上がった形状に形成される。これにより、下部電極16と、その上方に形成された上部電極22とは接続している。したがって、下部電極16と上部電極22との間は短絡し、短絡された下部電極16を含む画素では有機層20は発光せず、滅点となる。よって、平坦化膜14の上に凸部34を形成することにより、欠陥を含む半導体素子33aが形成された画素の発光の不具合を解消することができる。
【0087】
なお、凸部34は、導電性材料でなくてもよく、例えば、ポリイミド、アクリル、または、無機材料もしくは有機材料からなるペーストで形成してもよい。
【0088】
[2−2.有機EL素子の製造方法]
以下、有機EL表示パネル4の製造方法について、
図16〜
図26を用いて説明する。
図16は、本実施の形態にかかる有機EL表示パネル4の製造工程を示すフローチャートである。
図17〜
図26は、本実施の形態にかかる有機EL素子の製造工程を示す断面概略図である。
【0089】
以下、
図16のフローチャートに沿って説明する。
【0090】
はじめに、実施の形態1に示した有機EL表示パネル2と同様、
図17に示すように、基板10を用意する。続けて、
図18に示すように、基板10の上に半導体素子33を含む半導体層12を形成する(ステップS20)。このとき、パターニング不良等により欠陥を含む半導体素子33aが形成される場合がある。
【0091】
次に、
図19に示すように、半導体層12の上に、絶縁性の有機材料からなる平坦化膜14を形成する(ステップS20)。その後、
図20に示すように、複数の半導体素子33の位置に、平坦化膜14の表面から半導体素子33まで貫通する貫通孔を形成する。さらに、貫通孔に導電性材料を充填する。これにより、ビア15が完成する。
【0092】
ここで、欠陥を含む半導体素子33aを検出する(ステップS21)。欠陥を含む半導体素子33aは、例えば、顕微鏡付き撮像装置により半導体素子33を形成した基板の平面を撮像し、撮像した画像において、パターニング不良により欠陥を含む半導体素子33aを目視により検出する。なお、欠陥を含む半導体素子33aは、撮像の目視に限らず、例えば、プローブを当接して検出する等の電気的な方法であってもよい。
【0093】
続けて、
図21および
図22に示すように、欠陥を含む半導体素子33aが形成された画素の平坦化膜14の上に凸部34を形成する(ステップS22)。凸部34は、例えば、隔壁18または有機層20を形成する際にこれらの材料を塗布するための塗布針26を使用して形成する。塗布針26により、欠陥を含む半導体素子33aを有する下部電極16の上の少なくとも一部に凸部34を構成する材料である導電性ペーストを滴下する。そして、滴下した導電ペーストを乾燥することにより、凸部34が完成する。
【0094】
なお、凸部34は、導電性ペーストに代えて、ポリイミド、アクリル、または、無機材料もしくは有機材料からなるペーストで形成してもよい。
【0095】
続けて、
図23に示すように、平坦化膜14上に下部電極16を形成する(ステップS23)。下部電極16は、成膜およびパターニングにより形成する。平坦化膜14上に凸部34が形成された部分では、凸部34の上に下部電極16を形成する。
【0096】
まず、スパッタリング法により平坦化膜14および凸部34の上にAlを300nm成膜する。続けて、フォトリソグラフィーとウエットエッチングにより、成膜したAlを所定の形状にパターニングする。これにより、複数の下部電極16が完成する。
【0097】
次に、実施の形態1に示した有機EL表示パネル2と同様、
図24に示すように、平坦化膜14および下部電極16の上に隔壁18を形成する。さらに、
図25に示すように、隔壁18により、複数の画素に分離された下部電極16のそれぞれの上に、有機層20a、20bおよび20cを形成する(ステップS24)。なお、有機層20は、発光層の他に正孔注入層および電子注入層を有する構成であってもよい。
【0098】
続けて、
図26に示すように、有機層20の上に上部電極22を形成する(ステップS25)。上部電極22は、ITO層と金属層とが積層された構成であってもよい。
【0099】
さらに、上部電極22の上に、薄膜封止層、封止用樹脂層、カラーフィルターおよび透明ガラスを順に形成する。
【0100】
上述のような製造工程により、有機EL表示パネル4が完成する。
【0101】
なお、下部電極16、正孔注入層、有機層20、電子注入層、上部電極22の形成工程は、本実施の形態により限定されるものではない。
【0102】
また、上述した実施の形態では、欠陥を含む半導体素子33aの検出を半導体素子33の上に平坦化膜14を形成しさらにビア15を形成した後としたが、これに限らず、半導体素子33の形成直後、または、平坦化膜14の製造直後としてもよい。
【0103】
また、上述した実施の形態では、平坦化膜14の上に凸部34を形成する構成としたが、凸部34は平坦化膜14の上に限らず、下部電極16と上部電極22とを短絡することができる構成であればどの位置に形成してもよい。例えば、実施の形態1に示した凸部24と同様に、上部電極16の上に形成してもよい。
【0104】
[2−3.効果等]
以上、本実施の形態にかかる表示パネルの製造方法によると、半導体素子33に欠陥がある場合に、欠陥を含む半導体素子33aの上方の平坦化膜14の上に凸部34を形成することにより、凸部34の上に形成される下部電極16を凸部34の形状に沿って形成することができる。これにより、凸部34の形状に沿って形成された下部電極16と上部電極22とを短絡することができる。したがって、欠陥画素を滅点化することができる。よって、レーザーを照射することが困難な場合であっても欠陥画素をリペアすることができる。
【0105】
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形を行ってもよい。
【0106】
例えば、上述した実施の形態では、下部電極を陽極、上部電極を陰極とする構成について示したが、下部電極を陰極、上部電極を陽極とする構成であってもよい。また、有機EL素子の構成である平坦化膜、陽極、正孔注入層、発光層、隔壁、電子注入層、陰極、薄膜封止層、封止用樹脂層、透明ガラスは、上記した実施の形態に示した構成に限らず、材料や構成、形成方法を変更してもよい。例えば、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層があってもよいし、電子注入層と発光層との間に電子輸送層があってもよい。また、隔壁で分離された各画素を覆うように、透明ガラスの下面に、赤、緑および青の色調整を行うカラーフィルターを備える構成であってもよい。
【0107】
また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。例えば、
図27に示すような、本発明にかかる有機EL素子を備えた薄型フラットテレビシステムも本発明に含まれる。