(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力側ディスクと、この入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して入力側ディスクから所定の変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するとともに、前記パワーローラを回転自在に支持する少なくとも一対のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在かつ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記各トラニオンの変位により揺動するヨークと、当該ヨークを揺動自在に支持するポストとを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記ポストに設けられたポスト側挿通孔にラジアル軸受が設けられ、このラジアル軸受に、前記ヨークを揺動自在に支持するヨーク支持部材が挿通されることで、当該ヨーク支持部材が回転自在に支持されるとともに、このヨーク支持部材は前記ヨークに設けられたヨーク側挿通孔に挿通され、
前記ポストと前記ヨークとの間の前記ヨーク支持部材の軸方向における隙間に、スラスト軸受が前記ヨーク支持部材と同軸に設けられ、
前記ヨーク支持部材には雄ねじ部が形成され、この雄ねじ部が前記ヨーク側挿通孔に形成された雌ねじ部にねじ込まれていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
入力側ディスクと、この入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して入力側ディスクから所定の変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するとともに、前記パワーローラを回転自在に支持する少なくとも一対のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在かつ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記各トラニオンの変位により揺動するヨークと、当該ヨークを揺動自在に支持するポストとを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記ポストに設けられ、かつラジアル軸受が設けられていないポスト側挿通孔に、前記ヨークを揺動自在に支持するヨーク支持部材が挿通されるとともに、このヨーク支持部材は前記ヨークに設けられたヨーク側挿通孔に挿通され、
前記ポストと前記ヨークとの前記ヨーク支持部材の軸方向における間は、スラスト軸受が設けられていない、微小隙間となっており、
前記ヨーク支持部材には雄ねじ部が形成され、この雄ねじ部が前記ヨーク側挿通孔に形成された雌ねじ部にねじ込まれていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
入力側ディスクと、この入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して入力側ディスクから所定の変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するとともに、前記パワーローラを回転自在に支持する少なくとも一対のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在かつ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記各トラニオンの変位により揺動するヨークと、当該ヨークを揺動自在に支持するポストとを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記ポストに設けられたポスト側挿通孔に、前記ヨークを揺動自在に支持するヨーク支持部材が挿通されるとともに、このヨーク支持部材は前記ヨークに設けられたヨーク側挿通孔に挿通され、
前記ポストに当該ポストの径方向中央部に溝部が前記ポストの軸方向に延在して形成されることで、前記ポストは前記溝部を挟んで前記ヨーク支持部材の軸方向に離間する二つの割れ部を有し、
一方の前記割れ部に一方のポスト側挿通孔が設けられ、他方の前記割れ部に、一方の前記ポスト側挿通孔より小径の他方のポスト側挿通孔が一方の前記ポスト側挿通孔と同軸に設けられ、
一方の前記ポスト側挿通孔の内周面は仕上げ面となっており、他方の前記ポスト側挿通孔には雌ねじ部が形成され、
前記ヨーク支持部材は、本体部と、この本体部の基端部に当該本体部と同軸に設けられて前記本体部より大径の大径部と、前記本体部の先端部に当該本体部と同軸に設けられて前記本体部より小径の雄ねじ部とを備え、
一方の前記ポスト側挿通孔に前記ヨーク支持部材の前記大径部が嵌め込まれ、前記雌ねじ部に前記ヨーク支持部材の前記雄ねじ部がねじ込まれていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
前記ヨーク支持部材は、本体部と、この本体部の基端部に当該本体部と同軸に設けられて前記本体部より大径の大径部と、前記本体部の先端部に当該本体部と同軸に設けられて前記本体部より小径の雄ねじ部とを備え、
前記ヨーク側挿通孔は、前記ヨーク支持部材の軸方向に離間して2つ設けられ、
一方の前記ヨーク側挿通孔に形成された前記雌ねじ部に、前記ヨーク支持部材の前記雄ねじ部がねじ込まれ、他方の前記ヨーク挿通孔に、前記ヨーク支持部材の前記大径部が挿入されていること特徴とする請求項1または2に記載のトロイダル型無段変速機。
前記ヨーク支持部材は、本体部と、この本体部の基端部に当該本体部と同軸に設けられて前記本体部より大径の雄ねじ部と、前記本体部の先端部に当該本体部と同軸に設けられて本体部より小径の小径部とを備え、
前記ヨーク側挿通孔は、前記ヨーク支持部材の軸方向に離間して2つ設けられ、
他方の前記ヨーク側挿通孔に形成された前記雌ねじ部に、前記ヨーク支持部材の前記雄ねじ部がねじ込まれ、一方の前記ヨーク挿通孔に、前記ヨーク支持部材の前記小径部が挿入されていること特徴とする請求項1または2に記載のトロイダル型無段変速機。
入力側ディスクと、この入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して入力側ディスクから所定の変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するとともに、前記パワーローラを回転自在に支持する少なくとも一対のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在かつ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記各トラニオンの変位により揺動するヨークと、当該ヨークを揺動自在に支持するポストとを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記ポストに設けられたポスト側挿通孔に、前記ヨークを揺動自在に支持するヨーク支持部材が挿通されるとともに、このヨーク支持部材は前記ヨークに設けられたヨーク側挿通孔に挿通され、
前記ポストに設けられたポスト側挿通孔に前記ヨーク支持部材を回転自在に支持するラジアル軸受が設けられるか、または前記ポストと前記ヨークとの前記ヨーク支持部材の軸方向における隙間にスラスト軸受が設けられ、
前記ヨーク支持部材には雄ねじ部が形成され、この雄ねじ部が前記ヨーク側挿通孔に形成された雌ねじ部にねじ込まれていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
前記ヨーク支持部材は、本体部と、この本体部の基端部に当該本体部と同軸に設けられて前記本体部より大径の大径部と、前記本体部の先端部に当該本体部と同軸に設けられて前記本体部より小径の雄ねじ部と、この雄ねじ部の先端部に設けられて当該雄ねじ部より小径の小径部とを備え、
前記ヨーク側挿通孔は、前記ヨーク支持部材の軸方向に離間して2つ設けられ、
一方の前記ヨーク側挿通孔に形成された前記雌ねじ部に、前記ヨーク支持部材の前記雄ねじ部がねじ込まれ、他方の前記ヨーク挿通孔に、前記ヨーク支持部材の前記大径部が挿入され、
前記ヨーク支持部材の前記小径部は一方の前記ヨーク側挿通孔から突出しており、この突出している前記小径部に止め輪が固定され、この止め輪が前記ヨーク側挿通孔の出口に面する対向面に当接または近接していることを特徴とする請求項4に記載のトロイダル型無段変速機。
入力側ディスクと、この入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して入力側ディスクから所定の変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するとともに、前記パワーローラを回転自在に支持する少なくとも一対のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在かつ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記各トラニオンの変位により揺動するヨークと、当該ヨークを揺動自在に支持するポストとを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記ポストに設けられたポスト側挿通孔に、前記ヨークを揺動自在に支持するヨーク支持部材が挿通されるとともに、このヨーク支持部材は前記ヨークに設けられたヨーク側挿通孔に挿通され、
前記ヨーク支持部材には雄ねじ部が形成され、この雄ねじ部が前記ヨーク側挿通孔に形成された雌ねじ部にねじ込まれ、
前記ヨーク支持部材の外周面に溝部が形成され、この溝部に前記ポストに挿入された固定部材の先端部が挿入されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
前記ヨーク支持部材は、前記入力側ディスクの側から前記ポスト側挿通孔および前記ヨーク側挿通孔に挿通されていることを特徴とする請求項1、2、3、6または8に記載のトロイダル型無段変速機。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式のトロイダル型無段変速機は、
図15および
図16に示すように構成されている。
図15に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2A,2Bと2つの出力側ディスク3A,3Bとが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のスリーブ4aには、出力側ディスク3A,3Bがスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2Aとカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3A,3Bは、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。
また、入力側ディスク2A,2Bは、入力軸1にボールスプライン6,6を介して支持されており、これら入力側ディスク2A,2Bは入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2A,2Bの内側面(凹面)2a,2bと出力側ディスク3A,3Bの内側面(凹面)3a,3bとの間には、パワーローラ11,11(
図16参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図15中右側に位置する入力側ディスク2Bと、この入力側ディスク2Bの軸線O方向の変位を規制するためのローディングナット9との間には、皿ばね10およびシム36が設けられている。
皿ばね10は、シム36を介して入力側ディスク2Bを出力側ディスク3Bに向けて押圧しており、この皿ばね10は、ローディングナット9およびシム36とともに、各ディスク2A,2B,3A,3Bの内側面2a,2b,3a,3bとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する予圧付与装置を構成する。
【0006】
左側の入力側ディスク2Aの内側面2aと左側の出力側ディスク3Aの内側面3aとの間の部分である第1キャビティ39、および右側の入力側ディスク2Bの内側面2bと右側の出力側ディスク3Bの内側面3bとの間の部分である第2キャビティ40には、
図16に示すように、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15がそれぞれ設けられている。
【0007】
各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(
図16の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0008】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2A,2Bおよび各出力側ディスク3A,3Bの間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0009】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク34,35に対して揺動自在および軸方向(
図15および
図16の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク34,35により、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。
各ヨーク34,35は鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク34,35の四隅部には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15,15の両端部に設けた枢軸14,14がラジアルニードル軸受30,30を介して揺動自在に支持されている。
【0010】
また、各ヨーク34,35の中央部にはそれぞれ、貫通孔37,37が設けられており、これらの貫通孔37,37にはそれぞれ、各ポスト64,68が貫通されている。上側のポスト64は、ケーシング50に固定部材52を介して固定されており、下側のポスト68は、ケーシング50に固定されたシリンダ31の上側シリンダボディ61に固定されている。
また、各ポスト64,68の両端部にはそれぞれ、挿通孔64a,68aが入力軸1の軸線Oの方向に沿って形成され、一方各ヨーク34,35にもそれぞれ、各貫通孔37,37を横切る挿通孔34a,35aが入力軸1の軸線O方向に沿って形成されている。上側のポスト64の挿通孔64aおよび上側のヨーク34の挿通孔34aは、一直線状に配置されており、これらの挿通孔64a,34aには、上側のヨーク34を上側のポスト64に揺動自在に支持する支持ピン51が挿通されており、一方下側のポスト68の挿通孔68aおよび下側のヨーク35の挿通孔35aは一直線状に配置されており、これらの挿通孔68a、35aには、下側のヨーク35を下側のポスト68に揺動自在に支持する支持ピン51が挿通されている。
【0011】
また、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、各ディスク2A,2B,3A,3Bの回転方向に対して同方向(
図16で上下逆方向)となっている。この偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0012】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11,11の外側面に、外輪軌道は各外輪28,28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0013】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0014】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(
図16の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成されたシリンダボディ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33とシリンダボディ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0015】
このように構成されたトロイダル型無段変速機においては、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2A,2Bに伝えられる。そして、これら入力側ディスク2A,2Bの回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3A,3Bに伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3A,3Bの回転が、出力歯車4より取り出される。
【0016】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、
図16の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2A,2Bおよび各出力側ディスク3A,3Bの内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク34,35に枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
【0017】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと入力側ディスクおよび出力側ディスク2A,3Bの各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a,23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0018】
また、上述したように、各トラニオン15,15の枢軸14,14をそれぞれ揺動自在かつ軸方向に変位自在に支持する各ヨーク34,35がそれぞれ、ケーシング50またはシリンダボディ31に固定された各ポスト64,68に支持ピン51,51によって支持されているので、ヨーク34,35が円滑に動作し、左右の動きが均等になって制御の安定性が増すという利点が得られる。
このような、ヨークが支持ピン等の支持部材により当該支持部材を中心に揺動可能となるような構造を有するトロイダル型無段変速機として、特許文献1〜6に記載のものが知られている。これらの文献に記載のトロイダル型無段変速機では、ヨークを揺動自在に支持する支持ピン等の支持部材は、ポストの固定部材に形成された挿通孔に圧入により挿通して固定されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施の形態のトロイダル型無段変速機と、
図15および
図16に示す従来のトロイダル型無段変速機と共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
(第1の実施形態)
図1に示す第1の実施の形態のトロイダル型無段変速機は、例えば、ケーシングに収容する前の段階で、入力軸1、入力側ディスク2,2、出力側ディスク3A、外周歯車4A、上下のヨーク23A,23B、トラニオン、パワーローラ11、シリンダボディ31、油圧式の押圧装置12A、固定部材52(アッパープレート)等が一体に組み立てられてバリエータモジュール43とされ、このバリエータモジュール43をケーシング内に収容して取り付けるようになっている。
【0031】
このようなバリエータモジュール43においては、シリンダボディ31を構成する上側シリンダボディ56および下側シリンダボディ57に固定される下側のポスト68と、アッパープレート52に固定される上側のポスト64とが上下に一体に接合された柱状ポスト69とされ、バリエータモジュール43において一対の柱状ポスト69がアッパープレート52と、シリンダボディ31とを接続した状態となっている。
【0032】
また、柱状ポスト69の上下の中央部分を入力軸1が貫通した状態となっている。この入力軸1に一対の入力側ディスク2,2、出力側ディスク3A、押圧装置12A等が支持されている。
出力側ディスク3Aは、ラジアルニードル軸受5を介して入力軸1に相対回転自在に支持されている。
また、一対の柱状ポスト69の間に、出力側ディスク3Aが配置され、この出力側ディスク3Aの軸方向両端に出力側ディスク3Aを軸方向に位置決めするとともに軸回りに回転可能に支持するスラスト軸受60が設けられている。すなわち、柱状ポスト69と、出力側ディスク3Aの小径側端部との間にスラスト軸受60が配置され、出力側ディスク3Aの入力軸1の軸方向に沿った位置が規制されるとともに、出力側ディスク3Aの軸回りの回転を許容している。
【0033】
また、押圧装置12Aから遠い側の入力側ディスク2の背面側には、入力軸1に固定されたコッタ38が当接している。押圧装置12Aから入力軸1に、押圧装置12A側に引っ張る力が作用した場合に、この力がコッタ38を介して、入力軸1から入力側ディスク2(押圧装置12Aから遠い側)に伝達され、この入力側ディスク2がパワーローラ11を間に介して出力側ディスク3Aに押し付けられる状態になる。すなわち、押圧装置12Aは、一対の入力側ディスク2,2をその間にある出力側ディスク3Aに向けて押圧している。
また、本実施形態において、押圧装置12Aは、ローディングカム式ではなく油圧式になっており、入力軸1と回転するとともに、入力側ディスク2の背面との間に油圧室を形成するシリンダ12Bを備えている。なお、油圧室には入力側ディスク2に予圧を付与する皿バネ12Cが設けられている。
【0034】
また、本実施の形態では、柱状ポスト69の上下のポスト64,68に設けられたポスト側挿通孔70にヨーク23A,23Bを揺動自在に支持するヨーク支持部材71が挿通されている。
このヨーク支持部材71は、
図2(a),(b)に示すように、本体部71aと、この本体部71aの基端部に当該本体部71aと同軸に設けられて本体部71aより大径の大径部71bと、本体部71aの先端部に当該本体部71aと同軸に設けられて本体部71aより小径の小径部71cとから構成されている。
小径部71cの外周面には雄ねじ部71dが形成されており、大径部71bの端面にはヨーク支持部材71を六角レンチ等の工具等によって回すために当該工具を挿入する六角形状の挿入孔71eが形成されている。
【0035】
本体部71aの外周面は超仕上げ面となっており、後述するラジアル軸受76の軌道面となっている。大径部71bの外周面は仕上げ面となっており、当該大径部71bはヨーク23A,23Bに対してヨーク支持部材71を精度よく位置決めするためのインロウ部となっている。雄ねじ部71dは、
図1に示すように、ヨーク23A,23Bに設けられた2つのヨーク側挿通孔73,74のうちの一方のヨーク側挿通孔74に形成された雌ねじ部74dにねじ込まれている。
【0036】
ヨーク23A,23Bは、
図3に示すように、矩形板状に形成されており、その短手方向の中央部には、長手方向に沿って延在する長尺な貫通孔72が形成されており、
図1に示すように、この貫通孔72に出力側ディスク3Aの外周部が挿通されている。
また、ヨーク23A,23Bの四隅部にはそれぞれ支持孔18が設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオンの両端部に設けた枢軸がラジアルニードル軸受を介して揺動自在に支持されるようになっている。
【0037】
また、ヨーク23A,23Bの長手方向の中央部には、ポスト64,68を挿入するための略矩形状の貫通孔75,75が左右に離間してかつ上下に貫通して設けられており、
図1に示すように、この貫通孔75にポスト64,68が挿入されている。
図3に示すように、貫通孔75の軸方向に対向する面には前記ヨーク側挿通孔73,74が対向して同軸に設けられており、ヨーク側挿通孔73の内周面は仕上げ面となっている。
図1に示すように、このヨーク側挿通孔73にヨーク支持部材71の大径部71bが挿入されており、これによって、ヨーク支持部材71を精度よく位置決めしている。
また、ヨーク側挿通孔74の内周面には雌ねじ部74dが形成されており、この雌ねじ部74dにヨーク支持部材71の雄ねじ部71dがねじ込まれており、これによって、ヨーク支持部材71はヨーク側挿通孔74に固定されている。
【0038】
また、
図1に示すように、ポスト64,68に設けられたポスト側挿通孔70には、ラジアル軸受76が設けられており、このラジアル軸受76にヨーク支持部材71の本体部71aが周方向に回転自在に支持されている。
さらに、ポスト64,68と、ヨーク23A,23Bとの間の隙間にはスラスト軸受77,77が介在している。つまり、ポスト64,68の側面と、ヨーク23A,23Bの貫通孔75に面する面との間の隙間にスラスト軸受77が介在している。
したがって、ヨーク23A,23Bは、スラスト軸受77およびラジアル軸受76によってバリエータ軸方向およびそれと直交する方向にガタツクこと無く円滑に揺動できるようになっている。
【0039】
なお、本実施の形態では、ヨーク支持部材71の小径部71cに雄ねじ部71dを形成し、大径部71bの外周面を仕上げ面としたが、これとは逆に、
図4に示すように、ヨーク支持部材71の大径部71bに雄ねじ部71dを形成し、小径部71cの外周面を仕上げ面としてもよい。
この場合、
図5に示すように、ヨーク側挿通孔73の内周面に雌ねじ部74dを形成し、ヨーク側挿通孔74の内周面を仕上げ面とする。
【0040】
次に、本実施の形態のトロイダル型無段変速機の組立方法について説明する。
この組立方法では、
図6および
図7に示すように、トロイダル型無段変速機の上下を逆にした状態で組み立てる。
まず、2本の柱状ポスト69,69を、スラスト軸受60,60を介して出力側ディスク3Aを挟むようにして軸方向位置を固定するとともに、アッパープレート52に上側のヨーク23Aを組み付ける。
【0041】
次に、このアッパープレート52とヨーク23Aの組付体を、柱状ポスト69,69にバリエータ軸と捩れ方向(
図6のいて上下方向)から挿入する。これによって、柱状ポスト69,69のポスト64,64がヨーク23Aの貫通孔75,75に挿入されるとともに、当該ポスト64,64の下端部がアッパープレート52の凹所に嵌り込むので、アッパープレート52の下面からボルト80(
図1参照)を挿入して、ポスト64,64の端面に設けられているボルト孔にねじ込む。これによって、このアッパープレート52とヨーク23Aの組付体に、柱状ポスト69,69を固定する。なお、柱状ポスト69,69には出力側ディスク3Aが組み付けられているが、この出力側ディスク3Aの外周部はヨーク23Aの貫通孔72に挿通されるので、出力側ディスク3Aの外周部がヨーク23Aと干渉することはない。
【0042】
また、ヨーク23Aの側方からヨーク支持部材71,71をバリエータ軸方向(入力軸1の軸方向)に沿って挿通する。この際、ヨーク支持部材71をヨーク23Aのヨーク側挿通孔73から挿通し、さらにポスト64のポスト側挿通孔70に挿通して、その先端部の雄ねじ部71dをヨーク側挿通孔74の雌ねじ部74dにねじ込む。これによって、ヨーク23Aをポスト64,64に揺動可能に取り付ける。
また、ヨーク23Aの貫通孔75に面する面(ヨーク側挿通孔73,74の対向する開口面)に予めスラスト軸受77,77を取り付けておくとともに、ポスト64のポスト側挿通孔70に予めラジアル軸受76を取り付けておく。
【0043】
このようにして、アッパープレート52、ヨーク23A、柱状ポスト69,69が固定されるので、4本のトラニオン15の枢軸14を、それぞれラジアルニードル軸受30を介してヨーク23Aの4つの支持孔18に挿入する。
【0044】
次に、ヨーク23Bをバリエータ軸と捩れの方向(トラニオン軸方向)からポスト68,68に挿入する。これによって、ポスト68,68がヨーク23Bの貫通孔75,75に挿入される。
次に、ヨーク23Bの側方からヨーク支持部材71,71をバリエータ軸方向に沿って挿通する。この際、ヨーク支持部材71をヨーク23Bのヨーク側挿通孔73から挿通し、さらにポスト68のポスト側挿通孔70に挿通して、その先端部の雄ねじ部71dをヨーク側挿通孔74の雌ねじ部74dにねじ込む。これによって、ヨーク23Bをポスト68,68に揺動可能に取り付ける。
また、ヨーク23Bの貫通孔75に面する面(ヨーク側挿通孔73,74の対向する開口面)に予めスラスト軸受77,77を取り付けておくとともに、ポスト68のポスト側挿通孔70に予めラジアル軸受76を取り付けておく。
【0045】
次に、シリンダボディ31をバリエータ軸と捩れ方向(トラニオン軸方向)から組み付け、ボルト81(
図1参照)によってポスト68に固定する。つまり、ポスト68を上側シリンダボディ56の凹所に嵌め込み、下側シリンダボディ57の下面からボルト81(
図1参照)を挿入して、ポスト68の端面に設けられているボルト孔にねじ込む。
最後に、入力軸1および入力側ディスク2,2、押圧装置12Aをバリエータ軸方向から組み付けて終了する。
【0046】
以上のように本実施の形態によれば、ポスト64,68に設けられたポスト側挿通孔70,70とヨーク23A,23Bに設けられたヨーク側挿通孔73,74とにヨーク支持部材71が挿通されることで、ヨーク23A,23Bはヨーク支持部材71を中心として揺動自在となるとともに、ヨーク支持部材71に形成された雄ねじ部71dをヨーク側挿通孔73に形成された雌ねじ部73dにねじ込むことで、ヨーク支持部材71を圧入することなく、当該ヨーク支持部材71をねじの軸力によってヨーク23A,23Bに固定できる。
したがって、圧入に起因するコンタミの発生やヨーク支持部材71の抜け落ちを防止できる。
【0047】
また、ポスト64,68のポスト側挿通孔70に設けられたラジアル軸受76にヨーク支持部材71の本体部71aが周方向に回転自在に支持されているとともに、ポスト64,68と、ヨーク23A,23Bとの隙間にそれぞれスラスト軸受77,77が介在しているので、ヨーク23A,23Bを、バリエータ軸方向およびそれと直交する方向にガタツクこと無く円滑に揺動させることができる。
さらに、ヨーク23A,23Bのヨーク側挿通孔73の内周面は仕上げ面となっており、このヨーク側挿通孔73にヨーク支持部材71の外周面が仕上げされた大径部71bが挿入されている、インロウ構造となっているので、ヨーク支持部材71をヨーク23A,23Bに対して精度よく位置決めすることができる。
【0048】
なお、このインロウ構造における嵌め合いは隙間であっても圧入であっても構わない。圧入の場合、ヨーク支持部材71のねじを締め付ける際の軸力を利用して圧入することができるため、別途圧入装置を用意する必要はない。
この場合、ヨーク支持部材71の仕上げされた大径部71bがヨーク側挿通孔73に嵌合する前に、ヨーク支持部材71の雄ねじ部71dがヨーク側挿通孔74の雌ねじ部74dに螺合するように大径部71bおよび雄ねじ部71dの長さを設定すればよい。
【0049】
(第2の実施形態)
図8は第2の実施の形態のトロイダル型無段変速機を示す断面図である。
なお、本実施の形態において、第1の実施の形態と共通構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
この図に示すトロイダル型無段変速機では、ヨーク支持部材71とポスト64,68のポスト側挿通孔70との間に第1の実施の形態のようなラジアル軸受76が設けられておらず、また、ヨーク23A,23Bとポスト64,68との嵌め合いは微小な隙間となっており、第1の実施の形態のようなスラスト軸受77が設けられていない。
【0050】
このように本実施の形態では、ラジアル軸受76およびスラスト軸受77が設けられている第1の実施の形態に比して、ヨーク23A,23Bが揺動する際の抵抗が増加する虞はあるが、高速な変速速度が求められない用途では問題とならない。
本実施の形態では、ラジアル軸受76およびスラスト軸受77を削減でき、軸受の軌道面の超仕上げが必要なくなるため、コストを削減できる。
また、ラジアル軸受76またはスラスト軸受77のいずれか一方を設けることで、変速速度とコスト削減を両立できる。
なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、圧入に起因するコンタミの発生やヨーク支持部材71の抜け落ちを防止できるのは勿論ことである。
【0051】
(第3の実施形態)
図9は第3の実施の形態のトロイダル型無段変速機を示す断面図である。
なお、本実施の形態において、第2の実施の形態と共通構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施の形態では、第2の実施の形態と異なり、ヨーク支持部材71と、ポスト64,68のポスト側挿通孔70の内周面との間にラジアル軸受76が設けられていない。
この場合に、ヨーク支持部材71の本体部71aの外周面に溝部71fを形成し、この溝部71fに固定部材83を挿入することで、ヨーク支持部材71の雄ねじ部71dが雌ねじ部74dから緩んだ際に、当該ヨーク支持部材71の抜け落ちを防止することができる。
【0052】
すなわちまず、
図10に示すように、ヨーク支持部材71の本体部71aの外周面には、当該本体部71aの軸方向の略中央部に溝部71fが周方向に沿って形成されている。
また、固定部材83は、本実施の形態では、
図9に示すように、アッパープレート52に対してポスト64を固定しているボルト80およびシリンダボディ31に対してポスト68を固定しているボルト81を使用すればよい。
この場合、ボルト80,81が溝部71fの溝底と接触すると、ヨーク23A,23Bの揺動運動の抵抗となってしまうので、ボルト80,81の先端と溝部71fの溝底との間に隙間が設けられている。また、ボルト80,81の先端部の外周面と溝部71fの内側面との間にも隙間が設けられている。これによって、ボルト80,81がヨーク23A,23Bの揺動運動の抵抗となることがない。
【0053】
また、固定部材83としてはボルト80,81を用いなくてもよい。この場合、ポスト64,68またはヨーク23A,23Bにポスト側挿通孔70に対して垂直方向にねじ孔を設け、このねじ孔に新たなボルト(固定部材)をねじ込んで、その先端部を溝部71fに挿入すればよい。
ヨーク23A,23Bにねじ孔を設け、このねじ孔に固定部材をねじ込む場合、ヨーク23A,23Bとヨーク支持部材71とは結合されているため、固定部材の先端部が溝部71fの溝底や内側面に接触していても構わない。
【0054】
さらに、溝部71fはヨーク支持部材71の本端部71aに設けなくても、雌ねじ部74dに設けてもよく、本体部71aと雌ねじ部74dの双方に設けて、二か所で同時に固定しても構わない。抜け止め用の溝部は複数あればあるほどヨーク支持部材71の抜け止め効果に寄与する。
【0055】
(第4の実施形態)
図11および
図12は第4の実施の形態のトロイダル型無段変速機を示すもので、
図11は断面図、
図12は分解斜視図である。
なお、本実施の形態において、第1の実施の形態と共通構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
本実施の形態では、ポスト64,68が二つ割れとなっており、この割れ部85a,85bの間に(上側の)ヨーク23Cと、(下側の)ヨーク23Dとを挿入する構造となっている。
すなわちまず、
図11および
図12に示すように、ポスト64,68には、その径方向中央部に溝部84が軸方向に延在して形成されており、これによって、ポスト64,68は二つ割れとなって、二つの割れ部85a,85bを有している。
二つの割れ部85a,85bの対向する側面は、互いに平行でかつバリエータ軸と直交して配置されている。
【0057】
また、割れ部85aには、ヨーク支持部材91を挿通するためのポスト側挿通孔70aが割れ部85を貫通して設けられ、割れ部85bにはポスト側挿通孔70bが割れ部85bを貫通し、かつポスト側挿通孔70aと同軸に設けられている。
ポスト側挿通孔70aはポスト側挿通孔70bより大径であり、このポスト側挿通孔70aの内周面は仕上げ面となっている。また、ポスト側挿通孔70bには雌ねじ部70dが形成されている。
ヨーク支持部材91は、前記ヨーク支持部材71と同様に、本体部91aと、この本体部91aの基端部に当該本体部91aと同軸に設けられて本体部91aより大径の大径部91bと、本体部91aの先端部に当該本体部91aと同軸に設けられて本体部91aより小径の小径部91cとから構成されている。
小径部91cの外周面には雄ねじ部91dが形成されており、大径部91bの端面にはヨーク支持部材91を六角レンチ等の工具等によって回すために当該工具を挿入する六角形状の挿入孔91eが形成されている。
なお、ヨーク支持部材91の本体部91aは、ヨーク支持部材71の本体部71aより短く、ヨーク支持部材91の大径部91bおよび小径部91cは、ヨーク支持部材71の大径部71bおよび小径部71cより長くなっている。
【0058】
ヨーク支持部材91の本体部91aの外周面は超仕上げ面となっており、ラジアル軸受76の軌道面となっている。大径部91bの外周面は仕上げ面となっており、当該大径部91bはポスト側挿通孔70aに嵌め込まれ、ポスト64,68に対してヨーク支持部材91を精度よく位置決めするためのインロウ部となっている。雄ねじ部91dはポスト64,68の割れ部85bに設けられた雌ねじ部70dにねじ込まれている。
【0059】
ヨーク23C,23Dは、前記ヨーク23A,23Bと同様に、矩形板状に形成されており、その中央部には出力側ディスク3Aの外周部を挿通するための貫通孔72が形成されている。
また、23C,23Dの四隅部にはそれぞれ支持孔18が設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオンの両端部に設けた枢軸がラジアルニードル軸受を介して揺動自在に支持されるようになっている。
【0060】
また、
図12に示すように、ヨーク23C,23Dには、バリエータ軸方向に延在する貫通孔92が設けられており、この貫通孔92にヨーク側挿通孔形成部93,93がバリエータ軸方向に離間して設けられている。貫通孔92の幅はポスト64,68の割れ部85a,85bが挿入可能な大きさに設定されている。
また、ヨーク側挿通孔形成部93のバリエータ軸方向の長さは、ポスト64,68の溝部84の幅より短くなっており、これによって、ヨーク側挿通孔形成部93を割れ部85a,85bが挟むようにして、ポスト64,68がヨーク23C,23Dの貫通孔92に挿入されている。
【0061】
また、ヨーク側挿通孔形成部93にはヨーク支持部材91の本体部91aを挿通するためのヨーク側挿通孔94が設けられており、このヨーク側挿通孔94の内周面は超仕上げ面となっている。
ヨーク側挿通孔94には、ラジアル軸受76が設けられており、このラジアル軸受76にヨーク支持部材91の本体部91aが周方向に回転自在に支持されている。
さらに、ポスト64,68の割れ部85a,85bと、ヨーク側挿通孔形成部93との間の隙間にはそれぞれスラスト軸受77,77が介在している。
したがって、ヨーク23C,23Dは、スラスト軸受77およびラジアル軸受76によってバリエータ軸方向およびそれと直交する方向にガタツクこと無く円滑に揺動できるようになっている。
【0062】
本実施の形態のトロイダル型無段変速機の組立は、第1の実施の形態と同様にして行う。
すなわち、まず、2本の柱状ポスト69,69を、スラスト軸受60,60を介して出力側ディスク3Aを挟むようにして軸方向位置を固定するとともに、アッパープレート52に上側のヨーク23Cを組み付ける。
【0063】
次に、このアッパープレート52とヨーク23Cの組付体を、柱状ポスト69,69にバリエータ軸と捩れ方向から挿入する。これによって、柱状ポスト69,69のポスト68,68がヨーク23Cの貫通孔92に挿通されるとともに、当該ポスト64,64の下端部がアッパープレート52の凹所に嵌り込むので、アッパープレート52の下面からボルト80(
図11参照)を挿入して、ポスト64,64の端面に設けられているボルト孔にねじ込む。これによって、このアッパープレート52とヨーク23Cの組付体に、柱状ポスト69,69を固定する。
【0064】
また、ヨーク23Cの側方からヨーク支持部材91,91をバリエータ軸方向に沿って挿通する。この際、ヨーク支持部材91をポスト64のポスト側挿通孔70aから挿通し、さらにヨーク23Cのヨーク側挿通孔94に挿通して、その先端部の雄ねじ部91dをポスト64のポスト側挿通孔70bの雌ねじ部70dにねじ込む。これによって、ヨーク23Cをポスト64,64に揺動可能に取り付ける。
また、ヨーク23Cのヨーク側挿通孔形成部93の対向する面に予めスラスト軸受77,77を取り付けておくとともに、ヨーク側挿通孔94に予めラジアル軸受76を取り付けておく。
【0065】
このようにして、アッパープレート52、ヨーク23C、柱状ポスト69,69が固定されるので、図示は省略するが、4本のトラニオンの枢軸を、それぞれラジアルニードル軸受を介してヨーク23Cの4つの支持孔18に挿入する。
【0066】
次に、ヨーク23Dをバリエータ軸と捩れの方向(トラニオン軸方向)からポスト68,68に挿入する。これによって、ポスト68,68がヨーク23Dの貫通孔92に挿通される。
次に、ヨーク23Dの側方からヨーク支持部材91,91をバリエータ軸方向に沿って挿通する。この際、ヨーク支持部材91をポスト68のポスト側挿通孔70aから挿通し、さらにヨーク23Dのヨーク側挿通孔94に挿通して、その先端部の雄ねじ部91dをポスト68のポスト側挿通孔70bの雌ねじ部70dにねじ込む。これによって、ヨーク23Dをポスト68,68に揺動可能に取り付ける。
また、ヨーク23Dのヨーク側挿通孔形成部93の対向する面に予めスラスト軸受77,77を取り付けておくとともに、ヨーク側挿通孔94に予めラジアル軸受76を取り付けておく。
【0067】
次に、シリンダボディ31をバリエータ軸と捩れ方向(トラニオン軸方向)から組み付け、ボルト81(
図11参照)によってポスト68に固定する。
最後に、入力軸1および入力側ディスク2,2、押圧装置12Aをバリエータ軸方向から組み付けて終了する。
【0068】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、ヨーク支持部材91に形成された雄ねじ部91dを、ポスト64,68のポスト側挿通孔70bに形成された雌ねじ部70dにねじ込むことで、ヨーク支持部材91を圧入することなく、当該ヨーク支持部材91をねじの軸力によってヨーク23C,23Dに固定できる。
したがって、圧入に起因するコンタミの発生やヨーク支持部材71の抜け落ちを防止できる。
【0069】
また、ヨーク側挿通孔94に設けられたラジアル軸受76にヨーク支持部材91の本体部91aが周方向に回転自在に支持されているとともに、ポスト64,68と、ヨーク23C,23Dとの隙間にそれぞれスラスト軸受77,77が介在しているので、ヨーク23C,23Dを、バリエータ軸方向およびそれと直交する方向にガタツクこと無く円滑に揺動させることができる。
さらに、ポスト側挿通孔70aの内周面は仕上げ面となっており、このポスト側挿通孔70aにヨーク支持部材91の外周面が仕上げされた大径部91bが挿入されている、インロウ構造となっているので、ヨーク支持部材91をポスト64,68に対して精度よく位置決めすることができる。
【0070】
また、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、ヨーク23A,23Bに雌ねじ部74dを形成しているが、ヨークは機能上、浸炭処理などの表面硬さが高くなる熱処理を施す場合が多く、雌ねじ部74dが形成されている部分の表面硬さが高くなってしまうと、遅れ破損等の危険が伴う。そこで、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、雌ねじ部74dの表面硬さが高くならないように、防炭処理等を施して表面硬さが高くならないようにしなければならない。
しかし、本実施の形態では、雌ねじ部70dを表面硬さが高くなくても問題とならないポスト64,68に設けたので、防炭処理等が必要なくなり、コスト削減を図ることができる。
【0071】
(第5の実施形態)
図13は第5の実施の形態のトロイダル型無段変速機の要部を示す断面図、
図14はヨーク支持部材71の斜視図である。
本実施の形態では、
図14に示すように、ヨーク支持部材71の外周面に抜け止め用の止め輪95を固定した点が第1の実施の形態と異なるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と共通構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0072】
ヨーク支持部材71の雄ねじ部71dよりさらに先端側には、雄ねじ部71dよりさらに小径の小径部71gが設けられている。この小径部71gの外径は、雄ねじ部71dの谷径より小さくなっており、これによって、雄ねじ部71dのねじ切りの際に、小径部71gが傷付く虞がない。
小径部71gの外周面には止め輪溝96が周方向に沿って形成され、この止め輪溝96に止め輪95が嵌め込まれ、これによって止め輪95が小径部71gに固定されている。
この止め輪95は、ヨーク23A,23Bの、ヨーク支持部材71の挿通方向と逆方向に対向する対向面97に当接または近接している。
この対向面97は、ヨーク23A,23Bのヨーク側挿通孔74の出口に面する面であり、この対向面97はヨーク23A,23Bの貫通孔72に面している。
【0073】
本実施の形態では、ヨーク支持部材71の外周面に固定された止め輪95が、ヨーク23A,23Bの対向面97に当接または近接しているので、ヨーク支持部材71の雄ねじ部71dがヨーク23A,23Bのヨーク側挿通孔74の雌ねじ部74dから緩んでも、当該ヨーク支持部材71の抜け落ちを防止できる。
【0074】
なお、本実施の形態による止め輪95によるヨーク支持部材71の抜け止めは第1〜第4の実施の形態にも適用できる。第4の実施の形態に適用する場合、止め輪95をポスト64,68の、ヨーク支持部材91の挿通方向と逆方向に対向する対向面に当接または近接させればよい。
【0075】
また、本実施の形態では、本発明を、柱状ポスト69を有するダブルキャビティ式ハーフトロイダル型無段変速機に適用した場合を例にとって説明したが、
図16に示すような、上側のポスト64と下側のポスト68を有するダブルキャビティ式ハーフトロイダル型無段変速機にも適用でき、さらに、ダブルキャビティ式ハーフトロイダル型無段変速機に
限らず、シングルキャビティ式ハーフトロイダル型無段変速機にも適用できる。