特許第6561424号(P6561424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561424
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ガス含有基材
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20190808BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20190808BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190808BHJP
   A23L 29/231 20160101ALN20190808BHJP
   A23L 29/256 20160101ALN20190808BHJP
   A23L 29/281 20160101ALN20190808BHJP
   A23L 5/00 20160101ALN20190808BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20190808BHJP
【FI】
   B01J13/00 D
   C12M1/00 C
   A61K8/19
   A61K8/65
   A61K8/73
   A61Q19/00
   !A23L29/231
   !A23L29/256
   !A23L29/281
   !A23L5/00 K
   !A23L33/10
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-155689(P2018-155689)
(22)【出願日】2018年8月22日
(62)【分割の表示】特願2017-3163(P2017-3163)の分割
【原出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2019-10102(P2019-10102A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2018年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-81449(P2016-81449)
(32)【優先日】2016年4月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594146179
【氏名又は名称】株式会社新菱
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】武田 徹
(72)【発明者】
【氏名】豊島 宏一
(72)【発明者】
【氏名】沢井 毅
(72)【発明者】
【氏名】井上 和美
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3106002(JP,U)
【文献】 特開2012−147757(JP,A)
【文献】 特開昭54−154385(JP,A)
【文献】 特開2007−314496(JP,A)
【文献】 特開2016−013547(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0370096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
A23L 29/20
A23L 33/10
A61K 8/02
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを含有する組成物を含むガス含有基材であって、
前記組成物は、冷却することにより液体状から固形状となり得るゲル化温度を0.5〜65℃の範囲に有するゲル状組成物であり、
前記組成物は、液体状態時の飽和溶解度を超える量の気泡状態の水素ガスを含有し、
水素ガスの含有量が、前記組成物の容積/重量%(v/w%)換算で10〜60vol%であり、
前記組成物がゼラチンをさらに含有する、ガス含有基材。
【請求項2】
前記組成物が寒天、カラギーナン及びペクチンからなる群より選ばれるいずれか一種以上をさらに含有する、請求項1に記載のガス含有基材。
【請求項3】
前記組成物のゲル化温度が、10〜60℃である、請求項1又は2に記載のガス含有基材。
【請求項4】
前記組成物が、添加剤を含有する、請求項1から3のいずれかに記載のガス含有基材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のガス含有基材を含む、細胞培養用のガス含有基材。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のガス含有基材を含む、化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化粧品、医療、細胞培養等の産業分野において利用価値のある水素、酸素、窒素、炭酸ガス等の機能性ガスを高濃度に含有するガス含有基材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に対して水素などの抗酸化作用を有する機能性ガスを、水溶液又はゼリー中に溶解又は分散して液体状、ゼリー状、シート状、カプセル状に加工した物が化粧品、食品、医薬品として有用であることが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、精製水中に加圧水素ガスを吹き込んでマイクロバブル化して溶存水素濃度:0.5〜1.5ppmの加水素水を作製し、これに保湿剤等を配合した化粧水の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、水又は低粘性の液体に水素を送り込んで微細な水素ガス気泡を発生させて、この液を隣接する別の槽に移送してゲル化剤を添加し、ゲル化させた水素ガスを含有する機能性ゼリーの製造方法記載されている。また、特許文献3には、前記特許文献1記載の方法などで溶存水素を含有するシート状の保持層を作製し、その片面に水素バリア材料を用いた水素反射層を積層した肌用シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4600889号公報
【特許文献2】特許第4450863号公報
【特許文献3】特開2014−213064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、[1]精製水にガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1L/分で水素ガスを吹き込んだ後、孔径が2〜120μmの多孔要素から噴出させて水素をマイクロバブルとして、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を製造する加水素水製造工程と、[2]前記加水素水に、保湿剤を配合して、溶解させ水相を製造する水相製造工程と、[3]前記水相製造工程とは別に、保湿剤を混合して溶解させ、前記加水素水を配合して非水相を製造する非水相製造工程と、[4]前記水相と前記非水相を混合する工程を含む化粧水を製造する方法であるが、得られる化粧水が液体状のため、溶存する水素量は高くても飽和溶解度の1.6ppm以上にはならない。
【0006】
また、特許文献2にあっては、技術背景として前記の特許文献1を引用文献として挙げており、特許文献1で開示されたマイクロバブル状の水素ガス気泡は飛散により最終製品中には殆ど残らないため、水又は低粘性の液体に水素を送り込んで微細な水素ナノバブルを発生させて、この液を隣接する別の槽に移送し、ゲル化剤を添加してゲル化させる水素ガスを含有する機能性ゼリーの製造方法であるが、当該明細書中には得られる製品(機能性ゼリー)中の水素ガス含有量の記載が無く、水素ナノバブルを用いた場合の効果が前記特許文献1よりも高濃度に水素を含有できるか否かが不明である。
【0007】
特許文献3にあっては、前記特許文献1記載の方法などで溶存水素を含有するシート状の保持層を作製し、その片面に水素バリア材料を用いた水素反射層を積層した肌用シートが記載されているが、当該明細書中にはシート状保持層中の好ましい水素濃度が0.8mM(1.6ppm)以上2.0mM(4ppm)以下との記載のみで、水素保持シートの具体的な作製に関する記載が無く、この実施例も無いことから、前記特許文献1記載の方法を用いた場合の最終製品中の水素含有量は高くても1.6ppmが限界と考えられる。
【0008】
以上のように、従来技術では、最終製品中に水素の飽和溶解度の1.6ppm(1.7vol%)を超えて、水素を高濃度に含有保存できる材料が見出されて無いのが現状であり、水素等の機能性ガスを高濃度に含有保持できる材料開発が課題となっている。
このため、従来の水素等の機能性ガスを含有させた材料では、気中に放出できる機能性ガスが十分とはいえず、機能性ガスの有用な効果を十分に発揮することができずに改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる状況下、本発明の目的は、機能性ガスを高濃度に含有保持できるガス含有基材およびその製造方法を提供することである。
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 水素ガスを含有する組成物を含むガス含有基材であって、前記組成物は、冷却することにより液体状から固形状となり得るゲル化温度を0.5〜65℃の範囲に有するゲル状組成物であり、前記組成物は、液体状態時の飽和溶解度を超える量の気泡状態の水素ガスを含有し、水素ガスの含有量が、前記組成物の容積/重量%(v/w%)換算で10〜60vol%であり、前記組成物がゼラチンをさらに含有する、ガス含有基材。
<2> 前記組成物が寒天、カラギーナン及びペクチンからなる群より選ばれるいずれか一種以上をさらに含有する、前記<1>に記載のガス含有基材。
<3> 前記組成物のゲル化温度が、10〜60℃である、前記<1>または<2>に記載のガス含有基材。
<4> 前記組成物が、添加剤を含有する、前記<1>から<3>のいずれかに記載のガス含有基材。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のガス含有基材を含む、細胞培養用のガス含有基材。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のガス含有基材を含む、化粧品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機能性ガスを高濃度に含有保持させたガス含有基材が提供される。当該ガス含有基材は、より多くの機能性ガスを気中に放出することが可能である。また、本発明の製造方法によれば、ガス含有基材に機能性ガスを高濃度に含有保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の原料組成物(ゼラチン水溶液)の比重を示す図である。
図2】実施例の原料組成物(ゼラチン水溶液)の粘度を示す図である。
図3】35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)及び実施例1の水素ガス高濃度含有基材−1の外観写真である。
図4】実施例1の水素ガス高濃度含有基材−1の断面写真(マイクロスコープ倍率100倍)である。
図5】実施例1の水素ガス高濃度含有基材−1の断面写真(マイクロスコープ倍率200倍)である。
図6】35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)及び実施例5の空気高濃度含有基材−5の外観写真である。
図7】参考例のナノバブル水素水中の水素濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。また、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0015】
本発明は、機能性ガスを含有する組成物を含むガス含有基材であって、前記組成物は、冷却することにより液体状から固形状となり得るゲル化温度を0.5〜65℃の範囲に有するゲル状組成物であり、前記組成物は、液体状態時の飽和溶解度を超える量の気泡状態の機能性ガスを含有するガス含有基材(以下、「本発明のガス含有基材」と記載する場合がある。)に関するものである。
なお、本発明のガス含有基材は、後述する本発明の製造方法により、好適に製造することができる。
【0016】
本発明のガス含有基材は、冷却することにより液体状から固形状となり得るゲル化温度を0.5〜65℃の範囲に有する組成物(以下、「本発明の組成物」と称す。)を含む。
本発明の組成物のゲル化温度は、実施例にて後述する方法により求めることができる。本発明の組成物は、0.5〜65℃の範囲にゲル化温度を有するため、ゲル化温度以下の温度では固形状(ゲル状)であり、固形状において気泡状態の機能性ガスを含有することができる。なお、本発明の組成物はゲル化温度以上の温度では、通常、液体状となる。
【0017】
本発明のガス含有基材は、本発明の組成物のみから構成されていてもよいし、本発明の組成物と他の部材とから構成されていてもよい。
例えば、本発明の組成物に任意の充填材を分散させたもの、本発明の組成物を任意の担体に担持したもの等も本発明のガス含有基材に含まれるものとする。
【0018】
本発明のガス含有基材は、含有される本発明の組成物が、液体状態時の飽和溶解度を超えて気泡状態の機能性ガスを含有することに利点がある。
ここで、「(組成物の)液体状態時の飽和溶解度」とは、本発明の組成物が液体状態時における大気圧下での飽和溶解度である。なお、飽和溶解度を規定する「気体の溶解」は、ヘンリーの法則が成立し、気体が圧力に応じて分子状で溶解している状態である。
本発明の組成物は、気泡状態の機能性ガスを含有することから、飽和溶解度を超える量の機能性ガスを含有している。
なお、飽和溶解度を測定する温度は、本発明の組成物が液体状態である必要があり、本発明の組成物に含まれる成分によるが、通常、ゲル化温度から5〜10℃高い温度で飽和溶解度を測定すればよい。
【0019】
以下、本発明のガス含有基材についてより詳細に説明する。
【0020】
<機能性ガス>
本発明において、「機能性ガス」とは、食品、化粧品、医療、細胞培養等の分野で有用な機能を発現できる気体(ガス)であれば特に限定されない。
機能性ガスは、その利用用途に応じて適時選択して用いることができ、例えば、水素、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン及びブタンの一種又は二種以上の混合ガスが挙げられる。混合ガスにおける各ガス種の割合は任意である。また、空気も混合ガスに含まれる。
【0021】
好適な機能性ガスとしては、水素、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガスが挙げられる。
機能性ガスとして、水素は、潜在的に有する還元性、抗酸化性を利用した食品、健康食品、化粧品医療などの分野で利用されている。また、酸素については、医療、細胞培養、健康医療機器などの分野で利用されている。また、窒素、アルゴン、ヘリウムについては、その性質が不活性ガスであることから、酸化防止の観点から、食品、化粧品、細胞培養などの分野への利用が考えられる。また、炭酸ガスについては、食品、化粧品、細胞培養の分野で利用されている。
【0022】
この中でも、水素は上述のように有用な機能性ガスであるため、特に好適である。なお、水素は、ゲル状組成物中に高濃度に含有させることが困難であるが、後述する本発明の製造方法により、固形状において気泡状態の機能性ガスを高濃度に含有することが可能となる。
【0023】
本発明のガス含有基材における機能性ガス含有量は、本発明の組成物が保持できる範囲で、ガスの種類や本発明のガス含有基材の利用用途に応じて適宜選択することができる。
本発明の組成物の機能性ガス含有量は、実施例にて後述する比重法やGC分析により求めることができる。
本発明の組成物の機能性ガス含有量は、本発明の組成物の容積/重量%(v/w%)換算で2〜60vol%であることが好ましく、6〜60vol%であることがより好ましい。なお、このガス含有量は、本発明の組成物を大気圧、10℃の条件下でサンプリングしてGC分析法により求めた値である。
【0024】
本発明の組成物が固形状(ゲル状)の時に、含有する機能性ガスの気泡径は、1〜200μmの範囲であることが好ましい。ガスの気泡径は、例えば、マイクロスコープ(キーエンス社:デジタルマイクロスコープ VHX−900F)を用いて、基材の断面を観察することで求めることができる。
【0025】
なお、本発明の組成物が保持できるガスの含有量や気泡径は、組成物の成分および液体状の原料組成物中に機能性ガスを気泡分散させる方法によって実質的に決定される。
【0026】
<本発明の組成物>
本発明の組成物は、上述するように冷却することにより液体状から固形状となり得るゲル化温度を0.5〜65℃の範囲に有し機能性ガスの微細気泡を分散保持できるゲル状の材料である。
【0027】
本発明の組成物の選定は、上記ゲル化温度を有し機能性ガスの保持力を有する材料群から本発明のガス含有基材の利用用途に応じて適時選択すれば良い。本発明のガス含有基材を、食品、化粧品、医療、細胞培養などの分野に利用する場合には、本発明の組成物の機能性ガスの保持性能、保存安定性、ゲル化温度の他に、本発明の組成物(及びその他の成分)の生体への安全性、細胞培養時の細胞への悪影響などを考慮して適時選択すれば良く、特定の材料に限定されない。
【0028】
本発明の組成物は、本発明のガス含有基材の利用用途に応じて適宜選択すれば良いが、ゲル化温度が10〜60℃であるものが好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、大気圧下、温度0.5〜65℃にゲル化温度を有するゲル状組成物であり、特にゲル化温度にて可逆的にゾルゲル転移ができるゲル状組成物であることがより好ましい。なお、ゲル状組成物は、ゲル化成分及び水又は有機溶媒などにより構成される。
【0030】
ゲル化成分としては、例えば、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、アウレオバシジウム培養液、スクシノグリカン、アマシードガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、ウェランガム、カシアガム、ガティガム、カードラン、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、キトサン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、酵母細胞壁、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、デキストラン、トラガントガム、トロロアオイ、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、レバン、オクラ抽出物、海藻セルロース、褐藻抽出物、コンニャクイモ抽出物、サツマイモセルロース、ダイズ多糖類、ナタデココなどの天然物由来の蛋白類または多糖類、合成有機高分子、シリコーン系高分子などの固体状の材料が挙げられ、これらの材料は一種又は二種以上を混合して用いても良い。
この中でも、組成物は、ゲル化成分として、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、プルラン及びアルギン酸ナトリウムのいずれか一種以上を含む組成物であることが好ましい。
【0031】
溶媒は、本発明のガス含有基材の利用用途や本発明の組成物の成分(特にゲル化成分)の種類によって適宜選択される。例えば、食品、化粧品、医療、細胞培養などの分野に利用する場合には、水、エタノール等を使用する。ヒトへの安全性が求められない利用用途では任意の有機溶剤等を使用してもよい。
【0032】
<添加剤>
また、本発明の組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記材料の他に、適宜任意の添加剤等を含んでもよい。本発明の組成物に添加できる添加剤としては、本発明のガス含有基材を食品、化粧品、医療、細胞培養などの分野に利用する場合に、その効能の相乗効果の発現または新たな効能付与の目的で、当該基材と混合などして併用することが可能な成分であれば、公知の成分が何れも使用できる。以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
添加剤としては、食品添加剤、化粧品添加剤、抗酸化剤、培地添加剤、飼料添加剤などが挙げられ、例えば、殺菌剤の次亜塩素酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、高度サラシ粉など、乳化剤のグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリロイル乳酸カルシウム、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなど、増粘安定剤のアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、プロポキシメチルセルロースナトリウム、プロポキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、天然物系多糖類など、保水乳化安定剤のコンドロイチン硫酸ナトリウムなど、結着剤・品質改質剤のポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムなど、粘着防止剤のD−マンニトールなど、保存料の安息香酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、パラオキシ安息香酸エステル類、デヒドロキシ酢酸ナトリウム、プロピオン酸及びその塩、白子蛋白、ポリリジン、ペクチン分解物など、酸化防止剤のエリソルビン酸及びその塩、クエン酸イソプロピル、ジブチルヒドロキシトルエン、dl−αトコフェロール、ノルジヒドログアヤレチック酸、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピルなど、強化剤のビタミン類各種などが挙げられる。また、当該分野で公知の各種のアミノ酸誘導体類、核酸類、脂質類、抗酸化剤類、抗糖化剤類、油脂、界面活性剤も添加剤として使用できる。
これらの添加剤は、所望とする効能によって、一種又は二種以上を併用して用いることが好ましい。
【0033】
<ガス含有基材の製造方法>
また、本発明は、ガス含有基材の製造方法に関する。本発明のガス含有基材の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記載する場合がある。)は、下記の工程を有することを特徴とする。
工程(1):
冷却することにより液体状から固形状となり得るゲル化温度を0.5〜65℃の範囲に有する原料組成物を、当該原料組成物が液体状となる温度で保持しながら機能性ガスを供給し、原料組成物の液体状態時における飽和溶解度を超える量の機能性ガスを微細気泡として均一分散させる工程
工程(2):
得られた機能性ガスの微細気泡が分散した液体状態の原料組成物を充填容器に移送して、充填及び密閉化する工程
工程(3):
得られた密閉充填容器内の機能性ガスの微細気泡が分散した液体状の原料組成物を、当該原料組成物のゲル化温度以下に冷却して凝固する工程
【0034】
本発明の製造方法は、上述した本発明のガス含有基材の好適な製造方法であり、当該製造方法により、高濃度に機能性ガスを含有した組成物を含むガス含有基材を安定的に製造することができる。
【0035】
一般的に、機能性ガスは、ガス含有基材製造時の液体状の原料組成物の液粘度が低いほど原料組成物中を移動し易く微細気泡として分散し易い。しかし、原料組成物中を移動し易いと言う事は、液体状の原料組成物中に留まり難く、気相中へ揮散する可能性も高いと言える。逆に、ガス含有基材製造時の液体状の原料組成物の液粘度が高いと機能性ガスが分散し難く、微細気泡の形成には好ましくない。言うまでも無いが、原料組成物が凝固した固体の形態では機能性ガスの分散は実質的に不可能となる。
本発明の製造方法では、液体状の原料組成物中に機能性ガスを微細気泡として高濃度に均一分散させた後、速やかに冷却して液体状の原料組成物を凝固させることで、機能性ガスの微細気泡を高濃度に含有保持させることができる。
【0036】
<工程(1)>
工程(1)は、冷却することにより液体状から固形状となり得るゲル化温度を0.5〜65℃の範囲に有する原料組成物を、当該原料組成物が液体状(溶液又はゾル)となる温度で保持しながら機能性ガスを供給し、原料組成物の液体状態時における飽和溶解度を超える量の機能性ガスを微細気泡として均一分散させる工程である。
【0037】
工程(1)で用いられる微細気泡が分散する前の原料組成物としては、得られるガス含有基材の利用用途に応じて適宜選択可能だが、上述したゲル化成分を用いることができる。
例えば、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、アウレオバシジウム培養液、スクシノグリカン、アマシードガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、ウェランガム、カシアガム、ガティガム、カードラン、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、キトサン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、酵母細胞壁、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、デキストラン、トラガントガム、トロロアオイ、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、レバン、オクラ抽出物、海藻セルロース、褐藻抽出物、コンニャクイモ抽出物、サツマイモセルロース、ダイズ多糖類、ナタデココなどの天然物由来の蛋白類または多糖類、合成有機高分子、シリコーン系高分子などの固体状の材料が挙げられ、これらの材料は一種又は二種以上を混合して用いても良い。
この中でも、原料組成物は、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、プルラン、アルギン酸ナトリウムのいずれか一種以上を含む組成物であることがより好ましい。
また、原料組成物として、これらの材料を水又は有機溶媒に溶解させた溶液を用いても良い。
【0038】
原料組成物は、可逆的にゲル化温度においてゾルゲル転移ができる物質であることが好ましい。
【0039】
原料組成物のゲル化温度は、0.5〜65℃であるが、10〜60℃であることが好ましい。なお、ゲル化温度は、実施例にて後述する方法により測定することができる。
【0040】
本発明の原料組成物の調整に用いられる装置は、本発明の目的を阻害しない範囲で、使用する溶媒、原料組成物や得られるゲル状組成物、機能性ガスに対する耐食性を考慮して選択することができ、例えば、これらの耐食性を有する材質の攪拌機付きの槽又は釜を用いることができる。また、これらの装置材質の選定に当っては、使用温度での耐熱性、更には装置材質成分が得られるガス含有基材に溶出されないことを考慮した選定が必要である。例えば、SUS材、ガラスライニング、フッ素樹脂ライニング、プラスチックなどの装置材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
具体的な原料組成物の調整方法は、溶媒を使用する場合、まず、溶解槽に常温で水又は有機溶剤などの溶媒を仕込み、続いて、攪拌下で固体状の原料組成物(例えば、ゲル化成分)を仕込んだ後、固体状の原料組成物が溶解できる温度まで昇温して溶解させて、液体状の原料組成物を作製する。溶媒を使用しない場合は、固体状の原料組成物を溶解槽に仕込んだ後、昇温して固体状の原料組成物を溶融させるか、予め固体状の原料組成物を加熱溶融させた状態で溶解槽に仕込んでも良い。
【0042】
また、原料組成物には、適宜添加剤を含有させてもよい。原料組成物に含有することができる添加剤については、本発明のガス含有基材にて説明した通りであるので、説明を省略する。特に食品添加剤、化粧品添加剤、抗酸化剤、培地添加剤、飼料添加剤のいずれか一種以上を含有することが好ましい。
【0043】
機能性ガスとしては、上述の本発明のガス含有基材の機能性ガスと同様であり、水素、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン及びブタンの一種又は二種以上の混合ガスが挙げられ、水素、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガスであることが好ましく、水素であることがよりに好ましい。
【0044】
工程(1)で用いられる装置としては、本発明の目的を阻害しない範囲で、使用する溶媒、原料組成物や得られるゲル状組成物、機能性ガスに対する耐食性を考慮して選択することができ、原料組成物の液体状態時における飽和溶解度を超える機能性ガスを微細気泡として均一分散できる方法であれば、公知の気液分散操作に用いられる装置、設備が使用できる。
例えば、攪拌槽を用いる場合であれば、液中の気体分散に適したタービン翼やフルゾーン翼などの攪拌翼を備えた釜、槽等の容器を使用できる。ラインミキサーを用いる場合であれば、公知のターボミキサー、スタティックミキサー、エゼクター等の気液の微細混合に適した装置が使用できる。振とう機を用いる場合であれば、振とう時に内容物が漏れ難い密閉型の振とう機が使用できる。
【0045】
工程(1)の好ましい態様は、液体状の原料組成物を撹拌した状態で、原料組成物へ機能性ガスを供給して、原料組成物中に機能性ガスを微細気泡として均一分散させる方法である。
【0046】
具体的な方法は、攪拌槽を用いる場合であれば、当該原料組成物が液体状となる温度で保持し、液体状の原料組成物を攪拌しながら攪拌翼下部から機能性ガスを導入して、攪拌により機能性ガスを原料組成物中に微細分散することができる。
【0047】
ラインミキサーを用いる場合であれば、ミキサーに液体状の原料組成物と機能性ガスを導入してラインミキシングにより機能性ガスを原料組成物中に微細分散することができる。
【0048】
また、工程(1)の別の好ましい態様は、液体状の原料組成物を撹拌せずに、原料組成物へ機能性ガスを供給した後に、振とうすることによって原料組成物に機能性ガスを微細気泡として均一分散させる方法である。
【0049】
具体的には、密閉型の振とう機を用いる場合であれば、振とう機に液体状の原料組成物を振とう機容積の約1/2容量ほど仕込み、続いて、振とう機の気相部を機能性ガスで置換する目的で振とう機の気相容積の1〜5倍量の機能性ガスを、液体状の原料組成物中にバブリングまたは気相中に導入した後に蓋をして密閉する。次に、密閉された振とう機を気相中の機能性ガスが液体状の原料組成物中に微細分散するまで振とうして、機能性ガスを原料組成物中に微細分散することができる。
【0050】
本発明の製造方法において、原料組成物に供給された機能性ガスは、直径1〜200μmの微細気泡となるようにすることが好ましい。
【0051】
また、本発明の製造方法において、原料組成物に供給された機能性ガスの含有量は、最終品である工程(3)後の機能性ガスの含有量が、ゲル状組成物の容積/重量%(v/w%)換算で2〜60vol%の範囲となるようにすることが好ましく、6〜60vol%の範囲となるようにすることがより好ましい。なお、このガス含有量は、本発明の組成物を大気圧、10℃の条件下でサンプリングしてGC分析法により求めた値である。
【0052】
機能性ガス及び原料組成物の仕込み量比は、所望とするガス含有基材中の機能性ガス含有量見合いで適時、設定すれば良い。また、機能性ガスの原料組成物中への分散温度についても、機能性ガスの種類又は原料組成物の種類により、所望とするガス含有基材中の機能性ガス含有量見合いで適時、設定すれば良い。
【0053】
<工程(2)>
工程(2)は、得られた機能性ガスの微細気泡が分散した液体状態の原料組成物を充填容器に移送して、充填及び密閉化する工程である。機能性ガスの系外への揮散ロスを抑制するために、充填及び密閉化はできる限り速やかに行うことが好ましい。
【0054】
特に、得られた機能性ガスの微細気泡が分散した液体状態の原料組成物を徐々に冷却して原料組成物のゲル化温度から5〜20℃高い温度に保持しながら充填容器に移送することが好ましい。この移送の際の温度の下限を、ゲル化温度から5℃以上高い温度とすれば、基材の粘度が数万mPa・s以上の高粘度の液体となることを防ぐことができ、充填容器への移送が容易になる。一方、ゲル化温度から20℃高い温度を上限として、移送の際の温度を保持すれば、基材からの機能性ガスの揮散ロスが低減できる。以上のことから、原料組成物を移送する際の温度を、ゲル化温度から5℃〜20℃の範囲に保った状態で輸送するのが好ましい。
【0055】
また、機能性ガスの微細気泡が分散した液体状態の原料組成物の粘度が100〜10,000mPa・sの領域で充填容器に移送することが好ましい。原料組成物の粘度が100mPa・s以上であれば、分散させた機能性ガスの系外への揮散ロスを低減できるため好ましい。一方原料組成物の粘度が、10,000mPa・s以下であれば、移送に適した流動性を担保できるため好ましい。
【0056】
使用する充填容器は、充填容器材質からの機能性ガスの透過ロスを防止する意味で、機能性ガスを透過させない材質が好ましい。例えば、アルミニウム製パウチ、機能性ガスが透過し難い有機高分子シート又はフィルム、これらの複合材、金属容器などが挙げられる。機能性ガスを透過し難い材料であれば、前記の例示材料に限定されるものではない。
充填の方法は、充填容器に液体状のガス含有基材を極力、気相空間が無い様に充填して、速やかに密封する事が機能性ガスの揮散防止の意味で重要である。
密封の方法は、充填容器の種類にもよるが、例えば、ヒートシール、内蓋付きの蓋などの公知のシール方法が挙げられる。
【0057】
<工程(3)>
工程(3)は、得られた密閉充填容器内の液体状の機能性ガスの微細気泡が分散した原料組成物を当該原料組成物のゲル化温度以下に、冷却して凝固する工程である。この工程により、機能性ガスを含有するゲル状組成物が得られる。
【0058】
冷却はできる限り速やかに行うことが好ましい。密閉充填容器内の液体状の機能性ガスの微細気泡が分散した原料組成物を速やかに充填容器ごとガス含有基材のゲル化温度以下に急冷することにより、充填容器に充填した液体状のガス含有基材中の機能性ガスの系外への揮散ロスを極力低減することができる。
【0059】
当該基材が充填された充填容器を速やかにゲル化温度以下に冷却できれば、その方法は特に限定されないが、例えば、当該基材の充填密封化が終了後、速やかに当該基材のゲル化温度以下に冷却された水浴中に充填容器ごと浸漬して急冷する方法や充填容器を予め冷媒浴中で冷却しておき、これに液体状のガス含有基材を移送充填して密栓する方法などがある。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1〜5の原料組成物の調製>
魚鱗由来のゼラチン粉及び上水(北九州市水道局)を用いて、以下の方法で原料組成物(ゼラチン水溶液)を作製した。
1Lの樹脂製蓋付容器に、ゼラチン粉及び上水を所望のゼラチン濃度になる様に、各々量り取って蓋をし室温下で放置してゼラチンを膨潤させた後、60〜85℃の温水バス中に浸してゼラチンを溶解させて、ゼラチン濃度が各々1,3,5,15,25,35,40,50重量%(wt%)の原料組成物(ゼラチン水溶液)を作製した。
【0062】
<物性測定>
続いて、各原料組成物(ゼラチン水溶液)の物性を測定した。
【0063】
i)比重測定(メスフラスコ法)
25mlガラス製メスフラスコ及び恒温水槽を用いて、40,50,60℃における純水定容を行い、各温度での純水密度(g/ml)を測定した。続いて、同様の操作で各原料組成物(ゼラチン水溶液)の密度を測定して、純水に対する比重を求めた。
結果を、図1に示す。
【0064】
ii)ゲル化温度及びpH測定
ゲル化温度の測定は、50mlガラス製スクリュウ瓶に各原料組成物(ゼラチン水溶液)を、各々、約1/2容量入れて密栓したものを恒温水槽に浸し、75℃まで加温した。続いて、恒温水槽を徐々に降温しながら、スクリュウ瓶を45°及び90°傾けても原料組成物が流動しなくなる温度をゲル化温度とした。尚、温度測定については、スクリュウ瓶に外壁に標準水銀温度計を添えて行った。結果を、表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
また、堀場製作所社製pHメーター(D−51)を使用して、25℃でpH標準液4.01,6.86,9.18を用いて校正操作をした後、同じ温度で各原料組成物(ゼラチン水溶液)のpHを測定したところ、pH6程度であった。
【0067】
iii)粘度測定
粘度測定は、東機産業社製E型粘度計(低粘度用:RE−105L、高粘度用:RE−215U)を使用して、各原料組成物(ゼラチン水溶液)の粘度を測定した。
結果を、図2に示す。
【0068】
<実施例1>「水素ガス高濃度含有基材−1」の作製
1Lジャケット付きガラス製セパラブルフラスコに、フルゾーン型攪拌翼、温度計、ガス導入管(ガス吹き出し口は攪拌翼下部に固定)、リービッヒコンデンサーを備えた機能性ガス分散装置を用いた。尚、機能性ガスは面積式流量計を経て当該装置に導入し、温度コントロールは恒温水槽から温度制御された水をジャケット内に循環して行った。
【0069】
工程(1a)
上述の<実施例1〜5の原料組成物の調製>と同様にして「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」を作製して、当該装置に、この「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」500gを仕込み、攪拌しながら内温を70℃まで昇温して保持した後、水素ガスを20ml/分で撹拌翼下部から導入して保持材中に微細気泡として分散しながら、液面が仕込み時の約1.7倍まで上昇したところで水素ガスの導入を停止し、水素を微細気泡として原料組成物中に均一分散させた。
【0070】
工程(2a)
水素ガスを微細気泡として分散させた原料組成物を、内温が32℃になるまで冷却して、同温度でアルミ製パウチに抜出して充填及び密閉した。
【0071】
工程(3a)
このアルミ製パウチを直ちに5℃水中に浸漬して、冷却凝固させて、水素ガスを含有させたゲル状組成物(「水素ガス高濃度含有基材−1」)を得た。
【0072】
<評価>
(1)「水素ガス高濃度含有基材−1」の水素含有量測定
(比重法)
32℃の抜出し液を、直接、100mlメスシリンダーに100ml抜出し、直ちに5〜10℃の冷水中に浸してゲル化させて、その重量/容積を測定して比重を求めたところ0.66g/mlであった。水素ガス分散前の原料組成物との比重差から、水素ガス高濃度含有基材の水素ガス含有量を下記の比重法の計算式から求めると、40vol%(v/w%)と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0073】
<比重法計算式>
水素ガス高濃度含有基材中の水素濃度(vol%)
=(ガス分散前の原料組成物比重―ガス分散後の組成物比重)/ガス分散前の原料組成物比重×100
=(1.10−0.66)/1.10×100=40vol%
【0074】
(GC分析法)
また、「水素ガス高濃度含有基材−1」を10℃でサンプリングして、ガスクロマトグラフ分析(以下、GC分析と略す)で用いるヘッドスペースGC分析用サンプル瓶に精秤して密閉後、これを70℃恒温水槽中で、気泡を包含しない透明液体状になるまで加温溶解させて、気相中に水素ガスを放出させる。続いて、サンプル瓶内の気相ガスをサンプリングして、GC分析(TCD検出器)にて水素ガスを定量する方法で、「水素ガス高濃度含有基材−1」の水素ガス含有量を測定したところ、36vol%と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
また、以上の結果から比重法とGC分析法とで水素ガス含有量でほぼ同等の数値が得られる事が確認された。
【0075】
(2)水素ガス分散前後の観察結果
「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」と、これに水素ガスを微細気泡状で分散させた「水素ガス高濃度含有基材−1」の10℃での外観写真を図3に示す。
図3の外観写真から、「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」は透明であるが、水素ガスを高濃度に微細分散した「水素ガス高濃度含有基材−1」は、マイクロメートルサイズの微細な水素気泡が高濃度に分散しているから白色不透明である。
【0076】
また、「水素ガス高濃度含有基材−1」中の水素ガス気泡の分散状態の観察する目的で、当該基材を鋭利なナイフで切断して、その断面をマイクロスコープ(キーエンス社:デジタルマイクロスコープ VHX−900F)で、表層から深さ200μm程度までの反射像による観察を行った結果を図4及び図5に示す。
図4及び図5の「水素ガス高濃度含有基材−1」の断面マイクロスコープ観察から、気泡径が1〜200μmの微細気泡が高濃度に分散してことが確認された。
【0077】
<実施例2>「水素ガス高濃度含有基材−2」の作製工程(1b)
上述の<実施例1〜5の原料組成物の調製>と同様にして「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」を作製して、1L蓋付ポリエチレン製容器に、この「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物)(ゼラチン水溶液)」500gを仕込み、70℃恒温水槽中に浸し昇温して保持した後、水素ガスを100ml/分で容器底部にバブリングしながら原料組成物表面(気相界面)の泡が容器口まで上昇したところで、水素ガス吹込みを止めて密栓した。この密栓された容器を恒温水槽から取出し、速やかに室温下で手振りによる振とうを、内温が35℃になるまで継続し、原料組成物中に水素ガスを微細分散させた。
【0078】
工程(2b)
水素ガスを微細気泡として分散させた原料組成物を、30〜35℃でアルミ製パウチに抜出して充填及び密閉した。
【0079】
工程(3b)
このアルミ製パウチを直ちに5℃水中に浸漬して、冷却凝固させて「水素ガス高濃度含有基材−2」を得た。
【0080】
<評価>
(1)「水素ガス高濃度含有基材−2」の水素含有量測定
「水素ガス高濃度含有基材−2」の水素ガス含有量を実施例1と同様にしてGC分析法で測定したところ、28vol%であった。
【0081】
(2)「水素ガス高濃度含有基材−2」の保存安定性
「水素ガス高濃度含有基材−2」を、5〜10℃の冷蔵庫中に保存して、水素ガス含有量の経日変化を48日後にGC分析法で測定したところ、26vol%であった。この結果から、当該基材中の水素ガス保持量が殆ど変化していないことが確認された。
【0082】
<実施例3>「水素ガス高濃度含有基材−3」の作製
実施例1において、用いた原料組成物を「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」から「25wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」に変更した以外は、実施例1と同様にして「水素ガス高濃度含有基材−3」を作製した。
「水素ガス高濃度含有基材−3」の水素ガス含有量を測定したところ、比重法で53vol%(水素ガス分散前の比重1.07、水素ガス分散後の比重0.50)と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0083】
<実施例4>「水素ガス高濃度含有基材−4」の作製
実施例1において、用いた原料組成物を「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」から「40wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」に変更した以外は、実施例2と同様にして「水素ガス高濃度含有基材−4」を作製した。
「水素ガス高濃度含有基材−4」の水素ガス含有量を測定したところ、比重法で29vol%(水素ガス分散前の1.12、水素ガス分散後の比重0.80)、GC法で27vol%と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0084】
<実施例5>「空気高濃度含有基材−5」の作製
実施例1において、機能性ガスを「水素ガス」から「空気」に変更した以外は、実施例2と同様にして「空気高濃度含有基材−5」を作製した。
「空気高濃度含有基材−5」の空気含有量を比重法で測定したところ、35vol%(空気分散前の比重1.10、空気分散後の比重0.72)と空気が高濃度に含有されている結果であった。
また、「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」と、これに空気を微細気泡状で分散させた「空気高濃度含有基材」の10℃での外観写真を図6に示す。
【0085】
<実施例6〜11の原料組成物の調製>
1Lの樹脂製蓋付容器に、表2の組成になる様に、各々量り取って蓋をし、室温下で放置して固体成分を膨潤させた後、60〜95℃の温水バス中に浸して固体成分を溶解させて、原料組成物を作製した。上述の「ii)ゲル化温度及びpH測定」の記載にしたがって、ゲル化温度を測定した結果を、表3に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
<実施例6>「水素ガス高濃度含有基材−6」の作製
工程(1c)
実施例1において、用いた原料組成物を「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」から、「表2の実施例6の原料組成物(寒天水溶液)」に変更した以外は、実施例1と同様にして、水素ガスを微細気泡として原料組成物中に均一分散させた。
【0089】
工程(2c)
水素ガスを微細気泡として分散させた原料組成物を、アルミ製パウチに抜き出して充填及び密閉した。
【0090】
工程(3c)
このアルミ製パウチを直ちに5℃水中に浸漬して、冷却凝固させて、水素ガスを含有させたゲル状組成物(「水素ガス高濃度含有基材−6」)を得た。
【0091】
<評価>
(1)「水素ガス高濃度含有基材−6」の水素含有量測定
「水素ガス高濃度含有基材−6」の水素ガス含有量を実施例1と同様にしてGC分析法で測定したところ、7.3vol%と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0092】
<実施例7>「水素ガス高濃度含有基材−7」の作製
実施例1において、用いた原料組成物を「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」から、「表2の実施例7の原料組成物(ゼラチン及び寒天水溶液)」に変更した以外は、実施例1と同様にして「水素ガス高濃度含有基材−7」を作製した。
「水素ガス高濃度含有基材−7」の水素ガス含有量を測定したところ、GC法で10.0vol%と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0093】
<実施例8>「水素ガス高濃度含有基材−8」の作製
実施例1において、用いた原料組成物を「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」から、「表2の実施例8の原料組成物(カラギーナン水溶液)」に変更した以外は、実施例1と同様にして「水素ガス高濃度含有基材−8」を作製した。
「水素ガス高濃度含有基材−8」の水素ガス含有量を測定したところ、GC法で6.3vol%と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0094】
<実施例9>「水素ガス高濃度含有基材−9」の作製
実施例1において、用いた原料組成物を「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」から、「表2の実施例9の原料組成物(ゼラチン及びカラギーナン水溶液)」に変更した以外は、実施例1と同様にして「水素ガス高濃度含有基材−9」を作製した。
「水素ガス高濃度含有基材−9」の水素ガス含有量を測定したところ、GC法で19.0vol%と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0095】
<実施例10>「水素ガス高濃度含有基材−10」の作製
実施例1において、用いた原料組成物を「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」から、「表2の実施例10の原料組成物(HMペクチン及びグラニュー糖水溶液)」に変更した以外は、実施例1と同様にして「水素ガス高濃度含有基材−10」を作製した。
「水素ガス高濃度含有基材−10」の水素ガス含有量を測定したところ、GC法で6.7vol%と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0096】
<実施例11>「水素ガス高濃度含有基材−11」の作製
実施例1において、用いた原料組成物を「35wt%ゼラチン濃度の原料組成物(ゼラチン水溶液)」から、「表2の実施例11の原料組成物(ゼラチン、HMペクチン、グラニュー糖及びクエン酸水溶液)」に変更した以外は、実施例1と同様にして「水素ガス高濃度含有基材−11」を作製した。
「水素ガス高濃度含有基材−11」の水素ガス含有量を測定したところ、GC法で17.0vol%と水素ガスが高濃度に含有されている結果であった。
【0097】
<参考例>:ナノバブル水素水の飽和溶存水素量
特許文献2(特許第4450863号)の水素ナノバブルを用いた機能性ゼリーの製造方法において、水又は低粘性の液体中で水素ナノバブルを発生させて、これを別の槽に移送し、ゲル化剤を添加してゲル化することによって機能性ゼリーを得る方法が記載されているが、水素ナノバブル水中の水素濃度及び製品の機能性ゼリー中の水素濃度の記載が無く、不明である。そこで、発明者らは水素ナノバブルの水中飽和濃度を求めるべく、以下の検証を行った。
【0098】
500mlガラス瓶に超純水500mlを入れて、これとナノバルブ発生装置(超微細気泡発生装置:アスプ社製AMB3型)とをポンプ循環し、ナノバブル発生装置に水素ガスを導入して水素ナノバブルを発生はせながらポンプ循環を継続した。循環水を時間経時でサンプリングして超純水中のナノバブル水素量を、ガスクロマトグラフ分析法で測定した。尚、ナノバブル発生装置ではマイクロバブル水素も混在して白濁水となるため、サンプリング液を数分静置してマイクロバブル水素が気相揮散した透明液をナノバブル水素水としてGC分析機へ注入して測定を行った。結果を図7に示す。
【0099】
水中の水素ナノバブル含有量は、超純水中に水素ナノバブルを導入し始めて約30分後に飽和保持量に達しており、その濃度は約4.2ppm(w/v)であることが判明した。
この濃度は、容量/重量%(vol%)に換算すると「4.9vol%,10℃」となり、本発明の機能性ガス高濃度含有基材における水素ガスの場合の含有量よりも、遙かに低いレベルである。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のガス含有基材は、機能性ガスを高濃度に保持できるので、食品、化粧品、医療、細胞培養等の様々な用途に適応できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7