(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1ケーシングと、第2ケーシングと、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを接合することにより前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとの間に形成される複数の収容室および前記収容室と前記収容室とを連通する連通部と、前記収容室の内部に流体が導入される導入口と、前記内部の前記流体が導出される導出口と、を備えている容器と、
前記収容室内に収容されて、前記収容室内を流れる前記流体を浄化させる浄化剤と、
前記導入口から導入された前記流体が前記導出口から導出されるまで流通する浄化通路と、を備え、
前記浄化通路は、前記収容室と前記連通部とを折り返すように配設して構成され、
前記流体は付臭剤を含む燃料とし、前記浄化剤は、前記付臭剤を除去させる脱硫剤とする燃料電池システム用浄化装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による燃料電池システム用浄化装置を適用した燃料電池システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、燃料電池41と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部42と、蒸発部42で生成された水蒸気を用いて燃料を改質させてアノードガスを形成する改質部43と、蒸発部42と改質部43を加熱する燃焼部44と、蒸発部42に供給される液相状の水を溜めるタンク45と、これらを収容する筐体46とを有する。
【0010】
燃料電池41は、イオン伝導体を挟むアノード41aとカソード41bとを備え、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物形燃料電池(運転温度:例えば400℃以上)を適用できる。アノード41a側から排出されたアノード排ガスは、燃焼部44に供給される。カソード41b側から排出されたカソード排ガスは、燃焼部44に供給される。燃焼部44はアノード排ガスとカソード排ガスとを燃焼させ蒸発部42と改質部43を加熱させる。燃焼部44における燃焼後のガスおよび、未燃焼のガスを含む燃焼排ガスが燃焼排ガス路49を介して大気中に放出される。
【0011】
改質部43は、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部42に隣設されている。改質部43および蒸発部42は改質器50を構成しており、燃料電池41と共に断熱壁51で包囲され、発電モジュール52を形成している。発電運転時には、改質器50は改質反応に適するように断熱壁51内において加熱される。発電運転時には、蒸発部42は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。
【0012】
燃料通路53は、燃料源54からの燃料を改質器50に供給させるものであり、燃料ポンプ55および脱硫器10(燃料電池システム用浄化装置に相当する)が設けられている。燃料電池41のカソード41
bには、カソードガス(空気)をカソード41
bに供給させるためのカソードガス通路56が繋がれている。カソードガス通路56には、カソードガス搬送用の空気搬送源として機能するカソードポンプ57が設けられている。
【0013】
図1に示すように、タンク45内に溜められている水は、ポンプ63の作動により給水通路62を通り、蒸発部42に供給される。
【0014】
燃料電池システムの起動時において、燃料ポンプ55が駆動されると、燃料通路53から燃料が、脱硫器10を通り、蒸発部42、改質部43、アノードガス通路66、燃料電池41のアノード41aを介して燃焼部44に流れる。脱硫器10は、浄化剤として脱硫機能を有するゼオライト、活性炭等の脱硫剤を収容しているため、燃料源54からの燃料中の付臭剤等の不純物は、脱硫器10にて除去される。不純物が除去された燃料は、燃料通路53を通り、蒸発部42へ送られる。
【0015】
カソードポンプ57によりカソードガス(空気)がカソードガス通路56、カソード41bを介して燃焼部44に流れる。この状態で燃焼部44が着火されると、燃焼部44において燃焼が発生し、改質部43および蒸発部42が加熱される。このように改質部43および蒸発部42が加熱された状態で、ポンプ63が駆動されると、タンク45内の水はタンク45から蒸発部42に向けて給水通路62内を搬送され、蒸発部42で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は、燃料通路53から供給される燃料と共に改質部43に移動する。改質部43において燃料は水蒸気で改質されてアノードガス(水素含有ガス)となる。アノードガスはアノードガス通路66を介して燃料電池41のアノード41aに供給される。更にカソードガス(酸素含有ガス、筐体46内の空気)がカソードガス通路56を介して燃料電池41のカソード41bに供給される。これにより燃料電池41が発電する。アノード41aから排出されたアノードガスのオフガス、カソード41bから排出されたカソードガスのオフガスは、燃焼部44に至り、燃焼部44で燃焼される。高温の排ガスは、排ガス通路49を介して筐体46の外方に排出される。
【0016】
排ガス通路49には、凝縮機能を有する熱交換器76が設けられている。貯湯槽77に繋がる貯湯通路78および貯湯ポンプ79が設けられている。貯湯通路78は往路78aおよび復路78cを備える。貯湯槽77の低温の水は、貯湯ポンプ79の駆動により、貯湯槽77から吐出されて往路78aを通過し、熱交換器76に至り、熱交換器76の熱交換作用により加熱される。熱交換器76で加熱された水は、復路78cを介して貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水は温水となる。前記した排ガスに含まれていた水蒸気は、熱交換器76で凝縮されて凝縮水となる。凝縮水は、熱交換器76から延設された凝縮水通路65を介して重力等により水精製器30(燃料電池システム用浄化装置に相当する)に供給される。
【0017】
水精製器30は、浄化剤22としてイオン交換樹脂等の水精製剤を収容しているため、凝縮水の不純物は、水精製器を30にて除去される。不純物が除去された水は水タンク45に移動し、水タンク45に溜められる。制御部100はポンプ55、57、63及び79を駆動させるモータを介してポンプ55、57、63及び79を制御する。
【0018】
図2は、燃料電池システムで用いられる脱硫器10(燃料電池システム用浄化装置に相当する)を示す。脱硫器10は、
図2〜5に示される如く、金属例えばステンレス製で、例えばプレス成形等にて所定の形状に立体成形された第1ケーシング11と、金属例えばステンレス製の平板状の第2ケーシング12とが、厚み方向に、接合されて、容器13が形成される。第1ケーシング11と第2ケーシング12との接合は、溶着、例えば、ファイバーレーザ溶接による貫通溶接等による溶接あるいは高温で加熱して接着させる等とにより、行うことができる。第2図の太い破線は、第1ケーシング11と第2ケーシング12とが接合された溶着部14を示す。
【0019】
第1ケーシング11と第2ケーシング12との接合にて形成された容器13の内部は、溶着部14により、互いに区画された3つの収容室15、16、17が形成される。
図2及び
図4に示す如く、収容室15の一端部に付臭剤が付加されたガス状の流体である燃料が導入する導入口20が、第1ケーシング11に設けられている。
図2及び
図4に示す如く、収容室17の一端部から燃料を導出させる導出口21が、第1ケーシング11に設けられている。第1ケーシング11と第2ケーシング12との接合にて、容器13の内部には、収容室15と収容室16とを連通する連通部18が導入口20から離れて収容室15の他端部に形成される。同様に、第1ケーシング11と第2ケーシング12との接合にて、収容室16と収容室17とを連通する連通部19が導出口21から離れて収容室17の他端部に形成される。
【0020】
溶着部14は、
図2に示される如く、収容室15、16、17及び連通部18、19の外周に沿って囲む様に連続的に設けられて、容器13の内部は、溶着部14にて気密的に保持される。溶着部14は、
図2に示す如く、収容室15を区画する部分14a1、14a2、14a3および14a4と、収容室15を区画する部分14b1、14b2、14b3および14b4と、収容室17を区画する部
分14c1、14c2、14c3および14c4と、連通部18を区画する部分14d1および14d2と、連通部19を区画する部分14e1および14e2を有し、これらの部分が
図2に示す如く、連なる構成である。
【0021】
図3に示す如く、収容室15、16および17のみならず、好ましくは連通部18、9にも、浄化剤22(例えば脱硫機能を有するゼオライト、活性炭等)が収容されている。従って、容器13の内部には、導入口20から、収容室15、連通部18、収容室16、連通部19、収容室17を順次介して導出口21に至る浄化通路23が第1ケーシング11と第2ケーシング12にて構成される。付臭剤が付加された燃料は、浄化通路23を流れることにより、浄化剤22により脱硫されて浄化される。
【0022】
浄化通路23は、収容室15から連通部18を通り収容室16へと折り返すように配設され、収容室16から連通部19を通り収容室17へと折り返すように配設されて構成される。燃料は、この様な、収容室15、16、17と連通部18、19とを折り返す浄化通路23を流れることにより、燃料の流れが整流される。
【0023】
収容室15は、
図2に示す様に、一端部に収容室15における浄化通路23の入口15aである導入口20が設けられ、他端部に収容室15における浄化通路23の出口15bが設けられている。出口15bには、連通部18の一端が設けられている。収容室15における浄化通路23の長さは、収容室15の長さまで延ばすことができるため、燃料が収容室15に収容された浄化剤22と接触しながら通り抜けるため、浄化剤22を有効に利用できる。
【0024】
収容室16は、
図2に示す様に、一端部に収容室16における浄化通路23の入口16aである連通部18の他端が設けられ、他端部に収容室16における浄化通路23の出口16bが設けられている。出口16bには、連通部19の一端が設けられている。収容室16における浄化通路23の長さは、収容室16の長さまで延ばすことができるため、燃料が収容室16に収容された浄化剤22と接触しながら通り抜けるため、浄化剤22を有効に利用できる。
【0025】
収容室17は、
図2に示す様に、一端部に収容室17における浄化通路23の入口17aである連通部19の他端が設けられ、他端部に収容室17における浄化通路23の出口17bが設けられている。出口17bには、導出口21が設けられている。収容室17における浄化通路23の長さは、収容室17の長さまで延ばすことができるため、燃料が収容室17に収容された浄化剤22と接触しながら通り抜けるため、浄化剤22を有効に利用できる。
【0026】
接合部26は、溶着部14により、第1ケーシング11と第2ケーシング12が接合している部分のうち、溶着部14よりも容器13の外方に位置した部分を指す。接合部26は、溶着部14の全周に沿って存在し、大気に露呈する様に構成される。
【0027】
第2ケーシング12は、
図5に示す如く、プレス成形等にて、切り欠き24、25(凹部に相当する)が形成されている。切り欠き24、25は、
図2及び
図3に示す如く、相隣り合う収容室の溶着部14間に位置した接合部26に沿って設けられ、第2ケーシング12の厚み方向に貫通して、第1ケーシング11に直接対向する空間を形成するもので、よって、容器13の外方に露呈する。
【0028】
具体的には、切り欠き24は、
図2、
図3に示す如く、溶着部14の内で、収容室15を区画する部分14a4と収容室16を区画する部分14b2との間における接合部26に位置し、その接合部26に沿って即ち溶着部14の部分14a4、14b2に沿って、溶着部14の内で連通部18を区画する部分14d2へ向けて延在する。切り欠き25は、
図2に示す如く、溶着部14の内で、収容室16を区画する部分14b4と収容室17を区画する部分14c2との間における接合部26に位置し、その接合部26に沿って即ち溶着部14の部分14b4、14c2に沿って、溶着部14の内で連通部19を区画する部分14e2へ向けて延在する。これにより、相隣り合う収容室を区画する部分間に位置した接合部26は、切り欠き24、切り欠き25を介して、容器13の外部に露呈することができる。この様に、第1ケーシング11と第2ケーシング12とを接合して、収容室15、16、17及び連通部18、19を区画して形成し、その外周を連続的に接合した溶着部14による接合部26は、切り欠き24,25により、その全周に亘って、容器13の外部に露呈した構成とされる。
【0029】
脱硫器10は、切り欠き24、25により接合部26の全周に亘って、容器13の外部に露呈した構成であるので、接合部26は、溶着部14のうち相隣り合う収容室を区画する部分に位置した接合部26の部分も含めて、溶着部14の全周における接合不良の箇所を漏れテストにより特定できるものである。漏れテストは、一般周知である例えば、導出口21を塞ぎ、導入口20から試験用ガスを流入し、容器13の外部で、溶着部14に沿って膨出変形可能または破裂可能な石鹸膜等の膜を塗布して行う。
【0030】
第1ケーシング11と第2ケーシング12との接合について、説明する。所定の形状に立体成形された第1ケーシング11を裏返して、浄化剤22を収容室15、16、17のみならず、好ましくは連通部18、19に相当する窪んだ部分内に収容する。次いで、その第1ケーシング11の上方に、切り欠き24、25が形成された第2ケーシング12を被せて、ファイバーレーザ溶接等により、収容室15、16、17及び連通部18、19の外周となる部分を連続的に接合し、
図2及び
図3に示す如く、溶着部14が形成される。
【0031】
なお、燃料電池システム用浄化装置として、
図2乃至
図5に示した例では、燃料電池システムに用いられる脱硫器10を示したが、これに限らず、燃料電池システム用浄化装置は、燃料電池システムにおける凝縮水の浄化に用いられる水精製器30にも適用可能である。この水精製器30は、水に含まれている不純物を除去して純水化を促進させる水精製剤例えばイオン交換樹脂等を浄化剤22として収容し、その導入口20には、ガス状の流体である燃料に代えて液相状の流体として凝縮水が供給されることを除いて、脱硫器10と同様な構造を有するものであるから、詳細な説明は省略する。
【0032】
燃料電池システム用浄化
装置は、
図2乃至
図5に示した例では、所定の形状に立体成形された第1ケーシング11と、平板状の第2ケーシング12を接合して容器13が構成された例を示した。しかしながら、燃料電池システム用浄化
装置は、平板状の第2ケーシング12に代えて、
図6に示す如く、第2ケーシング12を所定形状に立体成形し、所定の形状に立体成形され第1ケーシング11と所定形状に立体成形された第2ケーシング12を接合して、
図7に示す如く、容器13を構成する様にすることも可能である。なお、
図7は、容器13に収容された浄化剤22が省略されている。
【0033】
燃料電池システム用浄化装装置は、
図2乃至
図5に示した例では、切り欠き24、25は、長手方向の一端が第2ケーシング12の外方に開口した即ちスリット状とした構成であるが、これに代えて、
図6に示す如く、第2ケーシング12の厚み方向に貫通された溝にすることもできる。この様に構成した切り欠き24、25も、
図2及び
図3に示す切り欠き24、25と同様に、相隣り合う収容室の溶着部14間に位置した接合部26に沿って設けられ、第2ケーシング12の厚み方向に貫通して、第1ケーシング11に直接対向する空間を形成するもので、よって、容器13の外方に露呈する。なお、切り欠き24、25は、長手方向途中に幅方向に繋がった部分を設けて形成することも可能である。
【0034】
燃料電池システム用浄化
装置は、
図2乃至
図5に示した例では、切り欠き24、25は第2ケーシング12に設けられた例を示した。しかしながら、これに限らず、燃料電池システム用浄化
装置は、切り欠きを24、25は、第1ケーシング11に設けることも可能であり、また、切り欠きを24、25は、第1ケーシング11および第2ケーシング12の両方に設けることも可能である。更には、燃料電池システム用浄化
装置は、切り欠きを24、25のうち、その一方は、第1ケーシング11に設け、またその他方は第2ケーシング12に設けることも可能である。
【0035】
上述のように、本実施形態に係る燃料電池システム用浄化装置によれば、第1ケーシング11と、第2ケーシング12と、第1ケーシング11と第2ケーシング12とを接合することにより第1ケーシング11と第2ケーシング12との間に形成される複数の収容室15、16、17および収容室と収容室とを連通する連通部18,19と、収容室15、16、17の内部に流体が導入される導入口20と、内部の流体が導出される導出口21と、を備えている容器13と、収容室15、16、17内に収容されて、収容室15、16、17内を流れる流体を浄化させる浄化剤22と、導入口
20から導入された流体が導出口21から導出されるまで流通する浄化通路23と、を備え、浄化通路23は、収容室15、16、17と連通部18,19とを折り返すように配設して構成される。よって、浄化剤22を収容した容器13とは、別部材の仕切り板や仕切部材を設けることなく浄化剤22により浄化される流体の流れを整流できる燃料電池システム用浄化装置を提供できる。製作の容易化が可能となる。
【0036】
上述のように、本実施形態に係る燃料電池システム用浄化装置によれば、収容室15、16、17は、一端部に収容室15、16、17における浄化通路23の入口15a、16a、17aが設けられ、他端部に収容室15、16、17における浄化通路23の出口15b、16b、17bが設けられる。よって、収容室15、16、17における浄化通路23の長さは、収容室15、16、17の長さまで延ばすことができるため、流体が収容室15、16、17に収容された浄化剤22と接触しながら通り抜けるため、浄化剤22を有効に利用できる。
【0037】
上述のように、本実施形態に係る燃料電池システム用浄化装置によれば、容器13は、第1ケーシング11と第2ケーシング12とを接合するための溶着部14を有し、溶着部14は、収容室15、16、17および連通部18,19の外周が溶着され、相隣り合う収容室の溶着部14間で第1ケーシング11および第2ケーシング12の一方のケーシングは、溶着部14に沿って設けられ、第1ケーシング11および第2ケーシング12の他方のケーシングに直接対向する空間を形成する凹部24,25が設けられる。よって、凹部24、25にて、溶着部14が容器13の外部に露呈する構成であるので、溶着部14のうち相隣り合う収容室を区画する部分14a4,14b2,14b4,14c2も含めて、溶着部14における接合不良の箇所を特定できる。
【0038】
上述のように、本実施形態に係る燃料電池システム用浄化装置によれば、第1ケーシング11と第2ケーシング12のうち、一方のケーシングと他方のケーシングは、所定の形状に立体成形され、凹部24,25は、一方のケーシングの厚み方向に貫通された溝である。よって
、第1ケーシング11及び第2ケーシング12は、プレス成形等にて容易に形成できる。
【0039】
上述のように、本実施形態に係る燃料電池システム用浄化装置によれば、流体は付臭剤を含む燃料とし、浄化剤22は、付臭剤を除去させる脱硫剤であるので、燃料に含まれる付臭剤等の不純物を除去できる。
【0040】
上述のように、本実施形態に係る燃料電池システム用浄化装置によれば、流体は凝縮水とし、浄化剤22は、凝縮水に含まれている不純物を除去させて純水化を促進させる水精製剤であるので、水に含まれる不純物を除去できる。
【0041】
なお、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。