特許第6561386号(P6561386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561386
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】トランジスタ、表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20190808BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20190808BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20190808BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01L29/78 616A
   H01L29/78 616V
   H01L29/78 617K
   H01L29/78 617S
   H01L29/78 617U
   H01L29/78 618B
   G02F1/1368
   G09F9/30 338
   H01L27/32
   H05B33/14 A
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-82745(P2018-82745)
(22)【出願日】2018年4月24日
(62)【分割の表示】特願2016-534309(P2016-534309)の分割
【原出願日】2015年5月19日
(65)【公開番号】特開2018-164087(P2018-164087A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-145809(P2014-145809)
(32)【優先日】2014年7月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 宜浩
【審査官】 脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−228622(JP,A)
【文献】 特開2014−123670(JP,A)
【文献】 特開2013−168639(JP,A)
【文献】 特開2012−015436(JP,A)
【文献】 特開平10−079513(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0070206(US,A1)
【文献】 特開2008−103686(JP,A)
【文献】 特開平11−354800(JP,A)
【文献】 特開2009−272427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
G02F 1/1368
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 29/786
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっており、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記低抵抗領域は、前記酸化物半導体膜の前記高抵抗膜側の厚み方向の一部に設けられている
トランジスタ。
【請求項2】
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっており、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記拡散領域の前記金属の濃度は、前記低抵抗領域に近い位置から前記チャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっている
トランジスタ。
【請求項3】
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域から離間して設けられるとともに前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記低抵抗領域は、前記酸化物半導体膜の前記高抵抗膜側の厚み方向の一部に設けられている
トランジスタ。
【請求項4】
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域から離間して設けられるとともに前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記拡散領域の前記金属の濃度は、前記低抵抗領域に近い位置から前記チャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっている
トランジスタ。
【請求項5】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを備え、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっており、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記低抵抗領域は、前記酸化物半導体膜の前記高抵抗膜側の厚み方向の一部に設けられている
表示装置。
【請求項6】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを備え、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっており、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記拡散領域の前記金属の濃度は、前記低抵抗領域に近い位置から前記チャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっている
表示装置。
【請求項7】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを備え、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域から離間して設けられるとともに前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記低抵抗領域は、前記酸化物半導体膜の前記高抵抗膜側の厚み方向の一部に設けられている
表示装置。
【請求項8】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを備え、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域から離間して設けられるとともに前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記拡散領域の前記金属の濃度は、前記低抵抗領域に近い位置から前記チャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっている
表示装置。
【請求項9】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを含む表示装置を備え、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっており、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記低抵抗領域は、前記酸化物半導体膜の前記高抵抗膜側の厚み方向の一部に設けられている
電子機器。
【請求項10】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを含む表示装置を備え、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっており、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記拡散領域の前記金属の濃度は、前記低抵抗領域に近い位置から前記チャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっている
電子機器。
【請求項11】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを含む表示装置を備え、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域から離間して設けられるとともに前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記低抵抗領域は、前記酸化物半導体膜の前記高抵抗膜側の厚み方向の一部に設けられている
電子機器。
【請求項12】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを含む表示装置を備え、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極に対向するとともに平面視で前記ゲート電極に重なるチャネル領域と、前記チャネル領域から離間して設けられるとともに前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に配置され、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、
前記低抵抗領域に接して設けられ、前記低抵抗領域および前記拡散領域の前記金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜と
を備え、
前記拡散領域は、平面視で前記ゲート電極に重ならず、かつ、前記ゲート絶縁膜の前記第1面に重なる位置に配置され、
前記拡散領域の前記金属の濃度は、前記低抵抗領域に近い位置から前記チャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっている
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、酸化物半導体膜を用いたトランジスタ、そのトランジスタを備えた表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブ駆動方式の液晶表示装置や有機EL(Electroluminescence)表示装置は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を駆動素子として用いている。近年では、ディスプレイの大画面化および高速駆動化に伴い、薄膜トランジスタの特性に対する要求が非常に高まっている。酸化亜鉛(ZnO)または酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物半導体を薄膜トランジスタに用いることにより、高い移動度が得られ、また、大面積化も可能である。このため、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの開発が活発に行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ディスプレイの高速駆動化には、薄膜トランジスタに流すことのできる電流量を大きくする、即ち移動度を向上させることに加え、薄膜トランジスタに発生する寄生容量を低減することが必要となる。薄膜トランジスタに生じる寄生容量を低減することにより、信号の遅延などを防止することができる。
【0004】
例えば非特許文献1には、セルフアライン構造を有するトップゲート型の薄膜トランジスタが示されている。この薄膜トランジスタは、酸化物半導体膜のチャネル領域上に、ゲート電極およびゲート絶縁膜を平面視で同位置に設けた後、酸化物半導体膜のゲート電極およびゲート絶縁膜から露出された領域を低抵抗化してソース・ドレイン領域(低抵抗領域)を形成するものである。例えば、酸化物半導体膜の低抵抗領域には、アルミニウム(Al)が含まれている。このようなセルフアライン構造を有する薄膜トランジスタでは、ゲート電極とソース・ドレイン電極との交差領域に形成される寄生容量が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−33836号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】N.Morosawa et al, Journal of SID Vol.20 Issue 1,2012 pp47-52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば薄膜トランジスタを製造する際に行うアニール工程等により、低抵抗領域以外の部分にアルミニウム等が拡散する(拡散領域)。この拡散領域では、酸化物半導体膜の抵抗値が低くなる。したがって、ゲート電極と平面視で重なる位置、即ちチャネル領域の一部に拡散領域が形成されると、ゲート電極と拡散領域との間に寄生容量が発生する。
【0008】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、寄生容量の低減が可能なトランジスタ、表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術による第1のトランジスタは、ゲート電極と、ゲート電極に対向するとともに平面視でゲート電極に重なるチャネル領域と、チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、チャネル領域と低抵抗領域との間の低抵抗領域に隣接する位置に配置され、低抵抗領域の金属の濃度よりも低い濃度で金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜とゲート電極との間に設けられ、より酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、よりゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、低抵抗領域に接して設けられ、低抵抗領域および拡散領域の金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜とを備え、ゲート絶縁膜の第1面のチャネル長方向の長さが、ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっており、拡散領域は、平面視でゲート電極に重ならず、かつ、ゲート絶縁膜の第1面に重なる位置に配置され、低抵抗領域は、酸化物半導体膜の高抵抗膜側の厚み方向の一部に設けられているものである。
【0010】
本技術による第2のトランジスタは、ゲート電極と、ゲート電極に対向するとともに平面視でゲート電極に重なるチャネル領域と、チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、チャネル領域と低抵抗領域との間の低抵抗領域に隣接する位置に配置され、低抵抗領域の金属の濃度よりも低い濃度で金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜とゲート電極との間に設けられ、より酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、よりゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、低抵抗領域に接して設けられ、低抵抗領域および拡散領域の金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜とを備え、ゲート絶縁膜の第1面のチャネル長方向の長さが、ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっており、拡散領域は、平面視でゲート電極に重ならず、かつ、ゲート絶縁膜の第1面に重なる位置に配置され、拡散領域の金属の濃度は、低抵抗領域に近い位置からチャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっているものである。
【0011】
本技術による第1,第2の表示装置は、表示素子と、表示素子を駆動するためのトランジスタとを備え、トランジスタに上記本技術の第1,第2のトランジスタを用いたものである。
【0012】
本技術による第1,第2の電子機器は、上記本技術の第1,第2の表示装置を備えたものである。
【0013】
本技術の第1,第2のトランジスタ、表示装置または電子機器では、ゲート絶縁膜において、第1面のチャネル長方向の長さがゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっているので、チャネル領域と低抵抗領域とが離間して設けられる。したがって、低抵抗領域のアルミニウム等が酸化物半導体膜中に拡散してもチャネル領域に到達しにくくなる。
【0014】
本技術による第3のトランジスタは、ゲート電極と、ゲート電極に対向するとともに平面視でゲート電極に重なるチャネル領域と、チャネル領域から離間して設けられるとともにチャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、チャネル領域と低抵抗領域との間の低抵抗領域に隣接する位置に配置され、低抵抗領域の金属の濃度よりも低い濃度で金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜とゲート電極との間に設けられ、より酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、よりゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、低抵抗領域に接して設けられ、低抵抗領域および拡散領域の金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜とを備え、拡散領域は、平面視でゲート電極に重ならず、かつ、ゲート絶縁膜の第1面に重なる位置に配置され、低抵抗領域は、酸化物半導体膜の前記高抵抗膜側の厚み方向の一部に設けられているものである。
【0015】
本技術による第4のトランジスタは、ゲート電極と、ゲート電極に対向するとともに平面視でゲート電極に重なるチャネル領域と、チャネル領域から離間して設けられるとともにチャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有し、金属を含む低抵抗領域と、チャネル領域と低抵抗領域との間の低抵抗領域に隣接する位置に配置され、低抵抗領域の金属の濃度よりも低い濃度で金属を含む拡散領域とを含む酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜とゲート電極との間に設けられ、より酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、よりゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜と、低抵抗領域に接して設けられ、低抵抗領域および拡散領域の金属と同じ金属の酸化物を含む高抵抗膜とを備え、拡散領域は、平面視でゲート電極に重ならず、かつ、ゲート絶縁膜の第1面に重なる位置に配置され、拡散領域の金属の濃度は、低抵抗領域に近い位置からチャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっているものである。


【0016】
本技術による第3,第4の表示装置は、表示素子と、表示素子を駆動するためのトランジスタとを備え、トランジスタに上記本技術の第3,第4のトランジスタを用いたものである。
【0017】
本技術による第3,第4の電子機器は、上記本技術の第3,第4の表示装置を備えたものである。
【0018】
本技術の第3,第4のトランジスタ、表示装置または電子機器では、低抵抗領域がチャネル領域から離間して設けられているので、低抵抗領域のアルミニウム等はチャネル領域に到達しにくくなる。
【発明の効果】
【0019】
本技術の第1,第2のトランジスタ、表示装置および電子機器によれば、ゲート絶縁膜の第1面のチャネル長方向の長さを、ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなようにしたので、また、本技術の第3,第4のトランジスタによれば、酸化物半導体膜の低抵抗領域をチャネル領域から離間して設けるようにしたので、チャネル領域の低抵抗化を防ぐことができる。よって、寄生容量を低減すること可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本技術の第1の実施の形態に係るトランジスタの構成を表す断面図である。
図2図1に示したゲート絶縁膜の平面構成を表す図である。
図3A図1に示したトランジスタの製造方法の一工程を表す断面図である。
図3B図3Aに続く工程を表す断面図である。
図3C図3Bに続く工程を表す断面図である。
図4A図3Cに続く工程を表す断面図である。
図4B図4Aに続く工程を表す断面図である。
図4C図4Bに続く工程を表す断面図である。
図5A図4Cに続く工程を表す断面図である。
図5B図5Aに続く工程を表す断面図である。
図5C図5Bに続く工程を表す断面図である。
図6】比較例に係る半導体装置の構成を表す断面図である。
図7】変形例1に係るトランジスタの構成を表す断面図である。
図8】変形例2に係るトランジスタの構成を表す断面図である。
図9】変形例3に係るトランジスタの構成を表す断面図である。
図10】本技術の第2の実施の形態に係る半導体装置の構成を表す断面図である。
図11図1に示した半導体装置を含む表示装置の構成の一例を表す断面図である。
図12図11に示した表示装置の全体構成を表す図である。
図13図12に示した画素の回路構成の一例を表すである。
図14図11に示した表示装置の他の例を表す断面図である。
図15図11に示した表示装置のその他の例を表す断面図である。
図16図11に示した表示装置の適用例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(トランジスタ:トップゲート型構造を有する例)
2.変形例1(ゲート電極およびゲート絶縁膜がテーパ形状を有する例)
3.変形例2(断面形状が矩形状のゲート絶縁膜を有する例)
4.変形例3(積層構造のゲート絶縁膜を有する例)
5.第2の実施の形態(トランジスタ:ボトムゲート型構造を有する例)
6.適用例(表示装置)
【0022】
<第1の実施の形態>
図1は本技術の第1の実施の形態に係るトランジスタ(トランジスタ1)の断面構成を表したものである。このトランジスタ1では基板11上に酸化物半導体膜12が設けられており、トランジスタ1はスタガ構造(トップゲート型構造)を有している。酸化物半導体膜12上の選択的な領域に、ゲート絶縁膜13およびゲート電極14がこの順に配設されている。これらの酸化物半導体膜12、ゲート絶縁膜13およびゲート電極14を覆って、高抵抗膜15および層間絶縁膜16が設けられている。層間絶縁膜16上にはソース・ドレイン電極17A,17Bが設けられている。高抵抗膜15および層間絶縁膜16には、これらを貫通する接続孔H1,H2が設けられており、ソース・ドレイン電極17Aは接続孔H1を介して、ソース・ドレイン電極17Bは接続孔H2を介してそれぞれ酸化物半導体膜12の後述する低抵抗領域12Cに電気的に接続されている。このようなスタガ構造のTFTを含むトランジスタ1は、基板11上に酸化物半導体膜12を直接成膜することができ、また、酸化物半導体膜12がゲート電極14で覆われるので、酸化物半導体膜12を例えば発光層を含む有機層(後述の図11の有機層53)等の上層から保護することができる。よって、ディスプレイ駆動デバイスとして好適に用いることができる。
【0023】
基板11は、例えば、石英,ガラス,シリコンまたは樹脂(プラスチック)フィルムなどの板材により構成されている。後述のスパッタ法において、基板11を加熱することなく酸化物半導体膜12を成膜するため、安価な樹脂フィルムを用いることができる。樹脂材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート),PI(ポリイミド),PC(ポリカーボネート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などが挙げられる。樹脂材料からなる基板11上に、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNx)および酸化アルミニウム膜(AlOx)等のバリア膜を設けるようにしてもよい。バリア膜は積層膜であってもよい。この他にも、目的に応じて、ステンレス鋼(SUS)などの金属基板に絶縁材料を成膜して用いるようにしてもよい。
【0024】
酸化物半導体膜12は、基板11上の選択的な領域に設けられ、TFTの活性層としての機能を有するものである。酸化物半導体膜12は、例えば、インジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn),スズ(Sn),チタン(Ti)およびニオブ(Nb)のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を主成分として含むものである。具体的には、非晶質のものとして、酸化インジウムスズ亜鉛(ITZO)または酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO: InGaZnO)等、結晶性のものとして酸化亜鉛(ZnO),酸化インジウム亜鉛(IZO(登録商標)),酸化インジウムガリウム(IGO),酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム(InO)等がそれぞれ挙げられる。インジウムを含む酸化物半導体膜12を用いることが好ましい。非晶質あるいは結晶性の酸化物半導体材料のどちらを用いてもよいが、容易にゲート絶縁膜13とのエッチング選択性を確保することができるため、結晶性の酸化物半導体材料を用いることが好ましい。酸化物半導体膜12の厚み(積層方向の厚み、以下単に厚みという。)は、例えば50nm程度である。
【0025】
この酸化物半導体膜12では、ゲート電極14に対向し、平面視でゲート電極14に重なる領域が、チャネル領域12Aとなっている。一方、酸化物半導体膜12のチャネル領域12A以外の領域の表面(上面)から厚み方向の一部は、チャネル領域12Aよりも低い抵抗値を有する拡散領域12Bおよび低抵抗領域12Cとなっている。低抵抗領域12Cは、例えば、酸化物半導体材料にアルミニウム(Al)等の金属を反応させて金属(ドーパント)を拡散させることにより形成されたものである。トランジスタ1では、この低抵抗領域12Cによりセルフアライン(自己整合)構造が実現され、ゲート電極14とソース・ドレイン電極17A,17Bとの交差領域に形成される寄生容量を低減することができる。また、低抵抗領域12CはTFTの特性を安定化させる役割をも有するものである。拡散領域12Bは、低抵抗領域12Cに含まれるアルミニウム等の金属が拡散することにより生じた領域であり、低抵抗領域12Cとチャネル領域12Aとの間の低抵抗領域12Cと隣接する位置に形成されている。この拡散領域12Bの金属の濃度は、低抵抗領域12Cの金属の濃度よりも低く、低抵抗領域12Cに近い位置からチャネル領域12Aに近い位置に向かうに連れて徐々に低くなっている。この拡散領域12Bの抵抗値は、チャネル領域12Aの抵抗値よりも低く、かつ、低抵抗領域12Cの抵抗値よりも高い。詳細は後述するが、トランジスタ1では、低抵抗領域12Cがチャネル領域12Aから離間して設けられており、低抵抗領域12Cからチャネル領域12Aに向かって拡散領域12Bが形成されている。拡散領域12Bは、ゲート電極14とは平面視で重ならず、かつ、ゲート絶縁膜13の下面(後述の下面S1)と重なる位置に設けられている。
【0026】
ゲート絶縁膜13は、酸化物半導体膜12とゲート電極14との間に設けられ、より酸化物半導体膜12に近い下面S1と、よりゲート電極14に近い上面S2とを有している。例えば、ゲート絶縁膜13の下面S1は酸化物半導体膜12に、上面S2はゲート電極14にそれぞれ接している。本実施の形態では、このゲート絶縁膜13の下面S1のチャネル長方向(X方向)の長さ(長さ13L)が、ゲート電極14のチャネル長方向の最大の長さ(長さ14L)よりも大きくなっている。詳細は後述するが、これにより、酸化物半導体膜12の低抵抗領域12Cがチャネル領域12Aから離間して形成され、チャネル領域12Aに低抵抗領域12Cに含まれるアルミニウム等の金属が到達しにくくなる。
【0027】
図2は、ゲート絶縁膜13の平面構成を、酸化物半導体膜12およびゲート電極14とともに表したものである。平面視でゲート電極14の両側(ソース・ドレイン電極17A,17B側)にゲート絶縁膜13の下面S1が拡幅している。ゲート電極14の長さ14Lは例えば3μm〜100μm程度であり、必要な電流量により4μm〜16μm程度で調整することが好ましい。ゲート絶縁膜13の長さ13Lは、このゲート電極14の長さ14Lよりも例えば0.2μm〜4μm程度大きくなっている。詳細には、ゲート絶縁膜13は、ゲート電極14よりもソース・ドレイン電極17A、ソース・ドレイン電極17Bそれぞれの方向に0.1μm〜2μm程度拡幅している。このゲート電極14の長さ14Lとゲート絶縁膜13の長さ13Lとの差によって、酸化物半導体膜12のチャネル領域12Aと低抵抗領域12Cとの離間距離が決定する(図1)。ゲート絶縁膜13のチャネル幅方向(Y方向)の長さは、例えばゲート電極14のチャネル幅方向の長さと同じである。
【0028】
ゲート絶縁膜13は、例えばテーパ形状を有しており、ゲート絶縁膜13の断面形状は台形状となっている。即ち、ゲート絶縁膜13の上面S2のチャネル長方向の長さは、長さ13Lよりも小さく、例えばゲート電極14の長さ14Lと同じである。
【0029】
このようなゲート絶縁膜13は、例えばシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン窒化酸化膜(SiON)および酸化アルミニウム膜(AlOx)のうちの1種よりなる単層膜、またはそれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。これらのうち、シリコン酸化膜または酸化アルミニウム膜は、酸化物半導体を還元させにくいので好ましい。ゲート絶縁膜13の厚みは、例えば300nmである。
【0030】
ゲート電極14は、TFTに印加されるゲート電圧(Vg)によって酸化物半導体膜12中のキャリア密度を制御すると共に、電位を供給する配線としての機能を有するものである。ゲート電極14の断面形状は、例えば矩形状であり、ゲート電極14の下面と上面とは互いに略同一の平面形状を有している。即ち、ゲート電極14のチャネル長方向の最大長さ14Lは、ゲート電極14の下面および上面のチャネル長方向の長さである。このゲート電極14は、例えばモリブデン(Mo),チタン(Ti),アルミニウム,銀(Ag),ネオジウム(Nd)および銅(Cu)のうちの1種からなる単体もしくは合金、もしくはこれらのうちの2種以上からなる積層膜である。具体的には、アルミニウムや銀などの低抵抗金属をモリブデンまたはチタンにより挟み込んだ積層構造や、アルミニウムとネオジウムとの合金(Al−Nd合金)が挙げられる。ゲート絶縁膜13に近い位置に、ウェットエッチングに耐性を有する材料を用い、これに、ゲート絶縁膜13に対して選択比ウェットエッチャントで加工可能な材料を積層してゲート電極14を構成することが好ましい。例えば、このようなゲート電極14として、ゲート絶縁膜13に近い位置から、チタン、アルミニウムおよびモリブデンの順に積層された積層膜を用いることができる。ゲート電極14は、ITO等の透明導電膜から構成されていてもよい。ゲート電極14の厚みは、例えば10nm〜500nmである。
【0031】
高抵抗膜15は、後述する製造工程において酸化物半導体膜12の低抵抗領域12Cに拡散される金属の供給源となる金属膜が、酸化膜となって残存したものである。高抵抗膜15は、例えば、厚みが20nm以下であり、酸化チタン,酸化アルミニウム,酸化インジウムまたは酸化スズ等により構成されている。このような高抵抗膜15は、外気に対して良好なバリア性を有しているため、上記のようなプロセス上の役割の他、トランジスタ1における酸化物半導体膜12の電気的特性を変化させる酸素や水分の影響を低減する機能をも有している。高抵抗膜15を設けることにより、トランジスタ1の電気特性を安定化させることが可能となり、層間絶縁膜16の効果をより高めることが可能となる。
【0032】
バリア機能を高めるため、高抵抗膜15に例えば、厚み30nm〜50nm程度の酸化アルミニウムまたは窒化シリコンからなる保護膜を積層させるようにしてもよい。これにより、トランジスタ1における酸化物半導体膜12の電気特性がより安定する。
【0033】
層間絶縁膜16は、高抵抗膜15上に積層され、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド、ノボラック系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂または塩化ビニル系樹脂等の有機材料により構成されている。層間絶縁膜16にシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜または酸化アルミニウム等の無機材料を用いるようにしてもよく、あるいは、有機材料と無機材料とを積層して用いるようにしてもよい。有機材料を含有する層間絶縁膜16は、容易にその厚みを例えば1〜2μm程度に厚膜化することが可能となる。このように厚膜化された層間絶縁膜16は、ゲート電極14の加工後に形成される段差を十分に被覆して絶縁性を確保することができる。シリコン酸化膜および酸化アルミニウム膜を積層した層間絶縁膜16は、酸化物半導体膜12への水分の混入および拡散を抑えることができる。これにより、トランジスタ1の電気特性が安定すると共に信頼性も向上する。
【0034】
ソース・ドレイン電極17A,17Bは、例えば、厚みが200nm程度であり、上記ゲート電極14において列挙したものと同様の金属または透明導電膜により構成されている。ソース・ドレイン電極17A,17Bは、例えば、アルミニウムまたは銅などの低抵抗金属により構成されていることが好ましく、このような低抵抗金属を、チタンまたはモリブデンよりなるバリア層により挟み込んでなる積層膜であることがより好ましい。このような積層膜を用いることにより、配線遅延の少ない駆動が可能となる。また、ソース・ドレイン電極17A,17Bは、ゲート電極14の直上の領域を回避して設けられていることが望ましい。ゲート電極14とソース・ドレイン電極17A,17Bとの交差領域に寄生容量が形成されることを防ぐためである。
【0035】
このトランジスタ1は、例えば次のようにして製造することができる(図3A図5C)。
【0036】
まず、図3Aに示したように、基板11上に上述した材料よりなる酸化物半導体膜12を形成する。具体的には、まず基板11の全面にわたって、例えばスパッタリング法により、酸化物半導体材料膜(図示せず)を例えば50nm程度の厚みで成膜する。この際、ターゲットとしては、成膜対象の酸化物半導体と同一組成のセラミックを用いる。また、酸化物半導体中のキャリア濃度は、スパッタリングの際の酸素分圧に大きく依存するので、所望のトランジスタ特性が得られるように酸素分圧を制御する。酸化物半導体材料膜は、電子ビーム蒸着法,パルスレーザ(PLD)法,イオンプレーティング法およびゾルゲル法等の方法を用いて成膜するようにしてもよい。酸化物半導体膜12を上述の結晶性材料により構成しておくと、後述のゲート絶縁膜13のエッチング工程において、容易にエッチング選択性を向上させることができる。次いで、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより、成膜した酸化物半導体材料膜を所定の形状にパターニングする。その際、リン酸、硝酸および酢酸の混合液を用いたウェットエッチングにより加工することが好ましい。リン酸、硝酸および酢酸の混合液は、下地との選択比を十分に大きくすることが可能であり、比較的容易に加工が可能となる。
【0037】
酸化物半導体膜12を設けた後、基板11の全面に渡って例えば厚み100nmのシリコン酸化膜または酸化アルミニウム膜よりなる絶縁材料膜13Mを成膜する。絶縁材料膜13Mは、ゲート絶縁膜13を形成するためのものである。絶縁材料膜13Mの成膜には、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法を用いることができる。シリコン酸化膜はプラズマCVD法のほか、反応性スパッタリング法により形成することも可能である。また、酸化アルミニウム膜を成膜する場合には、これらの反応性スパッタリング法,CVD法に加え、原子層堆積法(ALD)を用いることも可能である。
【0038】
次いで、絶縁材料膜13M上に導電材料膜14Mを成膜する(図3B)。導電材料膜14Mは、ゲート電極14を形成するためのものである。導電材料膜14Mは、例えば絶縁材料膜13Mに近い位置から、チタンからなる導電膜14M−1、アルミニウムからなる導電膜14M−2およびモリブデンからなる導電膜14M−3をこの順に積層したものである。導電材料膜14Mは、例えばスパッタリング法,熱蒸着法あるいは電子ビーム蒸着法等を用いて成膜することができる。
【0039】
導電材料膜14Mを成膜した後、図3Cに示したように、導電材料膜14M(導電膜14M−3)上の選択的な領域(ゲート電極14を形成する領域)にレジストパターン18を形成する。次いで、このレジストパターン18をマスクにして、導電膜14M−2,14M−3のウェットエッチングを行う(図4A)。このとき、このウェットエッチングの工程では、サイドエッチングが発生する。このサイドエッチング(CDロス)部分を適切な大きさに制御して、レジストパターン18がウェットエッチング後の導電膜14−2,14−3を庇状に覆うようにする。具体的には、レジストパターン18のチャネル長方向の長さが、ウェットエッチング後の導電膜14−2,14−3のチャネル長方向の長さよりも大きくなるようにする。
【0040】
導電膜14M−2,14M−3のウェットエッチングを行った後、例えば、導電膜14M−1および絶縁材料膜13Mのドライエッチングを行う(図4B)。この工程では、ドライエッチングのバイアスを制御することにより、まず、庇状のレジストパターン18の下部にある導電膜14M−1がテーパ状に加工され、更に、このテーパ状の導電膜14M−1がマスクの役割をしながら絶縁材料膜13Mが徐々に加工されていく。これにより、導電膜14−1,14−2,14−3からなるゲート電極14およびテーパ状のゲート絶縁膜13が形成される。ゲート電極14およびテーパ状のゲート絶縁膜13を形成した後、レジストパターン18を除去する(図4C)。
【0041】
続いて、図5Aに示したように、基板11上の全面に渡って、例えばスパッタリング法または原子層成膜法によりチタン,アルミニウム,スズまたはインジウム等からなる金属膜15Mを例えば5nm以上10nm以下の厚みで成膜する。
【0042】
次いで、図5Bに示したように、例えば300℃程度の温度で熱処理を行うことにより金属膜15Mが酸化され、これによって高抵抗膜15が形成される。この際、酸化物半導体膜12のうち高抵抗膜15が接する部分、即ち、酸化物半導体膜12のうちゲート絶縁膜13の下面S1が設けられた領域以外の部分に低抵抗領域12Cが形成される。低抵抗領域12Cは、例えば酸化物半導体膜12の厚み方向の一部(高抵抗膜15側)に設けられる。この金属膜15Mの酸化反応には、酸化物半導体膜12に含まれる酸素の一部が利用されるため、金属膜15Mの酸化の進行に伴って、酸化物半導体膜12では、その金属膜15Mと接する表面(上面)側から酸素濃度が低下していく。一方、金属膜15Mからアルミニウム等の金属が酸化物半導体膜12中に拡散する。この金属元素がドーパントとして機能し、金属膜15Mと接する酸化物半導体膜12の上面側の領域が低抵抗化される。これにより、チャネル領域12Aよりも電気抵抗の低い低抵抗領域12Cが自己整合的に形成される。
【0043】
金属膜15Mの熱処理としては、上述のように300℃程度の温度でアニールすることが好ましい。その際、酸素等を含む酸化性のガス雰囲気でアニールを行うことで、低抵抗領域12Cの酸素濃度が低くなりすぎるのを抑え、酸化物半導体膜12に十分な酸素を供給することが可能となる。これにより、後工程で行うアニール工程を削減して工程の簡略化を行うことが可能となる。
【0044】
高抵抗膜15は、上記アニール工程に代えて、例えば、基板11上に金属膜15Mを形成する際の基板11の温度を比較的高めに設定することにより形成するようにしてもよい。例えば、図5Aの工程で、基板11の温度を300℃程度に保ちつつ金属膜15Mを成膜すると、熱処理を行わずに酸化物半導体膜12の所定の領域を低抵抗化することができる。この場合には、酸化物半導体膜12のキャリア濃度をトランジスタとして必要なレベルに低減することが可能である。
【0045】
金属膜15Mは、上述のように10nm以下の厚みで成膜することが好ましい。金属膜15Mの厚みを10nm以下とすれば、熱処理によって金属膜15Mを完全に酸化させる(高抵抗膜15を形成する)ことができるからである。金属膜15Mが完全に酸化されていない場合には、この未酸化の金属膜15Mをエッチングにより除去する工程が必要となる。十分に酸化されていない金属膜15Mがゲート電極14上などに残存しているとリーク電流が発生する虞があるためである。金属膜15Mが完全に酸化され、高抵抗膜15が形成された場合には、そのような除去工程が不要となり、製造工程の簡略化が可能となる。つまり、エッチングによる除去工程を行わなくとも、リーク電流の発生を防止できる。なお、金属膜15Mを10nm以下の厚みで成膜した場合、熱処理後の高抵抗膜15の厚みは、20nm以下程度となる。
【0046】
金属膜15Mを酸化させる方法としては、上記のような熱処理のほか、水蒸気雰囲気での酸化またはプラズマ酸化などの方法を用いることも可能である。特にプラズマ酸化の場合、次のような利点がある。高抵抗膜15の形成後、層間絶縁膜16をプラズマCVD法により形成するが、金属膜15Mに対してプラズマ酸化処理を施した後、続けて(連続的に)、層間絶縁膜16を成膜可能である。従って、工程を増やす必要がないという利点がある。プラズマ酸化は例えば、基板11の温度を200℃〜400℃程度にし、酸素および二窒化酸素の混合ガス等の酸素を含むガス雰囲気中でプラズマを発生させて処理することが望ましい。これにより、上述したような外気に対して良好なバリア性を有する高抵抗膜15を形成することができるからである。
【0047】
高抵抗膜15を形成した後、図5Cに示したように、高抵抗膜15上の全面にわたって、層間絶縁膜16を形成する。層間絶縁膜16が無機絶縁材料を含む場合には、例えばプラズマCVD法,スパッタリング法あるいは原子層堆積法を用い、層間絶縁膜16が有機絶縁材料を含む場合には、例えばスピンコート法やスリットコート法などの塗布法を用いることができる。塗布法により、厚膜化された層間絶縁膜16を容易に形成することができる。酸化アルミニウムにより層間絶縁膜16を形成する際には、例えばアルミニウムをターゲットにしたDCまたはAC電源による反応性スパッタリング法を用いることが可能である。層間絶縁膜16を設けた後、フォトリソグラフィおよびエッチングを行って、層間絶縁膜16および高抵抗膜15の所定の箇所に接続孔H1,H2を形成する。
【0048】
続いて、層間絶縁膜16上に、例えばスパッタリング法により、上述のソース・ドレイン電極17A,17Bの構成材料からなる導電膜(図示せず)を形成し、この導電膜により接続孔H1,H2を埋め込む。そののち、この導電膜を例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状にパターニングする。これにより、層間絶縁膜16上にソース・ドレイン電極17A,17Bが形成され、このソース・ドレイン電極17A,17Bは酸化物半導体膜12の低抵抗領域12Cに接続される。以上の工程により、図1に示したトランジスタ1が完成する。
【0049】
トランジスタ1では、ゲート電極14に閾値電圧以上の電圧(ゲート電圧)が印加されると、酸化物半導体膜12のチャネル領域12Aにキャリアが流れる。これにより、ソース・ドレイン電極17Aとソース・ドレイン電極17Bとの間に電流が流れるようになっている。
【0050】
酸化物半導体膜12のうち、高抵抗膜15が接する領域、即ち低抵抗領域12Cは、ゲート絶縁膜13の下面S1が接する領域以外の領域である。一方、酸化物半導体膜12のチャネル領域12Aは、ゲート電極14に平面視で重なる領域である。ここでは、ゲート絶縁膜13の下面S1のチャネル長方向の長さ13Lが、ゲート電極14のチャネル長方向の最大の長さ14Lよりも大きくなっているので、低抵抗領域12Cはチャネル領域12Aから離間して設けられる。このため、トランジスタ1では、低抵抗領域12Cに含まれるアルミニウム等の金属が、チャネル領域12Aに到達しにくくなる。以下、これについて説明する。
【0051】
図6は、比較例に係るトランジスタ(トランジスタ100)の断面構成を表したものである。このトランジスタ100では、ゲート絶縁膜130の下面S1のチャネル長方向の長さ130Lが、ゲート電極14のチャネル長方向の最大長さ14Lと同じであり、ゲート絶縁膜130とゲート電極140とは、互いに平面視で重なる位置に設けられている。このようなトランジスタ100では、酸化物半導体膜12のうち、チャネル領域12A(酸化物半導体膜12のうち、ゲート電極14と平面視で重なる領域)以外の領域に高抵抗膜15が接するので、チャネル領域12Aと隣接する位置に低抵抗領域12Cが設けられる。したがって、低抵抗領域12Cに含まれるアルミニウム等の金属は、チャネル領域12Aに拡散しやすく、チャネル領域12Aの一部が拡散領域12Bとなる虞がある。金属の拡散長は例えば0.8μmであるが、アニール条件により変化する。チャネル領域12Aの一部に形成された拡散領域12Bとゲート電極14との間には、寄生容量が発生し、例えばディスプレイの駆動速度に影響を及ぼす。また、チャネル領域12A全域にわたって、拡散領域12Bが形成されると、トランジスタ100はスイッチング素子として機能しなくなる。
【0052】
これに対しトランジスタ1では、ゲート絶縁膜13の下面S1のチャネル長方向の長さ13Lが、ゲート電極14のチャネル長方向の最大の長さ14Lよりも大きくなっており、低抵抗領域12Cはチャネル領域12Aから離間して形成される。したがって、低抵抗領域12Cに含まれるアルミニウム等の金属は、まず低抵抗領域12Cとチャネル領域12Aとの間の間隙に拡散され、チャネル領域12Aには到達しにくい。即ち、拡散領域12Bは、低抵抗領域12Cとチャネル領域12Aとの間に設けられ、チャネル領域12Aの一部には形成されにくくなる。金属の拡散長が、チャネル領域12Aと低抵抗領域12Cとの離間距離をこえないよう、ゲート絶縁膜13の長さ13Lはアニール条件等に応じて適宜調整すればよい。よって、寄生容量の発生を防ぐことができる。また、スイッチング素子としての機能を維持することができる。
【0053】
このように、本実施の形態では、ゲート絶縁膜13の下面S1のチャネル長方向の長さ13Lが、ゲート電極14のチャネル長方向の最大の長さ14Lよりも大きくなるようにしたので、チャネル領域12Aの低抵抗化を防ぎ、寄生容量を低減することが可能となる。
【0054】
また、酸化物半導体膜12のチャネル領域12Aと低抵抗領域12Cとの間の拡散領域12Bでは、その抵抗値がチャネル領域12Aの抵抗値よりも低く、かつ、低抵抗領域12Cの抵抗値よりも高くなっている。これにより、ゲート電極14と低抵抗領域12C(ソース・ドレイン電極17A,17B)との間に高い電圧が印加されても、チャネル領域12Aと低抵抗領域12Cとの間の領域に生じる電界が緩和され、トランジスタ1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0055】
以下、本実施の形態の変形例および他の実施の形態について説明するが、以降の説明において上記実施の形態と同一構成部分については同一符号を付してその説明は適宜省略する。
【0056】
<変形例1>
図7は、上記第1の実施の形態の変形例1に係るトランジスタ(トランジスタ1A)の断面構成を表したものである。このトランジスタ1Aでは、ゲート電極(ゲート電極24)がテーパ形状を有している。この点を除き、トランジスタ1Aは上記実施の形態のトランジスタ1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0057】
ゲート電極24の断面形状は、例えば台形状となっている。ゲート電極24のチャネル長方向の最大長さ24Lは、ゲート電極24の下面(ゲート絶縁膜13との接触面)のチャネル長方向の長さである。トランジスタ1Aでは、ゲート絶縁膜13の下面S1のチャネル長方向の長さ13Lが、このゲート電極24の長さ24Lよりも大きくなっている。
【0058】
<変形例2>
図8は、上記第1の実施の形態の変形例2に係るトランジスタ(トランジスタ1B)の断面構成を表したものである。このトランジスタ1Bのゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜23)では、上面S2のチャネル長方向の長さが下面S1のチャネル長方向の長さ(長さ23L)と同じになっている。この点を除き、トランジスタ1Bは上記実施の形態のトランジスタ1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0059】
ゲート絶縁膜23の断面形状は、例えば矩形状である。平面視で、ゲート絶縁膜23の下面S1および上面S2はともに、ゲート電極14から拡幅している。このトランジスタ1Bでは、ゲート絶縁膜23の下面S1および上面S2のチャネル長方向の長さ23Lが、ゲート電極14のチャネル長方向の最大長さ14Lよりも大きくなっている。ゲート電極14の断面形状は矩形状であってもよく(図8)、台形状であってもよい(図7)。
【0060】
このようなトランジスタ1Bは、例えば、以下のようにして形成する。
【0061】
まず、トランジスタ1と同様にして基板11上に酸化物半導体膜12を形成した後(図3A)、酸化物半導体膜12上に絶縁材料膜13Mおよび導電材料膜14Mをこの順に成膜する(図3B)。次いで、導電材料膜14Mをフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングして、ゲート電極14を形成する。その後、絶縁材料膜13Mをフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングして、ゲート絶縁膜23を形成する。
【0062】
このゲート絶縁膜23およびゲート電極14は、以下のようにして形成することも可能である。まず、酸化物半導体膜12上に、絶縁材料膜13Mを成膜した後、これをフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングしてゲート絶縁膜23を形成する。次いで、ゲート絶縁膜23上に導電材料膜14Mを成膜した後、これをフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングしてゲート電極14を形成する。
【0063】
ゲート絶縁膜23およびゲート電極14を設けた後、トランジスタ1と同様の方法を用いてトランジスタ1Bを完成させることができる。トランジスタ1Bを形成する際には、ゲート電極14を形成する際のウェットエッチングに起因した酸化物半導体膜12のエッチングを防ぐため、酸化物半導体膜12は耐ウェットエッチング性の材料を用いて形成することが好ましい。
【0064】
<変形例3>
図9は、上記第1の実施の形態の変形例3に係るトランジスタ(トランジスタ1C)の断面構成を表したものである。このトランジスタ1Cのゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜33)は、積層構造を有するものである。この点を除き、トランジスタ1Cは上記実施の形態のトランジスタ1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0065】
ゲート絶縁膜33では、例えば、酸化物半導体膜12に近い位置から、ゲート絶縁膜33−1およびゲート絶縁膜33−2がこの順に積層されている。ゲート絶縁膜33−1,33−2の断面形状は、例えば矩形状である。このような積層構造を有するゲート絶縁膜33では、その下面S1は最下層(ゲート絶縁膜33−1)の下面となり、その上面S2は最上層(ゲート絶縁膜33−2)の上面となる。即ち、ゲート絶縁膜33の下面S1のチャネル長方向の長さ33Lは、ゲート絶縁膜33−1の下面のチャネル長方向の長さである。トランジスタ1Cでは、このゲート絶縁膜33の長さ33Lが、ゲート電極14のチャネル長方向の最大長さ14Lよりも大きくなっている。
【0066】
ゲート絶縁膜33−2の上面および下面のチャネル長方向の長さは、例えばゲート電極14の長さ14Lと同じであり、長さ33Lよりも小さくなっている。ゲート絶縁膜33−1,33−2に互いに異なるエッチング速度を有する材料を用いることにより、このようなゲート絶縁膜33を容易に形成することができる。具体的には、ゲート絶縁膜33−1にはエッチング速度のより遅い材料を用い、ゲート絶縁膜33−2にはエッチング速度のより早い材料を用いる。例えば、ゲート絶縁膜33−1には酸化アルミニウム(Al23)、ゲート絶縁膜33−2には酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。ゲート絶縁膜33−2のチャネル長方向の長さが、ゲート絶縁膜33−1のチャネル長方向の長さと同じであってもよく(図8)、ゲート絶縁膜33がテーパ形状を有していてもよい(図1)。ゲート絶縁膜33は、3層以上の積層構造を有していてもよい。
【0067】
<第2の実施の形態>
図10は、本技術の第2の実施の形態に係るトランジスタ(トランジスタ2)の断面構成を表したものである。このトランジスタ2は、逆スタガ構造(ボトムゲート構造)を有している。この点を除き、トランジスタ2は上記第1の実施の形態のトランジスタ1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0068】
トランジスタ2では、基板11上に、ゲート電極14、ゲート絶縁膜13、酸化物半導体膜12およびストッパ膜41がこの順に設けられている。これらゲート電極14、ゲート絶縁膜13、酸化物半導体膜12およびストッパ膜41を高抵抗膜15が覆っている。酸化物半導体膜12のうち、ゲート電極14に対向し、平面視でゲート電極14に重なる領域がチャネル領域12Aとなっている。一方、酸化物半導体膜12のチャネル領域12A以外の領域の表面(上面)から厚み方向の一部は、トランジスタ1と同様に、チャネル領域12Aよりも低い抵抗値を有する拡散領域12Bおよび低抵抗領域12Cとなっている。低抵抗領域12Cは、例えば、酸化物半導体材料にアルミニウム(Al)等の金属を反応させて金属(ドーパント)を拡散させることにより形成されたものである。金属に代えて、水素を拡散させることにより低抵抗領域12Cが形成されていてもよい。拡散領域12Bは、低抵抗領域12Cのアルミニウム等の金属あるいは水素が拡散することにより生じた領域であり、チャネル領域12Aと低抵抗領域12Cとの間の低抵抗領域12Cと隣接する位置に形成されている。
【0069】
ストッパ膜41は、例えばテーパ形状を有しており、ストッパ膜41の断面形状は台形状となっている。ストッパ膜41は、例えばシリコン酸化膜(SiOx)および酸化アルミニウム膜(AlOx)等の無機絶縁膜により構成されている。このストッパ膜41は、チャネル領域12Aを覆うように酸化物半導体膜12上の選択的な領域に設けられている。ストッパ膜41は、より酸化物半導体膜12に近い下面S3と、下面S3に対向する上面S4とを有しており、例えば下面S3は酸化物半導体膜12に接している。本実施の形態では、このストッパ膜41の下面S3のチャネル長方向(X方向)の長さ(長さ41L)が、ゲート電極14のチャネル長方向の最大の長さ14Lよりも大きくなっている。即ち、平面視でゲート電極14の両側(ソース・ドレイン電極17A,17B側)にストッパ膜41の下面S3が拡幅している。
【0070】
このストッパ膜41上の高抵抗膜15は、酸化物半導体膜12のうち、ストッパ膜41の下面S3が接する領域以外の領域に接している。即ち、低抵抗領域12Cはストッパ膜41の下面S3が接する領域以外の部分に設けられている。一方、酸化物半導体膜12のチャネル領域12Aは、ゲート電極14に平面視で重なる領域である。ここでは、ストッパ膜41の下面S3のチャネル長方向の長さ41Lが、ゲート電極14のチャネル長方向の最大の長さ14Lよりも大きくなっているので、低抵抗領域12Cはチャネル領域12Aから離間して設けられる。このため、上記トランジスタ1で説明したのと同様に、トランジスタ2でも、低抵抗領域12Cに含まれるアルミニウム等の金属が、チャネル領域12Aに到達しにくくなる。よって、チャネル領域12Aの低抵抗化を防ぎ、寄生容量を低減することが可能となる。
【0071】
<適用例>
図11は、上記トランジスタ1を駆動素子として備えた表示装置(表示装置5)の断面構成を表すものである。この表示装置5はアクティブマトリクス型の有機EL(Electroluminescence)表示装置であり、トランジスタ1とトランジスタ1により駆動される有機EL素子50Aをそれぞれ複数有している。図11には、一のトランジスタ1および有機EL素子50Aに対応する領域(サブピクセル)を示す。図11には、トランジスタ1を有する表示装置5を示したが、表示装置5は、トランジスタ1に代えて、上記トランジスタ1A,1B,1C,2を備えていてもよい。
【0072】
有機EL素子50Aは、トランジスタ1上に、平坦化膜19を間にして設けられている。この有機EL素子50Aは平坦化膜19側から第1電極51、画素分離膜52、有機層53および第2電極54をこの順に有しており、保護層55により封止されている。保護層55上には熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる接着層56を間にして封止用基板57が貼り合わされている。表示装置5は、有機層53で発生した光を基板11側から取り出すボトムエミッション方式(下面発光方式)であってもよく、封止用基板57側から取り出すトップエミッション方式(上面発光方式)であってもよい。
【0073】
平坦化膜19は、ソース・ドレイン電極17A,17B上および層間絶縁膜16上に、基板11の表示領域(後述の図12の表示領域60)全体に渡り設けられ、接続孔H3を有している。この接続孔H3は、トランジスタ1のソース・ドレイン電極17Aと有機EL素子50Aの第1電極51とを接続するためのものである。平坦化膜19は、例えばポリイミドまたはアクリル系樹脂により構成されている。
【0074】
第1電極51は、接続孔H3を埋め込むように平坦化膜19上に設けられている。この第1電極51は、例えばアノードとして機能するものであり、素子毎に設けられている。表示装置5がボトムエミッション方式である場合には、第1電極51を透明導電膜、例えば、酸化インジウムスズ(ITO),酸化インジウム亜鉛(IZO)またはインジウム亜鉛オキシド(InZnO)等のいずれかよりなる単層膜またはこれらのうちの2種以上からなる積層膜により構成する。一方、表示装置5がトップエミッション方式である場合には、第1電極51を、反射性の金属、例えば、アルミニウム,マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)およびナトリウム(Na)のうちの少なくとも1種からなる単体金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金よりなる単層膜、あるいは単体金属または合金を積層した多層膜により構成する。
【0075】
第1電極51をソース・ドレイン電極17Aの表面(有機EL素子50A側の面)に接して設けるようにしてもよい。これにより、平坦化膜19を省略し、工程数を減らして表示装置5を製造することが可能となる。
【0076】
画素分離膜52は第1電極51と第2電極54との間の絶縁性を確保すると共に各素子の発光領域を区画分離するためのものであり、各素子の発光領域に対向して開口を有している。この画素分離膜52は例えば、ポリイミド,アクリル樹脂またはノボラック系樹脂などの感光性樹脂により構成されている。
【0077】
有機層53は、画素分離膜52の開口を覆うように設けられている。この有機層53は有機電界発光層(有機EL層)を含み、駆動電流の印加によって発光を生じるものである。有機層53は、例えば基板11(第1電極51)側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL層および電子輸送層をこの順に有しており、電子と正孔との再結合が有機EL層で生じて光が発生する。有機EL層の構成材料は、一般的な低分子または高分子の有機材料であればよく、特に限定されない。例えば赤、緑および青色を発光する有機EL層が素子毎に塗り分けられていてもよく、あるいは、白色を発光する有機EL層(例えば、赤、緑および青色の有機EL層を積層したもの)が基板11の全面に渡り設けられていてもよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めると共にリークを防止するためのものであり、正孔輸送層は、有機EL層への正孔輸送効率を高めるためのものである。正孔注入層、正孔輸送層あるいは電子輸送層等の有機EL層以外の層は、必要に応じて設けるようにすればよい。
【0078】
第2電極54は、例えば、カソードとして機能するものであり、金属導電膜により構成されている。表示装置5がボトムエミッション方式である場合には、この第2電極54を反射性の金属、例えば、アルミニウム,マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)およびナトリウム(Na)のうちの少なくとも1種からなる単体金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金よりなる単層膜、あるいは単体金属または合金を積層した多層膜により構成する。一方、表示装置5がトップエミッション方式である場合には、第2電極54にITOやIZOなどの透明導電膜を用いる。この第2電極54は、第1電極51と絶縁された状態で例えば各素子に共通して設けられている。
【0079】
保護層55は、絶縁性材料または導電性材料のいずれにより構成されていてもよい。絶縁性材料としては、例えば、アモルファスシリコン(a−Si),アモルファス炭化シリコン(a−SiC),アモルファス窒化シリコン(a−Si(1-X)X)またはアモルファスカーボン(a−C)等が挙げられる。
【0080】
封止用基板57は、トランジスタ1および有機EL素子50Aを間にして基板11と対向するよう、配置されている。封止用基板57には、上記基板11と同様の材料を用いることができる。表示装置5がトップエミッション方式である場合には、封止用基板57に透明材料を用い、封止用基板57側にカラーフィルタや遮光膜を設けるようにしてもよい。表示装置5がボトムエミッション方式である場合には、基板11を透明材料により構成し、例えばカラーフィルタや遮光膜を基板11側に設けておく。
【0081】
図12に示したように、表示装置5はこのような有機EL素子50Aを含む画素PXLCを複数有しており、画素PXLCは基板11上の表示領域60に例えばマトリクス状に配置されている。表示領域60の周辺には信号線駆動回路としての水平セレクタ(HSEL)61、走査線駆動回路としてのライトスキャナ(WSCN)62および電源線駆動回路としての電源スキャナ63が設けられている。
【0082】
表示領域60では、列方向に複数(整数n個)の信号線DTL1〜DTLnが、行方向に複数(整数m個)の走査線WSL1〜WSLmがそれぞれ配置されている。これら信号線DTLと走査線WSLとの各交差点に、画素PXLC(R,G,Bに対応する画素のいずれか1つ)が設けられている。各信号線DTLは、水平セレクタ61に電気的に接続され、水平セレクタ61から信号線DTLを介して各画素PXLCに映像信号が供給される。一方、各走査線WSLは、ライトスキャナ62に電気的に接続され、ライトスキャナ62から走査線WSLを介して各画素PXLCに走査信号(選択パルス)が供給される。各電源線DSLは電源スキャナ63に接続され、電源スキャナ63から電源線DSLを介して各画素PXLCに電源信号(制御パルス)が供給される。
【0083】
図13は、画素PXLCにおける具体的な回路構成例を表したものである。各画素PXLCは、有機EL素子50Aを含む画素回路160を有している。この画素回路160は、サンプリング用トランジスタTr1および駆動用トランジスタTr2と、容量素子Cと、有機EL素子50Aとを有するアクティブ型の駆動回路である。なお、サンプリング用トランジスタTr1および駆動用トランジスタTr2のうち少なくともいずれか1つが、上記トランジスタ1に相当する。
【0084】
サンプリング用トランジスタTr1は、そのゲートが対応する走査線WSLに接続され、そのソースおよびドレインのうちの一方が対応する信号線DTLに接続され、他方が駆動用トランジスタTr2のゲートに接続されている。駆動用トランジスタTr2は、そのドレインが対応する電源線DSLに接続され、ソースが有機EL素子50Aのアノードに接続されている。また、この有機EL素子50Aのカソードは、接地配線5Hに接続されている。なお、この接地配線5Hは、全ての画素PXLCに対して共通に配線されている。容量素子Cは、駆動用トランジスタTr2のソースとゲートとの間に配置されている。
【0085】
サンプリング用トランジスタTr1は、走査線WSLから供給される走査信号(選択パルス)に応じて導通することにより、信号線DTLから供給される映像信号の信号電位をサンプリングし、容量素子Cに保持するものである。駆動用トランジスタTr2は、所定の第1電位(図示せず)に設定された電源線DSLから電流の供給を受け、容量素子Cに保持された信号電位に応じて、駆動電流を有機EL素子50Aへ供給するものである。有機EL素子50Aは、この駆動用トランジスタTr2から供給された駆動電流により、映像信号の信号電位に応じた輝度で発光するようになっている。
【0086】
このような回路構成では、走査線WSLから供給される走査信号(選択パルス)に応じてサンプリング用トランジスタTr1が導通することにより、信号線DTLから供給された映像信号の信号電位がサンプリングされ、容量素子Cに保持される。また、上記第1電位に設定された電源線DSLから駆動用トランジスタTr2へ電流が供給され、容量素子Cに保持された信号電位に応じて、駆動電流が有機EL素子50A(赤色、緑色および青色の各有機EL素子)へ供給される。そして、各有機EL素子50Aは、供給された駆動電流により、映像信号の信号電位に応じた輝度で発光する。これにより、表示装置5において、映像信号に基づく映像表示がなされる。
【0087】
このような表示装置5は、例えば以下のようにして形成する。
【0088】
まず、上述のようにして、トランジスタ1を形成する。次いで、層間絶縁膜16、ソース・ドレイン電極17A,17Bを覆うように、上述した材料よりなる平坦化膜19を、例えばスピンコート法やスリットコート法により成膜し、ソース電極17Sに対向する領域の一部に接続孔H3を形成する。
【0089】
次いで、この平坦化膜19上に、有機EL素子50Aを形成する。具体的には、平坦化膜19上に、接続孔H3を埋め込むように、上述した材料よりなる第1電極51を例えばスパッタリング法により成膜した後、フォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングする。この後、第1電極51上に開口を有する画素分離膜52を形成した後、有機層53を例えば真空蒸着法により成膜する。続いて、有機層53上に、上述した材料よりなる第2電極54を例えばスパッタリング法により形成する。次いで、この第2電極54上に保護層を例えばCVD法により成膜した後、この保護層上に、接着層56を用いて封止用基板57を貼り合わせる。以上により、図11に示した表示装置5を完成する。
【0090】
この表示装置5では、例えばR,G,Bのいずれかに対応する各画素PXLCに、各色の映像信号に応じた駆動電流が印加されると、第1電極51および第2電極54を通じて、有機層53に電子および正孔が注入される。これらの電子および正孔は、有機層53に含まれる有機EL層においてそれぞれ再結合され、発光を生じる。このようにして、表示装置5では、例えばR,G,Bのフルカラーの映像表示がなされる。また、この映像表示動作の際に容量素子Cの一端に、映像信号に対応する電位が印加されることにより、容量素子Cには、映像信号に対応する電荷が蓄積される。
【0091】
ここでは、寄生容量が低減されたトランジスタ1を備えているので、表示装置5の駆動速度が向上する。
【0092】
図14に示したように、トランジスタ1(もしくはトランジスタ1A,1B,1C,2)を、液晶表示素子(液晶表示素子60A)を有する表示装置(表示装置6)に適用するようにしてもよい。表示装置6は、トランジスタ1の上層に液晶表示素子60Aを有している。
【0093】
液晶表示素子60Aは、例えば、画素電極61Eと対向電極62Eとの間に液晶層63Cを封止したものであり、画素電極61Eおよび対向電極62Eの液晶層63C側の各面には、配向膜64A,64Bが形成されている。画素電極61Eは、画素毎に配設されており、例えばトランジスタ1のソース・ドレイン電極17Aに電気的に接続されている。対向電極62Eは、対向基板65上に複数の画素に共通の電極として設けられ、例えばコモン電位に保持されている。液晶層63Cは、例えばVA(Vertical Alignment:垂直配向)モード,TN(Twisted Nematic)モードあるいはIPS(In Plane Switching)モード等により駆
動される液晶により構成されている。
【0094】
また、基板11の下方には、バックライト66が備えられており、基板11のバックライト66側および対向基板65上には、偏光板67A,67Bが貼り合わせられている。
【0095】
バックライト66は、液晶層63Cへ向けて光を照射する光源であり、例えばLED(Light Emitting Diode)やCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp )等を複数含むものである。このバックライト66は、図示しないバックライト駆動部によって、点灯状態および消灯状態が制御されるようになっている。
【0096】
偏光板67A,67B(偏光子,検光子)は、例えば互いにクロスニコルの状態で配置されており、これにより、例えばバックライト66からの照明光を電圧無印加状態(オフ状態)では遮断、電圧印加状態(オン状態)では透過させるようになっている。
【0097】
この表示装置6は、上記表示装置5と同様に、寄生容量が低減されたトランジスタ1を備えているので、駆動速度が向上する。
【0098】
図15に示したように、トランジスタ1(もしくはトランジスタ1A,1B,1C,2)を、電気泳動型表示素子(電気泳動型表示素子70A)を有する表示装置(表示装置7)に適用するようにしてもよい。表示装置7は、トランジスタ1の上層に電気泳動型表示素子70Aを有している。
【0099】
電気泳動型表示素子70Aは、例えば、画素電極71と共通電極72との間に電気泳動型表示体よりなる表示層73を封止したものである。画素電極71は、画素毎に配設されており、例えばトランジスタ1のソース・ドレイン電極17Aに電気的に接続されている。共通電極72は、対向基板74上に複数の画素に共通の電極として設けられている。
【0100】
この表示装置7は、上記表示装置5と同様に、寄生容量が低減されたトランジスタ1を備えているので、駆動速度が向上する。
【0101】
表示装置5,6,7は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。電子機器としては、例えばテレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラ等が挙げられる。
【0102】
図16は、上記表示装置5,6,7が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記表示装置5,6,7により構成されている。
【0103】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれら実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、高抵抗膜15を設けた構造を例に挙げて説明したが、この高抵抗膜15は、低抵抗領域12Cを形成したのちに除去することも可能である。ただし、上述のように、高抵抗膜15を設けた場合の方が、トランジスタの電気特性を安定的に保持することができるため望ましい。
【0104】
また、上記実施の形態等では、低抵抗領域12Cが、酸化物半導体膜12の表面(上面)から厚み方向の一部に設けられている場合について説明したが、低抵抗領域12Cを酸化物半導体膜12の表面(上面)から厚み方向の全部に設けることも可能である。
【0105】
更に、上記実施の形態等において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0106】
加えて、上記実施の形態等では、トランジスタの適用例として表示装置を例に挙げて説明したが、画像検出器等に適用させるようにしてもよい。
【0107】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であってこれに限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0108】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)ゲート電極と、前記ゲート電極に対向するチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有する低抵抗領域とを含む酸化物半導体膜と、前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっているトランジスタ。
(2)基板上に、前記酸化物半導体膜、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極をこの順に有し、前記ゲート絶縁膜の前記第1面は、前記酸化物半導体膜に接している前記(1)記載のトランジスタ。
(3)前記酸化物半導体膜の前記低抵抗領域には、金属が含まれている前記(1)または(2)記載のトランジスタ。
(4)前記酸化物半導体膜は、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に拡散領域を有する前記(3)記載のトランジスタ。
(5)前記拡散領域は、前記低抵抗領域の前記金属の濃度よりも低い濃度で前記金属を含む前記(4)記載のトランジスタ。
(6)前記拡散領域の前記金属の濃度は、前記低抵抗領域に近い位置から前記チャネル領域に近い位置に向かうに連れて、低くなっている前記(5)記載のトランジスタ。
(7)前記酸化物半導体膜のうち、前記ゲート絶縁膜と平面視で重なる領域の一部に前記拡散領域が設けられている前記(4)乃至(6)のうちいずれか1つに記載のトランジスタ。
(8)更に、前記酸化物半導体膜の前記低抵抗領域に電気的に接続されたソース・ドレイン電極を有する前記(1)乃至(7)のうちいずれか1つに記載のトランジスタ。
(9)更に、前記低抵抗領域に接する高抵抗膜を有する前記(1)乃至(8)のうちいずれか1つに記載のトランジスタ。
(10)前記高抵抗膜は金属酸化物を含む前記(9)記載のトランジスタ。
(11)前記酸化物半導体膜はインジウムを含む前記(1)乃至(10)のうちいずれか1つに記載のトランジスタ。
(12)前記ゲート絶縁膜では、前記第2面のチャネル長方向の長さが前記第1面のチャネル長方向の長さよりも小さい前記(1)乃至(11)のうちいずれか1つに記載のトランジスタ。
(13)前記ゲート絶縁膜では、前記第2面のチャネル長方向の長さが前記第1面のチャネル長方向の長さと同じである前記(1)乃至(11)のうちいずれか1つに記載のトランジスタ。
(14)前記ゲート絶縁膜は積層構造を有する前記(1)乃至(13)のうちいずれか1つに記載のトランジスタ。
(15)前記ゲート電極はテーパ形状を有する前記(1)乃至(14)のうちいずれか1つに記載のトランジスタ。
(16)ゲート電極と、前記ゲート電極に対向するチャネル領域と、前記チャネル領域から離間して設けられるとともに前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有する低抵抗領域とを含む酸化物半導体膜とを備えたトランジスタ。
(17)更に、前記ゲート電極と前記酸化物半導体膜との間にゲート絶縁膜が設けられ、基板上に、前記ゲート電極、前記ゲート絶縁膜、前記酸化物半導体膜およびストッパ膜をこの順に有し、前記ストッパ膜のうち、より前記酸化物半導体膜に近い面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっている前記(16)記載のトランジスタ。
(18)前記酸化物半導体膜は、前記チャネル領域と前記低抵抗領域との間の前記低抵抗領域に隣接する位置に拡散領域を有する前記(16)または(17)記載のトランジスタ。
(19)表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを備え、前記トランジスタは、ゲート電極と、前記ゲート電極に対向するチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有する低抵抗領域とを含む酸化物半導体膜と、前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっている表示装置。
(20)表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを含む表示装置を備え、前記トランジスタは、ゲート電極と、前記ゲート電極に対向するチャネル領域と、前記チャネル領域の抵抗値よりも低い抵抗値を有する低抵抗領域とを含む酸化物半導体膜と、前記酸化物半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、より前記酸化物半導体膜に近い位置の第1面と、より前記ゲート電極に近い位置の第2面とを有するゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜の前記第1面のチャネル長方向の長さが、前記ゲート電極のチャネル長方向の最大長さよりも大きくなっている電子機器。
【符号の説明】
【0109】
1,1A,1B,1C,2・・・トランジスタ、11・・・基板、12・・・酸化物半導体膜、12A・・・チャネル領域、12B・・・拡散領域、12C・・・低抵抗領域、13,23,33・・・ゲート絶縁膜、14,24・・・ゲート電極、15・・・高抵抗膜、16・・・層間絶縁膜、17A,17B・・・ソース電極、H1,H2・・・接続孔。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
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図16