(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カスケード接続された複数のハブと、これらハブを介して接続された時分割多次元接続方式に基づいて無線通信を行う複数の無線電話端末と、これら無線電話端末を電話網に交換接続する電話制御装置とを有し、前記電話制御装置が、当該無線通信に用いる各タイムスロットの基準時間位置を示す同期パルス信号を生成し、前記ハブを介して前記各無線電話端末に配信し、前記各無線電話端末が前記同期パルス信号に基づいてそれぞれに割り当てられているタイムスロットに関するスロット同期タイミングを特定して無線通信を行う電話システムであって、
前記ハブは、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を前記電話制御装置へ通知する経路確認部と、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を前記電話制御装置へ通知する線路長測定部とを備え、
前記電話制御装置は、前記各ハブから通知された前記経路情報および前記線路長情報に基づいて、前記無線電話端末ごとに、当該無線電話端末における前記同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該無線電話端末に対して通知する同期制御部を備え、
前記無線電話端末は、前記同期パルス信号に基づいて前記スロット同期タイミングを特定するとともに、前記端末遅延補正値に基づいて当該スロット同期タイミングを補正するタイミング特定部を備える
ことを特徴とする電話システム。
カスケード接続された複数のハブと、これらハブを介して接続された時分割多次元接続方式に基づいて無線通信を行う複数の無線電話端末と、これら無線電話端末を電話網に交換接続する電話制御装置とを有し、前記電話制御装置が、当該無線通信に用いる各タイムスロットの基準時間位置を示す同期パルス信号を生成し、前記ハブを介して前記各無線電話端末に配信し、前記各無線電話端末が前記同期パルス信号に基づいてそれぞれに割り当てられているタイムスロットに関するスロット同期タイミングを特定して無線通信を行う電話システムで用いられる前記無線電話端末であって、
前記同期パルス信号に基づいて前記スロット同期タイミングを特定するとともに、前記電話制御装置により、前記各ハブから通知された当該ハブの接続機器に関する経路情報および線路長情報に基づいて、計算されて通知された、当該無線電話端末における前記同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値に基づいて、当該スロット同期タイミングを補正するタイミング特定部を備える
ことを特徴とする無線電話端末。
カスケード接続された複数のハブと、これらハブを介して接続された複数の内線電話端末と、これら内線電話端末を電話網に交換接続する電話制御装置とを有し、前記電話制御装置が、前記各内線電話端末でそれぞれ実行する特定の処理動作をこれら内線電話端末間で同期させるための同期パルス信号を生成し、前記ハブを介して前記各内線電話端末に配信し、前記各内線電話端末が、前記同期パルス信号に基づいて前記処理動作の動作タイミングを同期させる電話システムであって、
前記ハブは、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を前記電話制御装置へ通知する経路確認部と、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を前記電話制御装置へ通知する線路長測定部とを備え、
前記電話制御装置は、前記各ハブから通知された前記経路情報および前記線路長情報に基づいて、前記内線電話端末ごとに、当該内線電話端末における前記同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該内線電話端末に対して通知する同期制御部を備え、
前記内線電話端末は、前記同期パルス信号に基づいて前記動作タイミングを特定するとともに、前記端末遅延補正値に基づいて当該動作タイミングを補正するタイミング特定部を備える
ことを特徴とする電話システム。
カスケード接続された複数のハブと、これらハブを介して接続された複数の端末および管理装置とを有し、前記管理装置が、前記各端末でそれぞれ実行する特定の処理動作をこれら端末間で同期させるための同期パルス信号を生成し、前記ハブを介して前記各端末に配信し、前記各端末が、前記同期パルス信号に基づいて前記処理動作の動作タイミングを同期させる通信システムであって、
前記ハブは、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を前記管理装置へ通知する経路確認部と、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を前記管理装置へ通知する線路長測定部を備え、
前記管理装置は、前記各ハブから通知された前記経路情報および前記線路長情報に基づいて、前記端末ごとに、当該端末における前記同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該端末に対して通知する同期制御部を備え、
前記端末は、前記同期パルス信号に基づいて前記動作タイミングを特定するとともに、前記端末遅延補正値に基づいて当該動作タイミングを補正するタイミング特定部を備える
ことを特徴とする通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電話システムにおいて、このようなDECT方式に代表される時分割多元接続方式の無線システムを用いる場合、前述したように、自己に割り当てられたタイムスロットに合わせて各無線電話端末が無線親機と無線子機との間で無線通信する必要がある。このため、電話システムでは、電話制御装置から内線伝送路を介して各無線電話端末の無線親機に、タイムスロット同期用の同期パルス信号を配信し、無線親機がこの同期パルス信号を基準時間位置として、自己のタイムスロットの開始タイミングを特定するものとなっている。
【0008】
一方、電話システムでは、内線電話端末としてIP電話端末を用いる場合、LANを用いた内線伝送路で電話制御装置と各内線電話端末とを接続するとともに、各内線電話端末への給電は、PoE方式(IEEE 802.3af)に基づき内線伝送路の途中に設けられたパブ(ハブ)から給電するものとなっている。また、電話システムでは、LANケーブル内の給電線を利用して、この給電線に電話制御装置からパルス状の同期パルス信号をフレーム先頭タイミングに合わせて繰り返し重畳することにより、各無線電話端末へ同期パルス信号を配信している。
【0009】
従来、このような電話システムでは、内線電話端末数の増加や内線伝送路の延長に応じて、ハブをカスケード接続して対応するものとなっていた(例えば、特許文献2など参照)。このような接続形態によれば、LANケーブル内の給電線はハブで終端される。このため、ハブでは、電話制御装置側の給電線から配信された同期パルス信号を検出し、端末側の給電線へ再生出力することになる。
【0010】
しかしながら、このような従来技術では、LANケーブル内の給電線に同期パルス信号を重畳して配信する方式であるため、内線伝送路の延長に応じて、同期パルス信号の伝搬時間が増大し、無線電話端末におけるタイムスロット同期タイミングの遅れの原因となる。また、ハブで同期パルス信号を再生出力しているため、必然的に同期パルス信号の再生動作によっても遅れが生じる。したがって、ハブのカスケード接続段数が増加すると、同期パルス信号の再生所要時間が増大し、無線電話端末におけるタイムスロット同期タイミングの遅れの原因となる。
【0011】
このような同期パルス信号の遅延により、無線電話端末におけるタイムスロット同期タイミングが遅れた場合、自己に割り当てられた本来のタイムスロットより遅れてデータ送信を開始することになる。このため、次のタイムスロットまでデータ送信が食い込んで、これらタイムスロット間における干渉が発生して、他の無線電話端末における無線通信に支障を来すことになる。
【0012】
この際、タイムスロット同期タイミングの遅れは、無線システムのタイムスロットに設定されているスロットずれ許容範囲であれば問題ない。したがって、従来は、このスロットずれ許容範囲を満たすよう同期パルス信号の遅延を抑制するため、無線電話端末を接続する位置について、電話制御装置との間にカスケード接続可能なハブの台数や内線伝送路の線路長を制限する必要があった。このため、無線電話端末を設置する際、内線伝送路を自由に構成できないという問題点があった。
【0013】
また、以上では、電話システムに無線システムを適用した場合を例として、タイムスロット同期タイミングの遅れによる問題点について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電話システムでは、着信表示時における着信LEDの点滅開始/停止動作や着信音出力開始/停止動作など、各内線電話端末での処理動作を同期させる場合に、前述と同様の同期パルス信号を用いることも考えられる。これら動作タイミングにずれが生じると、利用者に違和感や不快感を与える場合があるからである。
【0014】
この際、システム変更のため内線伝送路を延長したりハブのカスケード接続段数を増加させたりした場合、内線伝送路上の接続位置に応じて、それぞれの内線電話端末で同期パルス信号の到達時刻にばらつきが生じる。このため、これら内線電話端末間において、動作タイミングにずれが生じることになる。特に、可視表示や可聴表示のずれに対して人は敏感であり、僅かなずれであっても利用者が違和感や不快感として感じ、結果として品質評価の低下につながることもある。
【0015】
また、このような問題点は、電話システムに限定されるものではない。カスケード接続された複数のハブを介して複数の端末が管理装置に接続されているような通信システムにおいて、管理装置からハブを介して同期パルス信号を各端末に配信し、各端末がこの同期パルス信号に基づいてそれぞれの動作の動作タイミングを同期させる場合にも、前述と同様の問題点が生ずることになる。
【0016】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、カスケード接続されるハブの台数や伝送路の線路長により同期パルス信号の到達にばらつきが発生しても、各端末で動作タイミングを適切に特定できる同期制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような目的を達成するために、本発明にかかる電話システムは、カスケード接続された複数のハブと、これらハブを介して接続された時分割多次元接続方式に基づいて無線通信を行う複数の無線電話端末と、これら無線電話端末を電話網に交換接続する電話制御装置とを有し、前記電話制御装置が、当該無線通信に用いる各タイムスロットの基準時間位置を示す同期パルス信号を生成し、前記ハブを介して前記各無線電話端末に配信し、前記各無線電話端末が前記同期パルス信号に基づいてそれぞれに割り当てられているタイムスロットに関するスロット同期タイミングを特定して無線通信を行う電話システムであって、前記ハブは、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を前記電話制御装置へ通知する経路確認部と、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を前記電話制御装置へ通知する線路長測定部とを備え、前記電話制御装置は、前記各ハブから通知された前記経路情報および前記線路長情報に基づいて、前記無線電話端末ごとに、当該無線電話端末における前記同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該無線電話端末に対して通知する同期制御部を備え、前記無線電話端末は、前記同期パルス信号に基づいて前記スロット同期タイミングを特定するとともに、前記端末遅延補正値に基づいて当該スロット同期タイミングを補正するタイミング特定部を備えている。
【0018】
また、本発明にかかる上記電話システムの一構成例は、前記電話制御装置が、前記線路長とこの線路長による遅延を補正するための線路遅延補正値との対応関係を示す線路補正値算出テーブルと、前記ハブのハブ接続段数とこれらハブによる遅延を補正するためのハブ遅延補正値との対応関係を示すハブ遅延補正値算出テーブルとをさらに備え、前記同期制御部は、前記端末遅延補正値を通知する際、前記線路長情報および前記経路情報に基づいて、前記無線電話端末ごとに、当該無線電話端末までの線路長およびハブ接続段数を計算し、前記線路補正値算出テーブルから求めた当該線路長に対応する線路遅延補正値と、前記ハブ遅延補正値算出テーブルから求めた当該ハブ接続段数に対応するハブ遅延補正値とを含む前記端末遅延補正値を通知するようにしたものである。
【0019】
また、本発明にかかる上記電話システムの一構成例は、前記線路遅延補正値および前記ハブ遅延補正値は、遅延を補正するための補正時間を指数化した値からなり、前記無線電話端末は、前記線路遅延補正値と実際の線路補正時間との対応関係を示す線路補正時間算出テーブルと、前記ハブ遅延補正値と実際のハブ補正時間との対応関係を示すハブ補正時間算出テーブルとをさらに備え、前記タイミング特定部は、前記スロット同期タイミングを補正する際、前記線路補正時間算出テーブルから求めた前記端末遅延補正値に含まれる前記線路遅延補正値に対応する線路補正時間と、前記ハブ補正時間算出テーブルから求めた前記ハブ遅延補正値に対応するハブ補正時間とに基づいて、前記スロット同期タイミングを補正するようにしたものである。
【0020】
また、本発明にかかる無線電話端末は、カスケード接続された複数のハブと、これらハブを介して接続された時分割多次元接続方式に基づいて無線通信を行う複数の無線電話端末と、これら無線電話端末を電話網に交換接続する電話制御装置とを有し、前記電話制御装置が、当該無線通信に用いる各タイムスロットの基準時間位置を示す同期パルス信号を生成し、前記ハブを介して前記各無線電話端末に配信し、前記各無線電話端末が前記同期パルス信号に基づいてそれぞれに割り当てられているタイムスロットに関するスロット同期タイミングを特定して無線通信を行う電話システムで用いられる前記無線電話端末であって、前記同期パルス信号に基づいて前記スロット同期タイミングを特定するとともに、前記電話制御装置により、前記各ハブから通知された
当該ハブの接続機器に関する経路情報および線路長情報に基づいて、計算されて通知された、当該無線電話端末における前記同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値に基づいて、当該スロット同期タイミングを補正するタイミング特定部を備えている。
【0021】
また、本発明にかかる他の電話システムは、カスケード接続された複数のハブと、これらハブを介して接続された複数の内線電話端末と、これら内線電話端末を電話網に交換接続する電話制御装置とを有し、前記電話制御装置が、前記各内線電話端末でそれぞれ実行する特定の処理動作をこれら内線電話端末間で同期させるための同期パルス信号を生成し、前記ハブを介して前記各内線電話端末に配信し、前記各内線電話端末が、前記同期パルス信号に基づいて前記処理動作の動作タイミングを同期させる電話システムであって、前記ハブは、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を前記電話制御装置へ通知する経路確認部と、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を前記電話制御装置へ通知する線路長測定部とを備え、前記電話制御装置は、前記各ハブから通知された前記経路情報および前記線路長情報に基づいて、前記内線電話端末ごとに、当該内線電話端末における前記同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該内線電話端末に対して通知する同期制御部を備え、前記内線電話端末は、前記同期パルス信号に基づいて前記動作タイミングを特定するとともに、前記端末遅延補正値に基づいて当該動作タイミングを補正するタイミング特定部を備えている。
【0022】
また、本発明にかかる通信システムは、カスケード接続された複数のハブと、これらハブを介して接続された複数の端末および管理装置とを有し、前記管理装置が、前記各端末でそれぞれ実行する特定の処理動作をこれら端末間で同期させるための同期パルス信号を生成し、前記ハブを介して前記各端末に配信し、前記各端末が、前記同期パルス信号に基づいて前記処理動作の動作タイミングを同期させる通信システムであって、前記ハブは、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を前記管理装置へ通知する経路確認部と、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を前記管理装置へ通知する線路長測定部を備え、前記管理装置は、前記各ハブから通知された前記経路情報および前記線路長情報に基づいて、前記端末ごとに、当該端末における前記同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該端末に対して通知する同期制御部を備え、前記端末は、前記同期パルス信号に基づいて前記動作タイミングを特定するとともに、前記端末遅延補正値に基づいて当該動作タイミングを補正するタイミング特定部を備えている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、カスケード接続されるハブの台数や伝送路の線路長により同期パルス信号の到達にばらつきが発生しても、各端末で動作タイミングを適切に特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる電話システム1について説明する。
図1は、第1の実施の形態にかかる電話システムの構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示す電話システム1は、オフィス、事務所、店舗で用いられるビジネスホン、ボタン電話装置、PBXシステムなどの電話システムからなり、カスケード接続された複数のハブ(HUB)30と、これらハブ30からなる内線伝送路を介して接続された複数の内線電話端末20と、これら内線電話端末20を電話網NWに交換接続する電話制御装置10とから構成されている。
【0027】
内線電話端末20には、端末本体にハンドセットがカールコードを用いて有線接続されている一般的な有線電話端末21のほか、端末本体(無線親機)にハンドセット(無線子機)が無線接続される無線電話端末22が含まれている。これら無線電話端末22は、時分割多次元接続方式の1つであるDECT方式に基づいて無線通信を行う機能を有しており、詳細については後述する。本実施の形態では、各無線電話端末22で用いる無線システムがDECT方式である場合について説明するが、DECT方式に限定されるものではなく、他の一般的な時分割多元接続方式の無線システムであってもよい。
【0028】
この電話システム1は、電話制御装置10が、各無線電話端末22での無線通信に用いる各タイムスロットの基準時間位置を示す同期パルス信号を生成し、ハブ30を介して各無線電話端末22に配信し、各無線電話端末22がこの同期パルス信号に基づいてそれぞれに割り当てられているタイムスロットに関するスロット同期タイミングを特定して無線通信を行う機能を有している。
【0029】
本実施の形態は、ハブ30が、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を電話制御装置10へ通知するとともに、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を電話制御装置10へ通知し、電話制御装置10が、各ハブ30から通知された経路情報および線路長情報に基づいて、無線電話端末22ごとに、当該無線電話端末22における同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該無線電話端末22に対して通知し、無線電話端末22が、電話制御装置10から配信された同期パルス信号に基づいてスロット同期タイミングを特定するとともに、電話制御装置10から通知された端末遅延補正値に基づいて当該スロット同期タイミングを補正するようにしたものである。
【0030】
[電話制御装置]
次に、本実施の形態にかかる電話制御装置10の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、電話制御装置10には、主な機能部として、網I/F部11、ポートI/F部12、スイッチ部13、同期パルス信号生成部14、記憶部15、および制御部16が設けられている。
【0031】
網I/F部11は、一般的な回線I/F回路からなり、電話網NWからの通信回線L1と接続し、この通信回線L1を介して電話網NWとの間で各種呼制御メッセージをやり取りする機能と、電話網NWとの間で形成した通話回線を介して音声をやり取りする機能とを有している。電話網NWは、PSTN、IP電話網、ISDNなどの電話網からなり、それぞれの網インターフェースに合わせて網I/F部11を構成すればよい。
【0032】
ポートI/F部12は、一般的なLAN接続用のポート回路からなり、LANケーブルL2を介してハブ30配下の内線電話端末20との間でパケットを送受信することにより、各種制御メッセージをやり取りする機能と、上記パケットの送受信によりこれら内線電話端末20との間で形成した音声パスを介して音声データをやり取りする機能と、同期パルス信号生成部14で生成された同期パルス信号を、LANケーブルの給電線に重畳することにより、各内線電話端末20に対して配信する機能とを有している。
【0033】
スイッチ部13は、網I/F部11を介して電話網NWとの間で形成した通話回線と、ポートI/F部12を介して内線電話端末20との間で形成した音声パスとを相互に交換接続する機能を有している。
【0034】
同期パルス信号生成部14は、各端末でそれぞれ実行する動作をこれら端末間で同期させるための同期パルス信号を生成する機能を有している。同期パルス信号としては、1つの矩形パルス信号から構成してもよく、複数のパルス列から構成してもよい。本実施の形態では、この同期パルス信号が、各無線電話端末22での無線通信に用いる各タイムスロットの基準時間位置を示す同期パルス信号からなる場合を例として説明する。
【0035】
記憶部15は、半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、制御部16で用いる各種処理情報や、制御部16のCPUで実行するプログラムを記憶する機能を有している。
記憶部15が記憶する主な処理情報として、経路情報15Aと線路長情報15Bとがある。
【0036】
経路情報15Aは、電話制御装置10の配下に接続されている接続機器に関する接続経路を示すデータである。
図2は、経路情報の構成例である。ここでは、ハブIDごとに、当該ハブの配下(ダウンリンクポート)に接続されている接続機器ID、例えば内線電話端末20やハブ30のMACアドレスがリストとして登録されている。
【0037】
線路長情報15Bは、各ハブ30に接続されている接続機器との間の線路長を示すデータである。
図3は、線路長情報の構成例である。ここでは、ハブ30と接続機器、すなわち電話制御装置10、内線電話端末20、およびハブ30との組み合わせごとに、両者間を接続するLANケーブルの線路長が登録されている。
【0038】
制御部16は、CPUおよびその周辺回路を有し、記憶部15から読み込んだプログラムをCPUで実行することにより実現される各種処理部により、電話システム1全体を制御する機能を有している。
制御部16で実現される主な処理部としては、呼制御部16Aと同期制御部16Bとがある。
【0039】
呼制御部16Aは、網I/F部11を介して電話網NWとの間で各種呼制御メッセージをやり取りすることにより、電話網NWを用いた発信/着信や通話回線の接続/切断などの回線制御を行う機能と、ポートI/F部12を介して内線電話端末20との間で各種制御メッセージをやり取りすることにより、内線電話端末20の動作制御や音声バスの接続/切断などの通話制御を行う機能と、スイッチ部13による電話網NWからの通話回線と内線電話端末20からの音声パスとを交換接続を制御する機能とを有している。
【0040】
同期制御部16Bは、電話制御装置10に接続されたパーソナルコンピュータや特定の内線電話端末20から入力された、管理者からの同期設定指示に応じて、ポートI/F部12から各ハブ30に情報要求指示を示す制御メッセージを通知する機能と、これらハブ30から取得した経路情報および線路長情報を、それぞれ経路情報15Aおよび線路長情報15Bとして記憶部15に格納する機能と、これら経路情報15Aおよび線路長情報15Bに基づいて、内線電話端末20ごとに、当該内線電話端末20における同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算する機能と、得られた端末遅延補正値を制御メッセージによりポートI/F部12を介して当該内線電話端末20に通知する機能を有している。
【0041】
[ハブ]
次に、
図4を参照して、本実施の形態にかかるハブ30の構成について詳細に説明する。
図4は、第1の実施の形態にかかるハブの構成を示すブロック図である。
このハブ30は、電話制御装置10や内線電話端末20とLANケーブルを介して接続し、さらにはLANケーブルを介してハブ30間でカスケード接続することにより、最上位に位置する電話制御装置10と最下位に位置する内線電話端末20との間でやり取りするパケットを相互に転送するための内線伝送路を形成する機能とを有している。
【0042】
ハブ30には、主な機能部として、アップリンクポートI/F部31、ダウンリンクポートI/F部32、同期パルス信号再生部33、転送処理部34、経路確認部35、および線路長測定部36が構成されている。
【0043】
アップリンクポートI/F部31は、一般的なLAN接続用のポート回路からなり、LANケーブルL2を介して接続された上位の電話制御装置10やハブ30とパケットをやり取りする機能と、これら上位側接続機器からLANケーブル内の給電線を介して配信された同期パルス信号を受信し、同期パルス信号再生部33へ出力する機能とを有している。
【0044】
ダウンリンクポートI/F部32は、一般的なLAN接続用の複数のポート回路からなり、LANケーブルL3を介して接続された配下の内線電話端末20やハブ30とパケットをやり取りする機能と、これら接続機器に対して、同期パルス信号再生部33から出力された同期パルス信号をLANケーブル内の給電線を介して配信する機能とを有している。
【0045】
同期パルス信号再生部33は、アップリンクポートI/F部31から出力された同期パルス信号を再生(リタイミング)して、ダウンリンクポートI/F部32へ出力する機能を有している。
転送処理部34は、パケットのアドレスに基づいて、アップリンクポートI/F部31とダウンリンクポートI/F部32との間でパケットを転送する機能を有している。
【0046】
経路確認部35は、アップリンクポートI/F部31を介して電話制御装置10から受信した情報要求指示を示す制御メッセージに応じて、LANケーブルを介してアップリンクポートI/F部31やダウンリンクポートI/F部32に接続されている接続機器を確認する機能と、接続確認した接続機器のMACアドレスリストからなる経路情報を制御メッセージによりポートI/F部23Aを介して電話制御装置10に通知する機能とを有している。接続経路取得手法については、例えば特許文献2に記載されているような、一般的なハブでテーブル管理している接続機器のMACアドレスを接続経路として取得するなど、公知の手法を用いればよい。
【0047】
線路長測定部36は、アップリンクポートI/F部31を介して電話制御装置10から受信した情報要求指示を示す制御メッセージに応じて、LANケーブルを介してアップリンクポートI/F部31やダウンリンクポートI/F部32に接続されている接続機器との間の線路長を測定する機能と、得られた線路長情報を制御メッセージによりアップリンクポートI/F部31を介して電話制御装置10に通知する機能とを有している。線路長測定手法については、例えば接続機器に対して送信した測定用パルスの反射波から測定した、往復所要時間や振幅減衰量に基づいて、下位側接続機器を接続しているLANケーブルの線路長を測定するTDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射測定)など、公知の手法を用いればよい。
【0048】
[無線電話端末]
次に、
図5を参照して、無線電話端末22の構成について詳細に説明する。
図5は、第1の実施の形態にかかる無線電話端末の構成を示すブロック図である。
この無線電話端末22は、内線伝送路に接続された無線親機(端末本体)23と、この無線親機23との間でDECT方式に基づき無線通信を行う無線子機(ハンドセット)24とから構成されている。
無線親機23には、主な機能部として、ポートI/F部23A、無線I/F部23B、タイミング特定部23C、および親機処理部23Dが設けられている。
【0049】
ポートI/F部23Aは、全体としてLANI/Fポート回路からなり、LANケーブルL3を介して接続されたハブ30とパケットを送受信することにより、各種制御メッセージをやり取りする機能と、上記パケットの送受信により電話制御装置10との間で形成した音声パスを介して音声データをやり取りする機能と、ハブ30からLANケーブルL3内の給電線を介して配信された同期パルス信号を受信し、タイミング特定部23Cへ出力する機能とを有している。
【0050】
無線I/F部23Bは、タイミング特定部23Cから出力されたスロット同期タイミングに基づいて、予め割り当てられているタイムロットを用いて対をなす無線子機24との間で無線通信を行うことにより、各種制御メッセージや音声データをやり取りする機能を有している。
【0051】
タイミング特定部23Cは、ポートI/F部23Aから出力された同期パルス信号に基づいて、予め当該無線電話端末22に割り当てられているタイムロットに関するスロット同期タイミングを特定して、無線I/F部23Bに出力する機能と、親機処理部23Dから出力された端末遅延補正値に基づいて、スロット同期タイミングを補正する機能とを有している。
【0052】
親機処理部23Dは、ポートI/F部23Aを介して電話制御装置10と制御メッセージをやり取りすることにより、当該無線電話端末22における各種可視・可聴表示制御や電話制御装置10との音声パスの接続/切断制御を行う機能と、無線I/F部23Bを介して無線子機24と制御メッセージをやり取りすることにより、無線子機24における各種表示制御や無線子機24との音声パスの接続/切断制御を行う機能と、電話制御装置10との間で形成した音声パスと無線子機24との間で形成した音声パスとを交換接続する機能と、電話制御装置10から制御メッセージにより通知された端末遅延補正値をタイミング特定部23Cに出力する機能とを有している。
【0053】
[第1の実施の形態の動作]
次に、
図6を参照して、本実施の形態にかかる電話システム1の動作について説明する。
図6は、第1の実施の形態にかかる同期制御動作を示すシーケンス図である。
電話制御装置10に接続されたパーソナルコンピュータや特定の内線電話端末20から入力された、管理者からの同期設定指示に応じて、
図6に示す同期制御動作を実行する。
【0054】
まず、電話制御装置10の同期制御部16Bは、ポートI/F部12から各ハブ30に情報要求指示を示す制御メッセージを通知する(ステップ100)。
【0055】
各ハブ30の経路確認部35は、電話制御装置10から通知された情報要求指示に応じて、LANケーブルを介して自己に接続されている接続機器を確認し(ステップ101)、得られた経路情報を電話制御装置10に通知する(ステップ102)。
また、各ハブ30の線路長測定部36は、電話制御装置10からの情報要求指示に応じて、LANケーブルを介して自己に接続されている配下の接続機器との間の線路長を計測し(ステップ103)、得られた線路長情報を電話制御装置10に通知する(ステップ104)。
【0056】
電話制御装置10の同期制御部16Bは、情報要求指示に応じて各ハブ30から通知された経路情報および線路長情報を、経路情報15Aおよび線路長情報15Bとして記憶部15に格納し(ステップ105)、これら経路情報15Aおよび線路長情報15Bに基づいて、内線電話端末20ごと、ここではスロット同期タイミングが同期対象であることから無線電話端末22ごとに、当該無線電話端末22における同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し(ステップ106)、得られた端末遅延補正値を制御メッセージによりポートI/F部12を介して当該無線電話端末22に通知する(ステップ107)。
【0057】
各無線電話端末22のタイミング特定部23Cは、電話制御装置10から通知された端末遅延補正値に基づいて、ポートI/F部23Aから出力された同期パルス信号から特定されるスロット同期タイミングを補正する(ステップ108)。これ以降、無線電話端末22の無線親機23と無線子機24との間では、補正後のスロット同期タイミングに基づき無線通信が行われる。
【0058】
[端末遅延補正値計算例]
次に、
図7を参照して、電話制御装置10における端末遅延補正値の計算例について説明する。
図7は、端末遅延補正値の計算に用いる補正値算出テーブルの構成例であり、
図7(a)は線路遅延補正値算出テーブルを示し、
図7(b)はハブ遅延補正値算出テーブルを示している。
【0059】
電話制御装置10から任意の内線電話端末20に配信した同期パルス信号に関する遅延は、電話制御装置10から当該内線電話端末20までの接続経路を構成する線路長Lと、当該接続経路を構成するハブ30のハブ接続段数Hに影響され、これら線路長とハブ接続段数とは、互いに独立して同期パルス信号に遅延を与える。本発明は、このような同期パルス信号の遅延特性に着目し、線路長Lに起因する遅延を補正するための線路遅延補正値RLと、ハブ接続段数Hに起因する遅延を補正するためのハブ遅延補正値RHとを個別に計算するようにしたものである。
【0060】
したがって、まず、電話制御装置10の同期制御部16Bは、記憶部15の経路情報15Aに基づいて、無線電話端末22ごとに、電話制御装置10から当該無線電話端末22までの接続経路を特定する。この際、ハブと接続機器との対応関係を示す経路情報15Aから、無線電話端末22ごとに、当該無線電話端末22のMACアドレスを追跡することにより、電話制御装置10から当該無線電話端末22までの接続経路を特定すればよい。
【0061】
次に、同期制御部16Bは、記憶部15の線路長情報15Bに基づいて、電話制御装置10から当該無線電話端末22までの線路長Lを計算し、
図7(a)の線路遅延補正値算出テーブルに基づき線路長Lに対応する線路遅延補正値RLを計算する。この際、ハブおよび接続機器と線路長との対応関係を示す線路長情報15Bから、接続経路上に位置するハブ30間の線路長と、最下位のハブ30と当該無線電話端末22の間の線路長とを合算することにより、線路長Lを計算すればよい。
【0062】
また、同期制御部16Bは、当該接続経路を構成する各ハブ30のハブ接続段数Hを計算し、
図7(b)のハブ遅延補正値算出テーブルに基づきハブ接続段数Hに対応するハブ遅延補正値RHを計算する。この際、接続経路上に位置するハブ30を抽出し、これらハブ30の台数からハブ接続段数Hを計算すればよい。
【0063】
なお、線路長Lとハブ接続段数Hについては、端末遅延補正値の計算時に求めてもよいが、各ハブ30から経路情報および線路長情報を取得した時点で、線路長Lとハブ接続段数Hを予め求めて記憶部15に格納しておき、端末遅延補正値の計算時に、これら線路長Lとハブ接続段数Hを記憶部15から読み出して用いるようにしてもよい。
【0064】
この後、同期制御部16Bは、このようにして得られた線路遅延補正値RLおよびハブ遅延補正値RHからなる端末遅延補正値を、制御メッセージにより各無線電話端末22へ通知する。
【0065】
線路遅延補正値算出テーブルには、線路長Lの範囲区間ごとに、当該範囲区間の線路長の際に補正すべき値を示す線路遅延補正値RLが登録されている。この線路遅延補正値算出テーブルは、LANケーブルの電気的特性や実測から得られた両者の対応関係をテーブル化し、記憶部15に格納しておけばよい。
ハブ遅延補正値算出テーブルには、ハブ接続段数Hの範囲区間ごとに、当該範囲区間のハブ接続段数Hの際に補正すべき値を示すハブ遅延補正値RHが登録されている。このハブ遅延補正値算出テーブルは、ハブ30の動作特性から予め計算した両者の対応関係をテーブル化し、記憶部15に格納しておけばよい。
【0066】
各無線電話端末22のタイミング特定部23Cは、電話制御装置10から通知された端末遅延補正値に含まれる線路遅延補正値RLおよびハブ遅延補正値RHに基づいて、同期パルス信号から特定されるスロット同期タイミングを補正する。この際、線路遅延補正値RLおよびハブ遅延補正値RHは、実際の補正時間を指数化したものである。したがって、無線電話端末22において、スロット同期タイミングを補正する際には、これら線路遅延補正値RLおよびハブ遅延補正値RHから補正時間を計算する必要がある。
【0067】
図8は、補正時間の計算に用いる補正時間算出テーブルの構成例であり、
図8(a)は線路補正時間算出テーブルを示し、
図8(b)はハブ補正時間算出テーブルを示している。
【0068】
線路補正時間算出テーブルには、線路遅延補正値RLごとに、スロット同期タイミングを補正すべき線路補正時間ΔTLが登録されている。この線路補正時間算出テーブルは、LANケーブルの電気的特性や実測から得られた両者の対応関係をテーブル化し、無線電話端末22の記憶部(図示せず)に格納しておけばよい。
【0069】
ハブ補正時間算出テーブルには、ハブ遅延補正値RHごとに、スロット同期タイミングを補正すべきハブ補正時間ΔTHが登録されている。このハブ補正時間算出テーブルは、ハブ30の動作特性や実測から予め計算した両者の対応関係をテーブル化し、無線電話端末22の記憶部(図示せず)に格納しておけばよい。
【0070】
タイミング特定部23Cは、これら線路補正時間算出テーブルおよび線路補正時間算出テーブルから計算した線路補正時間ΔTLおよびハブ補正時間ΔTHだけ、スロット同期タイミングを補正することになる。
以上では、電話制御装置10から無線電話端末22に対して、実際の補正時間を指数化した線路遅延補正値RLおよびハブ遅延補正値RHを通知する場合を例として説明したが、線路補正時間ΔTLおよびハブ補正時間ΔTHを合算した補正時間ΔTを電話制御装置10から無線電話端末22に通知してもよい。
【0071】
また、以上では、テーブルを用いて、線路長Lおよびハブ接続段数Hから線路補正時間ΔTLおよびハブ補正時間ΔTHを計算する場合を例として説明したが、関数式を用いて計算してもよい。
図9は、端末遅延補正値の計算処理例を示す説明図である。なお、
図9は、端末遅延補正値の計算処理の一例であり、これに限定するものではない。
【0072】
単位線路補正時間TLsは、単位線路長あたりの補正時間を示すパラメータであり、単位ハブ遅延補正時間THsは、単位ハブ段数あたりの補正時間を示すパラメータである。これらはいずれもLANケーブルの電気的特性、ハブ30の動作特性、あるいは実測から予め算出しておけばよい。
【0073】
ここでは、単位線路補正時間TLsに線路長Lを乗算することにより線路補正時間ΔTLを計算するとともに、単位ハブ遅延補正時間THsにハブ接続段数Hを乗算することによりハブ補正時間ΔTHを計算し、これら線路補正時間ΔTLとハブ補正時間ΔTHを合算することにより、無線電話端末22に関する端末遅延補正値として、無線電話端末22において補正するスロット同期タイミングに対する補正時間ΔTが求められる。
基本的には、これら計算処理は同期制御部16Bで行われるが、任意の無線電話端末22に関する線路長Lおよびハブ接続段数Hを、同期制御部16Bから無線電話端末22に通知し、無線電話端末22のタイミング特定部23Cや親機処理部23Dで計算してもよい。
【0074】
[スロット同期タイミング補正動作例]
図10は、第1の実施の形態にかかるスロット同期タイミングの補正動作例を示すタイミングチャートである。ここでは、互いの接続経路が異なる2つの無線電話端末#1,#2に対して、タイムスロット#1,#2をそれぞれ割り当てたものとし、無線電話端末#2のスロット同期タイミングを補正する場合を例として説明する。なお、説明を容易とするため、電話制御装置10から無線電話端末#1までの同期パルス信号P#1の遅延は無視できる程度のものとする。
【0075】
まず、無線電話端末#1において、電話制御装置10から配信された同期パルス信号P#1の立下りに基づいて、時刻T1が各タイムスロットの基準時間位置として特定されたものとする。この際、無線電話端末#1にタイムスロット#1が割り当てられているため、先頭スロット#0からタイムスロット#1までのタイムスロット数Tnが1となる。したがって、Tnにスロット長tsを乗算して求めた時間だけ時刻T1から遅延させた時刻Ts1が、無線電話端末#1のスロット同期タイミングとなる。
【0076】
また、無線電話端末#2において、電話制御装置10から配信された同期パルス信号P#2の立下りに基づいて、時刻T2が各タイムスロットの基準時間位置として特定されたものとする。この際、無線電話端末#2にタイムスロット#2が割り当てられているため、先頭スロット#0からタイムスロット#2までのタイムスロット数Tnが2となる。したがって、Tnにスロット長tsを乗算して求めた時間だけ時刻T2から遅延させた時刻Ts2が、無線電話端末#2のスロット同期タイミングとなる。
【0077】
ここで、電話制御装置10から無線電話端末#2までの接続経路が長く、時刻T1にスロットずれ許容時間teを加えた時間範囲より、時刻T2が遅れていた場合、同期結果T#2に示すように、無線電話端末#2のタイムスロット#2が、無線電話端末#1のタイムスロット#3にずれ込み、両タイムスロット間における干渉が発生して、無線通信に支障を来すことになる。スロットずれ許容時間teは、タイムスロット間における干渉が許容される時間範囲である。
【0078】
一方、電話制御装置10から無線電話端末#2に対して、補正時間ΔT2が通知されていた場合、時刻T2が補正時間ΔT2だけ早めの時刻T2’に補正される。これは、同期パルス信号P#2を補正時間ΔT2だけ早めの時刻T2’に補正した時刻、すなわち時刻T1とほぼ同じ時刻から、Tnにスロット長tsを乗算して求めた時間だけ遅延させた時刻に相当する。
したがって、時刻T2’により特定される無線電話端末#2のスロット同期タイミングは、無線電話端末#1のタイムスロット#2とほぼ同時となるため、前述したようなタイムスロット間における干渉の発生が回避される。
【0079】
[第1の実施の形態の効果]
このように本実施の形態は、ハブ30が、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を電話制御装置10へ通知するとともに、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を電話制御装置10へ通知し、電話制御装置10が、各ハブ30から通知された経路情報および線路長情報に基づいて、無線電話端末22ごとに、当該無線電話端末22における同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該無線電話端末22に対して通知し、無線電話端末22が、電話制御装置10から配信された同期パルス信号に基づいてスロット同期タイミングを特定するとともに、電話制御装置10から通知された端末遅延補正値に基づいて当該スロット同期タイミングを補正するようにしたものである。
【0080】
これにより、無線電話端末22ごとに計算した、電話制御装置10から当該無線電話端末22までの接続経路、具体的には線路長Lとハブ接続段数Hに応じた端末遅延補正値に基づいて、それぞれの無線電話端末22においてスロット同期タイミングが補正される。このため、カスケード接続されるハブの台数や接続経路の線路長により、各無線電話端末22において同期パルス信号の到達にばらつきが発生しても、スロット同期タイミングを適切に特定することができ、それぞれの無線電話端末22で用いるタイムスロット間における干渉の発生を回避することが可能となる。
【0081】
したがって、スロットずれ許容範囲teに起因して、内線伝送路の線路長やカスケード接続可能なハブ台数に対する制限を設ける必要がなくなり、無線電話端末22を設置する際、内線伝送路を自由に構成することができる。したがって、オフィス、事務所、店舗のレイアウトが広くあるいは複雑であっても、それぞれのレイアウトに応じた場所に無線電話端末22を設置することができ、レイアウトに対して極めて柔軟で自由度の高い電話システムを提供することが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態において、電話制御装置10に、線路長Lとこの線路長Lによる遅延を補正するための線路遅延補正値RLとの対応関係を示す線路補正値算出テーブルと、ハブ30のハブ接続段数Hとこれらハブ30による遅延を補正するためのハブ遅延補正値RHとの対応関係を示すハブ遅延補正値算出テーブルとを設け、同期制御部16Bが、端末遅延補正値を通知する際、記憶部15の線路長情報15Aおよび経路情報15Bに基づいて、無線電話端末22ごとに、当該無線電話端末22までの線路長Lおよびハブ接続段数Hを計算し、線路補正値算出テーブルから求めた当該線路長Lに対応する線路遅延補正値RLと、ハブ遅延補正値算出テーブルから求めた当該ハブ接続段数Hに対応するハブ遅延補正値RHとを含む端末遅延補正値を通知するようにしてもよい。
【0083】
これにより、同期パルス信号の主な遅延要因となる線路長Lとハブ接続段数Hに基づいて、線路補正値算出テーブルとハブ遅延補正値算出テーブルを参照することにより、無線電話端末22の端末遅延補正値を構成する線路遅延補正値RLとハブ遅延補正値RHとが計算される。したがって、テーブルを参照するという極めて簡素な処理により、無線電話端末22に通知すべき適切な端末遅延補正値を計算することができる。
【0084】
また、本実施の形態において、線路遅延補正値RLおよびハブ遅延補正値RHが、遅延を補正するための補正時間を指数化した値からなり、無線電話端末22に、線路遅延補正値RLと実際の線路補正時間ΔTLとの対応関係を示す線路補正時間算出テーブルと、ハブ遅延補正値RHと実際のハブ補正時間ΔTHとの対応関係を示すハブ補正時間算出テーブルとを設け、タイミング特定部23Cが、スロット同期タイミングを補正する際、線路補正時間算出テーブルから求めた端末遅延補正値に含まれる線路遅延補正値RLに対応する線路補正時間ΔTLと、ハブ補正時間算出テーブルから求めたハブ遅延補正値RHに対応するハブ補正時間ΔTHとに基づいて、スロット同期タイミングを補正するようにしてもよい。
【0085】
これにより、補正時間を指数化した線路遅延補正値RLおよびハブ遅延補正値RHに基づいて、線路補正時間算出テーブルとハブ補正時間算出テーブルを参照することにより、実際のスロット同期タイミングを補正する際に必要となる線路補正時間ΔTLとハブ補正時間ΔTHとが計算される。したがって、テーブルを参照するという極めて簡素な処理により、スロット同期タイミングの補正に用いるべき適切な補正時間ΔTを計算することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、本発明を電話システム1に適用した場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。カスケード接続された複数のハブを介して複数の端末が管理装置に接続されているような通信システムにおいて、管理装置からハブを介して同期パルス信号を各端末に配信し、各端末がこの同期パルス信号に基づいてそれぞれの動作の動作タイミングを同期させる場合にも、同様にして本発明を適用できる。この際、これら通信システム、ハブ、および端末が、
図1の電話システム1、ハブ30、および無線電話端末22に相当するものとなる。
【0087】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる電話システム1について説明する。
第1の実施の形態では、無線電話端末22が、電話制御装置10から配信された同期パルス信号に基づいてそれぞれに割り当てられているタイムスロットに関するスロット同期タイミングを特定し、電話制御装置10から通知された端末遅延補正値に基づいて当該スロット同期タイミングを補正する場合を例として説明した。本実施の形態では、同期パルス信号により、スロット同期タイミングではなく、各内線電話端末20で実行する特定の処理動作の動作タイミングを同期させる場合について説明する。
【0088】
本実施の形態は、ハブ30が、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を電話制御装置10へ通知するとともに、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を電話制御装置10へ通知し、電話制御装置10が、各ハブ30から通知された経路情報および線路長情報に基づいて、内線電話端末20ごとに、当該内線電話端末20における同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該内線電話端末20に対して通知し、内線電話端末20が、電話制御装置10から配信された同期パルス信号に基づいて動作タイミングを特定するとともに、電話制御装置10から通知された端末遅延補正値に基づいて当該動作タイミングを補正するようにしたものである。
【0089】
本実施の形態において、電話制御装置10の同期パルス信号生成部14で生成される同期パルス信号が、各無線電話端末22での無線通信に用いる各タイムスロットの基準時間位置を示す信号ではなく、各内線電話端末20での特定の処理動作に用いる基準時間位置を示す信号からなる点が、第1の実施の形態と異なる。電話制御装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様である。また、本実施の形態において、ハブ30の構成についても、第1の実施の形態と同様である。
【0090】
図11は、第2の実施の形態にかかる内線電話端末の構成を示すブロック図である。
本実施の形態において、内線電話端末20には、主な機能部として、ポートI/F部20A、タイミング特定部20B、表示部20C、音声処理部20D、および端末処理部20Eが設けられている。
【0091】
ポートI/F部20Aは、一般的なLAN接続用のポート回路からなり、LANケーブルL3を介して接続されたハブ30とパケットを送受信することにより、各種制御メッセージをやり取りする機能と、上記パケットの送受信により電話制御装置10との間で形成した音声パスを介して音声データをやり取りする機能と、ハブ30からLANケーブルL3内の給電線を介して配信された同期パルス信号を受信し、タイミング特定部20Bへ出力する機能とを有している。
【0092】
タイミング特定部20Bは、ポートI/F部20Aから出力された同期パルス信号に基づいて、内線電話端末20で実行する処理動作の動作タイミングを特定して、端末処理部20Eに出力する機能と、端末処理部20Eから出力された端末遅延補正値に基づいて、動作タイミングを補正する機能とを有している。
【0093】
表示部20Cは、LEDやLCDなどの表示装置からなり、端末処理部20Eからの制御に応じて、着信表示などの各種可視表示処理動作を行う機能を有している。
音声処理部20Dは、マイク、スピーカ、ブザーなどの音声入出力装置からなり、端末処理部20Eからの制御に応じて通話に用いる音声を入出力する機能と、端末処理部20Eからの制御に応じて着信音出力などの各種可聴表示処理動作を行う機能を有している。
【0094】
端末処理部20Eは、ポートI/F部20Aを介して電話制御装置10と制御メッセージをやり取りすることにより、表示部20Cや音声処理部20Dにおける各種可視・可聴表示制御や電話制御装置10との音声パスの接続/切断制御を行う機能と、電話制御装置10との間で形成した音声パスと音声処理部20Dとを接続する機能と、電話制御装置10から制御メッセージにより通知された端末遅延補正値をタイミング特定部20Bに出力する機能とを有している。
【0095】
[第2の実施の形態の動作]
次に、
図12を参照して、本実施の形態にかかる電話システム1の動作について説明する。
図12は、第2の実施の形態にかかる動作タイミングの補正動作例を示すタイミングチャートである。ここでは、互いの接続経路が異なる2つの無線電話端末#1,#2において着信LEDD#1,D#2関する点滅表示動作の周期を同期させるものとし、無線電話端末#2の動作タイミングを補正する場合を例として説明する。なお、説明を容易とするため、電話制御装置10から無線電話端末#1までの同期パルス信号P#1の遅延は無視できる程度のものとする。
【0096】
まず、無線電話端末#1において、電話制御装置10から配信された同期パルス信号P#1の立下りに基づいて、時刻T1が動作タイミングとして特定されたものとする。この際、着信LEDD#1,D#2の点滅時間をtaとし、消灯時間をtbとする。したがって、無線電話端末#1では、時刻T1からtaだけ着信LEDD#1が点滅表示され、その後tbだけ着信LEDD#1が消灯され、その後、点滅表示と消灯とが周期的に繰り返されることになる。
【0097】
また、無線電話端末#2において、電話制御装置10から配信された同期パルス信号P#2の立下りに基づいて、時刻T2が動作タイミングとして特定されたものとする。この際、無線電話端末#2では、時刻T2からtaだけ着信LEDD#2が点滅表示され、その後tbだけ着信LEDD#2が消灯され、その後、点滅表示と消灯とが周期的に繰り返されることになる。
【0098】
ここで、電話制御装置10から無線電話端末#2までの接続経路が長く、時刻T1より時刻T2が遅れていた場合、無線電話端末#2の着信LEDD#2が、無線電話端末#1の着信LEDD#1より遅れて点滅表示と消灯とが周期的に繰り返されることになる。このため、これら動作タイミングにずれが生じると、利用者に違和感や不快感を与える場合がある。
【0099】
一方、電話制御装置10から無線電話端末#2に対して、補正時間ΔT2が通知されていた場合、このΔT2から時刻T1にほぼ等しい時刻T2’を動作タイミングとして特定し、この時刻T2’を基準時間位置とした着信LEDD#2の表示動作が開始されることになる。
したがって、無線電話端末#2の着信LEDD#2が、無線電話端末#1の着信LEDD#1とほぼ同期して表示動作することになり、動作タイミングのずれによる、利用者に違和感や不快感を回避することができる。
【0100】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、ハブ30が、自己に接続されている各接続機器を確認し、得られた経路情報を電話制御装置10へ通知するとともに、自己に接続されている各接続機器との間の線路長をそれぞれ測定し、得られた線路長情報を電話制御装置10へ通知し、電話制御装置10が、各ハブ30から通知された経路情報および線路長情報に基づいて、内線電話端末20ごとに、当該内線電話端末20における同期パルス信号の遅延時間を補正するための端末遅延補正値を計算し、得られた端末遅延補正値を当該内線電話端末20に対して通知し、内線電話端末20が、電話制御装置10から配信された同期パルス信号に基づいて動作タイミングを特定するとともに、電話制御装置10から通知された端末遅延補正値に基づいて当該動作タイミングを補正するようにしたものである。
【0101】
これにより、内線電話端末20ごとに計算した、電話制御装置10から当該内線電話端末20までの接続経路、具体的には線路長Lとハブ接続段数Hに応じた端末遅延補正値に基づいて、それぞれの内線電話端末20において動作タイミングが補正される。このため、カスケード接続されるハブの台数や接続経路の線路長により、各無線電話端末22において同期パルス信号の到達にばらつきが発生しても、それぞれの無線電話端末22間における処理動作のずれ発生を回避することができる。
【0102】
したがって、処理動作のずれを抑制するため、内線伝送路の線路長やカスケード接続可能なハブ台数に対する制限を設ける必要がなくなり、内線電話端末20を設置する際、内線伝送路を自由に構成することができる。したがって、オフィス、事務所、店舗のレイアウトが広くあるいは複雑であっても、それぞれのレイアウトに応じた場所に内線電話端末20を設置することができ、レイアウトに対して極めて柔軟で自由度の高い電話システムを提供することが可能となる。
【0103】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。