(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のブーム起伏手段は、当該ブーム起伏手段のみの力で、ブームおよびジブを立ち上げたり、伏させたりできるように設計されている。このため、従来の移動式クレーンでは、ブーム起伏ドラムを回転駆動するモータとして、大きなトルクを発生させるモータが必要であり、大型化しやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業現場で組み立て・解体を行う移動式クレーンにおいて、起伏装置に掛かる負荷を軽減することができる移動式クレーン、および移動式クレーンにおけるアタッチメントを起立させる又は伏させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の移動式クレーンは、走行体と、この走行体の前部に起伏自在に設けられたアタッチメントと、前記走行体に設けられ、前記アタッチメントを地面に伏した状態から起立した状態に、又は起立した状態から地面に伏した状態に移行させるよう当該アタッチメントを起伏駆動する起伏装置と、前記走行体の後部に設けられるカウンタウエイトとを具備した移動式クレーンであって、前記アタッチメントに設けられた第一連結部と、前記カウンタウエイトに設けられた第二連結部と、前記カウンタウエイトが前記走行体に支持されている状態と支持されていない状態とに切り替え可能な支持切替部とを備え、前記第一連結部と前記第二連結部とが連結体で連結された状態で前記カウンタウエイトが前記走行体に支持されていない状態に切り替えられると、前記カウンタウエイトから前記アタッチメントに対して当該アタッチメントが起立する方向への力が作用するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の移動式クレーンによれば、走行体に設けられているカウンタウエイトを利用して、アタッチメントの起伏駆動を補助することができるため、別途の移動ウエイト等の装置を用いなくても、起伏装置の要する力を小さくできる。この結果、作業現場で組み立て・解体を行う移動式クレーンにおいて、起伏装置に掛かる負荷を軽減することができる。
【0010】
またこの移動式クレーンにおいて、前記起伏装置は、第三連結部が設けられ、第1のスプレッダとこの第1のスプレッダを支持する起伏部とを有する昇降部と、前記第1のスプレッダに起伏ロープを介して連結された第2のスプレッダと、前記起伏ロープの巻き取りおよび繰り出しを行い、前記第1のスプレッダと前記第2のスプレッダとの間の距離を変更するウインチ装置とを備え、前記連結体は、前記アタッチメントに設けられた前記第一連結部と前記昇降部とを連結する連結条と、前記昇降部に設けられた第三連結部と前記カウンタウエイトに設けられた前記第二連結部とを連結可能な補助ロープとで構成されることが好ましい。
【0011】
本発明の移動式クレーンによれば、第1のスプレッダに対して、アタッチメントを起立させる力の補助を行うことができるため、効果的にアシスト力をアタッチメントに与えることができる。
【0012】
また、この移動式クレーンにおいて、前記起伏装置は、第三連結部が設けられた上部スプレッダと、前記上部スプレッダに起伏ロープを介して連結され、ガントリにより支持された下部スプレッダと、前記起伏ロープの巻き取りおよび繰り出しを行い、前記上部スプレッダと前記下部スプレッダとの間の距離を変更するウインチ装置とを備え、前記連結体は、前記上部スプレッダと前記アタッチメントに設けられた前記第一連結部とを連結する連結条と、前記上部スプレッダに設けられた第三連結部と前記カウンタウエイトに設けられた前記第二連結部とを連結可能な補助ロープとで構成されることが好ましい。
【0013】
本発明の移動式クレーンによれば、上部スプレッダに対して、アタッチメントを起立させる力の補助を行うことができるため、効果的にアシスト力をアタッチメントに与えることができる。
【0014】
またこの移動式クレーンにおいて、前記第三連結部は、前記補助ロープとの連結状態を解除可能に構成されており、前記走行体の運転室には、前記第三連結部の連結状態の解除操作が可能な操作部が設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の移動式クレーンによれば、運転室からの操作により、補助ロープを取り外すことができる。この結果、作業者は、高所作業を避けることができる。
【0016】
また本発明の移動式クレーンにおけるアタッチメントを起立させる又は伏させる方法は、走行体と、この走行体の前部に起伏自在に設けられたアタッチメントと、前記走行体に設けられ、前記アタッチメントを地面に伏した状態から起立した状態に、又は起立した状態から地面に伏した状態に移行させるよう当該アタッチメントを起伏駆動する起伏装置と、前記走行体の後部に設けられるカウンタウエイトとを備えた移動式クレーンにおけるアタッチメントを起立させる又は伏させる方法であって、前記アタッチメントと前記カウンタウエイトとを連結体で連結し、その後、前記カウンタウエイトを前記走行体から離脱させて、前記カウンタウエイトから前記アタッチメントに対し、当該アタッチメントが起立する方向への力を作用させながら、前記起伏装置によって前記アタッチメントの起伏駆動を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明のアタッチメントを起立させる又は伏させる方法によれば、走行体に設けられているカウンタウエイトを利用して、アタッチメントの起伏駆動を補助することができるため、別途の移動ウエイト等の装置を用いなくても、起伏装置の要する力を小さくできる。この結果、作業現場で組み立て・解体を行う移動式クレーンにおいて、起伏装置に掛かる負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動式クレーン、および移動式クレーンにおけるアタッチメントを起立させる又は伏させる方法によれば、作業現場で組み立て・解体を行う移動式クレーンにおいて、起伏装置に掛かる負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施形態の移動式クレーンは、
図1に示すように、クローラ式クレーンであり、ジブ付きのラッフィングクレーンである。移動式クレーンは、走行体1と、走行体1の前部に設けられたアタッチメント2と、アタッチメント2を起伏駆動させる起伏装置4と、走行体1の後部に設けられたカウンタウエイト5とを備えている。
【0022】
走行体1は、地面に接地して移動することが可能な車体である。走行体1は、アタッチメント2と、起伏装置4と、カウンタウエイト5とを支持する。走行体1は、下部走行体11と、下部走行体11に対して旋回自在な上部旋回体12とを備えている。
【0023】
下部走行体11は、上部旋回体12やアタッチメント2を地面に沿って移動させる。本実施形態の下部走行体11は、一対のクローラを有するクローラ式のキャリアにより構成されているが、例えば、ホイール式のキャリアであってもよく、特に限定されない。
【0024】
上部旋回体12は、下部走行体11の上部に旋回ベアリングを介して取り付けられており、下部走行体11に対して旋回自在である。上部旋回体12の前部には、キャブ13が設けられており、また、ブームフットピン25を介してアタッチメント2が取り付けられている。キャブ13の内部は運転室となっている。なお、ここでいう「上部旋回体12の前部」とは、上部旋回体12の前後方向の中央よりも前側を意味し、前側の端部のみに限らない。
【0025】
アタッチメント2は、荷を吊る部分であり、地面に接地した走行体1に対して、前後方向に直交する水平軸廻りに回転自在に連結されている。アタッチメント2は、地面に伏した状態から、起立した状態まで回転できるように走行体1に軸支されている。本実施形態のアタッチメント2は、ブーム21と、ジブ22と、フロントストラット23と、リヤストラット24とを備えている。
【0026】
ブーム21は、走行体1の前部にブームフットピン25を介して回転自在に支持される。ブームフットピン25は、前後方向に直交する水平方向に延びている。ブーム21の上端には、ジブ22がジブフットピン26を介して回転自在に支持される。ジブフットピン26の長手方向は、ブームフットピン25の長手方向と平行である。フロントストラット23は、ブーム21の先端部(ブーム21においてブームフットピン25側とは反対側の端部)に回転自在に連結されており、フロントストラット23の先端とジブ22の先端とがジブガイライン27で連結されている。また、リヤストラット24は、フロントストラット23よりも下方に位置するようにブーム21の先端部に取り付けられている。
【0027】
リヤストラット24の先端には、複数のシーブを備えたジブ用下部スプレッダ28が設けられている。また、フロントストラット23の先端には、複数のシーブを備えたジブ用上部スプレッダ29が設けられている。ジブ用下部スプレッダ28の複数のシーブと、ジブ用上部スプレッダ29の複数のシーブとの間には、ジブ起伏ロープ30が往復するように架け渡されている。ジブ起伏ロープ30は、その一方の端部がジブ起伏ウインチ装置31に連結されている。なお、ジブ起伏ウインチ装置31は、ブーム21の基端部(ブームフットピン25側の端部)に設けられている。
【0028】
ジブ起伏ウインチ装置31がジブ起伏ロープ30を巻き取ると、ジブ用上部スプレッダ29がジブ用下部スプレッダ28に近づく方向に移動し、ジブ22が立ち上がる方向に回転する。一方、ジブ起伏ウインチ装置31がジブ起伏ロープ30を繰り出すと、ジブ用上部スプレッダ29がジブ用下部スプレッダ28から離れる方向に移動し、ジブ22が伏す方向に回転する。これにより、ジブ22は、ブーム21に対して起伏方向に回転するように構成されている。
【0029】
ジブ22の先端からは、複数のフックブロック32が吊り下げられている。本実施形態の移動式クレーンは、複数のフックブロック32として、主フック33と、補フック34とを備えている。これらのフックブロック32は、フック用ウインチ装置35に連結されており、巻き上げ・巻き下げできるように連結されている。
【0030】
このような構成のアタッチメント2は、例えば、作業現場に搬入するときには、分解された状態で搬入され、搬入後、作業現場で組み立てられる。組み立て直後のアタッチメント2は、例えば、
図2に示すように、地面に伏した状態となっている。アタッチメント2は、この状態から、走行体1に設けられた起伏装置4によって立ち上げられる。
【0031】
図3には、アタッチメント2が地面に伏した状態の走行体1の拡大図を示す。走行体1には起伏装置4が設けられており、この起伏装置4がアタッチメント2を起伏駆動する。起伏装置4は、第1のスプレッダ42と起伏部41とから構成された昇降部40と、第2のスプレッダ43と、ブーム起伏用ウインチ装置44とを備えている。
【0032】
第1のスプレッダ42は、本実施形態ではブーム起伏用の上部スプレッダにより構成されており、以下においては「上部スプレッダ42a」と表記する。また、第2のスプレッダ43は、本実施形態ではブーム起伏用の下部スプレッダにより構成されており、以下においては「下部スプレッダ43a」と表記する。ブーム起伏用ウインチ装置44については、「ウインチ装置44」と表記する。
【0033】
昇降部40は、ウインチ装置44を駆動し起伏ロープ45を巻き取ることで、その先端部がカウンタウエイト5側に移動し、これにより、アタッチメント2を起伏駆動する。本実施形態の昇降部40は、マスト41aと上部スプレッダ42aとを備えている。マスト41aは、上部スプレッダ42aを支持する。マスト41aは、その先端側が昇降可能に走行体1に軸支されている。マスト41aは、
図2に示すように、アタッチメント2が地面に伏した状態では、その先端(軸支された側とは反対側の端部)が、ブーム21と後述のガイライン46aとの接続位置よりも上方に位置するように構成されている。
【0034】
上部スプレッダ42aは、
図3に示すように、マスト41aの先端部に固定されている。上部スプレッダ42aは、複数のシーブを有している。
【0035】
ここで、ブーム21の先端部には、第一連結部36が設けられている。上部スプレッダ42aは、この第一連結部36に連結条46を介して連結されている。連結条46は、本実施形態においては、ガイライン46aにより構成されている。なお、連結条46は、ガイラインでなくてもよく、例えば、板状体または棒状体からなるガイリンクにより構成されていてもよいし、ガイラインやガイリンクとは別のワイヤロープにより構成されてもよい。
【0036】
下部スプレッダ43aは、走行体1の後端部に固定されている。下部スプレッダ43aは、複数のシーブを有している。下部スプレッダ43aは、起伏ロープ45を介して上部スプレッダ42aに連結されている。具体的には、下部スプレッダ43aの複数のシーブと上部スプレッダ42aの複数のシーブとの間で、1本の起伏ロープ45を往復するように架け渡して連結されている。
【0037】
ウインチ装置44は、起伏ロープ45の一方の端部に連結されており、起伏ロープ45の巻き取りおよび繰り出しを行う。ウインチ装置44は、回転自在に設けられた起伏ドラムと、この起伏ドラムを回転駆動するモータとを備える。
【0038】
ウインチ装置44が起伏ロープ45を巻き取ると、上部スプレッダ42aが下部スプレッダ43aに近づく方向に移動する。すると、マスト41aの先端側が下降し、上部スプレッダ42aに連結されたガイライン46aを介してブーム21が引き起こされて起立する。一方、ブーム21が起立した状態において、ウインチ装置44が起伏ロープ45を繰り出すと、上部スプレッダ42aが下部スプレッダ43aから離れる方向に移動すると共に、マスト41aの先端側が上昇する。すると、上部スプレッダ42aに連結されたブーム21が伏す方向に回転し、この結果、ブーム21を地面に伏させることができる。
【0039】
走行体1の上部旋回体12の後部にはカウンタウエイト5が設けられている。カウンタウエイト5は、起立した状態のアタッチメント2に対し、走行体1における重量バランスをとる。カウンタウエイト5は、複数の錘51と、この複数の錘51を支持するベースウエイト52とを備えている。
【0040】
複数の錘51は、各錘51を上方に積み上げることで構成されている。各錘51は、上下方向に相互に連結されている。錘51の数量は、ブーム21やジブ22の長さや重量、吊荷の重量等に応じて決定される。複数の錘51は、例えば、
図6に示すように、走行体1の左右方向に2セット設けられている。
【0041】
ベースウエイト52は、
図3に示すように、複数の錘51を支持する。ベースウエイト52は、走行体1の上部旋回体12に固定される。ベースウエイト52が上部旋回体12に固定されることで、カウンタウエイト5は走行体1に取り付けられる。
【0042】
本実施形態の移動式クレーンは、アタッチメント2が伏した状態から起立する状態に移行するとき、または、アタッチメント2が起立した状態から伏した状態に移行するときに、カウンタウエイト5からアタッチメント2に対して当該アタッチメント2が起立する方向への力を作用させるための起伏駆動補助機構が設けられている。本実施形態の移動式クレーンは、起伏駆動補助機構が発生させる力により、起伏装置4におけるアタッチメント2の起伏駆動を補助することができる。
【0043】
起伏駆動補助機構は、走行体1に取り付けられたカウンタウエイト5を利用して、アタッチメント2に対して当該アタッチメント2が起立する方向への力を作用させるための機構である。起伏駆動補助機構は、カウンタウエイト5のベースウエイト52に設けられて補助ロープ9の他端に連結可能な第二連結部65と、昇降部40に設けられて補助ロープ9の一端に連結可能な第三連結部61と、支持切替部72(
図7)と、定滑車69とを備えている。
【0044】
補助ロープ9は、例えば、鋼製のワイヤにより構成される。
図4A,
図4Bに示すように、補助ロープ9の両端には、それぞれ、引掛け部91が設けられている。引掛け部91は、例えば、輪状に形成されており、第三連結部61又は第二連結部65に連結することができる。
【0045】
第三連結部61は、上部スプレッダ42aに固定されている。第三連結部61と第二連結部65とを補助ロープ9で連結することにより、補助ロープ9とガイライン46aとを介して、第一連結部36と第二連結部65が連結されている。すなわち、本実施形態においては、補助ロープ9とガイライン46aとが、第一連結部36と第二連結部65とを連結する連結体47を構成する。
【0046】
第三連結部61は、補助ロープ9の引掛け部91が連結可能に構成されている。第三連結部61は、例えば、J字状のフックや、Uボルトによって構成されてもよいが、
図4A,
図4Bに示すように、シリンダとピストンロッド63とを有するシリンダ装置62と、シリンダから突出した状態のピストンロッド63を支持する支持金具64とで構成されてもよい。この場合、補助ロープ9の引掛け部91は、ピストンロッド63に引っ掛けられる。シリンダ62は、ピストンロッド63がチューブから突出すると、当該ピストンロッド63が断面U字状の支持金具64に支持される。一方、ピストンロッド63がチューブ内に引き込まれると、当該ピストンロッド63が支持金具64から離脱する。このシリンダ62は、
図5に示すように、制御部15に接続されており、制御部15により駆動制御される。制御部15は、運転室に設置された操作部16に電気的に接続されている。制御部15は、操作部16の操作によって、シリンダ62を、ピストンロッド63が突出した状態と引き込まれた状態とのいずれかに切り替えるように制御する。
【0047】
第二連結部65は、
図6に示すように、カウンタウエイト5のベースウエイト52に固定されている。すなわち、第二連結部65はカウンタウエイト5に設けられている。第二連結部65には、補助ロープ9の引掛け部91を連結することができるように構成されている。第二連結部65は、カウンタウエイト5に固定された一対の固定金具66と、この一対の固定金具66に保持されたピン68とで構成されている。固定金具66には、ピン68が挿入されるピン挿通孔67が設けられている。ピン68は、固定金具66から取り外すことができる。
【0048】
定滑車69は、上部旋回体12の後部に固定されている。定滑車69は、支持ブラケット70と、支持ブラケット70に回転自在に支持されたプーリ71とを備えている。プーリ71は、第二連結部65の直上に配置される。これにより、第三連結部61に補助ロープ9の一端を連結し、かつ第二連結部65に補助ロープ9の他端を連結し、補助ロープ9の中間に定滑車69を引っ掛けると、補助ロープ9は、第三連結部61側の端部から定滑車69に掛けられた箇所に向かって下り傾斜し、定滑車69に掛けられた箇所から第二連結部65側の端部に向かって鉛直下方に向かうような状態となる。
【0049】
支持切替部72は、カウンタウエイト5について、上部旋回体12に支持されている状態(以下、支持状態という)と、支持されていない状態(以下、非支持状態という)とに切り替えることができる。本実施形態の支持切替部72は、
図7Aに示すように、複数の軸体73によって構成される。
【0050】
ここで、
図7Bに示すように、ベースウエイト52には、前後方向に離れた1対の固定片53が、左右方向に離れて2セット設けられている(つまり、計4箇所に設けられている)。各固定片53には孔54が設けられている。また、走行体1の上部旋回体12には、固定片53の孔54に対応する箇所に、複数の固定孔14が設けられている。
【0051】
各軸体73は、ベースウエイト52の孔54と、上部旋回体12の固定孔14とが重なった状態で挿入される。これにより、カウンタウエイト5は走行体1に連結され、支持状態となる。また、この支持状態から、軸体73を引き抜くと、ベースウエイト52と走行体1との連結状態が解除され、非支持状態となる。
【0052】
カウンタウエイト5と上部旋回体12との間には、一対のシリンダ装置8が設けられている。各シリンダ装置8は、上部旋回体12に固定されたチューブ81と、チューブ81内に突没自在に挿入されたピストンロッド82と、ピストンロッド82とベースウエイト52とを機械的に接続する接続部材83とを備えている。シリンダ装置8は、支持切替部72が非支持状態にある場合、カウンタウエイト5を上下方向に移動自在に支持するように構成されている。
【0053】
シリンダ装置8は、ピストンロッド82がチューブ81から所定長さ突出すると、カウンタウエイト5が、当該カウンタウエイト5の可動範囲の上限に位置する。また、ピストンロッド82がチューブ81に引き込むと、カウンタウエイト5が、当該カウンタウエイト5の可動範囲の下限に位置する。なお、ピストンロッド82が引き込んでカウンタウエイト5が下限に位置しても、当該カウンタウエイト5は地面に接触しない。
【0054】
このような構成の起伏駆動補助機構は、次のようにして使用される。アタッチメント2が地面に伏した状態にあるときに、作業者は、第三連結部61と第二連結部65とを補助ロープ9で連結し、
図8Aに示すように、補助ロープ9の中間に定滑車69を掛ける。この状態で作業者は、軸体73(支持切替部72)を引き抜いて非支持状態に切り替える。すると、シリンダ装置8のピストンロッド82がチューブ81内に引き込まれると共に、カウンタウエイト5が鉛直下方に移動し、
図8Bに示すように、カウンタウエイト5が下限まで下降する。
【0055】
このとき、
図9に示すように、カウンタウエイト5の自重によって力を受けた補助ロープ9は、第三連結部61を後ろ斜め下方に引っ張る。第三連結部61は、上部スプレッダ42aに取り付けられているため、マスト41aを後方側下方に引っ張り、ガイライン46aを介して第一連結部36を移動させ、これにより、アタッチメント2が起立する方向への力を生じさせる。
【0056】
この状態で、ウインチ装置44を起動し起伏ロープ45を巻き取らせると、起伏駆動補助機構による力に加えて、上部スプレッダ42aがガイライン46aを介してアタッチメント2を起立させる。
【0057】
アタッチメント2が起立した後、作業者は、
図7に示すように、シリンダ装置8によって、カウンタウエイト5を上昇させ、軸体73によってベースウエイト52と上部旋回体12とを連結し、カウンタウエイト5を支持状態に切り替える。
【0058】
この後、運転室の操作部を操作して、
図4Aに示すように、第三連結部61と補助ロープ9との連結状態を解除する。これにより、作業者は補助ロープ9を取り外すことができる。
【0059】
これに対し、起立した状態のアタッチメント2を地面に伏させるには、起伏駆動補助機構により、アタッチメント2に対して当該アタッチメント2が起立する方向への力を与えながら、起伏装置4でアタッチメント2を地面側に回転させ、地面に伏した状態とさせる。
【0060】
<変形例>
なお、上記実施形態の昇降部40は、第1のスプレッダ42がマスト41a(起伏部41)に支持され、第2のスプレッダ43が起伏部41とカウンタウエイト5との間に配置されていたが、
図10Aに示すように、第1のスプレッダ42が起伏部41に支持され、第2のスプレッダ43が起伏部41とアタッチメント2との間に配置されてもよい。
【0061】
この態様においては、起伏部41として、下部スプレッダ42b(第1のスプレッダ42)を支持するガントリ41bが用いられ、下部スプレッダ42bよりもアタッチメント2側に、アタッチメント2にガイライン46aを介して連結された上部スプレッダ43b(第2のスプレッダ43)が配置される。また、ガントリ41bと第一連結部36とを連結する連結条46としては、例えば、ワイヤロープ46bが用いられる。
【0062】
例えば、アタッチメント2を起立させる場合、ガントリ41bに設けられた第三連結部61とカウンタウエイト5の第二連結部65とを補助ロープ9で連結し、支持切替部72を非支持状態に切り替える。このとき、ガントリ41bのテンションメンバ410bを折り畳んで、ガントリ41bの先端側を下降させながら、ウインチ装置44を駆動し、起伏ロープ45を巻き取る。すると、アタッチメント2を起立させる際のアシスト力を作用させながら、上部スプレッダ43bが下部スプレッダ42bに近づく方向に移動し、これによりアタッチメント2を起立させることができる。なお、この後、ガントリ41bは、組み立てられて通常通り使用される。
【0063】
また、起伏部41としてガントリ41bが用いられる場合、折り畳むときの昇降動作を利用しないものでもよい。この場合の概略図を
図10Bに示す。
図10Bにおいては、固定された状態のガントリを符号41cとして示す。
【0064】
上部スプレッダ43cに第三連結部61を設け、ガントリ41cに下部スプレッダ42cを支持させる。このとき、ガントリ41cに、下部スプレッダ42cとは別にシーブ411cを設け、第三連結部61と第二連結部65とを連結する補助ロープ9を当該シーブ411cに掛けることが好ましい。
【0065】
支持切替部72を非支持状態に切り替えると共にウインチ装置44を駆動し、起伏ロープ45を巻き取る。すると、アタッチメント2を起立させる際のアシスト力を作用させながら、上部スプレッダ43cが下部スプレッダ42cに近づく方向に移動し、これによりアタッチメント2を起立させることができる。
【0066】
なお、
図10Bに示すシーブ411cは、ガントリ41cの先端に設けられているが、例えば、ガントリ41cの上下方向の中間部に設けられてもよい。また、これら変形例の構成は、上記実施形態のその他の構成と適宜組み合わせることができる。
【0067】
<効果>
以上、説明したように、上記実施形態および変形例(以下、上記実施形態等という)の移動式クレーンは、走行体1と、アタッチメント2と、起伏装置4と、カウンタウエイト5とを備えている。アタッチメント2は、走行体1の前部に起伏自在に設けられている。起伏装置4は、走行体1に設けられており、アタッチメント2を地面に伏した状態から起立した状態に、又は起立した状態から地面に伏した状態に移行させるよう当該アタッチメント2を起伏駆動する。カウンタウエイト5は、走行体1の後部に設けられており、起立した状態のアタッチメント2に対し走行体1における重量バランスをとる。移動式クレーンは、アタッチメント2に設けられた第一連結部36と、カウンタウエイト5に設けられた第二連結部65と、カウンタウエイト5が走行体1に支持されている状態と支持されていない状態とに切り替え可能な支持切替部72とを備える。移動式クレーンは、第一連結部36と第二連結部65とが連結体47で連結された状態で、カウンタウエイト5が走行体1に支持されていない状態に切り替えられると、カウンタウエイト5からアタッチメント2に対して当該アタッチメント2が起立する方向への力が作用するように構成されている。
【0068】
このため、上記実施形態等の移動式クレーンによれば、走行体1に設けられているカウンタウエイト5を利用して、アタッチメント2の起伏駆動を補助することができるため、別途の移動ウエイト等の装置を用いなくても、起伏装置4の要する力を小さくできる。この結果、起伏装置4の能力を低減させた設計をすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0069】
また、上記実施形態等の起伏装置4は、第三連結部61が設けられ、第1のスプレッダ42とこの第1のスプレッダ42を支持する起伏部41とを有する昇降部40と、第1のスプレッダ42に起伏ロープ45を介して連結された第2のスプレッダ43と、起伏ロープ45を駆動するウインチ装置44とを備える。昇降部40には、第三連結部61が設けられている。連結体47は、連結条46と、補助ロープ9とで構成される。連結条46は、昇降部40と、アタッチメント2に設けられた第一連結部36とを連結する。補助ロープ9は、昇降部40に設けられた第三連結部61と、カウンタウエイト5に設けられた第二連結部65とを連結可能に構成される。
【0070】
このため、上記実施形態等の移動式クレーンによれば、第1のスプレッダ42に対して、アタッチメント2を起立させる力の補助を行うことができるため、効果的にアシスト力をアタッチメント2に与えることができる。このため、ウインチ装置44を駆動するモータに必要なトルクを小さくでき、この結果、モータの重量を軽減でき、モータのコストも抑制できる。
【0071】
また、変形例の実施形態の起伏装置4は、第三連結部61が設けられた上部スプレッダ43cと、上部スプレッダ43cに起伏ロープ45を介して連結され、ガントリ41cにより支持された下部スプレッダ42cと、起伏ロープ45の巻き取りおよび繰り出しを行い、上部スプレッダ43cと下部スプレッダ42cとの間の距離を変更するウインチ装置44とを備える。連結体47は、上部スプレッダ43cとアタッチメント2に設けられた第一連結部36とを連結する連結条46と、第三連結部61とカウンタウエイト5に設けられた第二連結部65とを連結可能な補助ロープ9とで構成される。
【0072】
このため、上記変形例の移動式クレーンによれば、上部スプレッダ43cに対して、アタッチメント2を起立させる力の補助を行うことができるため、効果的にアシスト力をアタッチメント2に与えることができる。このため、ウインチ装置44を駆動するモータに必要なトルクを小さくでき、この結果、モータの重量を軽減でき、モータのコストも抑制できる。
【0073】
また、上記実施形態等の第三連結部61は、補助ロープ9との連結状態を解除可能に構成されている。走行体1の運転室には、第三連結部61の連結状態の解除操作が可能な操作部16が設けられている。
【0074】
このため、上記実施形態等の移動式クレーンによれば、運転室からの操作により、補助ロープ9を取り外すことができる。この結果、作業者は、高所作業を避けることができる。
【0075】
また、上記実施形態等のアタッチメント2を起立させる又は伏させる方法は、アタッチメント2とカウンタウエイト5とを連結体47で連結し、その後、カウンタウエイト5を走行体1から離脱させて、カウンタウエイト5からアタッチメント2に対し当該アタッチメント2が起立する方向への力を作用させながら、起伏装置4によってアタッチメント2の起伏駆動を行う。
【0076】
このため、上記実施形態等のアタッチメント2を起立させる又は伏させる方法によれば、走行体1に設けられているカウンタウエイト5を利用して、アタッチメント2の起伏駆動を補助することができる。これにより、起伏装置4が要する力を小さくできて、起伏装置4の能力を抑えた設計を行うことができる。
【0077】
なお、上記実施形態等の移動式クレーンは、走行体1の後部に定滑車69が固定されていたが、定滑車69はなくてもよい。また、この定滑車69は、回転可能なプーリ71を有していたが、回転不能な円柱体であってもよい。この円柱体を用いる場合、補助ロープ9は円柱体の表面を摺動するため、摺動性を高く保つことが好ましい。
【0078】
また、上記実施形態等の移動式クレーンは、組み立て後に補助ロープ9を取り外したが、組み立て後においても、取り付けられたままにしてもよい。この場合、起伏装置4の動作に影響を与えないように、補助ロープ9を緩ませる必要がある。
【0079】
また、上記実施形態等のウインチ装置44は、上部旋回体12に設けられていたが、マスト41の基端部に固定されていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態等では、起伏駆動補助機構による力を発生させた後に、起伏装置を起動させたが、起伏装置を作動させた状態で、起伏駆動補助機構による力を発生させてもよい。
【0081】
また、上記実施形態の起伏装置は、マストを有する起伏装置であったが、変形例のように、例えば、ガントリを有する起伏装置であってもよく、この点限定されない。
【0082】
また、上記実施形態の昇降部40において、第三連結部61は、上部スプレッダ42aに設けられたが、マスト41aに設けられてもよい。また、第三連結部61は、マスト41aの先端部に設けられなくてもよく、例えば、長さ方向の中間部分に設けられてもよい。
【0083】
また、上記実施形態において、第一連結部36は、ブーム21の先端部に設けられたが、ブーム21の長さ方向の中間部分に設けられてもよく、ブーム21の先端部に設けられることに限定されない。
【0084】
また、上記実施形態の連結体47は、その一部にガイライン46aを備えていたが、例えば、ブーム21に対するガイライン46aの連結部とは別に、第一連結部36を設け、連結体47により、第一連結部36と第二連結部65とを連結してもよい。この場合、例えば、マスト41にシーブを設け、連結体47を、第一連結部36と第二連結部65との間で、当該シーブにより支持してもよい。
【0085】
さらに、第一連結部36は、ブーム21に設けられたジブ22、リヤストラット24やフロントストラット23に設けられてもよく、すなわち、アタッチメント2に設けられていればよい。
【0086】
また、アタッチメント2は、ジブ22、リヤストラット24やフロントストラット23を備えていなくてもよい。