特許第6561340号(P6561340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561340
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/22 20060101AFI20190808BHJP
   F16L 19/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F16L33/22
   F16L19/04
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-115786(P2017-115786)
(22)【出願日】2017年6月13日
(65)【公開番号】特開2019-2437(P2019-2437A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】藤森 裕司
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−329214(JP,A)
【文献】 特表2013−519848(JP,A)
【文献】 実開平3−59586(JP,U)
【文献】 特開2010−216492(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0323110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 29/00 − 35/00
F16L 17/00 − 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体に差し込まれて前記管体の内表面と径方向へ対向する挿入部を有するニップルと、
前記ニップル前記挿入部が差し込まれた前記管体の外表面に対して軸方向へ移動自在に設けられる締め付け部材と、
前記ニップル及び前記締め付け部材の間に軸方向へ挟むように設けられる表示部材と、を備え、
前記ニップルは、前記締め付け部材と軸方向へ対向して設けられる突起部を有し、
前記締め付け部材は、前記ニップルに対する接近移動に伴って前記管体の前記外表面前記挿入部に向け径方向へ押し付けられるように形成される押圧部を有し、
前記表示部材は、前記ニップルの前記突起部と軸方向へ対向して傾斜し且つ前記ニップルに対する前記締め付け部材の接近移動に伴って前記突起部と突き当たるように形成されるガイド部位と、前記突起部に対する前記ガイド部位の突き当たりに伴って径方向及び周方向弾性的に拡径変形する変形部と、を有し、前記ニップルに対して前記締め付け部材が接近移動した締め付け状態で、前記変形部の拡径変形に伴い前記表示部材の全体が膨張して前記ニップル及び前記締め付け部材の間から外れることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記表示部材は、前記ニップルの前記突起部又は前記締め付け部材の先端部のいずれか一方に対して着脱自在に取り付けられる仮止め部を有することを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記表示部材が、前記ニップルに対して前記締め付け部材が接近移動した締め付け状態で、前記表示部材の強度以上に径方向及び周方向へ拡径変形する前記変形部を有することを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項4】
前記表示部材が、径方向及び周方向へ拡径変形に伴って破断する前記変形部を有することを特徴とする請求項記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質材料からなるパイプ又は軟質材料からなるホースやチューブなどの管体を配管接続するために用いられる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手として、導管又はホースを通って流れる媒体を通す穴を持つ接続体と、接続体にねじはめられているユニオンナットとの互いに向き合う端面の間に、組立て状態を再現又は認識可能にするための表示器として、2つの別個の表示環を設けた導管又はホース用接続装置がある(例えば、特許文献1参照)。
2つの別個の表示環は、接続体とユニオンナットにそれぞれ取付けられ、ストッパ面を設けている。組立て完了に達する前では、両方のストッパ面が周方向に延びる間隔を維持するために窓が生じ、この窓又はストッパ面を組立て状態を明らかにする目印と解釈できる。この状態からユニオンナットを回して、ユニオンナットに取付けられる表示環のストッパ面が回され、接続体にある表示環のストッパ面に当てることにより、窓が閉じられて、これから組立て完了の状態がわかるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5879368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の管継手では、接続体とユニオンナットに2つの表示環をそれぞれ設ける必要があるため、接続体及びユニオンナットの構造が複雑化してコストアップになるという問題があった。
また、既設の導管又はホース用接続装置に対しては、接続体やユニオンナットを表示環が設けられたものに部品交換しなければ対応できず、使用勝手が悪いという問題もあった。
このような状況下において、既設の部品を交換せず部品追加のみで、管の接続作業中や接続作業後において作業者や監督者などが管の締め付け状態を目視などにより、簡単な構造で且つ低コストに確認できる構造の管継手が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係る管継手は、管体に差し込まれて前記管体の内表面と径方向へ対向する挿入部を有するニップルと、前記ニップル前記挿入部が差し込まれた前記管体の外表面に対して軸方向へ移動自在に設けられる締め付け部材と、前記ニップル及び前記締め付け部材の間に軸方向へ挟むように設けられる表示部材と、を備え、前記ニップルは、前記締め付け部材と軸方向へ対向して設けられる突起部を有し、前記締め付け部材は、前記ニップルに対する接近移動に伴って前記管体の前記外表面前記挿入部に向け径方向へ押し付けられるように形成される押圧部を有し、前記表示部材は、前記ニップルの前記突起部と軸方向へ対向して傾斜し且つ前記ニップルに対する前記締め付け部材の接近移動に伴って前記突起部と突き当たるように形成されるガイド部位と、前記突起部に対する前記ガイド部位の突き当たりに伴って径方向及び周方向弾性的に拡径変形する変形部と、を有し、前記ニップルに対して前記締め付け部材が接近移動した締め付け状態で、前記変形部の拡径変形に伴い前記表示部材の全体が膨張して前記ニップル及び前記締め付け部材の間から外れることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第一実施形態に係る管継手を示す説明図であり、(a)が管体の締め付け前の一部切欠正面図、(b)が管体の締め付け後の一部切欠正面である。
図2】分解斜視図である。
図3】管体の締め付け過程を部分拡大して示す説明図であり、(a)が管体の締め付け前の状態を示す縦断正面図、(b)が管体の締め付け途中の状態を示す縦断正面図、(c)が管体の締め付け後の状態を示す縦断正面図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る管継手を示す説明図であり、(a)が管体の締め付け前の一部切欠正面図、(b)が管体の締め付け後の一部切欠正面である。
図5】分解斜視図である。
図6】管体の締め付け過程を部分拡大して示す説明図であり、(a)が管体の締め付け前の状態を示す縦断正面図、(b)が管体の締め付け途中の状態を示す縦断正面図、(c)が管体の締め付け後の状態を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る管継手Aは、図1図6に示すように、ニップル1又は締め付け部材2のいずれか一方に対して表示部材3を、ニップル1及び締め付け部材2の間に配置されるように取り付け、ニップル1に管体Bが差し込まれた状態で、その外側に被された締め付け部材2をニップル1に対して軸方向へ相対的に接近移動させる。これにより、ニップル1及び締め付け部材2の間に管体Bが径方向へ挟み込まれて引き抜き不能に接続される。ニップル1に対する締め付け部材2の締め付け状態は、表示部材3の状況によって作業者などが確認可能となる。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る管継手Aは、管体Bに差し込まれて管体Bの内表面B1と径方向へ対向する挿入部1aを有するニップル1と、ニップル1挿入部1aが差し込まれた管体Bの外表面B2に対して軸方向へ相対的に移動自在に設けられる締め付け部材2と、ニップル1及び締め付け部材2の間に取り付けられる表示部材3と、を主要な構成要素として備えている。
なお、締め付け部材2が移動する軸方向としては、ニップル1に対する管体Bの差し込み方向で且つニップル1に向け締め付け部材2が接近移動する方向を以下「管差し込み方向N」といい、管差し込み方向Nと逆向きの管体Bの抜け方向で且つニップル1から締め付け部材2が離隔移動する方向を以下「管抜け方向U」という。
【0008】
管体Bは、例えば硬質樹脂や金属などの硬質材料からなるパイプ、又は塩化ビニルなどの軟質合成樹脂やシリコーンゴムやその他のゴムなどの可撓性を有する軟質材料で成形される例えばホースやチューブなどである。さらに管体Bは、パイプカッターやハサミなどの刃物(図示しない)により所定長さに切断される。
管体Bとしては、平坦な内表面B1及び外表面B2を有し、その切断面B3が略垂直又は垂直に近い角度で切断されたものを用いることが好ましい。
ニップル1の挿入部1aに対しては、管体Bの切断面B3から所定長さの接続端部Baが差し込まれる。
管体Bの具体例として図示される例では、単層構造のパイプが用いられ、接続端部Baをその他の部位より拡径変形させた状態でニップル1の挿入部1aに沿って嵌合している。
また、その他の例として図示しないが、アルミニウムなどの金属層と硬質樹脂層などが一体的に積層された複数層構造のパイプを用いることや、単層構造又は複数層構造のホースやチューブなどを用いることや、管体Bの接続端部Baをその他の部位より拡径変形させずにニップル1の挿入部1aと嵌合することなどの変更が可能である。
【0009】
ニップル1は、例えば硬質合成樹脂や真鍮などの金属などの剛性材料で形成され、挿入部1aは、管体Bの接続端部Baの内径と略同じか又はそれよりも若干小さな外径を有する略円筒状に形成されている。さらにニップル1は、例えばステンレスなどの変形可能な剛性材料からなる板材をプレス加工やその他の成形加工することで、管体Bの内径と略同じか又は若干小さな外径を有する肉厚が薄い略円筒状に形成されるものを用いることも可能である。
ニップル1は、管体Bの接続端部Baに差し込まれる円筒状の挿入部1aと、後述する締め付け部材2の内面と径方向へ対向して設けられる案内部1bと、後述する締め付け部材2の先端面と軸方向へ対向して設けられる突起部1cと、を有している。
【0010】
案内部1bは、ニップル1に対して後述する締め付け部材2をその軸方向へ往復動自在に案内する部位である。
案内部1bの具体例として図1図6に示される例の場合には、後述する締め付け部材2の内面と螺合する雄ネジであり、この雄ネジをニップル1の挿入部1aと突起部1cの間に形成している。
突起部1cは、後述する締め付け部材2の先端面や後述する表示部材3と軸方向へ対向するように突出形成されている。
突起部1cの具体例として図1図6に示される例の場合には、軸方向(管差し込み方向Nや管抜け方向U)と交差する周方向へ環状に連続した鍔状(フランジ状)に突出形成されている。
また、その他の例として図示しないが、案内部1bとして雄ネジに代え軸方向に延びる直線溝やスライダー機構などを設けることや、突起部1cの形状を環状に代えて周方向へ不連続な形状に形成することなどの変更も可能である。
【0011】
さらに、ニップル1の挿入部1aには、管体Bの差し込み空間と径方向に対向して周方向へ延びる環状凹部1dを形成し、環状凹部1d内に例えばOリングなどの弾性変形可能な環状のシール部材1eを嵌入装着して軸方向へ移動不能に保持することが好ましい。
シール部材1eは、その外周端をニップル1の挿入部1aから若干突出させて、差し込まれた管体Bの接続端部Baの内表面B1と圧接させている。図示される例では、ニップル1の挿入部1aにおいて軸方向へ環状凹部1d及びシール部材1eが複数組(二組)それぞれ所定間隔を空けて配置されている。
また、その他の例として図示しないが、環状凹部1d及びシール部材1eを一組又は三組以上配置することや、軸方向へ環状突起と環状溝がそれぞれ交互に複数ずつ形成された竹の子状に形成することなどの変更も可能である。
【0012】
また、ニップル1は、他の機器(図示しない)や他の管体(図示しない)などが接続される継手本体11を設け、継手本体11に接続される他の機器や他の管体などを管体Bと連結させることが好ましい。
図示される例では、ニップル1の突起部1cよりも管差し込み方向Nの奥側に、筒状の継手本体11を一体形成している。継手本体11には、他の機器や他の管体などの管接続口(図示しない)に接続するための接続部位11aと、工具(図示しない)が周方向に係合する工具係合部位11bと、がそれぞれ一体形成されている。接続部位11aは、斯かる管継手Aに接続する他の機器や他の管体などにおける管接続口の内周面に内ネジが刻設される場合には、これと対応する外ネジを刻設し、また管接続口の外周面に外ネジが刻設される場合には、これと対応する内ネジを刻設している。図示例では、接続部位11aとして外ネジが刻設されている。工具係合部位11bの形状としては、周方向へ凹部と凸部が交互に連続して形成されている。
また、その他の例として図示しないが、ニップル1と継手本体11を別個に形成して着脱自在に取り付けることや、工具係合部位11bの形状をスパナやレンチなどが嵌合する六角ナット形状などに変更することも可能である。
【0013】
締め付け部材2は、例えば硬質合成樹脂やステンレスなどの錆難い金属材料などの剛性材料で、その軸方向一部がニップル1の挿入部1aに差し込まれた管体Bの接続端部Baよりも大きい内径を有する略円筒状に形成されている。
締め付け部材2は、その内面にニップル1の案内部1bと径方向へ対向して設けられる移動手段2aと、ニップル1及び挿入部1aが差し込まれた管体Bの接続端部Baと径方向へ対向して設けられる押圧部2bと、ニップル1の突起部1cや後述する表示部材3と軸方向へ対向する先端部2cと、を有している。
さらに締め付け部材2は、その露出部位(外面)に、工具(図示しない)が周方向に係合する工具係合部2dを有することが好ましい。
【0014】
移動手段2aは、ニップル1の案内部1bと連係して軸方向へ往復動自在に移動させる部位である。さらに移動手段2aは、ニップル1の案内部1bに対して周方向へ回転自在に連係させて、締め付け部材2の回転操作により往復動させることが好ましい。
詳しく説明すると、移動手段2aは、ニップル1の案内部1bに沿った管差し込み方向Nへの相対的な移動により、ニップル1の突起部1cに向けて先端部2cを接近させるように構成される。これと逆の管抜け方向Uへの相対的な移動により、ニップル1の突起部1cから先端部2cを離隔させるように構成される。
移動手段2aの具体例として図1図6に示される例の場合には、案内部1bの螺旋溝と螺合する雌ネジであり、この螺子を締め付け部材2の内面一端側に部分形成している。
押圧部2bは、ニップル1の案内部1bに対する移動手段2aの管差し込み方向Nへの接近移動に伴って、管体Bの接続端部Baの外表面B2を挿入部1aに向け径方向へ押し付け(締め付け)、管体Bの接続端部Baの内表面B1がニップル1の挿入部1aに密着される部位である。
押圧部2bの具体例として図1図6に示される例の場合には、管抜け方向Uへ向け徐々に小径となるように傾斜するテーパー面であり、このテーパー面を締め付け部材2の内面他端側に部分形成して、管体Bの接続端部Baの外表面B2と直接的に接触させている。
工具係合部2dの具体例として図1図6に示される例の場合には、締め付け部材2の外面一端側に沿って略矩形状の凹状部位及び凸状部位が周方向へ交互に連続して形成されている。
また、その他の例として図示しないが、移動手段2aとして雌ネジに代え軸方向に延びる直線突起やスライダー機構などを設けて直線的に移動させることや、押圧部2bの形状や配置を図示例以外に変更することも可能である。さらに押圧部2bの内側に弾性変形可能なスリーブを介装して押圧部2bが管体Bの接続端部Baの外表面B2と間接的に接触するように変更することや、工具係合部2dの形状や配置を図示例以外に変更することも可能である。
【0015】
表示部材3は、ニップル1に対する締め付け部材2の締め付け状態を作業者などに向け表示して目視や触診などで容易に確認可能にするための締め付け確認手段である。表示部材3の取り付け状態では、ニップル1の突起部1cと締め付け部材2の先端部2cとの間に形成される空間に対して、表示部材3が軸方向へ挟み込まれるように配置される。
表示部材3は、軟質合成樹脂などの弾性変形可能な材料で、図1図6に示されるように、その全体形状を締め付け部材2の外周面全体に沿った環状(リング状)に形成することが好ましい。
さらに表示部材3は、ニップル1の案内部1bに対する締め付け部材2の移動手段2aの相対的な接近移動に伴って軸方向又は径方向などへ弾性的に変形する変形部3Dを有する。
変形部3Dは、ニップル1の突起部1cに向けて締め付け部材2の先端部2cを接近移動させることにより、軸方向又は径方向などへの変形量が徐々に増大するように構成されている。
さらに、表示部材3は、ニップル1の突起部1c又は締め付け部材2の先端部2cのいずれか一方に対して、着脱自在で且つ表示部材3を落下不能に取り付ける(保持する)ための仮止め部3Hを有することが好ましい。
【0016】
表示部材3の一例として図1(a)(b)〜図3(a)(b)(c)に示される場合には、ニップル1の突起部1cに向かう締め付け部材2の先端部2cの接近移動により、その一部となる変形部3Dを軸方向へ弾性変形させて、表示部材3の全体形状が軸方向へ圧縮変形する第一表示部材31を用いている。
第一表示部材31は、大径に形成される外側部位31aと、外側部位31aよりも小径に形成される内側部位31bと、外側部位31a及び内側部位31bに亘って弾性変形可能に形成される連結部位31cと、を有する。
連結部位31cの強度は、ニップル1の突起部1cに向かう締め付け部材2の先端部2cの接近移動に伴って、図3(b)に示されるように内側部位31bが突起部1cに突き当たることにより、その際に発生する反力で連結部位31cが押圧変形するように構成されている。
すなわち、第一表示部材31では、連結部位31cが変形部3Dに該当している。連結部位31cの強度は、第一表示部材31が所定サイズまで圧縮した時に、外側部位31aと内側部位31bが径方向へ重なり合うように設定されている。
このため第一表示部材31は、図1(b)及び図3(c)に示されるように、ニップル1の突起部1cに対して締め付け部材2の先端部2cを最も接近移動させた管体Bの締め付け後の状態(締め付け完了状態)では、変形部3D(連結部位31c)の変形により外側部位31aと内側部位31bが径方向へ重なり合うように潰れるように構成されている。
【0017】
第一表示部材31として図示例の場合には、環状の外側部位31aと環状の内側部位31bが軸方向へ1つずつ並べられ、これら両者間に連結部位31cを周方向へ複数それぞれ所定間隔ごとに一体形成している。
内側部位31bの少なくとも表面には、外側部位31aの表面色と異なる色の目印部3Mを有している。
外側部位31aには、締め付け部材2の先端部2cに対し着脱自在に取り付けられる仮止め部3Hとして、径方向へ弾性変形可能な筒状部位31Hを周方向の複数箇所で分離して形成している。
図1(b)及び図3(c)に示される管体Bの締め付け完了状態では、変形部3Dとなる連結部位31cが破断して、外側部位31aと内側部位31bを分離させている。これにより、内側部位31bの表面の目印部3Mが外側部位31aの内方に隠れて、外方から目視不能となる。
なお、図示例以外の変形例として図示しないが、軸方向へ複数個並べた外側部位31aの間に内側部位31bが配置され、これらの間に連結部位31cを形成することや、第一表示部材31の全体形状を環状(リング状)に代えて、締め付け部材2の外周面の一部に沿って略C字形などの円弧状に形成することも可能である。さらに仮止め部3Hとなる筒状部位31Hの形状などを変更することや、管体Bの締め付け完了状態では、連結部位31cが破断せずに弾性変形したままの状態が保持されるように変更することも可能である。
【0018】
また、表示部材3の他の例として図4(a)(b)〜図6(a)(b)(c)に示される場合には、ニップル1の突起部1cに向かう締め付け部材2の先端部2cの接近移動により、その一部となる変形部3Dを径方向及び周方向へ弾性的に拡径変形させて、表示部材3の全体が膨張する第二表示部材32を用いている。
第二表示部材32は、周方向へ帯状に形成される幅広部位32aと、幅広部位32aよりも小幅に形成される幅狭部位(ブリッジ)32bと、ニップル1の突起部1cと軸方向へ対向する幅広部位32aの端面に形成されるガイド部位32cと、を有する。
ガイド部位32cは、径方向外側へ向かって管差し込み方向Nへ徐々に突出するように傾斜している。ガイド部位32cの傾斜角度は、ニップル1の突起部1cに向かう締め付け部材2の先端部2cの接近移動に伴って、図6(b)に示されるようにガイド部位32cが突起部1cに突き当たることにより、幅広部位32aを拡径変形させる力が発生するような角度に設定されている。
すなわち、第二表示部材32では、幅狭部位32bが変形部3Dに該当している。幅狭部位32bの強度は、第二表示部材32が所定の拡径サイズまで膨張変形(伸び変形)するが、これ以上に膨張変形した時には幅狭部位32bに亀裂が発生するように設定されている。
このため第二表示部材32は、図4(b)及び図6(c)に示されるように、ニップル1の突起部1cに対して締め付け部材2の先端部2cを最も接近移動させた管体Bの締め付け後の状態(締め付け完了状態)では、幅狭部位32bがその強度を上回る状況まで径方向及び周方向へ膨張変形して、幅狭部位32bに亀裂が入るか、又は亀裂の進展により破断に至るように構成されている。
【0019】
第二表示部材32として図示例の場合には、環状の幅広部位32aの一側のみに片寄って幅狭部位32bが周方向へ複数それぞれ所定間隔ごとに一体形成されている。
幅広部位32aには、締め付け部材2の先端部2cに対し着脱自在に取り付けられる仮止め部3Hとして、爪状のフック32Hを周方向へ複数それぞれ所定間隔ごとに形成している。
図4(b)及び図6(c)に示される管体Bの締め付け完了状態では、幅狭部位32bに生じた亀裂が進展して破断させ、ニップル1の突起部1cと締め付け部材2の先端部2cとの間から第二表示部材32が外れる。
なお、図示例以外の変形例として図示しないが、第二表示部材32の全体形状を環状(リング状)に代えて、締め付け部材2の外周面の一部に沿って略C字形などの円弧状に形成することや、仮止め部3Hとなるフック32Hの形状や形成個数などを変更することが可能である。さらに、管体Bの締め付け完了状態では、幅狭部位32bに生じた亀裂が破断せずに弾性変形したままの状態が保持されるように変更することも可能である。
【0020】
このような本発明の実施形態に係る管継手Aによると、作業者がニップル1及び締め付け部材2の間に表示部材3を挟み込み、管体Bにニップル1が差し込まれたセット状態で、ニップル1に対して締め付け部材2を接近移動させることにより、管体Bの締め付けが開始される。[図1(a),図3(a)及び図4(a),図6(a)参照]
ニップル1に対する締め付け部材2の接近移動に伴って、表示部材3がニップル1と締め付け部材2の間に挟まってその後の更なる接近移動により、表示部材3の変形部3Dが軸方向や径方向などへの変形を開始する。[図3(b)及び図6(b)参照]
その後の管体Bの締め付け完了状態では、変形部3Dが最も変形して表示部材3が極限状態に至る。[図1(b),図3(c)及び図4(b),図6(c)参照]
このような変形状況は、作業者がニップル1に対して締め付け部材2を接近移動したことを示す目印となり、作業者などが目視や触診などで容易に確認でき、管体Bの接続状態を簡単に判断可能になる。
また、作業者がニップル1に対する締め付け部材2の接近移動を途中で止めた管体Bの未接続状態では、表示部材3の変形部3Dが完全に変形し終わっておらず、作業者などが目視や触診などで容易に確認できる。[図3(b)及び図6(b)参照]
この場合には、作業者が締め付け部材2の移動不足であることを確認可能となる。
したがって、管体Bの接続作業直後や接続完了から時間経過後に作業者や監督者などの経験又は知識が無い者であっても管体Bの締め付け状態を目視や触診などで簡単に確認することができる。
その結果、接続体とユニオンナットに2つの表示環をそれぞれ設ける必要がある従来のものに比べ、既設の部品を交換せず部品追加のみで、管体Bの接続作業中や接続作業後において作業者や監督者などが管体Bの締め付け状態を目視などにより、簡単な構造で且つ低コストに確認できる。このため、作業者や監督者や現場管理責任者などが管体Bの配管作業を安心して行える。
【0021】
特に、ニップル1に対して締め付け部材2が最も接近移動した状態(管体Bの締め付け完了状態)で、表示部材3(第一表示部材31)が軸方向へ圧縮変形して径方向へ重なり合う変形部3D(連結部位31c)を有することが好ましい。
この場合には、管体Bの締め付け完了状態において、変形部3D(連結部位31c)の変形により表示部材3(第一表示部材31)が軸方向へ圧縮変形して径方向へ重なり合うように潰れる。[図1(b),図3(c)参照]
したがって、表示部材3(第一表示部材31)の変形状況(潰れ状況)を目視や触診などの確認作業により誰にでも管体Bの締め付け作業が完了したことを簡単に判断することができる。
その結果、天井裏や床下などのような人が管体Bの接続箇所に接近不能な場合であっても、最適な管体Bの締め付け状態を簡単に且つ正確に確認でき、適切なメンテナンス作業を実施することが可能になる。
【0022】
さらに、表示部材3(第一表示部材31)が径方向へ重なり合って内方に隠れる目印部3Mを有することが好ましい。
この場合には、管体Bの締め付け完了状態において、表示部材3(第一表示部材31)が径方向へ重なり合って目印部3Mが内方に隠れ、その外方から目視不能となる。[図1(b),図3(c)参照]
したがって、管体Bの締め付け状態を表示部材3(第一表示部材31)に生じる目印部3Mの有無により目視の確認作業で素早く且つ簡単に判断することができる。
その結果、目視による確認作業を簡素化できて判断ミスの防止が図れる。
【0023】
また、ニップル1に対して締め付け部材2が最も接近移動した状態で、表示部材3(第二表示部材32)がその強度以上に径方向及び周方向へ拡径変形する変形部3D(幅狭部位32b)を有することが好ましい。
この場合には、管体Bの締め付け完了状態において、変形部3D(幅狭部位32b)がその強度を上回る状況まで径方向及び周方向へ膨張変形して、幅狭部位32bに亀裂が入る。[図4(b),図6(c)参照]
したがって、管体Bの締め付け状態を表示部材3(第二表示部材32)に生じる亀裂の有無により目視や触診などの確認作業で素早く且つ簡単に判断することができる。
その結果、天井裏や床下などのような人が管体Bの接続箇所に接近不能な場合であっても、最適な管体Bの締め付け状態を簡単に且つ正確に確認でき、適切なメンテナンス作業を実施することが可能になる。
【0024】
またさらに、表示部材3(第二表示部材32)が、径方向及び周方向へ拡径変形に伴って破断する変形部3D(幅狭部位32b)を有することが好ましい。
この場合には、管体Bの締め付け完了状態において、変形部3D(幅狭部位32b)が破断して、ニップル1及び締め付け部材2の間から表示部材3(第二表示部材32)が外れる。[図4(b),図6(c)参照]
したがって、管体Bの締め付け状態を表示部材3(第二表示部材32)に生じる破断や外れにより目視や触診などの確認作業で素早く且つ簡単に判断することができる。
その結果、目視や触診などによる確認作業を簡素化できて判断ミスの防止が図れる。
【0025】
なお、前示の第一実施形態及び第二実施形態において図示例では、締め付け部材2の先端部2cに対して仮止め部3Hにより表示部材3を着脱自在で且つ落下不能に取り付けたが、ニップル1の突起部1cに対して仮止め部3Hにより表示部材3を着脱自在で且つ落下不能に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
A 管継手 1 ニップル
1a 挿入部 1c 突起部
2 締め付け部材 2a 移動手段
2b 押圧部 2c 先端部
3 表示部材 3D 変形部
3M 目印部 31 第一表示部材
31c 連結部位 32 第二表示部材
32b 幅狭部位 B 管体
B1 内表面 B2 外表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6