特許第6561402号(P6561402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561402
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ダイヤモンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/04 20060101AFI20190808BHJP
   C23C 16/27 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C30B29/04 Q
   C23C16/27
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-102143(P2015-102143)
(22)【出願日】2015年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-216298(P2016-216298A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(73)【特許権者】
【識別番号】500036831
【氏名又は名称】アリオス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】徳田 規夫
(72)【発明者】
【氏名】猪熊 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 槙哉
(72)【発明者】
【氏名】有屋田 修
【審査官】 有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−069792(JP,A)
【文献】 特開平07−082083(JP,A)
【文献】 米国特許第05449531(US,A)
【文献】 特開平03−197388(JP,A)
【文献】 特開平05−270977(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/013108(WO,A1)
【文献】 特開平09−048693(JP,A)
【文献】 特開2013−159513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
C23C 16/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル基材の表面にCVD装置を用いて水素ガスをキャリアーにし、炭化水素を炭素供給源として、炭素の固溶層及びダイヤモンド核を形成するステップと、
次にCVD装置を用いて水素ガスをキャリアーにし、炭化水素を炭素供給源として、ダイヤモンド層をエピタキシャル成長させるステップと、次に冷却し、前記ニッケル基材とダイヤモンド層との間にグラファイト層を析出させるステップとを有することを特徴とするダイヤモンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD(chemical vapor deposition)を用いたダイヤモンドの製造方法に関し、特にニッケル(Ni),銅(Cu),コバルト(Co)等の炭素を固溶する基材を用いたヘテロエピタキシャル成長法によるダイヤモンドの製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドの(111)結晶面等の格子定数と、例えばニッケルの(111)結晶面等の格子定数との差が小さく、ニッケルを基材にしたダイヤモンド膜のヘテロエピキシャル成長膜の報告が、例えば非特許文献1に報告されている。
しかし、ニッケルは炭素の固溶度が高く、例えば1600Kでの固溶限界は2.7at%である。
そのため化学気相成長温度ではダイヤモンドが浸食されてしまい、ダイヤモンドの連続膜は得られていなかった。
また、シリコン(Si)を基材に用いた場合に冷却過程で相互の熱収縮係数の差からダイヤモンド及びシリコンに湾曲等の変形が生じる問題があり、ダイヤモンドを自立化するにはSiをエッチングにより除去することとなりシリコン基板が消耗品となる問題もあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】T.Suzuki and A.Argoitia,Phys.Stat.Sal.A 154(1996)239.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ニッケル,銅,コバルト等を基材に用いた効率的なダイヤモンドの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るダイヤモンドの製造方法は、ニッケル,銅,コバルトのうちいずれかの基材に炭素を固溶させるステップと、前記炭素が固溶された基材の表面にダイヤモンド層をエピタキシャル成長させるステップと、を有することを特徴とする。
本発明者らは、前記基材に炭素を固溶限界まで固溶させるか、あるいは固溶速度以上に炭素を供給すると、基材の表面にダイヤモンド層が安定してヘテロ成長することを見い出したことにより本発明に至ったものである。
したがって、前記ニッケル,銅,コバルトにはダイヤモンド層がヘテロ成長するものであれば、ニッケル合金,銅合金,コバルト合金も含まれる。
【0006】
これらの基材に対する炭素の固溶限界濃度は温度依存性が高いため、基材の表面にダイヤモンド層を形成させた後に常温等まで冷却すると、基材中に固溶していた炭素は基材表面、即ち、ダイヤモンド層と基材との間に層状構造からなるグラファイト層として析出する。
よって本発明は、前記炭素が固溶された基材の表面にダイヤモンド層をエピタキシャル成長させた後に冷却するステップを有し、前記基材に固溶していた炭素を基材とダイヤモンド層との間にグラファイト層として析出させるステップと、を有する点にも特徴がある。
ここで基材の形状としては、プレート状の基板のみならず、立体的形状からなる基材も含まれる。
また、Si基板等の他の材料からなる基材の表面に上記金属の薄膜を形成したり、積層する場合も含まれる。
また、ニッケル,銅,コバルトの基材は、単結晶,多結晶を選択使用することもできる。
【0007】
本発明においてダイヤモンド層をエピタキシャル成長させる手段としては、水素や希ガスをキャリアーに用い、炭素供給源として、メタン,エタン等の炭化水素,一酸化炭素,二酸化炭素及び水素の混合物等を用いたCVDを用いることができる。
CVDは熱CVD,プラズマCVD等が例として挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明はダイヤモンドと格子定数の不整合度が小さいニッケル等を基材にして、炭素源を固溶限度以上に供給、あるいはその固溶速度以上に速く炭素源を供給することでダイヤモンド層を効率的にエピタキシャル成長させることができる。
また、冷却過程において、ダイヤモンド層,グラファイト層及び基材との三層構造になるため、この柔らかいグラファイト層が緩衝膜となり、ダイヤモンド層にひずみが発生しにくい。
また、グラファイト層は層状構造であるため、この部分で容易に剥離が生じるため、自立型のダイヤモンドが容易に得られるとともに、基材の表面にグラファイト層が残っていてもCVD装置内で、このグラファイト層の炭素が基材に再度、固溶するため、繰り返しダイヤモンド成長基材として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るダイヤモンドの製造方法のプロセスを模式的に示す。
図2】本発明に係る製造方法にて得られたダイヤモンドのレーザー顕微鏡像を示す。
図3】本発明に係る製造方法にて得られたダイヤモンドのラマンスペクトルチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る製造例を以下ニッケル基材を例に説明するが、本発明はニッケル,銅及びコバルトのいずれかを基材として炭素を固溶するステップと、ダイヤモンド層をヘテロエピキシャル成長させるステップを有する限りにおいて本実施例に制限されない。
【0011】
多結晶ニッケル基材の表面を水素プラズマ処理にてクリーニングした後に、下記条件にて炭素の固溶及びダイヤモンド核の形成処理を実施した。
<第1ステップ>
(1)CVD装置:球型共振器構造のマイクロ波(2.45GHz)プラズマCVD装置
(2)投入電力 :1500W
(3)圧力 : 20kPa
(4)水素ガスをキャリアーにして、体積濃度10%のメタンガスを炭素源供給する。
(5)処理時間 :2時間
次に下記の条件にて、ダイヤモンド層の形成処理を実施した。
<第2ステップ>
(1)装置はステップ1と同じ
(2)投入電力 :1500w
(3)圧力 :20kPa
(4)メタンガス体積濃度0.5%の水素ガスを供給する。
(5)処理時間 :25時間
<第3ステップ>
上記第2ステップで、ダイヤモンド/ニッケルは約1200Kの高温になっているので常温まで冷却する。
これにより、ニッケル中に固溶していた炭素がダイヤモンド層との間にグラファイト層として析出する。
<第4ステップ>
ダイヤモンド層とニッケル基材とを、その間のグラファイト層にて剥離し、自立型のダイヤモンド基板が得られた。
これらの第1ステップ〜第4ステップの流れを図1に模式的に示す。
【0012】
上記にて得られたダイヤモンド層のレーザー顕微鏡写真を図2に示す。
ダイヤモンドの結晶粒が観察された。
このラマンスペクトルを図3に示し、ダイヤモンドであることが確認できた。
【0013】
本発明において、第1ステップのニッケル基材に炭素を固溶させ、表面にダイヤモンド核を形成するための条件は減圧条件、プラズマの出力条件等にて炭素源の濃度を調整することになるが、体積濃度でメタン濃度5〜20%程度の高濃度が好ましく、第2ステップでのメタン濃度は0.1〜5%程度の相対的に低濃度が好ましい。
【0014】
上記第4ステップにて剥離したグラファイト/ニッケル基材はCVD装置内に投入し、第1ステップにそのまま使用できた。
図1
図2
図3