(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561422
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】原子力プラント制御システムの解体方法、原子力プラント制御システム
(51)【国際特許分類】
G21D 3/00 20060101AFI20190808BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
G21D3/00 H
G21C17/00 700
G21C17/00 030
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-245562(P2017-245562)
(22)【出願日】2017年12月21日
(62)【分割の表示】特願2014-229951(P2014-229951)の分割
【原出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2018-66755(P2018-66755A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】福井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広二
(72)【発明者】
【氏名】千徳 好司
【審査官】
大門 清
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−147095(JP,A)
【文献】
特開2008−196894(JP,A)
【文献】
特開2014−218848(JP,A)
【文献】
特開2006−234696(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0235768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G21C 17/00
G21D 3/00
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの常用稼働制御の制御処理を行う常用系制御装置と、
前記原子力プラントの異常時の安全稼働制御の制御処理を行う安全系制御装置と、
前記常用系制御装置と前記安全系制御装置との入力インタフェース処理および前記制御処理の記録処理を少なくとも行う中央制御装置と、
を備えた原子力プラント制御システムの解体方法であって、
前記常用系制御装置と前記安全系制御装置とに入力されるセンサ信号のうち前記原子力プラントの廃炉措置に必要なセンサ信号を廃炉措置専用制御装置に入力する工程と、
前記廃炉措置専用制御装置で原子力プラントを制御する工程と、
不要設備を停止または撤去する不要設備対応工程と、
を有する原子力プラント制御システムの解体方法。
【請求項2】
原子力プラントの常用稼働制御の制御処理を行う常用系制御装置と、
前記原子力プラントの異常時の安全稼働制御の制御処理を行う安全系制御装置と、
前記常用系制御装置と前記安全系制御装置との入力インタフェース処理および前記制御処理の記録処理を少なくとも行う中央制御装置と、
を備えた原子力プラント制御システムであって、
前記常用系制御装置と前記安全系制御装置とに入力されるセンサ信号のうち前記原子力プラントの廃炉措置に必要なセンサ信号を入力する廃炉措置専用制御装置
を備える原子力プラント制御システム。
【請求項3】
前記廃炉措置専用制御装置は、監視操作装置と、記録装置とのうち少なくともいずれか一方を備える請求項2に記載の原子力プラント制御システム。
【請求項4】
前記廃炉措置専用制御装置が、前記中央制御装置の配置されている中央制御室、または前記常用系制御装置と前記安全系制御装置とが配置されている制御盤室に配置された請求項2または請求項3に記載の原子力プラント制御システム。
【請求項5】
前記廃炉措置専用制御装置は、
複数の前記センサ信号のうちの一つまたは複数のセンサ信号を入力してデジタル信号へ変換する変換回路搭載カードの複数を抜き差し可能に搭載するカード搭載機構と、
前記カード搭載機構に搭載された前記変換回路搭載カードから出力されたデジタル信号を用いて、前記常用系制御装置の制御処理と、前記安全系制御装置の制御処理と、前記中央制御装置との処理を行う制御処理部と、
を備える請求項2から請求項4の何れか一項に記載の原子力プラント制御システム。
【請求項6】
前記制御処理部が、前記変換回路搭載カードの1つまたは複数の纏まりに対応して設けられている前記廃炉措置専用制御装置を有する請求項5に記載の原子力プラント制御システム。
【請求項7】
前記廃炉措置専用制御装置は、
前記変換回路搭載カードの1つまたは複数の纏まりに対応して設けられている前記制御処理部の複数に対する電源をそれぞれ別々に遮断する電源遮断回路を備えることを特徴とする請求項6に記載の原子力プラント制御システム。
【請求項8】
前記廃炉措置専用制御装置は、
前記廃炉措置の作業における中央制御室等の保守管理を容易にするための無線表示端末と通信接続する
請求項2から請求項7の何れか一項に記載の原子力プラント制御システム。
【請求項9】
前記原子力プラントの廃炉措置に必要なセンサ信号を、中継装置を介して入力する
請求項2から請求項8の何れか一項に記載の原子力プラント制御システム。
【請求項10】
前記廃炉措置専用制御装置は、他のコンピュータ装置に通信接続される
請求項2から請求項9の何れか一項に記載の原子力プラント制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラント制御システムの解体方法、原子力プラント制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントは老朽化等の問題が発生した場合には解体することが必要となる。原子力プラントのコンピュータシステム構成に関連する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−233705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような原子力プラント全体の解体においては、核燃料の崩壊熱(発熱)の冷却を維持管理する等しながら解体作業を行う必要がある。そしてその維持管理の為の電力供給や所定の各センサのセンシング信号取得が解体作業を行っている最中にも必要となる。大規模な原子力プラントの解体工程において、できるだけ電力需要を軽減し、必要なセンシング信号の取得を維持しながら効率的に解体作業を行うことが求められている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる原子力プラント制御システムの解体方法、原子力プラント制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、原子力プラントの常用稼働制御の制御処理を行う常用系制御装置と、前記原子力プラントの異常時の安全稼働制御の制御処理を行う安全系制御装置と、前記常用系制御装置と前記安全系制御装置との入力インタフェース処理および前記制御処理の記録処理を少なくとも行う中央制御装置と、を備えた原子力プラント制御システムの解体方法であって、前記常用系制御装置と前記安全系制御装置とに入力されるセンサ信号のうち前記原子力プラントの廃炉措置に必要なセンサ信号を
廃炉措置専用制御装置に入力する工程と、前記廃炉措置専用制御装置で原子力プラントを制御する工程と、不要設備を停止または撤去する不要設備対応工程と、を有する原子力プラント制御システムの解体方法である。
【0010】
また本発明は、原子力プラントの常用稼働制御の制御処理を行う常用系制御装置と、前記原子力プラントの異常時の安全稼働制御の制御処理を行う安全系制御装置と、前記常用系制御装置と前記安全系制御装置との入力インタフェース処理および前記制御処理の記録処理を少なくとも行う中央制御装置と、を備えた原子力プラント制御システムであって、前記常用系制御装置と前記安全系制御装置とに入力されるセンサ信号のうち前記原子力プラントの廃炉措置に必要なセンサ信号を入力
する廃炉措置専用制御装置を備える原子力プラント制御システムである。
【0011】
また本発明は、上述の原子力プラント制御システムにおいて、前記廃炉措置専用制御装置は、監視操作装置と、記録装置
とのうち少なくともいずれか一方を備える。
【0012】
また本発明は、上述の原子力プラント制御システムにおいて、前記廃炉措置専用制御装置が、前記中央制御装置の配置されている中央制御室、または前記常用系制御装置と前記安全系制御装置とが配置されている制御盤室に配置される。
【0013】
また本発明は、上述の原子力プラント制御システムにおいて、前記廃炉措置専用制御装置は、複数の前記センサ信号のうちの一つまたは複数のセンサ信号を入力してデジタル信号へ変換する変換回路搭載カードの複数を抜き差し可能に搭載するカード搭載機構と、前記カード搭載機構に搭載された前記変換回路搭載カードから出力されたデジタル信号を用いて、前記常用系制御装置の制御処理と、前記安全系制御装置の制御処理と、前記中央制御装置との処理を行う制御処理部と、を備える。
【0014】
また本発明は、上述の原子力プラント制御システムにおいて、前記制御処理部が、前記変換回路搭載カードの1つまたは複数の纏まりに対応して設けられている前記廃炉措置専用制御装置を有する。
【0015】
また本発明は、上述の原子力プラント制御システムにおいて、前記廃炉措置専用制御装置は、前記変換回路搭載カードの1つまたは複数の纏まりに対応して設けられている前記制御処理部の複数に対する電源をそれぞれ別々に遮断する電源遮断回路を備える。
また本発明は、上述の原子力プラント制御システムにおいて、前記廃炉措置専用制御装置は、前記廃炉措置の作業における中央制御室等の保守管理を容易にするための無線表示端末と通信接続する。
また本発明は、上述の原子力プラント制御システムにおいて、前記原子力プラントの廃炉措置に必要なセンサ信号を、中継装置を介して入力する。
また本発明は、上述の原子力プラント制御システムにおいて、前記廃炉措置専用制御装置は、
他のコンピュータ装置に通信接続される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力需要、各種制御設備の設置スペース、当該制御設備に付随する空調設備を削減し、必要なセンシング信号の取得を維持しながら効率的に解体作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による原子力プラント制御システムを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による廃炉措置専用制御装置へのケーブルの接続工程の概要を示す第1の図である。
【
図3】本発明の一実施形態による廃炉措置専用制御装置へのケーブルの接続工程の概要を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態による原子力プラント制御システム、原子力プラント制御システムの解体方法を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第一の実施形態による原子力プラント制御システムを示す図である。
この図において符号100はプラント建屋を示している。プラント建屋100には中央制御室10が配置されている。この中央制御室10には中央制御装置(中央制御盤)11が配置されている。またプラント建屋100には常用系制御装置(常用系制御盤)12、安全系制御装置(安全系制御盤)13が中央制御室10とは異なる空間に配置されている。
【0019】
中央制御装置11は、常用系制御装置12と安全系制御装置13との入力インタフェース処理、および中央制御装置11や常用系制御装置12等における制御処理結果の記録処理を少なくとも行うコンピュータ装置である。
常用系制御装置12は、原子力プラントの常用稼働制御の制御処理を行うコンピュータ装置である。
安全系制御装置13は、原子力プラントの異常時の安全稼働制御の制御処理を行うコンピュータ装置である。
そして、中央制御装置11は、常用系制御装置12および安全系制御装置13それぞれと通信ネットワークを介して接続されている。
【0020】
常用系制御装置12は、常用系の計器類、補機類、弁などの制御対象とケーブル等により接続されている。常用系制御装置12はケーブル等を介して送信した信号により常用系の計器類から信号を取得し、また補機類、弁などの制御対象を制御する。
図1では常用系の計器類、制御対象を符号14で示している。
安全系制御装置13は、安全系の計器類、補機類、弁などの制御対象とケーブル等により接続されている。安全系制御装置13はケーブル等を介して送信した信号により安全系の計器類から信号を取得し、また補機類、弁などの制御対象を制御する。
図1では安全系の計器類、制御対象を符号15で示している。
【0021】
本実施形態における原子力プラント制御システムは、中央制御装置11、常用系制御装置12、安全系制御装置13に加え、廃炉措置専用制御装置16、廃炉措置監視操作装置17を新たに備える。本実施形態においては廃炉措置専用制御装置16、廃炉措置監視操作装置17とを異なる装置として図示、説明しているが、同じ装置としてもよい。廃炉措置専用制御装置16は、常用系制御装置12と常用系の計器類、制御対象14とを繋ぐケーブルの中継装置18と、安全系制御装置13と安全系の計器類、制御対象15とを繋ぐケーブルの中継装置19とのそれぞれに、別のケーブルを介して接続されている。当該廃炉措置専用制御装置16と中継装置18、19をそれぞれ繋ぐケーブルは、常用系制御装置12と、安全系制御装置13のそれぞれに入力されるセンサ信号のうち原子力プラントの廃炉措置に必要なセンサ信号を伝送するケーブル(常用系の計器類、制御対象14や安全系の計器類、制御対象15に接続するケーブル)と中継装置18、19を介してそれぞれ接続されている。
【0022】
廃炉措置専用制御装置16は、常用系制御装置12と、安全系制御装置13とに入力されるセンサ信号のうち、原子力プラントの廃炉措置に必要なセンサ信号を入力して、常用系制御装置12の制御処理と同等の処理と、安全系制御装置13の制御処理と同等の処理と、中央制御装置11の処理と同等の処理と、を行う。
【0023】
廃炉措置専用制御装置16は廃炉措置監視操作装置17とケーブルを介して接続されている。廃炉措置監視操作装置17は、モニタ(表示装置)と入力装置とを備えている。廃炉措置においてオペレータは廃炉措置監視操作装置17のモニタに表示された情報に基づいて、入力装置を制御して廃炉措置における常用系の計器類、制御対象14や、安全系の計器類、制御対象15からの情報の監視とそれら制御対象の制御を行う。オペレータは、廃炉措置監視操作装置17に備わるモニタにおいて中央制御装置11、常用系制御装置12、安全系制御装置13で行うことができる操作と同等の情報、または廃炉措置に特化した情報を監視することができる。またオペレータは、廃炉措置監視操作装置17に備わる入力装置を用いて、中央制御装置11、常用系制御装置12、安全系制御装置13で行うことができる制御の操作と同等の制御の操作、または廃炉措置に特化した制御の操作を行うことができる。また廃炉措置専用制御装置16は中央制御装置11と同様の記録処理(記録装置の機能)を備える。
【0024】
廃炉措置専用制御装置16は無線通信を介して無線表示端末110と通信接続されていてもよい。無線表示端末110は、オペレータが携帯することができる小型のコンピュータ装置である。廃炉措置専用制御装置16は、入力したセンサ信号を無線表示端末110へ送信するか、またはそれらセンサ信号に基づいて演算した情報を無線表示端末110へ送信する。無線表示端末110は、受信した信号や情報を用いて演算処理等を行い、情報を表示する。また無線表示端末110には廃炉措置監視操作装置17に備わる入力装置の機能と同等の機能が画面上で操作できる機能を有していてもよい。これによりオペレータが無線表示端末110を携帯して廃炉措置専用制御装置16、廃炉措置監視操作装置17から離れて、廃炉措置における監視や操作を行うことができる。
【0025】
なお廃炉措置専用制御装置16は、原子力プラント外部のデータセンタや、国、県などの保有する各コンピュータ装置に通信接続されてよい。
廃炉措置専用制御装置16および廃炉措置監視操作装置17は、中央制御装置11が配置されている中央制御室10と同じ空間に廃炉措置の過程で新たに配置されてもよいし、中央制御室10の外部に当該廃炉措置の過程で新たに配置(プラント建屋100内の他の空間など)されていてもよい。
【0026】
次に上述した原子力プラント制御システムにおける廃炉措置専用制御装置配置工程と、不要設備対応工程について説明する。
原子力プラント制御システムの解体においては、上述したように廃炉措置専用制御装置16と廃炉措置監視操作装置17とを原子力プラント制御システムに新たに配置する廃炉措置専用制御装置の配置工程をまず実施する(ステップS1)。上述したように配置する場所は、中央制御室10内であっても、中央制御室10外であってもよい。廃炉措置専用制御装置の配置工程によれば、常用系制御装置12、安全系制御装置13、中央制御装置11の各機能を集約化してそれらの機能を保持するためのスペースをコンパクト化することができる。
廃炉措置専用制御装置16と廃炉措置監視操作装置17とを中央制御室10に配置した場合には、常用系制御装置12と安全系制御装置13とが配置されている空間(中央制御室10とは異なる空間)に設置された不要設備を停止または撤去する不要設備対応工程を、中央制御室10が配置された空間に設置された不要設備を停止または撤去する不要設備対応工程よりも優先して行う(ステップS2a)。原子力プラント制御システムの解体においても必要となるセンサ信号は廃炉措置専用制御装置16で受信できているため、優先して常用系制御装置12と安全系制御装置13とが配置されている空間に設置された不要設備を停止または撤去することができる。
【0027】
また常用系制御装置12と安全系制御装置13とが配置されている空間には、常用系制御装置12と、安全系制御装置13と、それら制御装置に関連する装置の配置された空間を浄化または温度調整する空調設備1aが配置されている。常用系制御装置12と安全系制御装置13とが配置されている空間に設置された不要設備を停止または撤去することにより、常用系制御装置12と、安全系制御装置13と、それら制御装置に関連する装置の配置された空間を浄化または温度調整する空調設備1aも共に停止または撤去することができる。この空調設備1aは、常用系制御装置12と、安全系制御装置13と、それら制御装置に関連する装置から発せられる大量の熱や気体を除去する目的で配置されているため、大型で電気消費量の多い空調設備である。上記工程により、原子力プラント、原子力プラント制御システムの解体においても必要なセンサの信号の受信により必要な監視や制御を行うことができると共に、常用系制御装置12と、安全系制御装置13と、それら制御装置に関連する装置の配置された空間に設置された不要設備を停止または撤去することに伴って、電気消費量を大幅に削減することができる。
【0028】
廃炉措置専用制御装置16と廃炉措置監視操作装置17とを、中央制御装置11が配置されている中央制御室10や、常用系制御装置12や、安全系制御装置13の配置されている空間の外部に配置した場合には、中央制御室10の空間と、常用系制御装置12と安全系制御装置13とが配置されている空間に設置された不要設備を停止または撤去する不要設備対応工程を行う(ステップS2b)。原子力プラント、原子力プラント制御システムの解体においても必要なセンサ信号は廃炉措置専用制御装置16で受信できているため、中央制御室10や、常用系制御装置12や、安全系制御装置13の配置されている空間に設置された不要設備を停止または撤去することができる。
【0029】
また中央制御室10には、常用系制御装置12と安全系制御装置13とが配置されている空間と同様に、大型の空調設備1bが配置されている。中央制御室10や、常用系制御装置12と安全系制御装置13が配置されている空間に設置された不要設備を停止または撤去したとしても、廃炉措置専用制御装置16や廃炉措置監視操作装置17により監視、制御しながら、中央制御装置11や、常用系制御装置12、安全系制御装置13、それら制御装置等の為に配置された空調設備1aと1b、またはそれらに付随する設備のうち不要設備を停止または撤去することができる。
このような不要設備対応工程により、原子力プラント、原子力プラント制御システムの解体においても必要なセンサ信号の受信により必要な監視や制御を行うことができると共に、中央制御室10の空間や、常用系制御装置12と安全系制御装置13とそれら制御装置に関連する装置の配置された空間に設置された不要設備を停止または撤去に伴って、廃炉措置の途中において不要となった電気消費量を大幅に削減することができる。
なお、廃炉措置専用制御装置16や廃炉措置監視操作装置17を、常用系制御装置12と安全系制御装置13とが配置されている制御盤室に配置されるようにして、その制御盤室以外の空間に設置された不要設備を先に停止または撤去してもよい。
【0030】
(第2の実施形態)
図2は廃炉措置専用制御装置へのケーブルの接続工程の概要を示す第1の図である。
廃炉措置専用制御装置16は
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)161、ROM(Read Only Memory)162、RAM(Random Access Memory)163、HDD(Hard Disk Drive)164、変換回路搭載カード165,166,167,168を備えて構成されている。
【0031】
変換回路搭載カード165,166,167,168はそれぞれ、アナログ信号をデジタル信号に変換する、またはデジタル信号をアナログ信号に変換する、変換回路を搭載したカード状の回路基板を含むものである。廃炉措置専用制御装置16は、変換回路搭載カード165,166,167,168の1つまたは複数を抜き差し可能に搭載するカード搭載機構を備えている。当該機構は変換回路搭載カード165,166,167,168が廃炉措置専用制御装置16から抜き差し可能であればどのような構造であってもよい。
つまり、変換回路搭載カード165,166,167,168を当該機構に挿入することによって、変換回路搭載カード165,166,167,168とCPU161とが電気的に接続される機構であればどのような構成であってもよい。
CPU161(制御処理部)は、カード搭載機構に搭載された変換回路搭載カード165,166,167,168から出力されたデジタル信号を用いて、常用系制御装置12の制御処理と、安全系制御装置13の制御処理と、中央制御装置11の処理と、を行う。
【0032】
図2において、符号121(131)は、常用系制御装置12(安全系制御装置13)に備えられた配線盤を示している。当該配線盤121(131)はセンサ信号のケーブルを接続するInput側端子2と、当該Input側端子2に対応するOutput側端子3とを有する。配線盤121(131)のInput側端子2には、常用系制御装置12(安全系制御装置13)に入力するセンサ信号のケーブルが接続されている。廃炉処理担当者は、そのセンサ信号のケーブルが接続されているInput側端子2に対応するOutput側端子3と、廃炉措置専用制御装置16に挿入された変換回路搭載カード165,166,167,168のうち、そのセンサ信号を入力すべき変換回路搭載カードのコネクタとをケーブルで接続する。常用系制御装置12(安全系制御装置13)と廃炉措置専用制御装置16との距離は長いため、当該ケーブルは中継装置等を介して中継する。
【0033】
また
図2において、符号181(191)は、中継装置18(19)に備えられた配線盤を示している。当該中継装置18(19)はセンサ信号のケーブルを接続するInput側端子4と、当該Input側端子に対応するOutput側端子5とを有する。中継装置18(19)のInput側端子4には、常用系(安全系)の計器類、制御対象14(15)に接続されたケーブルの他端が接続されている。廃炉処理担当者は、そのセンサ信号のケーブルが接続されているInput側端子4に対応するOutput側端子5と、廃炉措置専用制御装置16に挿入された変換回路搭載カード165,166,167,168のうち、そのセンサ信号を入力すべき変換回路搭載カードのコネクタとをケーブルで接続するようにしてもよい。この場合も中継装置18(19)と廃炉措置専用制御装置16との距離は長いため、当該ケーブルは中継装置を介して中継する。
【0034】
上記の通り廃炉措置専用制御装置16に挿入された変換回路搭載カード165,166,167,168は、廃炉措置専用制御装置16から単独で抜去する電源遮断工程を行うことができる。当該構成にすることで、例えば廃炉措置の過程でセンシングや制御が不要となった計器類や制御対象に接続されているケーブルに対応する変換回路搭載カードへの電源供給を停止でき、またそれらセンシングや制御に伴うCPU161の処理のための電力量を削減することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
図3は廃炉措置専用制御装置へのケーブルの接続工程の概要を示す第2の図である。
第3の実施形態と第2の実施形態とは、第3の実施形態における廃炉措置専用制御装置16が第2の実施形態で説明した廃炉措置専用制御装置16と構成が異なる点で相違している。第3の実施形態による廃炉措置専用制御装置16は、変換回路搭載カードの1つまたは複数の纏まりに対応して1つのCPUが設けられている。
図3においては変換回路搭載カード165,166,167,168とCPU161−1,161−2,161−3,161−4とがそれぞれ1対1で対応して電気的に接続されている場合の例を示している。また第3の実施形態による廃炉措置専用制御装置16は、電源遮断回路169を備えている点で第2の実施形態と相違している。
【0036】
このような構成において、廃炉担当者は、廃炉措置の過程でセンシングや制御が不要となった計器類や制御対象に接続されているケーブルに対応する変換回路搭載カードを廃炉措置専用制御装置16より抜去する電源遮断工程を行う。すると電源遮断回路169が抜去された変換回路搭載カードを検知する。例えば変換回路搭載カードが抜去されることにより回路の遮断を検知して、これにより変換回路搭載カードが抜去されたことを検知するようにしてもよい。電源遮断回路169は、抜去された変換回路搭載カードが電気的に接続されているCPUを予めデータテーブル等に記憶しておりそのCPU(CPU161−1,161−2,161−3,161−4の何れか)に対する電源の供給を遮断する。または抜去された変換回路搭載カードが電気的に接続されているCPUを電気回路の仕組みにより検出し、そのCPUに対する電源の供給を遮断してもよい。
このような構成にすることで、例えば廃炉措置の過程でセンシングや制御が不要となった計器類や制御対象に接続されているケーブルに対応する変換回路搭載カードへの電源供給を停止でき、またそれらセンシングや制御に伴うCPU161の処理のための電力量を削減することができる。
【0037】
以上、上述の原子力プラント制御システムとその解体方法によれば、大規模な原子力プラントの廃炉措置において、電力需要、各種制御設備の設置スペース、当該制御設備に付随する空調設備を廃炉措置の過程で段階的に削減し、必要なセンシング信号の取得を維持しながら、廃炉措置専用制御装置16、廃炉措置監視操作装置17を用いた監視および制御により効率的に解体作業を行うことができる。
【0038】
なお上述の中央制御装置11、常用系制御装置(常用系制御盤)12、安全系制御装置(安全系制御盤)13、廃炉措置専用制御装置16、廃炉措置監視操作装置17等は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。
【0039】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
10・・・中央制御室
11・・・中央制御装置
12・・・常用系制御装置
13・・・安全系制御装置
14・・・常用系の計器類、制御対象
15・・・安全系の計器類、制御対象
16・・・廃炉措置専用制御装置
17・・・廃炉措置監視操作装置
18,19・・・中継装置
161・・・CPU
162・・・ROM
163・・・RAM
164・・・HDD
165〜168・・・変換回路搭載カード
121,131・・・配線盤
181,191・・・配線盤