(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー部材のうち、前記幅方向の外側に位置する側壁が、前記ブラケットのうち、前記幅方向の外側に位置する外側端部と当接することにより、前記カバー部材の下端部が前記幅方向において位置決めされていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、可動レールにおける異物付着の抑制等のために可動レールをカバー部材にて覆うことがある。この場合、振動抑制体の配置位置周辺のスペースに異物が進入して最終的に可動レールに付着してしまうのを抑制すべく、上下方向において振動抑制体の配置位置を跨ぐようにカバー部材を配置するのが望ましい。また、異物の進入を効果的に抑制する上では、カバー部材が極力下方に延びているのがよい。ただし、カバー部材が下方に延びると、カバー部材の下端部が意図せず変位する(バタつく)虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、可動レールを覆うカバー部材を下方に延ばしたときに当該カバー部材の下端部が変位するのを抑制することが可能な車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、車体フロアに固定された固定レールと、該固定レールに沿ってスライド移動する可動レールと、該可動レールの上方に配置され、前記可動レールと共にスライド移動するシート本体と、前記シート本体の下部に設けられ、前記車体フロアでの振動が前記シート本体へ伝わるのを抑える振動抑制体と、前記可動レール
の側面を覆うカバー部材と、を有し、該カバー部材は、上下方向において前記振動抑制体の配置位置を跨ぐように配置されており、前記カバー部材のうち、前記振動抑制体の配置位置よりも上方に位置した部分が前記シート本体に固定され、前記カバー部材の下端部が前記振動抑制体の配置位置よりも下方に位置した部材によって前記シート本体の幅方向において位置決めされてい
て、前記シート本体の下部は、前記可動レールを取り付けるためのブラケットと、該ブラケットを固定するために該ブラケットの上方位置に配置された固定部と、を備え、前記振動抑制体は、上下方向において前記ブラケットと前記固定部との間に介在し、前記カバー部材は、前記可動レールが取り付けられた前記ブラケットを覆い、前記振動抑制体の配置位置よりも下方に位置した前記部材が前記ブラケットであり、前記カバー部材の下端部は、前記ブラケットによって前記幅方向において位置決めされていることにより解決される。
また、前記課題は、車体フロアに固定された固定レールと、該固定レールに沿ってスライド移動する可動レールと、該可動レールの上方に配置され、前記可動レールと共にスライド移動するシート本体と、前記シート本体の下部に設けられ、前記車体フロアでの振動が前記シート本体へ伝わるのを抑える振動抑制体と、前記可動レールの側面を覆うカバー部材と、を有し、該カバー部材は、上下方向において前記振動抑制体の配置位置を跨ぐように配置されており、前記カバー部材のうち、前記振動抑制体の配置位置よりも上方に位置した部分が前記シート本体に固定され、前記カバー部材の下端部が前記振動抑制体の配置位置よりも下方に位置した部材によって前記シート本体の幅方向において位置決めされていて、前記シート本体の下部は、下方に向かって延びた延出部材を備え、前記延出部材は前記振動抑制体から幅方向外側に離間していて、前記延出部材の上端部は前記振動抑制体と上下方向において同じ位置にあり、前記延出部材のうちの少なくとも一部分は、前記振動抑制体の配置位置よりも下方に位置し、前記カバー部材の下端部は、前記延出部材のうちの前記少なくとも一部分によって前記幅方向において位置決めされていることにより解決される。
【0007】
以上のように、本発明の車両用シートでは、可動レールを覆うカバー部材が上下方向において振動抑制体の配置位置を跨ぐように配置されている。そして、カバー部材のうち、振動抑制体の配置位置よりも上方に位置した部分がシート本体に固定されており、カバー部材の下端部が振動抑制体の配置位置よりも下方に位置した部材によって位置決めされている。これにより、カバー部材を下方に延ばしたとしても、カバー部材の下端部の変位を簡易な構成にて抑制することが可能となる。
【0008】
また、上記の車両用シートにおいて、前記シート本体の下部は、前記可動レールを取り付けるためのブラケットと、該ブラケットを固定するために該ブラケットの上方位置に配置された固定部と、を備え、前記振動抑制体は、上下方向において前記ブラケットと前記固定部との間に介在し、前記カバー部材は、前記可動レールが取り付けられた前記ブラケットを覆い、
前記振動抑制体の配置位置よりも下方に位置した前記部材が前記ブラケットであり、前記カバー部材の下端部は、前記ブラケットによって前記幅方向において位置決めされているとよい。
上記の構成では、カバー部材の下端部が、可動レールが取り付けられたブラケットによって位置決めされている。すなわち、可動レール取り付け用のブラケットを、カバー部材の下端部の位置決めに用いることとしている。これにより、カバー部材の下端部の位置決め用に別部材を設ける場合と比較して、部品数を削減することが可能となる。
【0009】
また、上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材のうち、前記幅方向の外側に位置する側壁が、前記ブラケットのうち、前記幅方向の外側に位置する外側端部と当接することにより、前記カバー部材の下端部が前記幅方向において位置決めされているとよい。
上記の構成によれば、カバー部材のうち、幅方向外側に位置する側壁をブラケットのうち、幅方向外側に位置する外側端部と当接させることにより、カバー部材の下端部をより簡易な構成にて位置決めすることが可能となる。
【0010】
また、上記の車両用シートにおいて、前記側壁の下端部には、前記幅方向の内側に向かうように屈曲した屈曲部が形成されており、前記ブラケットの前記外側端部は、上下方向において前記屈曲部が形成された位置まで下方に延出しており、前記屈曲部のうち、前記幅方向において最も内側に位置する部分が前記ブラケットの前記外側端部に当接することにより、前記カバー部材の下端部が前記幅方向において位置決めされているとよい。
上記の構成では、カバー部材の下端部を位置決めするにあたり、カバー部材の側壁の下端部に屈曲部を設け、当該屈曲部のうち、幅方向において最も内側に位置する部分をブラケットの外側端部に当接させることとしている。これにより、カバー部材の側壁の下端部をブラケットの外側端部に当接させ易くなり、結果として、カバー部材の下端部の位置決めをより容易に行うことが可能となる。
【0011】
また、上記の車両用シートにおいて、前記シート本体の下部は、下方に向かって延びた延出部材を備え、前記延出部材
は前記振動抑制体から幅方向外側に離間していて、前記延出部材の上端部は前記振動抑制体と上下方向において同じ位置にあり、前記延出部材のうちの少なくとも一部分は、前記振動抑制体の配置位置よりも下方に位置し、前記カバー部材の下端部は、前記延出部材のうちの前記少なくとも一部分によって前記幅方向において位置決めされているとよい。
上記の構成では、シート本体の下部から下方に向かって延びた延出部材によってカバー部材の下端部が位置決めされている。これにより、カバー部材の下端部の位置決めをより効率よく行うことが可能となる。
【0012】
また、上記の車両用シートにおいて、前記延出部材は、曲面状の外周面を有する線状部材からなり、前記カバー部材のうち、前記幅方向の外側に位置する側壁が、前記線状部材の前記外周面と当接することにより、前記カバー部材の下端部が前記幅方向において位置決めされているとよい。
上記の構成では、カバー部材のうち、幅方向外側に位置する側壁が線状部材の外周面と当接することにより、カバー部材の下端部が位置決めされている。また、線状部材の外周面が曲面状となっているため、カバー部材と線状部材の外周面との接触面積がより小さくなり、カバー部材が線状部材に摺接する際に生じる異音を低減することが可能となる。
【0013】
また、上記の車両用シートにおいて、前記カバー部材は、樹脂材料からなるとよい。
上記の構成では、本発明の効果がより効果的に発揮される。具体的に説明すると、樹脂材料からなるカバー部材は、シート本体の幅方向において荷重が加わった際に同方向に変形し易くなる。換言すると、カバー部材の下端部がシート本体の幅方向に変位し易い状況にある。このような状況では、カバー部材の下端部が変位するのを抑制する本発明の効果が、より効果的に発揮されるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用シートによれば、カバー部材を下方に延ばしたとしても、カバー部材の下端部の変位を簡易な構成にて抑制することが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、カバー部材の下端部を位置決めするために別部材を設ける場合と比較して、部品数を削減することが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、カバー部材のうち、幅方向外側に位置する側壁をブラケットのうち、幅方向外側に位置する外側端部と当接させることで、カバー部材の下端部をより簡易な構成にて位置決めすることが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、カバー部材の側壁の下端部をブラケットの外側端部に当接させ易くなるので、カバー部材の下端部の位置決めをより容易に行うことが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、シート本体の下部から下方に向かって延びた延出部材によってカバー部材の下端部を位置決めすることで、カバー部材の下端部をより効率よく位置決めすることが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、カバー部材のうち、幅方向外側に位置する側壁が、線状部材の外周面と当接することで、カバー部材の下端部を位置決めすることとしている。また、線状部材の外周面が曲面状となっているので、カバー部材が線状部材に摺接する際に生じる異音を低減することが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、カバー部材が樹脂材料からなることにより、カバー部材の下端部の変位を抑制するという本発明の効果がより有意義に発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<本発明の一実施形態に係る車両用シートの構成について>>
以下、本発明の車両用シートについて一例を挙げて説明する。なお、以下に説明する車両用シートの実施形態(以下、本実施形態)は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0017】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向のことであり、車両の走行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両用シートの幅方向、厳密には横幅方向(左右方向)のことであり、シート本体の幅方向に相当する。さらに、以下に説明するシート各部の位置等については、特に断る場合を除き、車両用シートが着座可能な状態にあるとき(すなわち、通常時)の内容となっている。
【0018】
先ず、本実施形態に係る車両用シート(以下、本シートS)の全体構成について概説する。本シートSは、後部座席(厳密には、二列目以降の座席)として車室内で利用されるシートである。ただし、本発明の車両用シートは、運転席や助手席として利用することも可能である。ちなみに、本シートSは、振動抑制構造(振動抑制構造については後に説明する)を採用している。したがって、本シートSは、より振動が生じ易い位置、例えばタイヤの直上位置に配置される座席として用いられる場合に特に有効である。
【0019】
本シートSは、
図1に示すように、シート本体Shとスライドレール機構Rとを主な構成要素として有する。シート本体Shは、乗員が座るシートクッションS1、乗員の背が凭れ掛かるシートバックS2、及び乗員の頭部を支えるヘッドレストS3からなる。シートクッションS1及びシートバックS2は、骨格をなすフレームにウレタン等のパッド材を載置し、更にパッド部材を表皮材で覆うことによって構成されている。なお、シートクッションS1及びシートバックS2の基本構成については概ね公知の構成と同様である。
【0020】
スライドレール機構Rは、シート本体Shを前後方向に沿ってスライド移動させるものであり、シート本体Shの直下位置に一対配置されている。各スライドレール機構Rは、固定レールとしてのロアレールR1と、可動レールとしてのアッパレールR2とを有する。ロアレールR1は、車体フロアに固定されており、前後方向に沿って延出している。
【0021】
アッパレールR2は、ロアレールR1に沿ってスライド移動することが可能な状態で、ロアレールR1に組み付けられている。ロアレールR1に沿ってスライド移動することが可能な状態でアッパレールR2をロアレールR1に組み付けるための構造については、公知であるため、説明を省略することとする。
【0022】
また、アッパレールR2は、シート本体Shの下部に固定されている。つまり、シート本体Shは、アッパレールR2の上方に配置されており、アッパレールR2と共に前後方向にスライド移動する。より具体的に説明すると、通常時、アッパレールR2の状態は、スライドロック機構30によってスライド移動が規制された状態、すなわち、スライドロック状態となっている。一方、シート本体Sh(より厳密には、シートクッションS1)の側部に設けられたスライドロック解除レバーLsが乗員によって操作されると、スライドロック機構30の構成部品がレバー操作に伴って動くようになる。この結果、それまでスライドロック状態にあったアッパレールR2は、スライド移動が許容された状態となる。かかる状態となったアッパレールR2をロアレールR1に沿って前後に動かすと、アッパレールR2及びシート本体Shが一体となってスライド移動するようになる。
【0023】
さらに、本シートSでは、車体フロアで生じた振動がスライドレール機構Rを介してシート本体Shへ伝わるのを抑制するための構造が採用されている。かかる振動抑制構造について説明するにあたり、本実施形態に係るアッパレールR2の構造、並びにシート本体ShにアッパレールR2を固定するための構成等について説明する。
【0024】
本実施形態に係るアッパレールR2は、
図2等に図示したレールブラケット20を介して、シート本体Shの下部に固定されている。より具体的に説明すると、
図5や
図6に示すように、シートクッションフレームCFが側部として備えるサイドフレームf1は、幅方向外側の端部に配置された側壁f11と、側壁f11の下端に固定されており幅方向内側に延出した底壁f12とを有する。なお、本実施形態では、側壁f11と底壁f12とが互いに別体となっており、溶接等によって接合されている。ただし、これに限定されるものではなく、一枚の金属板を加工する等してサイドフレームf1の側壁f11と底壁f12とが一体成形されていてもよい。
【0025】
また、底壁f12の下方位置にはレールブラケット20が固定されている。このレールブラケット20は、アッパレールR2を取り付けるための金属製のブラケットである。そして、レールブラケット20は、その上端部がサイドフレームf1の底壁f12にボルト等の締結部材によって締結されることによって、シート本体Shの下部に固定されている。つまり、底壁f12は、レールブラケット20の上方位置に配置されることで、シート本体Shの下部においてレールブラケット20を固定するための固定部として機能している。
【0026】
以下、本実施形態に係るアッパレールR2及びレールブラケット20の各々の構成について詳しく説明する。
【0027】
アッパレールR2は、
図2に示すように、上方に向かって立ち上がった2枚の金属板からなる立壁部r21を有している。立壁部r21を構成する2枚の金属板の各々は、横向きU字状に折れ曲がった上端部を有する。また、上記2枚の金属板は、折れ曲がった上端部同士が組み合わせられた状態で接合されている。これにより、アッパレールR2の上端部には角筒状部r23が形成されている。
【0028】
さらに、
図2に示すように、角筒状部r23の内空間にはパイプ状の中空体r22が収容されている。この中空体r22には前後方向に沿って貫通孔が形成されている。また、貫通孔の両端開口は、前後方向において角筒状部r23の両端位置と略同一位置にある。そして、貫通孔の両端部には、後述する締結ボルトBが捩じ込まれるようになる。
【0029】
レールブラケット20は、
図2に示すように、前後方向に沿って延出した上壁21と、上壁21の外縁から下方に延出した下がり壁を有する。また、下がり壁のうち、レールブラケット20の前端部に位置する前壁22、及び、後端部に位置する後壁23には、それぞれボルト穴24が形成されている。さらに、前後方向において、前壁22と後壁23との間隔は、アッパレールR2の上端部に形成された角筒状部r23の前後方向における長さよりも若干長くなっている。
【0030】
そして、角筒状部r23の上方にレールブラケット20が覆い被さった状態で、レールブラケット20にアッパレールR2が取り付けられる。具体的に説明すると、アッパレールR2をレールブラケット20に取り付けるに際して、前後方向においてレールブラケット20の前壁22及び後壁23の間に角筒状部r23が挟まれるように、アッパレールR2をセットする。このとき、前壁22及び後壁23の各々に形成されたボルト穴24と、角筒状部r23内に収容された中空体r22の両端開口と、が重なるようにアッパレールR2がセットされる。その上で、上記ボルト穴24に締結ボルトBが挿入され、ボルト先端部が中空体r22の貫通孔に捩じ込まれる。これにより、アッパレールR2は、レールブラケット20に取り付けられるようになり、この結果、シートクッションフレームCFのサイドフレームf1に固定されるようになる。
【0031】
以上のように本シートSでは、アッパレールR2がレールブラケット20を介してシート本体Shの下部に固定されている。さらに、本シートSは、前述したように、車体フロアでの振動がシート本体Shへ伝わるのを抑制するための構成を採用している。より詳しく説明すると、
図3に示すように、シート本体Shの下部に防振体40が設けられている。この防振体40は、車体フロアでの振動がシート本体Shへ伝わるのを抑える振動抑制体に相当する。また、防振体40は、上下方向において、シートクッションフレームCFのサイドフレームf1の底壁f12とレールブラケット20の上壁21との間に介在している。
【0032】
そして、車体フロアでの振動がロアレールR1、アッパレールR2及びレールブラケット20を経由して防振体40まで伝わると、防振体40が前後方向に歪む等して変形するようになる。このように防振体40が変形することで振動エネルギーが吸収されるようになる。換言すると、車体フロアでの振動が防振体40によって減衰するようになる。なお、防振体40を構成する部材については、変形することで防振効果を発揮するものであれば特に制限なく利用することが可能であり、例えば防振ゴムや防振ばねが利用可能である。
【0033】
ところで、本シートSは、アッパレールR2への異物付着等を防止する目的から、アッパレールR2を覆うカバー部材(以下、レールカバー10)を有している。このレールカバー10は、樹脂材料からなる。また、本シートSにおいて、レールカバー10は、
図3及び4を見ると分かるように、レールブラケット20を覆う構成となっている。すなわち、本シートSが備えるレールカバー10は、アッパレールR2が取り付けられたレールブラケット20を覆うことでアッパレールR2を覆う構成となっている。
【0034】
なお、本シートSには、
図3に示すように、シートクッションフレームCFのサイドフレームf1を側方から覆うサイドフレームカバー50が、レールカバー10とは別に設けられている。このサイドフレームカバー50は、レールカバー10よりも幅方向外側に位置した状態でレールカバー10に組み付けられている。
【0035】
レールカバー10についてより詳しく説明すると、本シートSが備えるレールカバー10は、レールブラケット20の前方、後方及び側方に位置する側壁を有し、レールブラケット20を囲むように構成されている。また、レールカバー10は、
図6に示すように、上下方向において防振体40の配置位置を跨ぐように配置されている。つまり、レールカバー10の上端は、防振体40の配置位置よりも上方に位置しており、レールカバー10の下端は、防振体40の配置位置よりも下方に位置している。このように防振体40の配置位置を跨ぐようにレールカバー10が配置されていることで、防振体40の配置位置周辺のスペースに異物が進入して最終的にアッパレールR2に付着してしまうのを、効果的に抑制することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、レールカバー10が防振体40の配置位置付近で上下に分断されることなく、一部品として連続したものとなっている。これにより、レールカバー10が上下に分断された場合に生じる異音を抑制することが可能となる。かかる効果について分かり易く説明するために、仮にレールカバーが上方部分(以下、上部カバー)と下方部分(以下、下部カバー)に分割された構成を想定して説明する。
【0037】
レールカバーが上部カバーと下部カバーに分割されて構成されている場合、上部カバーは、防振体40の配置位置よりも上方に位置する部材に固定され、下部カバーは、防振体40の配置位置よりも下方に位置する部材に固定されることになる。また、防振体40の配置位置周辺のスペースに異物が進入するのを抑える目的から、上部カバーの下端部と下部カバーの上端部とが前後方向や左右方向で重なるように、各カバーが対応する部材に固定される。このような構成において防振体40が振動エネルギー吸収のために変形すると、上部カバーが固定された部材に対して下部カバーが固定された部材が近接した際に、カバー同士が衝突し、異音が発生するようになる。
【0038】
これに対して、本シートSに備えられたレールカバー10は、前述したように一部品として連続した構成になっている。このため、本シートSでは、レールカバーが上部カバーと下部カバーとに分かれている場合のようにカバー同士が衝突して異音が発生することもない。
【0039】
また、本シートSに備えられたレールカバー10についてより詳しく説明すると、レールカバー10のうち、防振体40の配置位置よりも上方に位置した部分がシート本体Shに固定されている。厳密には、
図6に示すように、シートクッションフレームCFのサイドフレームf1のうちの側壁f11にボルト等によって固定されている。
【0040】
一方、アッパレールR2への異物付着を効果的に抑制する目的から、レールカバー10は比較的下方に向かって長く延びている。しかしながら、レールカバー10が下方に延びた構成では、その下端部が意図せず変位する(バタつく)可能性がある。そこで、本シートSでは、レールカバー10の下端部のバタツキを効果的に抑制する構成を採用している。かかる構成が本シートSの特徴であり、以下、当該特徴的構成について
図4乃至6を参照しながら説明することとする。
【0041】
レールカバー10の構成について改めて説明すると、レールカバー10は、レールブラケット20の前方、後方及び側方に位置する側壁を有する。このうち、幅方向外側でレールブラケット20と隣り合う側壁は、幅方向外側に位置する側壁に相当し、以下、外側壁11と呼ぶ。また、幅方向内側でレールブラケット20と隣り合う側壁は、幅方向内側に位置する側壁に相当し、以下、内側壁12と呼ぶ。外側壁11及び内側壁12は、いずれも下方に向かって延出している。なお、外側壁11の延出量は、
図6に示すように内側壁12の延出量に比べて幾分長くなっている(換言すると、外側壁11の下端は、内側壁12の下端よりも下方に位置している)。
【0042】
また、外側壁11は、延出方向の中途位置にて幅方向内側に向かうように屈曲し、幅方向内側に幾分延びた後に再び下方に向かって延出している。さらに、外側壁11の下端部は、
図6に示すように再度幅方向内側に向かうように屈曲し、略L字状の屈曲部13を形成している。同様に、内側壁12の下端部は、
図6に示すように幅方向外側に向かうように屈曲し、略逆L字状の屈曲部14を形成している。
【0043】
次に、レールカバー10周辺の構成について説明する。レールカバー10の周辺、特に外側壁11及び内側壁12の周辺には、
図6に示すように、前述したレールブラケット20に加え、変形規制ワイヤ60及びハーネス規制ワイヤ65が設けられている。
【0044】
変形規制ワイヤ60は、延出部材に相当し、シート本体Shの下部に設けられている。より具体的に説明すると、変形規制ワイヤ60は、金属製の線状部材を折り曲げ加工することで構成されている。なお、本実施形態では、
図4に示すように、変形規制ワイヤ60の形状が側方視で略U字状となっている。また、変形規制ワイヤ60を構成する線状部材は、丸棒状の部材である。つまり、変形規制ワイヤ60は、曲面状の外周面を有する線状部材によって構成されている。
【0045】
また、変形規制ワイヤ60は、
図4及び5に示すように、シートクッションフレームCFのサイドフレームf1に取り付けワイヤ61を介して固定されており、下方に向かって延出している。さらに、
図6に示すように、変形規制ワイヤ60のうち、取り付けワイヤ61に固定された上端部を除いた大部分が、防振体40の配置位置よりも下方に位置している。さらにまた、変形規制ワイヤ60の下端部は、
図6に示すように幅方向外側でレールブラケット20と隣り合い、厳密には、レールブラケット20の幅方向外側端部に位置する側方壁25の直ぐ脇に位置している。
【0046】
ハーネス規制ワイヤ65は、シートクッションS1内に配索されたハーネス(不図示)の経路を規制するために設けられたものであり、金属製の線状部材を折り曲げ加工することで構成されている。また、ハーネス規制ワイヤ65は、シートクッションフレームCFの下端部に固定されており、下方に向かって延出している。さらに、ハーネス規制ワイヤ65の下端部は、
図6に示すように防振体40の配置位置よりも下方に位置している。さらにまた、ハーネス規制ワイヤ65の下端部は、
図6に示すように幅方向内側でレールブラケット20と隣り合う位置に配置されている。
【0047】
レールブラケット20の構成について改めて説明すると、レールブラケット20の幅方向両端部には、上壁21から下方に向かって延出した下がり壁、すなわち側方壁25が設けられている。さらに、幅方向外側端部に設けられた側方壁25の一部分には、他の部分と比較して幾分長く延びた舌状の垂下部25aが設けられている。この垂下部25aは、
図4及び5に示すように、前後方向において断続的に複数(本実施形態では2つ)設けられている。
【0048】
また、
図5及び6に示すように、レールブラケット20の内側にはカバーブラケット70が配置されている。このカバーブラケット70は、レールブラケット20の上壁21の下方に配置された部品を保護するための鋼板部材であり、当該部品を下方から覆うように配置されている。具体的に説明すると、カバーブラケット70は、レールブラケット20の幅方向両端部に設けられた側方壁25の間に挟まれた位置に配置されている。
【0049】
そして、カバーブラケット70によって保護される部品は、レールブラケット20及びカバーブラケット70によって囲まれる空間内に配置されることで、カバーブラケット70による保護を受けている。なお、カバーブラケット70によって保護される部品は、特に制限されるものではない。一例を挙げると、シート本体Sh及びアッパレールR2が前後方向にスライド移動したときに連動して動く可動部材、あるいは、スライド移動後のアッパレールR2の位置に応じて作動する機械式若しくは電子式の位置検知機器であってもよい。ちなみに、
図6に図示の構成では、アッパレールR2が所定位置よりも前方まで移動したときに作動する作動体80が、カバーブラケット70によって保護される部品として設けられている。
【0050】
また、カバーブラケット70は、断面が略U字状となった形状になっている。すなわち、カバーブラケット70の幅方向両端部は、上方に向かうように折れ曲っている。そして、カバーブラケット70の幅方向両端部のうち、上方に向かって立ち上がった部分が、それぞれレールブラケット20の側方壁25に接合されている。換言すると、レールブラケット20の各側方壁25は、その内側面にてカバーブラケット70の幅方向端部と当接している。かかる構成により、各側方壁25の内向きへの倒伏がカバーブラケット70によって抑止されることになる。
【0051】
なお、レールブラケット20にアッパレールR2が取り付けられた状態では、
図6に示すように、カバーブラケット70の直下位置にアッパレールR2の上端部(図中、破線にて記載)が位置するようになる。より厳密に説明すると、カバーブラケット70の下端面にアッパレールR2の天井面(上端面)が当接した状態で、アッパレールR2がレールブラケット20に取り付けられている。
【0052】
次に、レールカバー10と周辺部品との関係について説明すると、レールカバー10の内側壁12は、その下端部にてハーネス規制ワイヤ65と係合している。より具体的に説明すると、
図6に示すように、内側壁12の下端部に形成された屈曲部14の角部に、ハーネス規制ワイヤ65の下端部があてがわれている。これにより、内側壁12の下端部は、幅方向において位置決めされた状態になっている。ここで、「位置決めされる」とは、位置が保持された状態になることを意味し、具体的には、湾曲等の変形に起因して変位しないように(バタつかないように)規制された状態になることを意味する。
【0053】
一方、レールカバー10の外側壁11については、その下端部が変形規制ワイヤ60及びレールブラケット20と当接している。これにより、外側壁11の下端部についても幅方向において位置決めされた状態となっている。より詳しく説明すると、外側壁11の下端部は、
図6に示すように、その内側面(幅方向内側に位置する側面)にて変形規制ワイヤ60の外周面と当接している。なお、本実施形態において、外側壁11の下端部のうち、変形規制ワイヤ60の外周面と当接している部分は、屈曲部13の上方に位置する部分、厳密には、幅方向内側に向かって屈曲した後に再び下方に向かって延出した部分である。
【0054】
また、
図6に示すように、外側壁11の下端部に形成された屈曲部13がレールブラケット20中、幅方向外側端部に位置する側方壁25と当接している。より厳密に説明すると、屈曲部13のうち、幅方向において最も内側に位置する部分が幅方向外側端部に位置する側方壁25の垂下部25aと当接している。つまり、垂下部25aは、屈曲部13が当接可能となるように、上下方向において屈曲部13が形成された位置まで下方に延出している。
【0055】
以上のように本シートSでは、外側壁11の下端部が変形規制ワイヤ60の外周面及びレールブラケット20の側方壁25と当接することで、幅方向において位置決めされた状態となっている。このような構成であれば、比較的簡易な構成にて外側壁11の下端部のバタツキを抑制することが可能となる。
【0056】
また、本シートSでは、変形規制ワイヤ60の外周面が曲面状となっている。このため、変形規制ワイヤ60の外周面が平面となっている場合と比較して、外側壁11と変形規制ワイヤ60の外周面との接触面積がより小さくなる。これにより、外側壁11が変形規制ワイヤ60に摺接する際に生じる異音が低減されるようになる。
【0057】
また、変形規制ワイヤ60は、
図4及び5に示したように、下方に延出する第一延出部62を前後方向において互いに離れた位置に備えると共に、第一延出部62の下端部同士を連結するために前後方向に延出した第二延出部63を備える。ここで、第二延出部63は、その前端から後端に亘って外側壁11と当接している。つまり、変形規制ワイヤ60は、前後方向に沿って外側壁11と当接していることになる。これにより、外側壁11の下端部のバタツキを効率よく抑制することが可能となる。
【0058】
さらに、本シートSでは、外側壁11の下端部のうち、屈曲部13の上方に位置する部分が変形規制ワイヤ60の外周面と当接している。また、外側壁11の下端部に形成された屈曲部13は、変形規制ワイヤ60よりも幅方向内側に位置するレールブラケット20の側方壁25と当接している。このように外側壁11は、幅方向において異なる位置に配置された複数の部材にそれぞれ当接している。これにより、外側壁11の下端部のバタツキを一段と効率よく抑制することが可能となる。
【0059】
さらにまた、本シートSでは、レールブラケット20の幅方向外側端部に位置した側方壁25のうち、外側壁11の下端位置まで延出した垂下部25aに外側壁11の下端部が当接している。一方、垂下部25aは、前後方向において断続的に複数設けられている。このような構成であれば、垂下部25aがレールブラケット20の前端から後端に亘って連続した状態で設けられている構成に比べて、レールブラケット20をより軽量化することが可能となる。
【0060】
以上までに本発明の車両用シートの構成例を説明してきたが、上述した構成例に限定されるものではなく、他の構成例も考えられる。例えば、上記の構成例では、レールカバー10の下端部が変形規制ワイヤ60やレールブラケット20の側方壁25と当接することで幅方向において位置決めされることとした。ただし、レールカバー10の下端部を位置決めする構成については、上記の構成に限定されるものではない。一例を挙げると、レールブラケット20の側方壁25にスリット状の係合穴(不図示)を形成し、かかる係合穴にレールカバー10の下端部を挿通して係合することで当該下端部を幅方向において位置決めする構成が考えられる。
【0061】
また、上記の構成例では、アッパレールR2がレールブラケット20を介してシート本体Shに固定されていることとしたが、これに限定されるものではない。つまり、レールブラケット20を用いず、アッパレールR2をシート本体Shの下部に直接固定することとしてもよい。このような構成では、シート本体Shのうち、アッパレールR2の上端部が取り付けられる部分とアッパレールR2の上端部との間に防振体40が配置されることになる。
【0062】
また、上記の構成例では、レールカバー10の下端部を位置決めするために、レールカバー10の下端部をレールブラケット20の側方壁25に当接させることとした。ただし、レールカバー10の下端部を当接させる部材については、防振体40の配置位置よりも下方に位置する部材であればよく、レールブラケット20に限定されるものではない。例えば、前述したカバーブラケット70が下方に延出した部分を備えており、当該部分にレールカバー10の下端部が当接することで幅方向において位置決めされることとしてもよい。
【0063】
また、上記の構成例では、レールカバー10が樹脂材料からなることとした。樹脂材料からなるレールカバー10であれば、幅方向において荷重が加わった際に同方向に変形し易くなる。換言すると、樹脂材料からなるレールカバー10であれば、その下端部が幅方向にバタつき易くなる。このような構成であれば、レールカバー10の下端部のバタツキを抑制するという本発明の効果がより効果的に発揮されるようになる。ただし、レールカバー10の材質については、樹脂材料に限定されるものではなく、例えば金属材料によってレールカバー10が構成されてもよい。