(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用変速機のプーリやギヤなどが設けられた回転軸を支持する軸受は、ハウジングと、ハウジングにボルトにより固定される固定プレートとで挟持して、ハウジングに強固に固定される(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図13は、従来から知られている軸受装置100の1例を示している。回転軸101の端部は、ラジアル転がり軸受102を介してハウジング103に回転自在に支持されている。ラジアル転がり軸受102は、内周面に外輪軌道104を有する外輪105と、外周面に内輪軌道106を有する内輪107と、外輪軌道104と内輪軌道106との間に転動自在に設けられた複数の玉108とを備える。ラジアル転がり軸受102の外輪105は、ハウジング103に形成された保持凹部109に内嵌している。固定プレート110は、嵌合孔113が外輪105の軸方向一端部外周面に形成された小径段部112に回動可能に外嵌する。また、固定プレート110は、複数の通孔114(
図14参照)をそれぞれ挿通する複数のねじによりハウジング103に固定されて、外輪105が保持凹部109から抜け出すことを防止している。
【0004】
ところで、従来の固定プレート110は、
図14及び
図15に示すように、円周方向に等間隔で形成された3箇所の通孔114を挿通するねじによりハウジング103に固定されるため、各ねじの締め付けに伴って、固定プレート110から外輪105の小径段部112の段差面115に加わる押圧力が、円周方向に関して不均一になる。具体的には、通孔114に近い部分は段差面115に加わる押圧力が大きく、通孔114から離れるに従って段差面115に加わる押圧力が小さくなる。このように、外輪105の段差面115に加わる押圧力が、円周方向に関して不均一になると、外輪105が歪み、外輪軌道104の真円度が損なわれる虞がある。
【0005】
特許文献1に記載の軸受装置では、外輪の押圧力が円周方向に関して不均一となる課題に対処するため、固定プレートに形成した嵌合孔の内周縁部のうちで、通孔の径方向内側部分に大径切欠部を形成し、大径切欠部の周縁を、外輪の外周面よりも径方向外側に位置させて、ねじの締め付けに伴う固定プレートによる外輪の押圧力を、円周方向に関してほぼ均一にし、外輪の真円度の悪化を防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の軸受装置では、外輪と嵌合する固定プレートの嵌合孔に大径切欠部が設けられているため、嵌合孔が円形とならない。一方、固定プレートの嵌合孔は、外輪との案内面を形成し、外輪との組み立てにおいて高い位置精度が要求されるため、可能な限り円形を確保することが望まれる。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定プレートの嵌合孔に外輪との案内面を十分に確保しつつ、外輪軌道の真円度に影響を及ぼすことなく、外輪を確実にハウジングに固定することができる軸受装置及び軸受装置用固定プレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内輪と、外輪と、前記内外輪間に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受と、
略円形孔と、該略円形孔の周囲に、各締結部材をそれぞれ挿通又は螺合させる複数の取付孔と、を有し、前記外輪と軸方向において当接する固定プレートと、
を備え、
前記外輪をハウジングに嵌合し、前記固定プレートを、前記各締結部材の締め付けによって前記ハウジングに固定することで、前記転がり軸受が前記固定プレートを介して前記ハウジングに固定され、
前記固定プレートが軸方向において当接する前記外輪の当接面は、前記固定プレートが対向する前記ハウジングの対向面よりも所定の距離だけ軸方向外側に位置する軸受装置であって、
前記固定プレートは、前記ハウジング側の側面で、前記ハウジングと対向する位置に、前記ハウジングに向かって突出する突起部を備え、
前記突起部の突起高さは、前記ハウジングと前記固定プレートとの対向面間の軸方向隙間以下であ
り、
前記突起部は、前記略円形孔の中心と前記取付孔の中心とを結ぶ延長線に対して対称に分割して形成されることを特徴とする軸受装置。
(2) 前記突起部は、前記複数の取付孔の中心を結ぶ仮想円よりも径方向外側に設けられることを特徴とする(1)に記載の軸受装置。
(3) 前記外輪の軸方向の端部外周部には、前記固定プレートの前記略円形孔と嵌合する小径段部が設けられ、
前記固定プレートの前記略円形孔の周縁部分に形成された複数の潰し部を前記小径段部に形成された係止溝に係止させることで、前記転がり軸受と前記固定プレートとは、不分離、且つ相対回転可能な状態に組み付けられることを特徴とする(1)又は(2)に記載の軸受装置。
(4) 略円形孔と、該略円形孔の周囲に、各締結部材をそれぞれ挿通又は螺合させる複数の取付孔と、を有し、
転がり軸受の外輪と軸方向において当接し、且つ、
前記外輪がハウジングに嵌合された状態で、前記各締結部材の締め付けによって前記ハウジングに固定されることで、前記転がり軸受を前記ハウジングに固定する軸受装置用固定プレートであって、
前記ハウジング側の側面で、前記ハウジングと対向する位置に、前記ハウジングに向かって突出する突起部を備え、
前記突起部の突起高さは、前記ハウジングと前記軸受装置用固定プレートとの対向面間の軸方向隙間以下であ
り、
前記突起部は、前記略円形孔の中心と前記取付孔の中心とを結ぶ延長線に対して対称に分割して形成されることを特徴とする軸受装置用固定プレート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の軸受装置及び軸受装置用固定プレートによれば、固定プレートは、ハウジング側の側面で、ハウジングと対向する位置に、ハウジングに向かって突出する突起部を備え、突起部の突起高さは、ハウジングと固定プレートとの対向面間の軸方向隙間以下である。したがって、各締結部材によって固定プレートをハウジングに固定したとき、突起部は、固定プレートの変形を抑制することができる。これにより、固定プレートの変形によって外輪軌道の真円度に及ぼす影響を抑制して、外輪軌道の真円度を良好に維持することができる。また、外輪が嵌合する固定プレートの略円形孔は円形であるため、外輪と固定プレートとを高い位置精度で組み付けることができる。
また、突起部は、略円形孔の中心と取付孔の中心とを結ぶ延長線に対して対称に分割して形成されるため、例えば、取付孔が形成されるボス部の外径側に突起部を設けるための十分なスペースがとれない場合であっても、突起部を形成することができる。
【0011】
また、突起部は、複数の取付孔の中心を結ぶ仮想円よりも径方向外側に設けられるため、各締結部材によって固定プレートをハウジングに固定した際の固定プレートの倒れを効率的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態に係る軸受装置及び軸受装置用固定プレートについて、図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
まず、
図1〜
図3を参照して、本発明に係る軸受装置について説明する。軸受装置10は、ラジアル転がり軸受30と、ラジアル転がり軸受30をハウジング20に固定する固定プレート40と、を備える。本実施形態のラジアル転がり軸受30と固定プレート40とは、後述するように不分離に組み付けられている。
【0015】
ラジアル転がり軸受30は、ハウジング20の保持凹部21に嵌合し、内周面に外輪軌道32を有する外輪31と、図示しない回転軸に嵌合し、外周面に内輪軌道34を有する内輪33と、保持器36に保持されて外輪軌道32と内輪軌道34との間に転動自在に配設された複数の転動体である玉35とを備える。外輪31の軸方向一端部の外周部には、外輪31の外径より小径の段部外周面37aと、段部外周面37aから径方向外方に延びる段差面37bとからなる小径段部37が形成されている。段部外周面37aには、係合溝37cが周方向全周に沿って形成されている。また、外輪31の軸方向両端部には、外輪31と内輪33との間に封止部材38が配設されており、ラジアル転がり軸受30を封止している。
【0016】
図1(a)に示すように、固定プレート40は、短辺40aと長辺40bとを円周方向に関して交互に配置した略六角形状の板状部材であり、中央には外輪31が内嵌する嵌合孔41が形成されている。また、短辺40aに対応する円周方向等間隔の3箇所には、それぞれボス部42が形成されている。
図3に示すように、ボス部42には、ボルト(締結部材)12の雄ねじ13が螺合する雌ねじ43(取付孔)が形成されている。なお、
図1〜
図3では、雄ねじ13及び雌ねじ43のねじ山が図示省略されている。
【0017】
軸受装置10は、固定プレート40の嵌合孔41に外輪31の小径段部37を嵌合させた後、嵌合孔41の周縁部分の肉を潰し加工により径方向内側に突出させて複数の潰し部48を形成し(
図2(b)参照)、複数の潰し部48を段部外周面37aに形成された係合溝37cに係止させることで、ラジアル転がり軸受30と固定プレート40とが不分離、且つ相対回転可能な状態に組み付けられる。なお、嵌合孔41には、各潰し部48の周囲に、加工のための逃がし部48aが形成されている。したがって、本実施形態の嵌合孔41は、各潰し部48や逃がし部48aを除く、残りの内周面が単一の円によって形成される略円形孔である。逃がし部48aの円周方向両端部と嵌合孔41の中心O1とを結ぶ一対の線分が成す角度αは、α≦30°とすることが好ましく、α≦25°とすることがより好ましい。
【0018】
そして、不分離とされた軸受装置10は、
図3に示すように、ラジアル転がり軸受30の外輪31をハウジング20に形成された保持凹部21に内嵌させた後、ハウジング20に設けられたねじ孔22に挿通したボルト12の雄ねじ13を固定プレート40の雌ねじ43に螺合させて締め付けることで、ハウジング20に固定される。したがって、外輪31がハウジング20と固定プレート40とで挟持され、ラジアル転がり軸受30は、ハウジング20の保持凹部21からの抜け出しが防止される。
【0019】
ここで、外輪31をハウジング20と固定プレート40とで確実に挟持するためには、
図3に示すように、ハウジング20の保持凹部21に外輪31を嵌合させたとき、ハウジング20と固定プレート40との対向面間に軸方向隙間Hが確保されるように、ハウジング20と軸受装置10とが形成される必要がある。即ち、ハウジング20と外輪31とは、外輪31がハウジング20の保持凹部21の軸方向端面に突き当てられたとき、固定プレート40が軸方向において当接する外輪31の段差面(当接面)37bは、固定プレート40が対向するハウジング20の側面23よりも所定の距離Hだけ軸方向外側に位置している。即ち、ハウジング20の側面(対向面)23と固定プレート40の側面(対向面)44との間に軸方向隙間Hが生じるように構成されている。
【0020】
そこで、本実施形態では、固定プレート40を各ボルト12によってハウジング20に固定する際、ボルト12のボルト軸力による固定プレート40の変位、即ち、倒れを抑制するため、固定プレート40のハウジング20に対向する側の側面(表面)44には、ハウジング20に向かって突出する3箇所の突起部45が形成されている。3箇所の突起部45は、3箇所のボス部42の中心O2を結ぶ仮想円VCよりも径方向外側に形成される。
【0021】
具体的に、各突起部45は、固定プレート40の嵌合孔41の中心O1と、ボス部42の中心O2とを結ぶ延長線L上におけるボス部42より径方向外側で、延長線Lに対して線対称に形成されている。特に、本実施形態では、各突起部45は、固定プレート40の最外径位置で、固定プレート40の短辺40aの縁部に沿って形成されている。
【0022】
また、各突起部45は、ハウジング20との接触面が平面となるように、固定プレート40の裏面46側からプレス加工や切削加工によって形成される。なお、各突起部45は、加工容易性、加工コストの観点からプレス加工によって形成されるのが好ましい。
【0023】
固定プレート40の突起部45の突起高さGは、ハウジング20の保持凹部21に外輪31を嵌合させたとき、ハウジング20と固定プレート40との対向面間(ハウジング20の側面23と固定プレート40の側面44との間)の軸方向隙間H以下に設定されている。
【0024】
また、軸方向隙間Hと突起高さGとの差は、極力小さいことが望ましい。特に、軸方向隙間Hは、ハウジングや軸受装置によって異なり、公差によるばらつきもあるが、突起高さGは、0.1H≦G≦H、或いは、0.05mm≦G≦1mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0025】
したがって、
図3に示すように、ボルト12の雄ねじ13を雌ねじ43に締結することで、軸受装置10がハウジング20に固定された際、固定プレート40の突起部45がハウジング20の側面23に当接するので、固定プレート40の変形する量を抑制することができる。
【0026】
即ち、
図4に示すように、突起部45を有しない従来の軸受装置100では、ボルト122の雄ねじ123を固定プレート110の雌ねじ121に締結すると、固定プレート110は、図中破線で示す位置から実線で示すように、固定プレート110がハウジング103に向かって倒れるように変形する。このとき、外輪105には、矢印Aで示す方向に力が作用するため、外輪軌道104が局部的に変形する虞がある。
【0027】
これに対して、本実施形態の軸受装置10によれば、
図3(b)に示すように、ボルト12の雄ねじ13を雌ねじ43に締結したとき、固定プレート40の突起部45がハウジング20の側面23に当接するので、固定プレート40の倒れが抑制され、外輪31に作用する矢印Bで示す方向の力がハウジング20によって支承される。従って、固定プレート40に作用する引っ張り応力(歪)が抑制されると共に、外輪軌道32の真円度崩れの要因となる局部的な集中応力を抑制することができ、外輪31の固定による外輪軌道32への影響が防止される。
【0028】
即ち、ボルト12の締め付けに伴う固定プレート40による外輪31の押圧力の偏りが生じ難く、外輪軌道32の変形が抑制されて真円度が維持される。これにより、外輪軌道32と玉35との転がり接触状態が適正に維持されて、回転軸等の振動や、ラジアル転がり軸受30の耐久性低下が防止できる。
【0029】
また、本実施形態では、上述したように固定プレート40の倒れが抑制されるので、固定プレート40と小径段部37の段差面37bとの接触面積が大きくなる。したがって、固定プレート40はより広い面で外輪31を軸方向に押圧することができ、当該押圧力が径方向に逃げることを防止できる。これにより、ベルトCVTのプーリやシャフト等から振動が外輪31に伝達された場合であっても、当該外輪31が変位することを抑制でき、軸受装置10の制振性能を向上することが可能である。
【0030】
さらに、
図5に示すように、本実施形態では上述したように固定プレート40の倒れが抑制されるので、ボルト12の雄ねじ13と、固定プレート40のボス部42の雌ねじ43と、の芯ずれが抑制される。これにより、雄ねじ13及び雌ねじ43のねじ山同士が、全周に亘って略均一に噛み合い、一山一山の負担が小さくなる。その結果、雄ねじ13及び雌ねじ43のねじ山の強度が相対的に向上する。
【0031】
一方、
図6及び
図7に示すように、突起部45を有しない従来の軸受装置100では、固定プレート110がハウジング103に向かって倒れる。この場合、ボルト122の雄ねじ123のねじ山と、固定プレート110の雌ねじ121のねじ山と、の噛み合いにおいて、一部の箇所(図中、符号B及びCで示す箇所)で隙間が生じる。この結果、隙間が生じていない噛み合い部のねじ山においてボルト軸力が発生し、一山一山の負担の負担が大きくなる。そして、最悪の場合には、雄ねじ13及び雌ねじ43のねじ山がせん断破壊する可能性がある。
【0032】
また、突起部45の突起高さGを実質的に軸方向隙間Hと等しくし(G=H)、ハウジング20の保持凹部21に外輪31を嵌合させ、ボルト12を締め付けていない状態において、突起部45がハウジング20の側面23に当接するようにしてもよい。これにより、ボルト12の締め付けに伴う固定プレート40の倒れがなくなり、外輪31の固定による外輪軌道32への影響がより確実に防止される。
【0033】
仮に、固定プレート40に突起部45が形成されておらず、ハウジング20と固定プレート40との対向面間に軸方向隙間Hが存在する場合、固定プレート40が傾くことによって外輪軌道32の真円度崩れが発生し、軸受寿命が低下してしまう。この場合、ハウジング20や転がり軸受30の軸方向長さの交差を厳しくして、軸方向隙間Hを小さく且つばらつきを小さくすれば、真円度崩れによる軸受寿命の低下を抑制し、要求寿命を満足させることができる。しかしながら、製造コストが高くなり、製造時の不良率が高くなる可能性がある。これに対して、本実施形態の場合、ハウジング20や転がり軸受30の軸方向長さの公差を緩和し、軸方向隙間Hを大きく且つばらつきを大きくした場合であっても、固定プレート40に突起部45が設けられることにより、軸方向隙間Hが外輪軌道32の真円度崩れに及ぼす影響を緩和することができる。即ち、ハウジング20や転がり軸受30の軸方向長さの公差を緩和することが可能である。
【0034】
また、本実施形態の固定プレート40の嵌合孔41は、大きな切欠部や突起がなく、大部分が円弧に形成されるので、外輪31の小径段部37の略全周が嵌合孔41によって案内され、固定プレート40と外輪31とを高い位置精度で嵌合させることができる。
【0035】
なお、本実施形態の軸受装置10では、固定プレート40のボス部42とハウジング20との干渉を防止するために、ハウジング20のねじ孔22に逃げ部24(径方向逃げ部)が形成されている。ここで、軸受のバックアップ強度の確保やハウジングの強度不足の観点から、大きな逃げ部24を形成せずに、ハウジング20と固定プレート40とを軸方向に離間させて両者の干渉を防止するような場合にも、突起部45による固定プレート40の倒れを抑制することが特に有効である(
図3参照)。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の軸受装置10によれば、固定プレート40は、ハウジング20側の側面44で、ハウジング20と対向する位置に、ハウジング20に向かって突出する突起部45を備え、突起部45の突起高さGは、ハウジング20と固定プレート40との対向面間の軸方向隙間H以下であるため、各ボルト12によって固定プレート40をハウジング20に固定したとき、突起部45は、固定プレート40の変形を抑制することができる。これにより、固定プレート40の変形によって外輪軌道32の真円度に及ぼす影響を抑制して、外輪軌道32の真円度を良好に維持することができる。
【0037】
また、外輪31が嵌合する固定プレート40の嵌合孔41が略円形であるため、外輪31と固定プレート40とを高い位置精度で組み付けることができる。
【0038】
また、突起部45は、複数のボス部42の中心O2を結ぶ仮想円VCよりも径方向外側に設けられるため、各ボルト12によって固定プレート40をハウジング20に固定した際の固定プレート40の倒れを効率的に抑制することができる。
【0039】
(第1変形例)
図8は、本実施形態の第1変形例の軸受装置の正面図及び斜視図である。
第1変形例の固定プレート40Aでは、各突起部45Aは、固定プレート40Aの嵌合孔41の中心O1と、ボス部42の中心O2とを結ぶ延長線Lに対して対称に分割して形成されている。これにより、ボス部42の外径側に突起部を設けるための十分なスペースがとれない場合であっても、各突起部45Aが形成される。また、この変形例においても、各突起部45Aは、複数のボス部42の中心O2を結ぶ仮想円VCよりも径方向外側に設けられればよく、ここでは、固定プレート40Aの最外径位置に形成されている。
【0040】
特に、この変形例では、固定プレート40Aの嵌合孔41の中心O1から突起部45Aの外端部までの半径R1が、ボス部42の雌ねじ(取付孔)43の外端部を通る半径r2より大きければよく、より好ましくは、突起部45Aの内端部を通る半径r1が、半径r2より大きいことがより好ましい。
【0041】
(第2変形例)
図9は、本実施形態の第2変形例の軸受装置の正面図及び斜視図である。
第2変形例の固定プレート40Bでは、短辺40aと長辺40bの境界部分に曲面状の面取りが施されている。この場合にも、各突起部45Bは、固定プレート40Bの嵌合孔41の中心O1と、ボス部42の中心O2とを結ぶ延長線Lに対して対称に分割して形成されている。これにより、第2変形例においても、ボス部42の外径側に突起部を設けるための十分なスペースがとれない場合であっても、各突起部45Bが形成される。また、この変形例においても、各突起部45Bは、複数のボス部42の中心O2を結ぶ仮想円VCよりも径方向外側に設けられればよく、ここでは、固定プレート40Bの面取りされた最外径位置に形成されている。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る軸受装置及び軸受装置用固定プレートについて、
図10及び
図11を参照して説明する。本実施形態の軸受装置10Aでは、第1実施形態のリテーナプレート、即ち、転がり軸受30と不分離、且つ相対回転可能な状態に組み付けられる固定プレート40,40A,40Bの代わりに、ストッパプレート、即ち、転がり軸受30とは分離した状態の固定プレート40Cが使用される。このため、転がり軸受30の外輪31には、小径段部37や係合溝37cは設けられておらず、また、固定プレート40Cの略円形孔41aには、潰し部や逃がし部が設けられていない。
【0043】
この実施形態においても、外輪31をハウジング20に嵌合した際、固定プレート40Cが軸方向において当接する外輪31の当接面31aは、固定プレート40Cが対向するハウジング20の側面(対向面)23よりも所定の距離Hだけ軸方向外側に位置する。その後、ハウジング20のねじ孔22と固定プレート40Cの雌ねじ43を位相合わせして、固定プレート40Cを外輪31と軸方向において当接させるとともに、突起部45をハウジング20の側面23と接触させる。そして、各ボルト12の締め付けによって固定プレート40Cをハウジング20に固定することで、転がり軸受30が固定プレート40Cを介してハウジング20に固定される。
【0044】
固定プレート40Cは、ハウジング20側の側面44で、ハウジング20と対向する位置に、ハウジング20に向かって突出する突起部45を備え、突起部45の突起高さGは、ハウジング20と固定プレート40Cとの対向面間(ハウジング20の側面23と固定プレート40Cの側面44との間)の軸方向隙間H以下である。したがって、ボルト12を雌ねじ43に締結することで、軸受装置10がハウジング20に固定された際、固定プレート40Cの突起部45がハウジング20の側面23に当接するので、固定プレート40Cの変形する量を抑制することができる。
【0045】
即ち、
図12に示すように、突起部を有しない従来の軸受装置100Aでは、ボルト122を固定プレート110の雌ねじ121に締結すると、固定プレート110Aは、図中破線で示す位置から実線で示すように、固定プレート110Aがハウジング103に向かって倒れるように変形する。このとき、外輪105には、矢印Aで示す方向に力が作用するため、外輪軌道104が局部的に変形する虞がある。
【0046】
これに対して、本実施形態の軸受装置10Aによれば、
図11(b)に示すように、ボルト12を雌ねじ43に締結したとき、固定プレート40Cの突起部45がハウジング20の側面23に当接するので、固定プレート40Cの倒れが抑制され、外輪31に作用する矢印Bで示す方向の力がハウジング20によって支承される。従って、固定プレート40Cに作用する引っ張り応力(歪)が抑制されると共に、外輪軌道32の真円度崩れの要因となる局部的な集中応力を抑制することができ、外輪31の固定による外輪軌道32への影響が防止される。
【0047】
即ち、ボルト12の締め付けに伴う固定プレート40Cによる外輪31の押圧力の偏りが生じ難く、外輪軌道32の変形が抑制されて真円度が維持される。これにより、外輪軌道32と玉35との転がり接触状態が適正に維持されて、回転軸等の振動や、ラジアル転がり軸受30の耐久性低下が防止できる。
【0048】
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。なお、本実施形態においても、突起部45の構成は上記に限らず、第1実施形態の第1〜第2変形例のものなどが適用可能である。
【0049】
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0050】
例えば、各突起部45,45A,45Bの形状は、ハウジング20及び固定プレート40,40A,40B,40Cの対向面間の軸方向隙間Hの関係を満足するものであれば、上記実施形態や変形例のものに限定されず、例えば、半球状など、任意の形状とすることができる。
【0051】
ただし、ハウジング20は、固定プレート40,40A,40B,40Cよりも剛性が低いアルミ製のハウジングである場合が多いため、固定プレート40,40A,40B,40Cがハウジング20に取り付けられたとき、突起部45,45A,45Bがハウジング20にめり込むことを防止できるように、各突起部45,45A,45Bの形状は、広い面積を確保することが好ましい。