(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、通常冷房運転時における冷凍サイクルを示したp−h線図を
図1に示す。また、省電力冷房運転時における冷凍サイクルを示したp−h線図を
図2に示す。
【0006】
図1に示すように、通常冷房運転時の冷凍サイクルは、反時計周りに構成される。具体的に、通常冷房運転時において、冷媒は、A−B間において圧縮手段により圧縮されて圧力が増加し、B−C間において凝縮して比エンタルピが低下し、C−D間において膨張手段により減圧されて圧力が低下し、D−A間において蒸発して比エンタルピが増加する。
【0007】
一方で、
図2に示すように、省電力冷房運転時の冷凍サイクルは、時計周りに構成される。具体的に、省電力冷房運転時において、冷媒は、A’−B’間において重力の作用と配管圧損により圧力が低下し、B’−Ca間において凝縮して比エンタルピが低下し、Ca−Cb間において重力の作用により圧力が増加し、Cb−D’間において膨張手段により減圧されて圧力が低下し、D’−A’間において蒸発して比エンタルピが増加する。
【0008】
このように、省電力冷房運転時の冷凍サイクルの高圧側(D’−A’)は通常冷房運転時の冷凍サイクルの低圧側(D−A)に相当し、低圧側(B’−Ca)は通常冷房運転時の冷凍サイクルの高圧側(B−C)に相当する。すなわち、通常冷房運転時の冷凍サイクルと省電力冷房運転時の冷凍サイクルとでは、高圧側と低圧側とが逆転する。このため、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換えた場合、冷媒回路の一部において冷媒圧力が急激に変動し、冷媒回路内において気泡が発生しやすい。
【0009】
この点、特許文献1のように、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換える際に冷媒補充を行うのみでは、冷媒圧力の変動に起因する気泡の発生を適正に抑制できない可能性がある。しかし、省電力冷房運転時に、特に凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路(具体的には、
図2のB´−Cb間)において気泡が発生すると、冷媒の駆動力となるヘッド差が適正に確保されにくくなり、冷凍サイクルが良好に実現されにくくなる。
【0010】
そこで、本発明の課題は、省電力冷房運転に適した冷凍装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1観点に係る冷凍装置は、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、制御部と、を備える。圧縮機及び凝縮器は、室外に配置される。蒸発器は、室内に配置される。蒸発器は、圧縮機及び凝縮器とともに、冷媒回路を構成する。制御部は、状況に応じて、通常冷房運転と省電力冷房運転とを切り換える。通常冷房運転は、圧縮機を駆動させて、冷媒を強制循環させる運転である。省電力冷房運転は、圧縮機を停止させ、凝縮器と蒸発器の設置高低差を利用して冷媒を循環させる運転である。制御部は、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換える場合、移行運転を行い、移行運転の完了後に省電力冷房運転を開始する。移行運転は、圧縮機を駆動させ、冷媒回路において冷媒を強制循環させながら、
凝縮器内の冷媒圧力を
第1閾値以下に低下させる運転である。
第1閾値は、外気温度と室内温度と設置高低差に基づいて定められる値であり、省電力冷房運転時の凝縮器内における冷媒圧力の推定値である。
【0012】
本発明の第1観点に係る冷凍装置では、制御部は、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換える場合、圧縮機を駆動させ冷媒回路において冷媒を強制循環させながら冷媒圧力を所定値以下に低下させる移行運転を行い、移行運転の完了後に省電力冷房運転を開始する。これにより、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換える際、まず移行運転によって冷媒を強制循環させながら冷媒圧力を
第1閾値以下に低下させてから、省電力冷房運転を開始することが可能となる。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち
図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に近づけてから、省電力冷房運転を開始することが可能となる。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動が抑制され、気泡の発生が抑制される。このため、冷媒の駆動力が適正に確保されやすくなる。よって、省電力冷房運転時における冷凍サイクルの安定性が担保され、省電力冷房運転の性能が担保される。
【0013】
また、移行運転によって凝縮器内の冷媒圧力(すなわち、
図1のB−C間の冷媒圧力)が
第1閾値以下に低下してから、省電力冷房運転が開始される。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力が、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち
図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に近づいてから、省電力冷房運転が開始される。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動が高精度に抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【0014】
また、移行運転において、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち
図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に高精度に近づけることが可能となる。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動がさらに高精度に抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【0015】
本発明の第2観点に係る冷凍装置は、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、冷媒配管と、室外電動弁と、過冷却熱交換器と、制御部と、を備える。圧縮機及び凝縮器は、室外に配置される。蒸発器は、室内に配置される。蒸発器は、圧縮機及び凝縮器とともに、冷媒回路を構成する。冷媒配管は、凝縮器の液冷媒側から分岐し、圧縮機の下流側に合流する。室外電動弁は、冷媒配管の途中に設けられている。過冷却熱交換器は、凝縮器の液冷媒側に設けられている。過冷却熱交換器は、蒸発器に向けて流れる冷媒と、冷媒配管のうち室外電動弁の下流側を流れる冷媒と、の間で熱交換を行わせる。制御部は、状況に応じて、通常冷房運転と省電力冷房運転とを切り換える。通常冷房運転は、圧縮機を駆動させて、冷媒を強制循環させる運転である。省電力冷房運転は、圧縮機を停止させ、凝縮器と蒸発器の設置高低差を利用して冷媒を循環させる運転である。制御部は、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換える場合、移行運転を行い、移行運転の完了後に省電力冷房運転を開始する。移行運転は、圧縮機を駆動させ、冷媒回路において冷媒を強制循環させながら、冷媒圧力を所定値以下に低下させる運転である。制御部は、移行運転時に、通常冷房運転時よりも室外電動弁の弁開度が大きくなるように制御する。制御部は、省電力冷房運転時に、室外電動弁を全閉状態に制御する。
【0016】
本発明の第2観点に係る冷凍装置では、制御部は、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換える場合、圧縮機を駆動させ冷媒回路において冷媒を強制循環させながら冷媒圧力を所定値以下に低下させる移行運転を行い、移行運転の完了後に省電力冷房運転を開始する。これにより、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換える際、まず移行運転によって冷媒を強制循環させながら冷媒圧力を所定値以下に低下させてから、省電力冷房運転を開始することが可能となる。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち図1のB−C間)の冷媒圧力を、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に近づけてから、省電力冷房運転を開始することが可能となる。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動が抑制され、気泡の発生が抑制される。このため、冷媒の駆動力が適正に確保されやすくなる。よって、省電力冷房運転時における冷凍サイクルの安定性が担保され、省電力冷房運転の性能が担保される。
【0017】
本発明の第3観点に係る冷凍装置は、第1観点又は第2観点に係る冷凍装置であって、室外ファンをさらに備える。室外ファンは、凝縮器内の冷媒と熱交換する空気流を生成する。制御部は、移行運転において、室外ファンを通常冷房運転時よりも大きい回転数で駆動させる。
【0018】
これにより、移行運転によって凝縮圧力を低下させ、通常冷房運転時における高圧側(
図1のB−C参照)の冷媒圧力を所定値以下に低下させることが、高精度に可能となる。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動が高精度に抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【0019】
本発明の第4観点に係る冷凍装置は、第1観点から第3観点のいずれかに係る冷凍装置であって、制御部は、移行運転において、圧縮機を通常冷房運転時よりも小さい回転数で駆動させる。
【0020】
これにより、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を所定値以下に低下させることが、さらに高精度に可能となる。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動がさらに高精度に抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【0021】
本発明の第5観点に係る冷凍装置は、第1観点から第4観点のいずれかに係る冷凍装置であって、室内ファンをさらに備える。室内ファンは、蒸発器内の冷媒と熱交換する空気流を生成する。制御部は、移行運転において、室内ファンを通常冷房運転時よりも小さい回転数で駆動させる。
【0022】
これにより、移行運転によって蒸発圧力が低下し、通常冷房運転時における低圧側(すなわち
図1のD−A間)の冷媒圧力が低下する。また、これに伴い、通常冷房運転時における高圧側(
図1のB−C参照)の冷媒圧力が低下する。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を所定値以下に低下させることが、さらに高精度に可能となる。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動がさらに高精度に抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【0023】
本発明の第6観点に係る冷凍装置は、第1観点から第5観点のいずれかに係る冷凍装置であって、膨張弁をさらに備える。膨張弁は、蒸発器と凝縮器との間に配置される。制御部は、移行運転において、蒸発器から流出するガス冷媒の過熱度の目標値を通常冷房運転時よりも大きく設定することで、膨張弁の開度を通常冷房運転時よりも絞る方向に制御する。
【0024】
これにより、移行運転において、過熱度(
図1のSH参照)の目標値が大きく設定される。これに伴い、膨張弁の開度が過熱度に応じた開度に絞られ、通常冷房運転時における低圧側(すなわち
図1のD−A間)の冷媒圧力が低下する。また、これに伴い、通常冷房運転時における高圧側(
図1のB−C参照)の冷媒圧力が低下する。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を所定値以下に低下させることが、さらに高精度に可能となる。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動がさらに高精度に抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1
、2観点に係る冷凍装置では、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち
図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に近づけてから、省電力冷房運転を開始することが可能となる。その結果、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動が抑制され、気泡の発生が抑制される。このため、冷媒の駆動力が適正に確保されやすくなる。よって、省電力冷房運転時における冷凍サイクルの安定性が担保され、省電力冷房運転の性能が担保される。
【0026】
本発明の第3観点
に係る冷凍装置では、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動が高精度に抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【0027】
本発明の第4観点から第6観点のいずれかに係る冷凍装置では、省電力冷房運転開始時に、凝縮器から蒸発器に通じる液冷媒流路において冷媒圧力の急激な変動がさらに高精度に抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る空調システム1について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0030】
(1)空調システム1
図3は、本発明の一実施形態に係る空調システム1の概略構成図である。
【0031】
空調システム1は、複数の運転モードを有しており、運転モードに応じて運転状態を切り換え、対象空間の空気調和を実現する装置である。空調システム1において、運転モードの切換えは、コントローラ50(後述)によって制御される。
【0032】
具体的に、空調システム1は、通常冷房モード、省電力冷房モード、暖房モード、及び省電力運転切換モード等の運転モードを有している。
【0033】
空調システム1は、通常冷房モード又は暖房モードにおいては、圧縮機11(後述)を駆動させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行い、冷媒を強制的に循環させる通常冷房運転又は暖房運転を行う。また、省電力冷房モードにおいては、圧縮機11を停止状態とし、室外熱交換器13(後述)と室内熱交換器31(後述)の設置高低差を利用して液冷媒流路中の液冷媒に重力を作用させることで冷媒の駆動力を発生させ、冷媒を循環させる省電力冷房運転を行う。また、省電力運転切換モードにおいては、省電力冷房運転に適した状態を確立するべく、冷媒圧力を調整する冷媒圧力調整運転(特許請求の範囲記載の「移行運転」に相当)を行う。
【0034】
通常冷房モード又は省電力冷房モードには、ユーザによって冷房運転の開始指示が入力されている場合に遷移する。なお、後述するが、通常冷房モードと省電力冷房モードとは、対象空間内の室温Ti及び外気温Toに応じて切り換えられる。暖房モードには、ユーザによって暖房運転の開始指示が入力されている場合に遷移する。省電力運転切換モードには、通常冷房モードから省電力冷房モードへの切換えが行われる際に遷移する。
【0035】
空調システム1は、主として、熱源側ユニットとしての室外ユニット10と、利用側ユニットとしての複数(ここでは2台)の室内ユニット30(第1室内ユニット30a、第2室内ユニット30b)と、を有している。
【0036】
空調システム1においては、室外ユニット10と室内ユニット30とがガス連絡配管GP及び液連絡配管LPによって接続されることで冷媒回路RCが構成されている。
【0037】
(1−1)室外ユニット10
室外ユニット10は、屋上やベランダ等の室外に設置される。本実施形態では、室外ユニット10は、各室内ユニット30よりも高い位置に設置されている。
【0038】
室外ユニット10は、外郭を構成する室外ユニットケーシング(図示省略)内に、主として、複数の冷媒配管(第1冷媒配管P1〜第12冷媒配管P12)と、圧縮機11と、四路切換弁12と、室外熱交換器13と、過冷却熱交換器14と、第1室外電動弁15と、第2室外電動弁16と、バイパス弁17と、室外ファン18と、外気温センサ10a等の各種センサと、室外制御部51と、を有している。
【0039】
第1冷媒配管P1は、一端がガス連絡配管GPの一端と接続され、他端が四路切換弁12に接続されている。
【0040】
第2冷媒配管P2は、一端が四路切換弁12に接続され、他端が圧縮機11の吸入口に接続されている。
【0041】
第3冷媒配管P3は、一端が圧縮機11の吐出口に接続され、他端が四路切換弁12に接続されている。
【0042】
第4冷媒配管P4は、一端が四路切換弁12に接続され、他端が室外熱交換器13に接続されている。
【0043】
第5冷媒配管P5は、一端が室外熱交換器13に接続され、他端が第1室外電動弁15に接続されている。第5冷媒配管P5には、第5冷媒配管P5内の冷媒温度を検出する第1冷媒温度センサ10bが、熱的に接続されている。
【0044】
第6冷媒配管P6は、一端が第1室外電動弁15に接続され、他端が過冷却熱交換器14の第1流路14aに接続されている。
【0045】
第7冷媒配管P7は、一端が過冷却熱交換器14の第1流路14aに接続され、他端が液連絡配管LPに接続されている。第7冷媒配管P7には、第7冷媒配管P7内の冷媒温度を検出する第2冷媒温度センサ10cが、熱的に接続されている。
【0046】
第8冷媒配管P8は、一端が第6冷媒配管P6の両端間に接続され、他端が第2室外電動弁16に接続されている。
【0047】
第9冷媒配管P9は、一端が第2室外電動弁16に接続され、他端が過冷却熱交換器14の第2流路14bに接続されている。
【0048】
第10冷媒配管P10は、一端が過冷却熱交換器14の第2流路14bに接続され、他端が第2冷媒配管P2の両端間に接続されている。
【0049】
第11冷媒配管P11は、一端が第1冷媒配管P1の両端間に接続され、他端がバイパス弁17に接続されている。
【0050】
第12冷媒配管P12は、一端がバイパス弁17に接続され、他端が第4冷媒配管P4の両端間に接続されている。第12冷媒配管P12は、第11冷媒配管P11とともに、冷媒回路RCにおいて、圧縮機11をバイパスする流路であるバイパス流路RPを構成している。
【0051】
圧縮機11は、低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮して吐出する機構である。圧縮機11は、圧縮機モータ11aを内蔵された密閉式の構造を有している。圧縮機11では、ケーシング(図示省略)内に収容されたロータリ式やスクロール式等の圧縮要素(図示省略)が、圧縮機モータ11aを駆動源として駆動される。圧縮機モータ11aは、運転中、室外制御部51によって、インバータ制御され、状況に応じて回転数を調整される。すなわち、圧縮機11は、容量可変である。圧縮機11は、駆動時に、吸入口から低圧冷媒を吸入し、圧縮して高圧のガス冷媒とした後、吐出口から吐出する。
【0052】
四路切換弁12は、運転状況に応じて、冷媒の流れる方向を切り換えるための切換弁である。四路切換弁12は、室外制御部51によって駆動電圧を供給されることで冷媒流路を切り換えられる。具体的に、四路切換弁12は、第1冷媒配管P1と第2冷媒配管P2とを接続するとともに第3冷媒配管P3と第4冷媒配管P4とを接続する第1状態(
図3の四路切換弁12の実線を参照)と、第1冷媒配管P1と第3冷媒配管P3とを接続するとともに第2冷媒配管P2と第4冷媒配管P4とを接続する第2状態(
図3の四路切換弁12の破線を参照)と、を切り換えられる。
【0053】
室外熱交換器13は、通常冷房モード(通常冷房運転)時には冷媒の凝縮器として機能し、暖房モード(暖房運転)時には冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器13は、例えばクロス・フィン・チューブ方式やマイクロチャネル方式の熱交換器であり、複数の伝熱管と複数のフィンを含んでいる(図示省略)。室外熱交換器13は、ガス側が第4冷媒配管P4と接続されており、液側が第5冷媒配管P5と接続されている。
【0054】
過冷却熱交換器14は、例えば二重管型熱交換器である。過冷却熱交換器14は、第1流路14a及び第2流路14bを含んでおり、第1流路14aを流れる冷媒と第2流路14bを流れる冷媒とが熱交換しうる構造を有している。
【0055】
第1室外電動弁15及び第2室外電動弁16は、駆動電圧を供給されることで開度が変化する電動弁である。第1室外電動弁15及び第2室外電動弁16は、開度に応じて、流入する冷媒を減圧する膨張弁、又は冷媒流路を遮断する流路遮断弁として機能する。第1室外電動弁15及び第2室外電動弁16は、室外制御部51によって個別に開度を制御され、運転状況に応じて開度を適宜調整される。例えば、第2室外電動弁16は、後述の冷媒圧力調整運転においては、過冷却度SCが通常冷房運転時よりも大きく設定されることに応じて、通常冷房運転時よりも開度が大きくなるように制御される。
【0056】
バイパス弁17は、駆動電圧を供給されることにより、冷媒流路を開通させる開状態と、冷媒流路を遮断させる閉状態と、を切換可能な電磁弁である。バイパス弁17は、バイパス流路RP上に配置されている。バイパス弁17は、開状態においては、流れてくる冷媒の方向に関わらず、バイパス流路RPを開通させる。バイパス弁17は、室外制御部51により運転状況に応じて制御される。
【0057】
室外ファン18は、外部から室外ユニット10内に流入し室外熱交換器13を通過してから室外ユニット10外へ流出する空気流を生成する送風機である。室外ファン18は、例えばプロペラファンである。室外ファン18は、室外ファンモータ18aに連動して駆動する。室外ファンモータ18aは、室外制御部51によって、駆動を制御され、回転数を適宜調整される。
【0058】
外気温センサ10aは、外気温Toを検出するための温度センサであり、例えばサーミスタ等で構成される。外気温センサ10aは、例えば室外ユニット10の吸気口近傍に配置される。
【0059】
室外制御部51は、室外ユニット10に含まれるアクチュエータの動作を制御する機能部である。室外制御部51は、CPUやメモリ等で構成されるマイクロコンピュータを含む。室外制御部51は、外気温センサ10a、第1冷媒温度センサ10b及び第2冷媒温度センサ10cが電気的に接続されており、それぞれの検出値が適宜入力される。
【0060】
(1−2)室内ユニット30(第1室内ユニット30a、第2室内ユニット30b)
各室内ユニット30は、室内に設置される。室内ユニット30は、例えば壁掛け型や、天井埋込み型、天井吊下げ型である。各室内ユニット30は、主として、複数の冷媒配管(第18冷媒配管P18〜第20冷媒配管P20)と、室内熱交換器31(特許請求の範囲記載の「蒸発器」に相当)と、室内電動弁32(特許請求の範囲記載の「膨張弁」に相当)と、室内ファン33と、室内制御部53と、各種センサと、を有している。
【0061】
第18冷媒配管P18は、一端が液連絡配管LPに接続され、他端が室内電動弁32に接続されている。
【0062】
第19冷媒配管P19は、一端が室内電動弁32に接続され、他端が室内熱交換器31の液側に接続されている。
【0063】
第20冷媒配管P20は、一端が室内熱交換器31のガス側に接続され、他端がガス連絡配管GPに接続されている。第20冷媒配管P20上には、内部のガス冷媒温度を検出可能なガス温度センサ36が熱的に接続されている。
【0064】
室内熱交換器31は、通常冷房モード(通常冷房運転)時には冷媒の蒸発器として機能し、暖房モード(暖房運転)時には冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。室内熱交換器31は、複数の伝熱管(図示省略)及び複数のフィン(図示省略)を有する。
【0065】
室内電動弁32は、駆動電圧を供給されることで開度が変化する電動弁である。室内電動弁32は、開度に応じて、流入する冷媒を減圧する膨張弁、又は冷媒流路を遮断する流路遮断弁として機能する。室内電動弁32は、室内制御部53によって開度を制御され、運転状況に応じて開度を適宜調整される。室内電動弁32は、冷房運転状態にある場合、過熱度SHに応じて開度が決定される。例えば、室内電動弁32は、後述の冷媒圧力調整運転においては、過熱度SHの目標値が通常冷房運転時よりも大きく設定されることに応じて、通常冷房運転時よりも開度が絞られる。
【0066】
室内ファン33は、外部から室内ユニット30内に流入し室内熱交換器31を通過してから室内ユニット30外へ流出する空気流を生成する送風機である。室内ファン33は、例えばプロペラファンやクロスフローファンである。室内ファン33は、室内ファンモータ33aに連動して駆動する。室内ファンモータ33aは、運転中、室内制御部53によって、駆動を制御され、回転数を適宜調整される。
【0067】
室内制御部53は、室内ユニット30に含まれるアクチュエータの動作を制御する機能部である。室内制御部53は、CPUやメモリ等で構成されるマイクロコンピュータを含む。室内制御部53は、通信ケーブルC1を介して室外制御部51と接続されており、互いに信号の送受信を行う。また、室内制御部53は、リモコン(図示省略)を介してユーザの指示を受け付ける。また、室内制御部53は、ガス温度センサ36、及び室温Tiを検出する室温センサ35(図示省略)と電気的に接続されており、それぞれから検出値を適宜入力される。
【0068】
なお、室温センサ35は、例えばサーミスタ等で構成され、室内空間内に配置される。本実施形態では、室温センサ35は、各室内ユニット30内に配置されている。
【0069】
(1−3)連絡配管
ガス連絡配管GP及び液連絡配管LPは、室外ユニット10と各室内ユニット30を結ぶ配管であり、現地にて天井や壁面に沿って設置される。具体的に、ガス連絡配管GPは、一端が第1冷媒配管P1に接続され、他端が第2室内ユニット30bの第20冷媒配管P20に接続されている。ガス連絡配管GPは、両端間において、第1室内ユニット30aの第20冷媒配管P20に接続されている。
【0070】
液連絡配管LPは、一端が第7冷媒配管P7に接続され、他端が第2室内ユニット30bの第18冷媒配管P18に接続されている。液連絡配管LPは、両端間において、第1室内ユニット30aの第18冷媒配管P18に接続されている。
【0071】
ガス連絡配管GPは、鉛直方向(上下方向)に沿って延びる鉛直ガス管81と、水平方向に沿って延びる水平ガス管82と、を含んでいる。また、液連絡配管LPは、鉛直方向(上下方向)に沿って延びる鉛直液管91と、水平方向に沿って延びる水平液管92と、を含んでいる。
【0072】
水平液管92上には、水平液管92内の冷媒圧力を検出可能な液冷媒圧力センサ55が配置されている。液冷媒圧力センサ55は、コントローラ50(後述)と電気的に接続されており、その検出値P
L1に相当する信号を適宜出力している。
【0073】
なお、鉛直ガス管81及び鉛直液管91は、室外ユニット10(より詳細には室外熱交換器13)と各室内ユニット30(より詳細には各室内熱交換器31)との高低差に足りる長さを有している。
【0074】
(1−4)コントローラ50
(1−4−1)
図4は、コントローラ50と、コントローラ50に接続される各部と、を示したブロック図である。
【0075】
空調システム1では、室外制御部51及び各室内制御部53が通信ケーブルC1で接続されることで、各アクチュエータの動作を制御するコントローラ50(特許請求の範囲記載の「制御部」に相当)が構成されている。
【0076】
コントローラ50は、ROM等で構成されるコントローラ記憶部(図示省略)を含んでいる。コントローラ記憶部には、各制御に用いられるプログラムが格納されている。
【0077】
コントローラ50は、各アクチュエータ(具体的には、圧縮機11、四路切換弁12、第1室外電動弁15、第2室外電動弁16、バイパス弁17、室外ファン18(室外ファンモータ18a)、各室内電動弁32、及び各室内ファン33(室内ファンモータ33a))と接続されている。
【0078】
また、コントローラ50は、各センサ(具体的には、外気温センサ10a、第1冷媒温度センサ10b、第2冷媒温度センサ10c、液冷媒圧力センサ55、各室温センサ35、及び各ガス温度センサ36)と接続されている。
【0079】
(1−4−2)
コントローラ50は、運転中、外気温To、室温Ti、設定温度、及び冷媒回路の各部における冷媒温度や冷媒圧力等に応じて、目標とする過熱度SH及び過冷却度SCを設定し、これに応じて各アクチュエータの動作を制御する。
【0080】
また、コントローラ50は、冷房運転開始指示が入力されている状態において、以下の条件aを満たさない場合には通常冷房モードで各アクチュエータを制御し、満たす場合には省電力冷房モードで各アクチュエータを制御する。
室温Ti−10(℃)≧外気温To・・・(条件a)
より詳細には、コントローラ50は、通常冷房モードで冷房運転を行っている状態で上記条件aを満たした場合には、まず、省電力運転切換モードに遷移して各種処理の実行が完了した後、省電力冷房モードに遷移して省電力冷房運転を行う。コントローラ50は、省電力運転切換モードにおいては、
図5に示すような流れで制御を行う。
【0081】
コントローラ50は、省電力運転切換モードに遷移すると、各アクチュエータを制御して、冷媒回路RC内の冷媒圧力を低下させる冷媒圧力調整運転を行う(
図5のステップS101参照)。
【0082】
コントローラ50は、冷媒圧力調整運転の開始後、所定時間t1(ここではt1=1min)が経過したか否かを判定する(
図5のステップS102参照)。
【0083】
コントローラ50は、冷媒圧力調整運転の開始後、所定時間t1(ここではt1=1min)が経過したと判断すれば、冷媒圧力判定処理を実行する(
図5のステップS103参照)。冷媒圧力判定処理においては、省電力モード(省電力冷房運転)時における低圧側(
図2に示す冷凍サイクルのB´−Ca間)の冷媒圧力として推定される値である第1閾値ΔPt1を算出し、液冷媒圧力センサ55の検出値P
L1が第1閾値ΔPt1以下か否かを判定する。
【0084】
冷媒圧力判定処理において、液冷媒圧力センサ55の検出値P
L1が第1閾値ΔPt1以下でなければ、冷媒圧力調整運転を継続しつつ、冷媒圧力判定処理を継続する。冷媒圧力判定処理において、液冷媒圧力センサ55の検出値P
L1が第1閾値ΔPt1以下であれば、冷媒圧力調整運転が完了したと判定して、省電力冷房モードに遷移する。
【0085】
なお、所定時間t1は、室外熱交換器13の容量や他の設計仕様に応じて予め設定される。また、コントローラ50は、外気温To、室温Ti、室外熱交換器13と室内熱交換器31の設置高低差H1等に基づいて定義された第1閾値ΔPt1の算出プログラムを、所定の記憶領域に有している。例えば、設置高低差H1が30mで、外気温15(℃)、室温27(℃)の条件の場合、省電力冷房モード時における凝縮温度は21(℃)(外気温15+6(℃))と算出され、第1閾値ΔPt1は1.49(MPa)と算出される。
【0086】
コントローラ50は、省電力冷房モードで冷房運転を行っている状態において上記条件aを満たさなくなった場合には、通常冷房モードに遷移して通常冷房運転を行う。
【0087】
(2)各運転モードにおける冷媒の流れ及び冷媒の状態変化
以下、各運転モードにおける冷媒の流れについて説明する。なお、以下の説明においては、全ての室内ユニット30(すなわち第1室内ユニット30a及び第2室内ユニット30b)が運転状態にある場合を例に挙げて説明する。
【0088】
(2−1)通常冷房モード時
図6は、通常冷房モード(通常冷房運転)及び省電力運転切換モード(冷媒圧力調整運転)時における冷媒の流れを示した模式図である(二点鎖線矢印は冷媒の流れを示す)。
【0089】
通常冷房モード時には、室外ファン18及び各室内ファン33が駆動状態となる。また、通常冷房モード時には、四路切換弁12が第1状態(
図3の実線で示される状態)に制御される。これにより、圧縮機11の吐出側が第3冷媒配管P3及び第4冷媒配管P4を介して室外熱交換器13のガス側に接続され、かつ、圧縮機11の吸入側が第1冷媒配管P1及び第2冷媒配管P2を介してガス連絡配管GPと接続される。
【0090】
第1室外電動弁15は、最大開度(全開状態)に制御される。第2室外電動弁16は、適宜開度調整され、膨張弁として機能する。バイパス弁17は、閉状態に制御される。このため、バイパス流路RPは、開通していない。
【0091】
各室内電動弁32は、適宜開度調整され、膨張弁として機能する。なお、運転停止状態にある室内ユニット30においては、室内電動弁32は最小開度(全閉状態)に調整され、室内ファン33が駆動停止状態となる。
【0092】
このような状態で、圧縮機11が駆動すると、第2冷媒配管P2を介して、低圧の冷媒が圧縮機11に吸入され、圧縮機11で圧縮されて高圧のガス冷媒となる(
図1のA−B参照)。圧縮機11から吐出された冷媒は、第3冷媒配管P3、四路切換弁12及び第4冷媒配管P4を経由して室外熱交換器13に到達する。
【0093】
室外熱交換器13に到達した冷媒は、室外ファン18によって生成される空気流と熱交換を行い、凝縮して高圧の液冷媒となる。この際、冷媒の比エンタルピが低下する(
図1のB−C参照)。室外熱交換器13から流出した冷媒は、第5冷媒配管P5及び第1室外電動弁15を経由して、第6冷媒配管P6に到達する。第6冷媒配管P6を流れる冷媒は、途中で二手に分岐する。
【0094】
二手に分岐した冷媒の一方は、第8冷媒配管P8を流れて第2室外電動弁16に送られ、開度に応じて減圧される。第2室外電動弁16を通過した冷媒は、第9冷媒配管P9を経由して過冷却熱交換器14の第2流路14bに到達する。第2流路14bに到達した冷媒は、第1流路14aを流れる冷媒と熱交換して加熱され、第10冷媒配管P10を経由して第2冷媒配管P2を流れるガス冷媒に合流する。
【0095】
二手に分岐した冷媒の他方は、過冷却熱交換器14の第1流路14aに到達する。第1流路14aに到達した冷媒は、第2流路14bを流れる冷媒と熱交換して過冷却がついた状態となり、第7冷媒配管P7を経由して液連絡配管LPに到達する。
【0096】
液連絡配管LPに到達した冷媒は、鉛直液管91、水平液管92及び各第18冷媒配管P18を経由して室内電動弁32に送られる。
【0097】
室内電動弁32に送られた冷媒は、室内電動弁32の開度に応じて減圧され、低圧の気液二相冷媒となる(
図1のC−D参照)。室内電動弁32を通過した冷媒は、各第19冷媒配管P19を経由して各室内熱交換器31に到達し、各室内ファン33が生成する空気流と熱交換して蒸発し、低圧のガス冷媒となる。この際、冷媒の比エンタルピが増大する(
図1のD−A参照)。各室内熱交換器31を通過した冷媒は、各第20冷媒配管P20を経由してガス連絡配管GP(水平ガス管82及び鉛直ガス管81)、第1冷媒配管P1、四路切換弁12及び第2冷媒配管P2を流れて、圧縮機11に吸入される。
【0098】
なお、通常冷房モード時においては、第2室外電動弁16と各室内電動弁32の開度、及び圧縮機11の回転数が適宜調整されており、冷媒回路RCを流れる冷媒が高循環量になる場合と、低循環量になる場合がある。
【0099】
(2−2)暖房モード時
図7は、暖房モード(暖房運転)時における冷媒の流れを示した模式図である(二点鎖線矢印は冷媒の流れを示す)。
【0100】
暖房モード時には、室外ファン18及び各室内ファン33が駆動状態となる。また、暖房モード時には、四路切換弁12が第2状態(
図3の破線で示される状態)に制御される。これにより、圧縮機11の吐出側が第3冷媒配管P3及び第1冷媒配管P1を介してガス連絡配管GPと接続され、圧縮機11の吸入側が第2冷媒配管P2及び第4冷媒配管P4を介して室外熱交換器13のガス側に接続される。
【0101】
第1室外電動弁15及び第2室外電動弁16は、適宜開度調整され、膨張弁として機能する。バイパス弁17は、閉状態に制御される。このため、バイパス流路RPは、開通していない。
【0102】
各室内電動弁32は、最大開度(全開状態)に制御される。なお、運転停止状態にある室内ユニット30においては、室内電動弁32は最小開度(全閉状態)に調整され、室内ファン33が駆動停止状態となる。
【0103】
このような状態で、圧縮機11が駆動すると、第4冷媒配管P4及び第2冷媒配管P2を介して、低圧の冷媒が圧縮機11に吸入され、圧縮機11で圧縮されて高圧のガス冷媒となる。圧縮機11から吐出された冷媒は、第3冷媒配管P3、四路切換弁12及び第1冷媒配管P1を経由してガス連絡配管GPに到達する。ガス連絡配管GPに到達した冷媒は、鉛直ガス管81及び水平ガス管82を流れて、各室内熱交換器31に到達する。各室内熱交換器31を流れる冷媒は、各室内ファン33が生成する空気流と熱交換して凝縮し、高圧の液冷媒となる。この際、冷媒の比エンタルピが低下する。
【0104】
各室内熱交換器31を通過した冷媒は、各第19冷媒配管P19、各室内電動弁32、各第18冷媒配管P18、液連絡配管LP(水平液管92及び鉛直液管91)、第7冷媒配管P7、過冷却熱交換器14の第1流路14a、及び第6冷媒配管P6を流れて、第1室外電動弁15に送られる。第1室外電動弁15に送られた冷媒は、減圧されて低圧の気液二相冷媒となる。第1室外電動弁15を通過した冷媒は、第5冷媒配管P5を経由して室外熱交換器13に到達する。室外熱交換器13を流れる冷媒は、室外ファン18が生成する空気流と熱交換して蒸発し、低圧のガス冷媒となる。この際、冷媒の比エンタルピが増大する。室外熱交換器13を通過した冷媒は、第4冷媒配管P4、四路切換弁12及び第2冷媒配管P2を流れて、圧縮機11に吸入される。
【0105】
なお、暖房モード時においては、第1室外電動弁15の開度、及び圧縮機11の回転数が適宜調整されており、冷媒回路RCを流れる冷媒が高循環量になる場合と、低循環量になる場合がある。
【0106】
(2−3)省電力運転切換モード時
省電力運転切換モード時には、バイパス弁が閉状態に制御されてバイパス流路RPが開通しておらず、冷媒は通常冷房モード時と略同一の流れで冷媒回路RCを循環する。但し、省電力運転切換モード時には、冷媒回路RC内の冷媒圧力を第1閾値ΔPt1以下に低下させる冷媒圧力調整運転が行われる。
【0107】
具体的には、冷媒圧力調整運転に係る制御として、冷凍サイクルの高圧側(
図1のB−C間)の冷媒圧力を通常冷房モード(通常冷房運転)時よりも低下させるべく、圧縮機11が通常冷房モード時よりも小さい回転数で駆動するように制御される。
【0108】
また、冷媒圧力調整運転に係る制御として、通常冷房モード時よりも凝縮圧力を低下させることで、室外熱交換器13から流出する液冷媒の冷媒圧力(すなわち冷凍サイクルの高圧側の冷媒圧力)を低下させるべく、室外ファン18が通常冷房モード時よりも大きい回転数で駆動するように制御される。
【0109】
また、冷媒圧力調整運転に係る制御として、冷凍サイクルの高圧側の冷媒圧力を通常冷房モード時よりも低下させるべく、過冷却度SCが大きく設定され、これに伴い第2室外電動弁16が通常冷房モード時よりも大きい開度となるように制御される。
【0110】
また、冷媒圧力調整運転に係る制御として、通常冷房モード時よりも蒸発圧力を低下させることで、各室内熱交換器31から流出するガス冷媒の冷媒圧力(すなわち冷凍サイクルの低圧側(
図1のD−A間)の冷媒圧力)を低下させ、これを起因として冷凍サイクルの高圧側の冷媒圧力を低下させるべく、各室内ファン33が通常冷房モード時よりも小さい回転数で駆動するように制御される。
【0111】
また、冷媒圧力調整運転に係る制御として、冷凍サイクルの低圧側の冷媒圧力を低下させ、これを起因として冷凍サイクルの高圧側の冷媒圧力を低下させるべく、過熱度SHの目標値が通常冷房モード時よりも大きく設定され、これに伴い室内電動弁32が通常冷房モード時よりも開度を絞られるように制御される。
【0112】
なお、上述のように、冷媒圧力調整運転の開始後、所定時間t1が経過した場合において、液冷媒圧力センサ55の検出値P
L1が第1閾値ΔPt1以下となれば、冷媒圧力調整運転は完了する。
【0113】
図8は、冷媒圧力調整運転の完了時における冷媒の状態を示すp−h線図である。なお、
図8の破線部分は、通常冷房運転時における冷凍サイクルを示している。
【0114】
冷媒圧力調整運転が完了した時点においては、低圧側の圧力(
図8のD−A)が、通常冷房モード時における低圧側の圧力(
図1のD−A)と比較して、低下している。また、高圧側(
図8のB−C)の冷媒圧力が、通常冷房モード(通常冷房運転)時における高圧側(
図1のB−C)の冷媒圧力から、第1閾値ΔPt1(あるいは第1閾値ΔPt1の近似値)まで低下している。すなわち、高圧側(
図8のB−C)の冷媒圧力が、省電力冷房モード(省電力冷房運転)時における低圧側(
図2のB´―Ca)と同一(あるいはその近似値)の状態となっている。
【0115】
省電力運転切換モード時には、以下のような流れで冷媒が流れる。
【0116】
すなわち、第2冷媒配管P2を介して、冷媒が圧縮機11に吸入され、圧縮された後に吐出される。この際、冷媒圧力調整運転に係る制御によって圧縮機11の回転数が通常冷房モード時よりも小さく制御されていることから、冷凍サイクルの高圧側の冷媒圧力は、通常冷房モード時と比較して低下する。圧縮機11から吐出された冷媒は、第3冷媒配管P3、四路切換弁12及び第4冷媒配管P4を通過して、室外熱交換器13に到達する。
【0117】
室外熱交換器13に到達した冷媒は、室外ファン18が生成する空気流と熱交換して凝縮する。この際、冷媒圧力調整運転に係る制御によって室外ファン18の回転数が通常冷房モード時よりも大きく制御されていることから、凝縮圧力が通常冷房モード時と比較して低下し、冷凍サイクルの高圧側の冷媒圧力は、通常冷房モード時と比較して低下する。
【0118】
室外熱交換器13を通過した冷媒は、第5冷媒配管P5及び第1室外電動弁15を経由して、第6冷媒配管P6に到達する。第6冷媒配管P6を流れる冷媒は、途中で二手に分岐する。
【0119】
二手に分岐した冷媒の一方は、第8冷媒配管P8を流れて第2室外電動弁16に送られ、開度に応じて減圧された後、第9冷媒配管P9に流出し、過冷却熱交換器14の第2流路14bに到達して第1流路14aを流れる冷媒と熱交換を行う。この際、冷媒圧力調整運転に係る制御によって第2室外電動弁16の開度が通常冷房モード時よりも大きく設定されていることから、通常冷房モード時と比較して、第2流路14bを流れる冷媒量が大きくなり、第1流路14aを流れる冷媒との熱交換量が大きくなる。第2流路14bを通過した冷媒は、第10冷媒配管P10を経由して第2冷媒配管P2を流れるガス冷媒に合流する。
【0120】
二手に分岐した冷媒の他方は、過冷却熱交換器14の第1流路14aに到達する。第1流路14aに到達した冷媒は、第2流路14bを流れる冷媒と熱交換して過冷却がついた状態となる。
【0121】
第1流路14aを通過した冷媒は、第7冷媒配管P7、液連絡配管LPの鉛直液管91、水平液管92及び各第18冷媒配管P18を経由して各室内電動弁32に送られる。各室内電動弁32に送られた冷媒は、各室内電動弁32の開度に応じて減圧される。この際、冷媒圧力調整運転に係る制御によって、各室内電動弁32の開度が通常冷房モード時よりも絞られていることから、通常冷房モード時と比較して、冷凍サイクルの低圧側の冷媒圧力が低下し、これに伴って高圧側の冷媒圧力も低下する。
【0122】
室内電動弁32を通過した冷媒は、各第19冷媒配管P19を経由して各室内熱交換器31に到達し、各室内ファン33が生成する空気流と熱交換して蒸発する。この際、冷媒圧力調整運転に係る制御によって、各室内ファン33の回転数が小さく制御されていることから、蒸発圧力が低下する。その結果、通常冷房モード時と比較して、冷凍サイクルの低圧側の冷媒圧力が低下し、これに伴って高圧側の冷媒圧力も低下する。
【0123】
各室内熱交換器31を通過した冷媒は、各第20冷媒配管P20を経由してガス連絡配管GP(水平ガス管82及び鉛直ガス管81)、第1冷媒配管P1、四路切換弁12及び第2冷媒配管P2を流れて、圧縮機11に吸入される。
【0124】
なお、省電力運転切換モードから省電力冷房モードに切り換えられる時点において、液連絡配管LPの鉛直液管91は、液冷媒で満たされる。
【0125】
(2−4)省電力冷房モード時
図9は、省電力冷房モード(省電力冷房運転)時における冷媒の流れを示した模式図である(二点鎖線矢印は冷媒の流れを示す)。
【0126】
省電力冷房モード時には、バイパス流路RPが開通し、冷媒が圧縮機11をバイパスして冷媒回路RCを循環する。また、省電力冷房モード時には、室外ファン18及び各室内ファン33が駆動状態となり、圧縮機11は駆動停止状態となる。
【0127】
また、省電力冷房モード時には、四路切換弁12が第1状態(
図3の実線で示される状態)に制御される。これにより、圧縮機11の吐出側が第3冷媒配管P3及び第4冷媒配管P4を介して室外熱交換器13のガス側に接続され、かつ、圧縮機11の吸入側が第1冷媒配管P1及び第2冷媒配管P2を介してガス連絡配管GPと接続される。
【0128】
第1室外電動弁15は、最大開度(全開状態)に制御される。第2室外電動弁16は、最小開度(全閉状態)に制御される。バイパス弁17は、開状態に制御される。このため、バイパス流路RPが、開通する。
【0129】
各室内電動弁32は、適宜開度調整され、膨張弁として機能する。なお、運転停止状態にある室内ユニット30においては、室内電動弁32は最小開度(全閉状態)に制御される。
【0130】
省電力冷房モード時には、以下のような流れで冷媒が流れる。
【0131】
すなわち、室外熱交換器13において室外ファン18が生成する空気流と熱交換することで凝縮して液冷媒となった冷媒が、室外熱交換器13から流出し、第5冷媒配管P5及び第1室外電動弁15を経由して、第6冷媒配管P6に到達する。第6冷媒配管P6を通過した冷媒は過冷却熱交換器14の第1流路14aに到達する。
【0132】
第1流路14aを通過した冷媒は、第7冷媒配管P7を流れて、液連絡配管LPの鉛直液管91に到達する。鉛直液管91を通過する液冷媒は、重力の作用により、室外熱交換器13から室内熱交換器31にかけての高低差に応じて圧力が増大する(
図2のCa−Cb参照)。
【0133】
鉛直液管91を通過した液冷媒は、水平液管92及び各第18冷媒配管P18を流れて、各室内電動弁32に到達し、開度に応じて減圧される(
図2のCb−D´参照)。各室内電動弁32を通過した液冷媒は、各第19冷媒配管P19を流れて各室内熱交換器31に到達する。各室内熱交換器31を流れる冷媒は、各室内ファン33が生成する空気流と熱交換して蒸発し、ガス冷媒となる。この際、冷媒の比エンタルピが増大する(
図2のD´−A´参照)。
【0134】
各室内熱交換器31を通過した冷媒は、各第20冷媒配管P20及びガス連絡配管GPの水平ガス管82を流れて鉛直ガス管81に到達する。鉛直ガス管81に到達したガス冷媒は、鉛直ガス管81を流れる際、重力と配管圧損の作用により、鉛直ガス管81の下端から上端にかけての高低差に応じて圧力が下降する(
図2のA´−B´参照)。
【0135】
鉛直ガス管81を通過したガス冷媒は、第1冷媒配管P1、バイパス流路RP(すなわち、第11冷媒配管P11、バイパス弁17及び第12冷媒配管P12)、及び第4冷媒配管P4を流れて、室外熱交換器13に到達する。室外熱交換器13を流れる冷媒は、室外ファン18が生成する空気流と熱交換して凝縮する。この際、冷媒の比エンタルピが低下する(
図2のB´−Ca参照)。室外熱交換器13において凝縮した液冷媒は、第5冷媒配管P5に流出する。
【0136】
なお、通常冷房モード時及び暖房モード時には
図1に示すp−h線図のような冷凍サイクル(すなわち反時計周りの冷凍サイクル)が行われるのに対し、省電力冷房モード時には
図2に示すp−h線図のような冷凍サイクル(すなわち時計周りの冷凍サイクル)が行われる。また、通常冷房モード時及び暖房モード時の冷凍サイクルではB−C間(すなわち凝縮器内の冷媒)が高圧側でD−A間(すなわち蒸発器内の冷媒)が低圧側であるのに対し、省電力冷房モード時の冷凍サイクルではB´−Ca間(すなわち凝縮器内の冷媒)が低圧側でD´−A´間(すなわち蒸発器内の冷媒)が高圧側となっている。つまり、通常冷房モード時及び暖房モード時の冷凍サイクルと、省電力冷房モード時の冷凍サイクルと、は高圧側と低圧側が逆転している。
【0137】
また、省電力冷房モード(省電力冷房運転)時において
図2に示すような冷凍サイクルを実現するうえで、冷媒の主たる駆動力は、室外熱交換器13と室内熱交換器31の設置高低差H1や液冷媒密度等に基づき算出されるヘッド差ΔP
Hである。ヘッド差ΔP
Hは、例えば以下の計算式bから算出される。
ΔP
H=(D
L−D
G)・g・H1・・・(計算式b)
D
L・・・液冷媒密度(kg/m
3)
D
G・・・ガス冷媒密度(kg/m
3)
g・・・重力加速度(m/s
2)
H1・・・凝縮器(室外熱交換器13)と蒸発器(室内熱交換器31)の設置高低差
【0138】
(3)各アクチュエータの動作
以下、
図10及び
図11を参照して、運転状態に応じた各アクチュエータの動作について説明する。
図10及び
図11は、冷房運転開始指示が入力された場合の各アクチュエータの制御例を示すタイミングチャートである。
【0139】
冷房運転開始指示を入力されると、例えば以下のように、各アクチュエータが制御される。
【0140】
期間S1(
図10)においては、条件a(室温Ti−10(℃)≧外気温To)が満たされていないことに応じて、通常冷房モードに遷移している。その結果、四路切換弁12は、第1状態に制御されている。また、第1室外電動弁15、第2室外電動弁16、及び室内電動弁32が、開状態(冷媒流路を開通する状態)に制御されている。また、バイパス弁17が、閉状態(冷媒流路を遮断する状態)に制御されている。また、圧縮機11、室外ファン18、及び室内ファン33が駆動状態(回転数に応じた駆動電圧を供給されている状態)に制御されている。
【0141】
期間S2(
図10)においては、条件aが満たされたことに応じて、省電力運転切換モードに遷移している。その結果、四路切換弁12は第1状態に制御されている。また、第1室外電動弁15、第2室外電動弁16、及び室内電動弁32が、開状態に制御されている。なお、この際、冷媒圧力調整運転に係る制御により、第2室外電動弁16の開度が増大している。バイパス弁17は、閉状態に制御されている。
【0142】
また、圧縮機11、室外ファン18及び室内ファン33が駆動状態に制御されている。なお、この際、通常冷房モード時よりも過熱度SHの目標値が大きく設定されることに伴い、室内電動弁32の開度は通常冷房モード時よりも絞られている。また、圧縮機11の回転数、及び室内ファン33の回転数は、通常冷房モード時よりも小さくなるように制御されている。また、室外ファン18の回転数は、通常冷房モード時よりも大きくなるように制御されている。
【0143】
期間S3(
図10)においては、省電力運転切換モードにおいて所定時間t1が経過するとともに、冷媒圧力判定処理において液冷媒圧力センサ55の検出値P
L1が第1閾値ΔPt1以下と判断されて冷媒圧力調整運転が完了したことに応じて、省電力冷房モードに遷移している。その結果、四路切換弁12は第1状態に制御されている。また、第1室外電動弁15及び室内電動弁32が、開状態に制御されている。第2室外電動弁16は閉状態に制御されている。また、バイパス弁17が開状態に制御され、バイパス流路RPが開通している。また、室外ファン18及び室内ファン33が駆動状態に制御され、が停止状態(駆動電圧を供給されない状態)に制御されている。
【0144】
期間S4(
図11)においては、条件aが満たされなくなったことに応じて、通常冷房モードに遷移している。その結果、四路切換弁12は第1状態に制御されている。また、第1室外電動弁15、第2室外電動弁16、及び室内電動弁32が、開状態に制御されている。またバイパス弁17が閉状態に制御されて、バイパス流路RPが遮断されている。また、圧縮機11、室外ファン18及び室内ファン33が駆動状態に制御されている。
【0145】
期間S6(
図11)においては、冷房運転停止指示が入力されたことに応じて、各アクチュエータへの駆動電圧の供給が停止されている。
【0146】
(4)空調システム1の諸機能
(4−1)省電力性向上機能
空調システム1では、冷房運転開始指示を入力されている状態で条件aを満たすことに応じて、圧縮機11への駆動電圧の供給が停止された状態で冷媒が循環する省電力冷房運転状態に切り換えられる。これにより、対象空間の空気調和を実現するとともに省電力性が向上している。
【0147】
(4−2)省電力運転性能担保機能
空調システム1では、通常冷房モード(通常冷房運転)から省電力冷房モード(省電力冷房運転)に切り換えられる場合、まず省電力運転切換モードに遷移し、圧縮機11を駆動させさせながら冷媒圧力を第1閾値ΔPt1以下に低下させる冷媒圧力調整運転が行われ、冷媒圧力調整運転の完了後、省電力冷房運転が開始される。
【0148】
これにより、通常冷房モードから省電力冷房モードに切り換えられる際に、冷媒を強制循環させながら、冷媒圧力が、省電力冷房運転時における低圧側の圧力の推定値である第1閾値ΔPt1以下に低下した後に、省電力冷房運転が開始されるようになっている。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力が、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち
図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に近づけられてから、省電力冷房運転が開始されるようになっている。その結果、省電力冷房運転開始時に、室外熱交換器13(凝縮器)から各室内熱交換器31(蒸発器)に通じる液冷媒流路(特に液連絡配管LP)において冷媒圧力の急激な変動が抑制され、気泡の発生が抑制されるようになっている。このため、冷媒の駆動力が冷媒回路RC(特に鉛直液管91)において適正に確保されやすくなっている。
【0149】
よって、一般のオフィスビル等の建築物において冬季冷房用の空調装置として実用化される場合のように、蒸発器及び凝縮器間の冷媒連絡配管(LP)に関して配管長が従来よりも大きく、また水平に長く延びる水平配管部(例えば水平液管92等)が設置されるような場合であっても、省電力冷房運転時における冷凍サイクルの安定性が担保され、省電力冷房運転の性能が担保されている。
【0150】
(5)特徴
(5−1)
上記実施形態では、コントローラ50が、通常冷房モード(通常冷房運転)から省電力冷房モード(省電力冷房運転)に切り換える場合、まず省電力運転切換モードに遷移し、圧縮機11を駆動させて冷媒を強制循環させながら冷媒圧力を第1閾値ΔPt1以下に低下させる冷媒圧力調整運転を行い、冷媒圧力調整運転の完了後に省電力冷房運転を開始している。これにより、通常冷房運転から省電力冷房運転に切り換えられる際に、冷媒が強制循環しながら、冷媒圧力が、省電力冷房運転時における低圧側の圧力の推定値である第1閾値ΔPt1以下に低下した後に、省電力冷房運転が開始されるようになっている。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち
図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に近づけてから、省電力冷房運転を開始している。その結果、省電力冷房運転開始時に、室外熱交換器13(凝縮器)から各室内熱交換器31(蒸発器)に通じる液冷媒流路(特に液連絡配管LP)において冷媒圧力の急激な変動が抑制され、気泡の発生が抑制されるようになっている。このため、冷媒の駆動力が適正に確保されやすくなっており、省電力冷房運転時における冷凍サイクルの安定性が担保され、省電力冷房運転の性能が担保されている。
【0151】
(5−2)
上記実施形態では、コントローラ50は、冷媒圧力調整運転において、高圧側の冷媒圧力、すなわち室外熱交換器13(凝縮器)内の冷媒圧力を第1閾値ΔPt1以下に低下させている。これにより、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力が、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち
図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に近づいてから、省電力冷房運転が開始されるようになっている。
【0152】
(5−3)
上記実施形態では、コントローラ50は、冷媒圧力調整運転において、室外ファン18を通常冷房運転時よりも大きい回転数で駆動させている。これにより、冷媒圧力調整運転において、凝縮圧力を低下させ、通常冷房運転時における高圧側(
図1のB−C参照)の冷媒圧力を第1閾値ΔPt1以下に低下させることが、高精度に可能となっている。
【0153】
(5−4)
上記実施形態では、コントローラ50は、冷媒圧力調整運転において、圧縮機11を通常冷房運転時よりも小さい回転数で駆動させている。これにより、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を第1閾値ΔPt1以下に低下させることが、高精度に可能となっている。
【0154】
(5−5)
上記実施形態では、コントローラ50は、冷媒圧力調整運転において、室内ファン33を通常冷房運転時よりも小さい回転数で駆動させている。これにより、冷媒圧力調整運転において、蒸発圧力が低下し、通常冷房運転時における低圧側(すなわち
図1のD−A間)の冷媒圧力が低下するようになっており、これに伴い、通常冷房運転時における高圧側(
図1のB−C参照)の冷媒圧力が低下するようになっている。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を第1閾値ΔPt1以下に低下させることが、さらに高精度に可能となっている。
【0155】
(5−6)
上記実施形態では、コントローラ50は、冷媒圧力調整運転において、室内熱交換器31(蒸発器)から流出するガス冷媒の過熱度SHの目標値を通常冷房運転時よりも大きく設定することで、室内電動弁32の開度を通常冷房運転時よりも絞る方向に制御している。これにより、冷媒圧力調整運転において、通常冷房運転時における低圧側の冷媒圧力が低下し、これに伴い高圧側の冷媒圧力が低下している。すなわち、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を第1閾値ΔPt1以下に低下させることが、高精度に可能となっている。
【0156】
(5−7)
上記実施形態では、コントローラ50は、冷媒圧力調整運転において、外気温To及び室温Tiに基づき、室外熱交換器13内における冷媒圧力を、省電力冷房運転時の冷媒圧力の推定値である第1閾値ΔPt1以下に低下させている。これにより、移行運転において、通常冷房運転時における高圧側(すなわち
図1のB−C間)の冷媒圧力を、省電力冷房運転時における低圧側(すなわち
図2のB’−Ca間)の冷媒圧力に高精度に近づけることが可能となっている。
【0157】
(6)変形例
(6−1)変形例A
上記実施形態では、本発明が空調システム1に適用されていた。しかし、これに限定されず、本発明は、冷媒回路を有する他の冷凍装置に適用されてもよい。例えば、本発明は、給湯システムや除湿装置等の冷凍装置に適用されてもよい。
【0158】
(6−2)変形例B
上記実施形態では、利用側ユニットとして2台の室内ユニット30を有していた。しかし、室内ユニット30の数は、必ずしも2台に限定されず、3台以上であってもよいし、1台のみであってもよい。
【0159】
(6−3)変形例C
上記実施形態では、空調システム1は、運転モードとして暖房モードを有しており、暖房運転を可能に構成されていた。しかし、空調システム1は、必ずしも運転モードとして暖房モードを有している必要はなく、暖房運転不可の構成としてもよい。
【0160】
(6−4)変形例D
上記実施形態では、バイパス弁17は、電磁弁が採用されたが、必ずしも電磁弁である必要はない。例えば、バイパス弁17は、開度調整が可能な電動弁であってもよい。
【0161】
(6−5)変形例E
上記実施形態では、コントローラ50が通常冷房モード及び省電力冷房モードのいずれで制御を行うかを決定する条件aは、以下のように定義されていた。
室温Ti−10(℃)≧外気温To・・・(条件a)
【0162】
しかし、条件aは、必ずしもこれには限定されず、設置環境や設計仕様に応じて適宜変更が可能である。例えば、条件aを、
室温Ti−12(℃)≧外気温To
に変更してもよいし、
室温Ti−8(℃)≧外気温To
に変更してもよい。
【0163】
また、コントローラ50が、上述のような温度条件のみならず、室内で要求される冷房負荷条件(例えば、室内で要求される空調負荷が予め設定された設定負荷を下回るという条件等)に基づいて、通常冷房モード及び省電力冷房モードのいずれで制御を行うかを決定するように構成してもよい。
【0164】
(6−6)変形例F
上記実施形態では、所定時間t1は、1minに設定されていた。しかし、所定時間t1は、必ずしも1minには限定されず、設置環境や設計仕様に応じて適宜変更が可能である。例えば、所定時間t1は、2minに設定されてもよいし、30secに設定されてもよい。
【0165】
(6−7)変形例G
上記実施形態では、冷媒圧力調整運転に係る制御として、以下の(I)から(V)に係る制御が実行された。
(I)圧縮機11が通常冷房モード時よりも小さい回転数で駆動するように制御する。
(II)室外ファン18が通常冷房モード時よりも大きい回転数で駆動するように制御する。
(III)過冷却度SCを大きく設定し、これに伴い第2室外電動弁16が通常冷房モード時よりも大きい開度となるように制御する。
(IV)各室内ファン33が通常冷房モード時よりも小さい回転数で駆動するように制御する。
(V)過熱度SHの目標値を通常冷房モード時よりも大きく設定し、これに伴い室内電動弁32の開度が通常冷房モード時よりも絞られるように制御する。
【0166】
しかし、冷媒圧力調整運転に係る制御として、必ずしもこれら(I)から(V)の全てを実行する必要はなく、適宜省略が可能である。すなわち、高圧側の冷媒圧力が第1閾値ΔPt1に近づく、という効果が実現される限り、(I)から(V)のいずれか1つを実行してもよく、いずれかを組み合わせて実行してもよい。
【0167】
(6−8)変形例H
上記実施形態では、冷媒回路RC内において、通常冷房運転時と省電力冷房運転時の冷媒循環量の差分に相当する量の冷媒が収容するための冷媒貯留タンクは配置されていなかった。しかし、これに限定されず、冷媒回路RC内に冷媒貯留タンクを配置してもよい。
【0168】
(6−9)変形例I
上記実施形態では、省電力運転切換モードの冷媒圧力判定処理において、液冷媒圧力センサ55の検出値P
L1(高圧側の冷媒圧力)が、省電力モード(省電力冷房運転)時における低圧側(
図2に示す冷凍サイクルのB´−Ca´間)の冷媒圧力として推定される値である第1閾値ΔPt1以下であるか否かが判定されていた。しかし、冷媒圧力判定処理は、必ずしも液冷媒圧力センサ55の検出値P
L1が第1閾値ΔPt1以下であるか否かを判定する必要はなく、適宜変更が可能である。
【0169】
例えば、冷媒圧力判定処理では、液冷媒圧力センサ55の検出値P
L1が第1閾値ΔPt1の近似値以下であるか否か、を判定するように変更してもよい。
【0170】
また、冷媒圧力判定処理では、省電力運転切換モード時の第1閾値ΔPt1と比較する圧力を室外機10内部の高圧側の圧力としても良い。係る場合、液冷媒圧力センサ55に代えて、冷媒圧力を検出するセンサを第3冷媒配管P3、第4冷媒配管P4、第5冷媒配管P5、第6冷媒配管P6及び第7冷媒配管P7のいずれかに配置し、係るセンサをコントローラ50と電気的に接続させればよい。このような構成による場合、センサの検出値(すなわち、室外機10内部の高圧側の冷媒圧力の検出値)においては、ヘッド差ΔP
Hの影響を排除することが可能であるため、より高精度な判定を行うことが可能となる。
【0171】
また、冷媒圧力判定処理では、省電力運転切換モード時の冷凍サイクルにおける低圧側(すなわち、
図8のD−A間)の冷媒圧力が所定値以下か否かを判定するように変更してもよい。係る場合、低圧側の冷媒圧力を検出するセンサを、冷媒回路RC内の適当な位置(例えば第1冷媒配管P1上)に適宜配置して、コントローラ50と電気的に接続させればよい。