特許第6561306号(P6561306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6561306
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】入れ歯
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/265 20060101AFI20190808BHJP
   A61C 13/277 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61C13/265
   A61C13/277
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-32203(P2019-32203)
(22)【出願日】2019年2月26日
【審査請求日】2019年2月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513278655
【氏名又は名称】西端 英典
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】西端 英典
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−109965(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1861165(KR,B1)
【文献】 特表2003−505188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/265
A61C 13/277
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
残存歯の付根近傍の背面と欠損歯の存在した馬蹄状の顎堤の表面とを覆い、当該顎堤の表面に仮歯肉を形成させる固定義歯床部と、
前記仮歯肉の表面で、前記欠損歯の位置に設けられる人工歯と、
ポリアミド樹脂から構成され、前記残存歯の付根近傍の正面を覆う可動義歯床部と、
前記固定義歯床部の左右方向の一方側に設けられ、前記可動義歯床部を口腔内の正面側に回動可能とするヒンジ部と、
前記固定義歯床部の左右方向の他方側に設けられる凹部と、
前記可動義歯床部の左右方向の他方側に設けられる凸部と、
前記凹部に設けられ、前記凸部の先端面と当接する凹部の当接面に、口腔内の左右方向の他方に沿って設けられる溝部と、
前記凸部に設けられ、前記凸部の先端面から口腔内の左右方向に出入可能に設けられる装着ピンと、
前記凸部に設けられ、前記装着ピンを口腔内の左右方向の他方側に押圧して、前記装着ピンを前記凸部の先端面から出した状態にする弾性部材と、
前記凹部の当接面を滑るように、前記凸部の先端面からの装着ピンの先端に形成される傾斜面と、
前記凸部に設けられ、前記装着ピンを口腔内の左右方向にスライド可能に保持し、前記凸部が前記凹部に装着中に口腔内の正面側に突出する突起部と、
を備え、
前記固定義歯床部を前記残存歯の付根近傍の背面及び前記顎堤の表面に被覆させて、前記ヒンジ部を介して、前記可動義歯床部を前記残存歯の付根近傍の正面に回動して被せて、前記凸部を前記凹部に装着すると、前記凹部の当接面が前記装着ピンの傾斜面に当接して、前記弾性部材の押圧に抗して、前記装着ピンを前記凸部の先端面から入った状態にし、前記装着ピンの傾斜面が前記凹部の溝部に接すると、前記弾性部材の押圧により、前記装着ピンを前記凸部の先端面から出た状態にして、前記装着ピンを前記溝部に装着し、前記突起部を口腔内の左右方向の一方側にスライドさせると、前記装着ピンが前記溝部から外れて、前記凸部が前記凹部から外れる
入れ歯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入れ歯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入れ歯に関する技術は、多数存在する。例えば、実開平4−60214号公報(特許文献1)には、残存歯を有する歯槽提に固定される義歯が開示されている。この義歯は、残存歯の嵌入される挿入孔より後部で義歯床の金属製基板に立設された支持軸と、挿入孔より前部で基板に設けられた係止棒と、支持軸に所定角度回動可能に嵌合された嵌合筒と係止棒に対して嵌脱自在でかつ前部に人工歯を固着された止め金と嵌合筒と止め金とを連結する抑え金とから形成され嵌合筒部が止め金の回動を可能にする人工歯により覆われた固定部材とからなる。そして、固定部材は、義歯が歯槽提に載置されて止め金が係止棒に係合する位置まで回動させられると抑え金が挿入孔内の残存歯を基板とともに把持する。これにより、歯槽提に対する義歯の着脱にあたり、歯提槽の残存歯に従来のように力がかかることがないので、歯茎に痛みを生じさせることを防止するとともに、残存歯が揺らぐことがないので、残存歯の寿命を長くすることが出来るとしている。
【0003】
特開2003−126121号公報(特許文献2)には、主義歯床と、補助義歯床とから成る挟持型有床義歯が開示されている。主義歯床は、舌側で、人工歯が固設されており頬側に開口し舌側末端に永久磁石構造体が固定されている連結穴が設けられている。補助義歯床は、頬側で、連結穴内に嵌入される嵌入部材の先端に永久磁石構造体に吸着されるキーパーが下側に固定されており、主義歯床の頬側に配置されてキーパーが永久磁石構造体に吸着された際に主義歯床との当接面にその当接面が密着する。補助義歯床はその歯列弓に沿った一方が隣接する残存歯の歯茎部に適合する形状を成し、歯列弓に沿った他方が隣接する残存歯又は主義歯床の隣接する人工歯の歯茎部に適合する形状を成している。主義歯床は、その歯列弓に沿った一方が隣接する残存歯の歯茎部に適合する形状を成し、他方が隣接するか又は隣接していない残存歯の歯茎部にそれぞれ適合する形状を成している。これにより、ガムや餅などのような粘着力の大きなものを咀嚼しても義歯が顎提から外れてしまう現象が発生せず、また未だ健全な残存歯が存在していればその残存歯を全く切削することがなく作製することが出来るとしている。
【0004】
又、特開2015−109965号公報には、残存歯が数本の患者の入れ歯が開示されている。この入れ歯は、固定義歯床部と、人工歯と、可動義歯床部と、ヒンジ部と、着脱部とを備える。固定義歯床部は、残存歯の付根近傍の口腔内の背面を覆うとともに、残存歯の無い馬蹄状の顎堤の表面及びアンダーカットを覆い、顎堤の表面に仮歯肉を形成させる。人工歯は、仮歯肉の表面に設けられ、失った歯に対応する。可動義歯床部は、残存歯の付根近傍の口腔内の正面を覆う。ヒンジ部は、固定義歯床部に対して可動義歯床部を口腔内の正面側に回動可能とする。着脱部は、固定義歯床部に対して可動義歯床部を口腔内の正面側で着脱可能とする。この入れ歯は、固定義歯床部を残存歯の付根付近の口腔内の背面と顎堤の表面とアンダーカットとに被覆させて、ヒンジ部を介して、可動義歯床部を残存歯の付根近傍の口腔内の正面に回動して被せて、着脱部を介して、被せた可動義歯床部を固定義歯床部に装着することで、固定義歯床部及び稼働義歯床部が残存歯の付根近傍の口腔内の周面を取り囲んだ状態となり、固定義歯床部及び可動義歯床部が、馬蹄状の顎堤及び残存歯に固定される。これにより、装着に違和感無く、咀嚼感を十分に得ることが可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−60214号公報
【特許文献2】特開2003−126121号公報
【特許文献3】特開2015−109965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、口腔内の歯は、残存歯を含めて微妙に動いている。そのため、残存歯に適合する入れ歯を設計する場合、残存歯が微妙に移動しても、入れ歯自身が微妙に変形して、残存歯に適合することが好ましい。
【0007】
又、残存歯を有する患者の多くが高齢者であることから、入れ歯には、高齢者でも簡単に装着及び取り外し出来る構成が求められている。
【0008】
前記特許文献1に記載の技術では、係止棒に止め金を係合する構成であるが、係止棒と止め金の形状が細かいとともに、口腔内では、係止棒と止め金が患者から見えないため、係止棒を止め金に適切に係合し難いという課題がある。
【0009】
前記特許文献2に記載の技術では、磁性材料に永久磁石構造体を磁気吸着力で吸着させる構成であるが、上述と同様に、磁性材料と永久磁石構造体の形状は細かく、口腔内で精度高く磁性材料に永久磁石構造体を当接させる必要があり、磁性材料に対して永久磁石構造体を吸着させ難いという課題がある。
【0010】
前記特許文献3に記載の技術では、入れ歯の装着及び取り外しに対応して、口腔内で装着キーをスライドさせる必要があり、装着キーの操作がし難いという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、残存歯に馴染みやすく、且つ、ワンタッチで簡単に装着及び取り外しをすることが可能な入れ歯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規な入れ歯を完成させた。即ち、本発明に係る入れ歯は、固定義歯床部と、人工歯と、可動義歯床部と、ヒンジ部と、凹部と、凸部と、溝部と、装着ピンと、弾性部材と、傾斜面と、突起部と、を備える。固定義歯床部は、残存歯の付根近傍の背面と欠損歯の存在した馬蹄状の顎堤の表面とを覆い、当該顎堤の表面に仮歯肉を形成させる。人工歯は、前記仮歯肉の表面で、前記欠損歯の位置に設けられる。可動義歯床部は、ポリアミド樹脂から構成され、前記残存歯の付根近傍の正面を覆う。ヒンジ部は、前記固定義歯床部の左右方向の一方側に設けられ、前記可動義歯床部を口腔内の正面側に回動可能とする。凹部は、前記固定義歯床部の左右方向の他方側に設けられる。凸部は、前記可動義歯床部の左右方向の他方側に設けられる。溝部は、前記凸部の先端面と当接する凹部の当接面に、口腔内の左右方向の他方に沿って設けられる。装着ピンは、前記凸部の先端面から口腔内の左右方向に出入可能に設けられる。弾性部材は、前記装着ピンを口腔内の左右方向の他方側に押圧して、前記装着ピンを前記凸部の先端面から出した状態にする。傾斜面は、前記凹部の当接面を滑るように、前記凸部の先端面からの装着ピンの先端に形成される。突起部は、前記装着ピンを口腔内の左右方向にスライド可能に保持する。
【0013】
本発明に係る入れ歯は、前記固定義歯床部を前記残存歯の付根近傍の背面及び前記顎堤の表面に被覆させて、前記ヒンジ部を介して、前記可動義歯床部を前記残存歯の付根近傍の正面に回動して被せて、前記凸部を前記凹部に装着すると、前記凹部の当接面が前記装着ピンの傾斜面に当接して、前記弾性部材の押圧に抗して、前記装着ピンを前記凸部の先端面から入った状態にし、前記装着ピンの傾斜面が前記凹部の溝部に接すると、前記弾性部材の押圧により、前記装着ピンを前記凸部の先端面から出た状態にして、前記装着ピンを前記溝部に装着し、前記突起部を口腔内の左右方向の一方側にスライドさせると、前記装着ピンが前記溝部から外れて、前記凸部が前記凹部から外れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る入れ歯によれば、残存歯に馴染みやすく、且つ、ワンタッチで簡単に装着及び取り外しをすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】残存歯を示す口腔の正面斜視図(図1A)と、入れ歯を装着した口腔の正面斜視図(図1B)である。
図2】可動義歯床部を被せる前の入れ歯の右側面斜視図(図2A)と、可動義歯床部を被せた後の入れ歯の右側面斜視図(図2B)と、である。
図3】可動義歯床部を被せる前の入れ歯の左側面斜視図(図3A)と、可動義歯床部を被せた後の入れ歯の左側面斜視図(図3B)と、である。
図4】固定義歯床部の左側面図と左側面斜視図(図4A)と、可動義歯床部の左側面斜視図と左側面図(図4B)と、である。
図5】凹部の平面図と正面図と右側面図とA−A線断面図(図5A)と、凸部の平面図と正面図と右側面図とA−A線断面図(図5B)と、である。
図6】凸部を凹部に装着する場合の断面図(図6A)と、凸部を凹部から取り外す場合の断面図(図6B)と、である。
図7】実施例におけるヒンジ部等の斜視図(図7A)と、実施例における凹部と凸部の斜視図(図7B)と、である。
図8】患者の口腔内の上顎の斜視図と正面斜視図と下顎の斜視図と、実施例の凹部と凸部の斜視図と下顎の入れ歯の平面図と、入れ歯装着後の患者の口腔内の下顎の斜視図と正面斜視図とである。
図9】患者の口腔内の上顎の斜視図と正面斜視図と下顎の斜視図と、他の実施例の凹部と凸部の斜視図と下顎の入れ歯の平面図と、入れ歯装着後の患者の口腔内の下顎の斜視図と正面斜視図とである。
図10】患者の口腔内の上顎の斜視図と正面斜視図と下顎の斜視図と、他の実施例の上顎の入れ歯の平面図と凹部と凸部の斜視図と、入れ歯装着後の患者の口腔内の上顎の斜視図と正面斜視図とである。
図11】患者の口腔内の上顎の斜視図と正面斜視図と下顎の斜視図と、他の実施例の上顎の入れ歯の平面図と凹部と凸部の斜視図と、入れ歯装着後の患者の口腔内の正面斜視図と下顎の斜視図とである。
図12】患者の口腔内の上顎の斜視図と正面斜視図と下顎の斜視図と、他の実施例の上顎と下顎の入れ歯の平面図と、入れ歯装着後の患者の口腔内の上顎の斜視図と正面斜視図と下顎の斜視図とである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る入れ歯の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
本発明の実施形態では、四つの残存歯を想定し、他の歯が全て欠損歯である場合の入れ歯を示す。残存歯2は、図1Aに示すように、右側の犬歯と、右側の第一小臼歯と、右側の第二小臼歯と、右側の第一大臼歯であり、欠損歯は、左右の中切歯と、左右の側切歯と、左側の犬歯と、左側の第一小臼歯と、左側の第二小臼歯と、左側の第一大臼歯と、左右の第二大臼歯である。
【0018】
本発明に係る入れ歯1(義歯)は、図1A図1B図2A図2B図3A図3Bに示すように、固定義歯床部10と、人工歯11と、可動義歯床部12と、ヒンジ部13と、凹部14と、凸部15と、を備える。凹部14と凸部15とは、着脱部を構成する。
【0019】
固定義歯床部10は、残存歯2の付根近傍の背面と欠損歯2の存在した馬蹄状の顎堤3の表面とを覆い、当該顎堤3の表面に仮歯肉を形成させる。ここで、顎堤とは、歯が無くなって歯肉だけになった部分を意味する。
【0020】
人工歯11は、仮歯肉(つまり、固定義歯床部10)の表面で、欠損歯の位置に設けられる。可動義歯床部12は、ポリアミド樹脂から構成され、残存歯2の付根近傍の正面を覆う。ヒンジ部13は、固定義歯床部10の左右方向の一方側(ここでは、右側)に設けられ、可動義歯床部12を口腔内の正面側に回動可能とする。
【0021】
凹部14は、固定義歯床部10の左右方向の他方側(ここでは、左側)に設けられる。凸部15は、可動義歯床部12の左右方向の他方側(左側)に設けられ、凹部14に装着される。
【0022】
本発明に係る入れ歯1は、更に、図4A図4B図5A図5Bに示すように、溝部16と、装着ピン17と、弾性部材18と、傾斜面19と、突起部20と、を備える。
【0023】
溝部16は、凸部15の先端面15sと当接する凹部14の当接面14sに、口腔内の左右方向の他方(左)に沿って設けられる。装着ピン17は、凸部15の先端面15sから口腔内の左右方向に出入可能に設けられる。
【0024】
弾性部材18は、装着ピン17を口腔内の左右方向の他方側(左側)に押圧して、装着ピン17を凸部15の先端面15sから出した状態にする。傾斜面19は、凹部14の当接面14sを滑るように、凸部15の先端面15sからの装着ピン17の先端に形成される。突起部20は、装着ピン17を口腔内の左右方向にスライド可能に保持する。
【0025】
そして、本発明に係る入れ歯1は、固定義歯床部10を残存歯2の付根近傍の背面及び顎堤3の表面に被覆させて、ヒンジ部13を介して、可動義歯床部12を残存歯2の付根近傍の正面に回動して被せて、凸部15を凹部14に装着すると、図6Aに示すように、凹部14の当接面14sが装着ピン17の傾斜面19に当接して、弾性部材18の押圧に抗して、装着ピン17を凸部15の先端面15sから入った状態にし、装着ピン17の傾斜面19が凹部14の溝部16に接すると、弾性部材18の押圧により、装着ピン17を凸部15の先端面15sから出た状態にして、装着ピン17を溝部16に装着する(装着動作)。
【0026】
又、本発明に係る入れ歯1は、図6Bに示すように、突起部20を口腔内の左右方向の一方側(ここでは、右側)にスライドさせると、装着ピン17が溝部16から外れて、凸部15が凹部14から外れる(取り外し動作)。
【0027】
これにより、残存歯2に馴染みやすく、且つ、ワンタッチで簡単に装着及び取り外しをすることが可能となる。
【0028】
即ち、本発明では、可動義歯床部12は、ポリアミド樹脂から構成されており、ポリアミド樹脂は、所定の可撓性(つまり、適度な粘弾性)を有するため、残存歯2が微妙に移動しても、可動義歯床部12の形状は、残存歯2の移動に追従して変動する。そのため、可動義歯床部12を残存歯2に適合することが可能となり、入れ歯1の装着に対する患者の違和感を軽減し、患者への長期間の入れ歯1の装着を可能にする。
【0029】
又、本発明では、装着動作で、患者が、固定義歯床部10を残存歯2及び顎堤3の表面に被せて可動義歯床部12を残存歯2に被せて、凸部15を凹部14に装着すると、装着ピン17の傾斜面19が凹部14の当接面14sを滑って装着ピン17を凸部15の内部へ入れる。そして、装着ピン17の傾斜面19が凹部14の溝部16に入ると、弾性部材18によって、装着ピン17が凸部15の外部へ出た状態となり、装着ピン17が自動的に溝部16に装着される。そのため、患者は、凸部15を凹部14に嵌める作業だけすれば、装着ピン17が自動的に溝部16に装着されることから、装着ピン17をスライドさせる操作を行う必要が無く、ワンタッチで簡単に入れ歯1を装着することが出来る。
【0030】
更に、本発明では、取り外し動作で、患者が、凸部15の突起部20を口腔内で一方側にスライドさせれば、装着ピン17が溝部16から外れて、凸部15が凹部14から簡単に外れる。そのため、患者は、突起部20を一方向にスライドさせる作業だけすれば、装着ピン17を簡単に溝部16から外すことが可能となり、ワンタッチで簡単に入れ歯1を取り外すことが出来る。
【0031】
特に、患者は口腔内を見ることが出来ないことから、従来のように、患者が口腔内で装着ピンをスライドさせることで、入れ歯を装着したり取り外したりすることは、通常、難しい。患者が高齢者であれば、尚更である。本発明では、凸部15の内部に弾性部材18を組み込むとともに、装着ピン17の先端に傾斜面19を形成させることで、上述のようなワンタッチの入れ歯1の装着及び取り外しを可能とするのである。又、弾性部材18の内蔵により、装着ピン17が溝部16に一度嵌ると、突起部20が操作されない限り、装着ピン17が溝部16に入った状態を維持する。そのため、患者が入れ歯1を装着している最中に、何らかの理由で、装着ピン17がスライドして、入れ歯1が外れるという事態を防止することが出来ることから、患者にとって入れ歯1の装着に違和感が無く、且つ、咀嚼感を十分に得ることが可能となるのである。
【0032】
ここで、残存歯2の本数に特に限定は無いが、例えば、1本から9本の範囲内であり、好ましくは、1本から5本の範囲内である。尚、図1図6に入れ歯1では、残存歯2を4本としている。
【0033】
又、固定義歯床部10の構成に特に限定は無いが、例えば、固定義歯床部10は、馬蹄状の顎堤3に対応する馬蹄状の仮歯肉を形成し、当該形成した仮歯肉のうち、残存歯2及び残存歯2の付根近傍に対応する部分を開口し、当該開口した部分の口腔内の正面側を開口して、可動義歯床部12が、当該開口した部分の口腔内の正面側に被さるように構成される。
【0034】
又、固定義歯床部10における顎堤3の表面を覆う部分に特に限定は無いが、例えば、顎堤3の表面が構成する隆起面を凸面として、当該凸面に嵌り込む凹面を有するよう構成される。又、固定義歯床部10の仮歯肉に特に限定は無いが、例えば、健常な歯肉の肉厚に対応する肉厚を有するよう構成される。又、固定義歯床部10が覆う対象に、更に、顎堤3のアンダーカットを含んでも良い。アンダーカットとは、歯や顎堤などの最大豊隆部よりも下方の陥没した部分を意味する。これにより、入れ歯1を強固に固定させることが出来る。
【0035】
又、固定義歯床部10の形状は、可動義歯床部12の装着態様に対応して、適宜設計変
更される。例えば、図4Aに示すように、可動義歯床部12に対面する部分が固定義歯床部10からくり貫かれて(削除されて)、可動義歯床部12が固定義歯床部10に装着された場合に、固定義歯床部10のくり貫かれた部分Hに可動義歯床部12が合わさって、全体として馬蹄状の健常な歯肉の形状に対応する仮歯肉となる。
【0036】
又、固定義歯床部10の構成のうち、残存歯2の付根近傍の背面を覆う部分に、寸法安定性に優れ、当該残存歯2の付根近傍の背面又は一部の周面に合わさる被膜材を更に設けても良い。更に、固定義歯床部10の構成のうち、残存歯2の付根近傍の位置により、仮歯肉が分離する場合、例えば、残存歯2が前歯に集中し、仮歯肉が馬蹄状の奥歯の顎堤3の表面に対応して二つ設けられる場合、各仮歯肉を連結する連結床を更に設けても良い。ここで、被膜材や連結床は、例えば、金属等の寸法安定性に優れる素材が選択される。又、被膜材や連結床に、リテンションビーズ等の粒子を予め複数設けて、これらの粒子に侵入するように固定義歯床部10を溶融固化することで、固定義歯床部10の寸法安定性を付与するとともに、被膜材や連結床に対する固定義歯床部10の剥がれを防止することが可能となる。
【0037】
又、固定義歯床部10を構成する材質に特に限定は無いが、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン系樹脂等を採用することが出来る。又、樹脂の他に金属等を一部採用しても構わない。例えば、上述のように、被膜材や連結床を組み込む場合は、樹脂と金属との組み合わせから構成される。
【0038】
又、人工歯11の本数に特に限定は無いが、例えば、健常者が有する歯の本数に対応して、残存歯2の本数と人工歯11の本数との合計を14本となるように構成して、残存歯2以外の欠損歯を人工歯11にして全て備えるよう構成することが出来る。又、人工歯11の本数は、患者の装着感に応じて、例えば、最右側又は最左側の人工歯(第二大臼歯)を欠損させて、義歯床部を構成しても良い。
【0039】
又、可動義歯床部12の構成に特に限定は無いが、例えば、図1図4に示すように、固定義歯床部10に対応して残存歯2の付根近傍を挟み込むよう構成される。ここで、可動義歯床部12が挟み込む残存歯2の付根近傍は、残存歯2の歯肉から歯頚部までの部分であっても、残存歯2の歯肉から歯冠の下方近傍までの部分であっても良い。固定義歯床部10と可動義歯床部12とが挟み込む残存歯2の付根近傍は、患者の残存歯2の状況、馬蹄状の額堤3の状況、残存歯2の動揺の程度等に応じて、適宜設計変更される。
【0040】
又、可動義歯床部12の数に特に限定は無いが、例えば、2つ以上の残存歯2が離れている場合には、残存歯2の数に対応する数としても良いし、2つ以上の残存歯2が集中している場合には、残存歯2の全ての数に対して一つの可動義歯床部12として、全ての残存歯2に跨るように一つの可動義歯床部12を設けても良い。
【0041】
又、可動義歯床部12の形態に特に限定は無いが、例えば、図1図4に示すように、固定義歯床部10に対面する可動義歯床部12は、歯と歯肉との境界(例えば、残存歯2と歯肉との境界、人工歯11と仮歯肉との境界)、つまり、歯の歯頚部で形成される波形状に対応する波形状を有し、固定義歯床部10に装着されると、この可動義歯床部12の波形状が、口腔の残存歯2の歯頚部と、固定義歯床部10の人工歯11の歯頚部とで形成される波形状に一致するよう構成される。
【0042】
又、可動義歯床部12を構成する材質は、ポリアミド樹脂であれば、特に限定は無いが、例えば、ポリアミド樹脂として脂肪族ポリアミド樹脂又は半芳香族ポリアミド樹脂を挙げることが出来る。脂肪族ポリアミド樹脂は、例えば、ナイロン6(PA6)、ナイロン11(PA11)、ナイロン12(PA12)、ナイロン46(PA46)、ナイロン66(PA66)、ナイロン92(PA92)、ナイロン99(PA99)、ナイロン610(PA610)、ナイロン612(PA612)、ナイロン912(PA912)、ナイロン1010(PA1010)、ナイロン1012(PA1012)、ナイロン6とナイロン12との共重合体(PA6/12)、ナイロン6とナイロン66との共重合体(PA6/66)等を挙げることが出来る。半芳香族ポリアミド樹脂は、例えば、ナイロン4T(PA4T)、ナイロン6T(PA6T)、ナイロンMXD6(PAMXD6)、ナイロン9T(PA9T)、ナイロン10T(PA10T)、ナイロン11T(PA11T)、ナイロン12T(PA12T)、ナイロン13T(PA13T)等を挙げることが出来る。
【0043】
又、ヒンジ部13の構成に特に限定は無いが、例えば、固定義歯床部10の一方(右側)の位置が、可動義歯床部12の一端部(右側端部)に対応してくり貫かれて、そのくり貫かれた部分に可動義歯床部12の一端部が配置(装着)された場合に、ヒンジ部13は、固定義歯床部10の一方の位置と可動義歯床部12の一端部とを内部で挿通し、回動の中心軸となる回動ピンとして構成することが出来る。
【0044】
又、ヒンジ部13(回動ピン)の形状に特に限定は無いが、例えば、図2に示すように、直線状であっても良いし、一方の先端が折れ曲ったL字状でも、両方の先端が折れ曲ったコの字状でも構わない。
【0045】
尚、図2に示すヒンジ部13は、回動ピンと、回動ピンを支持する支持部とを備え、支持部は、上面部と下面部と平面部とで構成され、断面形状がコの字状の枠体と、枠体の上面部と下面部との両面部にそれぞれ設けられた、回動ピンを挿通可能な挿通孔と、当該挿通孔の近傍で、枠体の上面部と下面部と平面部との端部にそれぞれ接続された側面部と、枠体の平面部と側面部との角部を、挿通孔の曲面に対応する曲面の形状とする曲面部とを備えている。
【0046】
又、凹部14の構成に特に限定は無いが、例えば、図5Aに示すように、正面部14aと背面部14bと底面部14cとで断面形状がコの字状を形成し、一方の側面部14d(ここでは、左側面部)を正面部14aと背面部14bと底面部14cとの端部にそれぞれ接続して構成される。ここで、左側面部14dの一方の面が凹部14の当接面14sに対応し、この当接面14sに溝部16が形成される。
【0047】
又、凸部15の構成に特に限定は無いが、例えば、装着ピン17と弾性部材18とが内蔵され、突起部20が外部に設けられるように略直方体の容器に構成される。
【0048】
又、溝部16の形状に特に限定は無いが、例えば、図5Aに示すように、略直方体の形状でも良いし、装着ピン17の先端の形状に対応する形状でも構わない。
【0049】
又、装着ピン17の形状に特に限定は無いが、例えば、図5Bに示すように、略直方体の形状でも良いし、円筒形状でも構わない。
【0050】
又、弾性部材18の構成に特に限定は無いが、例えば、図5Bに示すように、スプリングバネやコイルバネでも良いし、ゴムでも構わない。
【0051】
又、傾斜面19の構成に特に限定は無いが、例えば、図5Bに示すように、凸部15の先端面15sから出る装着ピン17の長さが、凸部15が凹部に装着される方向に向かって短くなるような傾斜面でも良いし、曲面でも構わない。
【0052】
又、突起部20の構成に特に限定は無いが、例えば、図5Bに示すように、凸部15の内部で装着ピン17に接続された略直方体でも良いし、球状や楕円形状であっても構わない。尚、図5Bでは、突起部20が装着ピン17と接続して、断面形状が略L字状又は略コの字状になっている。
【0053】
ここで、本発明では、更に、凸部15の側面15vと当接する凹部14の底面14vに設けられた係止片21と、凸部15の側面15vに設けられ、係止片21が係止される係止穴22とを更に備えても良い。これにより、凸部15を凹部14に装着すると、装着ピン17が凹部14の当接面14sを滑って凸部15の内部に入るとともに、凹部14の係止片21が凸部15の係止穴22に入って、凹部14に対する凸部15が位置決めされる。これにより、凹部14への凸部15の装着が円滑になるとともに、一度、凸部15が凹部14に装着されると、装着ピン17が溝部16に入るとともに、係止片21が係止穴22に入る。これにより、凹部14への凸部15の装着を強固にすることが可能となり、入れ歯1を安定して口腔内に固定することが可能となる。又、係止片21は、溝部16に対向する角部を面取りして傾斜面を構成して、凹部14への凸部15の装着を更に円滑にするよう構成しても良い。
【0054】
又、本発明では、可動義歯床部12に接続される凸部15の部分から可動義歯床部12に向かって延出された留め部23と、留め部23に設けられた貫通孔24とを更に備えても良い。これにより、製造の際に、可動義歯床部12は、ポリアミド樹脂の溶融固化により形成されるが、凸部15の留め部23と貫通孔24とに可動義歯床部12が侵入し、溶融固化するため、可動義歯床部12に対して凸部15を強固に組み込み、可動義歯床部12から凸部15を外れ難くすることが可能となる。
【0055】
さて、各部材の材質であるが、固定義歯床部10及び可動義歯床部12に使用されるポリアミド樹脂は、所定の可撓性を有するとともに寸法安定性に優れるナイロン系樹脂を採用することが出来る。人工歯11は、陶歯、樹脂歯、金属歯等を採用することが出来る。又、凹部14及び凸部15は、例えば、金−銀−パラジウム合金、コバルト−クロム合金、白金加金、チタン合金、白金加金等を採用することが出来る。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるも
のではない。
【0057】
先ず、金型を用いて、ヒンジ部13を鋳造により製造した。ヒンジ部13は、図7Aに示すように、上面部と下面部と平面部とで構成された枠体13aと、挿通孔13bと、側面部13cと、曲面部13dとを備える。又、樹脂成型を容易にするための補助部13eを用意した。補助部13eは、枠体13aの平面部に対応する蓋部13fと、側面部13cに外側から当接される当接部13gと、曲面部13dに対面し、当接部13gから側面部13cまでの間を空けて、挿通孔13bの曲面に対応する曲面の形状とし、枠体13aの内部に装着可能な補助曲面部13hとを備える。枠体13aを固定義歯床部10の所定位置に配置し、回動ピン13iを挿通孔13bに挿通させて、補助部13eで枠体13aを蓋した状態とし、その状態で、可動義歯床部12を構成するポリアミド樹脂を流し込んで成形し、補助部13eを取り除けば、回動ピン13iを軸として回動可能な可動義歯床部12を成形した。
【0058】
又、凹部14と凸部15とは、各部を、上述と同様に、金型を用いてそれぞれ鋳造により製造し、各部を組み立てて溶接することで、図7Bに示すように、凹部14と凸部15とを形成した。凹部14の幅方向の寸法は4mmと非常に小さい。
【0059】
さて、下顎の残存歯が6本の患者に本発明に係る入れ歯1を作成した。この患者の下顎には、図8に示すように、左右の中切歯、左右の側切歯、左右の犬歯が残存歯である。上顎には、治療歯を有するが、欠損歯は無い。
【0060】
そこで、下顎の残存歯2と顎堤3に対応する入れ歯1を作成した。入れ歯1の固定義歯床部10には、アクリル樹脂と金属とを使用し、可動義歯床部12には、ポリアミド樹脂を使用し、凹部14と凸部15とを用いて着脱部を構成した。
【0061】
このような下顎の入れ歯1を上述した患者に装着させたところ、下顎の入れ歯1が患者の下顎に強固に装着され、一見して、入れ歯1を嵌めているように見えないことが理解される。又、患者に装着感を聞いたところ、長期間使用しても、入れ歯1が残存歯2に適合し、装着に違和感が無く、十分な咀嚼感を得ることが出来るとのことであった。更に、入れ歯1は、ワンタッチで着脱可能となるため、使い易いとのことであった。
【0062】
他の実施例として、次に、下顎の残存歯が4本で、残存歯が離れている患者に本発明に係る入れ歯1を作成した。この患者の下顎には、図9に示すように、左右の犬歯、左側の第一小臼歯、左側の第二小臼歯が残存歯である。上顎には、治療歯を有するが、欠損歯は無い。
【0063】
そこで、上述と同様に、下顎の残存歯2と顎堤3に対応する入れ歯1を作成した。入れ歯1の固定義歯床部10には、アクリル樹脂と金属とを使用し、可動義歯床部12には、ポリアミド樹脂を使用し、凹部14と凸部15とを用いて着脱部を構成した。
【0064】
このような下顎の入れ歯1を上述した患者に装着させたところ、下顎の入れ歯1が患者の下顎に強固に装着され、上述と同様に、一見して、入れ歯1を嵌めているように見えないことが理解される。又、患者からは、入れ歯の残存歯への適合性の良さ、装着の違和感の無さ、咀嚼感の充実、ワンタッチ着脱による操作性の向上の評価を得た。
【0065】
他の実施例として、上顎の残存歯が5本で、残存歯が離れている患者に本発明に係る入れ歯1を作成した。この患者の上顎には、図10に示すように、左右の中切歯、左側の側切歯、右側の犬歯、左側の第一小臼歯が残存歯である。下顎には、治療歯を有するが、欠損歯は無い。
【0066】
そこで、上述と同様に、上顎の残存歯2と顎堤3に対応する入れ歯1を作成した。入れ歯1の固定義歯床部10には、アクリル樹脂と金属とを使用し、可動義歯床部12には、ポリアミド樹脂を使用し、凹部14と凸部15とを用いて着脱部を構成した。
【0067】
このような上顎の入れ歯1を上述した患者に装着させたところ、上顎の入れ歯1が患者の上顎に強固に装着され、上述と同様に、一見して、入れ歯1を嵌めているように見えないことが理解される。又、患者からは、上述と同様に、入れ歯の残存歯への適合性の良さ、装着の違和感の無さ、咀嚼感の充実、ワンタッチ着脱による操作性の向上の評価を得た。
【0068】
他の実施例として、上顎の残存歯が2本で、残存歯が離れている患者に本発明に係る入れ歯1を作成した。この患者の上顎には、図11に示すように、右側の側切歯、左側の第二大臼歯が残存歯である。下顎には、治療歯を有するが、欠損歯は無い。
【0069】
そこで、上述と同様に、上顎の残存歯2と顎堤3に対応する入れ歯1を作成した。入れ歯1の固定義歯床部10には、アクリル樹脂と金属とを使用し、可動義歯床部12には、ポリアミド樹脂を使用し、凹部14と凸部15とを用いて着脱部を構成した。
【0070】
このような上顎の入れ歯1を上述した患者に装着させたところ、上顎の入れ歯1が患者の上顎に強固に装着され、上述と同様に、一見して、入れ歯1を嵌めているように見えないことが理解される。又、患者からは、上述と同様に、入れ歯の残存歯への適合性の良さ、装着の違和感の無さ、咀嚼感の充実、ワンタッチ着脱による操作性の向上の評価を得た。
【0071】
他の実施例として、上顎の残存歯が4本で、下顎の残存歯が2本の患者に本発明に係る入れ歯1を作成した。この患者の上顎には、図12に示すように、右側の第一小臼歯、右側の第二小臼歯が残存歯であり、下顎には、左右の犬歯、左側の第一小臼歯、左側の第二小臼歯が残存歯である。
【0072】
そこで、上述と同様に、上顎と下顎の残存歯2と顎堤3に対応する入れ歯1を作成した。入れ歯1の固定義歯床部10には、アクリル樹脂と金属とを使用し、可動義歯床部12には、ポリアミド樹脂を使用し、凹部14と凸部15とを用いて着脱部を構成した。
【0073】
このような上顎と下顎の入れ歯1を上述した患者に装着させたところ、上顎と下顎の入れ歯1が患者の上顎と下顎のそれぞれに強固に装着され、上述と同様に、一見して、入れ歯1を嵌めているように見えないことが理解される。又、患者からは、上述と同様に、入れ歯の残存歯への適合性の良さ、装着の違和感の無さ、咀嚼感の充実、ワンタッチ着脱による操作性の向上の評価を得た。
【0074】
このように、本発明では、残存歯に馴染みやすく、且つ、ワンタッチで簡単に装着及び取り外しをすることが可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明に係る入れ歯は、高齢者はもちろん、残存歯が数本のどのような患者に採用する入れ歯として有用であり、残存歯に馴染みやすく、且つ、ワンタッチで簡単に装着及び取り外しをすることが可能な入れ歯として有効である。
【符号の説明】
【0076】
1 入れ歯
10 固定義歯床部
11 人工歯
12 可動義歯床部
13 ヒンジ部
14 凹部
15 凸部
16 溝部16
17 装着ピン
18 弾性部材
19 傾斜面
20 突起部
【要約】      (修正有)
【課題】残存歯に馴染みやすく、且つ、ワンタッチで簡単に装着及び取り外しをすることが可能な入れ歯を提供する。
【解決手段】可動義歯床部は、ポリアミド樹脂から構成され、残存歯の付根近傍の正面を覆う。ヒンジ部は、固定義歯床部の左右方向の一方側に設けられる。凹部14は、固定義歯床部の左右方向の他方側に設けられる。凸部15は、可動義歯床部の左右方向の他方側に設けられる。溝部16は、凸部の先端面15sと当接する凹部の当接面14sに、口腔内の左右方向の他方に沿って設けられる。装着ピン17は、凸部の先端面から口腔内の左右方向に出入可能に設けられる。弾性部材18は、装着ピンを口腔内の左右方向の他方側に押圧する。傾斜面19は、凸部の先端面からの装着ピンの先端に形成される。突起部20は、装着ピンを口腔内の左右方向にスライド可能に保持する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12