(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ドットパターンのドットは、波長が異なる複数種類の前記所定の波長光を吸収する特性または該所定の波長光を吸収する特性および可視光透過特性を有するインクで印刷された請求項7に記載のシート。
前記ドットパターンには座標値または座標値およびコード値が符号化され、該座標値により前記光学読み取り装置によりドットパターンを読み取った位置が認識される請求項7から請求項15のいずれか1項に記載のシート。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の情報入力補助シートの指向性反射層に関する第1から第12までの実施形態について
図1から
図15を参照して説明し、本発明の情報入力補助シートのドットパターン層に関する第11および第12までの実施形態について
図14から
図25を参照して説明する。
【0045】
さらに、本発明の情報入力補助シートの指向性反射層の中で赤外線を拡散反射する赤外線拡散層に関する第1から第8までの実施形態について
図1から
図11を参照して説明し、本発明の情報入力補助シートの指向性反射層の中で赤外線を再帰性反射する赤外線再帰性反射層に関する第11から第12までの実施形態について
図14から
図15を参照して説明する。
【0046】
(グリッドシートの構成)
図1(a)は、本発明のグリッドシートをスキャナによって読み取る様子を示した断面図であり、
図1(b)は、レンズによって読み取られた撮像画像を示す図である。
図1(a)に示すように、グリッドシート1は、スキャナが照射する赤外線IRによってディスプレイの表示に関連した情報を読み取るために、スキャナ側から、保護用透明シート(保護層)2と、赤外線(図中、符号「IR」を指し、以下、「赤外線IR」とも記載する。赤外線の波長を特定する場合は「赤外線IR〜」と記す。)を吸収する特性材料を含有するドット3が印刷されたドットパターン層4(保護層2の裏側にドットパターンを印刷)と、ドットパターン層4に隣接して設けられ、塗布されたポリマー分子9によって赤外線を選択してその反射光をグリッドシート1の法線に対する入射角αと異なる反射角β方向に拡散反射する赤外線拡散層5と、赤外線拡散層5に隣接して設けられ、赤外線の反射光をグリッドシート1の法線に対する入射角と同じ反射角方向に鏡面反射するとともに、可視光を透過させる赤外線反射層6と、を備える。赤外線拡散層5を赤外線拡散反射層としてもよい。赤外線拡散層5が十分に赤外線を反射できれば、赤外線反射層6は必要なくなる。
【0047】
保護用透明シート2は、ビニール、エンビペット、ポリプロピレン等、可視光線および赤外線を透過する材料で生成されている。スキャナによるドット3へのタッチを繰り返すと、ドット3からなるドットパターン7が磨耗して読み取れなくなることがあるので、ドットパターン7を長期間に渡って正確に読み取らせるため、保護用透明シート2を設けてドット3の磨耗や汚れの付着を防いでいる。ドットパターンを読み取り面の反対側に印刷すれば、完全にドットを保護できる。
【0048】
ドットパターン層4には、赤外線を吸収するカーボンインク等の特性材料を含有するドット3を所定の情報を表す規則に従って印刷したドットパターン7が設けられている。
【0049】
赤外線拡散層5は、支持体8と、支持体8に塗布されたポリマー分子9を有する。保護用透明シート2を透過した赤外線は、赤外線拡散層5に塗布されたポリマー分子9によってグリッドシート1の法線に対する入射角αと異なる反射角β方向に拡散反射される。赤外線拡散層5が赤外線反射層6を兼用する場合は、ビニール、エンビペット、ポリプロピレン等、可視光線を透過する材料で生成された蒸着用透明シートに、赤外線を拡散反射するポリマー分子9を蒸着させる。なお、支持体8を必要としない成型方法もある。
【0050】
赤外線反射層6は、ビニール、エンビペット、ポリプロピレン等、可視光線を透過する材料で生成された蒸着用透明シートに、赤外線を反射するポリマー分子9が蒸着されている。赤外線拡散層5を透過した赤外線は、赤外線反射層6に蒸着されたポリマー分子9によってグリッドシート1の法線に対する入射角と同じ反射角方向に鏡面反射される。赤外線反射層6は、可視光を透過させ、ディスプレイからの赤外線を遮断する。
【0051】
(スキャナの構成)
スキャナは、ディスプレイの表示画面上に配置されたグリッドシート1に赤外線を照射する2つのIR−LEDと、2つのIR−LEDの間に設けられ、赤外線の反射光を受光するレンズと、レンズの受光した反射光の所定波長成分をカットするIRフィルターと、赤外線をグリッドシート1に均一に照射するためのディフューザーと、撮像素子であるC−MOSセンサを備える。IR−LEDは、照射される赤外線が十分であれば1つでもよい。
【0052】
スキャナのC−MOSセンサは、グリッドシート1に照射した赤外線の反射光を撮影する。ドットパターン7は赤外線を吸収する特性材料を含むインクで印刷されているため、C−MOSセンサの撮像画像では、赤外線が吸収されて戻ってこないドット3の部分のみ黒く撮影される。
【0053】
IR−LEDから照射された赤外線は、赤外線拡散層5で拡散反射され、赤外線拡散層5を透過した赤外線は、赤外線反射層6で鏡面反射される。スキャナのレンズは、赤外線拡散層5の拡散反射によって、
図1(b)に示すように全ての撮影領域の赤外線IRの反射光を受光することができる。赤外線反射層6の鏡面反射によってグリッドシート1の法線に対する明るさが補われて明るく鮮明なドットパターン7が撮影され、ドットコートの正確な解析が可能となる。赤外線拡散層5が十分に赤外線を反射でき明るく鮮明なドットパターン7が撮影されれば、赤外線反射層6を兼用できる。
【0054】
なお、保護用透明シート2を設けることは必須ではないが、保護用透明シート2に隣接してドットパターン層4、ドットパターン層4に隣接して赤外線拡散層5、赤外線拡散層5に隣接して赤外線反射層6を設けるときは、赤外線反射層6を設けることも必須ではない。赤外線反射光IRの明るさが不足する場合は、IR−LEDの照度を上げて対応してもよい。
【0055】
図2(a)は、本発明のグリッドシートをスキャナによって斜めに読み取る様子を示した断面図であり、
図2(b)は、レンズによって読み取られた撮像画像を示す図である。
図2(a)では、グリッドシート1に赤外線反射層6を設けず、直接、赤外線拡散層5をディスプレイの表示画面上に配置している。
【0056】
図2(b)に示すように、IR−LEDから照射された赤外線は、赤外線拡散層5で拡散反射されるので、スキャナのレンズは、スキャナのグリッドシート1に対する接地角によらず、全ての撮影領域の赤外線反射光を受光することができる。ただし、スキャナを傾ける角度によって、傾けた側は明るいが逆側は暗くなり赤外線反射光を受光できない場合もある。
【0057】
[第1の実施形態]
(赤外線拡散層のセル)
図3は、本発明の第1から第6の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層のセルを模試的に示す投影図である。
図3に示すように、赤外線拡散層5のセル10は、例えば、ポリマー分子9が一方向にそろった分子配列を有する層が複数積層されたコレステリック規則性を有する液晶ポリマーで、隣接する層ごとに少しずつねじれた螺旋構造を有する。
【0058】
コレステリック規則性を有する液晶であれば、カイラルネマチック液晶またはコレステリック液晶等でもよいし、ネマティック規則性またはスメクティック規則性を呈する液晶材料にカイラル剤等を加えてねじれを形成してもよい。
【0059】
セル10は、ポリマー分子9の螺旋のピッチP1と液晶の平均屈折率R1の積によって決定される波長の赤外線IRの入射光だけを螺旋構造の螺旋軸SAに対して対象に選択して反射する。選択された波長が赤外線なので、液晶は透明になる。
【0060】
なお、セル10の形状は
図3に示すような円柱または角柱などの柱状に限定されない。円盤状、ラクビーボール型の楕円体、アンパン型、またはラクビーボール型とアンパン型を組み合わせもの等であってもよい。
【0061】
(赤外線拡散層)
図4は、本発明の第1の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層の拡散反射について模式的に説明する断面図である。
図4に示すように、第1の実施形態のグリッドシート1の赤外線拡散層5は、赤外線IRを選択反射するように同方向にポリマー分子9が積層された複数のセル10のグリッドシート1平面に対する配向角度を不規則に変えて配置したもので、例えば、液晶ポリマーに表面のレベリング性・フロー性などを向上する目的で使用されるレベリング剤等の表面調整剤を添加し、熱および振動を加えて生成したものである。
【0062】
赤外線拡散層5は、各セル10のグリッドシート1平面に対する配向角度を変えて配置してあるので、螺旋軸SAの向きがグリッドシート1と垂直に配置されないセル10を多く含むことになり、IR−LEDから照射された赤外線は、セル10のポリマー分子9によってグリッドシート1に対する入射角αと異なる反射角β方向に反射される。赤外線拡散層5の各セル10の螺旋軸SAの向きが隣り合うセル10で不規則に変わるので、赤外線の反射光は拡散して反射する。
【0063】
赤外線拡散層5の拡散反射により、スキャナのレンズは、IR−LEDから照射された赤外線の全ての撮影領域の反射光を受光することができるため、
図1(b)に示すように、
図24及び
図25に示すような赤外線反射光を受光できない受光不能領域はなくなる。ただし、スキャナを傾ける角度によって、傾けた側は明るいが逆側は暗くなり赤外線反射光を受光できない領域もある。
【0064】
ドットパターン層4のドット3の大きさは約50μmであり、赤外線拡散層5のセル10の大きさは数nmから数十nmなので、ドットパターン層4の1個のドット3に対応する赤外線拡散層5のセル10のポリマー分子19は、数百個から数千個となる。数百個から数千個のセル10のポリマー分子19の拡散反射により1個のドット3の画像を撮影しているので、μレベルの極微細な領域の赤外線反射光をnレベルで確実に読み取ることができる。
【0065】
(赤外線反射層)
赤外線反射層6は、赤外線を選択反射するように同方向にポリマー分子9が積層されたセル10の螺旋軸SAの向きがグリッドシート1と垂直になるよう複数のセル10を配向して形成される。IR−LEDから照射された赤外線は、赤外線拡散層5で拡散反射され、赤外線拡散層5を透過した赤外線IRは、赤外線反射層6で鏡面反射される。赤外線拡散層5が十分に赤外線を反射でき明るく鮮明なドットパターン7が撮影されれば、赤外線反射層6を兼用できる。
【0066】
第1の実施形態によれば、ポリマー分子9が同方向に積層された複数のセル10の配向角度を不規則に変えて配置したので、スキャナのレンズは、全ての撮影領域の赤外線の反射光を受光することができる。ただし、スキャナを傾ける角度によって、傾けた側は明るいが逆側は暗くなり赤外線反射光を受光できない領域もある。
【0067】
[第2の実施形態]
(赤外線拡散層)
図5は、本発明の第2の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層の拡散反射について模式的に説明する断面図である。
図5に示すように、第2の実施形態のグリッドシート21の赤外線拡散層25は、赤外線を選択反射するように同方向にポリマー分子9が積層された複数のセル10のグリッドシート21平面に対する配向角度を、規則的に変化させて配置したものである。
【0068】
IR−LEDから赤外線が照射されるとき、赤外線拡散層25のセル10のグリッドシート21平面に対する配向角度が規則的に変化しているので、螺旋軸SAの向きも規則的に変化し、セル10のポリマー分子9によって反射される赤外線は、nレベルで粗密を繰り返して均等に拡散反射される。
【0069】
赤外線拡散層25の拡散反射により、スキャナのレンズは、スキャナのグリッドシート21平面に対する接触角によらず、IR−LEDから照射された赤外線の全ての撮影領域の反射光を受光することができる。スキャナを傾けた場合の傾斜外方向の領域からの赤外線反射光の明るさが不足する場合、または、スキャナの外部から赤外線を照射する場合において、撮影領域の周辺領域からの赤外線反射光の明るさが不足する場合は、IR−LEDの照度を上げるようにする。IR−LEDが所定の間隔をおいて所定の時間照射する場合は、照射時間を長くしてもよい。その他の方法としては、IR−LEDに供給する電流を上げるか、撮像時のゲインを上げてもよい。
【0070】
第2の実施形態によれば、ポリマー分子9が同方向に積層された複数のセル10の配向角度を規則的に変化させて配置したので、赤外線の反射光はnレベルで粗密を繰り返すが、スキャナのレンズは全ての撮影領域において拡散反射された赤外線の反射光を受光することができる。スキャナを傾けた場合の傾斜外方向の領域や、撮影領域の周辺領域は、入射する光量が減少するため、受光する赤外線の反射光も減少する。
【0071】
[第3の実施形態]
(赤外線拡散層)
図6は、本発明の第3の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層の拡散反射について模式的に説明する断面図である。
図6に示すように、第3の実施形態のグリッドシート31の赤外線拡散層35は、選択反射する赤外線の波長がIR1、IR2、IR3と異なる複数のセル10、20、30の配向角度を不規則に変えて配置したものである。
【0072】
セル10、20、30は、セル10、20、30のポリマー分子19、2909の螺旋のピッチと液晶の平均屈折率の積を変えることによって、例えば、セル10が選択反射する赤外線IR1を840nm近傍、セル20が選択反射する赤外線IR2を850nm近傍、セル30が選択反射する赤外線IR3を860nm近傍、で赤外線反射ピーク波長とすることができる。これで、赤外線IR1〜IR2〜IR3の間の赤外線も反射できる(
図6(b))。ここでは、IR1からIR3としたが、さらにその間を分割してセル20が選択反射する波長の赤外線を選択反射することもできる。
【0073】
赤外線反射層36は、同じく赤外線IR1、IR2、IR3を選択反射するポリマー分子19、2909が同方向に積層されたセル10、20、30の螺旋構造の螺旋軸SA1、SA2、SA3の向きがグリッドシート31と垂直になるように複数のセル10、20、30を順番に配置して形成される。
【0074】
赤外線拡散層35のセル10、20、30は、それぞれ配向角度を不規則に変えて配置してあるので、螺旋軸SA1、SA2、SA3の向きがグリッドシート31と垂直に配置されないセル10、20、30を多く有する。赤外線拡散層35は、螺旋軸SA1、SA2、SA3の向きがグリッドシート31と垂直に配置されないセル10のポリマー分子19、2909によってIR−LEDから照射された赤外線IR1、IR2、IR3を入射角αと異なる反射角β方向に拡散反射する。
【0075】
例えば、IR−LEDから赤外線IR1が照射されるとき、照射された赤外線IR1は、セル10のポリマー分子19によって拡散反射されるが、セル20およびセル30を透過する。IR−LEDから赤外線IR2が照射されるとき、照射された赤外線IR2は、セル20のポリマー分子29によって拡散反射されるが、セル10およびセル30を透過する。IR−LEDから赤外線IR3が照射されるとき、照射された赤外線IR3は、セル30のポリマー分子39によって赤外線IR3が拡散反射されるが、セル10およびセル20を透過する。各IR−LEDの赤外線反射ピークが隣接している場合は、他の波長のセル20において一部の赤外線が透過し、一部が拡散反射される。
【0076】
IR−LEDから赤外線IR1から赤外線IR3までの波長帯の赤外線が照射されるとき、セル10のポリマー分子19が赤外線IR1を、セル20のポリマー分子29が赤外線IR2を、セル30のポリマー分子39が赤外線IR3を選択して拡散反射する。
【0077】
IR−LEDから照射された赤外線IR1から赤外線IR3までの波長の赤外線は、赤外線拡散層35で拡散反射され、赤外線拡散層35を透過した赤外線IR1から赤外線IR3は、赤外線反射層36で鏡面反射されるので、スキャナのレンズは、IR−LEDが照射した赤外線IR1から赤外線IR3までの波長の赤外線を受光し、C−MOSセンサは、明るく鮮明なドットパターンを撮影することができる。ただし、スキャナを傾ける角度によって、傾けた側は明るいが逆側は暗くなり赤外線反射光を受光できない領域もある。
【0078】
なお、赤外線反射層36を設けることは必須ではなく、赤外線反射光IRの明るさが不足する場合は、赤外線拡散層5が十分に赤外線を反射でき明るく鮮明なドットパターン7が撮影されれば、赤外線反射層6を兼用できる。また、IR−LEDの照度を上げて対応してもよい。IR−LEDが所定の間隔をおいて所定の時間照射する場合は、その間隔を短くするか、および/または照射時間を長くしてもよい。
【0079】
[第4の実施形態]
(赤外線拡散層)
図7は、本発明の第4の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層の拡散反射について模式的に説明する断面図である。
図7に示すように、第4の実施形態のグリッドシート41の赤外線拡散層45は、選択反射する赤外線の波長がIR1、IR2、IR3と異なる複数種類のセル10、20、30の配向角度を鏡面反射するセルの割合が1/3になるように規則性を保ちながら、かつセル10、20、30が順番に鏡面反射するように配置したものである。ここでは、IR1からIR3としたが、さらにその間を分割してセル20が選択反射する波長の赤外線を選択反射することができる。
【0080】
鏡面反射するセルの割合が1/3になるように、かつセル10、20、30が順番に鏡面反射するように配置しているので、赤外線IR1、IR2、またはIR3が単独で照射されるとき、および、IR−LEDから赤外線IR1から赤外線IR3までの波長帯の赤外線が照射されるとき、グリッドシート41の法線方向に対して最低限の赤外線IR1、IR2、またはIR3の反射光が保障される。
【0081】
[第5の実施形態]
(赤外線拡散層)
図8は、本発明の第5の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層の拡散反射について模式的に説明する断面図である。
図8に示すように、第5の実施形態のグリッドシート51の赤外線拡散層55は、選択反射する赤外線の波長がIR1、IR2、IR3と異なる複数種類のセル10、20、30の配向角度を鏡面反射するセルの割合が1/2になるように規則性を保ちながら、かつセル10、20、30が順番に鏡面反射するように配置したものである。ここでは、IR1からIR3としたが、さらにその間を分割してセル20が選択反射する波長の赤外線を選択反射することができる。
【0082】
鏡面反射するセルの割合が1/2になるように、かつセル10、20、30が順番に鏡面反射するように配置しているので、赤外線IR1、IR2、またはIR3が単独で照射されるとき、および、IR−LEDから赤外線IR1から赤外線IR3までの波長帯の赤外線が照射されるとき、グリッドシート51の法線方向に対する赤外線IR1、IR2、IR3の反射光の量が第5の実施形態よりより多くなる。
【0083】
[第6の実施形態]
(赤外線拡散層)
図9は、本発明の第6の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層の拡散反射について模式的に説明する断面図である。
図9に示すように、第6の実施形態のグリッドシート61の赤外線拡散層65は、赤外線IRを反射するセル10を粉砕して、セル10と同じ屈折率を有する溶剤68に混合して支持体8に塗布したものである。粉砕されたセル10は、溶剤68に混入された際に、様々な方向を向いて配置され、当該様々な方向を向いて配置された状態が当該溶剤68中で維持される。
【0084】
粉砕されたセル10個々の表面はnレベルで様々な方向を向いて配置されることによって赤外線IRが拡散反射される。溶剤68の屈折率をセル10と同じ屈折率にすることにより、様々な方向に表面が向くセル10の表面で可視光が全反射を生じて白濁することを避け、透明シートとして使用することができる。
【0085】
[第7の実施形態]
(赤外線拡散層のセル)
図10は、本発明の第7の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層のセルを模試的に示す投影図である。
図10に示すように、セル70は、例えば、一方向にそろった分子配列を有するポリマー分子79が複数斜めになった状態で積層されたネマティック性を有する液晶ポリマーで、隣接する層ごとに少しずつねじれた螺旋構造を有する。
【0086】
セル70は、ポリマー分子79の螺旋のピッチP2と液晶の平均屈折率R2の積によって決定される波長の赤外線IR4の入射光だけを柱状のセル70に対して斜めに形成される螺旋構造の螺旋軸SA4に対して対象に選択反射する。選択された波長が赤外線なので、液晶は透明になる。
【0087】
[第8の実施形態]
(赤外線拡散層)
図11は、本発明の第8の実施形態のグリッドシートの赤外線拡散層の拡散反射について模式的に説明する断面図である。
図11に示すように、第8の実施形態のグリッドシート81の赤外線拡散層85は、赤外線IR4を選択反射するように斜め同方向にポリマー分子79が積層された複数の柱状のセル70がグリッドシート81に沿って並行になるように配置される。
【0088】
赤外線拡散層85は、螺旋軸SA4の向きがグリッドシート81と垂直に配置されないセル70を多く含むことになる。IR−LEDから照射された赤外線IR1は、セル70のポリマー分子79によってグリッドシート81に対する入射角αと異なる反射角β方向に反射される。赤外線拡散層85の各セル70の螺旋軸SA4の向きが隣り合うセル70で不規則に変わるので、赤外線IR4の反射光は拡散して反射される。
【0089】
赤外線拡散層85の拡散反射により、スキャナのレンズは、スキャナのIR−LEDから照射された赤外線IR4の全ての撮影領域の反射光を受光することができる。
【0090】
赤外線拡散層85の拡散反射により、スキャナのレンズは、スキャナのグリッドシート81平面に対する接触角によらず、IR−LEDから照射された赤外線IR4の全ての撮影領域の反射光を受光することができる。スキャナを傾けた場合の傾斜外方向の領域からの赤外線反射光の明るさが不足する場合、または、スキャナの外部から赤外線を照射する場合において、撮影領域の周辺領域からの赤外線反射光の明るさが不足する場合は、IR−LEDの照度を上げるようにする。IR−LEDが所定の間隔をおいて所定の時間照射する場合は、照射時間を長くしてもよい。その他の方法としては、IR−LEDに供給する電流を上げるか、撮像時のゲインを上げてもよい。
【0091】
[第9の実施形態]
(赤外線再帰性反射層)
図12は、本発明の第9の実施形態のグリッドシートの赤外線再帰性反射層の再帰性反射について模式的に説明した断面図である。
図12に示すように、第9の実施形態のグリッドシート91の赤外線再帰性反射層95は、透明基材98aと透明基材98bとの間に、両面に設けられた中間層96aおよび中間層96bを介して底部の頂点が直角を有する三角錐形状の凹部92が二次元配列された表面層90aと裏面が平坦に形成された透光体90bを有する光学機能層90が設けられる。
【0092】
光学機能層90の凹部92は、ほぼ同一の形状とサイズで形成されるが、領域毎にまたは周期的に頂点の角度またはサイズを微細に変えるようにしてもよい。例えば、三角錐形状の凹部92の頂点間の間隔を数十μm〜数百μm、凹部92の深さを10μm〜100μmとし、凹部92の深さ寸法/平面寸法を例えば0.5以上とする。
【0093】
透光体90bは、透明な樹脂材料で形成されており、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化樹脂などで形成されている。特に、透光体90bに好ましいポリマーにとしては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート及び多官能アクリレート又はエポキシ等の架橋アクリレート並びにアクリ化ウレタンと一官能及び多官能モノマーとの配合物などがある。透光体90bは、光学機能層90を支持する支持体としての機能を有し、所定厚みのフィルム状、シート状あるいはプレート状に形成される。
【0094】
表面層90aは、赤外線帯域の光を反射し、可視光帯域の光を透過させる光学多層膜を含み、赤外領域において反射率の高い金属層と、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層または透明導電膜とを、交互に積層してなる積層膜で形成される。
【0095】
赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする。また、金属層の材料として合金を用いる場合には、金属層は、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgCu、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCagPdMg、AgPdFeなどを用いる。
【0096】
光学透明層は、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。透明導電膜は、例えば、酸化亜鉛、インジウムドープ酸化錫などを主成分とする。
【0097】
表面層90aは、無機材料からなる薄膜の多層膜に限定されるものではなく、高分子材料からなる薄膜や高分子中に微粒子などを分散した層が積層された膜でもよい。表面層90aは、透光体90b上に赤外線帯域の光を反射できるほぼ均一な膜厚d1に形成される。
【0098】
透光体90bは、透光体90bは、140℃以上、あるいは150℃以上、あるいは170℃以上の温度に軟化点を有する樹脂材料で形成される。透光体90bは、140℃かつ周波数1Hzで1.0×10
−6Pa以上の損失弾性率を有する。貯蔵弾性率が1.0×10
−6Pa未満の場合、熱圧着時に表面層90aの形状が崩れ、再帰反射性が低下するおそれがある。
【0099】
光学機能層90と透明基材98aとの間に形成される中間層96aは、光学機能層90の表面層90aを包埋する。このため中間層96aは、グリッドシート91を透過する像の鮮明性を確保するべく、透光体90bの屈折率とほぼ同等の屈折率とする。
【0100】
中間層96aおよび中間層96bは、透明な熱可塑性樹脂で形成され、中間層96bは、透明粘着層97bによって光学機能層90の透光体90bを透明基材98bに接着させ、中間層96aは、透明粘着層97aによって光学機能層90の表面層90aを透明基材98aに接着させる。
【0101】
中間層96aおよび中間層96bの材料としては、例えばエチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)などの130℃以下の温度に軟化点を有するポリマー等の樹脂材料を用いる。
【0102】
図12に示すように、三角錐形状の凹部92が二次元配列された表面層90aの断面は、直角二等辺三角形なので、グリッドシート91に照射された赤外線IRは、ドットパターン層4をおよび透明基材98aを透過して光学機能層90の表面層90aに形成された直角二等辺三角形の凹部92の一辺で鏡面反射され、対抗する直角二等辺三角形の斜面で再び鏡面反射される。
【0103】
このように、スキャナのIR−LEDからグリッドシート91に照射された赤外線IRは、ドットパターン層4を透過し、透明基材98aおよび中間層96aで屈折されて、直角二等辺三角形の直角を挟む2つの辺で鏡面反射されることで、その入射方向であるスキャナのIR−LEDに指向性をもって再帰性反射される。スキャナのIR−LEDの横にあるレンズが再帰反射された赤外線IRの反射光を受光できるように直角二等辺三角形の凹部の角度を微調整する。
【0104】
また、可視光は、光学機能層90の表面層90aおよび透光体90bを透過して透明基材98b側から出射される。これにより、グリッドシート91の下のディスプレイの表示を視認することができる。
【0105】
第9の実施形態によれば、赤外線再帰性反射層95の再帰性反射により、スキャナのIR−LEDから照射された赤外線IRは、スキャナに戻ってレンズによって受光される。これによって、スキャナのグリッドシート91平面に対する接触角によらず、IR−LEDから照射された赤外線IRの全ての撮影領域の反射光を受光することができる。
【0106】
[第10の実施形態]
(赤外線再帰性反射層)
図13は、本発明の第10の実施形態のグリッドシートの赤外線再帰性反射層の再帰性反射について模式的に説明した断面図である。
図13に示すように、第10の実施形態のグリッドシート101の赤外線再帰性層105は、透明樹脂バインダ材108aと透明樹脂バインダ材108bとの間に、ビーズ層103bと、ビーズ層103bのビーズ103を固定する半球状の凹部102が二次元配列されたビーズ反射層103aを有する光学機能層100が設けられる。
【0107】
ビーズ103は、真球度が高く透明なものであればガラス、樹脂いずれでもよく、ビーズ103全体を含有する状態で透明樹脂バインダ材108によって固定される。透明樹脂バインダ材108は、透明な樹脂材料で形成されており、透明樹脂バインダ材108の材質は透明であれば特に限定されるものではないが、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリフッカビニリデン樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニール樹脂、及びこれらのブレンド材等である。透明樹脂バインダ材108bは、光学機能層100を支持する支持体としての機能を有し、所定厚みのフィルム状、シート状あるいはプレート状に形成される。
【0108】
このビーズ層103bによる焦点の位置は、ビーズ103のサイズ及び屈折率、ビーズ層103bの厚さ及び透明樹脂バインダ材108の屈折率により決定される。ビーズ103はガラスの粒径約40〜60μm程度で揃っているものを用いるが、0.1mm以上の大型のものを用いてもよい。ビーズ103の屈折率は、焦点位置がビーズ103の球面になるように例えば2.2程度の高屈折率とする。
【0109】
ビーズ反射層103aはアルミの蒸着膜、或いは、銀等の電極塗膜或いはその他光学的に反射特性を持つもので形成される。ビーズ反射層103aは、ビーズ層103bに沿って赤外線帯域の光を反射できるほぼ均一な膜厚d2に形成される。
【0110】
グリッドシート101に照射された赤外線IRは、ドットパターン層4および透明樹脂バインダ材108aを透過し、ビーズ層103bで屈折して焦点位置にあるビーズ反射層103a表面で反射して、再びビーズ層103bで屈折して、その入射方向に指向性をもつように再帰性反射される。可視光は、光学機能層100のビーズ層103bおよびビーズ反射層103aを透過して透明樹脂バインダ材108b側から出射する。これにより、グリッドシートの下のディスプレイの表示を視認することができる。
【0111】
このように、スキャナのIR−LEDからグリッドシート101に照射された赤外線IRは、ビーズ層103bで屈折して焦点位置にあるビーズ反射層103a表面で反射して、再びビーズ層103bで屈折することで、その入射方向であるスキャナのIR−LEDに指向性をもって再帰性反射される。スキャナのIR−LEDの横にあるレンズが再帰反射された赤外線IRの反射光を受光できるようにビーズ103とビーズ反射層103a表面の凹部102の距離を微調整する。
【0112】
第10の実施形態によれば、赤外線再帰性反射層105の再帰性反射により、スキャナのIR−LEDから照射された赤外線IRは、スキャナに戻ってレンズによって受光される。これによって、スキャナのグリッドシート101平面に対する接触角によらず、IR−LEDから照射された赤外線IRの全ての撮影領域の反射光を受光することができる。
【0113】
[第11の実施形態]
図14は、本発明のグリッドシートを印刷物に使用した例を示す図であり、
図15は、
図14の印刷物に用いた本発明の第11の実施形態のグリッドシートを拡大して模式的に示す図である。
図14の印刷物には、吸収する赤外線の波長が異なるインクで印刷された複数のドット■、●、○、□が印刷されているが、グリッドシート111のドット■、●、○、□の大きさは約50μmであり、目視しづらい。
図15の縦横方向の格子線および斜め方向の線は説明のために付したものであり、実際の印刷面には存在していない。また、
図15のドット■、●、○、□の形状は説明のためのものであってドットの形状および色は
図15に限定されない。
【0114】
また、同図では、四隅の基準ドットを結んだ斜め方向の線の交点を仮想格子点として、この仮想格子点を基準に情報ドットを配置している。しかしこれは、生成時におけるドットパターンの状態を示しているに過ぎない。実際には、スキャナを傾けたり紙面が湾曲したりしているときには、ドットパターンが変形するため、基準ドットを斜めに結んで仮想格子点を算出するわけではない。
仮想基準点の算出については、
図38で詳述する。
【0115】
図15に示すように、例えば、グリッドシート111のドットパターン層114には、仮想的な格子を形成する四隅の基準格子点ドット■と、四隅の基準格子点ドット■で囲まれた格子の中心の仮想格子点112を始点としてベクトルにより表現した終点に配置して情報を認識させる情報ドット●および情報ドット○と、ブロックの四隅の角部にある4個の基準格子点ドット■を一定方向にずらして1ブロック分のドットパターンを示すキードット□が印刷されている。
【0116】
情報ドット●および情報ドット○は、仮想格子点112を始点とするベクトルの方向と長さで表現される。例えば、仮想格子点112から長短の距離で、仮想格子点112を中心として情報ドット●または情報ドット○を時計方向に45度ずつ回転させて8方向に配置することによって基準格子1個で4ビットが表現される。1ブロックは16個の基準格子113からなるので、1ブロックのドットパターン1で4ビット×16個=64ビットを表現することができる。
【0117】
図15では、例えば、少なくとも基準格子113内に840nm近傍をピーク波長とする赤外線IR1を最も吸収するインクで印刷された情報ドット●と、少なくとも860nm近傍をピーク波長とする赤外線IR1を最も吸収するインクで印刷された情報ドット○の2つの情報ドット●、○が設けられる。
【0118】
図16は、本発明の第11の実施形態のグリッドシートのドットパターン層と赤外線拡散層を模式的に示す断面図である。
図16に示すように、グリッドシート111は、例えば、840nmの波長の赤外線IR1を吸収する情報ドット●と、860nmの波長の赤外線IR1を吸収する情報ドット○等を所定の規則に従って配列したドットパターン層114と、選択反射する赤外線の波長がIR1、IR2、IR3と異なる複数のセル10、20、30の配向角度を不規則に変えて配置した第3の実施形態の赤外線拡散層35とを備える。ここでは、IR1からIR3としたが、さらにその間を分割してセル20が選択反射する波長の赤外線を選択反射することができる。
【0119】
図17は、本発明のグリッドシートに赤外線を照射するIR−LED1の出力特性の例を示す図である。
図17に示すように、IR−LED1は、波長840nmに鋭い出力ピークを有する。
図18は、IR−LED1から840nmの赤外線を基準格子に照射したときの情報ドットの赤外線吸収率について説明する図である。
【0120】
スキャナから赤外線IR1が基準格子113に照射されると、情報ドット●は赤外線IR1を吸収する特性材料を含有するインクで印刷されているため、赤外線IR1は情報ドット●によって多量に吸収され、C−MOSセンサは、情報ドット●の部分が濃い黒の画像で撮像される。情報ドット○は赤外線IR1を吸収しないので、赤外線IR1は情報ドット○を透過して赤外線拡散層35に到達し、赤外線拡散層35のセル10のポリマー分子19によって拡散反射されるので、C−MOSセンサには情報ドット○の画像は薄い黒で撮影される。つまり、情報ドット○が一部だけ赤外線IR1を吸収し、残りの赤外線が反射され薄い黒で撮像される。情報ドット●と情報ドット○は、閾値により情報ドット●との識別が可能である。
【0121】
図19は、本発明のグリッドシートに赤外線を照射するIR−LED2の出力特性の例を示す図である。
図19に示すように、IR−LED2は、860nmに鋭い出力ピークを有する。
図20は、IR−LED2から860nmの赤外線を基準格子に照射したときの情報ドットの赤外線吸収率について説明する図である。
【0122】
基準格子113に赤外線IR2を照射すると、情報ドット●は赤外線IR2を一部しか吸収しないので、残りの赤外線IR2は情報ドット34を透過して赤外線拡散層35に到達し、赤外線拡散層35のセル20のポリマー分子29によって拡散反射された赤外線IR2がC−MOSセンサによって捕えられ、薄い黒で撮像される。情報ドット○は赤外線IR2を吸収する特性材料を含むインクで印刷されているので赤外線IR2を多量に吸収するため、C−MOSセンサでは、情報ドット○が濃い黒の画像で撮像される。つまり、情報ドット●が一部だけ赤外線IR1を吸収し、残りの赤外線が反射され薄く撮影される。情報ドット●と情報ドット○は、閾値により情報ドット●との識別が可能である。
【0123】
図21は、本発明のグリッドシートに赤外線を照射するIR−LED3の出力特性の例を示す図である。
図22は、IR−LED3から840nmから860nmの波長帯の赤外線を基準格子に照射したときの情報ドットの赤外線吸収率について説明する図である。
図21に示すように、IR−LED3は、840nmから860nmの波長帯に出力ピークを有するが、一つの波長に出力ピークを有する複数のIR−LED1およびIR−LED2等を組み合わせて
図21の出力特性が得られるようにしてもよい。
【0124】
情報ドット●は赤外線IR1を吸収する特性材料を含有するインクで印刷されているので赤外線IR1を吸収し、情報ドット○は赤外線IR2を吸収する特性材料を含有するインクで印刷されているので赤外線IR2を吸収する。C−MOSセンサでは、情報ドット●および情報ドット○が黒く撮影された撮像画像を得ることができる。
【0125】
第11の実施形態によれば、赤外線拡散層35に選択反射する赤外線の波長がIR1、IR2、IR3の複数種類のセル10、20、30を設け、ドットパターン層114の基準格子113内に赤外線R1を吸収するインクで印刷された情報ドット●および赤外線R2を吸収するインクで印刷された情報ドット○を配置する。赤外線R1または赤外線R2のいずれかを使用して、当該赤外線の波長を多量に吸収するインクで印刷された基準ドットと情報ドットを真値とし他方の情報ドットを偽値とする。真値となる情報ドットを印刷したインクの赤外線吸収波長と同一の赤外線R1またはR2でドットパターンを照射すれば、照射した赤外線を吸収するドットが濃い黒の画像で撮像できることから、真値の情報ドットからドットコードを取得できる。なお、薄い黒で撮像された情報ドットを真値としてもよい。なお、基準ドットについても薄い黒の画像となってもよい。
【0126】
また、スキャナに搭載されたIR−LEDの波長は計測すれば赤外線波長が分かることから、セキュリティ性を高めるために、赤外線R1および赤外線R2を連続して照射し、真値を取得するための波長のIR−LEDで照射した際の情報ドットでコード値を求めればよい。なお、赤外線R3も合わせて使用してもよい。さらに、セキュリティを高めるために、赤外線R1、2(および赤外線R3)で照射した際の濃い黒で撮影された情報ドットを使用してコード値を求め、そのコード値の一部に定義された情報で、情報ドット毎にいずれの波長で照射されたIR−LEDを基に撮像された画像かを定義し、各情報ドットの真値を求めドットコードを算定すればよい。前述したように、一部もしくは全部を薄い黒で撮像された情報ドットの画像を真値としてもよい。また、スキャナの使用者だけが備えられたボタン操作によって、真値を取得するための波長のIR−LEDを照射してもよい。この場合、赤外線R1、2のいずれかまたは、両方を連続照射して情報ドットの真値を求めるが、スキャナの通常使用では赤外線R3が照射されるようにしてもよい。
【0127】
つまり、グリッドシート111の連続する同じ領域内に異なる波長光の赤外線を吸収するインクで印刷した複数種類のドットからなるドットパターンを印刷することで、連続する同じ領域内にドットパターンに関連した異なる情報を記憶して照射する赤外線の波長光によって情報を出力させることができる。さらに、グリッドシート111を小片のシールとし、セキュリティ(真贋判定)やトレーサビリティとして使用することもできる。これによって、赤外線を鏡面反射または透過するような材料で形成された媒体や構造物に上記シールを貼付してドットのみを正確に認識することができる。ここで、ドットを完全に不可視とするためには、赤外線を吸収するインクでドットを印刷してもよいし、重畳印刷するとドットが判別できない色で、且つ赤外線を吸収しないインクで重畳印刷すればよい。以上のセキュリティシステムは、グリッドシートを使用しない通常の赤外線を拡散反射する媒体に複数の異なる赤外線吸収インクでドットパターンを印刷して使用してもよい。
【0128】
さらに、第11の実施形態によれば、赤外線R1からR3に至る複数の波長帯にピークを有する赤外線を照射すれば、赤外線R1を吸収する情報ドット●および赤外線R2を吸収する情報ドット○等の複数の撮像画像を同時に取得することもできる。
【0129】
情報ドット●および情報ドット○について説明したが、基準格子点ドット■またはキードット□についても同様であり、ドットパターン層114に印刷されるドットは、情報ドット●、情報ドット○、基準格子点ドット■、およびキードット□に限定されない。赤外線を吸収する特性材料を含むインクで印刷されたドットであれば、どのようなものでもよい。
【0130】
なお、吸収する赤外線の波長光が異なる複数のドット●、○を印刷する領域は、基準格子113内に限定されない。領域のサイズや形状によらず、連続する領域内であればそこに吸収する赤外線の波長光が異なる複数のドット●、○を印刷するようにすればよい。
【0131】
[第12の実施の形態]
図23は、
図14の印刷物に用いた本発明の第12の実施形態のグリッドシートを模式的に示す断面図である。
図23に示すように、グリッドシート121のドットパターン層124には、16個の格子領域ごとに吸収する赤外線の波長を変えた2個の情報ドットが印刷されている。
【0132】
情報ドット●を波長840nmの赤外線IR1、情報ドット○を波長860nmの赤外線IR2を吸収するインクで印刷された格子領域を白色で示し、情報ドット●を波長860nmの赤外線IR1、情報ドット○を波長840nmの赤外線IR2を吸収するインクで印刷された格子領域を斜線入りで示されている。
【0133】
例えば、情報ドット●を真値、情報ドット○を偽値とした場合、
図17に示される出力特性を有するIR−LED1によってグリッドシート100を照射すると、C−MOSセンサには、白色の格子領域の情報ドット●が濃い黒で撮像され、斜線入りの格子領域の情報ドット○が薄い黒で撮像される。
図19に示される出力特性を有するIR−LED2によってグリッドシート121を照射すると、C−MOSセンサには、斜線入りの格子領域の情報ドット●が濃い黒で撮像され、白色の格子領域の情報ドット○が薄い黒で撮像される。つまり、真偽の判定は、白色の格子領域ではIR−LED1によって濃い黒で撮像されたドットが真値となり、斜線入りの格子領域ではIR−LED2によって濃い黒で撮像されたドットが真値となる。IR−LED1だけを使用する場合は、白色の格子領域では濃い黒で撮像されたドットが真値となり、斜線入りの格子領域では薄い黒で撮像されたドットが偽値となる。もちろん、IR−LED2だけを使用する場合は、その逆となることは言うまでもない。なお、白色と斜線入りの格子領域がどの位置に配置されるかは、当然ながら関係者以外は秘密としてセキュリティ性を確保しなければならない。一方、基準ドット■、キードット□については、IR−LED1とIR−LED2の両方を使用する場合は、波長840nmまたは波長860nmのいずれの赤外線を吸収するインクを使用してもよい。IR−LED1だけを使用する場合は、波長840nmの赤外線を吸収するインクを使用するのが望ましい。波長840nmおよび波長860nmの両方の赤外線を吸収するインクで印刷してもよい。なお、図示しないが、偽値のキードット△を真値のキードット□とは異なる波長の赤外線を吸収するインクで印刷し、基準ドット■の周辺に配置することにより、ドットパターンの向きや領域を正しく認識できないようにし、さらにセキュリティ性を高めることもできる。
【0134】
図21に示される出力特性を有するIR−LED3によってグリッドシート121を照射すると、C−MOSセンサには、基準ドット■、キードット□および情報ドット●、○が全て黒く撮像される。IR−LED1またはIR−LED2との組み合わせで使用することにより、薄い黒で撮像される真の情報ドットもIR−LED3により、濃い黒で撮像されるため正確に位置認識ができる。
【0135】
第12の実施形態によれば、グリッドシート121の赤外線拡散層35に選択反射する赤外線の波長がIR1、IR2、IR3の少なくともいずれかが異なる複数種類のセル10、20、30を設け、セル10、20、30で反射する赤外線の波長とは異なるIR−LEDによってリッドシート121を照射すると、全領域で赤外線が反射しないため濃い黒色になる。従って、ドットのみを黒色で、他の領域を白色で撮像するには、ドットが印刷されるインクが吸収する赤外線の波長および赤外線を照射するIR−LEDの波長は、セル10、20、30で反射される赤外線の波長に含まれる必要がある。つまり、グリッドシート121の異なる格子領域毎に異なる波長光の赤外線を吸収する複数種類のドットからなるドットパターンを印刷することで、ドットパターンの印刷された領域と照射する赤外線の波長光が一致しなければ、ドットパターンに関連した情報が出力できないように情報を保護することができる。
【0136】
上記のように複数の赤外線波長で反応を変化させることができると、格子領域で異なる波長の赤外線を吸収する情報ドットを配置すると、対応する波長のIR−LEDで照射することにより、異なる情報を取得することも可能である。
【0137】
さらに、第12の実施形態によれば、赤外線R1からR3に至る複数の波長帯にピークを有する赤外線を照射すれば、赤外線R1を吸収する情報ドット●および赤外線R2を吸収する情報ドット○等の複数の撮像画像を同時に取得することもできる。
【0138】
なお、複数種類の異なるドット●、○を印刷する領域は、格子領域に限定されない。領域のサイズや形状によらず、ブロック毎に吸収する赤外線の波長が異なるドットを印刷するようにすればよい。
【0139】
以上のセキュリティシステムは、グリッドシートを使用しない通常の赤外線を拡散反射する媒体に複数の異なる赤外線吸収インクでドットパターンを印刷して使用してもよい。
【0140】
[
図26を用いた第13の実施形態]
図26を用いて、第13の実施形態について説明する。
【0141】
本実施形態の特徴は、拡散反射層を有する拡散反射シート210のドットパターン読み取り面にドットパターン220を印刷した点である。
【0142】
図26(a)は、拡散反射シート210のドットパターン読み取り面の反対面(以下、「裏面」という。)側に、媒体としてディスプレイ230を配置したものである。同図(b)は、前記裏面面側に、媒体としてガラス等の透明媒体240を配置したものである。同図(c)は、前記裏面側に、媒体として紙等の印刷媒体250を配置したものである。
【0143】
なお、
図26中、「200」は、情報入力補助シート(グリッドシートともいう。)、「221」はドットを示すものである。
【0144】
なお、図示はしないが、拡散反射は、実際には、拡散反射シート210内部のセル毎に行われている。
【0145】
[
図27を用いた第14の実施形態]
図27を用いて、第14の実施形態について説明する。
【0146】
本実施形態の特徴は、拡散反射層を有する拡散反射シート210のドットパターン読み取り面の前面側に、ドット221を保護するための保護層260を配置した点である。
【0147】
図27(a)は、拡散反射シート210のドットパターン読み取り面の反対面(以下、「裏面」という。)側に、媒体としてディスプレイ230を配置したものである。同図(b)は、前記裏面側に、媒体としてガラス等の透明媒体240を配置したものである。同図(c)は、前記裏面側に、媒体として紙等の印刷媒体250を配置したものである。
【0148】
[
図28を用いた第15の実施形態]
図28を用いて、第15の実施形態について説明する。
【0149】
本実施形態の特徴は、透明シート270のドットパターン読み取り面の反対面(以下、「裏面」という。)に、ドットパターン220を印刷した点である。
【0150】
本実施形態によれば、透明シート270の前記裏面にドットパターン220を印刷することで、当該透明シート270をドット221を保護するための保護層として機能させることができる。
【0151】
図28(a)は、透明シート270の裏面側に、拡散反射シート210をはさんで、媒体としてディスプレイ230を配置したものである。同図(b)は、前記裏面側に、拡散反射シート210をはさんで、媒体としてガラス等の透明媒体240を配置したものである。同図(c)は、前記裏面側に、拡散反射シート210をはさんで、媒体として紙等の印刷媒体250を配置したものである。
【0152】
[
図28を用いた第15の実施形態]
図28を用いて、第15の実施形態について説明する。
【0153】
本実施形態の特徴は、情報入力補助シート200を、ディスプレイ装置のディスプレイ230(媒体)の所定の媒体面、例えば表示面上または該媒体面近傍に貼付または配置された点である。
【0154】
なお、ディスプレイ230として、
図28に示すように、PC290用のディスプレイ装置を例示したが、これに限定されず、ノート型PC、タブレット型PC、TV、携帯電話、スマートフォン、各種の電子機器のディスプレイやタッチスクリーン(タッチパネル)でもよい。
【0155】
光学読み取り装置280は、透明シートのドットパターン読み取り面側に接触または離反してドットパターンを読み取る。
【0156】
光学的読み取り装置280は、USBケーブルなどを介して、有線であるいは無線で、PC290などの情報処理装置に接続されている。
【0157】
[
図30の説明]
図30は、ドットを説明するための説明図であり、同図(a)は読み取った256諧調画像の写真である。同図(b)は、2値化画像からドットの中心座標値を求め、各中心座標値をテーブルにしたものである。このテーブルを元に復号化手段で情報(コード値)に復号化する。
【0158】
<ドットパターンの説明>
つぎに、ドットパターンの一例について、
図31〜45を用いて以下に説明する。
【0159】
ドットパターンの態様としては、次の例がある。
【0160】
なお、ドットパターンの態様は、次の(1)〜(4)に限定されない。
【0161】
(1)第1の例(「GRID0」、
図33〜37)
(2)第2の例(「GRID1」、
図35(a)および
図36(a)、
図38)
(3)第3の例(「GRID5」、
図39〜43)
上記第1〜第3の例における情報ドットについて、次の例を用いて説明する。
【0162】
なお、情報ドットの例は、次の(5)および(6)に限定されない。
【0163】
(4)情報ドットのとらえ方(
図31)
(5)情報ドットのコードの割り当て(
図32)
(6)ドットパターンの読み取り(
図44および
図45)
【0164】
<
図31の情報ドットのとらえ方>
情報ドットのとらえ方は、
図31(a)〜(e)に示す通りである。
【0165】
なお、情報ドットのとらえ方は、
図31(a)〜(e)の例に限定されない。
【0166】
すなわち、
図31(a)に示すように、情報ドットを仮想点の上下左右、斜めに配置するほか、情報ドットを配置しない場合、仮想点に情報ドットを配置するか、配置しない場合も含めて情報量を増やすことが可能である。
図31(b)は、2行×2列の計4個の仮想領域内に情報ドットを配置したものであるが、境界付近に情報ドットを配置すると誤認識が発生する可能性があるので、
図31(c)は、一定の間隔をおいて隣り合う仮想領域を配置した実施例である。 なお、4個の仮想領域内に複数個の情報ドットを配置したり、情報ドットを配置しない場合も含めて情報量を増やすことが可能である。
【0167】
図31(d)は、3行×3列の計9個の仮想領域内に情報ドットを配置したものである。なお、9個の仮想領域内に複数個の情報ドットを配置したり、情報ドットを配置しない場合も含めて情報量を増やすことが可能である。
【0168】
図31(e)は、正方形の中点および対角線を全て直線あるいは仮想線で結び、計8個の仮想領域内に情報ドットを配置したものである。なお、8個の仮想領域内に複数個の情報ドットを配置したり、情報ドットを配置しない場合も含めて情報量を増やすことが可能である。
【0169】
図31(b)〜(e)の仮想領域は矩形または三角形であるが、
図31(c)のように、仮想領域が互いに接する必要もなく、円形や他の多角形など、どのような形状であっても構わない。さらに、その仮想領域の数を増やすことによって情報量を増大できる。なお、仮想領域への情報ドットの配置は、
図31(a)で示された、仮想点から所定の方向に所定の距離だけずれて配置される情報ドットの配置方法と同一である。なぜなら、印刷データを作成するに当たって、どのような仮想領域に配置する場合も、いずれかの位置を示す座標データで配置位置を決定する必要があり、仮想点からずれて配置するために座標データを算定することと何ら変わりがない。また、ドットを読み取る際も、いずれの配置方法であっても、ドットパターンを撮像した画像において、情報ドットが配置される可能性のある複数の配置位置を中心に円形かまたは矩形等のドット認識判定領域を設定し、そのドット認識判定領域内にドットがあるかどうかを判定してドットを認識することからも、同一の情報ドット読み取り方法と言える。
【0170】
<
図32の情報ドットのコードの割り当て>
情報ドットのコードの割り当ては、
図32(a)〜(c)に示す通りである。
【0171】
すなわち、
図32(a)に示すように、例えばカンパニーコードなどの「コード値」に全て割り当ててもよいし、同図(b)に示すように、1つのコードフォーマットとして「X座標値」と「Y座標値」の2つのデータ領域に割り当ててもよいし、あるいは同図(c)に示すように、「コード値」、「X座標値」、「Y座標値」の3つのデータ領域に割り当ててもよい。長方形の領域に座標値を割り当てる場合は、データ量を削減するために「X座標値」、「Y座標値」のデータ領域は異なってもよい。さらに、図示しないが位置座標における高さを定義するために「Z座標値」をさらに割り当ててもよい。なお、「X座標値」、「Y座標値」を割り当てた場合は、位置情報のため、X、Y座標の+方向に座標値が所定量だけ増分するため、全てのドットパターンは同一ではなくなる。また、
図32(a)〜(c)から明らかなように、割り当てるコードの種類を増やすほど、ドット認識判定領域が小さくなり、情報ドットの配置位置を正しく認識しづらくなる。
【0172】
<第1の例(「GRID0」)、
図33〜37>
ドットパターンの第1の例は、本出願人は「GRID0」との仮称で呼んでいる。
【0173】
「GRID0」の特徴は、キードットを用いることで、ドットパターンの範囲や方向の少なくとも一つを認識できるようにしたものである。
【0174】
「GRID0」は、
図33〜37に示すように、次の構成を備える。
【0175】
(1)情報ドット
情報ドットは、情報を記憶するためのものである。
【0176】
なお、情報ドットのとらえ方は、
図31(a)〜(e)に示した通りであり、また、情報ドットのコードの割り当ては
図32(a)〜(c)に示した通りである。
【0177】
なお、情報ドットを配置しない場合、仮想点に情報ドットを配置するか、配置しない場合も含めて情報量を増やすことが可能である。
【0178】
(2)基準ドット
基準ドットは、予め設定された複数の位置に配置されたものである。
【0179】
基準ドットは、後述する仮想点あるいは仮想領域の位置を特定するためのものである。
【0180】
(3)キードット
キードットは、基準ドットをずらして配置されるか、または
図34に示すように、基準ドットの配置位置からずれた位置に加えて配置されるものである。つまり、基準ドットをずらして配置される場合は、基準ドットがずれるため元の基準ドットの配置位置には基準ドットがなくなる。そこで、キードットは元の基準ドットの役割も担うことになり、元の基準ドットの位置を他の基準ドットの配置から推定できるようにすることが望ましい。基準ドットの配置位置からずれた位置に加えて配置された場合は、基準ドットとキードットの2つが近傍に配置されることになる。
【0181】
キードットは、基準ドットと仮想点に対する情報ドット、あるいは基準ドットと仮想領域中に配置する情報ドットの基準となる方向を特定するものである。この基準となる方向が定まることにより、仮想点に対する情報ドットの方向で情報を与え、読み取ることが可能となる。さらに1つのデータを複数の情報ドットで定義するドットパターンの範囲を特定することもできる。これにより、ドットパターンが上下左右に並べられていても、ドットパターンの範囲を読み取りデータを復号化することができる。
【0182】
(4)仮想点あるいは仮想領域
仮想点あるいは仮想領域は、基準ドットの配置により特定されるものである。
図35に仮想点からの距離と方向の少なくともいずれかで情報を定義する場合、方向については、前述したキードットによるドットパターンの方向を基準として情報を定義すればよい。距離については、所定の基準ドット間の距離を基準にすればよい。なお、仮想領域を配置して情報を定義する場合は、情報を1個付与するための複数の仮想領域の中心もしくは代表点を仮想点として、上記と同様に基準点の配置で仮想点の位置を特定し、さらに仮想点からの距離と方向で仮想領域を定義してもよい。また、基準ドットの配置から、全ての仮想領域の配置位置を直接特定してもよい。なお、隣り合う仮想領域は連結してもよいが、その場合境界付近に情報ドットを配置すると誤認識が送る可能性があるので、一定の間隔を置いて仮想領域を配置した方が望ましい。
【0183】
図33は、「GRID0」のドットパターンの汎用例を示すものであり、同(a)は基準ドットを略プラスの文字形に配置した例、同(b)は情報ドットの配置個数を増加した例、同(c)は基準ドットを六角形に配置した例をそれぞれ示すものである。
【0184】
なお、ドットパターンの汎用例は、
図33(a)〜(c)に例示した略プラスの文字形や略六角形に限定されない。
図34は、
図33の変形例を示し、キードットを基準ドットの配置位置からずれた位置に加えて配置したものであり、その結果、基準ドットとキードットの2つが近傍に配置されることになる。
【0185】
図35は、「GRID0」のドットパターンの変形例を示すものであり、同(a)は基準ドットを略方形に配置した例、同(b)は基準ドットを略L字形に配置した例、同(c)は基準ドットを略十字架形あるいは略プラス形に配置した例をそれぞれ示すものである。
【0186】
なお、ドットパターンの変形例は、
図35(a)〜(c)に例示した略方形、略L字形、あるいは略十字架形あるいは略プラス形に限定されない。
【0187】
図36〜
図37は、「GRID0」のドットパターンを連結例ないし連接例を示すものであり、同図(a)は基準ドットを略方形に配置したドットパターンを、その基準ドットの一部が共通するように隣接させて複数配置した連結例である。連結ができる条件は、1つのドットパターンの上下および/または左右の両端のドットの位置が必ず同一位置とならなければならない。なお、上下または左右のみ連結してもよい。同図(b)は基準ドットを略L字形に配置したドットパターンを相互に独立させて複数配置した第1の連接例をそれぞれ示すものである。
図37(a)は、基準ドットをプラス形に配置したドットパターンを相互に独立させて複数配置した第2の連接例を示すものである。なお、連接とは、ドットパターンを所定の間隔をおいて上下左右に並べる方法である。
図37(b)は、基準ドットを六角形に配置したドットパターンを、その基準ドットの一部が共通するように隣接させて複数配置した連結例である。
【0188】
また、ドットパターンを連結例ないし連接例は、
図36(a)および(b)ならびに
図37に例示した配置に限定されない。
【0189】
<第2の例(「GRID1」)>
ドットパターンの第2の例は、本出願人は「GRID1」との仮称で呼んでいる。
【0190】
「GRID1」は、
図35(a)に示すように「GRID0」の基準ドットの配置を限定したものであり、基準ドットを矩形状、例えば正方形や長方形に配置した点と仮想点をその周辺の4つの基準点の中心としたことを特徴とする。中心とは、
図38に示すように周辺の4点の基準点の座標値を4で除した座標値から算定される。これにより、光学読み取り装置を傾けてドットパターンを読み取る場合やレンズのゆがみ、ドットパターンが形成された印刷媒体の変形の影響などで、撮影画像においてドットパターンの配置が変形しても、4つの基準ドットと同様に情報ドットの配置が移動するため、隣接する4つの基準ドットの移動した配置によって相対的に情報ドットの配置が正確に算定され、認識率の低下が少ない。当然、
図35(b)、(c)のように、情報ドットが基準ドットと離れて配置された場合は、情報ドットの配置位置が正確に把握できず、誤認する場合がある。
【0191】
図面上は、
図35(a)の基準ドットを正方形に配置した変形例や、
図36(a)の上下左右にドットパターンを繰り返し配置し、周辺の基準ドットを重ねたドットパターンの連結例がある。
【0192】
なお、基準ドットを、
図35(a)に示すように、正方形に配置したが、これに限定されず、長方形に配置してもよい。また、基準ドットを、
図36(a)に示すように、連結させたが、これに限定されず、隣接するドットパターンを相互に独立させ所定の間隔で連接させて配置してもよい。
【0193】
<第3の例(「GRID5」)>
ドットパターンの第3の例は、本出願人は「GRID5」との仮称で呼んでいる。
【0194】
「GRID5」は、「GRID0」のキードットに代えて、「基準ドットの配置の仕方」によって、ドットパターンの範囲および方向を認識できるようにしたものである。「基準ドットの配置の仕方」でドットパターンの方向を認識するためには、基準ドットの配置がどのような点を中心にどれだけ回転(360°を除く)させても、回転前の配置と同一にならない非軸対称でなければならない。さらに、ドットパターンを上下および/または左右に複数繰り返し並べて連接または連結した場合にも、ドットパターンの範囲および向きが認識できる必要がある。
【0195】
なお、「GRID0」として、キードットを含んでいても、キードットを基準ドットとして認識させ、「基準ドットの配置の仕方」により、キードットが無い「GRID5」のドットパターンとして、その範囲や方向を認識できる。
【0196】
さらに、
図40〜42に示すように、「GRID5」の特殊な例として、「基準ドットの配置の仕方」でドットパターンの範囲のみを特定し、情報ドットの配置位置、つまり「仮想点の配置の仕方」や、所定の情報ドットの向きまたは配置法則によりドットパターンの向きを特定することができる。この場合は、基準ドットの配置がいずれかの点を中心に回転(360°を除く)させると、回転前の配置と同一になる軸対称であっても構わない。さらに、ドットパターンを上下および/または左右に複数繰り返し並べて連接または連結した場合にも、ドットパターンの範囲のみ認識できればよい。なお、本出願人はこれを「ディレクションドット」の仮称で呼んでいる。
【0197】
図39は、「GRID5」のドットパターンの汎用例を示すものであり、同(a)は基準ドットを上下方向に非対称な略ハウス形に配置した例、同(b)は基準ドットを上下方向に非対称な略十字架形に配置した例、同(c)は基準ドットを上下方向に非対称な略二等辺三角形に配置した例をそれぞれ示すものである。
【0198】
なお、ドットパターンの汎用例は、
図39(a)〜(c)に例示した略ハウス形、略十字架形あるいは略三角形に限定されない。
【0199】
図40は、ドットパターンの方向を定める「ディレクションドット」の汎用例を示すものであり、同(a)は基準ドットで情報ドットを取り囲むように正方形に配置し、その中心の情報ドットを「ディレクションドット」として、「ディレクションドット」のずらす方向でドットパターンの向きを定める。なお、他の情報ドットは+×方向とする。同(b)は、基準ドットを略プラスに配置し、その中心の「ディレクションドット」を一方向にずらして配置したものであり、当該「ディレクションドット」のずらす方向でドットパターンの向きを定める。同(a)、(b)のドットパターンの向きを定める「ディレクションドット」の配置は、予め定めておけばどのような方向にずらして配置してよい。また、他の情報ドットも仮想点からの距離と方向でどのように定義してもよい。
【0200】
図41は、「ディレクションドット」の変形例を示すものであり、同(a)は基準ドットで情報ドットを取り囲むように正方形に配置し、+方向の情報ドットを3か所に配置することによりドットパターンの向きを定める。なお、他の情報ドットは×方向とする。すなわち、他の情報ドットと情報ドットの配置規則を異ならせた「ディレクションドット」の配置の仕方によりドットパターンの向きを定める。
【0201】
図41(b)は、情報ドットを配置しないこと、つまり「仮想点の配置の仕方」により、ドットパターンの向きを定めた例である。すなわち、基準ドットを正方形に配置しているため、基準ドットの配置によりドットパターンの「向き」を特定できない。このため、正方形に配置された基準ドットの領域内に配置された「仮想点」の1か所に「基準ドット」を配置しないことで、つまり「仮想点の配置の仕方」により、ドットパターンの「向き」を決める。なお、「基準ドット」を配置しない「仮想点」は、上段の3か所、あるいは下段の3か所のいずれもよい。
【0202】
図42は、「ディレクションドット」の変形例を示すものであり、同(a)は上下に基準ドットで配置し、その間に情報ドットを配置し、上下の中央を除く位置に、+方向の情報ドットの配置によりドットパターンの向きを定める。なお、他の情報ドットは×方向とする。すなわち、他の情報ドットと情報ドットの配置規則を異ならせた「ディレクションドット」の配置の仕方によりドットパターンの向きを定める。同(b)は、正三角形に基準ドットを配置して情報ドットを内外に矩形に配置することにより、ドットパターンの向きを決める。同(c)は、同(b)のドットパターンの連結例を示すものである。基準ドットを正三角形に配置したドットパターンを、その基準ドットの一部が共通するように隣接させて複数配置した連結例である。連結ができる条件は、1つのドットパターンの上下および/または左右の両端のドットの位置が必ず同一位置とならなければならない。なお、上下または左右のみ連結してもよい。なお、本実施例においては、正三角形の底辺の情報ドットを共有している。このように、ドットパターンを連結する際には、基準ドットだけでなく情報ドットを共有することも可能である。ただし、座標値のように、ドットパターン毎に値が変化するような場合においては、情報ドットを共有することはできない。
【0203】
図43は、「GRID5」のドットパターンの変形例を示すものであり、同(a)は基準ドットを上下に非対称な略方形に配置した例、同(b)はキードットを併用し、基準ドットを上下に非対称な略L字形に配置した例、同(c)はキードットを併用し、基準ドットを上下に非対称な略十字架形に配置した例をそれぞれ示すものである。
【0204】
なお、ドットパターンの汎用例は、
図43(a)〜(c)に例示した上下に非対称な略方形、略L字形形あるいは略十字架形に限定されない。
【0205】
<ドットパターンの読み取り>
以上の「GRID0」、「GRID1」、「GRID5」のドットパターンが所定の領域内で同じコード値が定義され、上下左右に繰り返し並べて配置される場合、
図44のように、当該ドットパターンの範囲と同じ大きさの範囲で任意の領域を読み取れば、本来のドットパターンを構成する情報ドットが、(1)〜(16)(図中は「丸1〜丸16」と記載している。)あるいは(1)〜(9)(図中は「丸1〜丸9」と記載している。)まで全て充足され、定義されたコード値全てが読み取ることができる。このように、情報ドットの配置はドットパターンの向きと範囲によって確定できるため、コード値として構成される情報ドットの配置法則も特定できる。さらに、
図45のように、任意の領域で読み取るドットパターンの範囲において、当該範囲を超えて左右どちらかの情報ドットを読み取った場合、当該情報ドットと反対側端部に位置する情報ドットとは、定義される数値が同一であり、仮想点に対して同一の方向に同一距離だけずれた位置に配置される。この2つの情報ドットを繋ぐ線分は水平線となり、この水平線を平行移動することにより、仮想点を通る水平線を正確に認識できる。平行移動量は、対応する基準ドットが存在すれば、基準ドットが水平線上に位置するまでの距離となる。さらに、上下方向に対しても同様な手順で垂直線を認識すれば、水平線と垂直線の交点の位置を求めることにより、正確に仮想点を求めることができる。この方法によれば、光学読み取り装置を傾けてドットパターンを撮像し、ドットの配置が大きく変形しても仮想点を正確に求めることができ、情報ドットが示す数値を正確に認識できる。
【0206】
<キャリブレーションの説明>
図46〜55は、情報入力補助シート700(グリッドシート)を用いる際に行なうキャリブレーション(calibration)について説明する図である。
【0207】
[キャリブレーションの実施形態1 位置関係のキャリブレーション]
キャリブレーションの実施形態1は、情報入力補助シート700と、媒体730(ディスプレイ731または印刷媒体732)との位置を適正に関連付けるためのキャリブレーションである。
【0208】
ユーザが媒体730であるディスプレイ731または印刷媒体732(印刷物)をタッチした際に、タッチ位置に対応する処理を正確に反映されるためには、ディスプレイ731または印刷媒体732(印刷物)と、情報入力補助シート700(グリッドシート)との位置関係を一致させる必要がある。そこで、ディスプレイ731または印刷媒体732(印刷物)の座標系と情報入力補助シート700(グリッドシート)の座標系を適正に関連づけるためのキャリブレーションを行う。
【0209】
図46〜47は、ディスプレイ731の表示画面上でキャリブレーションを行なう場合について説明した図である。
【0210】
図46は、情報入力補助シート700(グリッドシート)にキャリブレーション用マーク710を設けた場合について説明する図である。
【0211】
図46(a)に示すように、情報入力補助シート700(グリッドシート)の一面側の四隅近傍には、キャリブレーション用マーク710が設けられている。なお、キャリブレーション用マーク710は、必ずしも四隅近傍に設けられている必要はなく、2以上の隅角部に設けられていればよく、あるいは、所定の2か所以上の位置に設けられていてもよい。
【0212】
所定の4か所の情報入力補助シート700(グリッドシート)の座標系におけるマーク位置のドット座標値(x
mi、y
mi)に、ディスプレイ731の表示画像データの座標系におけるカーソル位置の座標値(X
ci、Y
ci)を合致させることにより、様々な手法でキャリブレーションを実施できる。例えば、平面射影変換法では、グリッドシートの座標系における光学読み取り装置740(スキャナ)のタッチ位置のドット座標値(x
t、y
t)は下式で示す変換式でディスプレイの表示画像データの座標系における座標値(X
t、Y
t)が求まる。なお、ディスプレイの表示画像データの座標系とは、ディスプレイ上の実寸の座標系ではなく、ディスプレイに画像を表示させるための画像記憶媒体(フレームバッファ)における座標系である。
X
t=(ax
t+by
tc)/(gx
t+hy
t+1)
Y
t=(dx
t+ey
tf)/(gx
t+hy
t+1)
なお、キャリブレーションにより、4か所のマーク位置(x
mi、y
mi, i=1〜4)とカーソル位置(X
ci、Y
ci、i=1〜4)が定まることから、それぞれを代入して8元連立方程式を解いて、a〜hを求めればよい。その他、所定の3か所以上の位置でのキャリブレーションでは、アフィン変換式やヘルマート変換式を用いることができる。なお、これらのキャリブレーション法のいずれも、
図46〜51に示すキャリブレーションに適用できることはいうまでもない。
【0213】
図46(b)に示すように、ユーザは、キャリブレーション用マーク710にカーソルを移動し、マウスを左クリックする。パーソナルコンピュータの中央処理装置は、クリックされた位置を認識する。そして、ディスプレイ731の座標系と情報入力補助シート700(グリッドシート)の座標系とを適正に関連付ける。これによりキャリブレーションが行なわれる。
【0214】
図46においては、キャリブレーション用マーク710は、脱着可能な透明シール720に形成されている。ユーザは、キャリブレーション終了後に、
図46(c)に示すように、シールを情報入力補助シート700(グリッドシート)から剥離する。
【0215】
なお、キャリブレーション用マーク710は、透明シール720に形成されている場合の他、情報入力補助シート700(グリッドシート)に直接印刷されていてもよい。また、情報入力補助シート700(グリッドシート)上に除去可能な状態で設けられており、キャリブレーション終了後に情報入力補助シート700(グリッドシート)上から除去されるようにしてもよい。
【0216】
図47は、ディスプレイ731の表示画面にキャリブレーション用マーク710が表示される場合について説明した図である。
【0217】
図47(a)に示すように、ディスプレイ731の四隅近傍には、キャリブレーション用マーク710が表示されている。なお、キャリブレーション用マーク710は、必ずしも四隅近傍に表示させる必要はなく、2以上の隅角部に表示させればよく、あるいは、所定の2か所以上の位置に表示させてもよい。
【0218】
ユーザは、
図47(c)に示す如く、キャリブレーション用マーク710が表示されている位置の情報入力補助シート700(グリッドシート)をタッチする。光学読み取り装置740(スキャナ)は、情報入力補助シート700(グリッドシート)上のドットパターンを読み込んで、パーソナルコンピュータ(PC)に送信する。パーソナルコンピュータ(PC)の中央処理装置は、送信されたドットパターンからタッチ位置のドットXY座標(X1,Y1)を認識し、ディスプレイ731の座標系と情報入力補助シート700(グリッドシート)の座標系を適正に関連づけるためのキャリブレーションを行う。
【0219】
なお、キャリブレーション終了後は、キャリブレーション用マーク710が表示されなくなるようにするのが望ましい。
【0220】
図48〜49は、印刷媒体732(印刷物)に対してキャリブレーションを行なう場合について説明した図である。
【0221】
図48は、印刷媒体732(印刷物)と、印刷媒体732(印刷物)用の情報入力補助シート700(グリッドシート)の両方にキャリブレーション用マーク710を設けた場合について説明した図である。
【0222】
図48(a)に示すように、情報入力補助シート700(グリッドシート)および印刷媒体732(印刷物)の四隅近傍には、それぞれキャリブレーション用マーク710が印刷されている。なお、キャリブレーション用マーク710は、必ずしも四隅近傍に印刷されている必要はなく、2以上の隅角部に印刷されていればよい。あるいは、所定の2か所以上の位置に印刷されてもよい。
【0223】
ユーザは、
図48(b)に示すように、双方のキャリブレーション用マーク710を合致させて、情報入力補助シート700(グリッドシート)を印刷媒体732(印刷物)上に被せる。これにより、印刷媒体732(印刷物)の座標系と情報入力補助シート700(グリッドシート)の座標系を適正に関連づけるためのキャリブレーションが行なわれる。
【0224】
図49は、印刷媒体732(印刷物)にのみキャリブレーション用マーク710が印刷されている場合について説明した図である。
【0225】
図49(a)に示すように、印刷媒体732(印刷物)の四隅近傍には、それぞれキャリブレーション用マーク710が印刷されている。なお、キャリブレーション用マーク710は、必ずしも四隅近傍に印刷されている必要はなく、2以上の隅角部に印刷されていればよい。あるいは、所定の2か所以上の位置に印刷されてもよい。
【0226】
ユーザは、情報入力補助シート700(グリッドシート)を印刷媒体732(印刷物)上に被せる。そして、
図49(b)に示すように、光学読み取り装置740(スキャナ)を前記マークに合致させる。光学読み取り装置740(スキャナ)は、情報入力補助シート700(グリッドシート)上のドットパターンを読み込み、パーソナルコンピュータ(PC)に送信する。パーソナルコンピュータ(PC)の中央処理装置は、送信されたドットパターンからタッチ位置の座標値(x
1,y
1)を認識し、印刷媒体732(印刷物)の座標系と情報入力補助シート700(グリッドシート)の座標系を適正に関連づけるためのキャリブレーションを行う。
【0227】
このようなキャリブレーションを行なうことにより、情報入力補助シート700(グリッドシート)の座標位置と、ディスプレイ731または印刷媒体732(印刷物)の画像との位置関係が一致し、ユーザがタッチした画像や文字に対応した情報の出力が正確に行なわれるようになる。
【0228】
なお、上述した各実施形態において、表示画面等に情報入力補助シート700(グリッドシート)を用いる場合、粘着剤によって貼付して用いるほか、表示画面上部から情報入力補助シート700(グリッドシート)を掛けて用いる等、他の方法によって用いてもよい。
【0229】
<キャリブレーション用マークが1個の場合について>
上述のキャリブレーション方法では、キャリブレーション用マークが2個以上必要であった。
【0230】
しかし、キャリブレーション用マークが1個のみであっても、キャリブレーションを行うことができる。以下、
図50〜51を用いて説明する。
【0231】
グリッドシートの座標系におけるグリッドシート上の単位長さ当たりのドット座標値とディスプレイ731の表示画像データの座標系におけるディスプレイ上の単位長さ当たりの座標値または印刷媒体732(印刷物)の印刷データの座標系における印刷媒体上の単位長さ当たりの座標値を、予め情報処理装置の記憶手段に記憶させておく。さらに、光学読み取り装置740(スキャナ)でキャリブレーション用マークにタッチする際に所定の軸回転方向でタッチする。これにより、キャリブレーション用マークが1個であっても、キャリブレーションを実行することが可能となる。
【0232】
図50(a)では、キャリブレーション用マークは、ディスプレイの所定の位置(図では中央)に設けられる。
図50(b)では、キャリブレーション用マークは、印刷物の所定の位置(図では右下)に設けられる。ユーザは、光学読み取り装置で、キャリブレーション用マークをタッチする。光学読み取り装置をタッチした際の所定の軸回転方向からのグリッドシートの回転角(つまりディスプレイに対するグリッドシートの回転角)を求めて、キャリブレーションを行うことが可能である。
【0233】
ここで、グリッドシートの座標系におけるタッチ位置のドット座標値(x
t、y
t)を、座標変換してディスプレイの表示画像データの座標系における対応する座標値(X
t、Y
t)を求める式を誘導する。
【0234】
グリッドシート上の単位長さ当たりのドット座標値をΔx、Δy、ディスプレイ上の単位長さ当たりの座標値をΔX、ΔYとすると、それぞれの座標軸の歪係数は、
α
x=ΔX/Δx、α
y=ΔY/Δyとなる。なお、各軸の歪率が同一であれば、α
x=α
yとなる。
【0235】
光学読み取り装置の軸回転方向をディスプレイの上向きに合致させ、キャリブレーション用マークをグリッドシートの上からタッチした場合において、ディスプレイの表示画像データの座標系におけるキャリブレーション用マークの座標値を(X
m、Y
m)、グリッドシートにおけるタッチ位置のドット座標値を(x
m、y
m)、その際の光学読み取り装置に対するグリッドシートの回転角θ
mとすると、
【0237】
となり、キャリブレーション用マークが1個のみの場合の座標変換式が求まる。この座標変換は、グリッドシートを印刷媒体732(印刷物)上に配置する場合も同様に使用できる。
【0238】
グリッドシートに比べて大きなディスプレイや印刷物に配置して使用する場合、ディスプレイや印刷物の隅角部にキャリブレーション用マークが配置されると、グリッドシートを隅角部すべてに配置できず、正確にキャリブレーションができないという問題が生じる。
【0239】
キャリブレーション用マークを1個とし、かつ、上式を用いれば、ディスプレイや印刷物に比べてグリッドシートが小さい場合であっても、正確にキャリブレーションを行うことができる。
【0240】
<その他のキャリブレーション方法>
図51は、キャリブレーションのさらに他の方法について説明する図である。
【0241】
所定の軸回転方向に合致しないで光学読み取り装置でキャリブレーション用マークをタッチすると、正確なキャリブレーションを実施できない。その場合、ディスプレイまたは印刷媒体にキャリブレーション用マークを水平方向または垂直方向に2個配置して、下式によりディスプレイまたは印刷媒体に対するグリッドシートの傾きを求め、その傾きをθ
mとして前述の変換式で座標変換を実施すれば正確なキャリブレーションが行える。
図86(a)は、ディスプレイにキャリブレーション用マークを垂直方向に2個配置した場合、(b)は、印刷媒体にキャリブレーション用マークを水平方向に2個配置した場合について示している。
【0242】
所定の2か所の情報入力補助シート700(グリッドシート)の座標系におけるマーク位置のドット座標値(x
m1、y
m1)、(x
m2、y
m2)、ディスプレイ731の表示画像データの座標系におけるカーソル位置の座標値(X
c1、Y
c1)、(X
c2、Y
c2)とすると、
θ
m=(y
m2−y
m1)/(x
m2−x
m1)
2か所のマーク位置が水平に配置された場合は、α
x=(X
c2−X
c1)/(x
m2−x
m1)
2か所のマーク位置が垂直に配置された場合は、α
y=(Y
c2−Y
c1)/(y
m2−y
m1)
ここで、なお、各軸の歪率が同一であれば、α
x=α
y=αとなることから、
【0244】
となり、キャリブレーション用マークが2個の場合の座標変換式が求まる。この座標変換は、グリッドシートを印刷媒体732(印刷物)上に配置する場合も同様に使用できる。
【0245】
なお、上式でα
x≠α
yなど、歪率が不明な場合については、本座標変換式で使用するグリッドシート上の単位長さ当たりのドット座標値Δxおよび/またはΔyは、グリッドシートに座標値と共に定義されたコード値に直接定義または、コード値に対応する情報として予め記憶媒体に記録しておいてもよいことはいうまでもない。
【0246】
[キャリブレーションの実施形態2 明るさのキャリブレーション]
キャリブレーションの実施形態2は、光学読み取り装置740(スキャナ)の明るさを調整するためのキャリブレーションである。
【0247】
一つのスキャナを、印刷媒体732(通常の印刷物)とグリッドシートの両方で使用する場合、グリッドシートと通常の印刷物とでは、赤外線の反射特性が大きく異なる。
【0248】
通常の印刷物で適正な明るさの赤外線反射光から赤外線の光量を定めると、赤外線反射光が不足するためにドットを認識できずに、ドットコードの復号ができない場合が多々ある。そこで、一つのスキャナで使用するグリッドシートや様々な印刷物毎に、予め適正な明るさの赤外線反射光から赤外線の光量を定めるキャリブレーションを実施することが望ましい。
【0249】
その際に、グリッドシートや様々な印刷物に対して、それぞれに予め定めたキャリブレーション情報(赤外線光量)を使用するためには、各グリッドシートや各印刷物を識別できることが必要である。この識別は、グリッドシートや印刷物に印刷されたドットパターンにより行うことができる。
【0250】
図52は、ドットパターンにXY座標値およびコード値が定義されている場合のドットコードフォーマットである。この場合、グリッドシート毎、印刷物毎に、それらを特定するためのグリッドシートID、印刷物ID等が、ドットパターン中にコード値として定義されている。
【0251】
図53(a)は、ドットパターンに、XY座標値のみが定義されている場合のドットコードフォーマットである。この場合、グリッドシート、印刷物を特定するためのグリッドシートID、印刷物ID等は、スキャナ内部等のメモリに設けられた、同図(b)に示すようなテーブルにより定義される。すなわち、グリッドシート毎、印刷物毎に、ユニークな座標範囲で形成される領域を判別し、グリッドシート、印刷物を特定できる。例えば、座標範囲が(X1〜X2、Y1〜Y2)で形成される領域の場合は、グリッドシートIDが1である。
【0252】
さらに、前述のように、スキャナを傾けた時など、赤外線反射光が不足する場合は、毎回の撮像画像の明るさを計測し、次回の撮影時に適正な光量に変更するリアルタイムキャリブレーションを実施すればよい。もちろん、赤外線反射光が多すぎてドットを認識できない場合も含むことは言うまでもない。また、予めキャリブレーションを実施しないで、リアルタイムキャリブレーションのみで、赤外線光量を制御してもよい。
【0253】
[キャリブレーションの実施形態3 サイズのキャリブレーション]
キャリブレーションの実施形態3は、グリッドシートまたは印刷媒体732の大きさを調整するためのキャリブレーションである。
【0254】
グリッドシートまたは印刷媒体732のドットパターンには、
図54に示すように、キャリブレーションパラメータがコード値として定義されている。キャリブレーションは、上述の「キャリブレーションの実施形態1」で示したように、グリッドシート等の所定位置(例えば四隅)をスキャナでタッチすること等により行われる。このキャリブレーションにより、グリッドシートまたは印刷媒体732の大きさが認識される。1回キャリブレーションを行った後、もう1回キャリブレーションを行ったときに、スキャナでタッチしただけで、ドットパターンに定義されたキャリブレーションパラメータから、キャリブレーションした情報を持って来る。
【0255】
なお、ドットパターンは、
図55に示すように、XY座標値だけが定義されていてもよい。この場合、キャリブレーションパラメータは、同図(b)に示すようなテーブルにより定義される。すなわち、グリッドシート毎または印刷媒体毎に、ユニークな座標範囲で形成される領域を判別し、各グリッドシートまたは各印刷媒体に付与されたキャリブレーションパラメータを特定できる。例えば、座標範囲が(X1〜X2、Y1〜Y2)で形成される領域の場合は、キャリブレーションパラメータが1である。
【0256】
このように、グリッドシート毎または印刷媒体毎にキャリブレーションパラメータを設けることにより、例えば、グリッドシートが貼付された電子黒板と、ドットパターンが印刷されたノートというように、異なる大きさを有する媒体に対しても、同一のスキャナを使用してキャリブレーションを行うことができる。また、1回キャリブレーションを行えば、再度のキャリブレーションは不要となるため、利便性にも優れている。
【0257】
<実施の形態の補足的な説明>
上記実施の形態は、以下の技術思想を包含するものである。
【0258】
(1)本発明に係る情報入力補助シートは、光学読み取り装置で接触または離反して読み取られるドットパターンが形成されたドットパターン読み取り面または当該ドットパターン読み取り面の反対面に、少なくとも所定の波長光を拡散反射する拡散反射層が形成され、所定の媒体面上または該媒体面近傍に配置または貼付される情報入力補助シートであって、前記光学読み取り装置は、前記所定の波長光を照射する照射手段と、少なくとも前記所定の波長光を透過させ、かつ可視光を遮断するフィルターと、少なくとも前記所定の波長光を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像されたドットパターン画像をドットコードに復号する復号化手段と、を備え、前記ドットパターンのドットは、前記ドットパターン読み取り面に少なくとも前記所定の波長光を吸収する特性または該所定の波長光を吸収する特性および可視光透過特性を有するインクで印刷され、前記拡散反射層は、前記照射手段で照射される前記所定の波長光がドットパターン読み取り面に対して拡散反射するように指向性反射材料を配置して形成された、ことを特徴とする。
【0259】
(2)さらに、前記指向性反射材料はポリマー分子である、ことを特徴とする。
【0260】
(3)さらに、前記拡散反射層は、前記ポリマー分子が異なる方向に積層された複数のセルを配置して形成された、ことを特徴とする。
【0261】
(4)さらに、前記拡散反射層は、前記ポリマー分子が同方向に積層された複数のセルの配向角度を変えて配置して形成された、ことを特徴とする。
【0262】
(5)さらに、前記拡散反射層は、前記セルの配向角度を規則的に変化させて配置して形成された、ことを特徴とする。
【0263】
(6)さらに、前記拡散反射層は、前記ドットパターン読み取り面に沿って前記ポリマー分子が平行に配向されるセルを所定の割合で配置して形成された、ことを特徴とする。
【0264】
(7)さらに、前記拡散反射層は、粉砕した前記セルを該セルと同一の屈折率を有する溶剤に封入し形成された、ことを特徴とする。
【0265】
(8)さらに、前記ポリマー分子および前記セルは少なくとも可視光を透過する指向性反射材料である、ことを特徴とする。
【0266】
(9)さらに、前記拡散反射層は、選択して拡散反射する前記所定の波長光の波長が異なる複数種類のポリマー分子を配置した、ことを特徴とする。
【0267】
(10)さらに、前記指向性材料は、光学積層体によって前記所定の波長光の反射光を入射方向に再帰性反射する、ことを特徴とする。
【0268】
(11)さらに、前記拡散反射層は、2つの透明層と、前記透明層の間に前記所定の波長光を反射して可視光を透過する表面部によって形成された凹部を備え、前記凹部の反射によって前記所定の波長光の反射光を入射方向に再帰性反射する、ことを特徴とする。
【0269】
(12)さらに、前記拡散反射層は、前記2つの透明層の内、ドットパターン読み取り面側の透明層に形成されている、ことを特徴とする。
【0270】
(13)さらに、前記拡散反射層は、ガラスまたは樹脂製の透明ビーズ単層を樹脂によって固定したビーズ層と、前記ビーズ層のビーズの形状に隣接して設けられ、前記所定の波長光を反射して可視光を透過するビーズ反射層を備え、前記ビーズとビーズ反射層の反射によって前記所定の波長光の反射光を入射方向に再帰性反射する、ことを特徴とする。
【0271】
(14)さらに、前記ドットパターンのドットは、波長が異なる複数種類の前記所定の波長光を吸収する特性または該所定の波長光を吸収する特性および可視光透過特性を有するインクで印刷された、ことを特徴とする。
【0272】
(15)さらに、前記ドットパターンが形成されるドットの所定位置に、所定の規則に基づいて前記インクで印刷するドットが配置された、ことを特徴とする。
【0273】
(16)さらに、前記拡散反射層は、少なくとも前記複数種類の波長光を拡散反射し、前記照射手段は、前記複数種類の波長光を照射し、前記フィルターは、少なくとも前記複数種類の波長光を透過させ、かつ可視光を遮断し、前記撮像手段は、少なくとも前記複数種類の波長光を撮像する、ことを特徴とする。
【0274】
(17)さらに、前記ドットパターン読み取り面の反対面に少なくとも可視光を投影可能なスクリーンが貼付され、該ドットパターン形成面に向けてプロジェクタで画像が投影される、ことを特徴とする。
【0275】
(18)さらに、前記所定の媒体は印刷物またはディスプレイまたは透明媒体である、ことを特徴とする。
【0276】
(19)さらに、前記ドットパターン読み取り面に少なくとも可視光および前記所定の波長光を透過する保護層が形成された、ことを特徴とする。
【0277】
(20)さらに、前記ドットパターンは、透明シートのドットパターン読み取り面の反対面に形成され、該透明シートを保護層として兼用する、ことを特徴とする。
【0278】
(21)さらに、前記ドットパターンには座標値または座標値およびコード値が符号化され、該座標値により前記光学読み取り装置によりドットパターンを読み取った位置が認識される、ことを特徴とする。
【0279】
(22)さらに、前記光学読み取り装置で読み取った前記座標値または前記コード値の少なくとも一部に定義されたインデックスにより、分類または唯一に特定される、ことを特徴とする。
【0280】
(23)さらに、前記所定の波長光は、赤外線または紫外線である、ことを特徴とする。
【0281】
(24)本発明に係るドットコード光学読み取り装置は、所定の媒体面上または該媒体面近傍に貼付または配置された情報入力補助シートに接触または離反して、該情報入力補助シートに形成されたドットパターンを読み取る光学読み取り装置であって、前記光学読み取り装置は、所定の波長光を照射する照射手段と、少なくとも前記所定の波長光を透過させ、かつ可視光を遮断するフィルターと、少なくとも前記所定の波長光を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像されたドットパターン画像をドットコードに復号化する復号化手段と、を備え、前記ドットパターンのドットは、少なくとも前記所定の波長光を吸収する特性または該所定の波長光を吸収する特性および可視光透過特性を有するインクで印刷された、ことを特徴とする。
【0282】
(25)さらに、復号化された前記ドットコードまたは該ドットコードに対応する命令および/またはデータを情報処理装置に送信する送信手段を、さらに備えた、ことを特徴とする。
【0283】
(26)さらに、復号化された前記ドットコードまたは該ドットコードに対応する命令および/またはデータに対応する情報を出力する出力手段を、さらに備えた、ことを特徴とする。
【0284】
(27)本発明に係るドットコード情報処理システムは、所定の媒体面上または該媒体面近傍に貼付または配置された情報入力補助シートと、前記情報入力補助シートに接触または離反して、該情報入力補助シートに形成されたドットパターンを読み取る光学読み取り装置と、からなる情報処理システムであって、前記光学読み取り装置は、所定の波長光を照射する照射手段と、少なくとも前記所定の波長光を透過させ、かつ可視光を遮断するフィルターと、少なくとも前記所定の波長光を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像されたドットパターン画像をドットコードに復号化する復号化手段と、を備え、前記ドットパターンのドットは、少なくとも前記所定の波長光を吸収する特性または該所定の波長光を吸収する特性および可視光透過特性を有するインクで印刷された、ことを特徴とする。
【0285】
(28)さらに、前記光学読み取り装置に、復号化された前記ドットコードまたは該ドットコードに対応する命令および/またはデータを情報処理装置に送信する送信手段を、さらに備えた、ことを特徴とする。
【0286】
(29)さらに、復号化されたドットコードまたは該ドットコードに対応する命令および/またはデータに対応する情報を出力する出力装置を、さらに加えた、ことを特徴とする。