【実施例】
【0013】
本発明の一実施形態である空気調和機はダクト型空気調和機であり、その室内機1は、
図6に示すように建屋天井面110と室内天井面140の間の空間に設置される。具体的には、一端が建屋天井面110に固定された吊下ボルト120の他端に室内機1の後述する天板11に取り付けた取付金具130を固定して吊り下げて設置される。室内機1は、屋外に配置された図示しない室外機と冷媒配管で接続されており、室外機と室内機1の間で冷媒を循環させて室内機1が設置された空調室の空気調和を行う。
【0014】
図1(A)に示すように、室内機1は、各々が鋼板で形成された天板11、底板12、前面板13、背面板14、右側板15、および左側板16で横長の直方体状に形成された筐体10を有している。尚、以降の説明では、筐体10における前面板13が配置されている方向を前方、背面板14が配置されている方向を後方、天板11が配置されている方向を上方、底板12が配置されている方向を下方、右側板15が配置されている方向を右方、左側板16が配置されている方向を左方とし、室内機1を構成する各部品においても同様の方向で説明する。
【0015】
図1(B)に示すように、筐体10の内部には、室外機の図示しない圧縮機から吐出された冷媒と室内機1が設置された空調室の空気を熱交換させる熱交換器30と、熱交換器30に空調室の空気を送風する2台のシロッコファン20が収容されている。
【0016】
筐体10の背面板14には、筐体10の内部に空気を取り込むための筐体吸込口14aが設けられている。筐体10の前面板13には、筐体10の内部から空気を吹き出すための筐体吹出口13aが設けられている。
図6に示すように、筐体吸込口14aは吸込ダクト160を介して室内天井面140に設けられた吸込グリル170に接続される。また、筐体吹出口13aは吹出ダクト190を介して室内天井面140に設けられた吹出グリル200に接続される。
【0017】
図1(B)に示すように、筐体10の内部には、筐体吸込口14a(筐体10の内部の空気の流れにおける上流側)から筐体吹出口13a(同じく下流側)へと向かう方向に、2台のシロッコファン20、熱交換器30が順に配置されている。2台のシロッコファン20と熱交換器30の間には、天板11と底板12に固定される仕切板17が設けられており、筐体10の内部は仕切板17によってシロッコファン20を収容する送風機室80と、熱交換器30を収容する熱交換器室90に区分けされている。
【0018】
熱交換器30は、左右方向の長さが筐体吹出口13aの横幅と略等しい平板状の2枚の熱交換部が側面視でくの字状に組み合わせて連結されている。これにより平板状の熱交換器を縦置きや斜めに配置する場合と比べて、熱交換器30の高さ寸法や奥行寸法を小さく抑えるとともに、室内機1で要求される空調能力を発揮するために必要な熱交換器の面積を確保している。
尚、熱交換器室90における熱交換器30の下方には、発泡スチロールで形成され熱交換器30で発生した凝縮水を受けるドレンパン70が配置されている。
【0019】
図2および
図3に示すように、シロッコファン20は、多数の羽根を備えた筒状の羽根車23と、羽根車23を収容する渦巻状のケーシング20fと、羽根車23の中心に連結されるモータシャフト55を有するモータ50を備える。モータ50は、
図5に示すように仕切板17に固定されたモータブラケット60に取り付けられて2台のシロッコファン20の間に配置され、モータ50の両側から左右に突出したモータシャフト55を回転させることで2台のシロッコファン20の各羽根車23を回転させる。尚、2台のシロッコファンは同じ構成を有するものである。
【0020】
図2乃至
図4に示すように、ケーシング20fは、ケーシング20fの上部を構成する第1ケーシング21と、ケーシング20fの下部を構成する第2ケーシング22とからなる。第1ケーシング21は、ケース上面21cとケース側面21bで形成される。ケース上面21cは、平面状に形成されて前方に配置される上面部21caと、上面部21caから後方に向かって連続し円周の略4分の1の円弧形状に形成される上方円弧部21cbからなる。ケース側面21bはケース上面21cの左右側端を覆い、後述する第2ケーシング22の舌片部22gより前方が前方側面部21baとなっているとともに、羽根車23の回転軸を中心とし下方に開いた半円形状の第1切欠部21fを備える。尚、前方側面部21baの形状については、後に詳細に説明する。
【0021】
第2ケーシング22は、ケース下面22bとケース側面22fで形成される。ケース下面22bは、羽根車23の前端に最も近接する位置に舌片部22gを備え、舌片部22gから前方に向かって下方に傾斜し平面状に形成された下面部22baと、舌片部22gから後方に半円弧形状に形成された下方円弧部22bbからなる。ケース側面22fは下方円弧部22bbの左右側端を覆い、羽根車23の回転軸を中心とし上方に開いた半円形状の第2切欠部22eを備える。
【0022】
第1ケーシング21と第2ケーシング22を合わせてケーシング20fを組み立てると、ケーシング20fの左右側面には、第1ケーシング21の第1切欠部21fと第2ケーシング22の第2切欠部22eで円形状の吸込口20aが形成される。また、ケーシング20fの前方には、第1ケーシング21の上面部21caのうち第2ケーシング22の舌片部22gより前方の部分(
図2(A)および
図4(A)における破線より前方の部分)である前方上面部21caaおよび左右の前方側面部21baと第2ケーシング22の下面部22baで囲まれた吹出部20bが形成され、吹出部20bの前方の開口端が吹出口20baとなる。また、吹出部20bの周囲には、シロッコファン20を仕切板17に固定するためのフランジ21gが設けられる。
【0023】
そして、吸込口20aと吹出口20baを連通する空間が、
図2(B)に示す空気流路20eとなる。空気流路20eは、舌片部22gから吹出口20baに向かうにつれて羽根車23とケース下面22bおよびケース上面21cとの間隔が徐々に大きくなるように形成されている。
【0024】
モータ50の駆動により羽根車23が
図2(B)に示す矢印Qの方向に回転すると、吸込口20aから空気流路20eに吸い込まれた空気が矢印Pで示すように空気流路20eを流れて、吹出口20baから外部に吹き出される。このとき、第1ケーシング21のケース上面21cに近い箇所を流れる空気の量が最も多く、羽根車23の近傍を流れる空気の量はケース上面21cに近い箇所を流れる空気の量に比べて少なくなる。尚、
図2(B)では、流れる空気の量の違いを矢印の太さで示しており、矢印の太さが細くなる程流れる空気の量が少ないことを示している。
【0025】
図1(B)および
図5に示すように、仕切板17には2つの連通穴17aが設けられている。仕切板17にシロッコファン20を固定するときは、連通穴17aの外周部にシロッコファン20のケーシング20fのフランジ部21gが突き当てて固定する。これにより吹出口20baが熱交換器室90に露出するので、シロッコファン20の吹出口20baから吹き出された空気が熱交換器室90へと吹き出される。
【0026】
次に、
図3乃至
図5を用いて、シロッコファン20の組み立てと送風機室80への取り付けについて説明する。まず、モータブラケット60を仕切板17に固定し、モータブラケット60にモータ50を取り付ける。次に、2個の羽根車23のそれぞれの回転中心にモータ50の左右のモータシャフト55のそれぞれを接続する。次に、羽根車23を第2ケーシング22に収容した後第2ケーシング22に第1ケーシング21を組み合わせる。次に、上述したように仕切板17の連通穴17aの外周部にシロッコファン20のケーシング20fのフランジ部21gが突き当てて、ケーシング20fを仕切板17に固定する。そして、モータ50およびシロッコファン20が取り付けられた仕切板17を、筐体10に固定する。
【0027】
第1ケーシング21と第2ケーシング22を組み付けると、第1ケーシング21のケース側面21bの下端で第1切欠部21fより後方に設けられた第1後方辺縁部21eと、第2ケーシング22のケース側面22fの上端で第2切欠部22eより後方に設けられた第2後方辺縁部22dが突き当たって後方接合部20dとなる。これら第1後方辺縁部21eと第2後方辺縁部22dは同じ厚さ寸法に形成されており、第1ケーシング21と第2ケーシング22を組み付けた際に、空気流路20e中の後方接合部20dで段差が生じないようになっている。
【0028】
また、第1ケーシング21と第2ケーシング22を組み付けると、第1ケーシング21のケース側面21bの下端で第1切欠部21fより前方に設けられた左右の前方辺縁部21dが、第2ケーシング22の舌片部22gおよび下面部22baのそれぞれの左右端に設けられた前方接合溝22cに嵌合して前方接合部20cとなる。前方接合溝22cは、前方辺縁部21dの厚さ寸法に対応した凹形状に形成されており、第1ケーシング21と第2ケーシング22を組み付けた際に、吹出口20bにおける前方接合部20cで段差や隙間が生じないようになっている。
【0029】
以上説明したように、第1ケーシング21と第2ケーシング22を組み付けることによって形成される空気流路20eにおいて、第1ケーシング21と第2ケーシング22の後方接合部20dで段差が生じないので、当該接合部が空気流路20eを流れる空気の流れが乱されることがない。また、第1ケーシング21と第2ケーシング22の前方接合部20cが吹出部20bの下端の両隅部に位置し、かつ、前方接合部20cで段差や隙間が生じないので、吹出部20bを流れる空気が前方接合部20cから漏れることがなく、また、前方接合部20cによって吹出口20baから吹き出される空気の流れが乱されることがない。
【0030】
次に、
図2乃至
図5を用いて、ケーシング20fの吹出部20bの一部を構成する側面部と、吹出部20bに設けられる整流板の形状について説明する。
【0031】
まず、第1ケーシング21に設けられ吹出部20bの一部を構成する側面部である前方側面部21baの形状について説明する。左右の前方側面部21baは吹出部20bの左右側面を担うものであり、
図4(A)に示すようにケーシング20fの内部から第1ケーシング21の前端つまりケーシング20fの吹出口20baに向かって徐々に拡開するように円弧形状に形成されている。具体的には、左右の前方側面部21baの前端間寸法H14が、吹出部20b側である後端間寸法H13より大きくなる。
【0032】
そして、第1ケーシング21の上面部21caには、上面部21caから連続して下方に伸びるように形成された整流板が設けられている。尚、第1ケーシング21の上面部21caに設けられる整流板を第1整流板21aとし、後述する第2ケーシング22の下面部22baに設けられる整流板を第2整流板22aとする。第1整流板21aは、左右方向において中心線L1を中心として左右対称に設けられた2枚の整流板からなる。前後方向においては第1整流板21aの前端が第1ケーシング21の前端つまりケーシング20fの吹出口20baに合わせた配置となっている。そして、第1整流板21aは、上述した左右の前方側面部21baと同じ曲率を有するように形成されており、具体的には、2枚の第1整流板21aの前端間寸法H12が、吹出部20b側である後端間寸法H11より大きくなるように形成されている。
【0033】
次に、第2ケーシング22に設けられる整流板について説明する。
図4(B)に示すように、第2ケーシング22の下面部22baには、下面部22baから連続して上方に伸びるように形成された整流板が設けられており、この整流板が上述した第2整流板22aである。第2整流板22aは、左右方向において中心線L2を中心として左右対称に設けられた2枚の整流板からなる。前後方向においては第2整流板22aの前端が第2ケーシング22の前端つまりケーシング20fの吹出口20baに合わせた配置となっている。2枚の第2整流板22aの前端間寸法H22は、吹出部20b側である後端間寸法H21より大きくなるように形成されている。但し、第2整流板22aは第1整流板21aと比べて面積が小さく、また、第2整流板22aの前端間寸法H22と後端間寸法H21との差は、第1整流板21aの前端間寸法H12と後端間寸法H11との差より小さくすることで、第2整流板22aの曲率は第1整流板21aの曲率より小さく形成されている。
【0034】
以上説明したように、第1整流板21aおよび第2整流板22aは各々曲率を持ち、かつ、各々の前端間寸法H12、H22が各々の後端間寸法H11、H21より大きく、つまり、第1整流板21aおよび第2整流板22aはケーシング20fの内部から吹出部20b向かって徐々に広がるように形成されている。従って、射出成型によってケーシング20fを一体形成する場合や、吹出部20bを第1ケーシング21もしくは第2ケーシング22のいずれか一方に形成する場合は、上記のような形状を有する第1整流板21aおよび第2整流板22aを設けると第1整流板21aおよび第2整流板22aが所謂アンダーカット部となるので、成型後に金型からケーシングを取り外すことができないという問題があった。
【0035】
これに対し、本願発明のケーシング20fは、第1ケーシング21と第2ケーシング22で形成され、かつ、第1ケーシング21に備えた前方側面部21baおよび上面部21caと、第2ケーシング22に備えた下面部22baで吹出部20bを形成している。そして、第1ケーシング21の上面部21caに第1整流板21aを設け、第2ケーシング22の下面部22baに第2整流板22aを設けている。従って、上述したアンダーカット部が発生せず、第1ケーシング21を成形する際に第1整流板21aを、第2ケーシング22を成形する際に第2整流板22aを、それぞれ容易に形成することができる。また、前述したように第1整流板21aと第2整流板22aの面積や曲率を異ならせるというように、各々の整流板の形状を自由に形成できる。
【0036】
次に、
図5を用いて、第1整流板21a、前方側面部21ba、および第2整流板22aが、吹出部20bから吹き出される空気の流れに対して奏する効果について説明する。
【0037】
モータ50が駆動されてシロッコファン20の羽根車23が回転すると、空調室の空気が
図6に示す吸込グリル170から吸込ダクト160および筐体10の背面板14に設けられた筐体吸込口14aを介して筐体10の内部の送風機室80に流入する。送風機室80に流入した空気は、シロッコファン20の吸込口20aを介して各空気流路20eに吸い込まれ、空気流路20eから吹出口20baを介して熱交換器室90に吹き出される。
【0038】
吹出口20baから熱交換器室90に吹き出される空気の流れは、
図5の矢印Fに示すように、第1整流板21aおよび前方側面部21baによって左右方向に広がって吹き出される。また、
図5では図示を省略しているが、第2整流板22aによっても空気の流れが左右方向に広がって吹き出される。このように空気の流れが広がることによって、熱交換器30の空気流入面全体に空気が行き渡るようになるので、熱交換器30での熱交換効率が向上する。
熱交換器30を通過する空気は、熱交換器30を流れる冷媒と熱交換を行い、筐体吹出口13aから吹出ダクト190および吹出グリル200を介して空調室に吹き出される。
【0039】
尚、前述したように、第1ケーシング21のケース上面21cに近い箇所を流れる空気の量が最も多く、羽根車23の近傍を流れる空気の量はケース上面21cに近い箇所を流れる空気の量より少ない。本願発明のシロッコファン20では、流れる空気の量が少ない吹出部20bの最下方には、流れる空気の量が多い吹出部20bの最上方に配置されている第1整流板21aよりも曲率や面積の小さい第2整流板22aが配置されている。第2整流板22aの面積や曲率を第1整流板21aと同じとすれば、流れる空気の量が少ない吹出部20bの最下方を流れる空気に対し第2整流板22aが大きな抵抗となって吹出口20baの下方から吹き出される空気の流速が低下して流れが広がらない。そこで、第2整流板22aの面積や曲率を第1整流板21aより小さくすることで、吹出部20bの最上方から吹き出される空気の広がり方と吹出部20bの最下方から吹き出される空気の広がり方が同じとなる。
【0040】
以上説明した実施形態では、吹出部20bの上面部21caおよび下面部22baの両方に整流板を設けた場合について説明したが、流れる空気の量の多い吹出部20bの上方に対応して上面部21caにのみ整流板を設けてもよい。また、第1整流板21aと第2整流板22aは、各々異なる曲率と面積である場合について説明したが、第1整流板21aと第2整流板22aが面積のみ異なり同じ曲率であってもよく、曲率と面積がともに同じであってもよい。また、第1整流板21aの曲率が前方側面板21baの曲率と同じである場合について説明したが、吹出部20bの上方を流れる空気量に応じて第1整流板21aの曲率を前方側面板21baの曲率より大きくあるいは小さくしてもよい。さらには、吹出部20bにおける第1ケーシング21と第2ケーシング22の接合部が吹出部20bの下方の両隅部に位置する場合を説明したが、これに限るものではなく、例えば、吹出部20bにおける第1ケーシング21と第2ケーシング22の接合部が吹出部20bの上方の両隅部に位置する、というように第1ケーシング21と第2ケーシング22の接合部が吹出部20bの隅部にあればよい。
【0041】
尚、本実施形態では、ダクト型空気調和機の室内機においてシロッコファンを備えたものを例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、本願発明は、シロッコファンの風下側に熱交換器を配置した空気調和機に広く適用できる。