(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、外装部材の裏面側にはパネルの強度を高めるためのリブや、基板、種々の部材を固定するためのボス等が多数設けられている。こうした凹凸の多い外装部材の裏面側にセンサシートを貼り付けようとすると、センサシートが撓み易いという不都合がある。そのため、国際公開WO2011/142332号公報(特許文献1)に記載の技術のように、センサシートを外装部材に両面テープ等で貼り付ける場合には、これらの凹凸を避けながら貼り付ける必要があり、作業性が悪いという課題があった。
【0005】
また、こうした外装部材と一体となったセンサシートは、外装部材からセンサシートを剥がすことが困難であるため、外装部材またはセンサシートの何れかに不具合が見つかった場合でもこれら全体を交換する必要があった。
【0006】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものである。すなわち、センサシートを外装部材に精度よく簡単に取付けることができる技術を提供することを目的とする。また、センサシートと外装部材とを分離させ易い技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明は、以下のように構成される。
【0008】
即ち、外装部材と、センサ電極を有し外装部材の裏面側に設けられるセンサシートと、センサシートを外装部材に密着させて保持する取付板と、を備えるセンサシート含有外装品であって、取付板は、外装部材の裏面形状に対応する表面形状を有し外装部材と係合するものであり、取付板とセンサシートの間に取付板の表面形状に沿ってセンサシートを取付板に固定するセンサシート固定手段を有するセンサシート含有外装品(以下、単に「外装品」ともいう)を提供する。
【0009】
また、センサ電極を有し外装部材の裏面側に設けられるセンサシートと、センサシートを外装部材に密着させて保持する取付板とからなり、外装部材に取付けて利用するセンサシートユニットであって、取付板は、外装部材の裏面形状に対応する表面形状を有し外装部材と係合するものであり、取付板とセンサシートの間に取付板の表面形状に沿ってセンサシートを取付板に固定するセンサシート固定手段を有するセンサシートユニットを提供する。
【0010】
本発明によれば、家電やオーディオ機器、自動車搭載機器等の種々の電子機器に用いられるセンサシートを備えるため、センサ電極を間接的に触れることで静電容量変化を検知するタッチセンサとして利用することができる。また、そのセンサシートの表面側に外装部材を備えるため、この外装部品をセンサシートを保護する筐体として機能させ、また種々のデザインを外装部品に付与することができる。
【0011】
取付板とセンサシートの間に取付板の表面形状に沿ってセンサシートを取付板に固定するセンサシート固定手段を設けたため、薄いシート状のセンサシートであっても取付板の表面形状に沿った形状でセンサシートを取付板に固定することができる。そして、取付板は、外装部材の裏面形状に対応する表面形状を有するため、外装部材と取付板とを貼り合わせれば外装部材と取付板とが係合し、その間にあるセンサシートを外装部材と取付板に密着させることができる。また、取付板を外装部材に取り付けることがそのままセンサシートを外装部材に取り付けることになり、センサシートの取付け作業が容易である。
【0012】
ここで“外装部材の裏面形状に対応する表面形状”とは、取付板の表面形状が外装部材の裏面形状と面どうしが重なり合う形状であることを意味するが、面どうしが完全に一致する形状であることまでは要求されず、それらの何れか又は双方にわずかな段差や隙間があっても良い。要するに取付板がその面形状によってセンサシートを外装部材の裏面に沿わせて保持することができれば良い。また、“表面”とは外装品の操作面側の面であり、 “裏面”とは外装品の操作面とは反対面側の面である。
【0013】
取付板には外装部材に対して着脱可能な着脱手段を設けることができる。取付板に外装部材に対して着脱可能な着脱手段を設けたため、外装部材と取付板とを分離することができる。そのため、外装部材やセンサシートに不具合が生じた場合でも外装品の全体を取り替えずに不具合が生じた外装部材やセンサシートを部分的に修理することができる。そして、センサシートと取付板とを一体としたセンサシートユニットを形成したため、外装部材へのセンサシートの取付けを簡単で正確に行うことができる。
【0014】
外装部材とセンサシートの間に第1弾性部材を備えることができる。取付板の表面が外装部材の裏面形状に対応する形状であっても、外装部材の裏面に加飾層を設けることで加飾層の境界に段差が生じたり、成形型のパーティングに起因する段差が生じたりすることがある。しかしながら、第1弾性部材を備えることで、僅かな段差であっても第1弾性部材が柔軟に変形してその段差に追従することができるため、外装部材とセンサシートとを密着させることができる。即ち、第1弾性部材を備えないと、空気層を完全に排除することが困難な場合があり、空気層の影響で感度が低下し得るが、第1弾性部材を備えることでセンサシートを外装部材に密着させることができ空気層を排除することができる。したがって、センサ感度への悪影響を防止することができる。
【0015】
第1弾性部材の厚みが50μm以上700μm以下であるものとすることができる。第1弾性部材の厚みが50μm以上であれば、圧縮変形のための十分な厚みを確保できるため、取付時には設計公差を確実に吸収することができる。そして、厚みが700μm以下であれば弾性部材による厚み増加に起因する感度の低下も少ないため、接触検知に不具合が生じるおそれがほとんどない。また、その厚みは250μm以下とすることがより好ましい。第1弾性部材を備えると、外装部材の表面からセンサシートまでの距離が離れるが、第1弾性部材の厚みが250μm以下であれば、その距離の増加による感度低下よりも、第1弾性部材が存在しないことによる空気層の悪影響を排除する効果を高めることができ、第1弾性部材を備えない場合よりも感度を高めることができるからである。
【0016】
センサシートと取付板の間に第2弾性部材を備えるセンサシート含有外装品とすることができる。第2弾性部材を有すると、第2弾性部材が圧縮変形しながらセンサシートを外装部材に対して圧接することができるため、その圧縮変形の範囲において、寸法誤差を吸収することができる。
【0017】
さらに、外装部材と、センサ電極を有し外装部材の裏面に設けられるセンサシートと、センサシートを外装部材に密着させて保持する取付板と、を備えるセンサシート含有外装品の製造方法であって、外装部材の裏面形状に対応する表面形状を有する取付板に対し、取付板の表面形状に沿ってセンサシートを固定するセンサシート固定手段を通じてセンサシートを固定し、次に、センサシートを固定した取付板の表面を外装部材の裏面に係合させるセンサシート含有外装品の製造方法を提供する。
【0018】
外装部材の裏面形状に対応する表面形状を有する取付板に対し、取付板の表面形状に沿ってセンサシートを固定するセンサシート固定手段を通じてセンサシートを固定したため、平板状のセンサシートであっても取付板の表面形状に沿った形状でセンサシートを取付板に固定することができる。そして、取付板は、外装部材の裏面形状に対応する表面形状を有するため、次に、センサシートを固定した取付板の表面を外装部材の裏面に係合させれば、その間にあるセンサシートを外装部材と取付板に密着させることができる。また、取付板を外装部材に取り付けることがそのままセンサシートを外装部材に取り付けることになり、センサシートの取付け作業が容易である。
【0019】
さらに本発明は、電子機器の筐体と、センサ電極を有するセンサシートと、前記センサシートを前記筐体の裏面に保持した状態で、前記センサシートを前記筐体の裏面に沿わせて保持する取付板と、前記センサシートを前記取付板に固定するセンサシート固定手段とを備えるセンサシート含有電子機器用筐体を提供する。
【0020】
前記取付板は、前記センサシートを前記裏面に向けて圧接可能な状態で前記裏面に対して取付けられるように構成できる。
【0021】
前記筐体は、操作面を有し、ドーム状に湾曲した前面板を有するように構成できる。
【0022】
さらにまた、本発明は、センサシートを外装部材の裏面に保持するセンサシート用の取付板であって、前記裏面に取付けた状態で、前記センサシートを前記裏面に沿わせて保持するセンサシート用の取付板を提供する。
【0023】
前記取付板は、前記センサシートを前記裏面に向けて圧接可能な状態で前記裏面に対して取付けられるように構成できる。
【0024】
前記取付板は、前記裏面に対して着脱可能な着脱手段を有するように構成できる。
【0025】
前記取付板は、外装部材の裏面形状に対応する表面形状を有するように構成できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のセンサシート含有外装品、センサシート含有電子機器用筐体、センサシート用の取付板およびセンサシートユニットによれば、簡単に製造できるため単価を安くすることができる。また、外装部材とセンサシートとを簡単に分離することができ、部分的な修理が容易である。
【0027】
本発明のセンサシート含有外装品の製造方法によれば、センサシートを外装部材に精度よく簡単に取付けることができる。そのため、歩留まりが良く、安価にセンサシート含有外装品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明について以下に示す実施形態に基づきさらに詳細に説明する。なお、各実施形態で共通する部材については、同一の符号を付して重複説明を省略する。また、共通する材質、作用、効果等についても重複説明を省略する。
【0031】
本実施形態は、電子機器の前面に配置されるパネルとしての外装品11を例示する。外装品11は、
図1で示すように、「筐体」としての外装部材12と、外装部材12の裏面側に位置するセンサシート13と、センサシート13の裏面側に位置する取付板14とを備えている。即ち、センサシート13は、取付板14を外装部材12の裏面に取付けた状態で、センサシート13を外装部材12の裏面に沿わせて保持されている。
【0032】
外装部材12は、透明性のある硬質樹脂または不透明な硬質樹脂で形成され、ここでは、操作面となる前面板12dがドーム状に湾曲した外形を有し、1つの表示部12aと11個のセンサ領域12bを備えている。外装部材12の裏面12eには、
図2で示すように、前面板12dの表面12fに沿った形状に凹んだ裏面12eを有し、センサ領域12bと重ならない部分に取付板14との着脱を行う嵌合凸部12cが形成されている。
【0033】
表面12fの表示部12aは、各種表示を行う部位であり照光機能を備えるような場合には外装部材12を透明性のある樹脂で形成することが好ましい。表面12fの複数のセンサ領域12bは、前面板12dの操作面となるセンシング領域であり、センサシート13のセンサ電極13aに対応する部位である。各センサ領域12bは、センサ領域12b全体の感度を均一にするため均一の厚みとすることが好ましい。また、センサ感度を良くするため、センサ領域12bの厚みは、外装部材12が筐体として機能する場合の強度に不都合が生じない範囲で薄い方が好ましい。センサ領域12bとその周囲の縁の部分で厚みが異なっていても、外装部材12の裏面12eは段差が無く平坦な面としていることが好ましい。センサシート13が貼り合わされた際に無用な空隙が形成され感度に悪影響を及ぼすことを避けるためである。
【0034】
センサ領域12bの厚みは、より具体的には1mm〜3mmとすることが好ましい。厚みが1mm未満では、筐体としての強度が不十分となるおそれがあり、厚みが3mmを超えるとセンサ感度が悪くなるおそれがあるためである。センサ領域12bの周囲の縁の部分の厚みは、センサ感度とは関係なく、外装品11のデザインに応じて適当な厚みとすることができる。
【0035】
嵌合凸部12cは、取付板14に設けた嵌合受け部14aと嵌合する着脱自在な固定構造である。嵌合凸部12cと嵌合受け部14aとの具体的な組合せには、スナップフィットやボスとネジ、凹部とその凹部に圧入する突起、ひと組の磁石などの組合せを挙げることができる。嵌合凸部12cが取付板14の嵌合受け部14aと嵌合することで、外装部材12と取付板14とが係合状態で安定し、外装部材12に取付板14とセンサシート13が固定される。
【0036】
センサシート13は、全体的には
図3で示すように薄いシート状をなし、平面で見ると
図1で示すように外装部材12のセンサ領域12bと対応する箇所にセンサ電極13aを有している。各センサ電極13aは、そこから配線13bが延び、配線13bの他端は端子部13cに通じている。配線13bから端子部13cにかけて取付板14よりも外側にはみ出る突出部分が存在するが、基板等に接続させるために予め折り曲げておくこととしてもよい。
【0037】
センサシート13を断面で見ると、フィルム基材をベースとし、その表面側にセンサ電極13a、レジスト層(図示せず)が積層している。また、センサシート13の裏面にはその全面にセンサシート固定手段としての粘着層16を設けることができる。
【0038】
レジスト層は、薄膜で構成することが好ましい。薄い方が外装部材12とセンサ電極13aとの距離を短くできセンサ感度を高く保持することができるからである。また、ここではセンサシート13の裏面側全体に粘着層16を備えたため、取付板14の表面との間に多少の段差があってもその影響が少なく、気泡の混入を防止して取付板14にセンサシート13を密着させ易い。なお、粘着層16に変えて、ホットメルト接着剤を含む種々の接着剤層や、熱溶着を可能とする熱溶着層等とすることができる。また、粘着層16等の配置は、センサシート13の裏面全面である場合の他、外周縁に設けるなど部分的に設けることもできるが、取付板14との間で段差が生じる部位には粘着層16等を設けることが好ましい。
【0039】
取付板14は、
図3で示すように、外装部材12の裏面形状に対応する表面形状を有し外装部材12と係合することでセンサシート13を外装部材12に密着させて保持する機能を奏する部材である。
【0040】
取付板14には、外装部材12の嵌合凸部12cと着脱自在に嵌合する嵌合受け部14aが設けられている。この嵌合受け部14aは、外装部材12に対して着脱可能な着脱手段である。この嵌合受け部14aが嵌合凸部12cと嵌合することにより、取付板14の表面に固着されたセンサシート13が外装部材12の裏面12eに圧接された状態で外装部材12に密着固定される。
【0041】
取付板14は、硬質樹脂で形成する。外装部材12と同じ硬質樹脂にしても良く、また比較的硬質のゴムやエラストマーを用いることができる。より具体的にはJIS K6253規定のD硬度で、D60以上の硬さであることが好ましい。D60未満では取付板14が容易に変形し、取付位置などの精度が不十分となるおそれがあるためである。なお、ゴム材料やエラストマーを用いる場合には、所定の撓み代を設けて、外装部材12へ圧接する構成とすることが好ましい。
【0042】
外装品11を組み立てるには、
図4で示すように、まず取付板14の表面にセンサシート13の裏面を粘着層16を通じて固定し、センサシート13と取付板14とが一体となったセンサシートユニット15を形成する。センサシート13の取付板14への取付けは、ドーム状に隆起した取付板14の表面へ取り付けるので、操作が容易である。これは、凹形状となっている外装部材12の内側へセンサシート13を固定するよりも操作が容易である。センサシート13は、取付板14に取り付ける際にその表面に沿って曲げられることができるが、取り付ける前に取付板14の表面や外装部材12の裏面12eに沿う形状に予め変形させておいてもよい。
【0043】
次に、センサシートユニット15を外装部材12に取り付ける。この取付けは、センサシートユニット15に設けた嵌合受け部14aを外装部材12の嵌合凸部12cに差し込むだけでよい。この場合、すでにセンサシート13は取付板14に固定されているため、取付板14の取付け工程でセンサシート13が傾いたり、ずれたりすることがない。また、外装部材12の裏面形状と取付板14の表面形状が対応するため、外装部材12と取付板14との間に挟まれたセンサシート13はその両者の間に密着されて固定される。
【0044】
また、外装部材12への取付板14の固定は、着脱自在の嵌合凸部12cと嵌合受け部14aとの嵌合によってなされるため、外装部材12と取付板14との分離が容易である。そのため、外装部材12やセンサシート13に不具合が見つかったときは、それらを分離して一方のみを交換することができる。
【0046】
本実施形態の外装品21は、センサシート13の表面側に第1弾性部材27を備えている点で、前記実施形態で示した外装品11と異なる。第1弾性部材27は、センサシート13と外装部材12との間での密着性をより高めるための部材である。
【0047】
第1弾性部材27は、センサシート13の表面側に設けられており、好ましくは、平面視でセンサ領域12bやセンサ電極13aよりも大きな外形をしている。センサ領域12bの裏面全体とセンサシート13のセンサ領域13aの表面全体とを密着させることが好ましいからである。第1弾性部材27はセンサシート13の表面全面に設けてもよいが、センサ領域12bに対応した箇所に個別に設ける方が好ましい。その理由は、個別に設けた方が第1弾性部材27が圧縮変形し易く、圧縮荷重を小さくできるからである。
【0048】
第1弾性部材27の厚みは、50μm〜700μmとすることが好ましい。50μm未満であると、取付けの設計公差を吸収することができないおそれがある。一方、700μmを超えると感度が悪くなり、接触検知に不具合が生じるおそれがある。また厚みは250μm以下であることがより好ましい。250μm以下であれば、第1弾性部材27を用いない場合よりも感度を高めやすいからである。
【0049】
第1弾性部材27は、柔軟なゴムまたはエラストマー、スポンジ等の発泡体で形成することができる。特に外装部材12の裏面12eに凹凸があっても、その凹凸に追従して密着できるようにするためである。また、繰り返し使用しても破損し難い材質が好ましい。
【0050】
このような機能を有する材質としては、天然ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴム等の架橋ゴムや、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水添ポリマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水添ポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの中でも、発泡体の誘電率は低いため、ゴムまたはエラストマー材料を用いることが好ましい。また、耐熱性、耐候性、柔軟性の観点からシリコーンゴムが好適である。また、耐久性と密着性の観点からはポリウレタン系熱可塑性エラストマーや樹脂やウレタンゴムも好適である。
【0051】
第1弾性部材27の硬さは、JIS K6253で規定されるA硬度でA60以下であることが好ましい。硬さがA60を超えると圧縮荷重が大きくなり、外装部材12に歪みが発生するおそれがあることや、被着面に凹凸があったときに凹凸への追従性が不十分となるおそれがあるためである。
【0052】
センサ領域12bに透明性が要求されない場合には、第1弾性部材27には、例えばチタン酸バリウムの微粉末などの誘電率を高める充填材(誘電体フィラー)を添加することができる。そうすることで、センサの感度を高めることができる。また、第1弾性部材27の厚みが厚い場合であっても、センサの感度が低下し難い外装品21とすることができる。
【0053】
外装品21では、外装部材12とセンサシート13の間に第1弾性部材27を備えるため、外装部材12の裏面12eに段差があっても、第1弾性部材27が柔軟に変形してその段差に追従することができ、空気層の発生を抑えることができる。したがって、外装部材12の裏面12eに段差があっても、空気層に起因するセンサの感度のばらつき等の影響を抑止することができる。
【0055】
本実施形態の外装品31は、センサシート13の裏面側に弾性材料でなる第2弾性部材38を備えている点で先の実施形態で示した外装品11と異なる。第2弾性部材38もまた、センサシート13と外装部材12との間での密着性をより高めるための部材である。
【0056】
第2弾性部材38は、センサシート13の裏面または取付板14の表面に固着して設けることができる。好ましくは、平面視でセンサ領域12bやセンサ電極13aよりも大きな外形としている。センサ領域12bの裏面全体とセンサシート13のセンサ領域13aの表面全体とを密着させることが好ましいからである。また、第2弾性部材38はセンサシート13の裏面全面に設けてもよいが、センサ領域12bに対応した箇所に個別に設ける方が好ましい。その理由は、センサ領域12bのみに荷重を集中させることができ、センサ領域12bの裏面に確実にセンサ電極13aを圧接することができるためである。
【0057】
第2弾性部材38としては、高分子弾性材で形成することができ、第2実施形態の第1弾性部材27と同じ材質とすることができる。第2弾性部材38の厚みは0.2mm〜2mmとすることが好ましい。0.2mm未満であると、取付の設計公差を吸収することができないおそれがある。一方、2mmを超えても設計公差の吸収や取付作業性は変わらないため、無駄に厚くなるからである。
【0058】
外装品31は、取付板14とセンサシート13の間に第2弾性部材38を備えることとしたため、第2弾性部材38が圧縮変形しながらセンサシート13を圧接することができ、その圧縮変形の範囲において、外装部材12や取付板14の寸法精度の誤差を吸収することができる。
【0060】
第2弾性部材38の変形例として、弾性材料に変えて板バネ38bを用いることができる。この板バネ38bは取付板14から連続しており、平面視ではコ字状のスリットにより形成されている。板バネ38bを有する外装品31aを
図7に示す。
【0061】
第2弾性部材38を板バネ38bで構成しても、第2弾性部材38が圧縮変形しながらセンサシート13を圧接することができる。そのため、その圧縮変形の範囲において、外装部材12や取付板14の寸法精度の誤差を吸収することができる。
【0062】
板バネ38bを設けるときは、取付板14としてバネ弾性のある樹脂を用いることが好ましい。より具体的には、ポリカーボネート樹脂やポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、JIS K6253で規定されるA硬度でA60を超える比較的の硬質のゴムまたはエラストマーが挙げられる。
【0064】
前記各実施形態の特徴的な構成は、不具合のない範囲で変更し他の実施形態で示した構成等と組合せることができる。例えば、第1弾性部材と第2弾性部材の両方を備える外装品としてもよい。
【0065】
第1弾性部材と第2弾性部材を備える外装品については、それぞれ第2実施形態における第1弾性部材27および第3実施形態における第2弾性部材38と同じとすることもできるが、第1弾性部材27の厚みは、第2弾性部材38の厚みよりも薄くすることが好ましい。第1弾性部材27の厚みを薄くすることで、外装部材12の表面12fからセンサ電極13aまでの距離を短くしてセンサ感度を高めるとともに、第2弾性部材38の厚みに余裕を持たせて、その圧縮変形の範囲において、寸法精度の誤差を吸収することができるからである。
【0066】
第1弾性部材27と第2弾性部材38とを設ける場合には、第1弾性部材27の硬さは、第2弾性部材38の硬さよりも柔らかいことが好ましい。こうした構成とすれば、第1弾性部材27は第2弾性部材38よりも圧縮されて、外装部材12の裏面形状への追従性を高めることができる。そして、外装部材12からセンサ電極13aまでの距離を短くしてセンサ感度を高めることができる。
【0067】
また、第2弾性部材38の外形は第1弾性部材27の外形よりも大きくすることが好ましい。第2弾性部材38が第1弾性部材27よりも小さいと、第1弾性部材27の圧接が不均一となり、センサ感度がばらつくおそれがあるためである。
【0068】
センサシート13と取付板14とを固着する粘着層は、センサシート13に設ける例を説明したが、そうした例に変えて、取付板14の表面に設けることができる。取付板14の表面に設けても、その表面形状に沿ってセンサシート13を固着することができ、ひいてはセンサシート13と外装部材12の密着をさせることができるからである。
【実施例】
【0069】
外装部材として、厚み2mmのポリカーボネート樹脂製で一方端が開放された箱状の部材を準備した。この外装部材の他方端は表面、裏面ともに平坦に形成されている。また、取付板として、厚み2mmの平坦なポリカーボネート樹脂板を準備した。この取付板は、外装部材の裏面形状に対応する表面形状を有し、外装部材の他方端側(裏面側)から係合させることができる。さらに、厚み100μmの透明なPETフィルムに、透明導電性インキでセンサ電極を形成し、さらに銀インキを用いて配線を形成し、ポリウレタン系樹脂インキでレジスト層を形成したセンサシートを準備した。以下、各実験例について個別に説明する。
【0070】
<実験例1> センサシートの表面に厚み50μmの両面テープを貼付して、外装部材の裏面にセンサシートを貼り付け、試料1となる外装品を得た。この外装品は従来からの製造方法による従来例の外装品である。取付板は有していない。
【0071】
<実験例2> センサシートの表面に第1弾性部材として厚み100μmのシリコーンゴム層(上部弾性部材A)を一体成形した。この第1弾性部材を備えたセンサシートを両面テープで取付板に固定してから、取付板を外装部材の裏面に係合させ、センサシートを外装部材の裏面に圧接した。こうして試料2となる外装品を得た。
【0072】
<実験例3〜6> 第1弾性部材の厚みを変更した以外は、実験例2と同じ方法で試料3〜試料6となる各外装品を得た。
【0073】
<実験例7> センサシートには第1弾性部材を設けず、センサシートの表面が外装部材の裏面に直接接するようにした以外は実験例2と同様とした。こうして試料7となる外装品を得た。
【0074】
<実験例8> 第1弾性部材としてスポンジシート(第1弾性部材B)を準備し、厚み50μmの両面テープでセンサシートの表面に前記スポンジシートを貼り付けた。それ以外は、実験例2と同じ方法で試料8となる外装品を得た。
【0075】
こうして得られた実験例1〜実験例8の各外装品について、リペア性およびセンサ感度を評価した。これらの各構成および評価を表1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
リペア性: 外装部材から取付板を取り外し易いか否かについてリペア性として評価した。リペア性は、外装部材から取付板を取り外す際の取り外しやすさを感覚に基づいて、「取り外し易い」を“○”、「取り外し難い」を “×”の両者に単純に分けることで評価した。
【0078】
センサ感度: 前記各実験例の外装品について、端子をPSoC IC(サイプレス社製マイコン CY8C24894)に接続して感度(Diff)を測定した。PSoC ICのパラメータ設定は、Resolution(分解能)を13bit(8192)、Ref Valueを4、Rb抵抗を3.3KΩとした。感度(Diff)は、直径6mmの円柱形状の導電ゴムからなる測定子(押し子;指の代わり)をセンサ電極の中央に押し当てて、その押し当てる前後の静電容量の変化量を測定し求めた。また、感度(%)は、実験例1の「感度(Diff)」を100としたときの相対値を示した。
【0079】
性質評価: リペア性については、実験例1の外装品は外装部材からセンサシートを取り外すことが困難であったが、実験例2〜8の外装品については、外装部材とセンサシートとを容易に分離できた。
【0080】
センサ感度については、まず、取付板を用いた実験例2〜実験例8の全ての試料で対象とする従来例の実験例1よりも低下していた。センサ感度は、外装部材の表面からセンサシートまでの距離や外装部材とセンサシート間の材質に依存するが、実験例1では、実験例2〜6、8と比較して、第1弾性部材よりも薄い50μmの両面テープを用いていることから、センサシートまでの距離が近いことが影響したものと思われる。また、実験例7では、その距離は近いものの、外装部材とセンサシートの密着性悪化による空気層の存在が影響したものと思われる。
【0081】
次に、取付板を用いた実験例2〜実験例8の各試料を比較してみると、第1弾性部材を用いない実験例7で感度(%)が91.6%であったのに対して、実験例3では92.1%、実験例2では98%であり、第1弾性部材の厚みが250μm以下であれば、弾性部材を設けない場合よりも感度を高めることができることがわかった。また、実験例2〜実験例6を比較すると、第1弾性部材の厚みは薄いほどセンサの感度が良いことがわかった。
【0082】
第1弾性部材にスポンジシートを用いた実験例8は、同じ厚みのシリコーンゴム製の第1弾性部材を備えた実験例4より感度が低かった。スポンジシートは、内包する空気の影響で誘電率が低いため、感度の低下が大きかったものと思われる。したがって、第1弾性部材は誘電率の高い材質であることが好ましいことがわかった。
【0083】
なお、誤動作の抑制や動作の安定性の観点から、感度は高いほど好ましいが、従来の構成に対して感度が概ね50%以上であればよく、75%以上であることがより好ましい。感度が50%よりも悪くなるとノイズの影響を受けやすく、誤動作が懸念されるためである。実験例より弾性部材の厚みは700μm以下であることが好ましいことがわかった。