(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記のシンターハードニングで高硬度焼結品を製造する場合、得られた焼結品が所定の焼入れ組織を有するかどうかは、シンターハードニングの後工程において、手作業の渦流検査によって行なっていた。
【0006】
すなわち、シンターハードニングは、ワークを搬送する複数の搬送ローラと、搬送ローラの搬送経路上でワークを焼結温度に加熱する焼結室と、焼結室の下流側に位置する急冷室とを有する連続焼結炉を用いて行なわれる。そして、急冷室でのワークの冷却速度が十分に大きい場合には、所定の焼入れ組織をもつ焼結品が得られるが、急冷室に何らかの異常がある場合には、急冷室でのワークの冷却速度が不足し、所定の焼入れ組織が得られないおそれがある。
【0007】
そこで、従来、得られる焼結品が所定の焼入れ組織を有するか否かを検査するため、連続焼結炉から排出された個々の焼結品について、渦流検査を行ない、高硬度焼結品の信頼性を確保していた。渦流検査は、焼結品を交流磁場内に配置することで、焼結品の内部に電磁誘導による渦電流を発生させ、その渦電流により誘起された誘導磁場に基づいて焼入れ組織を検査するものである。そして、この渦流検査は、連続焼結炉から排出された個々の焼結品を、作業者が手作業で渦流検査装置にセットすることで行なっていた。
【0008】
しかしながら、連続焼結炉から排出された個々の焼結品を、手作業で渦流検査するのは煩雑であった。
【0009】
本発明は、所定の焼入れ組織が得られたか否かを効率よく検査することが可能なシンターハードニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るシンターハードニング方法は、
粉末材料を圧縮成形して形成されたワークを複数の搬送ローラで搬送し、
前記搬送ローラの搬送経路上に設けられた焼結室で前記ワークを焼結温度に加熱し、
前記搬送ローラの搬送経路上で前記焼結室の下流側に位置する急冷室で、前記ワークに冷却ガスを吹き付けて焼入れし、
前記急冷室で前記ワークに冷却ガスを吹き付けているときに、前記急冷室内のワークの冷却速度を温度センサで検知し、その検知した冷却速度が予め設定された範囲内か否かを検査する、
シンターハードニング方法である。
【発明の効果】
【0011】
上記によれば、所定の焼入れ組織が得られたか否かを効率よく検査することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
(1)本発明の一態様に係るシンターハードニング方法は、
粉末材料を圧縮成形して形成されたワークを複数の搬送ローラで搬送し、
前記搬送ローラの搬送経路上に設けられた焼結室で前記ワークを焼結温度に加熱し、
前記搬送ローラの搬送経路上で前記焼結室の下流側に位置する急冷室で、前記ワークに冷却ガスを吹き付けて焼入れし、
前記急冷室で前記ワークに冷却ガスを吹き付けているときに、前記急冷室内のワークの冷却速度を温度センサで検知して、その検知した冷却速度が予め設定された範囲内か否かを検査する、
シンターハードニング方法である。
このようにすると、急冷室でワークを焼入れするときの冷却速度に基づいて、ワークに所定の焼入れ組織が得られたかを間接的に検査可能である。すなわち、シンターハードニングの工程内において、所定の焼入れ組織が得られたか否かを検査することが可能であり、シンターハードニングで得られた個々の焼結品を、シンターハードニングの後工程において手作業で検査する必要がない。そのため、所定の焼入れ組織が得られたか否かを効率よく検査することが可能である。
(2)上記のシンターハードニング方法は、以下の構成を加えることができる。
前記温度センサは、前記ワークから放射される赤外線の強度を測定することで前記ワークの温度を検出する放射温度計であり、
前記温度センサで前記急冷室内のワークの冷却速度を検知している間、そのワークを支持する前記搬送ローラは、前記ワークを搬送方向の前後に往復運動させるように正転と逆転を繰り返す。
このようにすると、温度センサで急冷室内のワークの冷却速度を検知している間、ワークが前後に往復運動するので、ワークが放射温度計による温度測定エリアに確実に入り、安定した検査が可能となる。
(3)また、本発明の一態様に係るシンターハードニング用の連続焼結炉として、以下の構成のものを提供する。
粉末材料を圧縮成形して形成されたワークを搬送する複数の搬送ローラと、
前記搬送ローラの搬送経路上で前記ワークを焼結温度に加熱する焼結室と、
前記搬送ローラの搬送経路上で前記焼結室の下流側に位置し、前記ワークに冷却ガスを吹き付けて焼入れする急冷室と、
前記急冷室内のワークの冷却速度を温度センサで検知して、その検知した冷却速度が予め設定された範囲内か否かを検査する冷却温度検査装置と、
を有するシンターハードニング用の連続焼結炉。
【0014】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態にかかるシンターハードニング方法およびこのシンターハードニング方法に好適な連続焼結炉を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
図1、
図2に、本発明の実施形態にかかるシンターハードニング方法で使用する連続焼結炉を示す。この連続焼結炉は、鉄系の粉末材料を圧縮成形して形成されたワークWを、1100℃以上の焼結温度に加熱して焼結する連続焼結炉である。この連続焼結炉は、上流側から下流側に向かって順に、脱ワックス室2、予熱室3、焼結室4、徐冷室5、急冷室6、冷却室7を有する。
【0016】
これら各室2〜7には、複数のワークWを載せたカーボントレイ1を上流側から下流側に移動させる搬送ローラ8〜13が設けられている。搬送ローラ8〜13は、各室2〜7にワークWの搬送方向に間隔をおいて複数設けられている。すなわち、搬送ローラ8〜13によるワークWの搬送経路上に各室2〜7が順に設けられている。
【0017】
脱ワックス室2の入口、脱ワックス室2と予熱室3の間、予熱室3と焼結室4の間、焼結室4と徐冷室5の間、徐冷室5と急冷室6の間、急冷室6と冷却室7の間、冷却室7の出口には、それぞれシャッター14〜20が設けられている。これらのシャッター14〜20は個々に開閉駆動される。
【0018】
脱ワックス室2、予熱室3、焼結室4、徐冷室5には、それぞれの室内雰囲気を加熱するヒータ21〜24が設けられている。焼結室4は、不活性ガス(例えば窒素ガス)の雰囲気で満たされており、その不活性ガスの雰囲気中でワークWを加熱する。
【0019】
急冷室6には送風ファン25が接続され、急冷室6と送風ファン25の間で冷却ガスが循環するようになっている。冷却ガスは不活性ガス(例えば窒素ガス)である。急冷室6と送風ファン25の間の冷却ガスの循環経路の途中には、冷却ガスを冷却するチラー(図示せず)が接続されている。
【0020】
図2に示すように、急冷室6には、急冷室6内のワークWの温度を検知する温度センサ26が設けられている。温度センサ26は、ワークWから放射される赤外線の強度を測定することでワークWの温度を検出する放射温度計である。温度センサ26は、急冷室6でワークWに冷却ガスを吹き付けているときに、急冷室6内のワークWの冷却速度が予め設定された範囲内か否かを検査する冷却温度検査装置27に接続されている。
【0021】
温度センサ26は、急冷室6内を搬送されるワークWの真上を避けるように、急冷室6の側壁28に設けられている。このように、ワークWの真上を避けて温度センサ26を配置することで、ワークWが発する熱による温度センサ26の損傷を防止している。また、急冷室6の側壁28には、急冷室6の搬送ローラ12を駆動する電動モータ29が取り付けられている。
【0022】
図1に示すように、冷却室7には、室内雰囲気を冷却するクーラー30と、室内雰囲気を循環させる循環ファン31とが設けられている。
【0023】
次に、この連続焼結炉を用いて、ワークWをシンターハードニングする方法の一例を説明する。
【0024】
まず、
図1に示すように、カーボントレイ1の上に複数のワークWを載せ、その状態でワークWを搬送して脱ワックス室2に入れる。ワークWが脱ワックス室2に入ると、ワークWは500〜750℃程度の温度になるまで加熱される。このとき、ワークWに存在するワックス成分が燃焼し、ワックス成分が除去される。
【0025】
その後、ワークWが、搬送ローラ8,9によって脱ワックス室2から予熱室3に搬送される。予熱室3では、ワークWが焼結温度よりも低い800〜1000℃程度の温度に加熱される。
【0026】
その後、ワークWは、搬送ローラ9,10によって予熱室3から焼結室4に搬送される。焼結室4では、ワークWが1100〜1300℃程度の焼結温度になるまで加熱され、所定時間、焼結温度に保持される。これにより、ワークWを構成する粉末が焼結して一体化する。
【0027】
その後、ワークWは、搬送ローラ10,11によって焼結室4から徐冷室5に搬送される。徐冷室5は、室内の雰囲気温度が900℃よりも低く、かつ、オーステナイト変態点(いわゆるA
3変態点)よりも高い温度(例えば、840〜870℃の温度範囲)に保たれるように温度制御されている。ワークWは、この徐冷室5内に10分〜20分程度滞在するように搬送ローラ11で搬送される。これにより、ワークWは、900℃よりも低く、かつ、オーステナイト変態点よりも高い温度に冷却して保持される。
【0028】
その後、ワークWは、搬送ローラ11,12によって徐冷室5から急冷室6に搬送される。ワークWが急冷室6に入ると、急冷室6の入口のシャッター18と出口のシャッター19をいずれも閉じ、その状態で送風ファン25を作動させてワークWに冷却ガスを吹き付け、ワークWをマルテンサイト変態点(いわゆるMs点)よりも低い温度(例えば、250〜350℃の温度範囲)に急冷する。急冷時のワークWの冷却速度は、2〜5℃/秒(好ましくは3〜5℃/秒)である。この急冷によりワークWは焼入れされ、ワークWの組織がマルテンサイトに変態する。
【0029】
ここで、急冷室6でのワークWの冷却速度が十分に大きい場合には、所定の焼入れ組織をもつ焼結品が得られるが、急冷室6に何らかの異常(例えば、送風ファン25の異常や、急冷室6と送風ファン25の間で循環する冷却ガスを冷却するチラーの異常等)がある場合には、急冷室6でのワークWの冷却速度が不足し、所定の焼入れ組織が得られないおそれがある。そこで、急冷室6の急冷によって硬化されたワークWが所定の焼入れ組織を有するか否かを検査するため、
図2に示す冷却温度検査装置27は、急冷室6でワークWに冷却ガスが吹き付けられているときに、急冷室6内のワークWの冷却速度を温度センサ26で検知し、その検知した冷却速度が予め設定された範囲内か否かを検査することで、ワークWに所定の焼入れ組織が得られたかを間接的に検査する。そして、ワークWの冷却速度が予め設定された範囲から外れたときは、図示しない報知装置で作業者に異常が報知される。
【0030】
ところで、ワークWの冷却温度を温度センサ26で検知するとき、搬送ローラ12を停止させた状態でワークWの温度を測定することも可能であるが、搬送ローラ12を停止させた状態でワークWの温度を測定すると、次のような問題が生じる場合がある。
【0031】
すなわち、搬送ローラ12が停止したときに、ワークWが温度センサ26による温度測定エリアに確実に入れば問題ないが、搬送ローラ12が停止したときに、ワークWが温度センサ26による温度測定エリアからずれた位置に停止し、温度センサ26が、搬送方向の前後に隣り合うワークWの間の部分(すなわち、ワークWを支持するカーボントレイ1の上面)の温度を測定してしまう可能性がある。この場合、ワークWの冷却温度ではなく、ワークWを支持するカーボントレイ1の冷却温度を検知することになり、検査不良の原因となる。
【0032】
そこで、この実施形態においては、急冷室6内のワークWの冷却速度を温度センサ26で検知している間、搬送ローラ12が正転と逆転を繰り返すように電動モータ29を駆動し、ワークWを搬送方向の前後に往復運動させるようにしている。これにより、ワークWが温度センサ26による温度測定エリアに確実に入り、安定した検査が可能となる。ここで、ワークWの往復運動の前後の移動距離は、前後方向に隣り合うワークWの隙間よりも大きく設定されている。また、ワークWが1往復する周期は15秒〜45秒の範囲に設定されている。
【0033】
図3に、ワークWを往復運動させた状態でワークWの冷却速度を検知したときの温度センサ26の出力変化の一例を示す。縦軸は温度センサ26により測定された温度に対応し、横軸は時間に対応している。
図3に示す温度センサ26の出力値が100℃程度の幅をもって上下しているのは、ワークWの往復運動に伴って、ワークWが温度センサ26の温度測定エリアに出入りしていることを示している。また、温度センサ26の出力値が全体として低下しているのは、急冷室6での冷却ガスの吹き付けによりワークWの温度が低下していることを示している。この温度センサ26の出力値に基づいて、冷却温度検査装置27は、急冷室6でワークWに冷却ガスを吹き付けているときのワークWの冷却速度が予め設定された範囲内か否かを検査する。
【0034】
急冷室6内でのワークWの急冷が終了した後、ワークWは、搬送ローラ12,13によって急冷室6から冷却室7に搬送される。冷却室7では、ワークWが150℃以下の低温(例えば100℃程度)に冷却される。冷却室7でのワークWの冷却が完了すると、ワークWは、冷却室7の下流側に隣接する図示しない置換室に排出される。
【0035】
上述のシンターハードニング方法で高硬度焼結品を製造すると、急冷室6でワークWを焼入れするときの冷却速度に基づいて、ワークWに所定の焼入れ組織が得られたかを間接的に検査することができる。すなわち、シンターハードニングの工程内において、所定の焼入れ組織が得られたか否かを検査することが可能であり、シンターハードニングで得られた個々の焼結品を、シンターハードニングの後工程において手作業で検査する必要がない。そのため、所定の焼入れ組織が得られたか否かを効率よく検査することが可能である。
【0036】
また、上述のシンターハードニング方法で高硬度焼結品を製造すると、温度センサ26で急冷室6内のワークWの冷却速度を検知している間、ワークWが前後に往復運動するので、ワークWが温度センサ26による温度測定エリアに確実に入り、安定した検査が可能である。