(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1演算部が、予め取得されているN個の前記電池セルの前記第2のコールコールプロットまたは前記電池セルの状態を基に、等価回路モデルのパラメータを変化させながら、カーブフィッティング法により、前記第1のコールコールプロットをN個の前記第2のコールコールプロットに分解することを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の電池モジュール。
それぞれが電池セルを含むN個(N≧2)の電池が直列接続されており、少なくとも(N−1)個の前記電池に、前記N個の電池のインピーダンス特性が異なるように構成されているラベル素子が並列接続されている、組電池の第1のコールコールプロットを取得する測定ステップと、
前記第1のコールコールプロットを、前記N個の電池の第2のコールコールプロットに分解する第1の演算ステップと、
前記第2のコールコールプロットから、前記ラベル素子のインピーダンス特性の影響を除いて、前記N個の電池セルの第3のコールコールプロットを算出する第2の演算ステップと、
前記第3のコールコールプロットをもとに、前記N個の電池セルの状態を算出する状態算出ステップと、を具備することを特徴とする電池モジュールの評価方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の電池モジュールの構成図である。
【
図2】第1実施形態の電池モジュールの組電池の構成図である。
【
図3】電池セルのインピーダンス特性の一例である。
【
図4】第1実施形態の電池モジュールの組電池の等価回路図である。
【
図5】第1実施形態の電池モジュールの評価方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の電池モジュールの組電池の第1コールコールプロットである。
【
図7A】第1実施形態の電池モジュールの第1電池の第2コールコールプロットである。
【
図7B】第1実施形態の電池モジュールの第2電池の第2コールコールプロットである。
【
図7C】第1実施形態の電池モジュールの第3電池の第2コールコールプロットである。
【
図8A】第1実施形態の電池モジュールの第1電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図8B】第1実施形態の電池モジュールの第2電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図8C】第1実施形態の電池モジュールの第3電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図9】第1実施形態の電池モジュールの劣化度の異なる電池セルのコールコールプロットである。
【
図10】第2実施形態の電池モジュールの組電池の第1コールコールプロットである。
【
図11A】第2実施形態の電池モジュールの第1電池の第2コールコールプロットである。
【
図11B】第2実施形態の電池モジュールの第2電池の第2コールコールプロットである。
【
図11C】第2実施形態の電池モジュールの第3電池の第2コールコールプロットである。
【
図12A】第2実施形態の電池モジュールの第1電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図12B】第2実施形態の電池モジュールの第2電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図12C】第2実施形態の電池モジュールの第3電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図13】第3実施形態の電池モジュールの組電池の第1コールコールプロットである。
【
図14A】第3実施形態の電池モジュールの第1電池の第2コールコールプロットである。
【
図14B】第3実施形態の電池モジュールの第2電池の第2コールコールプロットである。
【
図14C】第3実施形態の電池モジュールの第3電池の第2コールコールプロットである。
【
図15A】第3実施形態の電池モジュールの第1電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図15B】第3実施形態の電池モジュールの第2電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図15C】第3実施形態の電池モジュールの第3電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図16】第4実施形態の電池モジュールの組電池の第1コールコールプロットである。
【
図17A】第4実施形態の電池モジュールの第1電池の第2コールコールプロットである。
【
図17B】第4実施形態の電池モジュールの第2電池の第2コールコールプロットである。
【
図17C】第4実施形態の電池モジュールの第3電池の第2コールコールプロットである。
【
図18A】第4実施形態の電池モジュールの第1電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図18B】第4実施形態の電池モジュールの第2電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図18C】第4実施形態の電池モジュールの第3電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図19】第5実施形態の電池モジュールの組電池の第1コールコールプロットである。
【
図20A】第5実施形態の電池モジュールの第1電池の第2コールコールプロットである。
【
図20B】第5実施形態の電池モジュールの第2電池の第2コールコールプロットである。
【
図20C】第5実施形態の電池モジュールの第3電池の第2コールコールプロットである。
【
図21A】第5実施形態の電池モジュールの第1電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図21B】第5実施形態の電池モジュールの第2電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図21C】第5実施形態の電池モジュールの第3電池セルの第3コールコールプロットである。
【
図22】第6実施形態の電池モジュールの組電池の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
<電池モジュールの構成>
図1に示すように、第1実施形態の電池モジュール1は、組電池2とアセスメント評価部3とを具備する。電池モジュール1は、負荷4、例えば、電気自動車の駆動回路と接続され、駆動電力を出力する。また、電池モジュール1は、図示しない充電回路と接続され、充電電力が入力される。
【0016】
実施形態の組電池2は、3個の電池31、32、33が直列接続されて構成されている。以下、例えば、複数の電池31〜33のそれぞれを電池30という。
【0017】
アセスメント評価部3は、制御部41、測定部42、第1演算部43、第2演算部44、第3演算部45、および記憶部46を含む。制御部41はアセスメント評価部3の全体の制御を行う。測定部42は、組電池2の第1のコールコールプロットを測定する。第1演算部43は第1のコールコールプロットを複数の電池30の第2のコールコールプロットに分解する。第2演算部44は、第2のコールコールプロットから複数の電池セル10の第3のコールコールプロットを算出する。第3演算部45は、第3のコールコールプロットを基に、電池セル10の劣化度を算出する。記憶部46は、制御部41の制御プログラム、および、第1演算部43、第2演算部44および第3演算部45が演算に用いる情報等を記憶している。
【0018】
なお、制御部41、測定部42、第1演算部43、第2演算部44、および第3演算部45は、例えば、それぞれがCPUにより構成されているが、全体が、1つのCPUにより構成されていてもよい。また、半導体メモリ等からなる記憶部46がCPUと一体でもよい。さらに、電池モジュール1が他のシステムの一部として使用されている場合には、アセスメント評価部3の構成要素が他のシステムの構成要素を兼ねていてもよい。
【0019】
図2に示すように、組電池2のそれぞれの電池30(31〜33)は、電池セル10(11〜13)と電池セル12、13と並列接続されたラベル素子20(22、23)とを有する。電池セル10は、例えば、リチウムイオン電池セルであり、リチウムイオンを吸蔵/放出する正極10Aと、電解質10Bと、セパレータ10Cと、リチウムイオンを吸蔵/放出する負極10Dと、を有する。正極10Aは例えばリチウムコバルト酸化物等を含有しており、負極10Dは例えば炭素材料等を含有しており、セパレータ10Cは例えばポリオレフィン等からなる。そして電解質10Bは、例えばLiPF6等のリチウム塩をカーボネートに溶解した電解質である。なお、電池セルは、多孔質等からなるセパレータ10Cの内部に電解質10Bが充填された構造であってもよい。
【0020】
また、
図2に示した電池セル10は模式図であり、その構造は公知の各種の構造、例えば、巻回型セル、コイン型セルまたはラミネートセル等でもよい。さらに、正極10A、負極10Dおよびセパレータ10C等の材料も上記記載の材料に限定されるものではなく、公知の各種材料を用いることができる。
【0021】
すでに説明したように、組電池2を構成している3つの電池31〜33のうち、電池32、33の電池セル12、13には、それぞれ、ラベル素子22、23が並列接続されている。ラベル素子20は、抵抗成分Rと容量成分Cとを有するRC素子である。電池セル10(11、12、13)は同じであっても、ラベル素子20(22、23)が接続されているため、後述するように、電池30(31、32、33)のインピーダンスの周波数特性は異なる。逆に言えば、ラベル素子20は、それぞれの電池30のインピーダンス特性が異なるように構成されている。
【0022】
ラベル素子20は、直流電流が遮断され交流電流は通過する構成である必要がある。このため、ラベル素子20はコンデンサを含む。
【0023】
電池モジュール1は、それぞれの電池31、32、33のインピーダンス特性が異なるため、組電池2のインピーダンス特性、すなわち3つの電池の合成インピーダンス特性(第1のコールコールプロット)を測定すれば、それを、それぞれの電池31、32、33のインピーダンス特性(第2のコールコールプロット)に分解できる。
【0024】
<インピーダンス測定>
電池のインピーダンスの周波数特性は、例えば、交流インピーダンス法により測定される。
【0025】
交流インピーダンス法では、電池セル10に対し直流電圧に微小な交流電圧信号を重畳させた信号を印加し、応答信号からインピーダンスを測定する。交流インピーダンス測定法は、印加する信号電圧が小さいので、測定対象の電池セル10の状態を変化させることなくインピーダンス特性を測定できる。
【0026】
直流電圧成分は、測定する電池セル10の電圧程度に設定される。また、重畳する交流電圧成分は、電池セル10の特性に影響を与えない程度の電圧に設定される。なお重畳する交流電圧成分は、電池セル10の特性に影響を与えない程度の電圧に設定される交流電流を用いても良い。
【0027】
交流インピーダンス測定法では、信号周波数を高い周波数から低い周波数へ掃引し、所定の周波数間隔で、各周波数における電池のインピーダンスを測定する。
【0028】
例えば、交流インピーダンス測定は以下の条件にて行われる。なお、バイアス電圧は組電池2の電圧である。すなわち、電池モジュール1は組電池2の使用時にも交流インピーダンス測定が可能である。
周波数測定範囲:0.1Hz〜100kHz
電圧振幅:5mV
バイアス電圧:12V
温度:25℃
【0029】
図3に単一の電池セルのインピーダンスの周波数特性の一例を示す。測定されたインピーダンスの周波数特性は、実数軸(Z‘)を抵抗成分、虚数軸(Z’‘)をリアクタンス成分(通常は容量性)とする複素平面図に表示したコールコールプロット(またはナイキストプロット)で示される。
図3に示すように、測定周波数を高周波から低周波に変化させていくと、時計回りに半円を含むインピーダンスの軌跡であるコールコールプロットが得られる。
【0030】
なお、
図3に示すように、コールコールプロットは、インダクタンス領域(領域A)と、電荷移動反応領域(領域B)と、イオン拡散領域(領域C)とに区分される。インダクタンス領域(領域A)は例えば10kHz以上の高周波領域である。
【0031】
コールコールプロットを測定するためには、周波数掃引法に限られるものではない。例えば、入力信号として基本周波数f1の矩形波を用いて、高調波成分(2f1、3f1、、)が含まれている応答信号をフーリエ変換することで、複数の周波数(f1、2f1,3f1、、、)のインピーダンスを測定してもよい。または、複数の周波数の信号が重畳された入力信号を用いてもよい。
【0032】
コールコールプロットから電池セルの特性を理論的に解析するためには、等価回路モデルをもとにしたフィッティング処理が行われる。
図3においては、単純な等価回路モデルによる、溶液抵抗Rsと反応抵抗(電荷移動抵抗)RCとを示している。なお、電池セル10の劣化の影響は、特に電荷移動反応領域(領域B)において顕著であることが知られている。
【0033】
図4に複数の電池31〜33を具備する組電池2の等価回路モデルを示す。このモデルは、測定系39に対応する回路と、それぞれの電池30(31〜33)に対応する回路と、から構成されている。測定系39に対応する回路はインダクタンスL0と抵抗R0とを含む。電池セル10(11〜13)に対応する回路は、溶液抵抗Rs(Rs1、Rs2、Rs3)と、電荷移動抵抗RC(RC11、RC12、RC13)と、界面容量CC(CC11、CC12、CC13)と、を含む。ラベル素子20(22、23)に対応する回路は、抵抗RL(RL2、RL3)と静電容量CL(CL2、CL3)とを含む。
【0034】
なお、この等価回路モデルでは、拡散抵抗Zwは省略されている。後述するように、より正確な値を得るために、特開2013−29411号公報に開示されているような、より複雑な等価回路モデルを用いてもよいが、演算時間が長くなる。このため、要求される結果の精度に応じて適切な等価回路モデルが選択される。
【0035】
本実施形態では、ラベル素子22として、RL2=5mΩの抵抗と、CL2=330μFのキャパシタと、を直列接続したRC素子が第2電池セル12に並列接続されている。第3電池セル13には、ラベル素子23として、RL3=10mΩの抵抗と、CL3=330μFのキャパシタと、を直列接続したRC素子が並列接続されている。なお、第1電池31の第1電池セル11にはラベル素子は接続されていない。
【0036】
すなわち、N個の電池30が直列接続されている組電池2においては、少なくとも(N−1)個の電池30に、インピーダンス特性が異なるように構成されているラベル素子20が電池セル10に並列接続されていればよい。もちろん、全ての電池30がラベル素子20を有していてもよい。また、容量または抵抗が可変の同じラベル素子20が複数の電池30に、それぞれ接続されており、それぞれのラベル素子の容量または抵抗が調整されて異なる値となっていてもよい。
【0037】
アセスメント評価部3の測定部42は、組電池2のインピーダンスの周波数特性である第1のコールコールプロットを測定する。第1のコールコールプロットは、複数の電池31〜33の、それぞれのインピーダンス特性である第2のコールコールプロットが重畳された合成インピーダンス特性である。
【0038】
第1演算部43は、第1のコールコールプロットを、複数の電池31〜33の、それぞれの第2のコールコールプロットに分解する。すなわち、複数の電池31〜33の第2のコールコールプロットは、ラベル素子22、23により大きく異なる。このため、第1演算部43は、例えば、カーブフィッティング法により合成インピーダンス特性(第1のコールコールプロット)を、それぞれの電池31、32、33のインピーダンス特性(第2のコールコールプロット)に分解できる。
【0039】
例えば、記憶部46に、予め取得された電池30(31〜33)の前回測定において取得されたインピーダンス特性または劣化度が記憶されている。なお、最初の測定では、劣化していない劣化度(SOH)100%の電池30の第2のコールコールプロットが記憶されている。すなわち、劣化度(SOH)は、値が小さい程、劣化が進んでいることを示している。
【0040】
第1演算部43は、電池セル10の前回の測定における劣化度等を基に、それぞれの等価回路モデルの構成要素のパラメータを変化させながら、合成インピーダンス特性(合成された第1のコールコールプロット)が、測定部42が測定した第1のコールコールプロットと所定の誤差範囲内となるように繰り返し演算を行うことで、第1のコールコールプロットを、複数の第2のコールコールプロットに効率的に分解する。
【0041】
第2演算部44は、第2のコールコールプロットからラベル素子22、23のインピーダンス特性の影響を取り除いて、電池セル12、13の第3のコールコールプロットを算出する。例えば、記憶部46には、ラベル素子22,23のインピーダンス特性が記憶されている。
【0042】
ラベル素子が配設されていない第1電池31では、第2のコールコールプロットと第3のコールコールプロットとは同じである。
【0043】
第3演算部45は、第3のコールコールプロットをもとに電池セル10の劣化度(SOH)を算出する。すなわち、電池セル10の劣化度と、第3のコールコールプロットとの関係は、予め取得され、記憶部46に記憶されている。
【0044】
以上の説明のように、電池モジュール1は、組電池2の合成インピーダンス特性(第1のコールコールプロット)を測定するだけで、組電池2を構成する複数の電池セル10のそれぞれの劣化度SOHを評価できるため、構成が簡単である。
【0045】
<電池モジュールの評価方法>
次に、
図5に示すフローチャートに沿って、電池モジュールの評価方法について詳細に説明する。
【0046】
<ステップS10>測定ステップ
電池モジュール1の測定部42が、組電池2に所定の周波数、例えば、100kHz〜0.1Hzの正弦波の測定信号を印加し、インピーダンスの周波数特性データ(第1のコールコールプロット)を取得する。なお、インピーダンス特性は温度の影響が大きいため、測定部42は、コールコールプロット取得時に、組電池2に配設されている温度センサ(不図示)により測定温度も取得する。そして、測定部42は、取得した第1のコールコールプロットを温度補正する機能を有していることが好ましい。
【0047】
図6に、測定部42が測定した組電池2の第1のコールコールプロットを示す。参考のため、ラベル素子20を接続しない比較例の組電池(Ref.)のコールコールプロットを黒丸で示す。ラベル素子20の接続により第1のコールコールプロットは、特に、10kHz以上の高周波のインダクタンス領域(領域A)において、ループ部を有し交差するように大きく変化している。かかる形状のコールコールプロットは、電池および組電池の測定では通常はみられない形状であり、ラベル素子20が付加された組電池2のコールコールプロットの特徴である。
【0048】
なお、ラベル素子20が接続されても、第1のコールコールプロットの電池セル10の劣化度に応じた変化が顕著に表れる10kHz未満の電荷移動反応領域(領域B)は、10kHz以上のインダクタンス領域(領域A)のように大きくは変化していない。
【0049】
<ステップS11>第1分離演算(第1の演算ステップ)
第1演算部43が、第1のコールコールプロット(
図6)を、
図7A、
図7Bおよび
図8Cに示す3つの電池31〜33の、それぞれの第2のコールコールプロットに分解する。
【0050】
例えば、第1演算部43は、予め取得され、記憶部46に記憶されている、電池31〜33の前回の測定で得られた第2のコールコールプロットを基に、等価回路モデルのパラメータを変化させながら、カーブフィッティング法により、第1のコールコールプロットを3つの第2のコールコールプロットに分解する。
【0051】
電池31〜33の第2のコールコールプロットは、
図7A、
図7Bおよび
図7Cに示すように、ラベル素子22、23の接続により大きく異なっている。すなわち、第1電池31と、電池32、33とは、特に10kHz以上のインダクタンス領域において、第2のコールコールプロットが大きく異なる。また、第2電池32と第3電池33も、特に10kHz以上のインダクタンス領域において、第2のコールコールプロットが大きく異なる。このため、第1演算部43は、第1のコールコールプロットを3つの第2のコールコールプロットに分解できる。
【0052】
カーブフィッティング法では、前回の測定における電池セル11〜13の劣化度、または、電池31〜33の第2のコールコールプロットを合成し、第1のコールコールプロット(初期値)を作成することが好ましい。そして、第1のコールコールプロット(測定値)と第1のコールコールプロットとが所定の誤差範囲内となるように、電池セル11〜13の等価回路モデルのパラメータ(構成要素の数値)を変化させることで、短時間で。第1のコールコールプロットを3つの第2のコールコールプロットに分解できる。
【0053】
電池セル11〜13の劣化には所定のパターンがある。例えば、溶液抵抗Rsと電荷移動抵抗RCとが徐々に増加する。このため、前回の測定における第2のコールコールプロットから算出された等価回路モデルの溶液抵抗Rsと電荷移動抵抗RCとを増加した場合のコールコールプロットをシミュレーションし、測定されたコールコールプロットとの相違度を演算する。相違度が所定値よりも大きい場合には、パラメータ数値を変更し再度相違度を演算する。この繰り返しにより、相違度(誤差)が所定範囲内になったら、カーブフィッティング処理を完了する。
【0054】
さらに、前回の測定からの組電池2の使用状態(例えば、経過時間、充放電回数、温度条件)を記憶部46に記憶しておくことで、等価回路モデルのパラメータの変化割合を決定することが好ましい。
【0055】
なお、コールコールプロットに示されている測定点は、抵抗成分(Z‘)、リアクタンス成分(Z’‘)だけでなく、測定周波数(f)の情報が含まれている。このため、カーブフィッティング法では、3次元の第1の曲線(測定値)と3次元の第2の曲線(演算値)との距離が最小になるように、例えば、最小二乗法による回帰分析が行われる。
【0056】
第1演算部43の演算精度は、電池31〜33の3つの第2のコールコールプロットの相違度が大きいほど、高くなり、かつ、演算が容易となる。
【0057】
このため、ラベル素子20が容量成分だけからなる場合には、ラベル素子20は静電容量が電池セル10の50%以上の容量成分を含み、かつ、複数の電池30の静電容量が、互いに50%以上異なることが好ましい。
【0058】
例えば、本実施形態の電池モジュール1では、電池セル10の直流における容量、すなわち、静電容量CC(F)は130μFであった。このため、ラベル素子20は静電容量が65μF以上であり、かつ、ラベル素子22の静電容量が65μFの場合、ラベル素子23の静電容量は、97.5μF以上であることが好ましい。
【0059】
なお、ラベル素子20が、静電容量が電池セル10の100%以上の容量成分を含むことが、より好ましい。
【0060】
本実施形態の組電池2のように、ラベル素子20が、容量成分(コンデンサ)と抵抗成分(抵抗)を含む場合には、静電容量が同じであっても、抵抗成分に応じて、ラベル素子20に流れる電流と電池セル10に流れる電流との割合が変化する。
【0061】
このため、ラベル素子20は、静電容量が電池セル10の50%以上、より好ましくは100%以上の容量成分と、直流抵抗が電池セル10の10%以上の抵抗成分と、を含み、かつ、複数のラベル素子20の直流抵抗が、互いに25%以上異なることが好ましい。
【0062】
例えば、本実施形態の電池モジュール1では、電池セル10の直流抵抗は10mΩであった。このため、ラベル素子20は、静電容量が65μF以上の容量成分(コンデンサ)に加えて、直流抵抗1mΩ以上の抵抗成分を含み、かつ、ラベル素子22の直流抵抗が1mΩの場合、ラベル素子23の直流抵抗は1.25mΩ以上であることが好ましい。
【0063】
なお、ラベル素子20が、直流抵抗が電池セル10の25%以上の抵抗成分を含み、かつ、複数のラベル素子20の直流抵抗が、互いに25%以上異なることが、より好ましい。
【0064】
また、複数のラベル素子20が、その静電容量および直流抵抗が、それぞれ異なっていてもよいことは言うまでも無い。さらに、の静電容量が同じコンデンサ素子と直流抵抗が異なる抵抗素子とからなる複数のラベル素子と、静電容量が異なるコンデンサ素子からなる複数のラベル素子と、が組み合わされて使用されてもよい。
【0065】
電池セル10の静電容量および直流抵抗等は、劣化により変化する。ラベル素子20の設定に用いる電池セル10の静電容量および直流抵抗等は、劣化度(SOH)100%の電池セル10の値が用いられる。
【0066】
ラベル素子20は、直流電流が遮断され交流電流は通過する素子であれば、RC素子に限られるものではない。例えば、ラベル素子20が、容量成分だけ、例えば、チップコンデンサだけで構成されていてもよい。ただし、ラベル素子20が容量成分だけの場合には、RC素子の場合に比べて、多くの電流がラベル素子20を流れるため、第2のコールコールプロットの分離は容易になるが電池セル10の第3のコールコールプロットの精度が低下する。
【0067】
ラベル素子が容量成分だけ、または、インダクタンス成分だけ、であっても、導体抵抗がある。このため、ラベル素子20は僅かに抵抗成分を含んでいるが、不可避に含まれる抵抗成分はラベル素子の設定時には余り考慮する必要はない場合が多い。
【0068】
ラベル素子20は、複数の電池30のインピーダンス特性を、組電池2の合成インピーダンス特性から分離可能なように変化することができる構成であり、かつ、直流電流は遮断し交流電流は通過する構成であれば、各種の受動素子(C素子、RC素子、LC素子、LCR素子)を用いることができる。なお、上記機能を有する構成であれば、ラベル素子20として、能動素子やフィルター回路を用いてもよい。
【0069】
<ステップS12>第2分離演算(第2の演算ステップ)
第2演算部44が、電池30の第2のコールコールプロットから電池セル10の第3のコールコールプロットを分離する。
【0070】
なお、ラベル素子20を含んでいない第1電池31の第2のコールコールプロット(
図7A)は、
図8Aに示す第1電池セル11の第3のコールコールプロットと同じである。
【0071】
一方、第2電池32の第2のコールコールプロット(
図7B)から、ラベル素子22のインピーダンス特性の影響を取り除く演算を行うことにより、
図8Bに示す第2電池セル12の第3のコールコールプロットが得られる。同様に、第3電池33の第2のコールコールプロット(
図7C)から、ラベル素子23のインピーダンス特性の影響を取り除く演算を行うことにより、
図8Cに示す第3電池セル13の第3のコールコールプロットが得られる。
【0072】
ラベル素子22、23のインピーダンスの周波数特性(コールコールプロット)は予め取得され、記憶部46に記憶されている。なお、
図8A等においては、コールコールプロットの劣化度算出に用いられる一部のデータを示している。
【0073】
<ステップS13>劣化度演算(状態算出ステップ)
第3演算部45が、それぞれの第3のコールコールプロットを基に、電池セル11、12、13の劣化度を算出する。
【0074】
例えば、
図9に示すように、電池セル10の複数の劣化度(SOH)に対応した、それぞれのインピーダンス特性が記憶部46に予め記憶されている。第3演算部45は、第3のコールコールプロットと劣化度(SOH)に対応したインピーダンス特性とから、劣化度を算出する。
【0075】
なお、記憶部46に記憶されている劣化度(SOH)に対応したインピーダンス特性は、インピーダンスの周波数特性であるコールコールプロットに限られるものではない。例えば、例えば、コールコールプロットから取得される電荷移動抵抗CRを基に、電池セル10の劣化度(SOH)が算出されてもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、
図8A、
図8Bおよび
図8Cの第3のコールコールプロットは、
図9の劣化度(SOH)が100%のコールコールプロットと一致していた。すなわち、第3演算部45により、電池セル11、12、13の劣化度(SOH)は、いずれも100%と算出された。
【0077】
なお、第3演算部45は、電池30の初期抵抗値(公称電池容量)をもとに、測定時の電池セル10の最大容量に対する充電されている容量を示す充電深度(SOC:State of charge)も、算出可能である。
【0078】
電池セル10の充電深度も、劣化度と同じように、予め電池セル10のコールコールプロットと充電深度との関係を測定し記憶部46に記憶されている。第3演算部45は、第3のコールコールプロットと充電深度に対応したインピーダンス特性とから、充電深度を算出する。または、第3演算部45は、例えば、公称電池セル容量の1/5レートの電流値で、測定時の電池セル電圧から電池セルの定格電圧(電池容量50%時の電圧)までに至る時間から外挿することで、第3演算部45は、充電深度を算出してもよい。
【0079】
すなわち、電池モジュール1(第3演算部45)は、電池セル10の状態、すなわち、劣化度または充電深度の少なくともいずれかを算出する。
【0080】
また、複数の組電池2が並列接続されている電池モジュールの場合には、それぞれの組電池2の第1のインピーダンスを測定するための、回路切替スイッチを有していることが好ましい。なお、複数の電池を並列接続した電池セットを、直列に接続し所望の出力電圧を得ている組電池の場合には、電池セットを、1つの電池と見なすことで、本発明と同じ構成により、それぞれの電池セットに含まれる電池セルの状態を評価することができる。
【0081】
電池モジュール1は、3個の電池31、32、33が直列接続されている組電池2を具備していた。しかし、組電池が含む電池30の数Nは、2以上であればよい。
【0082】
以上の説明のように、本発明の実施形態の組電池は、それぞれが電池セルを含むN個(N≧2)の電池が、直列接続されている組電池であって、少なくとも(N−1)個の前記電池が、前記電池セルに並列接続されており前記N個の電池のインピーダンス特性が異なるように構成されているラベル素子を含む。
【0083】
別の実施形態の電池モジュールは、それぞれが電池セルを含むN個(N≧2)の電池が、直列接続されている組電池と、前記N個の電池セルの状態を算出するアセスメント評価部と、を具備する電池モジュールであって、少なくとも(N−1)個の前記電池が、前記電池セルに並列接続されており前記N個の電池のインピーダンス特性が異なるように構成されているラベル素子を含み、前記アセスメント評価部が、前記組電池のインピーダンス特性である第1のコールコールプロットを測定する測定部と、前記第1のコールコールプロットを、前記N個の電池の第2のコールコールプロットに分解する第1演算部と、前記第2のコールコールプロットから、前記ラベル素子のインピーダンス特性の影響を除いて、前記電池セルの第3のコールコールプロットを算出する第2演算部と、前記第3のコールコールプロットをもとに、前記電池セルの状態を算出する第3演算部と、を具備する。
【0084】
また、別の実施形態の電池モジュールの評価方法は、それぞれが電池セルを含むN個(N≧2)の電池が直列接続されており、少なくとも(N−1)個の前記電池に、前記N個の電池のインピーダンス特性が異なるように構成されているラベル素子が並列接続されている、組電池の第1のコールコールプロットを取得する測定ステップと、前記第1のコールコールプロットを、前記N個の電池の第2のコールコールプロットに分解する第1の演算ステップと、前記第2のコールコールプロットから、前記ラベル素子のインピーダンス特性の影響を除いて、前記N個の電池セルの第3のコールコールプロットを算出する第2の演算ステップと、前記第3のコールコールプロットをもとに、前記N個の電池セルの状態を算出する状態算出ステップと、を具備する。
【0085】
<別の実施形態>
以下の実施形態の、組電池、電池モジュールおよび電池モジュールの評価方法は、第1実施形態の組電池2、電池モジュール1および電池モジュールの評価方法と類似し、同じ効果を有するため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0086】
<第2実施形態>
第2実施形態の電池モジュール1Aの測定部42が測定した、組電池2Aの第1のコールコールプロット(インピーダンスの周波数特性)を
図10に示す。参考のため、電池モジュール1の組電池2の第1のコールコールプロット(
図6参照)を黒丸で示す。
【0087】
組電池2Aの第1のコールコールプロットは、組電池2の第1のコールコールプロットと類似しているが、ループ部の大きさが少し小さい。
【0088】
第1演算部43が、第1のコールコールプロットを、
図11A、
図11Bおよび
図11Cに示す電池31〜33の第2のコールコールプロットに分解する。
【0089】
図11A、
図11Bに示す電池31、32の第2のコールコールプロットは、組電池2の電池31、32の第2のコールコールプロット(
図7A、
図7B)と同じであった。しかし、
図11Cに示す第3電池33の第2のコールコールプロットは、組電池2の第3電池33の第2のコールコールプロット(
図7C)と、10kHz以上のインダクタンス領域で特に大きく異なる。
【0090】
第2演算部44が、第2のコールコールプロットから電池セル10の第3のコールコールプロットを算出する。
【0091】
図12A、
図12Bに示す電池セル11、12の第3のコールコールプロットは、
図9のコールコールプロット(100%)と同じであった。このため、電池モジュール1Aの電池セル11、12の劣化度(SOH)は100%と算出された。
【0092】
これに対して、
図12Cに示す第3電池セル13の第3のコールコールプロットは、黒丸で示すコールコールプロット(SOH100%)と異なっている。
【0093】
劣化度の算出方法は、
図9に示した複数のコールコールプロットと、第2演算部44が算出した第2のコールコールプロットとの比較により行われる。
【0094】
例えば、SOHが90%の電池セルのRCは5.11mΩであり、SOHが80%の電池セルのRCが、6.25mΩであった。これに対して第3電池セル13の反応抵抗(電荷移動抵抗)RCは、5.79mΩであった。このため、直線近似により、電池モジュール1Aの第3電池セル13の劣化度SOHは、84%と算出された。
【0095】
もちろん、より多くの情報を用いて算出することより、より精度の高い劣化度が得られることは言うまでも無い。
【0096】
<第3実施形態>
第3実施形態の電池モジュール1Bの測定部42が測定した、組電池2Bの第1のコールコールプロット(インピーダンスの周波数特性)を
図13に示す。参考のため、電池モジュール1の組電池2Aの第1のコールコールプロット(
図6参照)を黒丸で示す。
【0097】
組電池2Bの第1のコールコールプロットは、組電池2の第1のコールコールプロットと類似しているが、ループ部の大きさが小さい。また、測定周波数100kHzにおけるZ‘’の絶対値が小さい。
【0098】
第1演算部43が、第1のコールコールプロットを、
図14A、
図14Bおよび
図14Cに示す電池31〜33の第2のコールコールプロットに分解する。
【0099】
図14Aに示す第1電池31の第2のコールコールプロットは、組電池2の第1電池31の第2のコールコールプロット(
図7A)と類似しているように見えるが、高周波、例えば、100kHzのインピーダンスのZ‘’は、かなり異なっている。同様に、電池32,33の第2のコールコールプロットは、組電池2の電池32、33の第2のコールコールプロットと少し異なっている。
【0100】
第2演算部44が、第2のコールコールプロットから複数の電池セル10の第3のコールコールプロットを算出する。
【0101】
図15A、
図15B、
図15Cに示す電池セル11、12、13の第3のコールコールプロットは、いずれも組電池2AのSOH84%の第3電池セル13の第3のコールコールプロット(
図11C)と略同じであった。このため、電池モジュール1Bの電池セル11、12、13の劣化度(SOH)は、いずれも84%と算出された。
【0102】
<第4実施形態>
第4実施形態の電池モジュール1Cの測定部42が測定した、組電池2Cの第1のコールコールプロット(インピーダンスの周波数特性)を
図16に示す。参考のため、電池モジュール1Aの組電池2Aの第1のコールコールプロット(
図10参照)を小丸で示す。
【0103】
組電池2Cの第1のコールコールプロットは、第3電池セル13だけが劣化していた組電池2Aの第1のコールコールプロットと類似しているが、ループの位置および測定周波数100kHzにおける測定値が少し異なる。
【0104】
第1演算部43が、第1のコールコールプロットを、
図17A、
図17Bおよび
図17Cに示す電池31〜33の第2のコールコールプロットに分解する。
【0105】
図17Aに示す第1電池31の第2のコールコールプロットは、組電池2の第1電池31の第2のコールコールプロット(
図7A)と同じである。また、
図17Cに示す第3電池33の第2のコールコールプロットは、組電池2の第3電池33の第2のコールコールプロット(
図7C)と同じである。
【0106】
これに対して、
図17Bに示す第2電池32の第2のコールコールプロットは、組電池2の第2電池32の第2のコールコールプロットとは異なり、組電池2Bの第2電池32の第2のコールコールプロット(
図14B)と同じである。
【0107】
第2演算部44が、第2のコールコールプロットから電池セル10の第3のコールコールプロットを算出する。
【0108】
図18A、
図18Cに示す電池セル11、13の第3のコールコールプロットは、コールコールプロット(SOH100%)と同じであった。このため、第3演算部45は、電池モジュール1Cの電池セル11、13の劣化度(SOH)を、100%と算出した。
【0109】
これに対して、
図18Bに示す電池セル12の第3のコールコールプロットは、小丸で示した第3のコールコールプロット(SOH100%)と異なり、組電池2Aの第3電池セル13の第2のコールコールプロット(SOH84%)と同じであった。すなわち、電池モジュール1Cの第2電池セル12の劣化度(SOH)は84%と算出された。
【0110】
<第5実施形態>
第5実施形態の電池モジュール1Dの測定部42が測定した、組電池2Dの第1のコールコールプロット(インピーダンスの周波数特性)を
図19に示す。参考のため、電池モジュール1の組電池2の第1のコールコールプロット(
図6参照)を小丸で示す。
【0111】
第1演算部43が、第1のコールコールプロットを、
図20A、
図20Bおよび
図20Cに示す電池31〜33の第2のコールコールプロットに分解する。
【0112】
第2演算部44が、第2のコールコールプロットから電池セル10の第3のコールコールプロットを算出する。
【0113】
図20A、
図20Cに示す電池31、33の第2のコールコールプロットは、組電池2Bの電池31、33の第2のコールコールプロットと同じであった。これに対して、
図20Bに示す第2電池32の第2のコールコールプロットは、組電池2の第2電池32の第2のコールコールプロットと同じであった。
【0114】
そして、第2演算部44が算出した
図21A、
図21Cに示す電池セル11、13の第3のコールコールプロットは、組電池2Bの第3電池セル13の第2のコールコールプロット(SOH84%)と同じであった。これに対して、
図21Bに示す電池セル12の第2のコールコールプロットは、コールコールプロット(SOH100%)と同じであった。
【0115】
このため、第3演算部45は、電池モジュール1Dの電池セル11、13の劣化度を84%、電池セル12の劣化度(SOH)を100%と算出した。
【0116】
<第6実施形態>
第6実施形態の電池モジュール1Eの組電池2Eの等価回路モデルを、
図22に示す。
図22に示すように、本実施形態では、電池セル10のインダクタンス成分(CL)が考慮されている。
【0117】
例えば、電池セル10は、通常の等価回路モデルでは無視されているが、10
−9H〜10
−5Hのインダクタンス成分を有する。インダクタンス成分のインダクタンスLに対してラベル素子20の容量成分(C)の値を選択することにより、ラベル素子20が並列接続された電池セル10は、共振周波数FRが1/(2πSQR(LC))の、LC共振回路を構成する。なお、SQR(X)は、Xの平方根を意味する。
【0118】
ラベル素子20の容量成分の値に応じて共振周波数FRは変化する。このため、それぞれの電池セル10に接続するラベル素子20の静電容量を変えることで、複数の電池の共振周波数FRを変えることで、複数の電池30のインピーダンス特性(コールコールプロット)の差が大きくなり、組電池2の第1のコールコールプロットを、複数の電池30の第2のコールコールプロットに分解する第1の演算ステップが容易となる。
【0119】
例えば、電池セル10のインダクタンス成分が10
−7Hの場合、静電容量が100μFのラベル素子22が並列接続された第2の電池32の共振周波数FRは50kHzであり、静電容量が1000μFのラベル素子23が並列接続された第3の電池33の共振周波数FRは16kHzとなる。すなわち、電池30、31、32は、ラベル素子22、23が接続された電池32、33が、10KHz以上の高周波領域(インダクタンス領域C)において、共振モードとなるため、インピーダンス特性(コールコールプロット)の差が大きくなる。
【0120】
電池セル10のインダクタンス成分は、大きくはないため、共振周波数FRを10KHz以上100KHz以下とするためには、ラベル素子20の静電容量CLは、50μF以上が好ましく、200μF以上が特に好ましい。なお、静電容量CLの上限は、安価に実現可能な、例えば1000μFである。
【0121】
すなわち、複数の電池30のインピーダンス特性が異なるように構成されているラベル素子20は、それぞれの電池30が、それぞれが異なる所定の周波数帯において共振モードとなるように静電容量が設定されていることが好ましい。共振周波数差は、例えば、2kHz以上であることが好ましく、特に好ましくは10kHz以上である。しかし、共振周波数差が大きいほど、第1の演算ステップが容易となるが、測定する必要のある周波数帯が広くなる。このため、共振周波数差は、例えば、100kHz以下であることが好ましい。
【0122】
なお、ラベル素子20が、容量成分に加えて、抵抗成分を有することにより、共振周波数を中心とする広い周波数帯において、インピーダンスを変化することができる。逆にいえば、抵抗成分により、共振の影響が小さくなる。このため、同じ共振周波数であっても、共振の影響の大小により、複数の電池30のインピーダンス特性が異なるように構成することもできる。
【0123】
<付記事項>
すでに説明したように、電池セルのコールコールプロットを解析するための等価回路モデルは、
図4に示した単純モデルに限られるものではない。
【0124】
例えば、
図22に示す等価回路モデルは、正極と負極とを考慮しており、測定回路(インダクタンスL0と抵抗R0)と、溶液抵抗Rsと、(容量CPE1と抵抗R1と拡散抵抗Zw1)と、回路33(容量CPE2と抵抗R2/xと抵抗R2(1−x)と拡散抵抗ZW2、ZW3)と、からなる。
【0125】
また、
図23に示す等価回路モデルには、さらに、固体電解質界面被膜(Solid Electrolyte Interphase)回路(容量CPE3と抵抗R3)が付加されている。
【0126】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変、例えば、実施形態の構成要素の組み合わせ等が可能である。