特許第6561403号(P6561403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561403
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】水素水供給装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   C02F1/461 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-141840(P2015-141840)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-23893(P2017-23893A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】511083503
【氏名又は名称】株式会社スイソサム
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】中尾 勇人
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−253405(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/077770(WO,A1)
【文献】 特開平09−122652(JP,A)
【文献】 特開2005−319352(JP,A)
【文献】 特開2012−013360(JP,A)
【文献】 特開2011−062669(JP,A)
【文献】 特開2014−166609(JP,A)
【文献】 特開平08−332486(JP,A)
【文献】 特開2002−355673(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0026033(US,A1)
【文献】 特開2006−110512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給源から供給された水を水素水生成器で電気分解して生成した水素を含有する水素水を供給口から供給する水素水供給装置において、
供給源から供給された水を貯留するためのタンクに水素水生成器を接続し、水素水生成器の下流側に吸引ポンプを接続し、吸引ポンプの下流側に減圧器を接続し、減圧器の下流側に供給口を接続して、吸引ポンプの駆動によってタンクに貯留された水が水素水生成器へと供給されることを特徴とする水素水供給装置。
【請求項2】
前記水素水生成器は、容器の内部に隔膜を挟んで陽電極板と陰電極板とを設け、容器に供給した水を電気分解して陰電極板で水素を発生させて、水素を含有する水素水を生成するように構成し、
容器の下部に水の流入口を設けるとともに、容器の上部に水素水の流出口を設け、流入口と流出口との間に陰電極板の全面に沿って蛇行する連通路を形成したことを特徴とする請求項1に記載の水素水供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給源から供給された水を水素水生成器で電気分解して生成した水素を含有する水素水を供給口から供給する水素水供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水素を含有させた水素水は、活性酸素を還元させることなどによって人体に好影響を及ぼす作用を有することが確認されている。この水素水を家庭内やオフィス内で供給する装置として出願人は水素水供給装置の開発を行っている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の水素水供給装置では、水の供給源と水素水の供給口とを流路で接続し、流路にポンプ、水素水生成器、減圧器を上流側から順に介設した構成としている。
【0004】
そして、水素水供給装置では、供給源から供給された水を水素水生成器で電気分解することによって水素を含有する水素水を生成し、供給口から供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−166609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、水素水生成器の内部においては、気泡状の水素が発生することに起因して圧力損失が生じる。そのため、上記従来の水素水供給装置では、流路にポンプ、水素水生成器、減圧器を上流側から順に介設した構成となっているために、ポンプで加圧された後に、水素水生成器と減圧器とで減圧されることになる。
【0007】
これにより、上記従来の水素水供給装置では、水素水生成器の内部の水圧が低くなって、水素を良好に含有させることができず、水素濃度の低い水素水が生成されてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、供給源から供給された水を水素水生成器で電気分解して生成した水素を含有する水素水を供給口から供給する水素水供給装置において、供給源から供給された水を貯留するためのタンクに水素水生成器を接続し、水素水生成器の下流側に吸引ポンプを接続し、吸引ポンプの下流側に減圧器を接続し、減圧器の下流側に供給口を接続して、吸引ポンプの駆動によってタンクに貯留された水が水素水生成器へと供給されることにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、水素水生成器は、容器の内部に隔膜を挟んで陽電極板と陰電極板とを設け、容器に供給した水を電気分解して陰電極板で水素を発生させて、水素を含有する水素水を生成するように構成し、容器の下部に水の流入口を設けるとともに、容器の上部に水素水の流出口を設け、流入口と流出口との間に陰電極板の全面に沿って蛇行する連通路を形成することにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、供給源から供給された水を水素水生成器で電気分解して生成した水素を含有する水素水を供給口から供給する水素水供給装置において、供給源に水素水生成器を接続し、水素水生成器の下流側に吸引ポンプを接続し、吸引ポンプの下流側に減圧器を接続し、減圧器の下流側に供給口を接続することにしているために、水素水生成器の内部の水圧を良好に保持することができ、良好な濃度の水素水を供給することができる。
【0012】
特に、容器の内部に隔膜を挟んで陽電極板と陰電極板とを設け、容器に供給した水を電気分解して陰電極板で水素を発生させて、水素を含有する水素水を生成するように水素水生成器を構成し、容器の下部に水の流入口を設けるとともに、容器の上部に水素水の流出口を設け、流入口と流出口との間に陰電極板の全面に沿って蛇行する連通路を形成することにした場合には、陰電極板の全面で水が電気分解されることになり、多くの水素が発生し、その水素が水流で直ちに陰電極板から分離することになるので、多くの水素が含有された水素水を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る水素水供給装置を示す説明図。
図2】水素水生成器を示す斜視図。
図3】同水平断面図((a)下側水平断面図、(b)上側水平断面図)。
図4】同垂直断面図((a)左側垂直断面図、(b)右側垂直断面図)。
図5】容器の内側から見た連通路を示す正面図。
図6】陰電極板を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る水素水供給装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、水素水供給装置1は、水(たとえば、水道水)の供給源Sと水素水の供給口Eとの間をワンパス型の流路Rで接続している。
【0016】
流路Rには、水を一時的に貯留するためのタンクTと、水素水を生成するための水素水生成器Hと、吸引ポンプPと、オリフィス型の減圧器Dと、流量調整バルブBとを上流側から順に介設している。
【0017】
すなわち、水素水供給装置1は、供給源SにタンクTを接続し、タンクTの下流側に水素水生成器Hを接続し、水素水生成器Hの下流側に吸引ポンプPを接続し、吸引ポンプPの下流側に減圧器Dを接続し、減圧器Dの下流側に流量調整バルブBを接続し、流量調整バルブBの下流側に供給口Eを接続した構成となっている。
【0018】
そして、水素水供給装置1では、流量調整バルブBを所定の流量となるように開放すると、所定時間経過後に吸引ポンプPを駆動する。吸引ポンプPの駆動によってタンクTに貯留された水が水素水生成器Hへと供給される。水素水生成器Hの内部では、以下に説明するように水を電気分解することで水素水を生成する。生成された水素水は、吸引ポンプPの吸引圧力で吸引され減圧器Dへと供給され、減圧器Dで減圧されてから供給口Eから供給される。
【0019】
その際に、吸引ポンプPでは、大気圧よりも高い吸引圧力で吸引し、その後、減圧器Dで一端大気圧よりも低い圧力まで減圧する。これにより、水素水供給装置1は、水素水生成器Hにおいて大気圧よりも高い圧力で飽和状態となるまで水素が溶解していた水素水は、減圧器Dで大気圧よりも低い圧力まで減圧されることで溶解していた水素が析出して、細泡状の水素を含有した状態となって供給口Eから提供されることになる。
【0020】
水素水を生成する水素水生成器Hは、図2図6に示すように、中空箱型形状の容器2の内部に水の電気分解を行うための処理空間を形成している。容器2は、前側容器3と後側容器4とで構成している。前側容器3は、前側左下部に前後に貫通する水の流入口5を形成するとともに、前側右上部に前後に貫通する水素水(水及び水素)の流出口6を形成している。後側容器4は、後側右下部に前後に貫通する水の流入口7を形成するとともに、後側左上部に前後に貫通する酸素水(水及び酸素)の流出口8を形成している。なお、流入口5,7にタンクTが接続されており、流出口6には吸引ポンプPが接続され、流出口8には排水管(図示省略)が接続されている。
【0021】
この容器2の内部に形成された処理空間には、矩形板状の隔膜9(イオン交換樹脂膜)が収容されており、隔膜9を用いて処理空間を隔膜9よりも前側の陰極側処理空間10と隔膜9よりも後側の陽極側処理空間11とに前後に区画している。陰極側処理空間10は、前側容器3の後側(内側)と隔膜9の前側との間に形成され、陽極側処理空間11は、後側容器4の前側(内側)と隔膜9の後側との間に形成される。
【0022】
陰極側処理空間10には、矩形板状の陰電極板12が隔膜9と密着して収容されており、前側容器3の後側(内側)と陰電極板12との間に流入口5から流出口6に向かって水が流れる連通路13が形成されている。また、陽極側処理空間11には、矩形板状の陽電極板14が隔膜9と密着して収容されており、後側容器4の前側(内側)と陽電極板14との間に流入口7から流出口8に向かって水が流れる連通路15が形成されている。なお、陰電極板12には電源(図示省略)の陰極が接続され、陽電極板14には、電源(図示省略)の陽極が接続されている
【0023】
陰電極板12及び陽電極板14には、前後に貫通する複数の連通孔16,17が形成されている。連通孔16,17は、連通路13,15と隔膜9とを連通させている。また、連通孔16,17は、水平方向に伸延する(鉛直方向よりも水平方向に長く伸びた)長孔形状となっている。なお、陰電極板12と陽電極板14とは、隔膜9を挟んで連通孔16,17の位置が一致しないように対向させて配置して水素イオンが隔膜9を透過しやすくしているが、連通孔16,17の位置が一致するように対向させて電気抵抗(消費電力)を低減させるようにしてもよい。
【0024】
連通路13,15は、前側容器3の後側(内側)及び後側容器4の前側(内側)に水平方向に伸延させた突起18,19を形成することで流入口5,7から流出口6,8へ向かって陰電極板12及び陽電極板14の全面に沿って蛇行させている。これにより、連通路13,15は、水平方向に向かって伸延する水平通路20,21と鉛直方向に向かって伸延する鉛直通路22,23とが交互に接続された状態となっている。そして、鉛直流路22,23の幅(左右幅)は、水平通路20,21の幅(上下幅)よりも狭くして、鉛直流路22,23において一時的に流速が増加するようにしている。
【0025】
水素水生成器Hは、以上に説明したように構成しており、陰電極板12と陽電極板14に電源(図示省略)を接続して直流電圧を印加した状態で流入口5,7から水(水道水等)を流入させると、処理空間の内部で水が電気分解される。そして、陽電極側処理空間11では、陽電極板14の表面で水が酸素と水素イオンとに分解され、陽電極板14において発生した酸素を含んだ水(酸素水)が流出口8から流出される。一方、陰電極側処理空間10では、陽電極板14の表面で発生した水素イオンが隔膜9を介して陰電極板12に透過し、陰電極板12において電子と結合して水素が発生し、その水素を含んだ水(水素水)が流出口6から流出される。
【0026】
陰電極側処理空間10では、流入口5から流入した水は、流入口5から流出口6へと連通路13を介して陰電極板12に沿って流れる。その際に、連通路13が蛇行しているために、水と陰電極板12との接触面積(接触時間)が長くなり、陰電極板12において発生した水素を多く含んだ水素水が生成される。これにより、水素水生成器Hで生成される水素水の水素濃度を高くすることができる。
【0027】
また、上記水素水生成器Hでは、陰電極板12に複数の連通孔16が形成されているため、従来の矩形板状の電極板を用いた場合に比べて水と陰電極板12との接触面積が増大し、水素イオンと電子との結合が促進され、多くの水素を発生させることができる。また、陰電極板12の連通孔16によって連通路13を流れる水が乱されるために、陰電極板12から水素を円滑に分離させることができるとともに、水と水素との撹拌混合を良好に行うことができる。なお、連通孔16の形状を多角形とした場合には、連通孔16の周面が不連続面となるために、陰電極板12から水素をより一層円滑に分離させることができる。
【0028】
連通路13では、水素が気体であるために上方側に水素が残留するおそれがあり、連通路13を蛇行状に形成した場合には折曲部となる鉛直通路22の上部に水素が残留するおそれがある。しかし、上記水素水生成器Hでは、水平通路20よりも鉛直通路22の幅を狭くすることで水の流速(水勢)を増大させ、鉛直通路22に水素が残留しないようにしている。
【0029】
以上に説明したように、上記水素水供給装置1では、供給源Sに水素水生成器Hを接続し、水素水生成器Hの下流側に吸引ポンプPを接続し、吸引ポンプPの下流側に減圧器Dを接続し、減圧器Dの下流側に供給口Eを接続した構成となっている。
【0030】
そのため、上記構成の水素水供給装置1では、水素水生成器Hの内部の水圧を良好に保持することができ、良好な濃度の水素水を供給することができる。
【0031】
特に、水素水生成器Hの内部で水を蛇行させた場合には、水素水生成器Hの内部での圧力損失が大きくなるが、その場合であっても多くの水素が含有された水素水を生成することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 水素水供給装置 2 容器
3 前側容器 4 後側容器
5 流入口 6 流出口
7 流入口 8 流出口
9 隔膜 10 陰極側処理空間
11 陽極側処理空間 12 陰電極板
13 連通路 14 陽電極板
15 連通路 16,17 連通孔
18,19 突起 20,21 水平通路
22,23 鉛直流路 H 水素水生成器
S 供給源 T タンク
P 吸引ポンプ D 減圧器
B 流量調整バルブ E 供給口
図1
図2
図3
図4
図5
図6